説明

情報提供システム

【課題】 ペットを同伴した顧客が、互いに連携した複数のペット関連店舗のいずれに来店した場合においても、顧客による過去の店舗利用実績を考慮した店舗側への能動的かつタイムリーな情報提供が可能な情報提供システムを提供する。
【解決手段】 マイクロチップ302の埋設された各ペットが店舗を利用した際に、その利用内容を反映した個別店舗利用内容データを、マイクロチップ302に書き込まれている個体識別コードCIDと一対一に対応付けた形で情報提供サーバに記憶蓄積する。そして、各端末装置8では、来店したペットに埋設されたマイクロチップ302からマイクロチップ読取装置303により個体識別コードCIDを読み取り、通信網4を介して情報提供サーバにアクセスすることで、読み取られた個別店舗利用内容データを取得し出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報提供システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2003−58729号公報
【特許文献2】特開2002−10720号公報
【特許文献3】特開2006−185394号公報
【0003】
近年、ペットビジネスは多様化の道をたどっており、例えば、ペットショップの他、動物病院、トリミングショップ(ペット美容院)、ペットホテル等の店舗が提携ないし連携して、より総合的な商品ないしサービス提供が展開されるようになってきている。例えば、特許文献1には、ペット用品ショップ及び動物病院に係るインターネットの総合サイトに係る発明概念が開示されている。インターネットならではの機能として、広域に散在するショップや病院をリンクにより一体化し、さらにその検索機能を付与することで、これからペットを購入しようとしている人や、既に購入して飼育している人が、最適な近隣のショップを迅速に見出すことができるように工夫されている。また、会員登録された動物病院の獣医師による助言情報がデータベース化され、飼っているペットに病気等の異変が生じたときの対処方法に関する情報も取得できるようになっている。
【0004】
一方、ペットなどの動物が迷子になったときにその所有者に連絡する目的で、近年、ペット用のマイクロチップを用いた手法が注目されている。この手法は、動物の皮膚の下に識別情報を記憶したマイクロチップを埋め込み、読み取り機により当該マイクロチップから識別情報を読み出すことで当該動物を識別するものである。特許文献1には、このマイクロチップとして、製造元で付されたIC製造番号(秘密鍵)を識別情報として記憶したものを用い、そのそのマイクロチップが埋設されたペットの所有者(飼い主)IDを上記識別情報と対応付けて割り振るとともに、当該識別情報及び所有者IDと所有者個人情報とを対応付けて記憶する一方、該所有者IDを記憶したカードを所有者に対して発行する手法が開示されている。所有者個人情報の記憶装置には、ペットの血統情報を格納するエントリや、獣医師による健康診断情報なども格納される。なお、特許文献2には、血統情報そのものをマイクロチップに格納し、読み取り機にて血統情報を直接取得する方法も提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明では、情報収集の動機があくまで顧客側に存在し、しかも店舗訪問前の情報提供に限られるため、顧客が実際に店舗に赴いてから発生するビジネスイベントに対応した店舗側のサービス向上に係る情報提供には何ら寄与しない。まして、顧客による過去の店舗利用実績を考慮して店舗側から能動的かつタイムリーな情報提供を行なう、という観点においては全く無力に等しい問題がある。他方、特許文献2に開示された方式では、迷子になったペットの飼い主探索に目的が絞られており、迷子対応時の情報入力等が動物病(店舗の一種)の端末装置にて行なわれる以外は、マイクロチップの読み取りは、保健所など店舗とは無関係の動物認証機関に置かれたサーバ装置にて専ら実施される。そして、マイクロチップに格納された識別情報も、所有者が保持するカードから読み取った所有者IDとの対応関係を調べることにより、迷子ペット引渡しに際して真の所有者であるか否かを確認する目的に使用されるに過ぎず、動物認証機関とは無関係な店舗を利用する際の店舗側サービスの向上につながる情報提供には何ら貢献しないものである。この事情は、血統情報の提供を主目的とする特許文献3においても同様である。
【0006】
また、特許文献1においては、マイクロチップに格納されている情報は、ISOに準じつつもチップ製造元が任意で付与するIC製造番号(秘密鍵)なので、所有者IDを併用しなければ個体特定に係る十分な識別性が担保されているとは言い難い問題もある。
【0007】
本発明の課題は、ペットを同伴した顧客が、互いに連携した複数のペット関連店舗のいずれに来店した場合においても、顧客による過去の店舗利用実績を考慮した店舗側への能動的かつタイムリーな情報提供が可能な情報提供システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の情報提供システムは、
各々ペット関連店舗に配置されるとともに通信網を介して互いに接続された複数の端末装置と、
端末装置に各々個別に接続されるとともに、ペット関連店舗に持ち込まれる個々のペットに埋設されたマイクロチップに記憶されているISO11784に準拠した個体識別コードを、RFID方式によりISO11785に規定された無線通信規格に従い読み取るマイクロチップ読取装置と、
通信網に接続され、端末装置にて入力される、マイクロチップの埋設されたペットのペット関連店舗の利用内容を反映した個別店舗利用内容データを、マイクロチップに書き込まれている個体識別コードと一対一に対応付けた形で記憶蓄積する店舗利用データベースを有した情報提供サーバとを有し、
かつ、各端末装置に、
通信網を介して情報提供サーバにアクセスし、来店したペットに埋設されたマイクロチップからマイクロチップ読取装置にて読み取られた個体識別コードに対応する個別店舗利用内容データを取得し出力する個別店舗利用内容データ取得出力手段と、が設けられたことを特徴とする。
【0009】
本発明の情報提供システムにおいては、取得すべき情報(データ)を特定するために、ペットに埋設されたマイクロチップに格納される個体識別コードを利用する。マイクロチップはいわゆるRFID(Radio Frequency IDentification)デバイスとして構成された電子標識器具であり、メモリ及び周辺回路をなすIC(電子回路)と、電波励起発振用のコンデンサ及び電磁コイルから構成される。マイクロチップの全体は生態適合ガラス(鉛を含まないガラス)に封入され、注射器状の専用の挿入器(使い捨てタイプ)でペット(犬やねこ等)の背側頚部皮下に埋め込まれる。それぞれのマイクロチップには全世界でユニーク(唯一)な個体識別コードが記憶されており、マイクロチップ読取装置(リーダ)から発信される電波によって該個体識別コードが反映された応答電波が励起・出力され、これを読取装置側で受信し内容解析して個体識別を行なう。マイクロチップ本体には電池が不要であり、半永久的な使用が可能である。
【0010】
従来、顧客の店舗利用データを蓄積管理する形態は、例えば店舗が発行する会員カードを媒介として会員カード上のIDを読み取り、対応するデータ(レコード)をサーバから読み出して閲覧したり、あるいは購入やサービス利用に係る新規データの入力・更新を行なったりしていた。しかし、こうした店舗の店員なら、誰しも次のような問題を経験しているはずである。
(1)顧客が会員カードを忘れてきた場合は、電話番号や顧客名などをその都度入力してデータを呼び出さなければならず、手間がかかる。特に、引越しなどにより住所や電話番号が変わっていたり、結婚や養子縁組等により姓名が変更されていたりすると、必要なデータにたどり着くまでにかなりの時間を要し、場合によってはデータ閲覧を断念せざるを得ないこともありえる。
(2)顧客は会員カードを破損したり紛失したりすることもある。この場合、(1)と同様の問題を生ずるほか、会員カードを再発行しなければならないし、第三者によるカードの悪用を防ぐために、カード停止措置が必要になることもありえ、面倒である。
(3)混雑時等において会員カードを取り違えれば、アクセスされるデータもたちどころに取り違えられることになり、混乱を来たす。
【0011】
しかしながら、本発明においては、情報提供サーバへのアクセスに際しては上記の会員カードではなくマイクロチップを第一義的に使用する点に特徴がある。すなわち、マイクロチップは、迷子探索用としての本来の使用目的からも自明な通り、一端ペットに埋設されればペットと一体不可分となり、ペットを連れて飼い主がペット関連店舗を訪れる際には、マイクロチップもペットに随伴して必ず店舗に持ち込まれることになる。そして、本発明では、(業務連携する)複数のペット関連店舗にそれぞれ端末装置を配置してこれを通信網により接続するとともに 端末装置に上記のマイクロチップ読取装置を個別に設ける。他方、マイクロチップの埋設された各ペットが上記ペット関連店舗を利用した際には、その利用内容を反映した個別店舗利用内容データを、上記マイクロチップに書き込まれている個体識別コードと一対一に対応付けた形で情報提供サーバに記憶蓄積する。そして、各端末装置では、来店したペットに埋設されたマイクロチップからマイクロチップ読取装置により個体識別コードを読み取り、上記通信網を介して情報提供サーバにアクセスすることで、読み取られた個別店舗利用内容データを取得し出力することができる。これに対応して、情報提供サーバには、個体識別コードが特定するペットの飼い主をペット関連店舗の利用会員として登録するための会員登録記憶部を設けることができる。
【0012】
これにより、上記3つの課題は以下のごとく、ことごとく解決することができる。
(1)ペットに埋設されたマイクロチップが、いわば従来の会員カードの代わりを果たすので、顧客(飼い主)がペットを随伴して来店する限り、データアクセスのキーとなる個体識別コード(ID)の媒体を、店外に「置き忘れてくる」ということが原理的に生じ得ない。従って、連れて来られたペットのマイクロチップの個体識別コードを読み取るだけで情報提供サーバへのアクセスを迅速に行なうことができ、電話番号や顧客名などによる代替アクセスの手間は一切生じない。また、引越しなどにより住所や電話番号が変わっていたり、結婚や養子縁組等により姓名が変更されていたりするなど、飼い主の個人情報が変更されていても、マイクロチップの個体識別コードは半永久的に変化しないため何ら影響を受けず、読み取った個体識別コードにより必要なデータに直ちにたどり着くことができる。
【0013】
(2)マイクロチップは、会員カードのごとく破損したり紛失したりする惧れがなく、再発行等の手間が生ずることがない。
(3)マイクロチップに格納された個体識別コードは、ISO11785に従う限りチップ毎に世界唯一であり、しかも、ペットに一体不可分に埋設されるので、ペット間での取り違えが生ずる可能性は限りなくゼロに近く、理想的な識別性が得られる。従って、情報提供サーバ上にペット毎の個別店舗利用内容データを蓄積して店舗利用データベースを構築する際にも、個々の個別店舗利用内容データを特定するIDとして直接的に利用することができ、個々の端末装置から情報提供サーバへのデータアクセス手続も大幅に簡略化できる。
【0014】
(4)各店舗の端末装置のいずれにもマイクロチップ読取装置が備え付けられているので、どの店舗にペットを連れて赴いても、マイクロチップの個体識別コードを読み取ることで、その店舗の個別店舗利用内容データのみならず、他の店舗の個別店舗利用内容データにもアクセスすることができ、店舗側では顧客に対しより幅の広い情報提供が可能となる。すなわち、同じペットに対する各店舗での個別店舗利用内容データを、それら複数の店舗間で容易に共有化することができる。
【0015】
情報提供サーバは、端末装置とは別に設けられた管理装置上に集約的に構築することもできるし、複数の端末装置に兼用される形でそれら端末装置上に分散構築することも可能である。特に後者の構成は、個々の端末装置を情報提供サーバに兼用できる点でコスト上も有利である。
【0016】
複数の端末装置は、業種の互いに異なるペット関連店舗の端末装置を混在させて含むものとして構築することができる。この場合、各端末装置の個別店舗利用内容データ取得出力手段は、情報提供サーバにアクセスすることにより、業種の異なるペット関連店舗の個別店舗利用内容データを取得し出力することを可能に構成しておけば、ある店舗に来店した顧客に対し、異業種ペット関連店舗の利用内容データを参照することで、より幅の広いへのサービス対応を行なうことができる。
【0017】
個別店舗利用内容データ取得出力手段は、情報提供サーバから、端末装置が設置されるペット関連店舗の業種に応じて、個別店舗利用内容データのうち当該業種に特有の予め定められた種別のデータを選択して取得・出力するように構成することが可能である。つまり、業種の異なる店舗の端末装置が連携してシステムを構築している場合、個別店舗利用内容データも店舗毎に収集され、利用する店舗の種別が増えるほど蓄積されるデータ内容も雑多なものとなる。しかしながら、上記の構成であれば、顧客が訪問する店舗の種別に関連した情報が選択されて、その店舗の端末装置に出力されるので、該店舗を訪れている顧客のニーズに合致した情報を、他の不要な情報に埋没させることなく的確に取得することができる。
【0018】
この場合、端末装置には、該端末装置が設置されるペット関連店舗の業種特定データを記憶する業種特定データ記憶手段と、個体識別コードとともに業種特定データを情報提供サーバに送信する送信手段とを設けることができる。情報提供サーバには、業種特定データと個別店舗利用内容データにおいて選択すべきデータ種別とを対応付けたデータ選択テーブルの記憶手段と、該データ選択テーブルを参照して、受信した個体識別コードに対応する個別店舗利用内容データにて、受信した業種特定データに対応するデータ種別に属するデータを抽出するデータ抽出手段と、抽出されたデータを端末装置に配信する抽出データ配信手段とを設けることができる。
【0019】
複数の端末装置はペット関連店舗をなす動物病院に設置される動物病院端末装置を含むものであり、個別店舗利用内容データは動物病院にてペットが受けた診察ないし医療処置の内容を記録したドクターカルテデータを含むものであり、個別店舗利用内容データ取得出力手段は該ドクターカルテデータを取得し出力するものとすることができる。これにより、各店舗ではドクターカルテデータの参照により、診察ないし医療処置の履歴を容易に把握することができ、来店したペットの最新の健康状態や予防接種の実施状況などを把握しつつ、顧客へのより的確なサービス提供やアドバイスを行なうことができる。
【0020】
また、複数の端末装置は、ペット関連店舗をなす、少なくともペットトリミングをサービス提供可能なトリミングショップ(ペット美容院等も同義)に設置されるトリミングショップ端末装置を含むものとすることもできる。個別店舗利用内容データはトリミングショップにてペットが受けた美容手入れ処置の内容を記録したビューティカルテデータを含むものであり、個別店舗利用内容データ取得出力手段は該ビューティカルテデータを取得し出力するものとすることができる。これにより、各店舗ではビューティカルテデータの参照により、過去に行なったトリミング処理の内容を容易に把握することができ、顧客へのより的確なサービス提供やアドバイスを行なうことができる。例えば、ビューティカルテデータにはペットに対し美容手入れ処置を行なった際の留意事項を反映した所見データや、ペットのトリミングを行なう際に使用した用具や資材(例えばシャンプー種別など)の情報を反映しておくと効果的である。
【0021】
なお、ペットを連れて旅行したり、遠方へ外出したりした場合に、普段行きつけでない動物病院やトリミングショップを利用することもありえる。この場合、複数の端末装置は、所在地の異なる複数の動物病院端末装置及び複数のトリミングショップ端末装置の少なくともいずれかを含むものとし、情報提供サーバに記憶されている各ペットのドクターカルテデータないしビューティカルテデータは、複数の動物病院端末装置のいずれからも、マイクロチップ読取装置にて個体識別コードを読み取ることにより取得アクセスが可能とすることができる。これにより、ドクターカルテデータないしビューティカルテデータを複数の動物病院ないしトリミングショップにて共有化できるので、例えば、顧客が普段訪れない動物病院ないしトリミングショップを訪れた際にも、ペットが過去に受けた医療処置やトリミング処理の履歴を容易に参照でき、的確な対応を行なうことができる。
【0022】
各ペットのドクターカルテデータ又はビューティカルテデータは、端末装置とは別に設けられた管理装置を情報提供サーバとする形で集約的に記憶することができる。しかし、提携する店舗の数が増え、管理すべきデータ数が増えれば、情報提供サーバを前述のごとく複数の端末装置に兼用させ、個別店舗利用内容データを分散蓄積することが望ましい場合もある。この場合、各店舗の端末装置で入力された個別店舗利用内容データが、その端末装置にて通信網を介さずに個別に蓄積されてゆくことになる。ただし、動物病院やトリミングショップにて使用する顧客(ペット)別のカルテの場合、個々の顧客が複数の動物病院ないしトリミングショップを訪れる場合においても、カルテそのものはデータ的には店舗別に細切れにするのではなく、1箇所にまとまっていることがカルテ閲覧の便宜を図る上でも当然望ましい。
【0023】
この場合、例えば、店舗が動物病院である場合は、複数の動物病院のいずれかを各ペットの登録先病院として定めておくようにする。各ペットのドクターカルテデータは、個々のペットの登録先病院に設置された動物病院端末装置を情報提供サーバとする形で分散記憶する。また、店舗がトリミングショップである場合は、複数のトリミングショップのいずれかを各ペットの登録先ショップとして定めておくようにする。各ペットのビューティカルテデータは、個々のペットの登録先ショップに設置されたトリミングショップ端末装置を情報提供サーバとする形で分散記憶する。いずれの場合も、各ペットの個体識別コードと登録先動物病院ないし登録先ショップとの対応関係については、通信網に接続された管理装置に記憶しておくことが望ましい。この場合、いずれかの店舗の端末装置を要求元端末装置として個体識別コードの読み取りが行なわれると、まずこれが管理装置へ送信され、その個体識別コードのペットが登録されている店舗(端末装置)が検索され、その結果が要求元端末装置に返される。要求元端末装置はこれを受け、登録先の店舗の端末装置にアクセスして個体識別コードに対応するカルテデータを受け取る手順となる。なお、要求元端末装置が個体識別コードを含んだデータフレームを通信網上にブロードキャスト送信し、これを受けた各端末装置がその個体識別コードに対応するカルテデータが存在するかどうかを確認して、カルテデータが存在すればこれを読み出し要求元端末装置に配信する方式を採用してもよい。
【0024】
ひとまとまりのカルテデータを複数店舗で共有しつつ、店舗利用イベントが発生する毎にこれを更新する方式としては、例えば、以下のようなものを例示できる。すなわち、複数の端末装置には、ペットに対応するドクターカルテデータないしビューティカルテデータの更新入力を行なうためのカルテ更新入力手段と、個体識別コードに対応するドクターカルテデータないしビューティカルテデータが、更新入力を行なっている端末装置上に存在しない場合に、更新入力内容を個体識別コードとともに、当該ドクターカルテデータないしビューティカルテデータが格納された情報提供サーバに対し通信網を介して送信するカルテ更新内容送信手段とを設ける。そして、情報提供サーバには、受信した個体識別コードに基づいて更新対象となるドクターカルテデータないしビューティカルテデータを特定するとともに、受信したカルテ更新内容に基づいて該ドクターカルテデータの内容更新を行なうドクターカルテ更新手段を設ける。
【0025】
次に、トリミングショップ端末装置にて個別店舗利用内容データ取得出力手段は、具体的にはビューティカルテデータに加えドクターカルテデータも取得・出力可能としておくことができる。ドクターカルテデータの参照によりペットの健康状況を把握しつつ、ビューティカルテデータに従ってより的確なトリミング処置を行なうことができる。この場合、ドクターカルテデータは、対応するペットの持病歴及びアレルギーの少なくともいずれかのデータを含むものとしておけば、持病やアレルギーを考慮したペットの手入れを容易に行なうことができる。
【0026】
次に、複数の端末装置は、ペット関連店舗をなすペットホテルに設置されるペットホテル端末装置を含むものとすることができる。個別店舗利用内容データはペットのペットホテルの利用履歴データを含むものであり、個別店舗利用内容データ取得出力手段は該ペットホテルの利用履歴データを取得し出力するものとすることができる。ペットホテルにペットを連れてゆけば、会員カード等を提示しなくとも、ホテルに設置された読取装置により、ペットに埋め込まれたマイクロチップを読み取るだけで容易にそのホテルの(あるいは他のホテルの)利用履歴データを参照することができ、より的確にペットの世話を行なうことができる。ペットホテルの利用履歴データには、特に、ペットのホテルでの(過去の)滞在中における留意事項を反映した所見データを組み込んでおくと好都合である。所見データには、例えば、ペットのホテルでの滞在中における食事内容を示すデータが含まていれば、預かったペットの食事のケアをより的確に行なうことができるし、このほかペットの性格や習癖などのデータをその都度、所見データとして入力・蓄積しておけばより万全である。
【0027】
そして、ペットホテル端末装置において個別店舗利用内容データ取得出力手段は、利用履歴データに加えドクターカルテデータ又はビューティカルテデータも取得・出力可能としておけばより効果的である。ドクターカルテデータを参照すれば、ペットの過去の(特に最近の)病歴等を的確に把握でき、ペット滞在中の健康管理に大いに役立てることができる。この場合、ドクターカルテデータは、対応するペットの持病歴、アレルギー及び投薬履歴の少なくともいずれかのデータを含むものとすることが望ましい。また、ペットホテルでは、シャンプーやトリミングなど、トリミングショップの業務内容を一部含むこともあり、この場合はビューティカルテデータの参照が有効であることは言うまでもない。この場合、ビューティカルテデータには、ペットに対し美容手入れ処置を行なった際の留意事項を反映した所見データが含まれていることが望ましい。
【0028】
また、複数の端末装置は、ペット関連店舗をなす、ペットないしペット関連商品の販売店に設置される販売店端末装置を含むものとすることができる。この場合、個別店舗利用内容データはペットの飼い主による販売店の来店履歴データを含むものであり、個別店舗利用内容データ取得出力手段は情報提供サーバから該販売店の来店履歴データを取得し出力するものとすることができる。過去の来店履歴(購入履歴を概念として含む)を参照することで、商品購入上のアドバイス等をより的確に行なうことができる。また、他店舗の来店履歴も参照できるようにしておけばより効果的である。
【0029】
販売店の場合、ペット関連商品の購入等を行なうためにペットを随伴せずに顧客が来店することもありえる。この場合、販売店端末装置には、ペットの飼い主がペットを随伴せずに販売店に来店した際に、飼い主が所持する、個体識別コード及びは該個体識別コードと一対一に対応する形で付与された顧客IDの少なくともいずれかを顧客特定データとして記憶した顧客特定媒体(例えばカード)から該顧客特定データ読み取る媒体読み取り装置を設けておき、情報提供サーバを、顧客特定データによる個別店舗利用内容データの取得アクセスも可能に構成しておけばよい。
【0030】
また、動物病院端末装置、トリミングショップ端末装置及びペットホテル端末装置の少なくともいずれかにおいて、個別店舗利用内容データ取得出力手段は、情報提供サーバから販売店の来店履歴データも取得・出力可能としておけばさらに便利である。つまり、顧客が販売店にて、例えばどのような商品を購入しているかを来店履歴データにて確認できるようにしておくことで、動物病院、トリミングショップないしペットホテルにて、顧客へのアドバイスやペットの世話をより広い角度から行なうことができる。この場合、個別店舗利用内容データ取得出力手段は、端末装置が設置される店舗の業種に対応する商品購入履歴データのみを、販売店の来店履歴データから選択的に取得・出力するようにしておけば、目的に応じた商品購入履歴の参照をより効率的に行なうことができる。
【0031】
次に、店舗に来店するペットにすでにマイクロチップが埋設されているが、その埋設処置が他系列店で実施された場合等にあっては、情報提供サーバ上に会員登録情報が存在しないことになる。そこで、本発明の情報提供システムには、マイクロチップ読取装置が読み取った個体識別コードに対応する会員登録情報が会員登録記憶部に存在するか否かを検索する会員登録検索手段と、個体識別コードに対応する会員登録情報が存在しなかった場合にこれを報知する非会員報知手段とを設けることができる。これにより、個体識別コードを読み取ったペットが会員登録済みかそうでないかを簡単に判別でき、会員登録済みでない場合には、入会勧誘等をタイムリーに行なうことができる。
【0032】
この場合、マイクロチップ読取装置を、ペット関連店舗の入店ゲートに配置することが可能である。ペットを連れた顧客は、入店の際に該入店ゲートを必ず通過するので、もしペットにマイクロチップが埋設されていれば、そこに設置されたマイクロチップ読取装置により個体識別コードを自動的に読み取ることができる。読み取った個体識別コードに対応する会員登録の有無をチェックすることで、ペットを連れて入店する非会員の顧客に対し、入会勧誘をもれなく実施することができる。この場合、非会員報知手段は、入店ゲートの近傍にて、ペットを随伴して入店ゲートを通過する顧客と同時に視認可能な位置に設けられた視覚報知装置を有するものとして構成できる。ペットを連れた顧客が入店ゲートを通過した際にマイクロチップを読み取り、会員登録有無のチェック結果をその場で入店ゲート近傍に表示することで、来店時の好機を逃さず入会勧誘を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する(なお、本明細書において「情報」と「データ」とは、特に断りのない限り、概念上の差はないものとして取り扱う)。図1は、本発明の一実施形態である情報提供システム1の全体概略を示すものであり、管理装置2及び複数の端末装置8が、通信網(例えば、インターネット)4を介して接続された構造を有する。端末装置8は、互いに業務連携する複数のペット関連店舗に各々配置されるものであり、ペット関連店舗に持ち込まれる個々のペットに埋設されたマイクロチップに記憶されているISO11784に準拠した個体識別コードCIDを、RFID方式によりISO11785に規定された無線通信規格に従い読み取るマイクロチップ読取装置303が接続されている。マイクロチップ読取装置303の各端末装置8への接続形態は特に限定されず、例えばローカルデバイスとして端末装置8に直接接続されていてもよいし、有線ないし無線により通信接続されていてもよい。
【0034】
図4に示すごとく、マイクロチップ(以下、「MC」とも略記する)302はいわゆるRFIDデバイスとして構成された電子標識器具であり、メモリ及び周辺回路をなすIC(電子回路)と、電波励起発振用のコンデンサ及び電磁コイルから構成される。マイクロチップ302の全体は生態適合ガラス(鉛を含まないガラス)に封入され、注射器状の専用の挿入器(使い捨てタイプ)IJでペット(犬や猫等)300の背側頚部皮下に埋め込まれる。それぞれのマイクロチップ302には全世界でユニーク(唯一)な個体識別コードCIDが記憶されており、マイクロチップ読取装置303(リーダ)から発信される電波AWによって該個体識別コードCIDが反映された応答電波RWが励起・出力され、これを読取装置側で受信し内容解析して個体識別を行なう。マイクロチップ302の本体には電池が不要であり、半永久的な使用が可能である。
【0035】
本発明においては、マイクロチップのデータコード(個体識別コード)と通信方式については、国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)が提唱する規格に従うものを採用する。表1は、ISO11784によるデータコードの内容を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
ISO11784のコード体系は64ビットであり、Country Codeには、ISO3166で定められた国コードが入りる(ちなみに、日本は「392」)。なお、National ID Codeは各国の責任において使用方法を決め、MCに記録された数字の唯一性を確保することになっている。また、National ID Codeが確立されていない国の場合は、国コードの位置にICAR(国際動物登録協会)が認証した製造者コード(メーカーコード)を入れるように取り決められている。
【0038】
表2は、ISO11785による通信方式の規格内容を表わす。通信方式としてFDX−B(全二重通信)とHDX(半二重通信)がある。
【0039】
【表2】

AM:振幅変調方式
FSK:周波数シフトキーイング
PSK:位相シフトキーイング
【0040】
表3は、日本で流通している、ISO規格準拠したマイクロチップの既製品を例示するものであり、そのいずれも本発明に採用することが可能である。
【0041】
【表3】

上記4種類は全てISO規格であり、15桁の世界でただ一つのデータコード(個体識別コード)が記録されている。
【0042】
マイクロチップの利点は、例えば以下の通りである。
・マイクロチップは一度注入すれば、生涯外れること、消失することはほとんどないので、個体確認に対する効果が大きい。
・マイクロチップは、ペットの寿命よりも長持ちするので、ペットが生きている間に交換する必要がない。
・マイクロチップに埋め込まれているID番号は、変更不可能。
・迅速で正確なデータの読み取りが可能。
・麻酔無しで、容易にペットの皮下に挿入できる。
【0043】
上記のマイクロチップは、迷子になって発見された動物の身元を早期に確認するために本来開発されたものであり、マイクロチップ自体には、飼い主の住所・電話番号などのデータは入っていないため、マイクロチップの個体識別コード(15桁(10進法)の数字)と、飼主の特定データとを照合させるためのデータベースへの登録が必要である。代表的なものとして、マイクロチップを利用した犬・猫等の家庭動物の個体識別を普及推進するための組織AIPO(Animal ID Promotion Organization:動物ID普及推進会議)のサーバには、上記の個体識別コードが飼い主の個人情報とともに登録されている。ただし、AIPOのサーバの登録データは、AIPOからID及びパスワードを送った行政施設や地方獣医師会、獣医師のみが閲覧可能であり、本発明を適用しようとする、特定の店舗間ネットワークにデータ流用することは基本的に不可能である。
【0044】
他方、マイクロチップの注入は獣医療行為にあたるので、基本的には獣医師にしかその注入はできない。そこで、本実施形態では、購入者たる飼い主(顧客)が確定した段階で、該ペットを飼い主に引き渡す前に、ペット販売者側の品質管理センターにて獣医師により、ペットにマイクロチップを注入するとともに、ペットの引渡し前診察を行い、マイクロチップに格納された個体識別コードを読み取って、飼い主の特定データや、上記引渡し前診察の所見情報(後述するドクターカルテの基礎データとして活用される)などを含む顧客管理データとともに、図1の管理装置2の顧客データベースに登録される。
【0045】
図2に示すように、管理装置2は、通信網4を介して前述の端末装置8と相互にアクセス可能であり、CPU24、ROM25、RAM26及び入出力部23を有するコンピュータとして構成されている。該コンピュータはハードディスク装置からなる記憶装置32を有し、ここに管理システムソフトウェア201と、上記の顧客データベース202とが格納されている。また、通信網4に接続するための通信インターフェース24と、マイクロチップの読み取りを行なうマイクロチップリーダ(マイクロチップ読取装置:以下、MCリーダともいう)29が接続されている。また、入出力部23には、マウス及びキーボードからなる入力部28、表示出力用のモニタ30及び印刷出力用のプリンタ31も接続されている。
【0046】
図4は顧客データベースの構築例を示すものであり、ペット毎に、MCリーダ303にて読み取った個体識別コード(マイクロチップID:前述の15桁の数字)、ペット販売者側にて各顧客に発行した会員登録情報としての会員ID及び会員個人情報(飼い主データ:名前、住所、生年月日、性別、電話番号など)、ペットデータ、各端末装置8から送られてくる各店舗の利用履歴データ、後述のドクターカルテ及びビューティカルテの登録先となる端末装置の特定データなどからなる。また、会員登録情報に随伴して、飼い主ID(ペアレントID:ただし、省略可能)や、提携グループの各店舗の利用に伴う付与されるポイントの各データも記憶されている。また、ペットデータは、ペットID(ただし省略可)、ペット品種、性別、ペット名、年齢、販売店、ブリーダデータ、血統データ及び引渡し前診察データなどを含むものである。
【0047】
図5は、端末装置8の基本構成を示すものであり、CPU24、ROM25、RAM26及び入出力部23を有するコンピュータとして構成されている。該コンピュータはハードディスク装置からなる記憶装置32を有し、ここに、端末装置8での以下に説明するコンピュータ処理を実現するための顧客管理ソフトウェア101、顧客実績データベース102(来店履歴データベース:特に、販売店端末装置及びペットホテル端末装置)、カルテデータベース103(特に、動物病院端末装置及びトリミングショップ端末装置)が格納されている。また、記憶装置32には、個々の端末装置8を特定するための固有の端末特定データ104が格納されている。端末特定データ104は、端末IDと、端末種別ID(動物病院端末装置8(H)、トリミングショップ端末装置8(T)、ペットホテル端末装置8(PH)及び販売店端末装置8(S)を相互に区別するためのもの:ショップ区分)とを含む。また、入出力部23には、通信インターフェース24、マイクロチップリーダ303、入力部28、モニタ30及びプリンタ31の他、顧客に発行される会員カードの読取装置(カードリーダ:バーコードリーダ、ICリーダ、磁気リーダあるいはRFIDリーダなどからなる)が設けられている。
【0048】
図6は、会員登録処理の流れを示すものである。前述の品質管理センター等でマイクロチップの埋設が行なわれた時点で、入力するべき会員登録情報の内容がすでに知れていれば、管理装置2のMCリーダ303によりそのマイクロチップIDを読み取り、会員I(S2)や会員個人情報(S4)を含む会員登録情報を入力し、さらにペットデータ(S3)と対応付けて(必要に応じ入力するが、品質管理センターで取得済みであれば再入力の必要はない)、顧客データベース201上に登録する(S5)。なお、この登録処理は、ペットの引渡し先となる動物病院の端末(8(H):図1)にて行なってもよい。
【0049】
こうして顧客登録(会員登録)が行なわれると、各店舗に顧客が来店する毎に、以下のような処理が行なわれる。まず、動物病院、トリミングショップ及びペットホテルを利用する際には、顧客は必ずペットを店舗に連れて行くことになる。図4に示すごとく、このペットにはマイクロチップ302が埋設されており、各店舗に備え付けられたMCリーダ303により個体識別コードを読み取る。一方、顧客には図7に示すような会員カード200が発行されており、ペット(あるいはペット用品)販売店にペットを随伴せずに訪れた際には、カードリーダ5を用いてこの会員カード200からペットないし顧客の特定データを読み取ることになる。図7の会員カード200には、ペットの写真とペット名の他、個体識別コード(マイクロチップID)、会員ID、飼い主IDの各データ記憶部(図7ではバーコードだが、前述のごとく、これに限定されるものではない)が形成されている。
【0050】
個体識別コード(会員カード200を用いる場合は、会員IDないし飼い主IDでの代用も可)が読み取られ、店舗利用に伴う課金事項(サービスないし商品に対する対価の支払い)の決済が終了すると、該個体識別コードが、利用金額とそれに応じたポイント、利用年月日、利用ないし購入したアイテム(商品)やサービスの種類を示す区分、そして、利用した店舗におかれた端末装置の種別(端末特定データ104に含まれる端末種別特定ID:ショップ区分)などのデータとともに、図1において、通信網4を介して管理装置2に送られ、図8に示すように、利用履歴データとして記憶・蓄積されてゆく。新規獲得ポイントは、飼い主データ(図4)のポイントに加算される。
【0051】
各店舗に設置された、図5に示す端末装置8は通信網4を介して連携し、店舗利用データベースを分散構築する情報提供サーバに兼用されている。具体的には、前述の顧客実績データベース102及びカルテデータベース103が上記店舗利用データベースを構成する。そして、どの端末装置8も、自身の記憶装置32内の店舗利用データベースにアクセスできる他、情報提供サーバとしての任意の他の端末装置8に対しても通信網4を介してアクセスが可能である。これにより、来店したペットに埋設されたマイクロチップ302からマイクロチップ読取装置303にて読み取られた個体識別コードCIDに対応する個別店舗利用内容データを取得できる。取得した個別店舗利用内容データは、モニタ30ないしプリンタ31を個別店舗利用内容データ取得出力手段として表示ないし印刷により出力が可能である。
【0052】
マイクロチップ302は、迷子探索用としての本来の使用目的からも自明な通り、一端ペットに埋設されればペットと一体不可分となり、ペットを連れて飼い主がペット関連店舗を訪れる際には、マイクロチップ302もペットに随伴して必ず店舗に持ち込まれる。マイクロチップ302の埋設された各ペットが上記ペット関連店舗を利用した際の、その利用内容を反映した個別店舗利用内容データを、上記マイクロチップ302に書き込まれている個体識別コードCIDと一対一に対応付けた形で店舗利用データベースに記憶蓄積してゆく。そして、各端末装置8では、来店したペットに埋設されたマイクロチップ302からマイクロチップ読取装置303により個体識別コードCIDを読み取り、上記通信網4を介して店舗利用データベースにアクセスすることで、読み取られた個別店舗利用内容データを取得し出力することができるのである。
【0053】
ペットに埋設されたマイクロチップ302が、いわば従来の会員カードの代わりを果たすので、顧客(飼い主)がペットを随伴して来店する限り、データアクセスのキーとなる個体識別コードCID(ID)の媒体を、店外に「置き忘れてくる」ということが原理的に生じ得ない。従って、連れて来られたペットのマイクロチップ302の個体識別コードCIDを読み取るだけで情報提供サーバへのアクセスを迅速に行なうことができ、電話番号や顧客名などによる代替アクセスの手間は一切生じない。また、引越しなどにより住所や電話番号が変わっていたり、結婚や養子縁組等により姓名が変更されていたりするなど、飼い主の個人情報が変更されていても、マイクロチップ302の個体識別コードCIDは半永久的に変化しないため何ら影響を受けず、読み取った個体識別コードCIDにより必要なデータに直ちにたどり着くことができる。また、マイクロチップ302に格納された個体識別コードCIDは、ISO11785に従う限りチップ毎に世界唯一であり、しかも、ペットに一体不可分に埋設されるので、ペット間での取り違えが生ずる可能性は限りなくゼロに近く、理想的な識別性が得られる。
【0054】
そして、各店舗の端末装置8のいずれにもマイクロチップ読取装置303が備え付けられているので、どの店舗にペットを連れて赴いても、マイクロチップ302の個体識別コードCIDを読み取ることで、その店舗の個別店舗利用内容データのみならず、他の店舗の個別店舗利用内容データにもアクセスすることができ、店舗側では顧客に対しより幅の広い情報提供が可能となる。すなわち、同じペットに対する各店舗での個別店舗利用内容データを、それら複数の店舗間で容易に共有化することができる。
【0055】
図1に示すごとく、本実施形態では、端末装置8は、業種の互いに異なるペット関連店舗の端末装置(具体的には、動物病院端末装置8(H)、トリミングショップ端末装置8(T)、ペットホテル端末装置8(PH)及び販売店端末装置8(S))を混在させて含んでいる。各端末装置8(H),8(T),8(PH),8(S)は、業種の異なるペット関連店舗の個別店舗利用内容データを取得し出力することを可能である。
【0056】
以下、さらに具体的に説明する。動物病院端末装置8(H)のカルテデータベース103(図5)には、個別店舗利用内容データとして、動物病院にてペットが受けた診察ないし医療処置の内容を記録したドクターカルテデータDKが蓄積されている。また、トリミングショップ端末装置8(T)のカルテデータベース103には、個別店舗利用内容データとして、トリミングショップにてペットが受けた美容手入れ処置の内容を記録したビューティカルテデータBKが蓄積されている。
【0057】
複数の動物病院端末装置8(H)及び複数のトリミングショップ端末装置8(T)の記憶装置32に記憶されている、各ペットのドクターカルテデータDKないしビューティカルテデータBKは、それらいずれの動物病院端末装置8(H)及びトリミングショップ端末装置8(T)からも、マイクロチップ読取装置303にて個体識別コードCIDを読み取ることにより取得アクセスが可能である。
【0058】
本実施形態では、店舗利用データベースが分散構築される関係上、各店舗の端末装置8で入力された個別店舗利用内容データが、その端末装置にて通信網4を介さずに個別に蓄積されてゆく。例えば、動物病院端末装置8(H)、トリミングショップ端末装置8(T)、ペットホテル端末装置8(PH)及び販売店端末装置8(S)のいずれにおいても、対価を有する利用イベントが発生するたびに、顧客実績データが例えば入力部28からの入力内容に基づいて作成され、顧客実績データベース102(図5)に時系列順に記憶・蓄積される。図9は販売店(ペットショップ)の顧客実績データ(各顧客の購入履歴データでもある)例を示すもので、顧客特定データとして、個体識別コード(マイクロチップID)及び会員ID(管理装置2に問い合わせることで取得できるが、省略してもよい)と、利用イベントである商品購入イベントの発生年月日(利用年月日)、商品名と商品区分、対価金額(購入金額)と獲得ポイントとが対応付けられた形で記憶される。
【0059】
図10は動物病院の、図11はトリミングショップの各顧客実績データ例を示すものである。利用金額とポイントのデータ項目が追加されている以外は、基本的にカルテデータと同様のデータ構造を有する。また、図12はペットホテルの顧客実績データ例を示すものである。利用イベントであるホテル利用年月日、ルーム種別、所見(留意事項)及び対価金額(利用金額)と獲得ポイントとが対応付けられた形で記憶される。
【0060】
また、カルテデータベースに関しては、ドクターカルテデータDKないしビューティカルテデータBKは店舗別ではなく顧客(ペット)別に管理したほうが当然、閲覧の便宜を図る上でも有利であり、個々の顧客が複数の動物病院ないしトリミングショップを訪れる場合においても、カルテそのものはデータ的には、利用した店舗の端末装置毎に細切れにするのではなく、ペット毎に1つの端末にまとめて蓄積してゆくようにする。
【0061】
例えば、動物病院の場合は、複数の動物病院のいずれかを各ペットの登録先病院として定める。各ペットのドクターカルテデータDKは、個々のペットの登録先病院に設置された動物病院端末装置8(H)を情報提供サーバとする形で分散記憶する。またトリミングショップの場合は、複数のトリミングショップのいずれかを各ペットの登録先ショップとして定める。各ペットのビューティカルテデータBKは、個々のペットの登録先ショップに設置されたトリミングショップ端末装置8(T)を情報提供サーバとする形で分散記憶する。
【0062】
ペットがはじめて動物病院やトリミングショップを訪れる際には、カルテデータの新規登録が必要である。図13は、動物病院やトリミングショップにおける端末装置側の処理の流れを示すものであり、S51にてマイクロチップの個体識別コード(マイクロチップID)を読み取り、S52にてその個体識別コードを管理装置2に送信する。管理装置2は顧客データベース202(図2)にて、送られてきた個体識別コードに対応する引渡し前診察データ(及び、必要に応じて血統データ)を読み出し、これを端末装置に送信する。端末装置ではこれを基礎データ(基礎カルテデータ)として受信し、個体識別コードと対応付けて、図5のカルテデータベース103に登録する。図14は、カルテデータベース103に登録されたドクターカルテデータの構成例を、図15は同じくビューティカルテデータの構成例をそれぞれ示すものであり、上記の基礎データ(ペットの種別、性別、年齢、体重、アレルギー、性格及び血統情報も含む)が、個体識別コード(CID)及び会員ID(MID)と対応付けて登録されている。そして、管理装置2側では、顧客データベースにて、各ペットの個体識別コードCIDと登録先動物病院ないし登録先トリミングショップとの対応関係が登録される。
【0063】
以降、複数の動物病院やトリミングショップを顧客(ペット)が利用するたびに、利用した店舗の端末装置を要求元端末装置として個体識別コードの読み取りが行なわれる。図16は、動物病院端末装置8(H)での処理の流れを示すものである。まず、S151にて個体識別コードを読み取り、S152にて、該個体識別コードに対応するドクターカルテデータが要求元端末装置のカルテデータベースに存在しているかどうかを照合する。存在していれば、そのカルテデータベースからドクターカルテデータを読み出せばよいが(S156)、存在しない場合は、個体識別コードが管理装置2へ送信され(S153)、その個体識別コードのペットが登録されている動物病院(端末装置)が顧客データベース上で検索され、その結果が要求元端末装置に返される(S154)。要求元端末装置はこれを受け、登録先の動物病院の端末装置にアクセスして(S155)、個体識別コードに対応するドクターカルテデータを受け取る流れとなる(S156)。
【0064】
動物病院にて新たな医療処置歴が発生すれば、予め定められたカルテフォームに従い、端末装置の入力部28を用いてデータ入力がなされる(S157)。その入力されたデータを追記する形でドクターカルテデータの更新をその端末装置上で行なう(S158)。図14に示すように、個々の医療処置歴を示すデータは、例えば、動物病院名、ドクター名、通院期間、病名及びその種別区分、治療内容(投薬内容を含む)及び所見データを含むものであり、時系列順に登録されている。こうして更新されたドクターカルテデータは登録先の端末装置に返送され、古いカルテ内容に上書きする形でこれを更新する(S161→S160)。個体識別コードに対応するドクターカルテデータが要求元端末装置のカルテデータベースに登録されている場合は、その登録されているドクターカルテデータを直接更新する(S159→S160)。
【0065】
また、トリミングショップで新たな利用履歴が発生した場合も、端末装置の入力部28を用いてデータ入力がなされ、その入力されたデータが、受け取ったカルテデータに追記する形で更新を行なう。図15に示すように、個々の利用履歴を示すデータは、ショップ名、利用年月日、利用区分及びトリミングコース名、サービス内容(使った資材(シャンプーや装飾品など))及び所見データを含むものであり、時系列順に登録されている。
【0066】
ここで、各種別の個別店舗利用内容データは、いずれも複数の端末装置8の間で(業種の異なる端末装置8同士であっても)、通信網4を介して共有されており、どの端末装置8からも、来店したペットのマイクロチップ302から個体識別コードを読み取ることで、当該個体識別コードに対応するものを取得し、表示ないし印刷により出力することができる。この場合、業務内容の異なる店舗の個別店舗利用内容データを一括して出力することができる。
【0067】
図17に示すトリミングショップ端末装置8(T)での個別店舗利用内容データの画面表示例は、その具体的事例を示すものである。すなわち、モニタ30の画面30Sに予め定められたフォーマットの表示ウィンドウ30Sを開き、そこにビューティカルテデータBKとドクターカルテデータDKとを合わせて表示している。ビューティカルテデータBKには過去のトリミングにて使用したシャンプーの適正を示す情報が所見データに記録されており、今回訪問時のトリミング処理にて当該シャンプーを忌避し、別のシャンプーに交換するなどの判断を直ちに行なうことができる。他方、ドクターカルテデータDKは、過去の通院歴が病名とともに時系列順に表示され、持病歴を読み取ることが可能である。また、アレルギーがあれば所見欄に記載され、シャンプー等の選択判断に役立てることができる。また、ドクターカルテDKには、予防接種(狂犬病など)の実績も記録されており、トリミング処置に携わる担当員の安心感を高めることにも貢献している(万一予防接種の実績が記録されていない場合には、トリミング処置を見合わせるなどの対応も可能である)。このように、ドクターカルテデータDKの参照によりペットの健康状況を把握しつつ、ビューティカルテデータBKに従ってより的確なトリミング処置を行なうことができる。
【0068】
また、図17においては、読み取った個体識別コードに対応する各種別の店舗での全ての利用履歴データが個々の端末装置から収集され、利用履歴データSHとして合わせて一覧表示されている。
【0069】
図18は、トリミングショップ端末装置8(TS)での処理の流れを示すものであるまず、S101にて個体識別コードCIDを読み取り、S102にて、該個体識別コードCIDに対応するビューティカルテデータが要求元端末装置のカルテデータベースに存在しているかどうかを照合する。存在していれば、そのカルテデータベースからビューティカルテデータを読み出せばよいが(S103)、存在しない場合は、個体識別コードが管理装置2へ送信され(S108)、その個体識別コードのペットが登録されているトリミングショップ(端末装置)が顧客データベース上で検索され、その結果が要求元端末装置に返される(S109)。このとき、ビューティカルテデータとともに出力するべきドクターカルテデータの所在も合わせて特定するために、個体識別コードCIDのペットが登録されている動物病院(端末装置)の検索も合わせて行なう。要求元端末装置はこれを受け、登録先のトリミングショップの端末装置にアクセスして(S110)、個体識別コードに対応するビューティカルテデータを受け取る流れとなる(S103)。
【0070】
次に、ビューティカルテデータとともに出力するドクターカルテデータについては、S109で検索された動物病院の端末装置にアクセスして(S104)、個体識別コードCIDに対応するドクターカルテデータを受け取る(S105)。また、管理装置2からは、顧客データベース202の個体識別コードCIDに対応する利用履歴データ(図8)から抜粋した、販売店(ペットショップ)関連の利用履歴データを受信する(S106)。そして、S111で、図17に示すごとく、取得したビューティカルテデータBK、ドクターカルテデータDK及び利用履歴データSHを一括して表示する。
【0071】
トリミングショップにて新たな利用処理歴が発生すれば、予め定められたカルテフォームに従い、端末装置の入力部28を用いてデータ入力がなされる(S112)。その入力されたデータを追記する形でビューティカルテデータの更新をその端末装置上で行なう(S158)。こうして更新されたビューティカルテデータは登録先の端末装置に返送され、古いカルテ内容に上書きする形でこれを更新する(S115→S114)。個体識別コードに対応するビューティカルテデータが要求元端末装置のカルテデータベースに登録されている場合は、その登録されているビューティカルテデータを直接更新する(S113→S114)。
【0072】
なお、端末装置8が設置されるペット関連店舗の業種に応じて、個別店舗利用内容データのうち当該業種に特有の予め定められた種別のデータを選択して取得・出力することも可能である。図19は、この場合のトリミングショップ端末装置での表示出力例であり、ドクターカルテデータDKに含まれるデータのうち、皮膚系の病気治療歴(図14:区分「3」)及び予防接種履歴(図14:区分「0」)に係るデータが、予めトリミングショップと関連の深い区分のデータとして定められ、それらが選択的に取得され表示されている。また、販売店の利用履歴に関してもトリミング関係の区分(図19では「9」「44」)に属する商品(シャンプーやトリミングブラシなど)が選択的に取得され表示されている。
【0073】
上記のような表示形態は、以下のよう処理手順により実現可能である。まず、端末装置には、該端末装置が設置されるペット関連店舗の業種特定データとして、端末種別ID(販売店(ペットショップ):1、動物病院:2、トリミングショップ:3、ペットホテル:4)が端末特定データ104(図5)に組み込まれる形で記憶されている(業種特定データ記憶手段)。個別店舗利用内容データを取得する際には、個体識別コードCIDとともに端末種別IDを合わせて、データが存在する端末装置(情報提供サーバ)に送信する。一方、各種別の端末装置(情報提供サーバ)には、図20に示すように、データ要求元となる端末装置の端末種別ID(業種特定データ)と、個別店舗利用内容データにおいて選択すべきデータ種別とを対応付けたデータ選択テーブル401(動物病院端末装置用),402(トリミングショップ端末装置用),403(販売店端末装置用)が記憶されている。図21に示すフローに従い、データ要求元となる端末装置では、端末別IDと端末種別IDとからなる端末特定データを、データ登録先の端末装置に送信する(S251)。データ登録先の端末装置では、上記のデータ選択テーブルを参照して、受信した個体識別コードCIDに対応する個別店舗利用内容データから、受信した端末種別ID(業種特定データ)に対応するデータ種別に属するデータを、データ区分の形で検索・抽出する(S254:データ抽出手段)。そして、抽出されたデータがデータ要求元の端末装置8に配信される(S255:抽出データ配信手段)。
【0074】
次に、図22は、ペットホテル端末装置8(PH)での出力例を示すもので、利用履歴データHHを含んでいる。ペットホテルの利用履歴データHHには、ペットのホテルでの(過去の)滞在中における留意事項を反映した所見データが記録されている。所見データには、例えば、ペットのホテルでの滞在中における食事内容や、ペットの性格、習癖などのデータが含まれる。そして、ペットホテルの利用履歴データHHのほか、ドクターカルテデータDKも出力されている。ドクターカルテデータDKには、前述のごとく、対応するペットの持病歴、アレルギー及び投薬履歴のデータが含まれている。なお、シャンプーやトリミングなど、トリミングショップと共通するサービス提供が可能なペットホテルでは、ビューティカルテデータBKも合わせて出力されるようにしておく。
【0075】
図23は、販売店端末装置8(S)での出力例を示すもので、ペットの飼い主による各販売店の来店履歴データとして、各販売店でのショッピング履歴(購入履歴)データが出力されている。また、ドクターカルテデータDKも合わせて出力されている。
【0076】
なお、情報提供サーバは、図24に示すように、管理装置2上に集約的に構築することもできる。図24では、前述のドクターカルテデータとビューティカルテデータとが、顧客データベース202に直接組み込まれた形になっている。
【0077】
次に、ペットを連れた顧客が各店舗に来店した際に、そのペットにマイクロチップ302が埋設されていれば、当該顧客の会員登録有無とは無関係に、マイクロチップ読取装置303によりマイクロチップID(個体識別コード)の読み取りは行なうことができる。このとき、例えばマイクロチップ埋め込みを他系列店で受けた顧客の場合は、マイクロチップ302の読み取りはできるが、会員は非登録という状況が生じうる。
【0078】
この場合、読み取ったマイクロチップIDを顧客データベース201(図4)上で検索すると、当該のマイクロチップID(及び対応する会員ID)はヒットしないので、これを受け、例えば対応する端末のモニタ30(図3)上に、非会員であることがわかるメッセージ(「会員IDがありません」、「非会員の方です」、「会員未登録です」)などを出力することができる。これを見た店員は、当該の顧客に対し会員登録の勧誘を実施することができる。
【0079】
会員登録の処理の流れは図6と全く同様に実施できるが、この場合、図6のS1は、上記来店時におけるマイクロチップIDの読み取りステップで代用することができる(ただし、確認のため、会員登録処理時にマイクロチップID読み取りを再度実施するようにしてもよい)。
【0080】
つまり、前述の実施形態では、新規にペットを購入する際に、マイクロチップの埋設と会員登録とを合わせて実施するようにしていたが、他系列店で購入されたか、あるいはマイクロチップ埋設処置を受けたペットについては、マイクロチップ埋設を会員登録の機会として利用することはもはやできない。そこで、会員非登録のペットについても、上記のようにマイクロチップの読み取りを行なうことで、会員化のためのアクションを有効に起こすことが可能となるのである。
【0081】
この場合、MCリーダ303は、店舗内の端末装置(例えば、会計カウンター内)に随伴するものを使用し、マイクロチップの読み取りひいてはそれに続く会員登録処理を、例えば会計時に実施することができる(動物病院やトリミングセンターの場合は来店受付時、ペットホテルの場合はチェックイン時等であってもよい)。しかし、この方式では、店舗内で会計処理の発生した顧客以外は会員登録処理へと導くことができない難点がある。この場合、次のような改良方式を実施することができる。
【0082】
すなわち、図25に示すように、顧客Pがペット300を連れて通過できるゲート型のMCリーダ303(以下、ゲート303ともいう)を店舗の入店ゲートに設置する。顧客Pは入店の際に、このゲート303を必ず通過するので、ペット300にマイクロチップ302が埋設されていれば、入店時に(会計処理が発生するか否かとは無関係に)その読み取りを確実に実施することができる。
【0083】
なお、図3に、この場合にシステムに追加されるハードウェアブロックを一点鎖線で示している。ゲート303は、送信電波AWを常時出力継続した状態にしておくことも可能であるが、顧客Pのゲートエントリ(つまり、入店)が発生した場合にのみ送信電波AWが出力されるように、入店検知センサ51が設けられている。図25に示すように、入店検知センサ51は、例えばゲート303の店外側に配置され、ゲート303に進入する顧客Pないしペット300を検出するもので、例えば透過型光センサ、反射型光センサ、超音波センサ、あるいは足元床上に配置される感圧センサなどの周知のセンサにて構成できる。
【0084】
また、ゲート303の近傍には、店内の店員Cが、店内にてゲート303を通過しようとする顧客Pを見ながら視認可能な位置、ここでは、ゲート303の主柱裏面側(店内側)に、視覚報知装置53,54,55が設けられている。この視覚報知装置は、ゲート303で読み取ったマイクロチップID(個体識別コード)に対応する会員登録情報が、顧客データベース202上に存在しなかった場合に、ゲート303を通過した顧客P(ペット300)が非会員であることを店員Cに報知する非会員報知手段として機能するものである。この実施形態では、その表示状態により(ここでは、3つのランプ53(青),54(黄),55(赤)の点灯状態により)、
(1)マイクロチップ読み取り可、会員登録済(ランプ53(青)点灯);
(2)マイクロチップ読み取り可、会員非登録(ランプ54(黄)点灯);
(3)マイクロチップ読み取り不可(ランプ54(赤)点灯);
の3状態を互いに識別できるようになっている。
【0085】
店員Cは、ゲート300のそばで待機しており、ゲート300を通過して入店してきた顧客Pに、視覚報知装置53,54,55の表示状態に応じて、適切な応対を行なうことになる。まず、(1)に該当する表示状態となった場合は、当該の顧客は会員登録済みなので、会員専用サービスの案内など、会員に特化し応対を行なう。他方、(2)に該当する表示状態となった場合は、マイクロチップ302は(他系列店等で)埋設済であることがわかるので、これを機に当店の会員となるように勧誘することができる。さらに、(3)に該当する表示状態となった場合は、ペットを連れてきている場合は、そのペットにマイクロチップ302自体が埋設されていないケースに該当し、マイクロチップ302の埋設と会員登録の双方を勧誘することができる。一方、ペットを連れてきていない場合は、自宅にペットを飼っているかどうかの質問等からはじめ、ペットを飼っている場合はマイクロチップの紹介など、次回以降の来店につながる応対を行なうことが可能である。
【0086】
(1)(2)いずれの場合も、顧客Pが会員登録を希望した場合、端末装置8を用いて会員登録処理を実施することになる。この場合、店舗の会計用の端末(8(T),8(PH),8(S))とは別に、図1に示すごとく、会員登録用端末8(E)を例えばゲート300の近傍に設置しておけば、その場で会員登録処理を完了できる利点がある。
【0087】
図26は、この場合の処理の流れを示すフローチャートである。まず、S301では、客検知センサが感知したかどうかを監視する。感知しなければそのまま処理を終了する。他方、感知した場合はS302に進み、マイクロチップを読み取るための電波を送信する。この送信は、マイクロチップID(個体識別コード)の読み取りに成功するまで、所定回数までリトライ実施されるが、規定のリトライ回数に達してもマイクロチップIDが読み取れなかった場合はS309に進み、チップ無し報知ランプ55を点灯させる。
【0088】
他方、マイクロチップIDの読み取りに成功した場合はS305に進み、顧客データベース202(図4)上に、そのマイクロチップIDがあるかどうかを検索する。S306にて、マイクロチップIDが検索されればS307に進み、会員報知ランプ53を点灯させる。また、S310では、前述の会員登録用端末8(E)か別のモニタ56、あるいは店員が携帯する無線端末(イヤホーンへの音声出力)等に、該マイクロチップIDに対応する会員登録情報(及び顧客情報)の一部又は全部を出力し、店員Cが参照できるようにしておく。例えば、出力された情報から、ゲート300をくぐってきたペット300の名前を把握することができれば、来店したペット300に対し直ちに、「おっ、ゴンチャン、今日も男前やな」などと名前で親しく呼びかけることができ、顧客Pに効果的にアピールすることができる。この場合、上記ペット名など会員登録情報ないし顧客情報の一部を表示出力するモニタ6を設けておけば一層便利である。
【0089】
一方、S306にて、マイクロチップIDが検索されなかった場合はS308に進み、非会員報知ランプ54を点灯させる。また、S312では、前述の会員登録用端末8(E)に会員登録画面を表示し、引き続き当該会員登録用端末8(E)から会員登録処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の情報提供装置の一例を示す全体ブロック図。
【図2】マイクロチップを用いた個体識別コードの読み取り形態を模式的に示す図。
【図3】管理装置の構成例を示すブロック図。
【図4】顧客データベースの第一例を示す図。
【図5】端末装置の構成例を示すブロック図。
【図6】管理装置でのデータ登録処理の流れを示すフローチャート。
【図7】会員カードの一例を示す模式図。
【図8】顧客データベースにおける利用履歴データの概念を示す図。
【図9】販売店端末装置の顧客実績データベースの例を示す図。
【図10】動物病院端末装置の顧客実績データベースの例を示す図。
【図11】トリミングショップ端末装置の顧客実績データベースの例を示す図。
【図12】ペットホテル端末装置の顧客実績データベースの例を示す図。
【図13】カルテ登録処理の流れを示すフローチャート。
【図14】ドクターカルテデータの一例を示す図。
【図15】ビューティカルテデータの一例を示す図。
【図16】ドクターカルテデータの表示及び更新処理の流れを示すフローチャート。
【図17】トリミングショップでのデータ表示出力の第一例を示す図。
【図18】ビューティカルテデータの表示及び更新処理の流れを示すフローチャート。
【図19】トリミングショップでのデータ表示出力の第二例を示す図。
【図20】データ選択テーブルの例を示す図。
【図21】データ選択処理の流れを示すフローチャート。
【図22】ペットホテルでのデータ表示出力例を示す図。
【図23】販売店でのデータ表示出力例を示す図。
【図24】顧客データベースの第二例を示す図。
【図25】マイクロチップを用いた個体識別コードの読み取り形態の別例を模式的に示す図。
【図26】この場合の処理の流れを例示するフローチャート。
【符号の説明】
【0091】
1 情報提供システム
2 管理装置(情報提供サーバ)
4 通信網
8 端末装置(情報提供サーバ)
302 マイクロチップ
303 マイクロチップ読取装置
53,54,55 視覚報知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々ペット関連店舗に配置されるとともに通信網を介して互いに接続された複数の端末装置と、
前記端末装置に各々個別に接続されるとともに、前記ペット関連店舗に持ち込まれる個々のペットに埋設されたマイクロチップに記憶されているISO11784に準拠した個体識別コードを、RFID方式によりISO11785に規定された無線通信規格に従い読み取るマイクロチップ読取装置と、
前記通信網に接続され、前記端末装置にて入力される、前記マイクロチップの埋設されたペットの前記ペット関連店舗の利用内容を反映した個別店舗利用内容データを、前記マイクロチップに書き込まれている前記個体識別コードと一対一に対応付けた形で記憶蓄積する店舗利用データベースを有した情報提供サーバとを有し、
かつ、各前記端末装置に、
前記通信網を介して前記情報提供サーバにアクセスし、来店したペットに埋設された前記マイクロチップから前記マイクロチップ読取装置にて読み取られた前記個体識別コードに対応する前記個別店舗利用内容データを取得し出力する個別店舗利用内容データ取得出力手段と、
が設けられたことを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
複数の前記端末装置は、業種の互いに異なるペット関連店舗の端末装置を混在させて含むものであり、各端末装置の前記個別店舗利用内容データ取得出力手段は、前記情報提供サーバにアクセスすることにより、業種の異なるペット関連店舗の個別店舗利用内容データを取得し出力することが可能とされている請求項1記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記個別店舗利用内容データ取得出力手段は前記情報提供サーバから、前記端末装置が設置されるペット関連店舗の業種に応じて、前記個別店舗利用内容データのうち当該業種に特有の予め定められた種別のデータを選択して取得・出力するものである請求項2記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記複数の端末装置は前記ペット関連店舗をなす動物病院に設置される動物病院端末装置を含むものであり、前記個別店舗利用内容データは前記動物病院にて前記ペットが受けた診察ないし医療処置の内容を記録したドクターカルテデータを含むものであり、前記個別店舗利用内容データ取得出力手段は該ドクターカルテデータを取得し出力するものである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項5】
前記複数の端末装置は、前記ペット関連店舗をなす、少なくともペットトリミングをサービス提供可能なトリミングショップに設置されるトリミングショップ端末装置を含むものであり、前記個別店舗利用内容データは前記トリミングショップにて前記ペットが受けた美容手入れ処置の内容を記録したビューティカルテデータを含むものであり、前記個別店舗利用内容データ取得出力手段は該ビューティカルテデータを取得し出力するものである請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記複数の端末装置は、所在地の異なる複数の前記動物病院端末装置及び複数の前記トリミングショップ端末装置の少なくともいずれかを含むものであり、
前記情報提供サーバに記憶されている各ペットの前記ドクターカルテデータないし前記ビューティカルテデータは、複数の前記動物病院端末装置のいずれからも、前記マイクロチップ読取装置にて前記個体識別コードを読み取ることにより取得アクセスが可能とされている請求項3又は請求項4に記載の情報提供システム。
【請求項7】
前記トリミングショップ端末装置にて前記個別店舗利用内容データ取得出力手段は、前記ビューティカルテデータに加え前記ドクターカルテデータも取得・出力可能とされてなる請求項5又は請求項6に記載の情報提供システム。
【請求項8】
前記ドクターカルテデータは、対応するペットの持病歴及びアレルギーの少なくともいずれかのデータを含むものである請求項7記載の情報提供システム。
【請求項9】
前記複数の端末装置は前記ペット関連店舗をなすペットホテルに設置されるペットホテル端末装置を含むものであり、前記個別店舗利用内容データは前記ペットの前記ペットホテルの利用履歴データを含むものであり、前記個別店舗利用内容データ取得出力手段は該ペットホテルの利用履歴データを取得し出力するものである請求項4ないし請求項8のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項10】
前記ペットホテルの利用履歴データには、前記ペットの前記ホテルでの滞在中における留意事項を反映した所見データが含まれてなる請求項9記載の情報提供システム。
【請求項11】
前記所見データには、前記ペットの前記ホテルでの滞在中における食事内容を示すデータが含まれる請求項9に記載の情報提供システム。
【請求項12】
前記ペットホテル端末装置にて前記個別店舗利用内容データ取得出力手段は、前記利用履歴データに加え前記ドクターカルテデータ又は前記ビューティカルテデータも取得・出力可能とされてなる請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項13】
前記ドクターカルテデータは、対応するペットの持病歴、アレルギー及び投薬履歴の少なくともいずれかのデータを含むものである請求項12に記載の情報提供システム。
【請求項14】
前記ビューティカルテデータには、前記ペットに対し前記美容手入れ処置を行なった際の留意事項を反映した所見データが含まれてなる請求項12又は請求項13記載の情報提供システム。
【請求項15】
前記複数の端末装置は、前記ペット関連店舗をなす、ペットないしペット関連商品の販売店に設置される販売店端末装置を含むものであり、前記個別店舗利用内容データは前記ペットの飼い主による前記販売店の来店履歴データを含むものであり、前記個別店舗利用内容データ取得出力手段は前記情報提供サーバから該販売店の来店履歴データを取得し出力するものである請求項4ないし請求項14のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項16】
前記動物病院端末装置、前記トリミングショップ端末装置及び前記ペットホテル端末装置の少なくともいずれかにおいて、前記個別店舗利用内容データ取得出力手段は、前記情報提供サーバから前記販売店の来店履歴データも取得・出力可能とされてなる請求項15記載の情報提供システム。
【請求項17】
前記個別店舗利用内容データ取得出力手段は、前記端末装置が設置される店舗の業種に対応する商品購入履歴データのみを、前記販売店の来店履歴データから選択的に取得・出力するものである請求項16記載の情報提供システム。
【請求項18】
前記情報提供サーバには、前記個体識別コードが特定するペットの飼い主を前記ペット関連店舗の利用会員として登録するための会員登録記憶部が設けられている請求項1ないし請求項17のいずれか1項に記載の情報提供システム。
【請求項19】
前記マイクロチップ読取装置が読み取った前記個体識別コードに対応する会員登録情報が前記会員登録記憶部に存在するか否かを検索する会員登録検索手段と、
前記個体識別コードに対応する会員登録情報が存在しなかった場合にこれを報知する非会員報知手段とを備える請求項18に記載の情報提供システム。
【請求項20】
前記マイクロチップ読取装置が前記ペット関連店舗の入店ゲートに配置される請求項19記載の情報提供システム。
【請求項21】
前記非会員報知手段は、前記入店ゲートの近傍にて、前記ペットを随伴して前記入店ゲートを通過する顧客と同時に視認可能な位置に設けられた視覚報知装置を有するものである請求項20記載の情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−110421(P2009−110421A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283962(P2007−283962)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(399061628)AHBインターナショナル株式会社 (4)