説明

情報システム

【課題】車載システムがサーバに接続するまでに要する時間を抑制することのできる「情報システム」を提供する。
【解決手段】、車載システム1にオーディオファイルを転送するダウンロードサーバ216が実装されているホームコンピュータ21は、定期的にダウンロードサーバビーコンをブロードキャスト形式で無線アクセスポイント23が形成する無線LANに送信する。車載システム1のダウンロードクライアント16は、アクセス可能な無線アクセスポイント23が検出されると、その無線アクセスポイント23の無線チャネルによるダウンロードサーバビーコンの受信の有無より、その無線アクセスポイント23からダウンロードサーバ216が利用可能かどうかを判定し、利用可能である場合のみ、無線アクセスポイント23を介してDHCPサーバ22からIPアドレスを取得し、ダウンロードサーバ216にアクセスし、オーディオファイルをダウンロードする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、車載システムに、無線アクセスポイントによって形成される無線LANを介してオーディオファイルなどのデータをダウンロードする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載システムに、無線アクセスポイントによって形成される無線LANを介してオーディオファイルなどのデータをダウンロードする技術としては、ユーザの宅内に配置されたホームサーバから無線LANを介して、自動車に搭載された車載システムにオーディオファイルをダウンロードする技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
ここで、このような車載システムへのオーディオファイルのダウンロードの手順は、無線アクセスポイントが開放されたものである場合(セキュリティで保護されていない場合)、典型的には、以下のようになる。
まず、車載システムは、アクセス可能な無線LANの無線アクセスポイントを探索する。そして、無線アクセスポイントを発見できたならば、無線アクセスポイントを介して無線LANに接続しているDHCPサーバにアクセスし、IPアドレスを取得する。そして、取得したIPアドレスを自身のIPアドレスとして、ブロードキャスト形式でホームサーバの探索メッセージを送信する。ホームサーバは、探索メッセージを受信したならば、自身のIPアドレスの情報などを含む応答メッセージを車載システムに応答する。応答メッセージを受信した車載システムは、応答メッセージで示されるホームサーバの情報を用いてホームサーバにアクセスして、ホームサーバの認証を受け、ホームサーバからオーディオファイルをダウンロードする。
【特許文献1】特開2004-37981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、前述した典型的な手順によって車載システムが無線LANを介してホームサーバに接続する場合、車載システムがアクセス可能な無線LANのアクセスポイントが複数存在する場合には次のような問題が生じる。
いま、図4に示すように、ユーザA宅と、A宅に隣接するB宅に、それぞれホームコンピュータ21とDHCPサーバ22と無線LANを形成する無線アクセスポイント23(AP)からなる宅内システム2が構成されているものとする。そして、A宅のホームコンピュータ21上にユーザAの自動車に搭載された車載システム1にオーディオファイルを転送するホームサーバが構築されているものとする。
【0005】
このような場合において、A宅の駐車場にユーザAの自動車が駐車されると、車載システム1は、アクセス可能な無線アクセスポイント23として、A宅の宅内システム2の無線アクセスポイント23と、B宅の宅内システム2の無線アクセスポイント23との二つの無線アクセスポイント23を検出し、検出した二つの無線アクセスポイント23のいずれ一方の無線アクセスポイント23(一般的には、最も信号受信状態の良い無線アクセスポイント23)に接続することになる。
【0006】
そして、もし、車載システム1が、B宅の宅内システム2の無線アクセスポイント23に最初に接続した場合には、目的とするホームサーバが構築されたホームコンピュータ21に接続するまでに、以下の手順をとる必要が生じる。
すなわち、まず、車載システム1は、B宅の無線アクセスポイント23を介してB宅の無線LANに接続しているDHCPサーバ22にアクセスし、IPアドレスを取得する。そして、取得したIPアドレスを自身のIPアドレスとして、B宅の無線LANにブロードキャスト形式でホームサーバの探索メッセージを送信する。このとき、B宅には目的とするホームサーバが存在しないので、この探索メッセージに対する応答は発生せず、この応答の非発生より車載システム1は、接続している無線LANに目的とするホームサーバが存在しないことを認知する。そこで、車載システム1は、アクセス可能なもう一つのA宅の無線アクセスポイント23を介してA宅の無線LANに接続しているDHCPサーバ22にアクセスし、IPアドレスを取得する。そして、取得したIPアドレスを自身のIPアドレスとして、A宅の無線LANにブロードキャスト形式でホームサーバの探索メッセージを送信する。A宅のホームコンピュータ21上のホームサーバは、この探索メッセージを受信し、応答メッセージを車載システム1に応答する。そして、応答メッセージを受信した車載システム1は、応答メッセージで示されるホームサーバの情報を用いてホームコンピュータ21上のホームサーバに接続する。
【0007】
このように、車載システム1が、目的とするホームサーバが構築されたホームコンピュータ21が接続された無線アクセスポイント23を含む、複数の無線アクセスポイント23に接続可能な場合には、目的とするホームコンピュータ21に接続するまでに、ホームサーバが構築されたホームコンピュータ21が接続された無線アクセスポイント23にのみ接続可能な場合に比べ、より多くの手順と時間を要する可能性がある。
【0008】
すなわち、最大で、(アクセス可能無線アクセスポイント数-1)×(IPアドレスの取得に要する時間+探索メッセージを送信し探索失敗を検出するのに要する時間)が、ホームサーバが構築されたホームコンピュータ21が接続された無線アクセスポイント23にのみ接続可能な場合よりも余分にかかることになる。
【0009】
そこで、本発明は、車載システム1が無線アクセスポイント23を介してサーバからデータをダウンロードする情報システムにおいて、車載システム1がアクセス可能な無線アクセスポイント23が複数存在する場合における、車載システム1がサーバに接続するまでに要する時間を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載された車載システムと、無線アクセスポイントを含んで構成されるLAN上に配置された情報処理装置とを備え、前記車載システムが前記無線アクセスポイントを介して前記LANに接続した情報処理装置にアクセスする情報システムにおいて、前記情報処理装置に、前記LANに繰り返し、当該情報処理装置の存在を示すメッセージをブロードキャスト形式で送信する存在報知手段を設け、前記車載システムに、無線通信によってアクセス可能な無線アクセスポイントを検出する無線アクセスポイント検出手段と、前記無線アクセスポイント検出手段が検出した無線アクセスポイントからの無線通信による前記メッセージのブロードキャスト形式による所定期間内の送信の有無を検出する情報処理装置有無判定手段と、前記情報処理装置有無判定手段が前記メッセージの送信有りを検出した場合に、前記無線アクセスポイントを介して、前記情報処理装置にアクセスするアクセス手段とを備えたものである。なお、無線アクセスポイントを含んで構成されるLANとは、有線LAN区間と無線アクセスポイントが形成する無線LAN区間を含んで構成されるLANであってもよいし、無線アクセスポイントによる無線LAN区間のみで構成されるLANであってもよい。
【0011】
このような情報システムによれば、車載システムにおいて、LAN上に配置された情報処理装置が、前記LANに繰り返し、当該情報処理装置の存在を示すメッセージをブロードキャスト形式で送信するようにし、車載システムにおいて、このメッセージを検出することにより、アクセス可能な無線アクセスポイントが含まれるLAN上に、車載システムがアクセスしようとする情報処理装置が存在するかどうかを判定するようにしたので、車載システムは、LANに接続したり情報処理装置を探索する比較的時間を要する手順を踏むことなく、検出されたアクセス可能な無線アクセスポイントが、情報処理装置を含むLAN上の無線アクセスポイントであるかどうかを、すみやかに判定することができるようになる。したがって、アクセスする情報処理装置が配置されたLANに含まれる無線アクセスポイントと、他の1または複数の無線アクセスポイントの双方にアクセス可能な状況となったときに、アクセスする情報処理装置が配置されたLANに含まれる無線アクセスポイントを速やかに選定し、アクセスする情報処理装置に、より短い時間で接続することができるようになる。
【0012】
すなわち、たとえば、このような情報システムは、前記LAN上に配置された、当該LAN上のアドレスを付与するアドレス付与サーバを備えているものである場合、前記車載システムのアクセス手段において、前記情報処理装置有無判定手段が前記メッセージの送信有りを検出した場合にのみ、前記無線アクセスポイントを介して前記LAN上に配置されたアドレス付与サーバからアドレスの付与を受け、付与されたアドレスを用いて、前記情報処理装置にアクセスするようにしてもよい。この場合、本情報システムでは、車載システムがアドレス付与サーバからアドレスの付与を受ける手順を踏むことなく、検出されたアクセス可能な無線アクセスポイントが、情報処理装置を含むLAN上の無線アクセスポイントであるかどうかを判定することができる。
【0013】
また、以上の情報システムは、前記車載システムのアクセス手段において、前記情報処理装置有無判定手段が前記メッセージの送信有りを検出した場合にのみ、前記無線アクセスポイントを介して前記LAN上に情報処理装置の探索メッセージをブロードキャスト形式で送信し、当該探索メッセージに応答した情報処理装置にアクセスするようにすると共に、前記情報処理装置において、前記LAN上にブロードキャスト形式で送信された前記探索メッセージを受信した場合に、当該探索メッセージの応答を前記車載システムのアクセス手段に送信するものとしてもよい。
【0014】
この場合、本情報システムでは、車載システムがLAN上に探索メッセージをブロードキャスト形式で送信し、その応答からLAN上の情報処理装置の有無を判定する手順を踏むことなく、検出されたアクセス可能な無線アクセスポイントが、情報処理装置を含むLAN上の無線アクセスポイントであるかどうかを判定することができる。
【0015】
なお、以上の情報システムにおいて、前記情報処理装置が、当該情報処理装置にアクセスした前記車載システムにファイルを送信するファイル転送サーバ手段を備え、前記車載システムが、前記アクセス手段がアクセスした情報処理装置のファイル転送サーバ手段から、ファイルをダウンロードするファイル転送クライアント手段を備えたものであってもよい。また、この場合、前記ファイルを、楽曲データを格納したオーディオファイルとし、前記車載システムに、ダウンロードしたファイルに格納した楽曲データを再生するオーディオ再生手段を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、車載システムが無線アクセスポイントを介してサーバからデータをダウンロードする情報システムにおいて、車載システムがアクセス可能な無線アクセスポイントが複数存在する場合における、車載システムがサーバに接続するまでに要する時間を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに、本実施形態に係る情報システムの構成を示す。
図示するように情報システムは、ユーザの自動車に搭載された車載システム1、ユーザの宅内に配置された宅内システム2とを有している。そして、宅内システム2は、ホームコンピュータ21、DHCPサーバ22、無線LANを形成する無線アクセスポイント23とを有し、ホームコンピュータ21とDHCPサーバ22は無線アクセスポイント23に無線LANまたは有線LANを介して接続されている。ここで、ホームコンピュータ21やDHCPサーバ22が有線LANを介して無線アクセスポイント23に接続する場合には、無線アクセスポイント23が形成する無線LANの区間と有線LANの区間を含む一つのLANが形成される。ただし、以下では、一例として、ホームコンピュータ21とDHCPサーバ22は無線アクセスポイント23に無線LANを介して接続しているものとして説明を行う。
【0018】
なお、宅内システム2は、無線LAN上に、ホームコンピュータ21が、インターネットに接続するためのルータなどを備えていてもよい。
ここで、ユーザの車載システム1は、自宅車庫など自宅近傍に自動車が位置するときには、無線アクセスポイント23を介してホームコンピュータ21と通信を行うことができる。
次に、図1bに、車載システム1、ホームコンピュータ21の内部構成を示す。
図示するように、車載システム1は、楽曲データなどのオーディオデータのファイルであるオーディオファイルを記憶するHDD11、HDD11に記憶されたオーディオファイルを再生しスピーカ12に出力するオーディオプレイヤ13、無線LANに無線通通信を介して接続する無線LANインタフェース14、無線LANインタフェース14を介した無線LANとの通信を制御する無線LANドライバ15、ダウンロードクライアント16、以上各部を制御する制御部17とを備えている。
【0019】
次に、ホームコンピュータ21は、楽曲データなどのオーディオデータのファイルであるオーディオファイルを記憶するHDD211、HDD211に記憶されたオーディオファイルを再生しスピーカ212に出力するオーディオプレイヤ213、無線LANに無線通通信を介して接続する無線LANインタフェース214、無線LANインタフェース214を介した無線LANとの通信を制御する無線LANドライバ215、ダウンロードサーバ216、以上各部を制御するサーバ制御部217とを備えている。
【0020】
さて、このような構成において、ホームコンピュータ21のダウンロードサーバ216は、ダウンロードサーバ216の存在を通知するためのメッセージであるダウンロードサーバビーコンを、サーバ無線ドライバ、無線LANインタフェース214を介して、接続している無線LANにブロードキャスト形式で定期的に送信する。ここで、ブロードキャスト形式の送信は、宛先IPアドレスを、255.255.255.255とするか、宛先IPアドレスのホスト部を全て1として送信を行うことにより実現される。
【0021】
以下、このような情報システムの構成において行う、ホームコンピュータ21から車載システム1へのオーディオファイルのダウンロードの動作について説明する。
図2に、車載システム1のダウンロードクライアント16が行うダウンロード処理の手順を示す。ここで、このダウンロード処理は、所定の契機で起動される。この契機は、たとえば、ユーザのダウンロード開始操作の発生や、車載システム1が搭載された自動車の駐車(たとえば、自動車のエンジンオフの発生)の発生や、所定時刻の到来などとすることができる。
【0022】
図示するように、この処理では、まず、無線LANドライバ15からの無線LANアクセスポイントの検出の通知の発生を監視する(ステップ202)。無線LANドライバ15は、無線LANインタフェース14を用いて、無線アクセスポイント23が定期的に送信するビーコンの受信を監視し、受信したビーコンよりアクセス可能な無線アクセスポイント23と、その無線アクセスポイント23が提供するサービスの種類や無線アクセスポイント23が属するBSAのSSIDやESSIDを検出し、ダウンロードクライアント16に通知する。なお、無線LANドライバ15における無線アクセスポイント検出の手法としては、無線LANインタフェース14を介して定期的にプローブを送信し、送信したプローブに対する無線アクセスポイント23からの応答に基づいて、無線アクセスポイント23を検出する手法なども用いることができる。
【0023】
さて、ダウンロードクライアント16は、無線アクセスポイント23の検出が通知されたならば、検出されたn個の無線アクセスポイント23を一つずつ順次処理対象の無線アクセスポイントiとして(ステップ204、214、216、以下の処理を行う。
すなわち、まず、タイマをセットし(ステップ206)、処理対象無線アクセスポイントが使用している無線チャネルの受信を開始する(ステップ208)。そして、ブロードキャスト形式で送信されたダウンロードサーバビーコンの受信の発生か(ステップ210)、ステップ206でセットしたタイマのタイムアウトの発生(ステップ212)を待つ。
【0024】
そして、タイムアウトの発生までに(ステップ212)、ダウンロードサーバビーコンを受信できなかった場合には、この処理対象無線アクセスポイントについての処理を終了し、次の無線アクセスポイント23を処理対象無線アクセスポイントとして(ステップ216)ステップ206からの処理を行う。ただし、検出された全ての無線アクセスポイント23について、ステップ206からの処理を終了している場合には(ステップ214)、ダウンロード処理を終了する。
【0025】
一方、ステップ210において、タイムアウトの発生前に、ダウンロードサーバビーコンを受信できた場合には、ダウンロードクライアント16は、無線LANドライバ15に、処理対象の無線アクセスポイント23が形成する無線LANへの接続を指示し、指示を受けた無線LANドライバ15は、処理対象の無線アクセスポイント23について検出したSSIDやESSIDを用いて、処理対象の無線アクセスポイント23が形成する無線LANに参入して、処理対象の無線アクセスポイント23に接続しているDHCPサーバ22にアクセスし、IPアドレスの割り当てを受ける(ステップ218)。そして、ダウンロードクライアント16は、無線LANドライバ15、無線LANインタフェース14を介して、割り当てを受けたIPアドレスを自身のIPアドレスとして、処理対象の無線アクセスポイント23が形成する無線LANに、ブロードキャスト形式でダウンロードサーバ216の探索メッセージを送信する(ステップ220)。
【0026】
ここで、ホームコンピュータ21のダウンロードサーバ216は、無線LANインタフェース214、サーバ無線ドライバを介して、このブロードキャスト形式で送信された探索メッセージを受信すると、自身のIPアドレスなどを通知する応答メッセージを車載システム1のダウンロードクライアント16に応答する。
【0027】
一方、ダウンロードサーバ216から応答メッセージを受信したダウンロードクライアント16は(ステップ222)、応答メッセージで通知されたIPアドレスをダウンロードサーバ216のIPアドレスとして用いて、ダウンロードサーバ216に接続し(ステップ224)、ダウンロードサーバ216からオーディオファイルをダウンロードする(ステップ226)。そして、ダウンロードが完了したならば、処理を終了する。
【0028】
以上、車載システム1のダウンロードクライアント16が行うダウンロード処理について説明した。
なお、ダウンロードサーバ216は、ダウンロードサーバビーコンにおいてダウンロードサーバ216のIPアドレス等の情報を提示するようにしてもよく、この場合には、以上のダウンロード処理におけるステップ220、222は不要である。
さて、図3は、先に示した図4に示す状況において以上のダウンロード処理によって実現されるダウンロード動作のシーケンス例を示したものである。
すなわち、いま、ユーザA宅と、A宅に隣接するB宅に、それぞれホームコンピュータ21とDHCPサーバ22と無線LANを形成する無線アクセスポイント23からなる宅内システム2が構成されており、A宅のホームコンピュータ21上にユーザAの自動車に搭載された車載システム1にオーディオファイルを転送するダウンロードサーバ216が実装されているものとする。そして、A宅の駐車場にユーザAの自動車が駐車されている状態において、車載システム1のダウンロードクライアント16のダウンロード処理が起動され、車載システム1において、アクセス可能な無線アクセスポイント23として、A宅の宅内システム2の無線アクセスポイント23と、B宅の宅内システム2の無線アクセスポイント23との二つの無線アクセスポイント23が、図3S301、S302のように検出されたものとする。この場合、車載システム1のダウンロードクライアント16は、上述のように、二つの無線アクセスポイント23を順次処理対象無線アクセスポイントとして処理を行うことになるが、ここで、まずB宅の無線アクセスポイント23が処理対象無線アクセスポイントとして選定されたものとする。
【0029】
この場合、車載システム1のダウンロードクライアント16は、B宅の無線アクセスポイント23が使用している無線チャネルの受信を開始し(S303)、この無線チャネルでダウンロードサーバビーコンが受信されるのを監視する。B宅の宅内システム2には、車載システム1にオーディオファイルを転送するダウンロードサーバ216が実装されているホームコンピュータ21は存在しないので、ここでは、タイマのタイムアウトによる、ダウンロードサーバビーコンの未検出が発生する。
【0030】
ダウンロードサーバビーコンが検出できなかった車載システム1のダウンロードクライアント16は、次に、A宅の無線アクセスポイント23を処理対象無線アクセスポイントとして選定し、A宅の無線アクセスポイント23が使用している無線チャネルの受信を開始し(S304)、この無線チャネルでダウンロードサーバビーコンが受信されるのを監視する。ここで、A宅の宅内システム2には、車載システム1にオーディオファイルを転送するダウンロードサーバ216が実装されているホームコンピュータ21が存在し、このダウンロードサーバ216はS321-S324に示すように定期的にダウンロードサーバビーコンをブロードキャストしているので、ここでは、ダウンロードサーバビーコンが検出されることになる。
【0031】
ダウンロードサーバビーコンが検出されたならば車載システム1のダウンロードクライアント16は、A宅の無線アクセスポイント23を介してDHCPサーバ22にアクセスし、IPアドレスの割り当てを受け(S305)、割り当てを受けたIPアドレスを自身のIPアドレスとして、処理対象の無線アクセスポイント23が形成する無線LANに、ブロードキャスト形式でダウンロードサーバ216の探索メッセージを送信することによりダウンロードサーバ216を探索し(S306)、探索されたダウンロードサーバ216に接続して(S307)、ダウンロードサーバ216よりオーディオファイルをダウンロードする(S308-S310)。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように、本実施形態によれば、車載システム1において、LAN上に配置されたホームコンピュータ21で稼働するダウンロードサーバ216が、繰り返し、ダウンロードサーバビーコンをブロードキャスト形式で送信するようにし、車載システム1において、このダウンロードサーバビーコンの受信の有無より、アクセス可能な無線アクセスポイント23にダウンロードサーバ216が接続されているかどうかを判定するようにしたので、車載システム1は、DHCPサーバ22からIPアドレスの割当を受けたり、無線アクセスポイント23が形成する無線LANにブロードキャスト形式でダウンロードサーバ216の探索メッセージを送信し、その応答よりダウンロードサーバ216を検出したりする、比較的時間を要する手順を踏むことなく、検出されたアクセス可能な無線アクセスポイント23が、ダウンロードサーバ216が接続されている無線アクセスポイント23であるかどうかを、すみやかに判定することができるようになる。したがって、ダウンロードサーバ216が接続された無線アクセスポイント23と、他の1または複数の無線アクセスポイント23の双方にアクセス可能な状況となったときに、ダウンロードサーバ216が接続された無線アクセスポイント23を速やかに選定し、ダウンロードサーバ216に、より短い時間で接続することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る情報システムの車載システムが行うウンロード処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る情報システムのダウンロード動作例を示すシーケンス図である。
【図4】複数の無線アクセスポイントに車載システムがアクセス可能な状況を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1…車載システム、2…宅内システム、11…HDD、12…スピーカ、13…オーディオプレイヤ、14…無線LANインタフェース、15…無線LANドライバ、16…ダウンロードクライアント、17…制御部、21…ホームコンピュータ、22…DHCPサーバ、23…無線アクセスポイント、211…HDD、212…スピーカ、213…オーディオプレイヤ、214…無線LANインタフェース、215…無線LANドライバ、216…ダウンロードサーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載された車載システムと、無線アクセスポイントを含んで構成されるLAN上に配置された情報処理装置とを備え、前記車載システムが前記無線アクセスポイントを介して前記LANに接続した情報処理装置にアクセスする情報システムであって、
前記情報処理装置は、
前記LANに繰り返し、当該情報処理装置の存在を示すメッセージをブロードキャスト形式で送信する存在報知手段を有し、
前記車載システムは、
無線通信によってアクセス可能な無線アクセスポイントを検出する無線アクセスポイント検出手段と、
前記無線アクセスポイント検出手段が検出した無線アクセスポイントからの無線通信による前記メッセージのブロードキャスト形式による所定期間内の送信の有無を検出する情報処理装置有無判定手段と、
前記情報処理装置有無判定手段が前記メッセージの送信有りを検出した場合に、前記無線アクセスポイントを介して、前記情報処理装置にアクセスするアクセス手段とを有することを特徴とする情報システム。
【請求項2】
請求項1記載の情報システムであって、
前記LAN上に配置された、当該LAN上のアドレスを付与するアドレス付与サーバを有し、
前記車載システムのアクセス手段は、前記情報処理装置有無判定手段が前記メッセージの送信有りを検出した場合にのみ、前記無線アクセスポイントを介して前記LAN上に配置されたアドレス付与サーバからアドレスの付与を受け、付与されたアドレスを用いて、前記情報処理装置にアクセスすることを特徴とする情報システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の情報システムであって、
前記車載システムのアクセス手段は、前記情報処理装置有無判定手段が前記メッセージの送信有りを検出した場合にのみ、前記無線アクセスポイントを介して前記LAN上に情報処理装置の探索メッセージをブロードキャスト形式で送信し、当該探索メッセージに応答した情報処理装置にアクセスし、
前記情報処理装置は、前記LAN上にブロードキャスト形式で送信された前記探索メッセージを受信した場合に、当該探索メッセージの応答を前記車載システムのアクセス手段に送信することを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の情報システムであって、
前記情報処理装置は、当該情報処理装置にアクセスした前記車載システムにファイルを送信するファイル転送サーバ手段を有し、
前記車載システムは、前記アクセス手段がアクセスした情報処理装置のファイル転送サーバから、ファイルをダウンロードするファイル転送クライアント手段を有することを特徴とする情報システム。
【請求項5】
請求項4記載の情報システムであって、
前記ファイルは、楽曲データを格納したオーディオファイルであり、
前記車載システムは、ダウンロードしたファイルに格納した楽曲データを再生するオーディオ再生手段を有することを特徴とする情報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−352797(P2006−352797A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179667(P2005−179667)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】