説明

情報処理装置、情報処理方法、及び、コンピュータプログラム

【課題】整合性を持った適正在庫の評価基準に基づいた複数製品間の在庫調整を可能にすることを目的とする。
【解決手段】製品の欠品リスクを示す利益及び在庫リスクを示す在庫増加額とから製品の評価指標である管理キャッシュフローを算出する算出手段と、管理キャッシュフローを少なくとも含む製品を分類するための分類条件を設定する分類条件設定手段と、分類条件に従って製品が分類されるカテゴリ、及びカテゴリの在庫調整の優先度とを対応付けて記憶する記憶手段と、分類条件に従って、製品の属するカテゴリを決定する在庫評価手段と、在庫評価手段で決定されたカテゴリと、記憶手段に記憶されているカテゴリと在庫調整の優先度の対応情報に従って、複数の製品の在庫調整の優先度を決定する決定手段と、決定手段で決定された優先度に従って複数の製品の在庫調整を行う在庫調整手段とを備えることによって課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数製品間の在庫調整の支援を行うための情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に在庫管理は、企業の保有する資産、資金調達、資金回収、リスク度合い等の総合的な財務能力より上限値を決定する総枠管理方式と、製品個別の在庫適正量を定め管理する単品管理方式と、の2つに大別される。
総枠管理方式では、保有する在庫金額の上限値設定等の総枠は、経営者が事業状況により判断する等管理者の意思で決定するのが一般的で、年間計画、四半期毎の計画見直し等ローリングが行われる。
【0003】
単品管理方式では、各製品別に過去の需給に関する数量データを基に統計的な在庫管理手法を用いて、所与のサービス水準を満足する適正在庫量を定めることが可能である。統計的な在庫管理手法は、欠品リスクを所与の許容欠品率になるように在庫量をコントロールする技術であり、非特許文献1に詳細が記述されている。非特許文献1に記述されている技術は、ある製品の欠品リスクが時期に関して一定になるように、在庫量を適正化することを狙いとした技術である。
【0004】
また、販売機会損失(機会損失)を意味する欠品リスク以外に、余剰な在庫をもつことによるコスト増を意味する在庫リスクも存在する。欠品リスクと在庫リスクとを考慮した上で在庫量を適正化する技術が、特許文献1に記述されている。
【0005】
在庫管理において、総枠管理、単品管理の双方を組み合せるのが一般的であり、総枠に収まるように各製品の在庫量の調整を行う必要が生じる。
総枠から各製品への配分は、各製品を扱う組織間での調整を円滑に進める観点より、売上規模や製品一律等で配賦する方法や、製品の中で、在庫金額が大きいもの、調達期間が短いもの等、在庫を調整する上で余裕が大きい製品を抽出し配分する等が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−279013号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「適正在庫の考え方・求め方」勝呂隆男著、日刊工業新聞社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の方法で総枠管理と単品管理とを行う場合、以下の課題がある。
(1)適正在庫の評価基準に整合性が無い
(2)複数製品間の調整が最適化されていない
例えば在庫金額の総枠削減が必要となった場合に、総枠管理の観点で、単純に在庫金額の大きい成否により優先的に削減を行ったと仮定する。すると、削減対象となった製品のサービス水準だけが、強制的に下げられてしまい、サービス水準を一定に維持する単品管理の狙いと矛盾が生じる。
これは、総枠管理と単品管理とで適正在庫の評価基準に整合性が無いために生じる矛盾であり、適正在庫の評価基準に整合性が無いために、複数製品間の調整の最適化も行われていないことを意味している。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、整合性を持った適正在庫の評価基準に基づいた複数製品間の在庫調整を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明にかかる情報処理装置は、複数の製品間の在庫調整を行う情報処理装置であって、前記製品の欠品リスクを示す利益及び在庫リスクを示す在庫増加額から前記製品の評価指標である管理キャッシュフローを算出する算出手段と、前記管理キャッシュフローを少なくとも含む前記製品を分類するための分類条件を設定する分類条件設定手段と、前記分類条件に従って前記製品が分類されるカテゴリ及び前記カテゴリの在庫調整の優先度を対応付けて記憶する記憶手段と、前記分類条件に従って、前記製品の属するカテゴリを決定する在庫評価手段と、前記在庫評価手段で決定されたカテゴリと、前記記憶手段に記憶されているカテゴリと、在庫調整の優先度の対応情報とに従って、前記複数の製品の在庫調整の優先度を決定する決定手段と、前記決定手段で決定された優先度に従って前記複数の製品の在庫調整を行う在庫調整手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、情報処理方法、プログラム及び記憶媒体としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、整合性を持った適正在庫の評価基準に基づいた複数製品間の在庫調整を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】在庫評価調整システムのシステム構成及び機能構成の一例を示す図である。
【図2】サーバ3のハードウェア構成の一例を示した図である。
【図3】在庫調整に係る全体処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】データ処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】上位システムデータの項目の一例を示す図である。
【図6】実績計画データ20の一例を示す図である。
【図7】在庫評価処理の結果の一例を示す図である。
【図8】アラート製品の改善処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】ログイン画面の一例を示す図である。
【図10】認証データ23の一例を示す図である。
【図11】メイン画面の一例を示す図である。
【図12】改善計画画面の一例を示す図である。
【図13】金額情報、誤差情報、評価指標、アラートの算出方法の一例を示す図である。
【図14】抽出(検索)後の画面の一例を示す図である。
【図15】詳細情報表示画面の一例を示す図である。
【図16】在庫調整データの一例を示す図である。
【図17】複数製品間の在庫調整による改善処理の一例を示す図である。
【図18】在庫調整画面の一例を示す図である。
【図19】在庫調整結果の承認処理の一例を示すフローチャートである。
【図20】在庫評価処理の一例を示すフローチャートである。
【図21】カテゴリの算出方法の一例を示す図である。
【図22】在庫調整処理の概念図である。
【図23】在庫調整処理の一例を示すフローチャートである。
【図24】在庫戦略の一例を示す図である。
【図25】在庫量と機会損失込管理CFとの関係を示す図である。
【図26】適正在庫算出方法の一例を示す図である。
【図27】適正在庫算出処理の一例を示すフローチャートである。
【図28】機会損失利益算出の概念図である。
【図29】数式(1)の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
<実施形態1>
本実施形態の狙いは、総枠管理と単品管理との間で整合性を持った評価指標を用いて製品全体の在庫水準の最適化を図ることである。
まず評価指標の考え方を説明する。
一般的な単品管理の手法である統計的な在庫管理手法では、製品毎のサービス水準を定め適正在庫量を算出することが可能であるが、あくまで個々の製品のサービス水準を維持することを狙いとした技術である。それに対して、経営的な観点から行われる総枠管理では、在庫量ではなく、事業の収益性の維持・拡大に必要な在庫水準を定めることで、数量ではなく収益性の観点から在庫水準を管理することが求められている。
そこで、両者の整合性をもった評価指標として、キャッシュフロー(以下、CFという)に着目した管理を考える。CFの増大に貢献する製品とCFを悪化させる製品とで適正な在庫水準は異なると考え、CFを悪化させている製品の適正水準を低く抑えることで、製品全体のCFの最大化を狙う考え方である。
【0016】
また、一般的に在庫責任を持つ部門(在庫管理部門)と販売責任を持つ部門(販売部門)とは異なる。在庫管理部門では過剰在庫によるキャッシュフロー悪化リスク(以下、在庫リスクという)、販売部門では欠品による機会損失による収益悪化リスク(以下、欠品リスクという)という対立するリスクが存在しており、両リスクの調和を図る必要がある。
上述のように単品管理と総枠管理、在庫リスクと欠品リスクについて整合性を持った管理が求められている。そこで、単品管理と総枠管理、在庫リスクと欠品リスクについて整合性を持った管理を狙いとした指標として管理キャッシュフロー(以下、管理CFという)を定義する。
管理CF = 利益 − 在庫増加額
【0017】
管理CFは、総枠管理で求められる事業収益の維持・拡大や欠品リスクの視点を表す利益と、在庫リスクを表す在庫増加額と、により構成されるものである。欠品を恐れて過剰な在庫をもつと、在庫増加額が増加するため管理CFは小さくなり、機会損失が発生すると利益が伸びず管理CFが小さくなる。また管理CFは金額であるため、複数の製品間で事業への貢献度を容易に測ることが可能な指標である。
管理CFは製品の収益の絶対額を意味するため事業への貢献度を図るのに適しているが、CFの絶対額が小さくても高い収益率で販売されている製品もあるため、例えば、効率を表す在庫回転指標等と組み合わせて製品間の在庫水準の管理を行うとより効果的である。
【0018】
次に製品全体の在庫水準の最適化の考え方について説明する。
上述の管理CFや在庫回転、利益等の一つ、又は複数の評価指標を組み合わせた次元上で領域の区分化を行い、各区分の特性に応じて在庫水準の適正化基準を設定する。このことで、その基準を基に各製品の改善の必要性の優先度の判定が可能となり、より適正な区分に位置するような在庫計画の改善を行うことで、全製品の在庫水準の最適化を図ることができる。この区分を以下、カテゴリという。
以下、本実施形態の構成と処理の流れについて説明する。
なお、以下、月次で製品別の在庫計画を作成している場合を用いて説明を行うが、在庫計画の作成期間は、週次、日次等でも勿論構わない。
【0019】
図1は、本願発明のシステム構成及び機能構成の一例を示す図である。
図1に示したように、クライアント端末11と、クライアント端末12と、本願発明の情報処理装置(コンピュータ)の一例であるサーバ3とが、LAN等のネットワークを介して相互に通信可能に接続されたシステム構成となっている。
クライアント端末1は、キーボードやマウスによるサーバ3への要求入力及びサーバ3からの応答表示を行うことができる。
サーバ3では、在庫評価調整システム9と上位システム4とが動作しており、クライアント端末11からの要求入力を受けつけ、在庫評価調整システム9における処理を行い、クライアント端末1への応答を行うことができる。
なお、クライアント端末1と、サーバ3とは、それぞれ複数台存在してもよい。また、在庫評価調整システム9と上位システム4とは異なるサーバ3で稼動してもよい。
【0020】
次に、在庫評価調整システム9の機能構成について以下で説明する。
データ表示・出力制御部10は、認証制御部11、パラメータ設定制御部12、承認制御部13、リスト表示部14、計画表示部15、集計表示部16等のインターフェースを提供する。ここで、パラメータ設定制御部12は、在庫評価調整部24で使用する各種パラメータを設定する。また、承認制御部13は、見直しを行った在庫計画の承認を制御する。
データ処理部17は、在庫管理、販売管理等を行う上位システム4より、入出在庫実績データ5、入出在庫計画データ6、販売利益実績データ7、製品マスタデータ8を取得し、データ群18へ格納する。データ群18には、製品マスタ19、実績計画データ20、在庫評価データ21、在庫調整データ22、認証データ23が含まれる。
在庫評価調整部24は、管理CFカテゴリ判定、アラート判定等を算出する在庫評価部25と、製品間の入庫・在庫を管理CFが最大となるように自動配分を行う在庫調整部26とから構成される。
【0021】
図2は、在庫評価調整システム9として機能するサーバ3のハードウェア構成の一例を示した図である。図2において、CPU201は、システムバス212に接続された各デバイスを統括的に制御する。RAM202は、CPU201の主メモリ、ワークエリア、一時退避領域等として機能する。ROM203は、ブートプログラムが記憶されている。
入力制御部204は、キーボードやマウス等のポインティングデバイスで実現される入力部205からの入力を制御する。また、表示制御部206は、CRTモニタや液晶モニタ等で実現される表示部207による表示を制御する。外部メモリ制御部208は、外部メモリ209へのアクセスを制御する。外部メモリ209は、CPU201の制御プログラムであるオペレーションシステム(OS)や、サーバ3を在庫評価調整システム9として機能させるためのプログラム、上記各種データベース(DB)、ファイル、アプリケーション、マスタファイル、ユーザファイル等を記憶する。また、外部メモリ209は、更に、サーバ3の機能を実現するために必要なデータ群18等を記憶する。なお、外部メモリ209としては、ハードディスク(HD)やフレキシブルディスク(FD)、PCMCIAカードスロットにアダプタを介して接続可能なコンパクトフラッシュ(登録商標)やスマートメディア等が挙げられる。また、本実施形態における処理又は機能は、CPU201により、外部メモリ209に記録されているプログラムが必要に応じてRAM202にロードされ、実行されることによって実現される。
通信I/F制御部210は、LANやインターネット等のネットワーク211を介して外部機器とサーバ3との通信制御処理を実行する。
【0022】
図3は、在庫調整に係る全体処理の一例を示すフローチャートである。本処理は、外部メモリ209に記憶されている、情報処理装置を在庫評価調整システム9として機能させるためのプログラムによる制御に従って、サーバ3のCPU201によって行われる処理である。以下、処理主体を在庫評価調整システム9(もしくは在庫評価調整システム9の各機能部)と記載している場合には、情報処理装置を在庫評価調整システム9(もしくは在庫評価調整システム9の各機能部)として機能させるためのプログラムによる制御に従ってサーバ3のCPU201が処理を行っていることを意味する。
ステップS1において、在庫評価調整システム9は、上位システム4よりデータを取得する。ステップS1の処理の詳細は、後述する図4に示す。なお、ステップS1に処理は、通常、月次、週次、日次等の在庫計画を作成するタイムバケットに合わせて実施される。ステップS2において、在庫評価調整システム9は、後述する図11に示される画面等において、ハンド調整ボタン41が押下されたか否かを判定する。在庫評価調整システム9は、ハンド調整ボタン41が押下されたと判定すると、手動での在庫調整の実行開始が指示されたと判断し、ステップS3に進み、ハンド調整ボタン41が押下されていないと判定すると、ステップS4に進む。
ステップS3において、在庫評価調整システム9は、アラート製品の改善処理を実行する。ステップS3の処理の詳細は、後述する図8に示す。
【0023】
ステップS4において、在庫評価調整システム9は、後述する図11に示される画面等において、自動調整ボタン42が押下されたか否かを判定する。在庫評価調整システム9は、自動調整ボタン42が押下されたと判定すると、自動での在庫調整の実行開始が指示されたと判断し、ステップS5に進み、自動調整ボタン42が押下されていないと判定すると、ステップS6に進む。
ステップS5において、在庫評価調整システム9は、複数製品間の在庫調整による改善処理を実行する。ステップS5の処理の詳細は、後述する図17に示す。
ステップS6において、在庫評価調整システム9は、例えば、承認の申請要求等を受け取ったか否かを判定する。在庫評価調整システム9は、承認の申請要求等を受け取ったと判定すると、ステップS7に進み、承認の申請要求等を受け取っていないと判定すると、ステップS2に進む。
ステップS7において、在庫評価調整システム9は、在庫調整結果の承認処理を実行する。ステップS7の処理の詳細は、後述する図19に示す。
【0024】
図4は、図3のステップS1に示すデータ処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS10において、データ処理部17は、上位システムデータの取得を行う。図5は、上位システムデータの項目の一例を示す図である。データ処理部17は、入出在庫実績データ5、販売利益実績データ7、入出在庫計画データ6より在庫評価に必要なデータを取得する。より具体的に説明すると次のとおりである。
データ処理部17は、入出在庫実績データ5からは、入庫量、出庫量、在庫量を取得し、販売利益実績データ7からは、入庫額、出庫額、在庫情報の一例である在庫額、利益情報の一例である利益額、原価額、利益率を取得する。但し、利益額、原価額、利益率には夫々に関係式があるため、データ処理部17が取得する項目は一部の項目だけでもよい。また、出庫誤差率は、入出在庫計画データ6の出庫量(計画値)と入出在庫実績データ5の出庫量(実績値)とを基に上位システム4が統計的に処理し、算出したものである。なお、データ処理部17は、上位システム4から出庫誤差率を取得しないで過去の実績計画データ20を蓄積しておき、蓄積したおいたデータを基に算出してもよい。より具体的に説明すると、データ処理部17は、過去の実績計画データ20における出庫量の計画値と現在の実績計画データ20における出庫量の実績値とに基づいて出庫誤差率を算出する。
更に、データ処理部17は、入出在庫計画データ6からは、入庫量、出庫量、在庫量を取得する。入庫量、出庫量、在庫量は
在庫量= 前回の在庫量 + 入庫量 − 出庫量
の関係が成り立つ。このため、入庫量、出庫量、在庫量のすべてを取得せずに一部を取得して、取得しなかったものについては計算で求めても勿論良い。
【0025】
次にステップS11において、データ処理部17は、実績計画データ20への格納を行う。図6は、実績計画データ20の一例を示す図である。ここで、データ処理部17は、ステップS10で上位システム4より取得したデータを基に、図6に示す実績計画データ20へ、製品別、在庫計画作成バケットを意味する年月別に、数量情報、金額情報、誤差情報を格納する。
なお、計画部分の金額情報は、例えば実績値が将来も同様に発生すると解釈すれば、データ処理部17が、実績値の原価額、利益率を基に算出することが可能である。同様に誤差情報も、実績値を用いることでデータ処理部17が算出することができる。
次にステップS12において、在庫評価調整部24は、在庫評価処理を行う。ここでは、在庫評価調整部24は、実績計画データ20を用いて評価指標の算出とアラート判定(アラートの抽出)とを行う。なお、在庫評価処理の詳細は後述する図20に示す。
次にステップS13において、データ処理部17は、在庫評価調整部24による在庫評価処理の結果を在庫評価データ21へ格納する。
【0026】
図7は、在庫評価処理の結果の一例を示す図である。在庫評価データ21は、実績計画データ20の各レコードに1対1で対応するヘッダ情報、評価指標情報(評価指標)、アラート判定情報(アラート判定)等から構成される。
在庫評価データ21の評価指標の項目としては、例えば、在庫評価調整部24が在庫回転日数等の在庫量に着目した効率性を示す指標やキャッシュフロー等の収益性に着目した指標等を算出しこれらの評価指標を基に在庫水準の管理区分を定めたカテゴリが用いられる。また、後述する図13に示されるように、アラート判定の項目としては、例えば、カテゴリ悪化等、ユーザによる対策の必要性を示す項目等がある。
評価指標やアラート判定の定義や種類は、特にこれらに限定されるものではないが、以下、評価指標については上述の管理CFと在庫回転日数とを用いて説明する。
【0027】
図8は、アラート製品の改善処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS20において、データ表示・出力制御部10は、認証情報の取得を行う。図9は、ログイン画面の一例を示す図である。図9に示すログイン画面は、クライアント端末1において在庫評価調整システム9の起動入力が行われ、サーバ3において起動処理及びクライアント端末1への画面表示応答が行われ、クライアント端末1において表示された画面である。クライアント端末1とサーバ3との間の通信、連携は以降も同様のため、今後は単にサーバ3内部における処理のみを記述する。
【0028】
データ表示・出力制御部10は、ログインボタン33の押下を検出すると、ユーザID欄31とパスワード欄32とに入力された内容(情報)を取得する。また、データ処理部17は、図10の認証データ23を取得する。図10は、認証データ23の一例を示す図である。なお、認証データ23は、例えば外部メモリ209等に記憶されている。データ表示・出力制御部10は、認証データ23に、取得したユーザIDとパスワードとが登録されていれば、図11のメイン画面をクライアント端末1に表示する。図11は、メイン画面の一例を示す図である。このログイン処理は、実際には、図3のステップS2の前に行われることになる。
【0029】
データ表示・出力制御部10は、認証データ23から更に権限を取得し、権限が担当であれば担当モード、権限が承認者であれば承認者モードで図11のメイン画面を開く(クライアント端末1に表示する)。このように権限に応じてモードを分ける理由は、1つには承認者と担当とでは業務の内容が異なること、2つには両業務は同一ユーザが実施できないためである。ここでは権限が担当であったとして処理を説明する。承認者モードの処理については後述する図19において説明する。
【0030】
ステップS21において、データ表示・出力制御部10は、アラート改善要求の取得を行う。より具体的に説明すると、ハンド調整ボタン41の押下を検出する(この処理は図3のステップS3に該当する)と、データ表示・出力制御部10は、図12の改善計画画面を表示部207に表示させる。図12は、改善計画画面の一例を示す図である。対象製品範囲欄55には、認証データ23から取得したユーザの担当事業を列挙表示し、チェックボックスにて選択が可能となっている。また、承認確認ボタン60は承認者のみ使用可能なため、ここでは押下不可となっている。
【0031】
ステップS22において、データ表示・出力制御部10は、対象時期、対象製品範囲、対象アラート情報を取得する。これらの情報はアラートの絞り込みに利用される。データ表示・出力制御部10は、検索ボタン59の押下を検出するとステップS22の処理を開始する。データ表示・出力制御部10は、対象時期を対象時期欄58から取得する。対象時期は通常当月が指定されているが、将来時期が指定されていてもよい。その場合、データ表示・出力制御部10は、ステップS23で将来時期におけるアラートを抽出する。
【0032】
対象製品範囲は、製品区分により指定されてもよいし、製品IDのリストにより指定されてもよい。データ表示・出力制御部10は、前者の場合、対象製品範囲欄55から、後者の場合、製品コード欄57から、対象製品範囲情報を取得する。対象アラート情報は、データ表示・出力制御部10が製品コード欄57から取得するアラートの種別により指定される。アラートの種別としては、カテゴリ悪化、重点製品、滞留在庫、自動調整あり、等の種別が有効である。カテゴリ悪化や滞留在庫は、製品の収益性悪化を即座に検出することができるメリットがある。重点製品は直接悪化に直結はしないが、担当者にて要注目製品を判断し継続ウォッチが行えるメリットがある。また、自動調整ありは、自動調整により在庫量が担当者の意図しない変化を起こす可能性があるため要注目である。しかしながら、ここにあげた以外のアラート種別で指定されてもよい。各種別の算出方法の一例は図13に記載のとおりであるが、これ以外の算出方法を用いてもよい。図13は、金額情報、誤差情報、評価指標、アラートの算出方法の一例を示す図である。
【0033】
ステップS23において、データ処理部17は、データ表示・出力制御部10より対象時期、対象製品範囲、対象アラート情報を抽出条件として取得し、在庫評価データ21からアラートありのデータを抽出して、結果をデータ表示・出力制御部10に渡す。データ表示・出力制御部10は、受け取ったデータをクライアント端末1に表示する。図14は、抽出(検索)後の画面の一例を示す図である。抽出結果70は、縦軸に製品、横軸に評価項目を取った表である。表中には評価項目の例として、前月実績カテゴリ、前々月管理CF、前月管理CF等、ユーザによる製品別状況推移判断を支援する項目が表示されているが、これ以外の項目を表示するようにしてもよい。
【0034】
ステップS24において、データ表示・出力制御部10が、詳細情報表示ボタン71の押下を検出すると、データ処理部17は、詳細情報表示画面で用いる詳細情報(製品別月別の需給情報)を取得する。より具体的に説明するとデータ処理部17は、図14の表で行選択されている製品コードについて、実績計画データ20と在庫評価データ21とから情報を抽出する。なお、詳細情報表示ボタン71は、ユーザが製品の需給状況を月別に参照/編集したいと判断した場合等に押下される。
押下を検出しなかった場合、検出待機状態となりデータ表示・出力制御部10は、ステップS33に進む。
【0035】
ステップS25において、データ表示・出力制御部10は、ステップS24にて抽出された製品の需給の詳細情報を含む詳細情報表示画面を表示部207に表示させる。図15は、詳細情報表示画面の一例を示す図である。詳細情報82は、管理CF、入庫、出庫、在庫、安全在庫、カテゴリ、在庫回転日数等の項目からなる。また、各項目は現在改善中の値と基準の値とからなる。前者は改善計画数(金額/値)で後者は計画数(金額/値)である。このように計画数(金額/値)と改善計画数(金額/値)とを対比表示することにより、ユーザが改善計画数(金額/値)の妥当性を判断するのに役立つ。なお、計画数(金額/値)は、期初時点での改善計画数(金額/値)や改善の目標値等を用いるとよい。また、各項目は、各月時点ごとに値を持っており、このうち、販売、安全在庫等の項目の計画部分は編集可能セル(ハッチがけ)となっている。
【0036】
ステップS26において、データ表示・出力制御部10は、在庫評価実行ボタン85の押下を検出すると、ステップS27において編集可能セルの修正情報を取得する。なお、在庫評価実行ボタン85は、ユーザが編集可能セルの編集(即ち改善計画の修正)を行った後に計画を再評価する場合等に押下される。
押下を検出しなかった場合、待機状態となりデータ表示・出力制御部10は、ステップS32に進む。
ステップS28において、在庫評価調整部24は、在庫評価処理を行う。ここでは、編集可能セルの修正情報を反映したと仮定した場合の実績計画データ20を用いて評価指標の算出とアラート判定とを行う。なお、在庫評価処理の詳細は後述する図20に示す。
次にステップS29において、データ表示・出力制御部10は、在庫評価処理の結果(即ち、再評価の結果)をメモリ等のテンポラリの在庫評価データへ格納し、結果を図15の詳細表示画面の詳細情報82に表示する。
【0037】
ステップS30において、データ表示・出力制御部10が計画登録ボタン86の押下を検出すると、ステップS31において、データ処理部17は、テンポラリの在庫評価データへ格納されていた情報を在庫調整データ22へ格納する。図16は、在庫調整データの一例を示す図である。在庫調整データ22は、担当者による調整途上のデータを表し、実績計画データ20及び在庫評価データ21の各項目を双方備えた項目から構成される。なお、計画登録ボタン86は、ユーザが改善計画の修正後の再評価を参照し、修正結果が妥当(即ち、再修正が不要)であると判断した場合等に押下される。
このように、ステップS29〜ステップS31の処理が実行されることによりユーザは在庫調整結果を確認しながら修正を進めることができる。
【0038】
ステップS32において、データ表示・出力制御部10は、閉じるボタン81の押下を検出すると、図15の詳細情報表示画面の表示を終了し、図14の改善計画画面を表示部207に表示させる。
ステップS33において、データ表示・出力制御部10は、閉じるボタン54の押下を検出すると、図14の改善計画画面の表示を終了する。
【0039】
図17は、図3のステップS5に示す複数製品間の在庫調整による改善処理の一例を示す図である。
ステップS40において、データ表示・出力制御部10は、認証情報の取得を行う。本ステップは、ステップS20と同一の処理であるため詳細を割愛する。ここでは権限が担当であったとして処理を進める。なお、既に他の作業(例えばステップS20等)で認証情報を取得している場合、この処理は省略してもよい。
ステップS41において、データ表示・出力制御部10は、在庫調整要求の取得を行う。より具体的に説明すると、データ表示・出力制御部10は、図11のメイン画面において自動調整ボタン42の押下を検出すると、図18の在庫調整画面を表示部207に表示させる。図18は、在庫調整画面の一例を示す図である。
【0040】
ステップS42において、データ表示・出力制御部10は、自動調整実行ボタン99の押下を検出すると、対象時期、対象製品範囲、改善目標情報を取得する。これらの情報は自動調整の範囲や目標設定に利用される。データ表示・出力制御部10は、対象時期を集計期間欄95から取得する。集計期間は、先頭年月と末尾年月とにより指定される。但し、当月よりも将来の月を含む必要がある。対象製品範囲は、製品区分により指定されてもよいし、製品IDのリストにより指定されてもよい。図18の在庫調整画面では前者の場合のみ例示しており、データ表示・出力制御部10は、対象製品範囲欄94より対象製品範囲情報を取得する。改善目標情報は、対象時期の末尾年月における金額(総枠)の上限と下限とである。金額(総枠)は、例えば、末尾年月時点での総在庫額、或いは、先頭年月から末尾年月までの総入庫額により指定するが、これに限定されるものではない。以降は、総在庫額を用いた場合で説明する。図18の在庫調整画面の例では、データ表示・出力制御部10は、在庫予算下限欄97、在庫予算上限欄98より改善目標情報を取得する。
【0041】
ステップS43において、在庫評価調整部24は、在庫調整処理を行う。データ処理部17は、ステップS42で取得した対象時期、対象製品範囲を抽出条件として取得し、在庫調整データ22から対象データを抽出する。在庫評価調整部24は、抽出結果とステップS42で取得された改善目標情報とを用いて在庫の自動調整を行う。なお、在庫評価処理の詳細は後述する図20に示す。なお、在庫調整処理により在庫量の自動調整が行われた製品コードについては、在庫評価調整部24は、アラート種別の"自動調整有FLG"を付与する。"自動調整有FLG"は後にユーザが手動調整する場合の目印として利用するが、詳細は後述する。
【0042】
ステップS44において、データ表示・出力制御部10は、在庫調整処理の結果をメモリ等のテンポラリの在庫調整データへ格納する。そして、ステップS45において、データ表示・出力制御部10は、対象となる全製品、全時期についての集計結果を図18の在庫調整画面の結果表示部分(96の下部)に表示する。集計結果として表示する項目は、在庫回転日数、在庫額、入庫額、出庫額、粗利額、在庫減少額、管理CF、機会損失利益をあげているが、集計により在庫調整結果を評価できる項目であれば、他の項目を用いてもよい。また、各項目に対して、在庫調整結果を集計期間について集計する以外に、例えばデータ表示・出力制御部10は、実績期間のみでの集計や、期初時点での計画を同一集計期間で集計する。これは、ユーザが基準となる計画との比較により在庫調整結果が適正であるか否かを判断するのに有効である。
【0043】
ステップS46において、データ表示・出力制御部10は、ハンド調整ボタン90の押下(ユーザによる製品別詳細表示指示に相当)を検出すると、ステップS47において、自動調整有の製品を抽出する。そして、データ表示・出力制御部10は、図14の改善計画画面(検索後)を表示部207に表示させ、アラート種別の自動調整有のみチェックされた状態とし、アラート種別が"自動調整有FLG"である手配依頼を抽出し、結果を表示する。なお、ハンド調整ボタン90は、ユーザが自動調整結果を製品別に参照/ハンド調整したい場合等に押下される。
【0044】
なお、データ表示・出力制御部10は、ステップS47と同じくステップS21でも改善計画画面を表示させている。しかし、ステップS21ではアラート改善が目的であるのに対し、ステップS47では自動調整結果の手動調整を目的としている。そのため、ステップS47で開いた改善計画画面ではステップS21のそれと、以下の点で違いがある。
・アラート種別56は、自動調整ありにのみチェックがなされておりチェック状態の編集は不可
・対象製品範囲欄55、対象時期欄58は、図18の在庫調整画面の対象製品範囲欄94、集計期間欄95の右欄(期間末尾)の値を引き継ぎ、編集は不可
・製品コード欄57、検索ボタン59等は使用不可
・閉じるボタン54を押下すると、終了せずに在庫調整画面に戻る
押下を検出しなかった場合、検出待機状態となり、データ表示・出力制御部10は、ステップS54に進む。
なお、押下を検出しなかったということは、ユーザ側の視点では製品別詳細表示指示がない、即ち、全製品についてハンドでの修正(若しくは確認)が完了していることを意味する。
【0045】
ステップS48において、データ表示・出力制御部10が、詳細情報表示ボタン71の押下を検出すると、データ処理部17は、詳細情報表示画面で用いる詳細情報(製品別月別の需給情報)を取得する。より具体的に説明すると、データ処理部17は、図14の表で行選択されている製品コードについて、テンポラリの在庫調整データから情報を抽出する。押下を検出しなかった場合、検出待機状態となり、データ表示・出力制御部10は、ステップS46に進む。
ステップS49において、データ表示・出力制御部10は、ステップS48にて抽出された製品の需給の詳細情報を含む詳細情報表示画面を表示部207に表示させる。
【0046】
ステップS50において、データ表示・出力制御部10は、在庫評価実行ボタン85の押下を検出すると、ステップS51において編集可能セルの修正情報を取得する。押下を検出しなかった場合、待機状態となり、データ表示・出力制御部10は、ステップS46に進む。
ステップS52において、在庫評価調整部24は、在庫評価処理を行う。ここでは、編集可能セルの修正情報を反映したと仮定した場合の実績計画データ20を用いて評価指標の算出とアラート判定を行う。なお、在庫評価処理の詳細は後述する図20に示す。
ステップS53において、データ表示・出力制御部10は、在庫評価処理の結果(即ち再評価の結果)をメモリ等のテンポラリの在庫評価データへ格納し、結果を図15の詳細表示画面の詳細情報82に表示する。
【0047】
ステップS54において、データ表示・出力制御部10が、シミュレーション結果登録ボタン100の押下を検出すると、ステップS55において、データ処理部17は、テンポラリの在庫調整データへ格納されていた情報を在庫調整データ22へ格納(上書き)し、図17に示す処理を終了する。なお、シミュレーション結果登録ボタン100は、ユーザが自動調整結果をハンド調整できたと判断した場合等に押下される。押下を検出しなかった場合、検出待機状態となり、データ表示・出力制御部10は、ステップS56に進む。
ステップS56において、データ表示・出力制御部10は、閉じるボタン93の押下を検出すると、図18の在庫調整画面の表示を終了する。押下を検出しなかった場合、自動調整実行の検出待機状態となり、データ表示・出力制御部10は、ステップS42に戻る。
【0048】
次に、在庫調整結果の承認について説明する。
在庫調整結果の承認とは、計画立案者が立案した在庫計画を承認者が了承することをいう。そのため、純粋に在庫調整のみに焦点を絞るならば、以下の処理は必要ない。しかしながら、一般的には多種の製品を計画立案者で分担する形態で在庫計画を立案するため、承認者による調整が必要となる。
図19は、在庫調整結果の承認処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS60において、データ表示・出力制御部10は、認証情報の取得を行う。本ステップは、上述したステップS20等と同一の処理であるため詳細を割愛する。ここでは権限が承認者であったとしてステップを進める。
【0049】
ステップS61〜S63において、データ表示・出力制御部10は、ハンド調整ボタン41の押下を検出すると、図12の改善計画画面を表示部207に表示させる。更に、検索ボタン59の押下を検出すると、データ表示・出力制御部10は、対象時期、対象製品範囲、対象アラート情報を取得する。データ表示・出力制御部10は、在庫評価データよりアラート判定有の製品データを抽出し、在庫調整データよりアラート製品の調整結果を取得し、表示する。詳細な操作については、ステップS22〜S33で説明したためここでは割愛する。
なお、これらの処理は、承認者が計画立案者のアラート処理が適切に行われているか否かを確認するために利用する。そのため、図15の詳細情報表示画面の詳細情報82の編集可能セルは、承認者モードでは編集を不可となる。
【0050】
ステップS64、S65において、データ表示・出力制御部10は、自動調整ボタン52の押下を検出した時点で、図18の在庫調整画面を開く。ここで自動調整実行ボタン99の押下を検出すると、データ表示・出力制御部10は、ステップS43〜S45とほぼ同様にして集計結果を表示する。
ステップS43〜S45と異なる点は、ステップS43〜S45ではデータ表示・出力制御部10が在庫調整処理の結果をテンポラリの在庫調整データへ格納するのに対し、本ステップでは、その時点での実績計画データを基にして集計する点である。つまり、ステップS64、S65では、在庫評価調整部24は、在庫調整処理は実施しない。この理由は、承認者権限では担当者の在庫調整結果を参照し承認するのみだからである。なお、ステップS64、S65は、承認者が計画立案者の在庫予算配分がマクロ的に見て適切であるか否かを確認するために行われる。
【0051】
ステップS66において、データ表示・出力制御部10は、図12の改善計画画面において承認確認ボタン60の押下を検出すると、対象時期、製品範囲情報を取得する。押下を検出しなかった場合、検出待機状態となり、データ表示・出力制御部10は、ステップS69に進む。
ステップS67において、データ処理部17は、取得した対象時期、対象製品範囲情報を基に、在庫調整データ22の対応レコードにおける承認フラグを1に変える。
ステップS68において、データ処理部17は、在庫調整データ22を上位システム4へ送信し、図19に示す処理を終了する。
次にステップS69において、データ表示・出力制御部10が閉じるボタン54の押下を検出すると、図19に示す処理を終了する。
【0052】
次に、在庫評価処理について説明する。
在庫評価処理では、在庫評価部25が、対象時期、対象製品範囲と実績計画データを用いて、金額情報・誤差情報の算出、評価指標の算出、アラートの算出を行い、結果を図7に一例を示す在庫評価データへ格納する。在庫評価データの詳細は、図7に既述のとおりである。
図20は、在庫評価処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS70において、在庫評価調整部24は、全対象製品の評価が完了しているか否かをチェックする。在庫評価調整部24は、完了していれば図20に示す処理を終了し、完了していなければ、対象製品を1つ選択してステップS71へ進む。
【0053】
ステップS71において、在庫評価調整部24は、ステップS70で選択した製品について全対象時期の評価が完了しているか否かをチェックする。在庫評価調整部24は、完了していればステップS76へ進み、完了していなければ、対象時期の先頭月を選択してステップS72へ進む。
ステップS72において、在庫評価調整部24は、ステップS70、S71で選択した製品、月について金額情報・誤差情報の算出を行う。金額情報は、評価指標、アラート算出のための基礎情報であり、誤差情報は、後述する在庫調整処理で使用する基礎情報である。各項目の算出方法の算出方法の一例を、図13に示している。
算出後、在庫評価調整部24は、ステップS73へ進む。
【0054】
ステップS73において、在庫評価調整部24は、選択した製品、月について評価指標の算出を行う。なお、評価指標は、在庫を単品管理と総枠管理、在庫リスクと販売リスク、の両面から評価した指標である。評価指標の各項目の算出方法の一例を、図13に示している。評価指標の項目の1つである在庫回転日数を、在庫評価調整部24は、過去Mヶ月分の出庫額と当月の在庫額とに基づいて算出する。Mは製品のライフサイクルや需要変動の大きさにより調整するとよい。また、評価指標の項目の1つであるカテゴリについては、後述する。なお、ステップS73の処理において、在庫評価調整部24は、カテゴリを算出し、製品が属するカテゴリを決定する。評価指標の算出後、在庫評価調整部24は、ステップS74へ進む。
【0055】
ステップS74において、在庫評価調整部24は、選択した製品、月についてアラートの算出を行う。アラートは、担当者に、注目管理すべき製品を示す項目である。アラート各項目の算出方法の一例を、図13に示している。アラートの算出後、在庫評価調整部24は、ステップS75へ進む。
ステップS72〜ステップS74で1月分の在庫評価が完了したため、ステップS75において、在庫評価調整部24は、算出対象の月を次月へ遷移させ、ステップS71へ戻る。
ステップS72〜ステップS75で1製品分の在庫評価が完了したため、ステップS76において、在庫評価調整部24は、算出対象を次の製品に遷移させてステップS70へ戻る。
【0056】
ここで、評価指標の一つであるカテゴリの算出方法の一例を、図21を用いて説明する。図21は、カテゴリの算出方法の一例を示す図である。
カテゴリとは、管理CFや在庫回転、利益等の一つ、又は複数の評価指標を組み合わせた多次元上で領域の区分化を行った場合の区分である。各カテゴリの特性に応じて在庫水準の適正化基準を設定することで、その基準を基に各製品の改善の必要性の優先度の判定が可能となる。よって、より適正なカテゴリに位置するような製品の在庫計画の改善を行うことで、全製品の在庫水準の最適化を図ることができる。
ここでは、評価指標として管理CFと在庫回転日数との2つの指標を用いた例を示すが、他の指標を用いてもよい。但し、本実施形態の狙いから、製品のサービス水準と収益性との両者の観点を持った指標を包含することが好適である。
【0057】
また、領域の区分化の方法であるが、図21の例では、管理CF軸と在庫回転日数軸とを縦横に取った平面を格子状に区分し、各メッシュ(升目)をカテゴリとしているが、他の区分化方法を用いてもよい。
また、各軸の境界であるが、境界の数は、数個程度にとどめるのが好適である。なぜなら境界が多すぎると、ユーザによるメッシュ別管理が困難となるからである。また、逆に境界が少なすぎると、在庫水準の適正化基準がメッシュ内で一律となってしまい、適正なタイミングで在庫計画の改善が行えなくなるためである。境界の閾値は、製品の特性(価格、ライフサイクル、等)により担当者(又はユーザ)等が設定する。図21では一例として、在庫回転日数を10日、20日、40日で区分し、日数の少ない順に、少、適、過、超過の名前を付けている。また、管理CFを0、100万円、500万円、1000万円で区分し、金額の少ない順に、−、0、+、++、+++の名前を付けている。そして、図21では、カテゴリは在庫回転日数の区分と管理CFの区分との各名称を組み合わせて表現している。例えば、ある製品のある月の在庫回転日数が45日で管理CFが300万円の場合、カテゴリは超過+となる。
【0058】
次にカテゴリ悪化について説明する。カテゴリ悪化は、前月に比べ当月のカテゴリが悪化したことを示すフラグであり、ユーザによる対策の必要性を示すことを目的としている。そのため、カテゴリ悪化は、在庫評価調整部24が前月カテゴリと当月カテゴリとの各順列に対して、悪化か悪化でないかを決定することにより定義する。図21では簡便な定義の一例として、在庫評価調整部24が、各軸別に区分を順位付けし、区分の何れかが前月よりも悪化した場合はカテゴリ悪化としている。
【0059】
次に、在庫調整処理について説明する。
在庫調整処理とは、複数製品間での入庫・在庫の再配分を行うことである。在庫の再配分を行う場合、在庫予算の範囲内で適正な再配分を行うケースと在庫予算に範囲を設けずに行うケースとがある。本実施形態では、前者のケースを前提に説明するが、在庫予算の範囲を十分に緩和して設定することにより後者のケースにも対応することができる。
また、在庫調整の方法として、1製品ずつ逐次的に在庫量を適正化する方法や、全製品の在庫量を同時に少しずつ増減させる方法等が考えられるが、本実施形態では前者のケースを前提に説明する。もちろん、後者の方法やその他の方法を用いてもよい。本実施形態で説明する在庫調整処理のイメージは図22のとおりである。図22は、在庫調整処理の概念図である。図22に示されるように、在庫評価調整部24は、在庫削減、在庫増加(在庫追加)の順に行う。在庫予算下限は、在庫削減時の目標であり、在庫予算上限は、在庫追加時の目標である。
【0060】
在庫調整処理では、在庫調整部26が、対象時期、対象製品範囲、改善目標情報と実績計画データ20とを用いて在庫量の算出と在庫評価(評価指標の算出とアラート判定)とを行い、結果を図16に示した在庫調整データ22へ格納する。上述したように、在庫調整データ22は、実績計画データ20の各レコードに1対1に対応するヘッダ情報、在庫調整状態を示すフラグ、在庫調整後の数量、金額、評価指標、アラート判定情報から構成される。
在庫調整状態を示すフラグは、固定FLG、自動調整有FLG、承認FLGからなる。固定FLGは、在庫調整対象外のデータを示す。自動調整有FLGは、在庫調整により数量情報が変更したデータを示す。承認FLGは、在庫調整結果が承認済のデータであることを示す。
【0061】
図23は、在庫調整処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS80において、在庫評価調整部24は、対象製品から在庫削減対象を選定する。在庫評価調整部24は、在庫削減対象として、アラート製品の改善フロー等で改善済の製品以外で、かつ、在庫削減による悪影響が小さい製品を選択する。
より具体的に説明すると、在庫評価調整部24は、例えば、
(1)在庫回転日数が大きい製品(≒欠品の可能性が低い)
(2)管理CFが小さい製品(≒欠品時の損失が小さい)
を選択する。
また、在庫評価調整部24は、カテゴリごとに予め設定された在庫戦略を読み込み、その在庫戦略に従って対象製品を決めるようにしてもよい。
図24は、在庫戦略の一例を示す図である。図24では、カテゴリごとに在庫削減(追加)順位を示している。つまり、在庫戦略(在庫戦略情報)は、カテゴリと優先順位(優先度)とを対応させている対応情報の一例である。
図24の表中の数値は優先順位であり、数値が少ないほど優先的に在庫削減(追加)することを示す。また"−"は在庫削減(追加)の対象外であることを示す。
【0062】
なお、図24の在庫戦略(順位付け)は以下の戦略を意味している。
在庫削減・・・(1)1.在庫回転日数が大 2.管理CFが少のカテゴリを優先
(2)在庫回転日数が少の製品は、削減対象外
在庫追加・・・(1)1.在庫回転日数が少 2.管理CFが大のカテゴリを優先
(2)在庫回転日数が過又は超過の製品は、追加対象外
ステップS81において、在庫評価調整部24は、在庫削減対象の有無を判定する。在庫評価調整部24は、在庫削減対象があれば、ステップS82へ進み、在庫削減対象がなければステップS86へ進む。
ステップS82において、在庫評価調整部24は、在庫予算下限への到達を判定する。在庫予算下限判定とは、対象時期の末時点において、対象製品の在庫額の総和が在庫予算下限を下回っているか否かを判定することである。
在庫予算下限は必ずしも設定する必要がないが、在庫額の総和の段階的削減等、急激な在庫削減を避けたいケースや、既存計画の変更を局所に留めたいケースでは設定が望ましい。
在庫評価調整部24は、在庫予算下限へ未達であれば、削減余力があるため、ステップS83へ進み、在庫予算下限を達成していればステップS86へ進む。
【0063】
ステップS83において、在庫評価調整部24は、在庫削減対象の製品に対して適正在庫を算出する。好適な算出方法の例を以下に3つあげる。もちろん、適正在庫算出方法はこの3方法に限定されるものではない。
適正在庫の好適な算出方法の1つ目は、限界許容欠品率を用いる方法である。
製品ごと、或いは、カテゴリごとに設定された最大限許容できる欠品率(限界許容欠品率)に基づき在庫評価調整部24が算出した安全在庫を適正在庫とする方法である。
適正在庫の好適な算出方法の2つ目は、在庫評価調整部24が、機会損失利益を用い、機会損失利益が最小となる在庫量を適正在庫とする方法である。機会損失利益については後述する。
適正在庫の好適な算出方法の3つ目は、在庫評価調整部24が、管理CFを用い、機会損失込管理キャッシュフロー(以下、機会損失込管理CFという)が最大となる在庫量を適正在庫とする方法である。
本実施形態では適正在庫の算出方法として3つ目の方法を用いるものとして説明を行う。ステップS83の処理の詳細は、後述する図27に示す。
【0064】
ステップS84において、在庫評価調整部24は、対象時期の末時点で在庫が減少したか否かを判定する。減少していれば、在庫評価調整部24は、ステップS85にて在庫調整データの在庫調整後の在庫量を適正在庫で置き換え、ステップS80へ戻る。減少していなければ、在庫評価調整部24は、何もせずステップS80へ戻る。
ステップS86において、在庫評価調整部24は、対象製品から在庫追加対象を選定する。
在庫評価調整部24は、在庫追加対象として、アラート製品の改善フロー等で改善済の製品以外で、かつ、在庫追加によるメリットが大きい製品を選択する。
より具体的に説明すると、在庫評価調整部24は、例えば、
(1)在庫回転日数が小さい製品(=欠品の可能性が高い)
(2)管理CFが大きい製品(≒欠品回避時の利益が大きい)
を選択する。
また、在庫評価調整部24は、カテゴリごとに予め設定された在庫戦略を読み込み、その在庫戦略に従って対象製品を決めるようにしてもよい。
【0065】
ステップS87において、在庫評価調整部24は、在庫追加対象の有無を判定する。在庫評価調整部24は、在庫追加対象があれば、ステップS88へ進み、在庫追加対象がなければ図23に示す処理を終了する。
ステップS88において、在庫評価調整部24は、在庫予算上限への到達を判定する。
在庫予算上限判定とは、対象時期の末時点において、対象製品の在庫額の総和が在庫予算上限を上回っていないかどうかを判定することである。
在庫予算上限は、総在庫額の誘導目標であり、総枠管理を行う観点からは必ず設定する必要がある。
在庫評価調整部24は、在庫予算上限へ未達であれば、追加余力があるため、ステップS89へ進み、在庫予算上限を達成していれば図23に示す処理を終了する。
【0066】
ステップS89において、在庫評価調整部24は、在庫削減対象の製品に対して適正在庫を算出する。算出方法は既述のとおりであるため省略する。
ステップS90において、在庫評価調整部24は、対象時期の末時点で在庫が増加したか否かを判定する。在庫評価調整部24は、増加していれば、ステップS91にて在庫調整データの在庫調整後の在庫量を適正在庫で置き換え、ステップS86へ戻る。在庫評価調整部24は、減少していなければ、何もせずステップS86へ戻る。
【0067】
次に、適正在庫算出処理について述べる。
適正在庫算出処理では、在庫評価調整部24が、機会損失込管理CFが最大となる在庫を適正在庫と定義しこれを探索する。ここで、機会損失込管理CFは、管理CF−機会損失利益と定義する。
管理CFは、既述のとおり利益額 − 在庫増加額であるため利益−在庫リスクを示すと考えられる。一方、機会損失利益とは欠品リスクの意味である。
ここで、適正在庫とは、利益 − リスクが最大となる在庫といえるため、機会損失込管理CF(= 利益額 − 在庫リスク − 欠品リスク)は在庫の適正度合いを示す良い指標の一つであると考えられる。
【0068】
参考までに、在庫量と機会損失込管理CFとの関係をグラフ化したものを図25に示す。図25は、在庫量と機会損失込管理CFとの関係を示す図である。
管理CFは在庫が大きくなるに従い金額が小さくなる一方、機会損失利益は在庫が大きくなるに従い、金額が大きくなる(正確には損失額が小さくなる)。両者の合計がピークとなる点の在庫量が、最適在庫量であることを意味している。
また、適正在庫を算出する手法として、本実施形態では、在庫量を増減させながら、機会損失込管理CFが最大となる在庫量を探索する方法を挙げているが、探索手法はこれに限らない。
なお、本実施形態で用いた適正在庫算出手法のイメージは、図26のとおりである。図26は、適正在庫算出方法の一例を示す図である。
【0069】
図27は、適正在庫算出処理の一例を示すフローチャートである。
全期間について適正在庫を算出する必要があるため、在庫評価調整部24は、対象時期の先頭月から1月ずつ順に以降の処理を行う。
ステップS100において、在庫評価調整部24は、現在の在庫量に対する機会損失利益を算出する。
機会損失利益とは、狭義には、在庫があれば売れたはずの製品が、在庫切れのため売れなかったため、得られなかった利益(遺失利益)を意味する。或いは、より広義に、在庫切れ発生による顧客対応コストの増加や、追加発注の作業コスト等を加えてもよい。機会損失利益の算出方法は後述する。
【0070】
ステップS101において、在庫評価調整部24は、ステップ幅の初期値を設定する。ステップ幅とは、在庫量の変更ステップ幅を示す。
在庫評価調整部24は、初期値を、例えば、現在の在庫量等に設定する。
ステップS102において、在庫評価調整部24は、現在の在庫量に対して、ステップ幅だけ仮に在庫量を増加させる。そして、ステップS103において、在庫評価調整部24は、増加後の在庫量に対して機会損失利益を算出する。
ステップS104にて、在庫評価調整部24は、在庫量増加前より機会損失込管理CFが増加したか否かを判定する。在庫評価調整部24は、増加した場合、ステップS108に進み、そうでなければ、ステップS105に進む。
【0071】
ステップS105において、在庫評価調整部24は、現在の在庫量に対して、ステップ幅だけ仮に在庫量を減少させる。そして、ステップS106において、在庫評価調整部24は、減少後の在庫量に対して機会損失利益を算出する。
ステップS107において、在庫評価調整部24は、在庫量減少前より機会損失込管理CFが増加したか否かを判定する。在庫評価調整部24は、増加した場合、ステップS108に進み、そうでなければ、ステップS109に進む。
ステップS108において、在庫評価調整部24は、機会損失込管理CFを改善する在庫量を発見したため、現在の在庫量を機会損失込管理CF増加後の在庫量で置き換えて、つまりは、ステップS104でYESと判断した場合には、ステップS102で現在の在庫量にステップ幅数を加えた値を新たな在庫量に、ステップS107でYESと判断した場合には、ステップS105で現在の在庫量からステップ幅数を引いた値を新たな在庫量とする。その後ステップS102に戻る。
【0072】
ステップS109において、在庫評価調整部24は、機会損失込管理CFを改善する在庫量を発見できなかったため、今のステップ幅のスケールでは、現在の在庫量が最も適正であるといえる。そこで、在庫評価調整部24は、ステップ幅を今の半分として探索のスケールを小さくし、ステップS110に進む。
ステップS110において在庫評価調整部24は、ステップ幅が一定値(例えば1)以下であれば、現在の在庫量周辺に機会損失込管理CFを小さくする在庫量が存在しないことになるため、当月については適正在庫が算出できたとみなしてステップS111へ進む。在庫評価調整部24は、一定値以下でなければ、ステップS102に戻る。
ステップS111において、在庫評価調整部24は、対象全期間について適正在庫の算出が完了していれば図27に示す処理を終了し、そうでなければ、次月に遷移し(ステップS112)、ステップS100に戻る。
【0073】
次に、機会損失利益の算出方法について述べる。
在庫評価調整部24は、対象製品の在庫調整データを取得して機会損失利益(金額)を算出する。一例として在庫評価調整部24は、以下の数式により機会損失利益(金額)Lを算出する。
【数1】

但し、
α = 原価額×利益率
σ = 出庫誤差率×出庫量[計画値]
μ = (現在の)在庫量
Z = μ/σ
α:欠品1あたりの損失
σ:在庫量確率分布の標準偏差
μ:在庫量確率分布の平均
Z:正規化平均在庫量
NORMSDIST(Z):標準正規分布の累積分布関数
累積分布関数は、下記f(z)(標準密度関数)の積分値
【数2】

なお、ここでは機会損失利益算出の一例として上記数式をあげているが、妥当性を持った機会損失利益の算出方法であれば、この上記算出方法に限らない。
【0074】
以降では上記数式の妥当性に関する数学的根拠を述べる。
受注生産のように将来の販売量(出庫量)が確定している場合を除いては、将来の欠品量を事前に確定することはできない。そこで、将来の欠品量が確率分布に従うとすると、機会損失利益Lは以下の数式で表現できる。
L = Σf(n)×p(n)
但し、
L:機会損失利益
p(n):欠品量がnとなる確率
f(n):欠品量がnのときの損失
上述の式は、欠品量が離散的な値をとるものとして定式化されているが、連続的な値をとるものとして定式化する方がより一般的である。この場合、機会損失利益Lは以下の数式で表現される。
【数3】

機会損失利益Lの算出イメージを表したものが図28である。図の斜線部分が機会損失利益Lとなる。図28は、機会損失利益算出の概念図である。
【0075】
次に、欠品量の確率分布について説明する。欠品量は、在庫切れのために売れなかった個数を表すため、以下の式にて算出できる。
欠品量(当月)=max(−(前月末在庫量 − 出庫量 + 入庫量),0)
=max(−当月末在庫量,0)
ここで、前月末在庫量、入庫量は固定値であり、出庫量、当月末在庫量は、確率分布によって与えられる。よって、欠品量は確率分布で与えられ、その分布は当月末在庫量分布のマイナス部分を取り出したものとなる。
欠品量の確率分布を数式で表現すると、下記のとおりとなる。
【数4】

但し、q(x)は在庫量の確率分布関数
数式(1)の概念を図で示したものが図29である。図29は、数式(1)の概念図である。
【0076】
次に、(当月末)在庫量の確率分布について説明する。
まず、出庫量の確率分布が正規分布に従うと仮定すると、出庫量の確率分布は、平均を出庫量[計画値]とし標準偏差σを、
σ = 出庫誤差率× 出庫量[計画値]
とする正規分布で表現することができる。
また、上述の仮定に従うと、在庫量の確率分布は、現在の在庫量(以降μとする)を平均とし、標準偏差がσとなる正規分布となる。このとき、在庫量の確率分布関数は以下の数式となる。
【数5】

【0077】
次に、損失量の算出方法について説明する。既述のように、損失量は欠品量nの関数として一般的に以下のように表現できる。
f(n)
ここで、損失量を、欠品量や遺失利益のように直接的な損失と仮定すると、損失量は欠品量に比例するため、以下のように表現できる。
f(n)= αn (数式2)
但し、αは欠品1あたりの損失を定める定数であり、例えば、欠品量を損失量とする場合には
α = 1
遺失利益を損失量とする場合には、
α = 製品の原価×利益率
等と設定する。
【0078】
ここで、在庫量の確率分布を、平均μ、標準偏差がσとすると、数式(1)及び数式(2)から機会損失利益Lは解析的に以下のように算出できる。
【数6】

但し、Z = μ/σとする。
【0079】
以上の構成により、総枠管理と単品管理との間で整合性を持った評価指標を用いて製品全体の在庫水準の最適化を図る仕組みを提供することができる。
以上説明したように、従来では、総枠管理と単品管理とで適正在庫の評価基準に整合性が無いため、総枠管理と単品管理を行う場合、以下の課題があった。
(1)適正在庫の評価基準に整合性が無い
(2)複数製品間の調整が最適化されていない
しかし、本実施形態により、上記のように総枠管理と単品管理との間で整合性を持った評価指標を用いて製品全体の在庫水準の最適化を図ることができる。
【0080】
<その他の実施形態>
また、本発明の目的は、以下のようにすることによって達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(又は記録媒体)を、システム或いは装置に供給する。そして、そのシステム或いは装置の中央演算処理手段(CPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0081】
また、システム或いは装置の前記中央演算処理手段が読み出したプログラムコードを実行することにより、そのプログラムコードの指示に基づき、システム或いは装置上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)等が実際の処理の一部又は全部を行う。その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0082】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、前記システム或いは装置に挿入された機能拡張カードや、接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれたとする。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0083】
本発明を前記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体(コンピュータ読み取り可能な記憶媒体)には、先に説明したフローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【0084】
以上、上述した各実施形態によれば、整合性を持った適正在庫の評価基準に基づいた複数製品間の在庫調整を可能にすることができる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、
管理CF = 利益 − 在庫増加額
として説明を行ったが、
管理CF = 利益 − 経費 − 在庫増加額
としてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 クライアント
3 サーバ
4 上位システム
9 在庫評価調整システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製品間の在庫調整を行う情報処理装置であって、
前記製品の欠品リスクを示す利益及び在庫リスクを示す在庫増加額から前記製品の評価指標である管理キャッシュフローを算出する算出手段と、
前記管理キャッシュフローを少なくとも含む前記製品を分類するための分類条件を設定する分類条件設定手段と、
前記分類条件に従って前記製品が分類されるカテゴリ及び前記カテゴリの在庫調整の優先度を対応付けて記憶する記憶手段と、
前記分類条件に従って、前記製品の属するカテゴリを決定する在庫評価手段と、
前記在庫評価手段で決定されたカテゴリと、前記記憶手段に記憶されているカテゴリと、在庫調整の優先度の対応情報とに従って、前記複数の製品の在庫調整の優先度を決定する決定手段と、
前記決定手段で決定された優先度に従って前記複数の製品の在庫調整を行う在庫調整手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記複数の製品の在庫金額の総枠を設定する総枠設定手段を更に備え、
前記在庫調整手段は、前記在庫金額の総枠を満たすよう前記複数の製品の在庫調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記在庫調整手段は、前記在庫金額の総枠の中で、前記管理キャッシュフロー及び機会損失利益とに従って算出される機会損失込管理キャッシュフローの総和が最大となるよう前記複数の製品の在庫調整を行うことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記在庫調整手段は、前記機会損失込管理キャッシュフローを、
機会損失込管理キャッシュフロー = 管理キャッシュフロー − 機会損失利益
という式で算出することを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記算出手段は、更に前記製品に関する在庫情報に基づいて、前記製品の評価指標である在庫回転日数を算出し、
前記分類条件設定手段は、更に前記在庫回転日数を前記分類条件に設定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記製品のうち、注目製品の指定を受け付ける受付手段と、
前記受付手段で受け付けた指定に基づき、前記注目製品を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された製品の需給の詳細情報を画面表示する表示手段と、
前記画面を介して、前記製品の改善計画の入力を受け付ける改善計画受付手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記製品の指定には、前記在庫評価手段で分類されたカテゴリが以前に分類されたカテゴリより悪化している製品の指定が含まれることを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記在庫調整手段は、前記調整した結果の製品の在庫を画面に表示することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
複数の製品間の在庫調整を行う情報処理方法であって、
前記製品の欠品リスクを示す利益及び在庫リスクを示す在庫増加額から前記製品の評価指標である管理キャッシュフローを算出する算出工程と、
前記管理キャッシュフローを少なくとも含む前記製品を分類するための分類条件を設定する分類条件設定工程と、
前記分類条件に従って前記製品が分類されるカテゴリ及び前記カテゴリの在庫調整の優先度を対応付けて記憶装置に記憶する記憶工程と、
前記分類条件に従って、前記製品の属するカテゴリを決定する在庫評価工程と、
前記在庫評価工程で決定されたカテゴリと、前記記憶装置に記憶されているカテゴリと、在庫調整の優先度の対応情報とに従って、前記複数の製品の在庫調整の優先度を決定する決定工程と、
前記決定工程で決定された優先度に従って前記複数の製品の在庫調整を行う在庫調整工程と
を備えることを特徴とする情報処理方法。
【請求項10】
複数の製品間の在庫調整を行うコンピュータを
前記製品の欠品リスクを示す利益及び在庫リスクを示す在庫増加額から前記製品の評価指標である管理キャッシュフローを算出する算出手段と、
前記管理キャッシュフローを少なくとも含む前記製品を分類するための分類条件を設定する分類条件設定手段と、
前記分類条件に従って前記製品が分類されるカテゴリ及び前記カテゴリの在庫調整の優先度を対応付けて記憶する記憶手段と、
前記分類条件に従って、前記製品の属するカテゴリを決定する在庫評価手段と、
前記在庫評価手段で決定されたカテゴリと、前記記憶手段に記憶されているカテゴリと、在庫調整の優先度の対応情報とに従って、前記複数の製品の在庫調整の優先度を決定する決定手段と、
前記決定手段で決定された優先度に従って前記複数の製品の在庫調整を行う在庫調整手段と
して機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記憶したコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−256369(P2012−256369A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202611(P2012−202611)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2008−200237(P2008−200237)の分割
【原出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(592135203)キヤノンITソリューションズ株式会社 (528)