説明

情報処理方式

【課題】(1)語学学習の速訳練習システムで、短文課題を蓄積したデータベースの中からユーザーの属性に適合する短文課題を選択する情報処理方式を開発する。
(2)ディスプレー画面上の非英語フォントを明示する情報処理方式を開発する。
【解決手段】(1)各短文課題に、ファジィ化した基本属性(年代、性別など)と時間属性(季節など)と空間属性(地域など)と難度属性を割り当てる。ユーザーにも前記と同一の枠組みで属性を割り当て、独自にメンバーシップ関数を設定する。そして、両者の整合度とユーザーが学習の事中にコンピュータ入力した情報とに基づいて各課題の選択確率を定める。
(2)中国語の場合、ピンインには4種類の声調があるので、各々を異なる色に割り当てる。そして、英語用キーボードの一部に色付加キーを割り当て、これを押した後母音フォントを押すとディスプレー画面で当該色に変色させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短文の速訳に関する学習課題(以後、短文課題または単に課題と呼ぶ)と前記課題に付した属性を記録したデータベースの中から、非決定論的に一課題を選抜する情報処理方式、および、ディスプレー画面上の非英語フォントを見やすく表示したり強調的に表示する情報処理方式に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の情報処理方式では、情報処理技術を援用して短文速訳に関する自律的な語学学習を支援するが、該学習における短文課題の選択論理と文字入力・表示方式に特色をもつ。
語学学習における速訳練習では、母語(元言語)による短文課題を学習者に提示して速やかに訳文を回答させることにより、その実力を高めようとする学習方法がある。従来は、短文課題の提示媒体として、印刷教材を用いることが多かった。しかし印刷教材では、短文課題の提示順序が固定されているので、何度も繰り返し学習すると、多くの学習者が飽きてしまい中断してしまうという欠点が指摘されていた。また、課題の内容が個別の学習者の興味関心や学習者の置かれた状況に無関係に定められていたために、学習意欲の持続が難しいという問題点も指摘されていた。
しかしコンピュータを用いた速訳練習システムでは、多くの短文課題の中から乱数を用いて課題を選抜し提示することができる。つまり、学習者にとって、提示されたある課題に引き続いてどの課題が提示されるかの予測が困難なために、ゲーム感覚が生じやすい。つまり、提示順序の固定化による飽きが生じにくい。ただし、乱数のランダム性を利用しただけでは、学習者や課題の諸属性を考慮した選択を行っていないので、該学習者の興味関心に整合する内容の課題を提示しているとは言えない。
従前にもコンピュータを用いた語学学習が開発されている。しかし、ユーザーの諸属性を考慮したものとは言えない。教材提示論理の工夫よりも、コンピュータのマルチメディア的特色を活かして教材構成したり学習喚起を促すよう工夫したシステムが多い(例えば、非特許文献1,2)。また、学習者と課題の諸属性を考慮した確率的教材提示論理も報告されているが(非特許文献3)、前記論理に学習の事中に提示された課題に対して前記課題の再学習に関する情報を処理する仕組みを加えた教材提示論理は、まだ報告されていない。非特許文献3と本発明の相違点は後に詳述する。
【0003】
一方、短文課題をデータベースに登録する際、英語用アルファベットや発音記号をキーボード入力する。しかし、中国語の発音記号であるピンインや、フランス語とドイツ語で用いるアルファベットの中には、英語フォントの上部(または下部)に独自の線分を付して構成したフォント(特殊フォント)がある。特に、中国語の主母音に対するピンインの表記では、英語用の母音フォント記号に対して、声調すなわち第一声から第四声を区別するイントネーションの付記が不可欠である。前記‘独自の線分’とは、中国語の場合、声調表記に相当する。しかし、元々ピンイン表記が概して小さめに表示されることが多いため、‘独自の線分’がさらに小さく表示されてしまい、声調が一目では区別しにくいということが指摘されていた。別の方法として、‘独自の線分’を用いずに、当該母音フォントの直後に、第一声、第二声、第三声、第四声に対して、それぞれ1,2,3,4の数字を付加するなどの措置が採られることもあった。しかし、前記数字付加の措置も、見易さの点で不都合との指摘がなされていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ma Qing and Kelly Peter(2006): Computer Assisted Vocabulary Learning: Design and evaluation, Computer Assisted Language learning, Vol.19,No.1, pp.15-45.
【非特許文献2】St-Jacques C. and Barriere C.(2005): Search by Fuzzy Inference in a Children’s Dictionary, Computer Assisted Language Learning, Vol.18,No.3, pp.193-215.
【非特許文献3】北垣郁雄(2008):外国語学習に係る速訳用課題提示システムについて、広島大学教育学研究科紀要、第三部(教育人間科学関連領域)第57号、pp.335-340.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、第一に、短文課題データベースの中から一課題を選択する際、
(a)ユーザーにとって、どの課題が選択されるかを予測しにくいこと、
(b)ユーザーの属性と短文課題の属性との整合性と、ユーザーが学習の事中に提示課題の再学習に関してコンピュータ入力した情報とに基づいて、一課題を選択できること、
を可能にする情報処理方式を開発する。
第二に、英語フォントの一部に小さな線分を付した非英語フォントの情報を、英語フォントを利用して表現する方式を開発し、さらに、前記表現方式を可能にする情報処理方式を開発する。
第三に、前記第二の課題に関連し、中国語の声調付きピンインのフォント表示で、声調の区別を強調する情報処理方式を開発する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の課題に関し、前記(a)を実現するアルゴリズムには非決定論的手法を用いる。ここに非決定論的手法とは、過去の状態と現在の状態を未来の状態に論理的に関係づけるものの未来の状態を一義に定めることができない関係的手法を意味する。非決定論的手法には、確率論やカオス理論が含まれる。確率論的手法には、乱数の使用が含まれる。また、前記(b)で述べた属性には、課題とユーザーのいずれにも、基本属性と時間属性と空間属性と難度属性がある。このうち、前3者は、1つ以上の属性で構成されており、いずれも、極力人間の思考判断に近い設定を行えるよう、ファジィ理論におけるメンバーシップ関数に準じた手法を用いて定める。すなわち、一つの属性を特徴づける独立変数をいくつかの区分に分け、各区分に対して[0.0,1.0]の値を設定する。したがって、メンバーシップ関数を区分化して、各区分に数値を与える方式と述べてよい。そこで、本発明における、メンバーシップ関数で特徴づけた属性を、ファジィ属性と呼ぶことにする。例えば、「性別」という属性に対しては、「男」、「女」という2つの区分を設け、いずれに対しても、[0.0,1.0]の数値を与えることができる。したがって、ユーザーの属性とは、ユーザー自身に付随した属性というよりも、如何なる属性の課題に対して提示確率を高めることを希望するかあるいは低めることを希望するかの、いわば提示希望意思の度合を数値で表現したものと述べてもよい。
各課題の属性と該ユーザーの属性は1対1に対応させる。それらを照合し、各課題と該ユーザーとの整合性を求める。その求め方は、以下のようである。
【0007】
第i課題(i=1,…,I)の第j基本属性(j=1,…,JB)に対するメンバーシップ関数を定義する。そのために、前記メンバーシップ関数の独立変数をk個の区分(k=1,…,KB)で表記し、第k区分に対するメンバーシップ関数の値を、s(i,j,k)と表記する。一方、該ユーザーuに関し、第j基本属性の第k区分に対するメンバーシップ関数の値をu(j,k)と表記する。
【数1】

【数2】

前記と同じユーザーuに関し、第j時間属性(j=1,…,JT)の第k区分(k=1,…,KT)の値をuT(j,k)と表記する。第i課題の第j時間属性における第k区分のメンバーシップ関数の値を、sT(i,j,k)と表記する。このとき、ユーザーuのアクセス時間が第k0区分に該当するときは、次式のように設定する。
【数3】

【数4】

前記と同じユーザーuに関し、第j空間属性(j=1,…,JL)の第k区分(k=1,…,KL)の値をuL(j,k)と表記する。第i課題の第j空間属性における第k区分のメンバーシップ関数の値を、sL(i,j,k)と表記する。このとき、ユーザーuのアクセス空間が第k0区分に該当するときは、次式のように設定する。
【数5】

【数6】

【0008】
難度属性は、第i課題の元言語と速訳言語の双方に設定できるようにしてあるものとし、それぞれの値をdA(i)、dB(i)と表記する。一方、ユーザーの設定した難度をdUで表す。dA(i)、dB(i)およびdUのいずれも、[0,1]とする。
このとき、該ユーザーの第i課題に対する全整合度μiを次式で定義する。
【数7】

ここに、
【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

である。数式8は基本的整合度を表す。数式9は時間的整合度を表す。数式10は空間的整合度を表す。数式11は難度的整合度を表す。また数式において、∧、∨は、それぞれ最小値演算、最大値演算を表す。数式7で定義された全整合度のうち、特定の一課題については、該ユーザーの任意で、数式12にしたがって値をある程度増減させることができる。特定の一課題とは、直前に提示された課題(第iC課題)である。すなわち、ユーザーが該課題の再学習を希望するか否かを判断し、必要に応じて、該課題に対する全整合度を若干増減させるという方法を採る。εの値は、システム設計者またはユーザーが設定する。
【0009】
【数12】

全整合度をもとにして、数式13で表現される規格化全整合度を求める。そして、数式13より数式14の確率分布関数Fを求める。
【数13】

【数14】


ここに、
【数15】

である。また便宜上、
【数16】

としておく。そして、乱数の値r0(r0 =[0,1])に対し、
【数17】

となるような第i0課題を選択する。
数式17の不等式において、最左項を下限確率分布関数と呼び、最右項を上限確率分布関数と呼ぶ。以上に述べた手順を、課題選択アルゴリズムと呼ぶことにする。数式7,8,9,10,11で、演算記号∧は最小値演算のかわりにより一般的なt-ノルムを用いてもよい。同じく、演算記号∨は最大値演算のかわりにt-コノルムを用いてもよい。
なお、非特許文献3では、学習の事中に難度を変更できるような学習システムを報告している。そこでの学習課題の提示論理によれば、難度を変更すると、新たな難度との整合性の高い課題の選択確率が高まる傾向を呈する。一方、本発明における数式12では、提示されている課題の再学習を希望するか否かに関するユーザー判断に基づいて前記課題の全整合度を変更しているので、難度変更とは内容を異にする。これらの相違点を具体例で述べるならば、ユーザーが、学習の事中に、ユーザー属性としての難度の値を高めると、高める前の難度よりずっと高い難度を有する課題の提示確率がすべて上がりずっと低い難度を有する課題の提示確率がすべて下がる傾向を呈するのに対し、当該学習課題の再学習を希望すると、その後に前記学習課題が再提示される確率が高まり相対的に前記学習課題以外のすべての課題の提示確率が低まる傾向を呈する。明らかに、難度に関する入力情報と再学習に関する入力情報とは、内容的にも機能的にも異なる。
「発明が解決しようとする第二の課題」のための具体的手段として、中国語の場合は声調と色を対応させ、英語用キーボードの一部のキーを色付加キーに割り当てておく。そして、声調付きピンインフォントをディスプレーさせるときは、当該フォントに対応する英語フォントで表現するとともに、前記英語フォントを当該声調に対応する色に変色させる。フランス語(アクサン・テギュー、アクサン・グラーヴ等)やドイツ語(ウムラウト等)等の場合も、ほぼ同様の方式を採る。
「発明が解決しようとする第三の課題」のための具体的手段として、中国語の場合は声調と色を対応させておく。また中国語用キーボードの一部のキーを色付加キーに割り当てておく。そして、前記中国語用キーボードで声調付きフォントをディスプレーするとともに前記フォントを当該の色に変色させて、声調性を強調するという方法を採る。フランス語やドイツ語の場合もほぼ同様の方法を採る。
【発明の効果】
【0010】
以上に述べたように、本発明は、速訳練習に係る情報処理方式に関し、速訳用短文課題を集めたデータベースの中から一つの課題を選択する際、
(i)ユーザーにとって選択される課題を予測しにくいので、ゲーム感覚が生じやすい、
(ii)ユーザー属性と課題属性との整合性、ユーザーがアクセスした時間属性と課題の時間属性との整合性、ユーザーがアクセスした空間属性と課題の空間属性との整合性、ユーザーが設定した難度属性と課題の難度属性との整合性と、ユーザーが学習の事中に一課題の再選択希望に関してコンピュータ入力した情報に依存して課題を選択するので、ユーザーの状況に適合する課題が選択される可能性が高い、
という性質のアルゴリズムを用いているので、練習効果が大きい。また、中国語をコンピュータ入力するとき、本発明によれば、英語フォントを用いつつ声調を色区別したり中国語声調付きフォントを色区別で強調してディスプレーすることができる。すなわち、ユーザーにとってディスプレー画面上で色で声調区別が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本発明の課題選択アルゴリズムを用いて、課題データベースの中から一つの課題を選択する過程を示した図である。(b)は中国語の各声調と色を対応させた例と、英語用キーボードの一部のキーを色付加キーに割り当てることにより各声調を色変化させた例を示した図である。
【図2】課題データベースの構造を示した図である。(a)は領域に関する構造を示した図である。(b)は主題に関する構造を示した図である。(c)は課題に関する構造を示した図である。
【図3】課題とユーザーの属性の設定例を示した図である。(a)は基本属性の設定例である。(b)は時間属性の設定例である。季節、昼夜についてはコンピュータの内部タイマーを利用する。(c)は空間属性の設定例である。地域については、GPS等の測定装置を用いて自動的に設定するか、ユーザー自身が設定する。(d)は難度属性である。
【図4】図1の課題選択アルゴリズムの部分だけを表形式にまとめ直した図である。
【図5】一つの課題がデータベース内でどのような構造であるかを示した図である。
【図6】ユーザーの立場から見たときに、本システムがどのような画面を順次提示するかを示した図である。
【図7】短文課題と訳文の一正解が提示された時点での画面表示例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
「発明が解決しようとする課題」の一番目の実施形態に関し、既述の課題選択アルゴリズムを、図1で説明する。
[s01]は、課題データベースである。前記データベースには、速訳のための課題文が含まれている。課題データベースは、ルートディレクトリの下に「領域」という階層を設け、さらにその下に、「主題」という階層を設ける。詳細な構造は、のちの図2に示すとおりである。課題データベースには、課題[s02]と前記課題に対応する課題属性[s03]が記録されている。課題属性として、4つの属性[s04]、すなわち、基本属性と時間属性と空間属性と難度属性が記録されている。
[s07]は、ユーザーデータベースである。前記データベースには、速訳練習を行うユーザーの情報が含まれている。ユーザーデータベースには、ユーザー[s08]に対応するユーザー属性[s06]が記録されている。ユーザー属性には、課題属性と同じ構造を持たせる。ユーザーに関する時間属性に対する値の設定では、内部タイマー[s15]を利用してアクセス時間を用いる。ユーザーに関する空間属性は、GPS等[s16]、ユーザーの居場所を特定する装置を利用して自動設定するか、あるいはユーザーが各自の判断で設定してもよい。後者の場合は、空間属性は基本属性の一部とみなしても差し支えない。
【0013】
[s14]は、課題選択アルゴリズムの中核部分である。[s10]では、課題属性[s03]とユーザー属性[s06]を照合して基本的整合度(数式8)と時間的整合度(数式9)と空間的整合度(数式10)と難度的整合度(数式11)を求める。次に、前記4種類の整合度を用いて全整合度[s11] (数式7)を求め、さらに全整合度を規格化した規格化全整合度(数式13)を求める。その際、ユーザー[s08]がユーザーボタン[s09]を用いて課題選択に関してコンピュータ入力した情報を参照し、それに基づいて特定の課題に対する全整合度をある程度増減させることができる(数式12)。規格化全整合度をもとにして、確率分布関数[s12](数式14)を求める。数式14より当該課題に対する下限/上限確率分布関数を求める(数式17)。そして、乱数[0,1]を発生させ、数式17の条件に基づいて、ユーザーが予め設定した「主題」の中に存する課題の中から一つの課題を選択する[s17]。
図2は、課題データベースの構造を示したものである。図(a)は領域テーブルであり、各言語で表された一つの領域名に対応して一つの領域キーが付されている。図(b)は主題テーブルであり、各言語で表された一つの主題名に対応して一つの主題キーが付されている。図(c)は課題テーブルであり、課題キーがどの主題キーの範囲内のものであるかを示している。一つの課題キーに含まれる情報は、のちの図5に示す。
【0014】
図3は、課題属性の設定例を示している。図(a)は基本属性の例(年代、性別など)であり、図(b)は時間属性の例であり、図(c)は空間属性の例である。いずれも、属性ごとに、区分の設定例を示している。図(d)は難度属性であるが、区分はもたせずに、難度自体を数段階で設定するようにしている。
図4は、図1の課題選択アルゴリズム[s14]の中の[s10]と[s11]と[s12]に示された諸変数の関係を表にして示したものである。課題キーごとに、基本属性と時間属性と空間属性と難度属性のそれぞれについて該ユーザーとの整合度を求め、前記整合度を情報集約して全整合度を求め、前記全整合度から規格化全整合度を求め、前記規格化全整合度から下限/上限確率分布関数を求めるという関係を示している。
図4では、課題総数を100と仮定している。図4では、規格化全整合度が表中に示した数値であると仮定して、この値をもとに数式17に示した下限確率分布関数と上限確率分布関数を求めている。この状態において、乱数rの値r0が、0.18であったと仮定する。すると、課題キー0005の下限/上限確率分布関数がそれぞれ0.10、0.19であり、0.10と0.19が0.18を挟んでいるので、課題キー0005が選択される。ユーザーが、もし学習の途中で図3の(ユーザーに関する)基本属性の値を変更したときは、改めて図4を再計算して下限/上限分布関数を求め直す。
【0015】
図5は、一つの課題キーのもつ情報を表している。フィールド1には課題キーが記録されている。フィールド2は前記課題を含む主題のキー記号を表している。フィールド3は元言語に対応する画像を表示するか否かの情報を表す。フィールド4は速訳言語に対応する画像を表示するか否かの情報を表す。フィールド5は元言語に対応するヒントを表示するか否かの情報を表す。フィールド6は速訳言語に対応するヒントを表示するか否かの情報を表す。フィールド8には日本語で表現された速訳用課題文が記録されている。フィールド7は前記速訳用課題文がどのような背景で述べられたものであるかの状況を説明する文が記録されている。フィールド10には日本語音声で表現された速訳用課題文のパス情報が記録されている。フィールド9は前記速訳用課題文がどのような背景で述べられたものであるかの状況を説明する日本語音声のパス情報が記録されている。フィールド11には日本語課題文と日本語状況説明文に関係のある画像情報のパス情報が記録されている。フィールド12には日本語によるヒントが記録されている。フィールド13には日本語課題文に対する発音記号が記録されている。フィールド14には日本語課題文の速訳的難しさが[0,1]の数値で記録されている。フィールド15以降には、8フィールドごとに、フィールド7〜フィールド14と同じ情報が外国語で記録されている。
【0016】
図6は、ユーザーから見た本速訳練習システムの進行手順を示している。[s41]は初期ステップである。新規ユーザーの場合は、初期ステップにて新規登録を行い、既登録者の場合は、Loginを行ったり、登録抹消を行うことができる。[s42]は言語を選択するステップであり、元言語と速訳言語を選択する。[s43]は、ユーザーがユーザー属性を登録したり変更したりするステップである。 [s44]は、ユーザーが、あらかじめ用意されたいくつかの「領域」の中から一つの「領域」を選択するステップである。[s45]は、ユーザーが、前記選択領域に対してあらかじめ用意されたいくつかの「主題」の中から一つの「主題」を選択するステップである。ユーザーが[s45]にて一主題を選択すると、システムは前記図4の手法によって一つの課題を選定し、元言語にて画面提示する[s46]。
【0017】
本システムでは、自律学習を意図している。したがって、学習者であるユーザーは、画面提示された課題を速訳し、その後一正解を画面表示させることにより自分の回答を自己評価する。画面提示された課題が難しすぎると感じたり易しすぎると感じたときは、パスして次の課題を提示することもできる。図6にて、パスして次の課題を提示させたいときは、「次の課題[s48]」を選択する。課題を音声にて提示させたいときは、「課題音声[s49]」を選択する。一正解を表示させたいときは「文字回答[s52]」を選択する。一正解を音声にて提示させたいときは「音声回答[s53]」を選択する。その後、次の課題を提示させたいときは、「次の課題[s48]」を選択する。提示された課題の再学習を希望するために提示課題の提示確率を高めたいときは、「再学習希望[s50]」を選択する。これにより、当該課題の全整合度が数式7で再計算される。提示された課題の再学習を希望しないことをコンピュータに知らせるために提示課題の提示確率を低めたいときは、「再学習希望せず[s51]」を選択する。領域を変更したいときは、「領域選択[s54]」を選択する。主題を変更したいときは、「主題選択[s55]」を選択する。ユーザー属性を変更したいときは、「属性変更[s56]」を選択する。ユーザーの希望する難度を変更したいときは、「難度変更[s57]」にて所望の変更を行う。学習を終了したいときは、「Logout[s58]」を選択する。
【0018】
図7は、一課題に対する一つの正解が表示されたときのコンピュータ画面表示例を示したものである。[s86]のアンダーライン部が速訳のための課題文である。前記課題文に対する状況説明文が[s81]のアンダーライン部である。[s82]のアンダーライン部がヒントである。[s83]のアンダーライン部が一正解である。学習上発音記号を必要とするような言語の場合は、「発音記号」と書かれた部分の右側に表示される。元言語画像情報と速訳言語画像情報の表示位置は、それぞれ[s84]、[s85]である。既述の図6[s48]〜[s58]は、それぞれ図7[s87]〜[s97]に対応する。
本システムは、携帯型PCやスマートフォンを使用すれば、ローミング機能を用いて海外でも使用でき、外国語環境下での当該外国語学習が可能になる。
【0019】
「発明が解決しようとする課題」の二番目の実施形態は次のようである。本課題は、課題データベースへの多言語登録において、発音記号や課題文の入力を容易にするために、(c)英語フォントの一部に線分を付した非英語フォントの情報を、英語フォントを利用して表現する方式を開発し、さらに、(d)前記表現方式を可能にする情報処理方式を開発することである。
(c)を解決するために、コンピュータの表示画面での色表示が印刷教材より容易に行えるという性質を利用する。具体的には、所望の非英語フォントを表示するかわりに、英語フォントまたは前記英語フォントのバックグラウンドに色を付すことにより、色付き英語フォントが、英語フォントの一部に線分を付した非英語フォントを意味するよう、ルールを設ける。いま、中国語を採り上げるものとすると、ピンインでの声調を表現する場合は、例えば、図1(b)の枠内に示したように、第一声〜第四声に対して、それぞれ、青、赤、紫、緑を一対一に割り当てるというルールを設ける。図(b)に記載した「基」、「和」、「紫」、「介」を表すピンインには、それぞれ第一、二、三、四声による主母音を含むが、前記の方法により、それぞれ、図(b)の右側に示すように、青色の’i’、赤色の’e’、紫色の’i’、緑色の’e’と、色付き英語フォントで表す。
【0020】
英語フォントの入力で、前記英語フォントに色を付すことを容易にするため、図(c)に示す色付加キーを具備したキーボードを開発する。[s26]は英数字と特殊記号のキーであり、[s27]はテンキーであり、[s28]〜[s32]はファンクションキーである。そして、[s28]〜[s32]を色付加キーとして使用し、例えば、[s28]に青、[s29]に赤、[s30]に紫、[s31]に緑、[s32]に茶、・・・などと割り当てる。色付加キーを押した後にアルファベットキーを押したとき、最初のアルファベットを当該色で表示させるようにする。色付加キーを押したままアルファベットキーを押すと、その間に押されたアルファベットキーのすべてを当該色で表示させるようにするという方法もある。前記方法に加えて、BG(バックグラウンド)キーを割り当てるという方法もある。例えば、コントロールキーをBGキーに割り当てて、BGキーと色付加キーを同時押した後、アルファベットキーを押すと、最初のアルファベットのバックグラウンドが当該色で塗られるようにするという方法もある。
図1(c)の[s20]は、課題制作画面である。そして、[s20]の画面内の「回答文」に対する「発音記号」で、[s21](第三声)、[s22](第四声)、[s23](第三声)、[s24](第一声)、[s25](第二声)の英語母音フォントに対しては、色付加キーを用いて、それぞれ、紫、緑、紫、青、赤で着色する。
「発明が解決しようとする課題」の三番目の実施形態は、次のようである。本課題は、前記第二の課題に関連し、中国語の声調付きピンインで、声調の区別を強調する情報処理方式を開発することである。
そのために、中国語用キーボードで、あらかじめ、声調付きフォントと色との対応をコンピュータ登録しておく。実際の運用では、通常のピンイン入力操作を行うことにより、声調付き簡体字フォントや声調付き繁体字フォントまたは前記声調付き簡体字フォントのバックグラウンドや前記声調付き繁体字フォントのバックグラウンドが、自動的に当該色で画面表示されるようにしておけばよい。
【符号の説明】
【0021】
s01:課題データベース
s02:課題
s03:課題属性
s04:(課題の)基本属性、時間属性、空間属性、難度属性
s05:(ユーザーの)基本属性、時間属性、空間属性、難度属性
s06:ユーザー属性
s07:ユーザーデータベース
s08:ユーザー
s09:ユーザーボタン
s10:基本的整合度、時間的整合度、空間的整合度、難度的整合度
s11:全整合度
s12:下限/上限確率分布関数
s13:乱数
s14:課題選択アルゴリズム(の中核部分)
s15:内部タイマー
s16:GPS等
s17:選択された課題
s20::課題制作画面
s21:主母音’o’(紫色)
s22:主母音’i’ (緑色)
s23:主母音’e’ (紫色)
s24:主母音’i’ (青色)
s25:主母音’e’ (赤色)
s26:英数字/特殊文字キー
s27:テンキー
s28:色付加キー1
s29:色付加キー2
s20:色付加キー3
s31:色付加キー4
s32:色付加キー5
s41:初期画面
s42:言語選択画面
s43:属性設定画面
s44:領域の設定画面
s45:主題の設定画面
s46:短文提示画面
s47:ボタン選択
s48:「次の課題」ボタン
s49:「課題音声」ボタン
s50:「再学習希望」ボタン
s51:「再学習希望せず」ボタン
s52:「文字回答」ボタン
s53:「音声回答」ボタン
s54:「領域選択」ボタン
s55:「主題選択」ボタン
s56:「属性変更」ボタン
s57:「難度変更」ボタン
s58:「Logout」ボタン
s81:状況説明文
s82:ヒント
s83:正解文
s84:元言語画像情報
s85:速訳言語画像情報
s86:課題文
s87:「次の課題」ボタン
s88:「課題音声」ボタン
s89:「再学習希望」ボタン
s90:「再学習希望せず」ボタン
s91:「文字回答」ボタン
s92:「音声回答」ボタン
s93:「領域選択」ボタン
s94:「主題選択」ボタン
s95:「属性変更」ボタン
s96:「難度変更」ボタン
s97:「Logout」ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習課題と前記学習課題に付されたファジィ属性とを記録したデータベースにおいて、
前記データベースに記録された学習課題のファジィ属性と前記データベースのユーザーが設定したファジィ属性との整合性と、
前記学習課題のファジィ時間属性と前記ユーザーがアクセスした時間との整合性と、
前記学習課題のファジィ空間属性と前記ユーザーの存する空間との整合性と、
前記学習課題の難度属性と前記ユーザーが設定した難度との整合性と、
前記ユーザーに提示された学習課題の再学習に関して前記ユーザーがコンピュータ入力した情報と、
に基づいて、データベースの中から一学習課題を非決定論的に選抜し画面表示する情報処理方式。
【請求項2】
コンピュータ画面上に表示するフォントの位置を、あらかじめ設定したフォントと色との対応関係に基づいて色表示させる情報処理方式。
【請求項3】
色付加キーを具備したキーボードで、前記色付加キーを押した後にアルファベットキーを押すと、最初の一文字のフォントの位置を前記色付加キーに付された色に変色させ表示する情報処理方式。
【請求項4】
色付加キーを具備したキーボードで、前記色付加キーを押しながらアルファベットキーを押すと、当該アルファベットのフォントの位置を前記色付加キーに付された色に変色させ表示する情報処理方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−176236(P2010−176236A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16102(P2009−16102)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)