説明

患者の睡眠障害の治療のための気道陽圧システム

【課題】 患者の睡眠障害を治療するためのシステムであって、患者が不快感を抱く覚醒時の状態にも対応可能なシステムを提供すること。
【解決手段】 患者の睡眠障害を治療するための気道陽圧システムが説明される。同システムは、ジェネレータ、センサおよび処理装置を備える。ジェネレータは、気流を供給し、患者の気道へ圧力を加える。センサは患者の呼吸パターンに対応するデータを測定する。処理装置は、呼吸パターンを分析して、その呼吸パターンが、患者の次の状態:(i)規則的な呼吸を行っている状態、(ii)睡眠障害を起こしている呼吸の状態、(iii)REM睡眠の状態、(iv)問題のある覚醒状態、の少なくとも一つを示しているかどうかを判断する。処理装置は、患者の状態に相関して加えられた圧力を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学的治療システムに関し、特に睡眠障害を治療するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、成人の1〜5%もが発症しているよく知られた障害である。OSASは、日中における過度の眠気の最も一般的な原因の一つである。OSASは、肥満男性に最もよく起こり、睡眠障害クリニックへ照会する最も多い理由の一つである。
【0003】
OSASは、患者の上気道の解剖学的または機能的な狭窄を有する多くの状態と関連しており、睡眠中に生じる上気道の間欠的な閉塞を特徴とする。この閉塞は、連続呼吸運動にもかかわらず、気流の全欠(無呼吸)から、減少した気流(呼吸低下およびいびき)の有無にかかわらず著しい閉塞までの範囲の呼吸障害を生じる。この症候群の病的状態は、無呼吸状態および睡眠からの覚醒に伴う、血中における酸素の低下や過剰な炭酸、徐脈、および睡眠の中断に起因する。
【0004】
OSASの病態生理は完全に解明されていない。しかしながら、睡眠中の上気道の閉塞は、いくぶんかは、吸気運動により発生する管腔内の陰圧による、呼吸気道における声門上部分の狭窄挙動(collapsible behavior)が原因であることは現在よく知られている。したがって、OSASの患者において、睡眠中の上気道は、ほぼスターリングレジスタ(Starling resistor)(すなわち、気流量が駆動(吸気)圧力に関係なく固定値に限定される)として動作する。その際、部分的または完全な気道の狭窄が、睡眠開始の特徴でありOSASにおいて過剰となる気道音の喪失と共に起こる。
【0005】
1981年以来、睡眠中に装着する密着鼻マスクによって付加される気道陽圧(PAP)は、OSASの最も有効な治療法として発展しており、現在は治療の標準である。非侵襲性の治療形態が利用可能となることにより、OSASは広く知られるようになり、気管切開を恐れて以前は治療を避けていたかもしれない多くの患者が現れてきている。PAPのシステムの快適さを増大することは、その治療に対する患者の柔順性の改善をめざした研究の主要な目的である。
【0006】
PAP治療は、閉塞性睡眠無呼吸、上気道抵抗症候群、いびき、睡眠により誘導される上気道の狭窄の過剰な増大、および、上気道の部分の不適切な狭窄が気流に対する著しい非生理的閉塞を生じるすべての状態を含む閉塞性睡眠時不規則呼吸(OSDB)における治療の主力となっている。このような狭窄は一般に、気道の狭窄可能部分の圧力が、周囲壁内の「臨界組織圧(critical tissue pressure)」と定義されるレベル以下になった時はいつでも生じる。PAP治療は、気道の狭窄可能部分における圧力を常に臨界組織圧またはそれ以上に維持するように行われる。従来のPAP治療においては、患者が装置を装着している間中、患者の気道へ送られる圧力を臨界組織圧よりも高いレベルに上げることによって行われていた。一般的に、PAP治療の必要性は睡眠中に限定される。しかしながら、従来のPAP治療では睡眠/覚醒状態を考慮せず、また、従来のPAPシステムでは患者が覚醒している時でも不必要に加圧していた。加えられた圧力は、定圧あるいは治療の必要性に関して一呼吸ごとに行った測定(breath−by−breath determination)に基づいた圧力である。気道狭窄によるPAP治療の必要性を示す様々な信号からのフィードバックにより、最小圧力を測定するための異なる方法が、病理学的な事象(例えば、無呼吸、呼吸低下、高い気道抵抗を示す他の証拠)に関する認識に基づいて発展してきた。
【0007】
従来のPAP治療の成功にもかかわらず、従来のPAPシステムの使用における制限は、マスクの不快さや無呼吸をなくすために必要とされる圧力等に根差して依然存在している。特に、患者は覚醒時にかけられる高い圧力による不快さを訴える場合が多い。例えば、「ランプ(ramp)」システムを使用して、患者が加圧の開始を動作的に遅らせるが、このシステムは、患者自身がボタンを押して作動させない限りは、夜間患者の覚醒に対して自動的に反応しない。
【0008】
覚醒時における患者の不快さは、規則的な呼吸パターン(例えば、ほぼ一定の呼吸量(breath size)と回数)から、不規則性を有する呼吸パターンへの変化に伴うことが多い。このような不規則なパターン(例えば、単発的な深呼吸、短い中断、規則的なパターンにおいては変化しない呼吸の流れを示す波形における変化)は、気流の軌跡(tracing)のみを検査すると認められ、患者がPAPシステムにより苦痛を感じている場合に発生することが多い。
【0009】
従来のPAPシステムには、加えられた圧力を継続的、かつ自動的に滴定するアルゴリズムを使用しているものもある。これらのアルゴリズムは、呼吸信号から気道の狭窄の証拠を検出すること依存している。しかしながら、従来のPAPシステムのアルゴリズムには、特定の制限がある。例えば、対象が覚醒している場合は、呼吸の不規則なパターンが生じ、対象が不安に感じている場合は、呼吸の不規則なパターンがより生じやすく、加えられた圧力を算定する呼吸信号の処理を妨げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、患者の睡眠障害を治療するためのシステムであって、患者が不快感を抱く覚醒時の状態にも対応可能なシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
患者の睡眠障害を治療するための気道陽圧システムが以下に説明される。同システムは、ジェネレータ、センサおよび処理装置を備える。ジェネレータは、気流を供給し、患者の気道へ圧力を加える。センサは患者の呼吸パターンに対応するデータを測定する。処理装置は、呼吸パターンを分析して、その呼吸パターンが、患者の次の状態:(i)規則的な呼吸を行っている状態、(ii)睡眠障害を起こしている呼吸の状態、(iii)REM睡眠の状態、(iv)問題のある覚醒状態、の少なくとも一つを示しているかどうかを判断する。処理装置は、患者の状態に相関して加えられた圧力を調節する。規則的な呼吸の状態には、患者が無呼吸から開放されて眠っている状態と、くつろいで覚醒している状態とが含まれるが、問題のある覚醒状態では、患者が不安や不快な状態にあり、これが不規則な呼吸の原因となることが、当業者には理解されよう。
【0012】
また、本発明は、患者の睡眠障害を治療するための気道陽圧システムであって、患者の気道へ気流を供給し、かつ、圧力を加えるためのジェネレータと、患者の呼吸パターンに対応するデータを測定するセンサと、患者の呼吸パターンを分析して、検出された呼吸パターンが、(i)患者が規則的な呼吸を行っている状態、(ii)患者が睡眠障害を起こしている呼吸の状態、(iii)患者がREM睡眠期にある状態、および(iv)患者が不快感を覚える覚醒状態のうちの一つを示しているかどうかを判断して、患者の状態に相関して加えた圧力を調整する処理装置とを備え、患者の呼吸パターンが(iv)の状態を示す場合には、前記処理装置は目標となる圧力値を設定して、前記ジェネレータを制御して加えた圧力が目標となる圧力値に近づくように調節することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、患者の呼吸をモニタするためのシステムであって、患者の呼吸パターンに対応するデータを測定するセンサと、患者の呼吸パターンが、患者が不快感を覚える覚醒状態を示しているかどうかを判断する処理装置とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるシステムの一実施例を示す図。
【図2】図1に示すシステムを使用する本発明による方法の一実施例を示す図。
【図3】本発明によるシステムを使用する患者の正常な覚醒状態(例えば、不安な状態ではない)における気流の波形を示す図。
【図4】患者の正常な睡眠状態における気流の波形を示す図。
【図5】上昇する上気道圧力抵抗および呼吸低下を示す睡眠中の患者からの気流の波形を示す図。
【図6】反復的な閉塞性無呼吸状態を示す睡眠中の患者からの気流の波形を示す図。
【図7】問題となる覚醒状態の期間を示す患者からの気流の波形を示す図。
【図8】患者の相動性REMによる不規則な呼吸を伴うREM睡眠の期間を示す患者からの気流の波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、その一部をなすものであり、発明の詳細な説明と共に本発明の実施例を例示し、説明するものである。
図1は、本発明によるシステム1の典型的な実施形態を示す。システム1は、チューブ21を介して連結されたマスク20を備え、同マスクは気流ジェネレータ22から特定の圧力を有する気流を受け取る。患者に供給される圧力量は、患者の症状に相関して変更される。そのような圧力量は、従来技術によるPAP治療方法を使用して測定されてもよい。
【0016】
マスク20は患者の鼻および/または口を覆う。従来の流量センサ23はチューブ21に接続される。センサ23は、患者への/患者からの気流量、および/または、ジェネレータ22から患者に供給される圧力を検出する。センサ23は、ジェネレータ22の内側に設置されても外側に設置されてもよい。気流量および/または圧力に対応する信号が、処理を行うために処理装置24へ供給される。処理装置24は従来の流量制御装置25へ信号を出力して、気流ジェネレータ22によりフローチューブ21に加えられる圧力を制御する。気流ジェネレータ22として使用することができる特定のタイプの気流ジェネレータに対して、異なる流量制御装置25を操作することにより、気流ジェネレータ22からの気流を制御する代わりに、処理装置24が気流ジェネレータ22を直接制御してもよいことは、当業者には認識されるであろう。
【0017】
また、システム1は、連続リークポートまたは他の換気装置28を備えてもよい。換気装置28は、患者の吐出した気流に含まれるガスを入来する気流からそらせて、吐出したガスの再吸入を防止する。
【0018】
図2は、本発明による方法の典型的な実施形態を示す。ステップ202において、患者は顔にマスク20を装着し、気流ジェネレータ22、流量制御装置25、および処理装置24の電源を入れて、システム1を起動する。
【0019】
ステップ204において、システム1は、患者の呼吸パターンをリアルタイムでモニタし始める。このモニタリング処置は、処理装置24により行われ、予め記憶された患者のデータを、流量センサ23により提供される患者への気流および患者からの気流、および/または、加えられた圧力に関する最新のデータと併せて使用する。
【0020】
モニタリング処置において、処理装置24は患者の最新の状態(例えば、患者が眠っている、覚醒中で規則的に呼吸している、あるいは覚醒中で苦痛や不安のために不規則な呼吸をしているかどうか)について測定を行う。このような測定は、多数の異なる測定値に基づいて行われる。例えば、処理装置24は、患者の状態を測定する際に、患者の心拍数、血圧、脳波、呼吸パターン等を分析することが可能である。
【0021】
そのような測定を行う場合に考慮できる患者の呼吸パターンには数多くの特徴が見られる。図3および図4は、PAP治療において患者が安静時に規則的で安定した呼吸を行っていることを示す呼吸パターンである。図3は、安定した覚醒状態(患者は不安も苦痛も感じていない)を示す。図4は、睡眠中の安定した呼吸周期を示し、この周期において患者は正しくPAP治療により治療されている。いずれの場合も、加えられた圧力は、快適さを損なうことなく供給される。加えて、睡眠障害を生じる呼吸の周期があり、この周期においてPAP治療が行われなければならない。睡眠障害を生じる呼吸の指標には、無呼吸(例えば、8−10秒間よりも長い気流ゼロの状態が深呼吸と交互に現れる)、呼吸低下(例えば、気流が周期的に減少し、それが10秒以上続き、深呼吸により終了する)、あるいは、信号の形状が間欠および周期的に変化する期間(例えば、平坦な波形を特徴とし、正常な形状の呼吸により終了する)が含まれる。
【0022】
これとは対照的に、次の典型的な特徴は、患者が覚醒して不安や苦痛を感じていることを示唆している:全くの口呼吸(例えば、患者の鼻からの気流を検出する流量センサ23からの信号が無い);呼気時間が変化する異常な深呼吸;呼吸と呼吸との間の不規則な間隔(ただし、睡眠および高圧の必要性等を示す周期的な無呼吸状態ではない)。図7は、そのような問題となる覚醒状態の周期を示し、その周期における呼吸パターンは、呼吸量および/または回数における不規則な変化、および/または、患者が覚醒し不安または不快に感じていることを示す患者の気流の軌跡示す波形における不規則な変化を示すという特徴がある。しかしながら、無呼吸や呼吸低下が起こっている時に見られるような、呼吸量における周期的な変化(例えば、周期的な不規則さ)がない。患者の快適性を高める方法の一つは、不要な時には加えられた圧力を減少させることである。閉塞性睡眠時無呼吸症の患者は、覚醒時には圧力を全く必要としない。したがって、不規則な呼吸時にマスクに加えられた圧力を低下させることにより、患者が眠りにつくまで患者の快適性を向上させるべきである(例えば、これは、規則性や周期性が回復する点を特徴とするが、無呼吸や呼吸低下として容易に認識されるような定期的な閉塞や、上昇する上気道抵抗とは異なるものである)。
【0023】
上記の呼吸パターンは、呼吸量や、チェーンストーク呼吸および閉塞性無呼吸の他の呼吸形態等に見られる呼気のタイミングにおける緩やかな変化とは異なる。図5は、PAP治療中の患者の呼吸パターンを示し、睡眠中の上気道抵抗の上昇や呼吸低下が発生している。図6は、反復する閉塞性無呼吸に対応する呼吸パターンを示す。両図において、呼吸量および回数の変化は、ゆっくりと発生し、反復的かつ周期的(例えば、定期的に不規則性を示す)である。このような周期においては、加圧が必要であり、あるいは、加えられた圧力を上昇させなければならないが、患者に苦痛を与えるような兆候はない。よって、加えられた圧力を下げてはならない。
【0024】
図8は、REM睡眠期を示す。このような睡眠期は、例えば、正常な睡眠では90分毎に10−30分間現れ、呼吸パターンは、不規則な呼吸を特徴とすることが多い。この呼吸パターンは、不安な状態で覚醒していることを示す不規則性に対する例外を表すと考えられる。しかしながら、このような呼吸を行う場合、患者は眠っており加えられた圧力は維持されなければならない(すなわち、覚醒時におけるように減少させてはならない)。REM睡眠期に見られる不規則性は、幾つかの重要なパラメータにおいて覚醒時に見られる不規則性とは異なる。このREM睡眠に伴う呼吸パターンには、例えば、深呼吸の欠如(特に中断後)、概して高い呼吸数および低い気流量、ならびに浅呼吸の集積が含まれる。呼吸の気流信号のパターンが問題のある覚醒時に見られるパターンとは異なるため、そのような状態を区別して、加えられた圧力を変更することが可能である。
【0025】
また、処理装置24は、各患者のデータを収集し記録する。そのようなデータは、技術者により手動で収集されて入力されてもよく、あるいは、処理装置24により自動的に行われてもよい。例えば、技術者は患者の呼吸をモニタし、同時に患者が覚醒しているかどうか測定してもよい。次に、患者が眠ると、技術者は眠っている患者の呼吸パターンを記録し、処理装置24が後でこのデータを使用して患者が覚醒しているかどうかを判断する場合に使用することができる。患者の呼吸の特徴を記録したデータベースが構築されると、患者の覚醒状態に関する測定が極めて正確に行われる。
【0026】
ステップ206において、処理装置24は、患者の状態に変化があるかどうかを測定する。例えば、処理装置24は、患者が眠っていたが今は覚醒しているかどうか、あるいは、患者が覚醒していたが今は眠っているかどうかを測定する。変化がなかった場合は、処理装置24は継続してモニタリングを行う。
【0027】
患者の状態に変化があった場合、処理装置24は患者の最新の状態に対応する圧力を調節する(ステップ208)。例えば、患者が覚醒しており、呼吸パターンが図7に示すような問題のある覚醒状態の周期を示す場合、処理装置24はその周期中に患者に供給した圧力を減少させる。このように減少させることにより、加えられた圧力が完全に取り除かれる(すなわち、気流ジェネレータ22がマスクを装着した患者へ純圧力(net pressure)を供給しないレベルまで気流量を減少させるが、CO2の増加を防止するために回路を介して換気装置28へ最小限度の気流量を維持する)。あるいは、部分的な減少が行われる(すなわち、気流ジェネレータ22は、患者が眠っている間に発生した気圧の減少した分を維持するために必要な気流量のみを生成する)。
【0028】
これに対して、患者が眠り込んでしまった場合は、処理装置24は流量制御装置25に指示を出して、患者が眠っている間に加えられるレベルまで圧力を上昇させる。例えば、これは、患者の呼吸パターンが図7に示すパターンから図4に示すパターンへ変化した場合に示される。そのような場合は、処理装置24は圧力を増加させなければならない。その時点から、所定の複数の呼吸パターンの一つが検出されるまで、この増加された圧力を減少させてはならない。例えば、処理装置24は、少なくとも同じ圧力を維持しなければならない、あるいは、患者の呼吸パターンが図5に示すような上昇した上気道抵抗や呼吸低下の発生を示す場合は、圧力を増加させることが望ましい。また、圧力は少なくとも同じ値において維持しなければならない、あるいは、患者の呼吸パターンが図6に示すような反復性の閉塞性無呼吸を示す場合は、圧力を増加させることが望ましい。あるいは、患者がREM睡眠期にあることを示唆する不規則な呼吸を行っている場合、患者は睡眠中であり、加えられた圧力は他の睡眠周期と同様のレベルで維持されなければならない(すなわち、覚醒状態と同様に減少させてはならない)。
【0029】
ステップ210において、処理装置24は、システム1を解除する指示が与えられているかどうか判断する。そのような指示がなされている場合(例えば、患者が指定されたボタンを押した、あるいは、設定された時間が過ぎた場合)は、システム1は停止して、モニタリングや気流発生動作を全て終了する。あるいは、システム1はステップ204のモニタリングを継続して行う。
【0030】
本発明によるシステム1の効果の一つは、患者が覚醒して不安を抱いていることを示唆する不規則な呼吸パターンを有している場合、患者へ供給される圧力が調節される(例えば、ゼロ値や事前設定された低いレベルまで減少させる)ことである。呼吸が、規則正しい(例えば、睡眠中を示唆)、あるいは、睡眠障害を起こす呼吸を行っていることを示す場合、圧力は維持されるか増加される。
【0031】
様々な修正や変更が、本発明の趣旨や範囲から逸脱することなく、本発明の構造や方法論において可能であることは当業者には明らかであろう。よって、本発明には、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に含まれる全ての修正や変更が包含されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の睡眠障害を治療するための気道陽圧システムであって、
患者の気道へ気流を供給し、かつ、圧力を加えるためのジェネレータと、
患者の呼吸パターンに対応するデータを測定するセンサと、
患者の呼吸パターンを分析して、検出された呼吸パターンが、(i)患者が規則的な呼吸を行っている状態、(ii)患者が睡眠障害を起こしている呼吸の状態、(iii)患者がREM睡眠期にある状態、および(iv)患者が不快感を覚える覚醒状態のうちの一つを示しているかどうかを判断して、患者の状態に相関して加えた圧力を調整する処理装置とを備え、
患者の呼吸パターンが(iv)の状態を示す場合には、前記処理装置は目標となる圧力値を設定して、前記ジェネレータを制御して加えた圧力が目標となる圧力値に近づくように調節することを特徴とするシステム。
【請求項2】
患者の呼吸パターンが、前記(i)、(ii)および(iii)の状態のうちの一つを示す場合は、前記処理装置は前記ジェネレータの制御を治療用圧力調節装置へ移す請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
目標となる圧力値に達すると、前記処理装置は、患者の呼吸パターンが現在の状態から前記(i)、(ii)および(iii)の状態のうちの一つに変化するまで、加えた圧力を目標となる圧力値に維持する請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記処理装置は、目標となる圧力値に近づくように加えた圧力を所定の増加量に基づいて調節する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記治療用圧力調節装置は、患者の呼吸パターンが前記(iv)の状態を示すまで、前記ジェネレータを制御する請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記治療用圧力調節装置は、自動的に滴定を実施して加えた圧力を調節する請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
患者の呼吸パターンが前記(i)、(ii)および(iii)の状態のうちの一つから(iv)の状態への変化を示すと、前記処理装置は、前記ジェネレータを制御して加えた圧力を減少させる請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
患者の呼吸パターンが前記(iv)の状態から(i)、(ii)および(iii)の状態のうちの一つへの変化を示すと、前記処理装置は、前記ジェネレータの制御を該ジェネレータによって供給される圧力を増加させる前記治療用圧力調節装置へ移す請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
患者の呼吸をモニタするためのシステムであって、
患者の呼吸パターンに対応するデータを測定するセンサと、
患者の呼吸パターンが、患者が不快感を覚える覚醒状態を示しているかどうかを判断する処理装置とを備えるシステム。
【請求項10】
前記センサに結合されて患者の気流を受ける患者インターフェースをさらに備える請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
患者の顔に装着され患者の口および鼻の少なくとも一方を覆うマスクをさらに備える請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記マスクを前記処理装置に接続するためのチューブをさらに備える請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
患者が吐出した気流を再吸入することを防止する換気装置をさらに備える請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
データを記憶するデータベースをさらに備える請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記処理装置は、データを患者の以前の呼吸パターンに対応して記憶されたデータと比較して、前記患者の呼吸パターンが、患者が不快感を覚える覚醒状態を示しているかどうかを判断する請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記処理装置は、患者の呼吸パターンが患者が規則的な呼吸を行っている状態を示しているかどうかを判断する請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
前記処理装置は、患者の呼吸パターンが規則的な呼吸を行っている状態から不快感を覚える覚醒状態へ変化したときを示す請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記処理装置は、患者の呼吸パターンにおいて無呼吸、呼吸低下および反復的な閉塞性無呼吸のうちの少なくとも一つを特定する請求項9に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−162377(P2010−162377A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98012(P2010−98012)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【分割の表示】特願2006−523202(P2006−523202)の分割
【原出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(594032322)ニューヨーク・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】New York University