説明

恒温槽型圧電発振器

【目的】 本発明の目的は、恒温槽型圧電発振の消費電力を少なくすることを目的とする。
【構成】 恒温槽内に発熱体と電圧制御圧電発振器と槽内感温素子とを収納し、恒温槽外の温度を検知する槽外感温素子と槽内感温素子とで検知した温度差の温度情報により発熱体を制御する温度制御回路を備え、槽外感温素子で検知した温度情報により電圧制御圧電発振器への制御電圧を制御する制御電圧発生回路を備え温度制御を行うことで課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】圧電発振器を恒温槽に収納し、恒温槽の内部と外部に具備した感温素子の両方の検出温度で温度制御回路を制御し発熱体の温度管理を行い、感温素子で検知した温度変化から制御電圧発生回路を介し周波数制御を行う圧電発振器に関する。
【0002】
【従来の技術】昨今の電子機器は、一般家庭から生産工場、自家用車からロケットといったあらゆる場面や環境で至極当然のように使用されている。これらの使用環境で特に温度変化の激しい温度環境は、圧電発振器にとっては周波数温度特性(以下温度特性とする)を補償して安定した周波数を供給するのは非常難しい条件となってしまう。
【0003】そもそも、圧電発振器を構成する圧電振動子にも温度特性を有することで、なお更に環境温度変化は圧電発振器の温度特性を補償するのは難しいのが現状である。
【0004】上記の温度特性を改善する温度補償発振器は、恒温槽型圧電発振器として従来から広く用いられている。従来の恒温槽型圧電発振器は、圧電発振器と発熱体と感温素子を同一恒温槽に収納し、恒温槽内温度を感温素子で検知し温度制御回路を介し発熱体温度を増減させることにより、圧電発振器自体の動作環境温度を一定に保ち温度特性を著しく向上させた構造を持ったものである。
【0005】このブロック図を図6に示す。圧電発振器と発熱体、感温素子を同一の恒温槽内に収納し、圧電発振器の動作雰囲気(恒温槽内)の温度は感温素子で検知するようになっている。感温素子で検知した温度変化は、温度制御回路により発熱体を制御する電流信号に置き換えられ、恒温槽内の温度が一定になるよう発熱体の駆動電流を制御するものである。従って、一般的には恒温槽内の設定温度は、圧電発振器を構成する圧電振動子の温度変化が最も少ない60℃付近で設定されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の恒温槽型圧電発振器は、前述する従来の技術に記載するとおり、恒温槽内の感温素子で恒温槽内温度を管理しているため、圧電発振器の保持温度が高く、また恒温槽内の温度制御しかできないために恒温槽の外気温度の変化に伴い、恒温槽内の温度にも影響を及ぼしてしまうことは避けにくいのが現状である。
【0007】そのため、恒温槽内部温度を高い温度設定で保持し、外気温度変化の影響も吸収しつつ恒温槽内部温度を一定に保つには、非常に大きな電流を必要とし恒温槽型圧電発振器自体の消費電力を少なく抑えることが難しい。
【0008】一方従来は、恒温槽内に収納する圧電発振器は、圧電発振器を構成する圧電振動子の温度特性に起因しているため、恒温槽内部温度を一定に保持しても圧電発振器自体の温度特性をより精度よく制御するのは大変難しく、恒温槽型圧電発振器全体としての温度特性改善も非常に難しいという課題が生じている。
【0009】
【課題を解決する手段】以上の課題を解決するために、本発明は恒温槽内部と恒温槽外部両方の温度を検知する構造にし、恒温槽内部と恒温槽外部の温度を検知することにより、恒温槽内外の温度差を検知し、その温度情報により温度制御回路を介し発熱体の電流を制御することにより、従来では恒温槽内を一定に保った状態の恒温槽温度雰囲気であったものを、従来より僅かに広い恒温槽温度雰囲気で、恒温槽内の温度保持を行うようにしたものである。
【0010】従来より僅かに広い恒温槽温度雰囲気で、恒温槽内の温度保持を行うため、圧電発振器自体は、恒温槽内部の感温素子か恒温槽外部の感温素子で検知した温度変化により、制御電圧発生回路を介し圧電発振器の周波数を制御する制御電圧を発生させ、恒温槽内外の感温素子で制御する発熱体による温度管理と、恒温槽内部あるいは外部の感温素子で制御される圧電発振器の制御電圧による周波数制御を組み合わせることにより、大幅な消費電流の改善が実現できた。
【0011】また、本発明では恒温槽内は発熱体により高温(+50℃〜+70℃)で保持されているため、恒温槽内部の感温素子で圧電発振器の電圧制御を行う場合には、温度範囲が狭い(+50℃〜+70℃)ためより高精度の周波数が制御が行える。
【0012】一方、恒温槽外部の感温素子で圧電発振器の電圧制御を行う場合には、外気温度範囲(−20℃〜+85℃)が広いため、温度特性全域で滑らかな特性を得ることができることも本発明の特徴として挙げられる。
【0013】
【実施例】以下、添付図面に従ってこの発明の実施例を説明する。なお、各図において同一の符号は同様の対象を示すものとする。図1は請求項1に関する本発明のブロック図である。恒温槽1内で電圧制御圧電発振器3を加熱する発熱体2と、恒温槽1内に設けられた槽内感温素子4と、恒温槽外で外気温を検知する槽外感温素子5とを備え、槽外感温素子5の温度情報に基づき電圧制御圧電発振器3の電圧を制御する制御電圧発生回路7と、槽外感温素子5と槽内感温素子4との温度差の温度情報により発熱体2を制御する温度制御回路6からなる恒温槽型圧電発振器を示している。
【0014】発熱体2を制御する温度制御回路6へは、槽外感温素子5と槽内感温素子4との温度差の温度情報により制御されており、電圧制御圧電発振器3を制御する制御電圧発生回路7へは槽外感温素子5の温度情報に基づき制御されたと恒温槽型圧電発振器を構成している。
【0015】図2は請求項2に関する本発明のブロック図である。恒温槽1内で電圧制御圧電発振器3を加熱する発熱体2と、恒温槽1内に設けられた槽内感温素子4と、恒温槽外で外気温を検知する槽外感温素子5とを備え、槽内感温素子4の温度情報に基づき電圧制御圧電発振器3の電圧を制御する制御電圧発生回路7と、槽外感温素子5と槽内感温素子4との温度差の温度情報により発熱体2を制御する温度制御回路6からなる恒温槽型圧電発振器を示している。
【0016】発熱体2を制御する温度制御回路6へは、槽外感温素子5と槽内感温素子4との温度差の温度情報により制御されており、電圧制御圧電発振器3を制御する制御電圧発生回路7へは槽内感温素子4の温度情報に基づき制御されたと恒温槽型圧電発振器を構成している。要するに、発熱体2は槽外感温素子5と槽内感温素子4との温度差の温度情報で制御されることから、恒温槽内外の温度差を小さくすることができ、発熱体2に加わる電流値変動は小さくできるため従来に比べて発振器全体の消費電力を少なくすることができる。
【0017】図5は従来例と本発明との恒温槽内温度変化と、恒温槽内外の温度差を示すグラフである。従来では、恒温槽内温度を一定に保ち温度の影響を受けない安定した発振周波数を得ようとしていた。恒温槽内の温度を一定に保つことは、恒温槽外の温度変化により、恒温槽内を保温するための発熱体2に流れる電流の増減が必要となってしまう。
【0018】恒温槽外の温度(雰囲気温度)が比較的高ければ、恒温槽自体の温度も高めになるため、発熱体2への電流値は少なくてすむが、恒温槽外の温度が極端に低いときは、大きな電流値は発熱体2に供給する必要である。そのため、大きな消費電力が発生することになる。
【0019】これに対し、本発明のように恒温槽内外の温度を各々の感温素子で検知することで、恒温槽内の温度を一定に保つことは難しくなるものの、恒温槽内外の温度差を小さくすることができる。要するに、恒温槽内を熱するための発熱体2への電力消費を少なくすることができる。
【0020】図3は本発明の恒温槽内温度で変化する圧電発振器の周波数変化である。従来の恒温槽型圧電発振器では、恒温槽内温度を一定に保つよう温度制御がなされているために、周波数も大きく変化することはない。図1、図2に示す本発明のブロック図では、恒温槽内温度が多少なりとも変動することから、恒温槽内に収納する圧電発振器に、感温素子で検知した温度により制御電圧発生回路7から電圧を出力し周波数を制御できるよう電圧制御圧電発振器3を用いている。
【0021】制御電圧発生回路7は、恒温槽内外に備えた感温素子からの温度により電圧制御圧電発振器3を制御する電圧を出力している。図1のように恒温槽内の槽内感温素子で制御電圧発生回路7からの電圧制御を行う場合には、恒温槽内の温度変化は非常に少ないので、ここに用いる槽内感温素子4は狭い温度範囲を検知することとなり、制御精度が高感度な仕様のものを利用することができる。
【0022】一方、図2のように恒温槽外の槽外感温素子で制御電圧発生回路7からの電圧制御を行う場合には、恒温槽外の温度変化は大きく、槽外感温素子は広い温度範囲を検知し、制御精度も緩慢な温度変化に充分対応できる仕様のものでも利用することができる。
【0023】このように、感温素子の感温精度や仕様により恒温槽自体の温度検知場所を恒温槽内にするのか、恒温槽外から検知するのかの選択もできるのも本発明の特徴でもある。
【0024】
【発明の効果】本発明により恒温槽を用いた発振器の消費電力を大幅に低減することが可能となった。また、恒温槽内/外の温度を検知する感温素子も感温素子の仕様により温度検知する場所(恒温槽の内/外)も選択することができることから、構成部品管理の簡略化を行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で恒温槽外の感温素子から制御電圧発生回路を制御するブロック図である。
【図2】本発明で恒温槽内の感温素子から制御電圧発生回路を制御するブロック図である。
【図3】本発明の制御温度範囲を示す特性図である。
【図4】従来例の制御温度を示す特性図である。
【図5】本発明と従来例の恒温槽内/外の温度と、温度差を示すグラフである。
【図6】従来の恒温槽型圧電発振器の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 恒温槽
2 発熱体
3 電圧制御圧電発振器
4 槽内感温素子
5 槽外感温素子
6 温度制御回路
7 制御電圧発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 恒温槽内で電圧制御圧電発振器を加熱する発熱体と、該恒温槽内に設けられた槽内感温素子と、該恒温槽外で外気温を検知する槽外感温素子とを備え、該槽外感温素子の温度情報に基づき該電圧制御圧電発振器の電圧を制御する制御電圧発生回路と、該槽外感温素子と該槽内感温素子との温度差の温度情報により該発熱体を制御する温度制御回路からなる恒温槽型圧電発振器。
【請求項2】 恒温槽内で電圧制御圧電発振器を加熱する発熱体と、該恒温槽内に設けられた槽内感温素子と、該恒温槽外で外気温を検知する槽外感温素子とを備え、該槽内感温素子の温度情報に基づき該電圧制御圧電発振器の電圧を制御する制御電圧発生回路と、該槽外感温素子と該槽内感温素子との温度差の温度情報により該発熱体を制御する温度制御回路からなる恒温槽型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平10−303645
【公開日】平成10年(1998)11月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−126270
【出願日】平成9年(1997)4月30日
【出願人】(000104722)キンセキ株式会社 (870)