説明

患部保護具

【課題】特に犬や猫等の動物の患部を保護するのに好適な患部保護具を提供する。
【解決手段】動物の患部に薬を塗布した後、包帯等を巻く。そして、更に包帯の上に患部保護カバー10を巻いて患部を保護する。保護カバー10はフィルム状の基材11の外側の面に嫌厭剤層12を有している。嫌厭剤層12は、水溶性材料に苦味又は辛味等の動物の嫌がる味の成分を練り込んで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病気や怪我をした個所(患部)を保護する患部保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
犬又は猫等の動物が病気や怪我をした場合、患部を消毒して薬を塗る等の治療を施した後、包帯を巻いて患部を保護する。しかし、通常、犬や猫等の動物は身体に異物が付着することを嫌がり、包帯を巻いても口でくわえて外そうとする。
【0003】
従来、動物が患部に触れることを防止するために、例えば動物の首にラッパ状のカラーを取り付けることが行われている。また、動物が嫌う味のエキスを含む液体のスプレー缶が市販されており、この液体を包帯に吹き付けることもある(例えば、非特許文献1)。
【特許文献】非特許文献1:ジョンソントレーディング社ホームページ<http://www.johnsontrading.co.jp/products/details/joypet_shitsuke_kajiri.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、首に巻くカラーは、動物の行動や視界を著しく制約することになり、動物が嫌がる。包帯に動物が嫌う味のエキスをスプレーする方法は、成分がすぐに揮発して効果が持続しない。また、犬や猫等の動物は身体が濡れることを嫌がるので、スプレーにより濡れた包帯が身体に付着することを嫌がる。
【0005】
以上から、本発明は、特に犬や猫等の動物の患部を保護するのに好適な患部保護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる患部保護具は、シート状の基材と、前記基材の少なくとも一方の面に付着した嫌厭剤とを有し、前記嫌厭剤は水溶性材料に動物が嫌がる味の成分を混練又は封入して形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、シート状の基材の少なくとも一方の面に、動物が嫌がる味の成分を含む嫌厭剤が付着しているので、動物が患部保護具を外そうとして口にくわえたときに、嫌厭剤から動物の嫌がる味の成分が溶け出し、動物に強い刺激を与える。動物は、この強い刺激を嫌がり、患部保護具を外そうとすることを止める。これにより、患部が治癒するまで、患部を保護することができる。
【0008】
また、嫌厭剤が、水溶性材料に動物が嫌がる味の成分を混練又は封入して形成されているので、動物が嫌がる味の成分が揮発しにくく、効果を長期間にわたって維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る患部保護具を示す斜視図である。本実施形態は、本発明を動物の患部を保護する保護カバーに適用した例について説明する。
【0011】
保護カバー10は、柔軟性を有する樹脂フィルムからなる基材11と、この基材11の一方の面上に付着した嫌厭剤層12とにより構成されている。嫌厭剤層12は、水溶性材料に苦味又は辛味等の動物が嫌う味の成分(以下、嫌厭成分ともいう)を練り込んで形成されている。但し、これらの成分は動物に対し無害であることが必要である。また、対象とする動物によって嫌厭成分が異なるので、対象とする動物に応じて最も適切な嫌厭成分を選択することが好ましい。
【0012】
苦味成分としては、例えばタンニン、カテキン、ポリフェノール、及びデナトニウム等がある。辛味成分としては、例えば硫化アリル及びアリルカラシ油等のアリル化合物、カプサイシン及びピペリン等のアルカロイド、その他ジンゲロールやショウガオール、サンショオール等がある。その他、対象とする動物によっては、強い塩味でもよい。
【0013】
水溶性材料としては、澱粉又はゼラチン等の天然由来の水溶性高分子材料を用いることが好ましい。また、水溶性材料として、例えばポリエチレングリコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。
【0014】
患部保護具10は、犬又は猫等の小型の動物の患部に巻き付けることができるように柔軟性を有することが必要である。そのため、基材11は例えばレーヨン、ビニロン及びポリエステル等の合成繊維からなる布状のものであることが好ましい。
【0015】
図2に、本実施形態の保護カバー10の使用例を示す。なお、以下の例では動物が犬の場合について説明しているが、本実施形態に係る患部保護具を猫又はその他の動物に使用してもよいことは勿論である。
【0016】
まず、図2(a)に示すように、動物の患部に薬を塗り、その上を包帯16で覆う。包帯16の替わりにガーゼ(清浄な布)等で患部を覆うだけでもよく、一方の面側に殺菌したガーゼを付着した粘着テープ(いわゆる絆創膏)により患部を覆ってもよい。
【0017】
次いで、図2(b)に示すように、本実施形態に係る保護カバー10を包帯16の上に巻き、端部を例えば両面テープ等で止める。
【0018】
このようにして、患部を覆う包帯16の上に、本実施形態の保護カバー10を巻き付ける。動物が包帯16を外そうとして保護カバー10に口を触れると、唾液により保護カバー10の嫌厭剤層12から嫌厭成分が溶け出して、動物に苦味又は辛味による強い刺激を与える。動物は、この苦味又は辛味による刺激を嫌がり、保護カバー10に口を触れないようになる。これにより、長期間にわたって患部を保護することができて、動物の病気(炎症等)又は怪我等を治癒することができる。
【0019】
なお、本実施形態では両面テープにより保護カバー10の端部を止めている。例えば片面テープにより保護カバー10の端部を止めることも考えられる。しかし、その場合は片面テープが外側に露出することになり、動物がその片面テープの部分を口にくわえて保護カバー10を外してしまうことが考えられる。従って、上述のごとく両面テープ等を使用して保護カバー10の端部を止めることが好ましい。両面テープに替えて、面ファスナー(いわゆるマジックテープ(登録商標))により保護カバーの端部を止めるようにしてもよい。
【0020】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る患部保護具を示す斜視図である。本実施形態は、本発明を患部保護用のサポータに適用した例を示している。
【0021】
本実施形態のサポータ20は、図3に示すように、伸縮性を有する布を素材として筒状に形成されたものであり、布には水溶性材料に苦味又は辛味成分を練り込んでなる嫌厭剤を含浸させて付着させている。
【0022】
図4は、本実施形態のサポータ20の使用例を示す模式図である。第1の実施形態と同様に患部に薬を塗った後に患部を包帯等で覆い、その上にサポータ20を被せる。本実施形態においても、動物が包帯を外そうとしてサポータ20に口を触れると、唾液によりサポータ20から嫌厭成分が溶け出して、動物に苦味又は辛味による強い刺激を与える。これにより、動物がサポータ20に口を触れないようになり、長期間にわたって患部を保護することができる。
【0023】
本実施形態のサポータでは、動物の種類や使用する個所等に応じて多数のサイズを用意する必要があるが、第1の実施形態の保護カバーに比べて取り付け及び取り外しが容易であるという利点がある。
【0024】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る患部保護具を示す斜視図である。本実施形態は、本発明を包帯に適用した例を示している。
【0025】
図1に示す第1の実施形態では、患部に包帯16を巻いた後、その上に保護カバー10を巻いて動物が包帯を外すことを防止している。これに対し、本実施形態では、包帯30自体に嫌厭剤を含浸して付着させている。嫌厭剤は、第1の実施形態と同様に、水溶性材料に嫌厭成分を練り込んで形成されている。
【0026】
本実施形態においては、患部に薬を塗った後、図6に示すように、患部を覆うように包帯30を巻き、両面テープ又は面ファスナー等で端部を止める。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、動物が口で包帯30を外そうとしたときに、唾液により包帯30から嫌厭成分が溶け出して、動物に強い刺激を与える。これにより、動物は包帯30を外そうとしなくなり、患部を長期間にわたって保護することができる。
【0027】
(第4の実施形態)
図7は本発明の第4の実施形態に係る患部保護具を示す図である。本実施形態は、本発明をガーゼ付き絆創膏に適用した例を示している。
【0028】
本実施形態に係るガーゼ付き絆創膏40は、一方の面側(図7では上側)に粘着剤が付着された粘着テープ(基材)41と、粘着テープ41の一方の面に接合されたガーゼ42とにより構成されている。粘着テープ41の他方の面側には、嫌厭剤層43が設けられている。この嫌厭剤層43は、第1の実施形態と同様に、水溶性材料に嫌厭成分を練り込んで形成されている。また、ガーゼ42には、消毒薬等の薬品が付着している。
【0029】
本実施形態に係るガーゼ付き絆創膏40は、動物の病気又は怪我が比較的軽い場合に患部に貼り付けて使用する。本実施形態においても、動物が口で絆創膏40を外そうとしたときに、絆創膏40の嫌厭剤層43から嫌厭成分が溶け出して動物に強い刺激を与える。これにより、動物が絆創膏40を外そうとしなくなり、患部を長期間にわたって保護することができる。
【0030】
なお、上述した第1〜第4の実施形態においては、いずれも嫌厭成分を水溶性材料に練り込んで基材に付着させているが、水溶性材料により形成したマイクロカプセル内に嫌厭成分を封入して基材に付着させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る患部保護具(保護カバー)を示す斜視図である。
【図2】図2(a),(b)は、第1の本実施形態の患部保護具(保護カバー)の使用例を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に係る患部保護具(サポータ)を示す斜視図である。
【図4】図4は、第2の実施形態に係る患部保護具(サポータ)の使用例を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態に係る患部保護具(包帯)を示す斜視図である。
【図6】図6は、第3の実施形態に係る患部保護具(包帯)の使用例を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の第4の実施形態に係る患部保護具(ガーゼ付き絆創膏)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
10:保護カバー、11:基材、12:嫌厭剤層、16:包帯、20:サポータ、30:包帯、40:ガーゼ付き絆創膏、41:粘着テープ、42:ガーゼ、43:嫌厭剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に付着した嫌厭剤とを有し、
前記嫌厭剤は水溶性材料に動物が嫌がる味の成分を混練又は封入して形成されていることを特徴とする患部保護具。
【請求項2】
前記シート状の基材が伸縮自在の布により筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の患部保護具。
【請求項3】
前記シート状の基材の前記一方の面と逆側の面に粘着剤が付着していることを特徴とする請求項1に記載の患部保護具。
【請求項4】
前記シート状の基材の前記逆側の面の一部にガーゼが付着していることを特徴とする請求項3に記載の患部保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−69271(P2010−69271A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269162(P2008−269162)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(506075160)