説明

情報処理装置

【課題】送出対象となる情報に、高い精度で自動的に、コンテキストが関連付けられるようにする。
【解決手段】情報の送出要求とともにコンテキストが送られてきた情報提供サーバ101では、コンテキスト−ID登録部116が、受け付けたコンテキストと情報のIDとを関連付け、関連付けデータベース111に記憶させ、データベースを更新する。例えば、コンテキスト−ID登録部116は、受け付けた情報のIDであるURLに対して同時に受け付けたコンテキストを関連付け、関連付けデータベース111に登録し、またデータベースを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現実世界におけるコンテキストと情報とを関連付けしてユーザに提示するための情報提供システムに適用可能な情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型コンピュータやユビキタス端末の浸透により、計算機は専門家が特定の場所で使うものから、一般の人がさまざまな場所で使うものとなっている。これにより、これまで実世界指向インタフェースや強化現実(Augmented Reality)の名で研究されてきた技術など、我々が日々活動する実環境を情報によって拡張する研究が、実際に日の目を見る日も近づいてきている(非特許文献1参照)。強化現実に関する研究のうち、「現実世界におけるコンテキストと情報を関連付けし、ユーザに提示することで、ユーザの活動を支援する」ことを目的とした研究はコンテキスト−アウェアーコンピューティングと呼ばれ、各所で盛んに行われている(非特許文献2参照)。
【0003】
コンテキストを利用した技術として、実世界の場所に対応して情報を関連付けることで、情報が関連付けられた場所に来たユーザに対し、有益であると考えられる情報をユーザの持つ携帯端末やHMDに提示することを可能とした技術が提案されている(非特許文献3,4,5参照)。
【0004】
このような、コンテキストと実世界の場所とを関連付けた情報サービスのシステムの一例として、図2に示すような、コンテキスト−アウェアーな情報提示システムがある。
図2に示すシステムでは、例えば、ユーザが所有するいずれかの端末装置202では、コンテキスト取得部222において、ユーザのコンテキストをセンサ223などから適宜取得し、通信部224に送る。
【0005】
コンテキストの取得方法としては、カメラ,マイク,GPSなどの位置センサ、方位センサ、各種生体センサなどのセンサにより検出される情報を使う方法や、ユーザにより能動的に入力された情報(例えば、趣味、趣向などに関するもの)を使う方法などが検討されている。通信部224は、コンテキスト取得部222から送られてきたコンテキスト情報を、インターネットなどの通信網204を介して情報提供サーバ201に送信し、情報提供サーバ201からの返信を待つ。
【0006】
一方、情報提供サーバ201は、端末装置202から送られてきたコンテキスト情報を通信部215で受信し、受信したコンテキスト情報をコンテキスト−ID変換部213に送る。コンテキスト情報を受け付けたコンテキスト−ID変換部213では、コンテキストに対応する情報のIDを関連付けデータベース211から引き出し、引き出したIDを情報取得部214に送る。
【0007】
情報取得部214は、情報データベース212からIDに対応する情報を取得し、取得した情報を通信部215に送る。通信部215は、情報取得部214から送られてきた情報を、インターネットなどの通信網204を介し、コンテキスト情報を送ってきた端末装置202に対して送信する。端末装置202では、通信部224が、送られてきた情報を受け取り、提示部221に渡す。提示部221では、送られてきた情報をユーザに視認可能な状態に提示する。
【0008】
関連付けデータベース211には、情報のIDとコンテキストとが関連付けて蓄積されている。例えば、以下の表1に示すような、コンテキストとして経度や緯度などの位置情報と、情報のIDとしてURLとが関連付けられて、関連付けデータベース211に蓄積されている。
【0009】
【表1】

【0010】
表1に示した例では、1つのURLに1つの位置が関連付けられているが、1つのURLに複数の位置が関連付けられている場合もあり、また、複数のURLが一箇所に関連付けられている場合もある。このようなデータベースを用いた場合、情報提供サーバ201は、端末装置202から送られてきた位置情報に対応するURLを関連付けデータベース211から検索し、検索されたURLに対応する情報をクライアントである端末装置202に返すこととなる。
【0011】
例えば、端末装置202において、緯度「23 53 11.0」、経度「154 12 23.2」というデータ(コンテキスト)がコンテキスト取得部222により取得され、情報提供サーバ201に送出されると、これを受け付けた情報提供サーバ201では、「http://www.○○.com/」というアドレスの情報を端末装置202に対して送出する。
【0012】
また、取得したコンテキストを処理し、さらに意味のあるコンテキストに精錬、変換するために、GPSから得られるユーザの移動軌跡を用いたユーザの興味の推測や、上記複数のセンサ群から得られる情報を用いたユーザの意図の推測などに関する研究がなされている。
【0013】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【非特許文献1】Azuma, Ronald T. A Survey of Augumented Reality.Presence: Teleoperators and Virtual Environments 6, 4 (August 1997), 355-385.
【非特許文献2】Guanling Chen and David Kotz: A Survey of Context-Aware Mobile Computing Research, Dartmouth Computer Science Technical Report, TR2000-381, 2000.
【非特許文献3】Jun Rekmoto, Yuji Ayatsuka, and Kazuteru Hayashi: Augmwnt-able Reality: Situated Communication through Digital and Physical Spaces, IEEE 2nd International Symposium on Wearable Computer (ISWC'98), pp.68-75, 1998.
【非特許文献4】Tarumi H., Morishita K., and Kambayashi Y., "Public Application of SpaceTag and their Impact, Digital Cities", Technologies Experience and Future Perspectives, Ishida T, and Isbister K.(Eds.), Lecture Notes in Computer Science (State-of-the Art Survey), Vol.1765, pp.350-363 (2000).
【非特許文献5】角康之、江谷為之、シドニーフェルス、ニコラシモネ、小林薫、間瀬健二、「C−MAP:Context-Awareな展示ガイドシステムの試作」情報処理学会論文誌、Vol.39, No.10, pp.2866-2878, 1998.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したような、ネットワークを用いたコンテキスト−アウェアーな情報の提供システムでは、情報にコンテキストが関連付けられている必要がある。コンテキスト−アウェアーコンピューティングに関する研究では、コンテキストが情報にすでに関連付けられていることを前提としているものが多い。
しかし例えば、すでにある多くのウエブページ対し、正しく詳細なコンテキストを人手で関連付けるには膨大な人的資源を必要とする。
【0015】
また、これから発信される情報を対象にし、情報発信者が発信する情報にコンテキストを付与するという方法がある(上田 宏高、塚本 昌彦、西本 章治郎、「時空間メール:時空を超えるメッセージ」、インタラクティブシステムとソフトウエアVIII(WISS2000)、pp.27-32,2000)。しかしながら、この方法を用いた場合でも、情報発信者がコンテキストを誤って付けたり、情報を欲しがる多くの人のコンテキストと異なっていると、提供される情報は全く意味を成さないものとなる。
【0016】
一方、携帯端末などを用いて接続しているインターネット上に情報を発信する時に、携帯端末の場所をコンテキストとして自動的に情報に付加するような試みもなされている。例えば、「Space Tag」や「Augment−able Reality」では、編集した情報を関連付けたい場所にあたかも置くように発信することで、情報と位置との関連付けを可能としている。
【0017】
しかし、上述した技術において、発信した情報は、情報が発信された場所に関する情報ではない可能性も高く精度に疑問が残る。また、特定の場に関する情報が「その場」以外の場所から発信される状況は容易に推測できるため、これらの方法は一部の「その場」で書かれる文書に特化した手法であると言える。
【0018】
従って、インターネット上にすでに存在する多くの情報に対しては、コンテキストを関連付けすることができない。また、文書から時空間属性を自動的に解析するなどの方法も検討されているが、精度に課題が残る(平松 薫他、「時空間構造に基づくWeb検索の拡張」、人工知能学会 セマンティックウエブとオントロジー研究会、2002)。
【0019】
以上に説明したように、従来提案されている情報とコンテキストとの関連付けに関するアプローチは、まず、手動でコンテキストを付与する場合、すでにインターネット上などに存在する数多くの文書を対象にすることが非常に困難であるという問題がある。また、自動的にコンテキストを付与する場合、関連付けられたコンテキストの精度が低いなどの問題を抱えている。
【0020】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、送出対象となる情報に、高い精度で自動的に、コンテキストが関連付けられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る情報処理装置は、通信網を介して受け付けられた取得の要求に対応する情報と所定のコンテキストとの関連を示し、コンテキストにより情報を特定するためのコンテキスト関連情報が記憶された関連付けデータベースと、受け付けたコンテキストに対応するコンテキスト関連情報を関連付けデータベースから取得するコンテキスト変換手段と、このコンテキスト変換手段が取得したコンテキスト関連情報をもとに関連する情報を取得する情報取得手段と、特定情報の要求を通信網を介して受け付けるとともに得られた要求もとの状態を示すコンテキストと特定情報との関連を示すコンテキスト関連情報を関連付けデータベースに記録する登録手段とを備えるようにしたものである。従って、情報取得手段により取得される情報は、要求もとの状態を示すコンテキストに関連する。
【0022】
上記、取得の要求は、通信網を介して接続された端末装置から送出されたものであり、要求もとの状態を示すコンテキストは、通信網を介して接続された端末装置から送出されたものである。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、特定情報の要求の受け付けとともに得られた要求もとの状態を示すコンテキストと特定情報との関連を示すコンテキスト関連情報を関連付けデータベースに記録するようにしたので、送出対象となる情報に、高い精度で自動的に、コンテキストが関連付けられるようになるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態における情報処理装置を用いた情報提供システムの構成例を示す構成図である。図1では、情報提供サーバ101を情報処理装置の一例として示している。図1に示すシステムでは、情報処理装置である情報提供サーバ101と、複数の端末装置102とが、例えばインターネットなどの通信網104で接続されている。
【0025】
情報提供サーバ101は、関連付けデータベース111,情報データベース112,コンテキスト−ID変換部113,情報取得部114,通信部115,及びコンテキスト−ID登録部116を備えている。また、端末装置102は、提示部121,コンテキスト取得部122,センサ123,通信部124を備えている。センサ123は、カメラ,マイク,GPSなどの位置センサ、方位センサ、各種生体センサなどである。
【0026】
次に、図1に示すシステムの動作例について説明する。例えば、いずれかの端末装置102から、ユーザの操作により情報の送出要求が情報提供サーバ101に送出されると、送出要求とともに、コンテキスト取得部122がセンサ123より取得したコンテキストが送出される。コンテキスト取得部122は、例えば、送出要求の操作が入力された時点においてセンサ123が検出したコンテキストを、上記操作による情報の送出要求の要求とともに、情報提供サーバ101に送出する。
【0027】
例えば、端末装置102のセンサ123は、GPSなどの位置センサであり、端末装置102から情報の要求が送出されると、経度と緯度とからなる位置情報がコンテキストして送出される。これらの送出は、通信部124によりなされ、送出された情報,コンテキストは、通信網104を介して情報提供サーバ101に送られる。
【0028】
以上のことにより情報の送出要求とともにコンテキストが送られてきた情報提供サーバ101では、これらが通信部115で受信される。通信部115で受け付けられた情報の送出要求は、情報取得部114に渡され、コンテキストは、コンテキスト−ID登録部116に渡される。情報取得部114は、受け付けられた情報の送出要求に対応する情報を、情報データベース112から取得し、取得した情報を識別するためのID(識別子)をコンテキスト−ID登録部116に通知する。また、情報取得部114は、取得した情報を通信部115に送る。
【0029】
通信部115では、情報取得部114より送られた情報を、要求もとの端末装置102に対して送出する。このようにして送出された情報は、通信網104を介して端末装置102の通信部124に受信される。通信部124に受信された情報は、ユーザに識別可能な状態で提示部121に提示(表示)される。なお、要求される情報は、例えば、いずれかのウエブサーバに用意されているコンテンツであり、これを識別するためのIDとしては、URLなどを用いることができる。
【0030】
また、要求された情報が情報データベース112にない場合、URLで特定されるウエブサーバに接続して対応する情報を取得し、これを端末装置102に送出する場合もある。また、識別子であるURLを要求に対する回答として端末装置102に送出する場合もある。
【0031】
一方、情報提供サーバ101では、コンテキスト−ID登録部116が、受け付けたコンテキストと情報のIDとを関連付けてコンテキスト関連情報を生成し、関連付けデータベース111に記憶させ、データベースを更新する。例えば、コンテキスト−ID登録部116は、要求された情報のID(例えばURL)に対して要求とともに得られたコンテキストを関連付け、関連付けデータベース111に登録し、またデータベースを更新する。
【0032】
関連付けデータベース111は、例えば、表1に示したように、要求された情報を識別するためのURLに対し、同時に受け付けた経度と緯度とからなる位置情報を、コンテキストとして関連付け、コンテキスト関連情報として記憶している。この状態で、情報提供サーバ101が受け付けた要求情報のIDが「http://www.□□.ac.jp/」であり、また、コンテキストとして「緯度66 12 22.9、経度153 19 21.8」を受け付けると、コンテキスト−ID登録部116は、これらを関連付けて関連付けデータベース111に登録する。この結果、関連付けデータベース111は、以下の表2に示すように、データベースが更新される。
【0033】
【表2】

【0034】
以上に説明したように、図1に示す情報提供サーバ101では、情報送出要求を受け付けることで、同時に受け付けたコンテキストを、受け付けた送出要求の情報の識別子(URL)に関連付け、関連付けデータベース111に登録する。このようにして関連付けデータベース111に追加されていくコンテキストは、コンテキスト−アウェアーな情報の提示の際に利用可能となる。
【0035】
ところで、関連付けデータベース111は、情報のIDとコンテキストとが関連付けられて記憶されている必要はない、関連付けデータベース111は、取得の要求を受け付けた情報と、この情報の特性としての所定のコンテキストとの関連を示し、コンテキストにより情報を特定することを可能とするコンテキスト関連情報から構成されていればよい。従って、コンテキスト−ID登録部116は、受け付けたコンテキストと情報との関連が示されたコンテキスト関連情報を生成し、関連付けデータベース111に記録するものであればよい。
【0036】
なお、情報提供サーバ101及び端末装置102は、CPUと主記憶装置と外部記憶装置とネットワーク接続装置となどを備えたコンピュータ機器であり、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作することで、上述した各機能が実現される。また、各機能は、複数のコンピュータ機器に分散させるようにしてもよい。
【0037】
ここで、コンテキストとなる位置情報について説明する。
近年の携帯端末は位置計測できるものが少なくない。例えば、GPSが掲載された携帯電話では、携帯電話の位置を計測することができる。また、PHSと基地局の距離が近いと電界強度が強くなり、遠いと弱くなるという特性を利用した位置計測により、PHSの位置情報の取得も一部で実用化されている。電界強度を用いなくても、通信している基地局を特定することで携帯電話やPHSなどの大まかな位置を検出することが可能である。
【0038】
これらの位置計測技術を用いれば、携帯電話などの携帯端末から情報の送出要求を受け付けるときに、情報の要求もとの携帯端末から送出された位置情報を受け付けることができる。このようにして、情報の送出要求とともにコンテキストとして位置情報を受け付け、受け付けた送出要求の情報のIDに、受け付けたコンテキスト(位置情報)を関連付けて関連付けデータベースに記憶させることで、次に示すように、コンテキスト−アウェアーな情報の提供が可能となる。
【0039】
例えば、時系列的に後に、関連付けられている位置情報で示される場所に来たユーザの所有する携帯端末に対し、この携帯端末から位置情報がコンテキストとして送出されていれば、携帯端末からの要求がなくても、上記情報を送出(提供)することができる。ユーザによる操作などで、コンテキスト−アウェアーな情報の要求が携帯端末装置に入力され、この結果、携帯端末装置からコンテキストが送出されれば、情報提供サーバ101では、コンテキスト−ID変換部113が、コンテキストに対応する情報のIDを関連付けデータベース111から引き出し、引き出したIDを情報取得部114に送る。
【0040】
このことにより、情報取得部114は、情報データベース112からIDに対応する情報を取得する。このようにして取得された情報は、通信部115−通信網104を介し、コンテキスト情報を送ってきた端末装置102に対して送信される。この結果、端末装置102では、URLで特定される情報の送出要求がなされていなくても、端末装置102が存在している場所に関連する情報が、提示部121によりユーザに認識可能な状態で提示(表示)されるようになる。また、端末装置102より、定期的に位置情報を情報提供サーバ101に送り続けることで、ユーザの明示的な操作入力がなくても、情報提供サーバ101が、ユーザに有用な可能性がある情報を、自動的に端末装置102に送出することも可能となる。
【0041】
次に、コンテキストの他の例について説明する。同一のコンテキストとともに受け付けた同一の情報の送出要求の回数を、受け付けた情報のコンテキストとして加えることで、情報提供の精度を高めることができる。例えば、情報の送出要求として受け付けた同一の情報の受け付け回数をコンテキストとして用いるようにしてもよい。受け付けた同一の要求の回数をコンテキストとして用いることで、精度を高めることができる。閲覧された回数の多いホームページを、関連付けられているコンテキストの中の位置情報と同一の位置情報の送出元に、優先的に送出する。
【0042】
以下に示す表3は、上述した回数をコンテキストとして関連付けられている状態を示している。表3には、コンテキストとして、「緯度23 53 11.0、経度154 12 23.2」が関連付けられている情報のID(URL)が4つある。この中で、「http://www.□□.ac.jp/」は、閲覧(情報の送出要求)の回数が10と一番多い。
【0043】
【表3】

【0044】
従って、「http://www.□□.ac.jp/」をIDとする情報は、「緯度23 53 11.0、経度154 12 23.2」がコンテキストとして送出されてきた端末装置に対し、コンテキスト−アウェアーに提供する情報に最も適しているものとすることができる。これにより、上記位置情報をコンテキストとして送出されてきた端末装置のユーザに対し、「http://www.□□.ac.jp/」をIDとする情報を最初に提示し、また、閲覧回数の多い順に順序付けして提示することが可能となる。
【0045】
また、複数の地点からこの地点を示すコンテキストともに要求された情報に関しては、複数の地点を含む区画をコンテキストとし、上記情報に関連付けるようにしてもよい。上記区画内より位置情報をコンテキストとして送出してきた端末装置に対し、上記情報を送り出し、端末装置のユーザに対して提示することができる。複数地点の中心地点を求め、中心に近いほど提示の優先度を高めるといった方法も考えられる。
【0046】
また、情報の送出要求とともに関連付けるコンテキストに、時刻を用いるようにしてもよい。上述した位置や回数などとともに頻繁に用いられるコンテキストとして、時間(時刻)が挙げられる。図1に示すシステムにおいて、情報提供サーバ101では、コンテキスト−ID登録部116が、端末装置102より要求された情報のIDと、コンテキストである端末装置102からの位置情報とを関連付けデータベース111に記録する際に、同時に時刻も記録する(表4参照)。
【0047】
【表4】

【0048】
これにより、情報提供サーバ101では、端末装置102から、コンテキストとして端末装置102の位置情報を取得すると、まず、コンテキスト−ID変換部113が、取得した時刻もコンテキストとして用い、位置と現在の時刻に対応する情報のIDを関連付けデータベース111から取得する。この後、情報取得部114が、取得されたIDに対応する情報を情報データベース112から取り出し、取り出された情報は、通信部115により、対応する端末装置102に送出される。この結果、ユーザの位置に加えて時刻をコンテキストとした、コンテキスト−アウェアーな情報の提供が可能となる。
【0049】
また、位置,時刻に加え、前述した回数をコンテキストとして用いるようにしてもよい。所定の時間帯に、同一のコンテキストとともに受け付けた同一の情報の送出要求の回数を、受け付けた情報のコンテキストとして加える。このことにより、例えば、特定の時間帯に閲覧されることが多い情報に対しては、時間帯を関連付けることで、コンテキストの精度を高めることができる。また、最近閲覧される頻度が多い情報ほど、情報提供の高い優先度で情報を提供するようにしてもよい。
【0050】
また、「RFID」やQRコードなどの二次元バーコードなどの情報をコンテキストとして用いるようにしてもよい。これらの情報は、商品に対してタグとして付与され、これらの情報で、商品の種類や販売地域などの位置の特定が可能となる(Jun Rekimoto and Yuji Ayatsuka, "CyberCode: Designing Augmented Reality Environments with Visual Tags", DARE 2000,2000)。これらの技術を用い、ユーザが商品情報を要求(閲覧)したときに、周囲に存在したもの(商品)をコンテキストとして記録し、端末装置を所有しているユーザを中心とした一定の範囲内にある商品を認識することができる。
【0051】
例えば、図1のシステムにおいて、ユーザの操作により端末装置102から情報の送出要求を情報提供サーバ101に出す際に、端末装置102の周囲にあるもの(商品)の情報が情報提供サーバ101に送信されれば、端末装置102の周囲に存在したものをコンテキストとし、送出要求のあった情報(ID)と関連付けて関連付けデータベース111に登録することができる。このようにすることで、関連付けデータベース111に登録されたモノ(商品)の側にいる人に対して、モノと関連付けられた情報を提示することができる。
【0052】
一例として、ユーザが、店舗に陳列されているビデオカメラの側で、ビデオカメラの取り扱いに関するホームページを、端末装置102を用いて閲覧する場合を例に説明する。このようなユーザの操作により、上記ホームページの送出(閲覧)要求が、端末装置102から送出されるとともに、上記ビデオカメラが特定される情報が、コンテキストとして送出される。なお、上記ホームページは、所定のURLで特定されるウエブサーバに用意されているものである。
【0053】
送出された要求とコンテキストとは、通信網115を介して通信部115に受信され、通信部115で受け付けられた情報の送出要求は、情報取得部114に渡され、コンテキストは、コンテキスト−ID登録部116に渡される。情報取得部114は、受け付けられた情報の送出要求に対応する情報を、情報データベース112から取得し、取得した情報のIDをコンテキスト−ID登録部116に通知する。また、情報取得部114は、取得した情報を通信部115に送る。
【0054】
また、コンテキスト−ID登録部116は、受け付けたコンテキストと情報のIDとを関連付け、関連付けデータベース111に記憶させ、データベースを更新する。例えば、コンテキスト−ID登録部116は、受け付けた送出(閲覧)要求対象のホームページのURLに対して同時に受け付けた「ビデオカメラが特定される情報」を関連付け、関連付けデータベース111に登録し、またデータベースを更新する。
【0055】
このように更新された関連付けデータベース111により、同機種のビデオカメラが販売されている箇所(店舗)を示すコンテキストが端末装置102から送出されると、端末装置102からの情報送出要求がなくても、当該ビデオの取り扱いに関するホームページを、コンテキスト−アウェアーに送出(提示)することが可能となる。
【0056】
また、情報の送出が要求されたときの心拍数,血圧,温度,湿度,情報が送出された端末装置のある地域の天気など、センサやその他の情報源から取得可能な地域やユーザの状況に加え、ユーザが予め携帯端末に入力しておいたユーザの趣味、嗜好などなども、コンテキストとして用いることができる。
【0057】
また、現在の状況だけでなく、閲覧者の過去の行動履歴もコンテキストとして利用可能である。近年、ユーザが所有する携帯端末やウエアラブルコンピュータなどを用いた、ユーザの体験を記録する研究が盛んに行われているが、一定期間内のユーザの行動履歴をコンテキストとして利用することで、コンテキスト−アウェアーな情報提示をより正確に行うことができる。
【0058】
例えば、端末装置102が配置されている地点(地点A)とは異なる他の場所(地点B)における特定の情報の送出要求が、端末装置102より送出された場合、地点Aと地点Bの両方の位置情報をコンテキストとして関連付け、関連付けデータベース111に記録することで、ユーザの履歴をコンテキストとして利用することができる。
【0059】
例えば、上記特定の情報の送出要求に地点Aの位置情報がコンテキストとして関連付けられている場合、地点Bから地点Aに移動してきた端末装置102に対しても、地点Bにおける特定の情報が、コンテキスト−アウェアーに提供されることになる。これに対し、前述したように、履歴がコンテキストとして関連付けられ、また、移動の履歴がコンテキストとして端末装置から送出されれば、移動の履歴中に地点Bがない場合に、地点Bにおける特定の情報を、コンテキスト−アウェアーに提供することができる。
【0060】
このように、閲覧(情報の送出要求)時の状況だけでなく、閲覧にいたるまでの一定時間内のユーザ(端末装置)の行動(移動)履歴などをコンテキストとして情報と関連付けることで、コンテキスト−アウェアーな情報提示をより正確に行うことができる。
【0061】
ところで、上述では、端末装置からコンテキストが送出される場合を示したが、これに限るものではない。例えば、PHSなどが通信している基地局の情報を、位置情報(コンテキスト)として利用すれば、端末装置からコンテキストが送出されなくても、情報にコンテキストを関連付けて記憶しておくことができる。また、時刻をコンテキストとして用いる場合、端末装置から情報の要求が送出された時刻を利用してもよく、また、端末からの情報の要求を受け付けた時刻を利用してもよい。後者の場合、端末装置からコンテキストとして時刻の情報が送出される必要がない。
【0062】
このように、ユーザの携帯端末やユーザに装着されたGPSなどのセンサを用いて取得されて、携帯端末より送出されたコンテキストを用いてもよく、情報提供サーバ101もしくは情報提供サーバ101に接続されたセンサなどが端末装置の状況を認識し、認識した結果をコンテキストとして用いるようにしてもよい。
【0063】
ところで、発明者らは、ユーザの実世界における情報取得行動が、「目に入る情報を漠然と眺める行動(Browsing)」と「特定の物に興味を持ちこの詳細を知ろうとする行動(Retrieval)」に大別されていることに着目し、「Browsing」モードのユーザに対してはプロジェクタを用いて情報を提示し、「Retrieval」モードのユーザに対しては携帯端末で情報を提示する方式を提案している(白井良成,松下光範,「IRプロジェクタを用いた実環境への情報提供手法の提案」,情報処理技術レターズ,(FIT2003), Vol1.2,pp287-289,2000. 白井良成,松下光範,大黒毅,「秘映プロジェクタ:不可視情報による実環境の拡張」,インタラクティブシステムとソフトウエア研究会(WISS2003), pp.115-122,2003.)。この中で、各々のモード間のシームレスな移行を実現するため、携帯端末との連携を可能とするマーカなどを赤外光を用いて投影可能なプロジェクタ(秘映プロジェクタ)を提案し、実現している。
【0064】
上記文献においては、情報とコンテキストの関連付けについては言及していないが、本発明と組み合わせることで、情報とコンテキストの関連付けも含んだ方法を実現することができる。例えば、最近では、多くの人が居酒屋で携帯電話を使って終電の時間を調べている光景を見かけるが、この状態から「OO駅側の居酒屋、夜という状況に置かれた人にとっては終電車案内のページが有益である可能性が高い」と捉えることが可能である。
【0065】
携帯電話を使って実際に終電を調べているユーザは、すでに欲しい情報が明確であり、「Retrieval」モードのユーザであるといえる。このようなユーザは、コンテキスト−アウェアーに情報が提示されなくても、所望とする情報を自ら検索して取得することができる。前述した本発明により、これらのユーザの閲覧した情報は、ユーザのコンテキストとともに関連付けデータベースに蓄積される。
【0066】
しかし、居酒屋には、話などに夢中で終電に気づかないユーザも多くいることも考えられる。これらの人は、終電を乗り遅れる可能性もある。これらのユーザは、欲しい情報が明確化していないユーザであると捉えることができ、「Browsing」状態のユーザであるといえる。このようなユーザに対しては、コンテキスト−アウェアーに情報を提示することが有用である。
【0067】
前述したように、本発明を用いれば、○○駅側の居酒屋(位置情報)と夜(時間帯)というコンテキストと、終電車案内のホームページ(要求情報)とを関連付けることができ、例えば、発明者らが提案している文献の方法と組み合わせることで、「○○駅側の居酒屋の壁に夕刻を過ぎると終電車案内のページのアイコンを提示(表示)する」などの、コンテキスト−アウェアーな情報の提示が可能となる。これにより、「Browsing」モードのユーザは、提示されたアイコンを見ることで、終電車案内のページが現在有益であるということに気づくことが可能となる。
【0068】
上述した本発明の実施の形態では、端末から要求された情報とコンテキストとを関連付けているため、関連付けデータベースにおける精度が高いものとなるが、実際には、要求された情報が、コンテキストに適した情報ではない場合もある。例えば、上述した居酒屋の例では、終電車案内のホームページを利用する習慣がないユーザは、まず、検索用ホームページ(http://www.yahoo.co.jp/、http://www.google.co.jp/など)にアクセスする可能性が高いと想定できる。
【0069】
このような検索用のホームページは、様々なコンテキストで頻繁に使われる可能性が高い。従って、例えば、閲覧頻度の高い順にコンテキスト−アウェアーに情報を提示すると、多くのコンテキストで検索用のページが提示されてしまう可能性が高くなる。しかしながら、コンテキスト−アウェアーな情報提示では、端末装置のある場所でユーザが要求する情報を提示することを目的としており、情報を探すための検索用のホームページは、コンテキスト−アウェアーな情報提示に適しているとはいい難い。
【0070】
ここで、特定のコンテキストによらず様々なコンテキストで平均的に閲覧(要求)されている情報は、コンテキスト−アウェアーに提示する情報から削除するようにしてもよい。例えば、表2のような形式で登録されているデータベースであれば、特定の情報IDに関連付けられている位置情報群の分散を各々計算し、分散の値が一定の閾値を超えた情報に関しては、コンテキスト−アウェアーに提示する情報として扱わないようにしてもよい。このような処理をすることにより、コンテキストに依存せずに閲覧される情報を削除することが可能となる。
【0071】
また、情報閲覧者より得られた閲覧した情報に対する評価を用い、コンテキストと情報の関連付けの精度を高めるようにしてもよい。例えば、閲覧した情報が役に立ったか否かに関する評価を、閲覧後に3〜5段階程度で閲覧者に評価してもらい、以下の表5に示すように、得られた評価値を、情報ID及びコンテキストと共に関連付けデータベースに登録する。表5では、役に立ったという評価を5とし、役に立たなかったという評価かを1としている。
【0072】
【表5】

【0073】
加えて、例えば複数回閲覧されている情報各々に評価値の平均を算出し、平均の高い順に順序付けする。このような順序に基づきユーザに情報を提示していくことで、コンテキストに適した情報を閲覧者の評価を用いて高精度に提示することができる。ユーザの評価を利用する方式は協調フィルタリングの分野で盛んに研究が行なわれている(船越 要, 大黒 毅,「利用者の得意分野を考慮した内容に基づく協調フィルタリング」,電子情報通信学会論文誌, Vol.J83-DI, No.11, pp.1224-1227,2000.参照)。
【0074】
なお、上述では、図1に示すように、情報提供サーバ101と端末装置102とによるサーバ−クライアント型の構成を例に説明したが、これに限るものではない。図1に示す端末装置102の内部に、関連付けデータベース111,コンテキスト−ID変換部113,及びコンテキスト−ID登録部116を備えるようにしてもよい。また、これらに加え、情報取得部114を、端末装置102の内部に備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態における情報処理装置を用いた情報提供システムの構成例を示す構成図である。
【図2】従来よりあるコンテキスト−アウェアーな情報提示システムの構成例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0076】
101…情報提供サーバ、102…端末装置、104…通信網、111…関連付けデータベース、112…情報データベース、113…コンテキスト−ID変換部、114…情報取得部、115…通信部、116…コンテキスト−ID登録部、121…提示部、122…コンテキスト取得部、123…センサ、124…通信部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網を介して受け付けられた取得の要求に対応する情報と所定のコンテキストとの関連を示し、前記コンテキストにより前記情報を特定するためのコンテキスト関連情報が記憶された関連付けデータベースと、
受け付けたコンテキストに対応するコンテキスト関連情報を前記関連付けデータベースから取得するコンテキスト変換手段と、
このコンテキスト変換手段が取得した前記コンテキスト関連情報をもとに関連する情報を取得する情報取得手段と、
特定情報の要求を前記通信網を介して受け付けるとともに得られた前記要求もとの状態を示すコンテキストと前記特定情報との関連を示すコンテキスト関連情報を前記関連付けデータベースに記録する登録手段と
を少なくとも備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報処理装置において、
前記取得の要求は、前記通信網を介して接続された端末装置から送出されたものである
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の情報処理装置において、
前記要求もとの状態を示すコンテキストは、前記通信網を介して接続された端末装置から送出されたものである
ことを特徴とする情報処理装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−79313(P2006−79313A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262034(P2004−262034)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】