説明

情報機器

【課題】載置面の性状により支持脚と載置面との間に生じる隙間を解消し、印刷部で印刷する際に生じる振動に対して共振を防ぐ情報機器を提供する。
【解決手段】インパクトドットプリンタ10は、印字ヘッドが搭載されたキャリッジを往復移動させながら印刷する印刷部と、一方の面は前記載置面と対向し、他方の面は前記印刷部を拘止するベース板50と、前記一方の面に取り付けられ、前記載置面と非変形に当接する少なくとも2つの硬性支持脚60A,60Bと、前記印刷部からの距離が硬性支持脚60A,60Bよりも遠い前記一方の面に取り付けられ、弾性変形の限界を超えない範囲で変形して前記載置面と接する少なくとも2つの軟性支持脚55A,55Bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置のような情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置であるインパクトドットプリンタやインクジェットプリンタは、往復移動するキャリッジにプリンタヘッドを搭載し、キャリッジの往復移動に合わせて1ライン毎に印刷する。このようなプリンタは、通常、平面上に載置されて使用されるため、下記特許文献1に示すように、載置される面と接触する4本の支持脚には、それぞれゴム等の同じ硬度の弾性体が採用される。
【0003】
【特許文献1】特開平7−314729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プリンタを載置する面が歪んでいる場合や粗い表面性状である場合、支持脚と載置面との間に隙間が生じるため、印刷時において、キャリッジの往復移動により「がたつき」が発生し、支持脚が載置面に接する度に不快な音が発生した。また、隙間を無くすべく、4つの支持脚に軟性のゴムを採用した場合、キャリッジの往復移動による低周波帯域の振動に共振するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、本発明の情報機器は、複数の支持脚が載置面とそれぞれ接することで、前記載置面に載置される情報機器であって、印字ヘッドが搭載されたキャリッジを往復移動させながら印刷する印刷部と、一方の面は前記載置面と対向し、他方の面は前記印刷部を拘止する剛性板と、前記一方の面に取り付けられ、前記載置面と非変形に当接する少なくとも2つの第1の支持脚と、前記印刷部からの距離が前記第1の支持脚よりも遠い前記一方の面に取り付けられ、弾性変形の限界を超えない範囲で変形して前記載置面と接する少なくとも2つの第2の支持脚とを備えることを特徴とする情報機器。
【0006】
この発明によれば、情報機器を載置面に載置する場合、第2の支持脚は、弾性変形の限界を超えない範囲で変形して載置面と接するため、載置面の性状や歪みが原因で、それぞれの支持脚と載置面との間に生じる隙間は、第2の支持脚が更に弾性変形して接することで解消される。また、第1の支持脚と第2の支持脚は、剛性板に取り付けられ、第1の支持脚は、非変形に載置面と当接し、第1の支持脚よりも印刷部から遠い位置の第2の支持脚は、弾性変形して載置面と接するため、全ての支持脚が弾性変形して接する場合と比較して、印刷部で印刷する際に生じる振動による共振を防ぐことができる。
【0007】
本発明の情報機器では、前記第1の支持脚は、前記一方の面から所定の高さで前記載置面と当接し、前記第2の支持脚は、前記所定の高さと略同じ高さに弾性変形して前記載置面と接することが好ましい。
この発明によれば、剛性板を載地面と略平行に載置できる。
【0008】
本発明の情報機器では、前記第1の支持脚は、前記剛性板を挟んで前記印刷部と背向する位置の近傍に取り付けられても良い。また、前記第1の支持脚と前記第2の支持脚は、それぞれ前記キャリッジが往復移動する方向に沿って取り付けられても良い。
また、本発明の情報機器では、前記第2の支持脚は、一定の硬度を有し、前記載置面と接する接触面の面積が一定な弾性部材を備えても良く、前記第1の支持脚は、前記載置面と非変形に接する剛性部材を備えても良い。
そして、好ましくは、前述の情報機器はプリンタを含むことで、上述した情報機器の効果と略同様な効果を奏するプリンタを享受できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、情報機器の一例として、インパクトドットプリンタを用いて説明する。
【0010】
(実施形態)
図1は、インパクトドットプリンタ10の構造の概略を示す斜視図であり、図2は、インパクトドットプリンタ10の平面図である。このインパクトドットプリンタ10は、プリンタベース45上の斜視図手前側に、ガイド軸30、ボールネジ15、回転駆動部40、紙送りローラ軸35およびプラテン(図示せず。)等の印刷部が組み付けられ、プリンタベース45上の斜視図奥側に、図示を略した紙送りトラクタ部が組み付けられる。
【0011】
キャリッジ20は、プリンタヘッド25を搭載し、ガイド軸30やボールネジ15等で構成される案内部に保持される。回転駆動部40は、図示を略した駆動モータを含み、この駆動モータの回転が案内部に伝わることで、ボールネジ15が回転し、キャリッジ20が往復移動する。更に、紙送りローラ軸35は、駆動モータの一方向の回転に合わせて、紙案内(図示せず。)に案内されたロール紙100を、インパクトドットプリンタ10の背面の挿入方向(A)から正面の排出方向(B)に送る。この際、インパクトドットプリンタ10に入力される信号に合わせて、プリンタヘッド25に内蔵される所定のワイヤーピンがインクリボンを叩きつけることで、ロール紙100上に印字される。このようなインパクトドットプリンタ10は、略平面な卓上に載置され使用される。尚、インパクトドットプリンタ10の詳細な内容は、本発明の要旨ではないため、省略する(係る内容については、例えば、特開2001−287384号公報を参照)。
【0012】
図3は、インパクトドットプリンタ10の底面図である。このインパクトドットプリンタ10の底面には、プリンタベース45のベース板50が露出している。このベース板50は、載置面が歪んでいる場合でも、インパクトドットプリンタ10の自重により変形しない剛性を備える。また、ベース板50において、インパクトドットプリンタ10の正面側、即ち、キャリッジ20に近い側の端部には、硬性支持脚60A,60Bがそれぞれ離れて取り付けられ、インパクトドットプリンタ10の背面側、即ち、キャリッジ20から遠い側の端部には、軟性支持脚55A,55Bがそれぞれ離れて取り付けられている。硬性支持脚60A,60Bと軟性支持脚55A,55Bは、それぞれキャリッジ20が往復移動する方向と平行な方向に取り付けられている。尚、本実施形態では、ベース板50に取り付けられた支持脚は、硬性支持脚60A,60Bおよび軟性支持脚55A,55Bの4つに限定されるものでは無く、硬性支持脚60A,60Bおよび軟性支持脚55A,55Bの少なくとも何れかが2つ以上あっても良い。また、硬性支持脚60A,60Bおよび軟性支持脚55A,55Bの取り付け位置は、キャリッジ20が往復移動する方向と平行な方向に限定されるものでは無い。
【0013】
図4(a)は、ベース板50に取り付けられた一方の硬性支持脚60Aと一方の軟性支持脚55Aを示す側面図であり、(b)は、一方の硬性支持脚60Aと一方の軟性支持脚55Aの平面図である。硬性支持脚60Aは、載置面から一定の高さ(T2)を有し、載置面と接する側の直径Lが25ミリ程度の様態であり、ベース板50にネジ止めされている。また、この硬性支持脚60Aは、JIS A硬度で80度程度の硬質ゴムから成るため、インパクトドットプリンタ10が載置された状態、即ち、硬性支持脚60Aにインパクトドットプリンタ10の荷重が掛かった状態であっても変形しないため、載置面から硬性支持脚60Aの接触面までの高さ(T2)は、略一定に保たれる。
【0014】
軟性支持脚55Aは、直方体形状の様態であり、載置面と接する接触面の面積が14.5cm2程度となる長辺(B)と短辺(A)とを有し、ベース板50に接着されている。この軟性支持脚55Aは、アスカーA硬度で5〜10度程度の軟質ゴムから成り、インパクトドットプリンタ10が非載置状態の場合、載置面から一定の高さ(T1)であるが、非稼動状態のインパクトドットプリンタ10が高低差が無い載置面に載置された場合、インパクトドットプリンタ10の荷重により、硬性支持脚60Aの高さ(T2)と略同じになるように設計されている。更に、この軟性支持脚55Aは、硬性支持脚60Aの高さ(T2)よりも低い所定の高さ(T3)まで弾性変形可能である。本実施形態では、軟性支持脚55Aは、載置され非稼動な状態での歪み代(T1−T2)が3ミリ程度であり、更に4ミリ程度の歪み代(T2−T3)を有する。尚、硬性支持脚60A,60Bおよび軟性支持脚55A,55Bは、上記した様態や材質に限定されるものでは無い。また、インパクトドットプリンタ10が非載置状態の場合の軟性支持脚55Aの高さ(T1)は、硬性支持脚60Aの高さ(T2)と略同じであり、載置された場合、硬性支持脚60Aの高さ(T2)よりも歪んだ高さでインパクトドットプリンタ10が安定するように設計されても良い。
【0015】
図5(a)〜(d)は、載置面に高低差がある場合、軟性支持脚55A,55Bが変形する歪み量を示す図である。尚、これらの図では、硬性支持脚60Aの高さ(T2)を基準(0)としている。最初に、図5(a)では、一方の硬性支持脚60Aが接する載地面が3ミリ上昇している。この場合、一方の軟性支持脚55Aは1ミリ歪み、他方の軟性支持脚55Bは5ミリ歪むことで、インパクトドットプリンタ10は安定する。また、図5(b)では、一方の軟性支持脚55Aが接する載地面が3ミリ上昇している。この場合、一方の軟性支持脚55Aは5ミリ歪み、他方の軟性支持脚55Bは1ミリ歪むことで、インパクトドットプリンタ10は安定する。また、図5(c)では、一方の硬性支持脚60Aが接する載地面と、一方の軟性支持脚55Aが接する載地面とがそれぞれ3ミリ上昇している。この場合、一方の軟性支持脚55Aと他方の軟性支持脚55Bは、それぞれ略3ミリ歪むことで、インパクトドットプリンタ10は安定する。更に、図5(d)では、他方の硬性支持脚60Bが接する載地面が3ミリ沈下している。この場合、一方の軟性支持脚55Aは1ミリ歪み、他方の軟性支持脚55Bは5ミリ歪むことで、インパクトドットプリンタ10は安定する。
【0016】
上述したように、インパクトドットプリンタ10は、高低差が3ミリ程度の載置面に載置された場合でも、軟性支持脚55A,55Bがそれぞれ弾性変形の範囲で歪むことにより、安定した状態に載置される。更に、インパクトドットプリンタ10に印刷データを送り、印刷を実行する場合、プリンタヘッド25を搭載したキャリッジ20が往復移動を行うことで低周波振動が発生し、発生した低周波振動は、剛体であるベース板50を伝播して、ベース板50の端部にキャリッジ20から離れて配置された軟性支持脚55A,55Bに到達する。ここで、軟性支持脚55A,55Bは、軟質ゴムの歪み代に余裕があることから、一種の動吸振器として機能し、低周波振動を抑えて共振を防止する。
【0017】
以上、本発明を図示した実施形態に基づいて説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、以下に述べるような変形例も想定できる。
(1)本発明の情報機器は、インパクトドットプリンタ10に限定されるものでは無く、インクジェット方式のプリンタに対しても適用でき、更に、種々の記憶メディア上に印刷する印刷装置を内蔵するメディア処理装置に対しても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るインパクトドットプリンタの概構造を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係るインパクトドットプリンタの平面図。
【図3】本発明の実施形態に係るインパクトドットプリンタの底面図。
【図4】(a)は、ベース板に取り付けられた硬性支持脚と軟性支持脚を示す側面図であり、(b)は、硬性支持脚と軟性支持脚の平面図。
【図5】(a)〜(d)は、載置面に高低差がある場合に軟性支持脚が変形する歪み量を示す図。
【符号の説明】
【0019】
10…インパクトドットプリンタ、15…ボールネジ、20…キャリッジ、25…プリンタヘッド、30…ガイド軸、35…紙送りローラ軸、40…回転駆動部、45…プリンタベース、50…ベース板、55A,55B…軟性支持脚、60A,60B…硬性支持脚、100…ロール紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持脚が載置面とそれぞれ接することで、前記載置面に載置される情報機器であって、
印字ヘッドが搭載されたキャリッジを往復移動させながら印刷する印刷部と、
一方の面は前記載置面と対向し、他方の面は前記印刷部を拘止する剛性板と、
前記一方の面に取り付けられ、前記載置面と非変形に当接する少なくとも2つの第1の支持脚と、
前記印刷部からの距離が前記第1の支持脚よりも遠い前記一方の面に取り付けられ、弾性変形の限界を超えない範囲で変形して前記載置面と接する少なくとも2つの第2の支持脚とを備えることを特徴とする情報機器。
【請求項2】
請求項1に記載の情報機器において、
前記第1の支持脚は、前記一方の面から所定の高さで前記載置面と当接し、
前記第2の支持脚は、前記所定の高さと略同じ高さに弾性変形して前記載置面と接することを特徴とする情報機器。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の情報機器において、
前記第1の支持脚は、
前記剛性板を挟んで前記印刷部と背向する位置の近傍に取り付けられることを特徴とする情報機器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報機器において、
前記第1の支持脚と前記第2の支持脚は、
それぞれ前記キャリッジが往復移動する方向に沿って取り付けられることを特徴とする情報機器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報機器において、
前記第2の支持脚は、一定の硬度を有し、前記載置面と接する接触面の面積が一定な弾性部材を備えることを特徴とする情報機器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報機器において、
前記第1の支持脚は、前記載置面と非変形に接する剛性部材を備えることを特徴とする情報機器。
【請求項7】
前記情報機器は、プリンタを含む請求項1乃至6のいずれか1項に記載の情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−213353(P2008−213353A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55196(P2007−55196)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】