説明

患者個別による発注予測型在庫管理システム、発注予測型在庫管理プログラム及びその記録媒体

【課題】 薬局の薬品在庫管理について、管理コストを増加させることなく個別的な変動要因や偶発的な変動要因による消化量の変動にも対応可能として、より適切な在庫量に維持できるようにする。
【解決手段】 将来の薬品消化量の予測を行うとともに薬品の発注時期及び発注量を決定するものとした発注予測型在庫管理システムにおいて、薬品在庫管理装置1に、入力装置5a、記憶装置2、薬品消化量予測手段32、薬品発注量決定手段31、出力手段を備え、その記憶装置2において薬品の消化時期及び消化量に関し個別的変動要因となりうる患者ごとの個別情報を記憶する個別情報記憶部24を備えたものとし、個別情報記憶部24から抽出した個別的変動要因による増減分を加味して薬品消化量の予測を行い、この予測した薬品消化量を基に品目ごとに発注日時および発注量を決定するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者個別による発注予測型在庫管理システム、発注予測型在庫管理プログラム及びその記録媒体に関し、殊に、医師が発行した処方箋を受けて調剤を行う薬局において複数種類のデータを基に将来の薬品発注量を予測して、在庫を適切量に管理するための患者個別による発注予測型在庫管理システム、発注予測型在庫管理プログラム及びその記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や診療所などの医療機関で診察を受けた患者は、医師により薬品を処方され院内または院外の薬局で薬品が与えられる。そして、斯かる薬局における薬品の在庫管理は、一般に薬局職員の中で任命された薬品在庫管理担当者が行うことになっているが、斯かる薬品在庫管理業務には多大な労力を費やすことになるため、薬局経営にとってその管理コストが大きな負担となっている。
【0003】
これに対し、特開2002−149819号公報には、医療機関及び調剤薬局における薬品在庫管理システムであって卸業者の担当者がこれらで消化された薬品の払い出し情報を得て、欠品が生じないように医薬品を順次補充するシステムが開示されている。このシステムにより、薬品在庫管理担当者の負担の一部が軽減されるため、その分の労力を他の薬局業務に振り分けることができる。
【0004】
ところが、このように払い出し情報に対応して補充するのみでは、日によって消化量の変動が大きい医薬品について欠品が発生したり在庫が過剰になったりする事態を招いてしまう。この場合、当日に追加発注をかけて対応するのが一般的であるが、斯かる業務は薬品在庫管理担当者および卸業者にとって大きな業務負担となってしまう。そこで、薬品在庫管理担当者または卸の担当者が自己の経験により薬品の消化量を予測して通常の発注量を修正するなどして対応することも考えられる。しかし、薬品消化量の予測を的確に行うことは、実際には容易ではなく正確な予測のための情報収集・分析に多大な労力を要して、管理コストを過剰に高騰させてしまうことに繋がる。
【0005】
従って、余計な管理コストを発生させずに欠品を回避しながら過剰在庫が発生しないように、薬品在庫量を適切に管理できるようにする手段が望まれる。例えば、卸の担当者に薬局の在庫管理業務を実質的に総て任せることも考えられるが、これでは卸担当者の拘束時間が過大となって卸の人的コストの高騰に繋がることから、販売実績の大きな薬局のみが対象となってしまう。しかも、この場合、いきおい自己の販売予算達成のための余分な発注を招いてしまうことに繋がり、薬品在庫を圧縮する目的が達成しにくい。
【0006】
この問題に対し、特開2004−284689号公報には、医療機関または調剤薬局で消化される薬品の時系列的な消化特性から、所定の消化パターンを予測して薬品の補充を自動化し、管理コストを削減しながら適正な在庫管理を実現させるものとした、薬品在庫管理方法及びその装置が記載されている。斯かる手段により、例えば特定の疾患を多く扱う医師の診察日が異なること等による医療機関毎の変動要因も予測に加味することができるため、薬品の消化量予測をより的確に行えるようになる。
【0007】
しかしながら、斯かる統計的予測手段においても、特定の疾患が偶発的且つ短期的に流行するなどの偶発的な変動要因により、特定の薬品について消化量が大きく変動する事態には、適切に対応することが困難である。また、例えば必要最小限の薬品在庫しか置けない比較的小規模の薬局においては、少数の患者における個別具体的な変動要因によっても欠品や過剰在庫を招いてしまう。
【0008】
さらに、たとえ規模の大きな薬局であっても、比較的患者数の少ない疾患用の治療薬や有効期限の短い医薬品については、必要最小限の在庫量で管理することになるため、少数患者の個別的要因でも在庫の過不足を生じやすく適正な在庫管理が困難となりやすい。
【特許文献1】特開2002−149819号公報
【特許文献2】特開2004−284689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、薬局の薬品在庫管理について、管理コストを増加させることなく様々な変動要因による消化量の変動にも対応可能として、より適切な在庫量に維持できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、入力された患者個別による薬品消化データおよび所定の予測用データを用いて、薬品在庫管理装置が将来の薬品消化量の予測を行うとともに薬品の発注時期及び発注量を決定するものとした患者個別による発注予測型在庫管理システムにおいて、
薬品在庫管理装置が、所定のデータを入力するための入力手段、記憶手段、薬品消化量予測手段、薬品発注量決定手段、出力手段を備え、その記憶手段において、薬品在庫情報記憶部に加えて薬品の消化時期及び消化量に関し個別的変動要因となりうる患者個別による個別情報を記憶する個別情報記憶部を備えたものとし、薬品消化量予測手段が個別情報記憶部から抽出した個別的変動要因による増減分を加味して薬品消化量の予測を行い、この予測した薬品消化量を基に品目ごとに発注日時および発注量を決定するものとした。
【0011】
このように、患者個別による個別情報から個別的変動要因を抽出して薬品の消化予測に盛り込むことにより、所定の薬品の消化時期及び消化量をより的確に予測することができ、これを基にきめ細かく修正を加えながら最適な発注量を決定できるようになる。従って、欠品を避けるために必要以上の在庫を置く必要のないものとなり、管理コストを最小限としながら薬品の在庫管理をより適切に行うことが可能となる。
【0012】
また、その個別情報に、所定の患者の前回の処方日時における処方薬の種類または疾患名の少なくとも一方を含むものとし、その薬品消化量の予測において、この処方薬の種類または疾患名の少なくとも一方に対応する特有の薬品処方パターンを参照することにより、この患者の次回の処方日時および処方量を予測することを含むものとする。
【0013】
これにより、薬品在庫管理装置がレセプトコンピュータ、電子薬歴、電子カルテ、オーダーリングシステムなどのデータベースに接続されている場合等において、入力された前回の患者の処方データからその疾患名または処方薬を抽出して、これに対応する疾患特有の処方パターンを参照することにより、この患者に対する次回の処方日時および処方量が比較的容易に推定できるため、その患者に処方する薬品について正確な発注日時・発注量を決定できるようになる。
【0014】
さらに、上述した患者個別による発注予測型在庫管理システムにおいて、その記憶手段に患者が通院する医療機関ごとの所定の情報を記憶する医療機関情報が記憶される医療機関情報記憶部を備えたものとし、薬品消化量予測手段が医療機関ごとの薬品消化量に影響を与える情報を加味して薬品消化量の予測を行うものとすれば、例えば医師の外来予定表データを参照し特定の薬品を多量に処方する医師の診察日を考慮すること等により、薬品の消化量予測がより具体的なものとなる。
【0015】
さらにまた、上述した患者個別による発注予測型在庫管理システムにおいて、記憶手段に所定の薬品の消化に関し偶発的な変動要因となりうる情報が、偶発的変動情報として随時入力・記憶される記憶部を備えたものとして、この偶発的変動情報による増減分を薬品消化量予測手段が加味して薬品消化量の予測を行うものとすれば、突発的な流行により処方薬の消化量が大幅に変動する特定疾患の流行情報を偶発的変動情報として事前に入力しておくことで、斯かる疾患に処方される薬品を適切な時期に適当量確保しておくことができ、入手困難となったり無駄な在庫を抱えたりすることを容易に回避することができる。
【0016】
加えて、この偶発的変動情報に、少なくともインフルエンザの流行予測情報または花粉症などの流行予測情報が含まれるものとすれば、爆発的な流行による品薄の発生で処方薬が確保困難となる前に最適なタイミングで入手しておくことが可能となる。
【0017】
さらに加えて、上述した患者個別による発注予測型在庫管理システムにおいて、その個別情報記憶部に所定の患者個別による電子カルテデータ、電子薬歴データ、レセプトコンピュータデータ、オーダーリングシステムデータなどがリンクまたは収納されており、その患者ごとの来院日時、処方薬の種類及び処方量・日数が時系列的に記録された個別統計データを個別情報として記憶するものとして、薬品消化量予測手段がこの個別統計データを用いて所定の患者における薬品毎の処方日時及び処方量を予測して、個別的変動要因として用いるものとする。
【0018】
これにより、例えば慢性疾患患者が比較的長い間隔をおいて来院して特定の薬品が一度に大量に処方される場合や、同一疾患の複数の患者において特定の薬品の処方日が一致して同日に集中して消化される場合、或いは比較的稀少な疾患の専用薬であって最小限の在庫しか保有できない薬品が重なって処方される場合など、これらの消化時期及び消化量を的確に予測してきめ細かく対応することが可能となる。
【0019】
そして、上述した患者個別による発注予測型在庫管理システムにおいて、その個別情報記憶部の個別情報に、所定の患者の住所または勤務地の少なくとも一方を含む患者地理情報を記憶するものとし、薬品消化量予測手段がこの患者地理情報を個別的変動要因として用い、その患者の住所または勤務地の少なくとも一方と当該薬局の所在地及び他の調剤薬局の所在地との地理的関係から判断して、その患者の次回の来局の有無及び時期を推定するものとすれば、さらに正確な予測を行うことができる。
【0020】
そしてまた、上述した患者個別による発注予測型在庫管理システムにおける薬品在庫管理装置として、入力された薬品消化データおよび所定の予測用データを用いて薬品消化量の予測を実行させるとともに薬品の発注日時及び発注量の決定を実行させるための発注予測型在庫管理プログラムを提供すれば、薬局既設のコンピュータに所定の回線を介してダウンロード等して格納するだけで、上述した薬品在庫管理システムを導入することができ、或いは、この発注予測型在庫管理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として提供すれば、既設のコンピュータにおいて読み取り手段で読み取らせるだけで、容易にこのシステムを導入することができる。加えて、所定のデータを入力するための入力手段として音声データをデジタル化できる音声認識装置を備えた音声入力手段を用いることにより難解な薬剤の入力を容易且つ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
患者ごとの個別的変動要因をはじめとする様々な変動要因を薬品の消化量予測に加味するものとした本発明によると、薬品の消化時期及び消化量に関する予測をより詳細かつ正確なものとして、在庫管理のためのコストを最小限としながら欠品や過剰在庫を有効に回避して、薬品在庫量を適正に維持できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、本発明において、消化日時とは、消化日のみや消化時期のみの場合を含むものとし、発注日時とは発注日のみや発注時期のみの場合を含むものとする。
【0023】
図1は、本実施の形態である患者個別による発注予測型在庫管理システムのシステム構成図および薬品在庫管理装置1の機能ブロック図を示しており、薬品在庫管理装置1はハードディスク等からなる記憶装置2と、CPU等を有する制御装置3と、出力手段としての出力インターフェース4を介して接続された液晶ディスプレイ等の表示装置4aと、入力インターフェース5を介して接続されたキーボードやマウスなどの入力装置(或いは音声入力装置)5aと、を備えた一般的なコンピュータであって、発注予測型在庫管理システムにおける薬品在庫管理装置1として後述する薬品在庫管理方法を実行させるための、発注予測型在庫管理プログラムが記憶装置2に格納されたものである。
【0024】
また、薬品在庫管理装置1には薬品庫端末5bが接続され、薬品在庫量の変動が逐次反映されるようになっているとともに、所定の回線で卸業者内の卸受注装置60に接続されて、制御装置3の指令(出力)により発注を自動的に行い、各薬品の在庫量を所定量に維持するよう薬品の補充を行うようになっている。尚、この発注作業は完全自動で行うもののほか、一回分の発注量を表示装置4aで確認した薬品在庫管理担当者が、最終判断を行ってから手動で発注するようにして、発注内容・量・時期に適宜修正を加えられるようにしてもよい。また、薬品庫端末5bの代わりに、図示しないレセプトコンピュータ、電子薬歴、電子カルテ、オーダーリングシステムなどの入力端末が薬品在庫管理装置1に接続されその各データが入力されるようにし、各入力端末における患者個別による処方量から薬品在庫量を算出するようにしてもよい。尚、各入力端末における入力装置5aとして音声をそのまま薬品在庫管理装置1への入力データに変換可能な音声認識装置を備えた音声入力手段を用いることによりきわめて容易且つ迅速に必要な入力をすることができ、特に、薬剤についての入力データは例えばキーボードなどによる入力が容易でない特異な薬品名や複雑な記号、単位などを必要とするので発音するだけで入力が可能な音声入力手段はきわめて有効である。
【0025】
記憶装置2には、本実施の形態に係る患者個別による発注予測型在庫管理プログラムが格納されているが、これは制御プログラム記憶部21、薬品情報記憶部22、在庫情報記憶部23、個別情報記憶部24、医療機関情報記憶部25を中心に構成している。
【0026】
制御プログラム記憶部21は、本実施の形態に係る患者個別による発注予測型在庫管理システムにおける、薬品在庫管理方法を実行するための制御プログラムの主要部分が記憶されており、薬品消化量予測手段32、薬品発注量決定手段31を動作させるものである。薬品情報記憶部22には、薬品名ごとに適応疾患・一日の投与量・投与期間等の一般的な薬品情報の他に各基準在庫量を記憶しており、これに加えて、緊急安全性情報及びインフルエンザや花粉症などの流行性疾患の予測情報が入力されると、これらを偶発的変動情報として随時記憶するようになっている。
【0027】
在庫情報記憶部23には、薬品ごとに払い出し量(消化量)、補充量(納入量)及びこれから算出される実在庫量が時系列的に記憶されて在庫統計情報として保持されており、実在庫量は薬品庫端末5bとリンクされて実際の薬品在庫量と対照され、必要に応じて修正されるようになっている。
【0028】
個別情報記憶部24には、患者ごとの来院日、薬品処方日、処方薬の種類、一日分投与量及びその日数等の個別情報が時系列的に記録されて、個別統計データとして保持されている。この個別統計データは、薬品在庫管理装置1外部の例えば電子薬歴記憶装置50または図示しないレセプトコンピュータ、電子カルテ、オーダーリングシステム等に接続されることで、その各データベースから入手することにより生成・記憶されるようになっている。これにより、例えば、慢性疾患患者における30日間処方など、比較的処方間隔が長い場合において薬品の処方周期と一回の処方量を統計的に把握することで、将来の処方日・処方量についての予測の確実性を高めることが可能となる。尚、個別情報記憶部24自体が電子薬歴記憶装置50を兼ねたものでもよい。
【0029】
医療機関情報記憶部25には、当該調剤薬局に来局する患者が、通院して薬品を処方される病院または医院の医療機関情報が記憶されており、医療機関ごとに後述する個別情報記憶部24の患者情報とリンクしている。そして、医療機関情報には、例えば医師ごとの診察日、専門、及び処方薬の種類・一日の処方量などの情報が記憶されて随時更新されるようになっており、薬品消化量に影響を与える医療機関側の情報を消化量予測に盛り込めるようになっている。
【0030】
以下に、本実施の形態である患者個別による発注予測型在庫管理システムにおける薬品在庫管理装置1の動作でとしての薬品在庫管理方法について、薬品消化量予測手段32および薬品発注量決定手段31の作動により卸受注装置60に発注を送信(注文)するまでの手順を、図2のフローチャートを用いて詳細に説明する。尚、発注業務のタイミングは基本的に一日一回であり、卸業者の受注時間帯に合わせたタイミングとする。
【0031】
薬品発注量決定手段31は、在庫情報記憶部23の在庫情報を取得し、薬品情報記憶部22の基準在庫量と対照してその差を算出するが、これに薬品消化量予測手段32において在庫情報記憶部23の在庫統計情報及び医療機関情報記憶部25の医療機関情報を用いて通常予測消化量として導いた(B1)データを取り入れて、通常発注量を算出・決定する(A1)。即ち、将来の薬品消化量は統計的なデータを用いてある程度予測可能であるが、これに医療機関個々の事情(例えば医師の診察日による変動分等)に応じて、所定の係数を掛ける等して修正することにより、消化予測の正確性を高めるようにしている。
【0032】
これに加えて、薬品消化量予測手段32において、個別情報記憶部24から患者個々の個別的事情で薬品消化量に影響を与える要因となる、個別的変動情報を取り入れるとともに、薬品情報記憶部22において流行性疾患などの急激な流行及び収束に関する偶発的変動情報があればこれを取り入れて、変動分の係数を掛ける等して薬品消化量の修正予測を行い(B2)、これを基に薬品発注量決定手段31が修正発注量を算出・決定し(A2)、発注指令を行う(A3)。
【0033】
尚、この個別的変動情報には、例えば急性期疾患で短期間に治療が終了して薬品の投与が終了する場合を予測するための情報、或いは慢性期疾患で一回の処方で投与日数が多い場合の次回の処方日と処方量を予測するための情報等が含まれる。即ち、薬品消化量予測手段32が、所定の患者の前回の処方薬の種類または疾患名から所定の疾患を特定することができる。例えば、処方が、(Rp1 PL顆粒 3.0g、 分3 毎食後5日)あればかぜ症候群含むインフルエンザであり、(Rp2 ダンリッチ 2カプセル、分2 朝夕食後 5日)が加えられると鼻炎症状が強いことがわかり、更に(Rp1 ボルタレン25mg 1錠、頓用 1日3回まで)が組み合わされると38℃以上の発熱、咽頭痛、頭痛、関節痛が強い症状であることがわかり、基本的に急性期疾患で短期間に治療が終了することが確認できる。
【0034】
一方、処方が、(Rp1 リマチル100mg 1錠 分1 朝食後 14日)、(Rp1 アザルフィジンEN500mg 2錠 分2 朝夕食後 14日)であれば、慢性関節リュウマチなどの慢性期の疾患であることが判断され、シップ剤などの場合は臨時薬であり、これらの疾患に特有の処方パターンを薬品情報記憶部22から参照することにより、次回の処方日および処方量をより正確に予測できるようになる。
【0035】
さらに、個別的変動情報には、患者の住所または勤務地と当該薬局または他の調剤薬局の場所との関係により、来局に影響する地理的要因に関する患者地理情報等が含まれる。このように、薬品の消化量に対する個別的変動要因をきめ細かく取り込んで、予測消化量を修正して増減することで、薬品ごとにより正確な予測を行うことができるようになる。
【0036】
一方、偶発的変動情報には、インフルエンザの流行予測情報や花粉症流行予測情報等の、流行性疾患の発生・収束に関する予測情報、さらには医薬品に関する緊急安全性情報等が含まれており、これらが随時更新されるようになっている。斯かる情報の更新においては、所定のルートで情報を入手した薬局職員が入力装置5aを用いて手入力する場合の他に、インターネット等の所定の回線を介して製薬会社や卸業者等からダウンロード等されて自動的に更新される等の場合が想定される。一方、医療機関情報についても突発的な休診・休業や医師の異動、或いは医師の学会や長期休暇による診療日の変更等の変動要因も想定されるが、薬局で情報を入手した時点で随時入力・更新するようにしてもよい。
【0037】
さらに、個別情報記憶部24における個別統計データの生成に関し、外部装置である電子薬歴記憶装置50のデータベースにリンクして種々の情報を入手することに代えて、或いは加えて、図示しないレセプトコンピュータシステムや電子カルテシステム、電子訳歴システム、オーダーリングシステム等に接続してこれらのデータを入手し、利用するようにしてもよい。
【0038】
また、薬品消化量の計算は通常、薬品ごとに最小単位で計算し、薬品の発注はこれらの合計による量を所定の包装単位に自動的に換算して行うものとするが、品目により包装単位の大きさを適宜設定しておいて、常に適当な在庫量になるように調整するものとしてもよい。さらに、薬品の発注について、通常の薬品は処方予定日の前日までに発注するものとして在庫を最小限とし、品薄を生じやすい薬品や入手に時間がかかる薬品については、所定日数分余裕をみて発注するように設定しておけば、欠品の発生を有効に回避することができる。
【0039】
尚、本実施の形態の薬品在庫管理装置1は、専用機として導入するものの他、薬局において既設のコンピュータに、上述した発注予測型在庫管理システムにおける薬品在庫管理装置として、その薬品在庫管理方法を実行させるための発注予測型在庫管理プログラムをダウンロードして格納、或いは斯かるプログラムを記憶したCD−ROMなどの記録媒体を読み取って格納、または読み取りながら実行させることで、容易に実施することができ、比較的低コストで本システムを導入することができるものである。また、本実施の形態の発注予測型在庫管理システム及び発注予測型在庫管理プログラムおよびこれを格納した薬品在庫管理装置は、例えば電子薬歴管理のためのシステム、装置、プログラムなど、他の医療機関用管理システム等と一体にして提供することも可能である。
【0040】
以上述べたように、患者の個別的な事情により変動要因となる個別的変動情報と流行性疾患など偶発的な事情により変動要因となる偶発的変動情報を薬品の消化量予測に取り入れた本実施の形態により、従来の薬品在庫管理システムと比べて、より精密な在庫管理を自動的に実施できるようになるため、薬品在庫管理担当者の手間および管理コストを最小限としながら、欠品や過剰在庫を招くことなく薬品在庫量を適正に維持できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明における実施の形態である発注予測型在庫管理システムのシステム構成図。
【図2】図1の薬品在庫管理装置の動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0042】
1 薬品在庫管理装置、2 記憶装置、3 制御装置、4a 表示装置、5a 入力装置、5b 薬品庫端末、21 制御プログラム記憶部、22 薬品情報記憶部、23 在庫情報記憶部、24 個別情報記憶部、25 医療機関情報記憶部、31 薬品発注量決定手段、32 薬品消化量予測手段、50 電子薬歴記憶装置、60 卸受注装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力され患者個別による薬品消化データおよび所定の患者個別による予測用データを用いて、薬品在庫管理装置が将来の薬品消化量の予測を行うとともに薬品の発注時期及び発注量を決定するものとした患者個別による発注予測型在庫管理システムにおいて、
前記薬品在庫管理装置は、患者個別による所定のデータを入力するための入力手段、記憶手段、薬品消化量予測手段、薬品発注量決定手段、出力手段を備えており、
前記記憶手段に、薬品在庫情報記憶部に加えて、薬品の消化時期及び消化量に関し個別的変動要因となりうる患者個別による個別情報を記憶する個別情報記憶部を備えており、前記薬品消化量予測手段が前記個別情報記憶部から抽出した前記個別的変動要因による増減分を加味して前記薬品消化量の予測を行い、該薬品消化量を基に品目ごとに発注日時および発注量を決定するものとされている、
ことを特徴とする患者個別による発注予測型在庫管理システム。
【請求項2】
前記個別情報には、所定の患者の前回の処方日時における処方薬の種類または疾患名の少なくとも一方が含まれており、前記薬品消化量の予測において前記処方薬の種類または疾患名の少なくとも一方に対応する特有の薬剤処方パターンを参照して、前記患者の次回の処方日時および処方量を予測することを含むものとされている、ことを特徴とする請求項1に記載した患者個別による発注予測型在庫管理システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、患者が通院する医療機関ごとの所定の情報を記憶する医療機関情報が記憶される医療機関情報記憶部を備えており、前記薬品消化量予測手段が前記医療機関ごとの薬品消化量に影響を与える情報を加味して、前記薬品消化量の予測を行うものとされている、請求項1または2に記載した患者個別による発注予測型在庫管理システム。
【請求項4】
前記記憶手段は、所定の薬品の消化に関し偶発的な変動要因となりうる情報が偶発的変動情報として随時入力・記憶される記憶部を備えており、前記薬品消化量予測手段が前記偶発的変動情報による増減分を加味して、前期薬品消化量の予測を行うものとされている、ことを特徴とする請求項1,2または3に記載した患者個別による発注予測型在庫管理システム。
【請求項5】
前記偶発的変動情報には、インフルエンザの流行予測情報または花粉症の流行予測情報の少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項4に記載した患者個別による発注予測型在庫管理システム。
【請求項6】
前記患者個別による個別情報記憶部には、所定の患者ごとの電子カルテまたは電子薬歴情報がリンクまたは収納されており、前期患者ごとの来院日時、処方薬の種類及び処方量・日数が時系列的に記録された患者個別による個別統計データを前記個別情報として記憶するものとされ、前記薬品消化量予測手段が前記個別統計データから所定の患者における薬品ごとの処方日時及び処方量を予測して前記個別的変動要因として用いるものとされている、ことを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載した患者個別による発注予測型在庫管理システム。
【請求項7】
前記患者個別による個別情報には、所定の患者の住所または勤務地の少なくとも一方を含む患者地理情報が含まれており、前記薬品消化量予測手段が前記患者地理情報を前記個別的変動要因として用い、前記患者の住所または/及び勤務地と前記薬局の所在地及び他の調剤薬局の所在置との地理的関係から判断して、次回の来局の有無及び時期を推定するものとされている、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載した患者個別による発注予測型在庫管理システム。
【請求項8】
前記薬品在庫管理装置が備えている所定のデータを入力するための入力手段として音声入力手段を用いた請求項1,2,3,4,5,6または7に記載した患者個別による発注予測型在庫管理システム。
【請求項9】
請求項1,2,3,4,5,6,7または8に記載した患者個別による発注予測型在庫管理システムにおける前記薬品在庫管理装置として、入力された前記薬品消化データおよび所定の患者個別による予測用データを用いて前記薬品消化量の予測を実行させるとともに薬品の発注日時及び発注量の決定を実行させるための患者個別による発注予測型在庫管理プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載した発注予測型在庫管理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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