説明

患者−電極間測定のための信号分布

測定装置を生体被験者に電気的に接続する装置であり、この装置は信号伝送回路を含み、信号伝送回路は電流バッファと電圧バッファを含み、電流バッファは、信号源からの信号を受信する電流バッファ入力部と、生体被験者に取り付けた電極に電流を供給する電流バッファ出力部とを設け、電圧バッファは、電流バッファ出力部に接続された電圧バッファの入力部と、電極での電圧を表す電圧信号をセンサに提供する電圧バッファ出力部とを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置を生体被験者と電気的に接続する装置に関し、特に、電気インピーダンス測定用回路に関し、一例では、駆動信号の注入と信号振幅および位相の測定とを可能にする。
【背景技術】
【0002】
本発明における、いかなる先の刊行物(またはそこから得られる情報)または既知であるいかなる事柄に対する言及も、それら先の刊行物(またはそこから得られる情報)または既知の事項が本明細書の関連する同種の技術分野において共通の一般知識の一部をなすと、承認または容認あるいは何らかの形態で示唆するものではなく、かつその用に解釈されるべきではない。
【0003】
心機能、体成分、そして浮腫発現のようなその他の健康状態指標といった、被験者に関連した生物学的指標を確定する1つの既存の技術には、生体電気インピーダンスの使用が関与する。このプロセスには、通常、皮膚表面上に配置した一連の電極を用いて、被験者身体の電気インピーダンスを測定する測定装置の使用が関与する。体表で測定された電気インピーダンスの変化を用いて、心周期や浮腫などに関連した体液レベルの変化のようなパラメータを決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/059351号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インピーダンス測定装置は、時として次のような外的因子に敏感である:被験者と局所環境と測定装置との間の浮遊容量、「電極インピーダンス」としても知られる電極/組織の界面インピーダンスの変化、並びに測定装置を電極に接続するために用いるリード線間の浮遊容量および誘導結合。
【0006】
生体被験者に関するその他の電気測定を行う場合にも同様の問題が生じると理解されるだろう。
特許文献1は、被験者にインピーダンス測定を実行する装置について述べている。この装置は処理システムを含み、処理システムは、第1信号を被験者に印加させ、被験者にかけて検知した第2信号を表す表示を確定し、第2信号の表示を使用してあらゆる不平衡を確定し、もし不平衡が存在する場合には、その不平衡に合わせて変化した第1信号を確定し、この変化した第1信号を被験者に印加させることで、少なくとも1つのインピーダンス測定を実行できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の広範な形態において、測定装置を生体被験者と電気的に接続する装置を提供し、この装置は信号伝送回路を含み、信号伝送回路は、
a)電流バッファを含み、電流バッファは、
i)信号源からの信号を受信する電流バッファ入力部と、
ii)生体被験者に取り付けた電極に電流を供給する電流バッファ出力部と、を有し、
b)電圧バッファを含み、電圧バッファは、
i)電流バッファ出力部に接続された電圧バッファ入力部と、
ii)電極における電圧を表す電圧信号をセンサに提供する電圧バッファ出力部と、を有する、測定装置を生体被験者と電気的に接続する。
【0008】
概して、電流バッファは電流コンベアである。
概して、電圧バッファは出力フォロアとして接続された増幅器である。
概して、本装置は、電圧バッファ出力部と電流バッファ入力部との間に接続されたオフセット制御回路を含む。
【0009】
概して、オフセット制御回路は、電圧バッファ出力部と電流バッファ入力部との間に接続された積分器を含む。
概して、オフセット制御回路は、電極において直流オフセットを制御するために使用される。
【0010】
概して、信号伝送回路は、電圧バッファ出力部と電流バッファ出力部との間に接続された負インピーダンス回路を含む。
概して、負インピーダンス回路は、負インピーダンス回路増幅器と補償インピーダンスを含む。
【0011】
概して、寄生インピーダンス損失を補償するために、負インピーダンス回路増幅器の利得と、補償インピーダンスの値のうちの少なくとも一方が選択される。
概して、負インピーダンス回路は、
a)補償インピーダンス値と、第1端子および第2端子とを有する補償インピーダンスを含み、第1端子は電流バッファ出力部に接続されており、
b)補償増幅器入力部および補償増幅器出力部および利得を有する補償増幅器をさらに含み、補償増幅器入力部は電圧バッファ出力部に接続されており、補償増幅器出力部は、インピーダンスに流す補償電流を提供するために補償インピーダンスの第2端子に接続されており、利得および補償インピーダンスの値は、補償電流が漏洩電流とほぼ同等の大きさを有することができるよう、寄生インピーダンス値に基づいて選択される。
【0012】
概して、本装置は、
a)複数の信号伝送回路を含み、信号伝送回路の各々は、それぞれに対応する、生体被験者に取り付けた電極に電流を提供するためのものであり、
b)少なくとも1つの信号源をさらに含み、
c)少なくとも1つの第1マルチプレクサをさらに含み、これは、信号源を複数の信号伝送回路の1つに選択的に接続して、対応する電極を介して生体回路に電流を印加する。
【0013】
概して、本装置は、
a)各々が電極での電圧を表す電圧信号をセンサに提供する複数の信号伝送回路と、
b)少なくとも1つのセンサと、
c)少なくとも1つのセンサを複数の信号伝送回路のうちの1つに選択的に接続することで、センサが対応するする電極における電圧を表す電圧信号を検知できるようにする、少なくとも1つの第2マルチプレクサと、を含む。
【0014】
概して、本装置は、対応する第1および第2駆動信号を生成するための第1および第2信号源を含み、第1および第2信号源は対応する信号伝送回路に接続されている。
概して第1および第2信号源は、
a)補信号、
b)定振幅および定位相を有する信号、
c)制御された振幅および位相を有する信号のうちの少なくとも1つを生成する。
【0015】
概して、少なくとも1つの信号源は接地されている。
概して、本装置は、
a)生体被験者に取り付けた駆動電極に電流を供給するための少なくとも1つの信号伝送回路と、
b)検知電極での電圧を表す電圧信号を提供するための少なくとも1つの信号伝送回路と、を含む。
【0016】
概して、測定装置は少なくとも1つの信号源と少なくとも1つのセンサとを含む。
概して、測定装置はインピーダンス測定装置である。
本発明は、第2の広範の形態において、電流多重化システムを提供し、このシステムは、
a)少なくとも1つの入力部と複数の出力部とを有する複数の電流マルチプレクサを備え、
b)各々が一定の大きさと周波数を有する第1および第2交流定電流源をさらに備え、第2定電流源は第1定電流源を補完するものであり、第1および第2定電流源の各々は電流マルチプレクサの入力部に接続されており、
c)複数の電流伝送回路をさらに備え、電流伝送回路の各々は入力部と、電流出力部と、電圧出力部とを有し、電流伝送回路入力部の各々は電流マルチプレクサの出力部に接続されており、
d)複数の電極をさらに備え、複数の電極の各々は複数の電流伝送回路のうちの1つの電流出力部に接続されており、
e)複数の入力部と少なくとも1つの出力部とを有する少なくとも1つの電圧マルチプレクサをさらに備え、
f)各電流伝送回路は、
i)入力部および出力部を有する電流コンベアを備え、電流コンベアの入力部は電流伝送回路入力部に接続され、電流コンベアの出力部は電流伝送回路の電流出力部に接続されており、
ii)入力部および出力部を有する電圧バッファをさらに備え、電圧バッファ入力部は電流伝送回路の電流出力部に接続され、電圧バッファ出力部は電流伝送回路の電圧出力部に接続されており、
iii)電圧バッファ出力部と電流コンベアの入力部との間に接続された積分器をさらに備え、
iv)電圧バッファ出力部と電流コンベアの出力部との間に接続された負インピーダンス回路をさらに備え、負インピーダンスは、
(1)補償インピーダンス値と、第1端子と、第2端子とを有する補償インピーダンスを備え、第1端子は電流コンベア出力に接続されており、
(2)補償増幅器入力部と、補償増幅器出力部と、利得とを有する補償増幅器をさらに備え、補償増幅器入力部は電圧バッファ出力部に接続され、補償増幅器出力部は、インピーダンスに流す補償電流を提供するべく、補償インピーダンスの第2端子に接続されており、利得値と補償インピーダンス値は、補償電流が漏洩電流とほぼ同等の大きさを有するように、寄生インピーダンス値に基づいて選択される。
【0017】
本発明は、第3の広範な形態において、測定装置を生体被験者に電気的に接続する装置を提供し、この装置は信号伝送回路を含み、信号伝送回路は、
a)第1バッファを含み、第1バッファは、
i)信号源からの信号を受信する第1バッファ入力部と、
ii)生体被験者に取り付けた電極に駆動信号を供給する第1バッファ出力部とを有し、
b)第2バッファをさらに含み、第2バッファは、
i)第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、
ii)電極での信号を表す検知信号をセンサに提供する第2バッファ出力部とを有する、測定装置を生体被験者に電気的に接続する装置である。
【0018】
概して、第1バッファは電流バッファであり、駆動信号は駆動電流である。
概して、電流バッファは電流コンベアである。
概して、第2バッファは電圧バッファであり、検知信号は電極での電圧を表す電圧信号である。
【0019】
概して、第2バッファは電流バッファであり、検知信号は駆動電流である。
本発明は、第4の広範な形態において、被験者にインピーダンス測定を実行する装置を提供し、この装置は、
a)被験者に信号を印加するための信号源と、
b)被験者からの信号を検知するセンサと、
c)信号源を制御し、センサからの信号を受信するための処理システムと、
d)少なくとも1つの信号伝送回路とを含み、信号伝送回路は、
i)第1バッファを含み、第1バッファは、
(1)信号源からの信号を受信するための第1バッファ入力部と、
(2)被験者に取り付けた電極に駆動信号を供給する第1バッファ出力部とを有し、
ii)第2バッファをさらに含み、第2バッファは、
(1)第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、
(2)電極での信号を表す検知信号をセンサに提供する第2バッファ出力部とを有する。
【0020】
概して、本装置は、
a)生体被験者に取り付けた駆動電極に電流を供給する少なくとも1つの信号伝送回路と、
b)検知電極での電圧を表す電圧信号を提供する少なくとも1つの信号伝送回路と、を含む。
【0021】
概して、本装置は、
a)生体被験者に取り付けた駆動電極に接続された第1信号伝送回路を含み、第1信号伝送回路は、
i)第1バッファを含み、第1バッファは、
(1)信号源からの信号を受信する第1バッファ入力部と、
(2)駆動電極に駆動信号を供給する第1バッファ出力部とを有し、
ii)第2バッファをさらに含み、第2バッファは、
(1)第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、
(2)駆動電極での駆動信号を表す検知信号を提供する第2バッファ出力部とを有し、
b)生体被験者に取り付けた検知電極に接続された第2信号伝送回路をさらに含み、第2信号伝送回路は、
i)第1バッファを含み、第1バッファは、
(1)接地した第1バッファ入力部と、
(2)検知電極に接続された第1バッファ出力部とを有し、
ii)第2バッファをさらに含み、第2バッファは、
(1)第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、
(2)検知電極で検知した電圧の検知信号を表す第2バッファ出力部とを有する。
【0022】
当業者は、以下に記述する図面が例示のみを目的としていることを理解するだろう。これらの図面は、出願人の示唆の範囲のいかなる限定をも意図しない。
ここで、本発明の例を添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】電流多重化システムの略図である。
【図2】出願人の示唆の様々な実施形態による電流多重化システムの略図である。
【図3】図2の電流多重化システムの略図であり、さらなる構成部を示している。
【図4】図2の電流多重化システムの略図であり、電流伝送回路をより詳細に示している。
【図5】図4の電流多重化システムの略図であり、さらなる構成部を示している。
【図6】図5の負インピーダンスの略図である。
【図7】図5の電流多重化システムの略図であり、直流バイアス制御と負インピーダンスをより詳細に示している。
【図8】図7の負インピーダンスの略図である。
【図9】インピーダンス測定装置の一例の略図である。
【図10】インピーダンス測定を実行するプロセスの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
電子検査機器または測定装置は、電極を介して被験者と電気接続させることができる。これらの電極を用いることで、例えば、被験者と電極との間の様々な接点において、電流を送り、電圧を測定することができる。こうした検査機器または測定機器の一例には医療機器が含まれるが、この場合、被験者は生体被験者(例えばヒト患者)であってよい。
【0025】
定電流源のような信号源は、その用途のタイプにかかわらず、電流のような駆動信号を電極へ伝送するために使用できる。多くの場合、必要に応じて電流を様々な電極に切り替えることで、1つの電流源を複数の電極に使用できる。図1は電流多重化システム100を示す。電流多重化システム100は、マルチプレクサ104の入力部に接続された電流源102を備えている。したがって、このマルチプレクサ104の各出力部を複数の電極106に接続することができる。明瞭化の目的で、図1では1つの電極のみ示している。各電極106は患者108に接続することができる。
【0026】
電流源102を使用して、電流Iをマルチプレクサ104の入力部に伝送する。次に、マルチプレクサ104を使用して、入力電流を特定の出力部、さらに特定の電極106に切り替える。しかし、マルチプレクサ104は、高い寄生インピーダンス110を各出力部に発生させ得る。その結果、マルチプレクサ104から出力された電流のいくらかが、寄生インピーダンス110により漏洩電流として損失してしまう。したがって、電極106に到達するのは、電流源102が生成した電流の一部(I‐ΔI)のみとなる。損失する電流量は、電極106と患者108との間の界面のインピーダンスに比例する。各患者は、個人の皮膚や組織に関連した異なるインピーダンスを持っている。そのため、寄生インピーダンス110によって損失する総電流量の比率は各患者ごとに異なる。したがって、患者に伝送される総電流量の比率も各患者ごとに異なる。よって、電流多重化システム100を用いることで、正確な量の電流を電極106を介して患者108へ伝送することが困難となる可能性がある。
【0027】
ここで、出願人の示唆の様々な実施形態による電流多重化システム200の様々な実施形態を示した図2を参照する。電流多重化システム200は、電流源202、1または複数のマルチプレクサ204、患者208に接続された複数の電極206、1または複数の電圧マルチプレクサ212、複数の電流伝送回路220を備えている。マルチプレクサ212の出力部であるノード214を使用して、電圧測定を行うことができる。
【0028】
マルチプレクサ204の各出力部を、電流伝送回路220と類似した電流伝送回路に接続でき、次にこれをマルチプレクサ212の入力部に接続できる。明瞭化の目的で、図2はマルチプレクサ204の出力部への接続と、マルチプレクサ212への接続を各1つずつだけ示している。実際に使用するマルチプレクサ204、電流伝送回路220、マルチプレクサ212の数は、患者に接続された電極206の数、各マルチプレクサ204で利用できる出力部の数、マルチプレクサ212で利用できる入力部の数のような因数に依存する。
【0029】
出願人の示唆による様々な実施形態では、電流伝送回路220はノード222にて電流Iを受け取り、これとほぼ同等の電流をノード224へ出力する。さらに、様々な実施形態では、電流伝送回路220はノード226にて、ノード224での電圧とほぼ同等の電圧を生成する。上述したように、ノード226は電圧マルチプレクサ212に接続されてい。しかし、伝送回路220の電圧出力部であるノード226において電圧測定を行えることが理解されるべきである。電圧マルチプレクサ212の使用はオプションであるが、これを使用することで電圧測定機器を接続するノードの数を減らすことができる。ここでより詳細に述べるように、様々な実施形態では、電流多重化システム200が個別に制御される定電流源202を利用することで、多重化した電流を多くの荷電部(例えば電極206)へ伝送することが可能である。いくつかの実施形態では、定電流源202が一定の振幅および位相を持つ交流電流(これは例えば固定周波数のシヌソイドであってよいが、しかし限定はされない)を伝送する。
【0030】
いくつかの実施形態では、電流多重化システム200は、202が出力した電流とほぼ同等の電流を荷電部へ伝送することができる。様々な実施形態では、電流多重化システム200を利用して、制御可能な定電流を低い伝達損失で多数の場所および負荷部へ伝送できる。これに加え、様々な実施形態では、電流多重化システム200は使用前の較正ステップなしで使用できる。さらに、様々な実施形態において、電流多重化システム200に接続する荷電部を、電流多重化システム200での利用に合わせて変更する必要が全くない。いくつかの実施形態では、電流伝送回路200は、医療器具類、生体測定器具類、心電計機器、インピーダンス測定装置、回路検査機器のなどの測定装置を含む(しかし、これらに限定はされない)あらゆる適切な機器と併用することができる。
【0031】
様々な実施形態では、電流伝送回路220を単一集積回路上に集積することができる。いくつかの実施形態では、複数の伝送回路220のような電流伝送回路を単一集積回路上に集積し、シングルチップとしてパッケージ化できる。いくつかの実施形態では、1または複数の電流マルチプレクサ(例えばマルチプレクサ204)、複数の伝送回路、1または複数の電圧マルチプレクサ(例えばマルチプレクサ212)を単一集積回路上に集積、パッケージ化して、シングルチップにすることができる。
【0032】
ここで、図2の電流多重化システム200の2つの電流伝送回路220a、220bを示した図3を参照する。上で図2を参照して述べたように、様々な実施形態では、電流多重化システム200は複数の電流伝送回路220と複数の電極とを備えている。図2は、明瞭化の理由から、電流伝送回路と電極を各1つのみ示す。しかし、上述したように、様々な実施形態では電流多重化システム200は少なくとも2つの電流伝送回路と少なくとも2つの電極を備えている。ここで、1つの電極は電流伝送電極であってよく、第2の電極は電流戻り電極であってよい。
【0033】
図3は、2つの電流伝送回路と2つの電極を示す。しかし、これよりも多い数の電流伝送回路と電極を使用できることが理解されるべきである。それでも、いくつかの実施形態では、2つの電流伝送回路と2つの電極で十分である。例えば、しかし限定ではないが、電極206aを電流伝送電極として、電極206bを電流戻り電極として使用できる。このような実施形態では、電極206a、206bのうち一方を正電圧測定電極として、他方を負電圧測定電極として使用できる。それぞれマルチプレクサ212a、212bの出力部であるノード214a、214bの各々において電圧を測定することで、電極206aと206bとの間の差分電圧測定値が得られる。2つの電極(電流注入/戻りの両方のものと、電圧測定のためのもの)を使用すると仮定すると、電流多重化システムと患者との間には2つの接点が存在することから、これは2点測定と呼ばれる。
【0034】
図3は、接地したマルチプレクサ204bの入力部を示す。2点測定に用いられるその他の様々な実施形態では、マルチプレクサの入力部は、例えば、定電流源202を補完する第2定電流源(不図示)に接続することができるが、しかしこれに限定はされない。より具体的には、第2定電流源は第2振幅および逆の位相を設けていてよく、これにより、定電流源202が電極206aを介して電流を患者208に「押し込む」と、第2定電流源が電極206bを介して電流を患者から「引き出す」ことができる。当業者には明白となるように、これは患者体内に事実上の接地を提供できる。
【0035】
様々な他の実施形態では、電流注入/戻りと電圧測定に、これよりも多くの電極を使用することが可能である。例えば4点測定を使用できるが、しかしこれに限定はされない。4点測定は4つの電極を使用でき、この場合には、第1の電極を電流注入電極として、第2の電極を電流戻り電極として、第3の電極を正電圧測定電極として、第4の電極を負電圧測定電極として使用する。
【0036】
再び図3に戻ると、電極206aを電流注入電極として、電極206bを電圧測定電極として使用することができる。したがって、電流伝送回路220bが実際に、検知した電圧信号を伝送するように作用することがこの例から理解されるだろう。ここから、回路をより広範に信号伝送回路と呼べることが理解されるだろう。この例では、図3の装置を電流戻り電極および第2電圧測定電極と組み合わせて4点測定システムを得ることで、例えば4極インピーダンス測定を実施できるようになる。
【0037】
様々な実施形態では、交流電流、例えば直流オフセットのない正弦波形を使用できるので、このような実施形態では電極への「電流注入」および電極への「電流戻り」という用語を任意で使用できる。より具体的には、このような実施形態では、所与の電極が電流を半分の時間で一方向へ、もう半分の時間で他方向へ誘導する。これと類似した理由で、電極に対する正圧/負圧測定という用語もやはり任意で使用される。
【0038】
これに加え、4点測定を使用すれば、より正確な電圧測定が得られる。具体的には、電圧測定電極を通って移動する電流がほとんどないので、電極のインピーダンスおよび電極と患者間の界面によって電圧測定が著しく歪められることがない。
【0039】
ここで、図2の電流多重化システム200の一部をより詳細に示したブロック線図である図4を参照する。マルチプレクサ204は、その出力部(例えばノード222)に高い寄生インピーダンスを発生させる。ノード224にて、電極206が電流伝送回路に接続されている。電流伝送回路220の出力部であるノード226は、電極206に発生する電圧を測定するために使用できる。オプションで、ノード226をマルチプレクサの入力部に接続することができるが、これは使用する電極206と電流伝送回路220の数が多い時に役立つ。
【0040】
いくつかの実施形態では、電流伝送回路220は電流バッファ430と電圧バッファ440を備える。電流バッファ430は、寄生インピーダンス438を誘導してノード224に出現させる。いくつかの実施形態では、電流バッファ430は図4に示すような電流コンベアであってよい。電流バッファ430の入力部432はノード222に接続されている。電流バッファ430の出力部434はノード224に接続されている。電流コンベアを電流バッファとして使用する場合には、もう一方の入力部436を接地することができる。
【0041】
出願人の示唆による様々な実施形態では、電流バッファ430は入力部432が低い入力インピーダンスを有するように設計されている。その結果、寄生インピーダンス410によって損失する漏洩電流(ΔI)が最小になる。これに加え、電流バッファ430は、ノード224にて寄生インピーダンスがほとんど生じないように設計されている。その結果、出力部434から出力されるほとんどの電流が電極206を通過でき、寄生インピーダンス438によって損失する漏洩電流(ΔI)が最小量となる。これに加え、様々な実施形態では、電流バッファ430は、高い出力インピーダンスを有するように設計されているので、患者の電極へ伝送される電流量が最小化される。上述した特徴の組み合わせは、例えば電流バッファ430を電流コンベアとして実現することによって達成できる。しかし、他のいくつかの実施形態では、類似の特徴を持つこれ以外の適当な電流バッファの使用も可能である。
【0042】
いくつかの実施形態では、電圧バッファ440を、高い入力インピーダンスを有するように選択することで、ノード224における電圧を、これへの影響なく、ノード226で再生成させられるようになる。様々な実施形態では、これにより、標準化された非侵襲性の電圧測定をノード226にて行えるようになる。
【0043】
いくつかの実施形態では、荷電部を変更した場合であっても、電流多重化システム200を較正ステップなして使用できる。例えば、電極206を新たな患者に接続された時には較正ステップが不要になる。これに加え、様々な実施形態では、電流多重化システム200は、患者の電極の界面を部分修正することなく、あるいは操作することなく使用できる。
【0044】
様々な実施形態では、電流伝送回路220を単一集積回路上に統合することができる。いくつかの実施形態では、複数の電流伝送回路220を単一集積回路上に統合、パッケージ化して、シングルチップにすることができる。
【0045】
様々な実施形態で、あらゆる適切な方策を用いて、様々な入力を各電流注入回路220に切り替えまたは多重化できることが理解されるべきである。利用する切り替えまたは多重化方法に関わらず、結果として寄生容量410が生じる。電流バッファ430は、電極/患者界面を、切り替えおよびその寄生素子によって生じる干渉効果から隔離する。同様に、電圧バッファ440は、あるいは電圧バッファ440以外の構成部によって生じ得る干渉効果から電極206(および、これにより患者の電極界面)を隔離する。
【0046】
したがって、一例では、この装置を、生体被験者に取り付けた電極に駆動信号を供給し、同電極にて信号を検知するように使用できる。上述の例は電流の伝送と電圧の測定とに着目しているが、これは必須なわけではなく、駆動信号を電圧信号にし、電流信号を測定するようにしてもよい。あるいは、信号伝送回路を被験者に印加した駆動信号の測定に使用できるので、これにより、これを例えば計算インピーダンスの測定などに使用できるようになる。これは、インピーダンス計算に使用する駆動信号の大きさと位相を可能な限り正確に確保するために実行できる。
【0047】
したがって、大まかに言えば、この装置は第1バッファおよび第2バッファを含んだ信号伝送回路を設けている。第1バッファは、信号源からの信号を受信する第1バッファ入力部と、生体被験者に取り付けた電極に駆動信号を供給する第1バッファ出力部とを含んでいる。同様に、第2バッファは、第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、電極で検知された信号であることを表す信号をセンサに提供するための第2バッファ出力部とを含んでいる。
【0048】
一例では、第1バッファは電流バッファであり、第2バッファは電圧バッファであり、そのため駆動信号を被験者に印加することが可能なり、電極での電圧を検知できるようになる。しかし、別の例では、電圧信号を被験者に印加して、測定対象である被験者に電流を流すことができる。
【0049】
信号伝送回路により、電極を介して駆動信号を被験者に印加した後に、その電極において信号を測定できるようになる。一例では、測定された信号は生体被験者の電位などの信号を表し、1つの電極を駆動電極と検知電極の両方として使用している。しかしこれは必須ではなく、別の例では、第1、第2電流伝送回路をそれぞれ駆動電極と検知電極に接続することができる。
【0050】
したがって、一例では、第1信号伝送回路は、第1バッファと第2バッファを含んでいてよく、第1バッファは、信号源からの信号を受信する第1バッファ入力部と、駆動電極に駆動信号を供給する第1バッファ出力部とを設け、第2バッファは、第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、駆動電極で検知された駆動信号であることを表す信号を提供する第2バッファ出力部とを設ける。これにより、生体被験者に注入された駆動信号の大きさを測定し、この値をインピーダンス確定などを実行するために使用できるようになる。この例では、駆動信号が電流信号である場合、第2バッファは通常、第1バッファ出力部と電極との間に配置した抵抗器に並列接続した入力部を設けた増幅器であるので、電流を測定対象の被験者に注入できるようになる。
【0051】
この例では、第2信号伝送回路は、第1バッファと第2バッファを含んでいてよく、第1バッファは、接地された第1バッファ入力部と、検知電極に接続された第1バッファ出力部を設け、第2バッファは、第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、検知電極で検知された信号であることを表す信号を提供する第2バッファ出力部を設ける。
【0052】
ここで図5を参照すると、これは図4の電流多重化システムの略図であり、さらなる構成部を示している。様々な実施形態では、電流伝送回路200はさらに直流オフセット制御回路550を備えることができる。いくつかの実施形態では、直流オフセット制御回路550は電流バッファ430のフィードバックループにおいて接続されている。より具体的には、直流オフセット制御回路550はノード226とノード222との間に接続している。様々な実施形態では、直流オフセット制御回路550を使用して、ノード224における直流オフセットまたは直流バイアスを制御する。しかしここでは、電極206と患者208との間に存在する電極/患者界面を妨害しないよう、直流オフセット制御回路550をノード222に接続されている。直流オフセット制御回路550をこのように用いることで、電流多重化システム200を使用した測定の精度が増す。
【0053】
様々な実施形態では、電流伝送回路200はさらに負インピーダンス回路570を備えることができる。負インピーダンス回路570は、電流バッファ430や、例えばノード224にて他の回路要素によって導入された寄生インピーダンス438を補償するために使用できる。負インピーダンス回路570は増幅器571と補償インピーダンス591を備える。様々な実施形態では、電圧増幅器571は1よりも大きな利得値を有する。負インピーダンス回路570を使用することで、寄生インピーダンス438によってノード224から失われた漏洩電流(ΔI)とほぼ同等の電流をノード224に提供できる。負インピーダンス回路570の動作について以降でより詳細に説明する。
【0054】
直流オフセット制御回路550の使用はオプションであることが理解されるべきである。また、負インピーダンス570の使用もオプションであることも理解されるべきである。さらに、直流オフセット制御回路550と負インピーダンス回路570は互いに独立した使用が可能なことが理解されるべきである。したがって、様々な実施形態は、直流オフセット制御回路550か負インピーダンス570のいずれか一方を使用する、あるいは、直流オフセット制御回路550と負インピーダンス回路570の両方を使用する、またはいずれも使用しないことができる。
【0055】
さらに、様々な実施形態では、直流オフセット制御回路550と負インピーダンス回路570を電流伝送回路220の一部として集積することも可能であることが理解されるべきである。様々な他の実施形態では、直流オフセット制御回路550と負インピーダンス回路570のいずれか一方または両方を、別個の回路として設けることができる。例えば、いくつかの実施形態では、マルチプレクサを使用して、これらの回路のどちらかを特定の電流伝送回路に接続することができるが、しかしこれに限定はされない。
【0056】
ここで図6を参照すると、これは、伝達チャネル601と、伝達線を短絡する寄生インピーダンス438と、負インピーダンス回路570とを備えた回路600の略図である伝達チャネル601を例えばノード224に対応させてもよい。負インピーダンス570は電圧増幅器571と補償インピーダンス591を備えている。増幅器571の入力部を信号伝達チャネル601に接続し、出力部を補償インピーダンス591の1つの端子に接続されている。補償インピーダンスの別の端子を信号伝達チャネルに接続されている。
【0057】
信号伝達チャネル601を使用して、任意の適当な回路または回路構成部(例えば電極など)であってよい荷電部(不図示)に電流を伝送できる。信号伝達チャネル601上に信号が存在するため、寄生インピーダンス438にかけて電圧が出現する。これにより、寄生インピーダンス438に漏洩電流Ileakageが流れる。寄生インピーダンス438に流れる電流の大きさは、インピーダンスの値、並びにその端子に出現する電圧の大きさによって異なる。
【0058】
増幅器571は、信号伝達チャネル601上に出現する信号を増幅する。様々な実施形態では、増幅器571は1よりも大きな利得を持つ。これにより、補償インピーダンス591に電圧が出現し、補償インピーダンス591に電流Icompが流れるようになる。
【0059】
様々な実施形態では、増幅器571の利得と補償インピーダンスの値を、寄生インピーダンス438に流れる電流が、補償インピーダンス591に流れる電流によって補償されるように選択する。具体的には、信号電圧をVsignal、寄生インピーダンスをZparaとすると、漏洩電流を次式で表すことができる:
【0060】
【数1】

同様に、補償インピーダンスをZcompとすると、補償電流に流れる補償電流の増幅器利得は次式で表すことができる:
【0061】
【数2】

式(1)と式(2)とを一致させると次式が得られる:
【0062】
【数3】

そのため、式(3)を満たすようにGとZcompを選択することで、補償電流が漏洩電流とぴったり一致する。補償インピーダンス591は、寄生インピーダンス438の影響を相殺する負インピーダンスとして有効に機能する。
【0063】
様々な実施形態では、寄生インピーダンスの値はわかっていなくてよいため、増幅器の利得を単純に上述の式(3)を使って選択することはできないかもしれない。このような実施形態では、利得の値を図6の回路600を使用して推定することができる。具体的には、回路600は、補償インピーダンスと利得の値範囲とを選択することで実現される。回路は利得の様々な値で動作し、出力は監視される。要求される値を超える利得の値については、出力が変動する。そのため、利得の正確な値は、(1)出力が変動する既知の最小の利得値、(2)出力が変動しない既知の最大の利得値、によって範囲画定された値の範囲内に収まる。この工程は、適切な利得値が選択されるまで反復的に継続することができる。適切な利得値が決定したら、上述の式(3)を用いて寄生インピーダンスを推定できる。
【0064】
様々な実施形態では、寄生インピーダンスは容量成分と抵抗成分の両方を備えていてよい。しかし、いくつかの実施形態では、容量性負荷の影響は抵抗性負荷の影響よりも遥かに大きくてよい。このようなケースでは、出願人の示唆による様々な実施形態を使用して、抵抗性負荷ではなく容量性負荷を割り当てることができる。あるいは、出願人の示唆を使用して、寄生インピーダンスの任意部分を部分的に補償することもできる。したがって様々な実施形態では、出願人の示唆による回路を使用すれば、漏洩電流によって損失した全ての電流を必ずしも完全には補償しないが、信号伝達チャネルに接続された任意の寄生インピーダンスを流れるあらゆる漏洩電流を減少または部分的に補償できる。
【0065】
あるいは、寄生インピーダンスを周知の示唆に従って測定または推定してもよい。これによって得た寄生インピーダンスの値を用いて、次に、補償インピーダンスと利得の値の範囲との初期値を選択できる。その後、この利得を上述の方法に従って微調整してもよい。
【0066】
ここで図7を参照すると、これは図5の電流多重化システムの略図であり、直流バイアス制御と負インピーダンスをより詳細に示している。様々な実施形態では、電圧バッファ440は出力フォロアとして接続された演算増幅器742を備える。より具体的には、非反転入力部744はノード224に接続され、その一方で、反転ノード746と出力部748はノード226に接続されている。
【0067】
様々な実施形態では、負インピーダンス回路570は、非反転入力部774と、反転入力部776と、出力部778とを設けた演算増幅器772を備えている。ノード226と非反転入力部774との間には抵抗器780が接続されている。反転入力部776とグランドとの間には抵抗器782が接続されている。抵抗器784の一方の端子は出力部778に、他方の端子は抵抗器786に接続されている。非反転入力部776と抵抗器784、786の共通端子との間に、コンデンサ788と抵抗器790がそれぞれ接続されている。ノード224と抵抗器786との間に、コンデンサ792と抵抗器794が接続されている。以下で、負インピーダンス回路についてより詳細に述べる。
【0068】
いくつかの実施形態では、直流オフセット制御回路550は、積分器として接続された演算増幅器752を備えている。具体的には、演算増幅器752は非反転入力部754、反転入力部756、出力部758を設けている。反転入力部756と出力部758との間にはコンデンサ760が接続している。反転入力部756とノード226との間には抵抗器762が接続している。
【0069】
非反転入力部754と地面との間には抵抗器764が接続している。出力部758とノード222との間には抵抗器766が接続している。
ここで、図7の負インピーダンス回路570の略図である図8を参照する。より明確化する目的で、図8は負インピーダンス回路570を電流多重化システム200の他の部分とは別に例証している。
【0070】
負インピーダンス回路570は増幅器部分571を備えており、この増幅部分571は非反転入力部774と、反転入力部776と、出力ノード778とを装備した演算増幅器772を設けている。演算増幅器772はさらに母線895、896を備えている。
【0071】
再び増幅器部分571と増幅器部分571を参照すると、これらはさらに入力平衡化部分897、利得制御部分898、安定性制御部分899を備える。入力平衡化部分897は、ノード226と非反転入力部774との間に接続した抵抗器780を備えている。利得制御部分898は抵抗器782と抵抗器790を備えている。抵抗器782、790の値を調整することで、増幅器部分771全体の利得Gを調整できる。様々な実施形態では、抵抗器782、790の値を1よりも大きな値に設定してもよい。安定性制御部分899はコンデンサ788、抵抗器784、抵抗器794を備える。コンデンサ788、抵抗器784、抵抗器794の値を調整することで、増幅器回路全体の安定性を変更することが可能である。
【0072】
様々な実施形態では、負インピーダンス回路570は補償インピーダンス591をさらに備えている。そして補償インピーダンス591は抵抗器794とコンデンサ792を備えており、これらは両方ともノード224と安定性制御部分899との間に接続している。補償インピーダンス591は、図7の寄生インピーダンス438を補償するために使用される。利得制御部分898と補償インピーダンス591を調整することで、信号伝達チャネルに提供される補償電流を調整し、その大きさを漏洩電流の大きさと一致させることができる。これは、上に挙げた式(3)に従って行える。
【0073】
上述の例は定電流源の使用に着目しているが、これは必須なわけではなく、代わりに、このシステムは電圧源を使用してもよく、この電圧源で生成された電圧は電流の形態をした駆動信号を被験者体内に注入するために使用され、この駆動信号の大きさがノード214にてセンサによって測定される。
【0074】
これにより、電流伝送回路220をより広範に「信号伝送回路」と呼べることが理解されるだろう。同様に、電流バッファと電圧バッファは、生体被験者に取り付けた電極に駆動信号を供給し、そして、電極での信号であることを表す信号を提供する第1バッファと第2バッファであってよい。
【0075】
上述したように、信号伝送回路は様々なシステムにおいて使用できる。一例では、信号伝送回路を被験者の生体電気インピーダンスの解析に適した装置に組み込むことができ、ここで、その一例を図9を参照して説明する。
【0076】
図示するように、この装置は測定装置900を設けており、測定装置900は、対応する第1リード線923A、923Bを介して1または複数の信号生成器917A、917Bに、また、対応する第2リード線925A、925Bを介して1または複数のセンサ918A、918Bに接続した処理システム902を含んでいる。
【0077】
使用時には、信号生成器917A、917Bは駆動信号伝送回路919A、919Bを介して2つの第1電極913A、913Bに接続され、次にこれが駆動電極として機能することで、信号を被験者Sに印加できるようになり、一方、1または複数のセンサ918A、918Bは第2信号伝送回路920A、920Bを介して第2電極915A、915Bに接続され、次にこれが検知電極として機能することで、被験者Sにかけて信号を検知できるようになる。駆動回路と検知信号伝送回路は、上述した図1〜図8の伝送回路と類似することが理解されるだろう。
【0078】
一例では、1つの信号生成器917を駆動信号伝送回路919A、919Bに接続し、その後、図3の例にあるマルチプレクサ204aを介して駆動電極913A、913Bに接続している。同様に、1つのセンサ918を検知信号伝送回路920A、920Bに接続され、その後、図3の例のマルチプレクサ212bのようなマルチプレクサを介して、検知電極915A、915Bに接続することができる。
【0079】
しかしこれは必須なわけではなく、代わりに、第1信号生成器917A、第2信号生成器917B、センサ918A、918Bを、それぞれ対応する信号伝送回路を介し、それぞれ対応する電極913A、913B、914A、914Bに接続して使用することも可能である。この配置は、以降でより詳細に述べるように平衡化を行うために使用する場合には特に有用である。
【0080】
よって、これにより、信号を被験者に印加するための信号源と、被験者からの信号を検知するためのセンサと、信号源を制御し、センサからの信号を受信するための処理システムと、少なくとも1つの信号伝送回路とを含んだ、被験者に対してインピーダンス測定を実行するために使用する装置が得られ、前述の少なくとも1つの信号伝送回路は第1バッファと第2バッファを含み、第1バッファは、信号源からの信号を受信する第1バッファ入力部と、および生体被験者に取り付けた電極に駆動信号を供給する第1バッファ出力部とを設け、第2バッファは、第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、電極で検知された信号であることを表す信号をセンサに提供する第2バッファ出力部とを設けている。
【0081】
一例では、少なくとも1つの信号伝送回路を、生体被験者に取り付けた電極に駆動電流を供給するために使用し、また、少なくとも1つの信号伝送回路を、検知電極での電圧であることを表す電圧信号を提供するために使用している。
【0082】
ここで、インピーダンス測定装置のさらなる特徴について説明する。
信号生成器917A、917Bと、センサ918A、918Bは、処理システム902と電極913A、913B、915A、915Bとの間の任意の位置に提供されており、さらに測定装置900に組み込むことができる。しかし、一例では、信号生成器917A、917Bと、センサ918A、918Bとを電極システム内、または被験者Sの付近に提供された別のユニット内に集積し、信号生成器917A、917Bと、センサ918A、918Bを、リード線923A、923B、925A、925Bによって処理システム902に接続している。
【0083】
上述のシステムは、それぞれを添字A、Bで示した、従来の4端子インピーダンス測定を実行するために用いる2つのチャネル装置であることが理解されるだろう。2つのチャネル装置の使用は、以下でより詳細に述べるように、単に例証を目的としたものでしかない。
【0084】
オプションの外部インターフェース903(例えば、外部データベースまたはコンピュータシステム、バーコードスキャナなど)を使用すれば、測定装置900を、有線/無線接続あるいはネットワーク接続を介して、1または複数の周辺装置904に接続することができる。通常、処理システム902は入出力装置905をさらに含み、この入出力装置はタッチスクリーン、キーパッドおよびディスプレイなどの適切な形態であってよい。
【0085】
処理システム902は、使用時には制御信号を生成するように設けられている。この制御信号は、第1電極913A、913Bを介して被験者Sに印加できる、適切な波形を持つ電圧信号または電流信号のような1または複数の交流信号を、信号生成器917A、917Bに生成させる。センサ918A、918Bは次に、第2電極915A、915Bを使用して、被験者Sにかかる電圧または被験者に流れる電流を確定し、さらに、適切な信号を解析のために処理システム902へ転送する。装置が、信号生成器またはセンサを対応する信号伝送回路に接続するためにマルチプレクサを設けている場合、通常、処理システムがマルチプレクサを制御するようにも作用するので、これにより、要求された通りに信号を被験者に伝送し、被験者にかけてこれを測定できるようになる。
【0086】
したがって、処理システム902は、適切な制御信号を生成することと、測定した信号の少なくとも一部を解釈して、被験者の生体電気インピーダンスを確定することとに適し、また任意で、相対体液レベルや、浮腫、リンパ浮腫のような状態の有無またはその程度、体成分の測定値、心機能などといった他の情報を確定することに適した、あらゆる形態の処理システムであってよいことが理解されるだろう。
【0087】
したがって、処理システム902は、ノート型、デスクトップ型、PDA、スマートフォンなどの、適切にプログラムされたコンピュータシステムであってよい。あるいは、処理システム902は、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ)のような特殊なハードウェアや、プログラムされたコンピュータと特殊なハードウェアの組み合わせなどから形成することができ、これについて以下に詳細に述べている。
【0088】
使用時には、1または複数の信号を被験者Sに注入できるように、第1電極913A、913Bを被験者上に位置決めする。第1電極の場所は、被験者Sの試験対象区分によって異なる。そのため、例えば、第1電極913A、913Bを被験者Sの胸部および首領域上に配置して胸腔のインピーダンスを確定し、心機能解析に使用できるようにすることが可能である。あるいは、電極を被験者の手首と足首上に位置決めして、四肢や全身のインピーダンスを確定し、浮腫解析などに使用できるようにすることも可能である。
【0089】
電極を位置決めしたら、第1リード線923A、923B、および第1電極913A、913Bを介して、1または複数の交流信号を被験者Sに印加する。交流信号の性質は、測定装置の性質と、その後に実行する解析とによって異なる。
【0090】
例えば、このシステムは生体インピーダンス解析(Bioimpedance Analysis)(BIA)を使用することができ、そこでは、単一の低周波信号(通常50kHz未満)が被験者S内に注入され、測定されたインピーダンスが細胞内・細胞外の相対体液レベルの評価に直接使用される。これと対照的に、生体インピーダンス分光(Bioimpedance Spectroscopy)(BIS)装置は、非常に低い周波数(4kHz)からより高い周波数(1000kHz)までの周波数を利用し、また、この範囲内の256以上の異なる周波数を用いて、複数のインピーダンス測定をこの範囲内で行えるようにする。
【0091】
したがって、測定装置900は、1つの交流信号を、好ましい実現に応じ、単一周波数で、複数の周波数で同時に、または多数の交流信号を異なる周波数で逐次印加してもよい。印加信号の周波数または周波数範囲も、実行中の解析によって異なってよい。
【0092】
一例では、印加信号は、交流電圧を被験者Sに印加する電圧生成器によって生成される。電圧生成器は電流信号を印加することもできる。一例では、電圧源を、通常、独立制御可能な信号生成器917A、917Bの各々に対し対称的に配列し、被験者にかかる信号電圧を変更し得るようにすることができる。
【0093】
第2電極915A、915B間で電圧差および電流の少なくとも一方が測定される。一例では、電圧は差別的に測定される。つまり、各センサ918A、918Bを使用して、第2電極915A、915Bの各々で電圧が測定される。そのため、シングルエンド型のシステムと比較して、電圧の半分のみの測定で済む。
【0094】
取得した信号と測定した信号は、ECG(心電図)などの人体が生成する電圧と、印加信号が生成する電圧と、環境性の電磁干渉によって生じたその他の信号との重ね合わせになる。そのため、フィルタリングやその他の適切な解析を採用して、望まない成分を除去することができる。
【0095】
取得した信号を復調することで、通常、印加周波数での系のインピーダンスを得る。重畳周波数を復調する1つの好適な方法は、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを用いて時間領域データを周波数領域に変換するというものである。これは、通常、印加電流信号が印加周波数の重畳である場合に用いられる。測定した信号の窓掛けを必要としない別の技法にスライディングウィンドウ(Sliding window)FFTがある。
【0096】
印加電流信号が種々の周波数の掃引によって形成される場合、測定した信号に、信号生成器から導出される基準正弦波および余弦波を乗算し、複数のサイクル全体にわたって積分する処理技法を用いることがより一般的である。このプロセスにより、いかなる高周波応答も阻止され、ランダムノイズが大幅に低減する。
【0097】
当業者には、その他の適切なデジタルおよびアナログ復調技法も見つけるだろう。
BISの場合、インピーダンス測定値またはアドミッタンス測定値を、記録された電圧と電流信号を比較することにより、各周波数の信号から確定することができる。これにより、復調アルゴリズムが各周波数で振幅信号および位相信号を生成することができる。
【0098】
上述の処理の一部として、第2電極915A、915B間の距離を測定し、記録できる。同様に、被験者に関連した他のパラメータ、例えば身長、体重、年齢、性別、健康状態、また、あらゆる干渉物およびそれが生じた日付と時間を記録することもできる。さらに、これ以外にも現在処方されている薬剤などの情報も記録できる。次に、インピーダンス測定のさらなる解析を実行するためにこの記録を使用することで、浮腫の有無またはその程度の確定や、体成分の評価などを行うことができる。
【0099】
インピーダンス測定の精度は多数の外的因子を受ける。これには例えば、被験者と周囲環境との間、リード線と被験者との間、電極間などにおける容量結合の影響が含まれるが、これらの影響は、リード線構造、リード線形状、被験者の姿勢などの因子によって変化する。これに加え、通常、電極表面と皮膚との間の電気接続のインピーダンス(「電極インピーダンス」として周知である)は変化するが、この変化は皮膚湿潤レベル、メラトニンレベルなどの因子に依存する。さらなる誤差要因は、リード線の複数の導体間、またはリード線自体どうしの間における誘導結合の存在である。
【0100】
このような外部因子により、測定プロセスとこれに続く解析に誤りが生じる可能性があるため、測定プロセスへの外的因子の影響を低減できることが望ましい。
起こり得る誤りの1つの形態は、電圧が被験者に非対称にかかることが原因で生じ、この状況は「不平衡」と呼ばれる。こうした状況により、被験者の身体中心での信号電圧が著しく高くなり、被験者の胴体と被験者を支えている支持面との間の寄生容量から浮遊電流が生じる結果となる。
【0101】
被験者の実効中心に対して電圧が非対称にかかる不平衡は、被験者のインピーダンスとは無関連の被験者Sにおける信号の有効な基準である「コモンモード」信号を生じさせる。
【0102】
この影響の低減を助けるには、電圧が被験者の身体中心の周囲に対称的になるように被験者Sに信号を印加することが望ましい。この結果、測定装置の電圧と等しい被験者S体内の基準電圧が、電極の配置位置に対して考えて被験者の実効身体中心に近づく。測定装置の基準電圧は通常「接地」であるため、被験者Sの身体中心が可能な限り接地に近くなっており、これにより被験者胴体にかけての信号全体の大きさが最小化されることで、浮遊電流が最小化する。
【0103】
一例では、対称な電圧源を使用することで、検知電極周囲での対称的な電圧が達成される。このような電圧源は、例えば、各駆動電極913A、913Bに電圧を対称的に印加する、差動双方向電圧駆動スキームである。しかしこれは、2つの駆動電極913A、913Bの接触インピーダンスが一致しない場合や、被験者Sのインピーダンスが身長に沿って変化する場合には(これは実際の環境において通常に起こる)常に有効というわけではない。
【0104】
一例では、装置はこの難点を、異なる電極インピーダンスを補償し、被験者Sにかかる電圧の望ましい対称性を回復するように、各駆動電極913A、913Bに印加された差動電圧駆動信号を調節することによって克服する。ここではこのプロセスを「平衡化」と呼ぶが、一例では、この平衡化はコモンモード信号の大きさを低減する助けとなり、これにより、被験者に関連した寄生容量により生じた電流損失が低減する。
【0105】
検知電極915A、915Bにて信号を監視し、これらの信号を、駆動電極913A、913Bを介して被験者に印加された信号を制御するために使用することで、不平衡の度合いと、必要な平衡化の量とを確定できる。特に、不平衡の度合いは、検知電極915A、915Bで検出した電圧から付加的電圧を確定することで計算できる。
【0106】
1つのプロセス例では、各検知電極915A、915Bで検知された電圧を用いて第1電圧を計算する。これは測定電圧どうしを組み合わせたり加算することで達成できる。したがって、第1電圧が付加的電圧(一般に、コモンモード電圧または信号と呼ばれる)であってよく、これは差動増幅器を使用して確定できる。
【0107】
これに関し、通常、差動増幅器は、第2電圧を求めるために、2つの検知された電圧信号V、Vを組み合わせるべく使用され、一例では、この電圧信号は被験者上の関心ポイントにかかる電圧差分V〜Vである。電圧差分は、インピーダンス値を導出するために、被験者に流れる電流の測定値と共に使用される。
【0108】
しかし差動増幅器は、通常、コモンモード信号の計測である「コモンモード」信号(V+V)/2も提供する。
差動増幅器はコモンモード拒否機能を含むが、これは概して有限的な効果でしかなく、通常は、より高い周波数にてその有効性が低減するため、大きなコモンモード信号は差分信号の上に誤差信号を重ねて生成することになる。
【0109】
コモンモード信号によって生じた誤差は、各検知チャネルを較正することで最小化できる。差動増幅器の両入力が利得特徴と位相特徴において完全に一致し、信号の増幅と共に直線的に動作するという理想的なケースでは、コモンモード誤差はゼロである。一例では、差動増幅器の2つの検知チャネルは、差分処理前にデジタル化される。そのため、各チャネルに較正因子を別々に適用して、両特徴をより高い精度で一致させ、低いコモンモード誤差を達成すれば簡単である。
【0110】
したがって、コモンモード信号を確定して、例えば、印加された信号の相対的な大きさや位相を調整することで、印加された電圧信号が調整され、これにより、コモンモード信号が低減し、あらゆる不平衡がかなり排除される。
【0111】
ここで、これを実行するための図9の装置の動作の一例を、図10を参照しながら説明する。
ステップ1000において、第1信号を被験者Sに印加し、ステップ1010において、第2信号が被験者Sにかけて測定され、確定される。通常、これは上で大要を述べた技術を用いて達成される。したがって、処理システム902は、信号生成器917A、917Bに第1信号を生成させ、通常、この第1信号を、第1電極913A、913Bを介して被験者Sに印加する。同様に、センサ918A、918Bが、第2電極915A、915Bを介し、第2信号を、これが処理システム902に供給された旨の表示と共に検知する。
【0112】
ステップ1020において、処理システム902が、第2電極915A、915Bで検知された第2信号を用いて不平衡を確定し、一例ではこれはコモンモード信号を表す。
ステップ1030において、不平衡を低減し、そしてコモンモード信号の大きさを縮小するために、測定装置が被験者Sに印加された第1信号をオプションで調整する。これにより、第1電極913A、913Bのいずれか一方に印加された信号の大きさを調整でき、これは例えば、相対的な信号の大きさを増減したり、相対的な信号位相を変更したりすることで行え、これによって、被験者体内の信号が平衡化され、電極の位置に関連した被験者体内で基準電圧の位置が中心化される。
【0113】
すると、ステップ1040において、測定装置が被験者に印加された信号と、電極913A、913Bとを確定することができ、これにより、ステップ1050においてインピーダンスが確定される。
【0114】
被験者S内の基準電圧の位置はインピーダンスに依存するので、通常、不平衡は印加信号の周波数に応じて変化する。したがって、一例では、不平衡を画定し、各印加周波数において印加信号を調整することが典型的である。しかし、これは好ましい実現に依存してよい。
【0115】
インピーダンス測定装置を平衡化する手順および演算については、特許文献1でより詳細に述べられているため、ここではこれ以上の詳細な説明を省く。
様々な例において、出願人の示唆は電流伝送回路に関連する。様々な例において、電流伝送回路は入力部と、電流出力部と、電圧出力部とを備える。いくつかの例では、電流伝送回路はその入力部にて電流を受け、これと釣り合った出力電流を電流出力部にて生成する。様々な例において、電流伝送回路は、電流伝送回路の電流出力部に現れる入力電圧信号と釣り合った出力電圧信号を電圧出力部にて生成する。
【0116】
出願人の示唆による様々な例において、電流伝送回路は電流バッファと電圧バッファを備えている。電流バッファおよび電圧バッファの各々は入力部および出力部を設けている。電流伝送回路の入力部は電流バッファの入力部に接続されている。電流バッファの出力部は電流伝送回路の電流出力部に接続されている。電圧バッファの入力部は電流伝送回路の電流出力部に接続されている。電圧バッファの出力部は電流伝送回路の電圧出力部に接続されている。
【0117】
いくつかの事例では、出力電流は入力電流とほぼ同等である。様々な例では、出力電圧信号は入力電圧信号とほぼ同等である。
いくつかの例では、電流バッファは電流コンベアである。いくつかの事例では、電圧バッファは電圧フォロワである。
【0118】
様々な例において、電流伝送回路はさらに、電流バッファ出力部に接続された寄生インピーダンスを備えている。
いくつかの事例では、電流伝送回路は電流バッファ出力部に接続された寄生インピーダンスをさらに備える。いくつかの例では、電流伝送回路はさらに、寄生インピーダンスを補償するための、電圧バッファ出力部と電流バッファ出力部との間に接続された負インピーダンスを備えている。いくつかの例では、負インピーダンスは、補償インピーダンス値を持った補償インピーダンスと、第1端子および第2端子とを備え、この第1端子は電圧バッファ入力部に接続され、負インピーダンスはさらに、補償増幅器入力部と補償増幅器出力部と利得とを設けた補償増幅器を備えており、補償増幅器入力部は電圧バッファ出力部に接続され、補償増幅器出力部は、補償電流をインピーダンスに流れるように提供するために、補償インピーダンスの第2端子に接続されており、利得値と補償インピーダンス値は、補償電流が漏洩電流とほぼ同等の大きさを持つようにするために、寄生インピーダンス値に基づいて選択される。
【0119】
様々な例では、電流伝送回路は、電圧バッファ出力と電流バッファ入力との間に接続された直流オフセット制御回路をさらに備えている。出願人の示唆に従ったいくつかの例では、直流オフセット制御部は、電圧バッファ出力部と電流バッファ入力部との間に接続された積分器を備えている。
【0120】
様々な例では、出願人の示唆は、各々が1つの入力部と複数の出力部とを設けた1または複数の電流マルチプレクサと、1または複数の電流伝送回路とを備えた電流多重化回路に関連している。様々な例では、1または複数の回路マルチプレクサの出力部は、1または複数の電流伝送回路の各々の入力部に接続されている。いくつかの例では、電流多重化回路はさらに、1または複数の電圧マルチプレクサを備えている。1または複数の電流伝送回路の各々の電圧出力部は、1または複数の電圧マルチプレクサの入力部に接続されている。
【0121】
様々な例では、回路はさらに、1または複数の定電流源を備える。様々な例では、各定電流源は1または複数の電流マルチプレクサの入力部に接続されている。
様々な例において、出願人の示唆は電流多重化システムに関連する。様々な例において、電流多重化システムは第1電流伝送回路と第2電流伝送回路とを備える。電流多重化システムはさらに、第1電流伝送回路の電流出力部に接続された第1電極と、第2電流伝送回路の電流出力部に接続された第2電極とを備えている。
【0122】
様々な例では、第1電流伝送回路の電圧出力部は第1電圧マルチプレクサの入力部に接続され、第2電流伝送回路の電圧出力部は第2電圧マルチプレクサの入力部に接続されている。様々な例では、第1、第2電圧マルチプレクサの出力部は、差分電圧測定を可能にする第1、第2電圧測定信号を提供するようになっている。
【0123】
いくつかの例では、第1定電流源は第1電流伝送回路の入力部に接続されている。いくつかの例では、第1定電流源は、交流定電流を提供するように制御可能である。いくつかの例では、交流定電流は定振幅と定位相を持つ。様々な例では、振幅と位相は制御可能に可変である。
【0124】
いくつかの実施形態では、第2電流伝送回路の入力部は接地されている。様々な他の例では、第2電流伝送回路の入力部は第2定電流源に接続されている。様々な例では、第2定電流源は第1定電流源を補完する。ここで用いているように、用語「補完定電流源」は、180°位相シフトした同等の大きさの電流を提供する定電流源である。
【0125】
いくつかの例では、電流多重化システムは1または複数の電流マルチプレクサをさらに備えている。各電流マルチプレクサは、第1電流伝送回路に接続された第1出力部と、第2電流伝送回路に接続された第2出力部とを設けている。いくつかの例では、少なくとも1つの電流マルチプレクサの1つの入力部が第1定電流源に接続されている。いくつかの例では、少なくとも1つの電流マルチプレクサの入力部が第2定電流源に接続されている。いくつかの例では、少なくとも1つの電流マルチプレクサの入力部は接地されている。
【0126】
いくつかの例では、電流多重化システムはさらに、第3、第4電流伝送回路、並びに第3、第4電極を備えている。第3電極は第3電流伝送回路の電流出力部に接続されている。第4電極は第4電流伝送回路の電流出力部に接続されている。
【0127】
いくつかの例では、第3電流伝送回路の電圧出力部は第1電圧マルチプレクサに接続され、第4電流伝送回路の電圧出力部は第2電圧マルチプレクサに接続されている。様々な例では、第1、第2電圧マルチプレクサの出力部は、差分電圧測定を可能にする第1、第2電圧測定信号を提供するようになっている。
【0128】
いくつかの例では、第3、第4電流伝送回路の入力部は接地されている。
出願人の示唆によるいくつかの例では、電流多重化システムは、定電流源、電流マルチプレクサ、電流伝送回路、電極、電圧マルチプレクサを備えている。定電流源は電流マルチプレクサの入力部に接続されている。電流マルチプレクサの出力部は電流伝送回路の入力部に接続されている。電流伝送回路の電流出力部は電極に接続されている。電流伝送回路の電圧出力部は電圧マルチプレクサの入力部に接続されている。様々な例では、電流多重化システムはさらに、電流伝送回路の電流出力部に接続された電極を備えている。
【0129】
当業者には多数の応用形および改良形が明白となるだろう。当業者に明白となるこのような応用形と改良形の全ては、本発明が説明以前に広範囲に表す精神および範囲の内に収まると考慮されるべきである。
【0130】
上述した多種多様な例の特徴は、適宜、互換的な使用または併用が可能である。そのため、例えば、誤差を最小化するために一定範囲の複数の異なる技術について説明したが、これらを、特定の実現においてそれぞれ独立して使用したり併用することができる。
【0131】
さらに、上述の例はヒトのような生体被験者に着目しているが、上述した測定装置および技術は、霊長類、家畜、そして競馬馬のようなパフォーマンスアニマルなどを含む(しかし限定はされない)、あらゆる動物に使用できることが理解されるだろう。
【0132】
上述のプロセスは、浮腫、リンパ浮腫、体成分などを含む(しかし限定はされない)一定範囲の健康状態および病気の有無またはその程度を診断するために使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置を生体被験者と電気的に接続する装置であって、前記装置は信号伝送回路を含み、前記信号伝送回路は、
a)電流バッファを含み、前記電流バッファは、
i)信号源からの信号を受信する電流バッファ入力部と、
ii)前記生体被験者に取り付けた電極に電流を供給する電流バッファ出力部と、を有し、
b)電圧バッファを含み、前記電圧バッファは、
i)前記電流バッファ出力部に接続された電圧バッファ入力部と、
ii)前記電極における電圧を表す電圧信号をセンサに提供する電圧バッファ出力部と、を有する、測定装置を生体被験者と電気的に接続する装置。
【請求項2】
前記電流バッファは電流コンベアである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電圧バッファは出力フォロアとして接続された増幅器である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、前記電圧バッファ出力部と前記電流バッファ入力部との間に接続されたオフセット制御回路を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記オフセット制御回路は、前記電圧バッファ出力部と前記電流バッファ入力部との間に接続された積分器を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記オフセット制御回路は、前記電極において直流オフセットを制御するために使用される、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記信号伝送回路は、前記電圧バッファ出力部と前記電流バッファ出力部との間に接続された負インピーダンス回路を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記負インピーダンス回路は、負インピーダンス回路増幅器と補償インピーダンスを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
寄生インピーダンス損失を補償するために、前記負インピーダンス回路増幅器の利得と、前記補償インピーダンスの値とのうちの少なくとも一方が選択される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記負インピーダンス回路は、
a)補償インピーダンス値と、第1端子および第2端子とを有する補償インピーダンスを含み、前記第1端子は前記電流バッファ出力部に接続されており、
b)補償増幅器入力部および補償増幅器出力部および利得を有する補償増幅器をさらに含み、前記補償増幅器入力部は前記電圧バッファ出力部に接続されており、前記補償増幅器出力部は、前記インピーダンスに流す補償電流を提供するために前記補償インピーダンスの前記第2端子に接続されており、前記利得および前記補償インピーダンスの値は、前記補償電流が漏洩電流とほぼ同等の大きさを有することができるよう、寄生インピーダンス値に基づいて選択される、請求項7〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、
a)複数の信号伝送回路を含み、前記信号伝送回路の各々は、それぞれに対応する、前記生体被験者に取り付けた電極に電流を提供するためのものであり、
b)少なくとも1つの信号源をさらに含み、
c)少なくとも1つの第1マルチプレクサをさらに含み、これは、前記信号源を前記複数の信号伝送回路の1つに選択的に接続して、前記対応する電極を介して生体回路に電流を印加する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、
a)各々が前記電極での電圧を表す電圧信号を提供する複数の信号伝送回路と、
b)少なくとも1つのセンサと、
c)前記少なくとも1つのセンサを前記複数の信号伝送回路のうちの1つに選択的に接続することで、前記センサが前記対応するする電極における電圧を表す前記電圧信号を検知できるようにする、少なくとも1つの第2マルチプレクサと、を含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、対応する第1および第2駆動信号を生成するための第1および第2信号源を含み、前記第1および第2信号源は対応する信号伝送回路に接続されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1および第2信号源は、
a)補信号、
b)定振幅および定位相を有する信号、
c)制御された振幅および位相を有する信号のうちの少なくとも1つを生成する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの信号源は接地されている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記装置は、
a)前記生体被験者に取り付けた駆動電極に電流を供給するための少なくとも1つの信号伝送回路と、
b)検知電極での電圧を表す電圧信号を提供するための少なくとも1つの信号伝送回路と、を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記測定装置は少なくとも1つの信号源と少なくとも1つのセンサとを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記測定装置はインピーダンス測定装置である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
電流多重化システムであって、
a)少なくとも1つの入力部と複数の出力部とを有する複数の電流マルチプレクサを備え、
b)各々が一定の大きさと周波数を有する第1および第2交流定電流源をさらに備え、前記第2定電流源は前記第1定電流源を補完するものであり、前記第1および第2定電流源の各々は電流マルチプレクサの入力部に接続されており、
c)複数の電流伝送回路をさらに備え、前記電流伝送回路の各々は入力部と、電流出力部と、電圧出力部とを有し、前記電流伝送回路の入力部の各々は電流マルチプレクサの出力部に接続されており、
d)複数の電極をさらに備え、前記複数の電極の各々は前記複数の電流伝送回路のうちの1つの電流出力部に接続されており、
e)複数の入力部と少なくとも1つの出力部とを有する少なくとも1つの電圧マルチプレクサをさらに備え、
f)前記各電流伝送回路は、
i)入力部および出力部を有する電流コンベアを備え、前記電流コンベアの入力部は前記電流伝送回路の入力部に接続され、前記電流コンベアの出力部は前記電流伝送回路の電流出力部に接続されており、
ii)入力部および出力部を有する電圧バッファをさらに備え、前記電圧バッファの入力部は前記電流伝送回路の電流出力部に接続され、前記電圧バッファの出力部は前記電流伝送回路の電圧出力部に接続されており、
iii)前記電圧バッファの出力部と前記電流コンベアの入力部との間に接続された積分器をさらに備え、
iv)前記電圧バッファの出力部と前記電流コンベアの出力部との間に接続された負インピーダンス回路をさらに備え、前記負インピーダンスは、
(1)補償インピーダンス値と、第1端子と、第2端子とを有する補償インピーダンスを備え、前記第1端子は前記電流コンベアの出力に接続されており、
(2)補償増幅器入力部と、補償増幅器出力部と、利得とを有する補償増幅器をさらに備え、前記補償増幅器入力部は前記電圧バッファの出力部に接続され、前記補償増幅器出力部は、前記インピーダンスに流す補償電流を提供するべく、前記補償インピーダンスの前記第2端子に接続されており、前記利得値と前記補償インピーダンス値は、前記補償電流が漏洩電流とほぼ同等の大きさを有するように、寄生インピーダンス値に基づいて選択される、電流多重化システム。
【請求項20】
測定装置を生体被験者に電気的に接続する装置であって、前記装置は信号伝送回路を含み、前記信号伝送回路は、
a)第1バッファを含み、前記第1バッファは、
i)信号源からの信号を受信する第1バッファ入力部と、
ii)前記生体被験者に取り付けた電極に駆動信号を供給する第1バッファ出力部とを有し、
b)第2バッファをさらに含み、前記第2バッファは、
i)前記第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、
ii)前記電極での信号を表す検知信号をセンサに提供する第2バッファ出力部とを有する、測定装置を生体被験者に電気的に接続する装置。
【請求項21】
前記第1バッファは電流バッファであり、前記駆動信号は駆動電流である、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記電流バッファは電流コンベアである、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記第2バッファは電圧バッファであり、前記検知信号は前記電極での電圧を表す電圧信号である、請求項20〜22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記第2バッファは電流バッファであり、前記検知信号は駆動電流である、請求項20〜22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
被験者にインピーダンス測定を実行する装置であって、前記装置は、
a)被験者に信号を印加するための信号源と、
b)前記被験者からの信号を検知するセンサと、
c)前記信号源を制御し、前記センサからの信号を受信するための処理システムと、
d)少なくとも1つの信号伝送回路とを含み、前記信号伝送回路は、
i)第1バッファを含み、前記第1バッファは、
(1)信号源からの信号を受信するための第1バッファ入力部と、
(2)前記被験者に取り付けた電極に駆動信号を供給する第1バッファ出力部とを有し、
ii)第2バッファをさらに含み、前記第2バッファは、
(1)前記第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、
(2)前記電極での信号を表す検知信号をセンサに提供する第2バッファ出力部とを有する、被験者にインピーダンス測定を実行する装置。
【請求項26】
前記装置は、
a)前記生体被験者に取り付けた駆動電極に電流を供給する少なくとも1つの信号伝送回路と、
b)検知電極での電圧を表す電圧信号を提供する少なくとも1つの信号伝送回路と、を含む、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記装置は、
a)前記生体被験者に取り付けた駆動電極に接続された第1信号伝送回路を含み、前記第1信号伝送回路は、
i)第1バッファを含み、前記第1バッファは、
(1)前記信号源からの信号を受信する第1バッファ入力部と、
(2)前記駆動電極に前記駆動信号を供給する第1バッファ出力部と、
ii)第2バッファをさらに含み、前記第2バッファは、
(1)前記第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、
(2)前記駆動電極での前記駆動信号を表す検知信号を提供する第2バッファ出力部とを有し、
b)前記生体被験者に取り付けた検知電極に接続された第2信号伝送回路をさらに含み、前記第2信号伝送回路は、
i)第1バッファを含み、前記第1バッファは、
(1)接地した第1バッファ入力部と、
(2)前記検知電極に接続された第1バッファ出力部とを有し、
ii)第2バッファをさらに含み、前記第2バッファは、
(1)前記第1バッファ出力部に接続された第2バッファ入力部と、
(2)前記検知電極で検知した電圧の検知信号を表す第2バッファ出力部とを有する、請求項26に記載の装置。

【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−511299(P2013−511299A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539147(P2012−539147)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001552
【国際公開番号】WO2011/060497
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(505186876)インぺディメッド リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】IMPEDIMED LIMITED
【Fターム(参考)】