説明

情報表示パネルの保管方法

【課題】比較的長時間にわたって情報表示パネルを不使用状態とした場合においても、その後における表示情報の鮮明度の低下のおそれを十分に取り除く。
【解決手段】相互に対向する、少なくとも一方が透明な二枚の基板1,2間の密閉空間内に、たとえば白黒二色の情報表示媒体3を封入するとともに、それらの情報表示媒体3を、電界の形成下で移動させて、透明基板1側に所要の情報を表示させる情報表示パネルを保管するに当り、最後に表示した情報の色彩関係を一旦逆転させた後、透明基板側の表示を、全体にわたっていずれかの単一色とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、相互に対向する、少なくとも一方が透明の二枚の基板間の密閉したガス封止空間内に、たとえば白色および黒色等の、色彩の異なる二種類の粉流体、粒子群等からなる情報表示媒体を封入するとともに、それらの情報表示媒体を、電界中で移動させて、透明基板側に所要の情報、たとえば、文字、図形、記号、画像等の情報を表示させる乾式の情報表示パネルを、保存、出荷、移送等するの際しての情報表示パネルの保管方法に関するものであり、とくには、電気影像力その他によって透明基板に直接的もしくは間接的に付着した情報表示媒体が経時的に固まって動き難くなること、その情報表示媒体が透明基板側等に付着残留し易くなること等に起因して、表示の書き換え等の後のその表示の鮮明度が低下するのを防ぐ技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の、乾式の情報表示装置としては、特許文献1に記載されているような、「色および帯電特性の異なる二種類のドライ粒子を、一対の電極間に封入するとともに、一対の電極の少なくとも一方を透明電極としてなる表示素子の複数を基板上に整列させて配設し、各表示素子の透明電極にタッチさせ得る入力ペンを設け、それぞれの表示素子のそれぞれの電極に、入力ペンを介してまたは介することなく所要の極性を付与可能としてなる。」ものがある。
【0003】
また、特許文献2および3のそれぞれに記載されているように、「少なくとも一方が透明な2枚の基板の間に色および帯電特性の異なる2種類の粒子を封入し、各基板上にそれぞれ設けた電極からなる電極対から前記粒子に電界を与えて、前記粒子を飛翔移動させて画像を表示する画像表示板を具備した表示装置であって、前記電極対の少なくとも一方の電極は分割された分割電極から成っており、画像表示の合間に分割電極間に電圧を印加することにより前記分割電極間で前記粒子を飛翔移動させるようにしたことを特徴とするもの。」および、「少なくとも一方が透明な2枚の基板の間に、色及び帯電特性の異なる2種類の粒子を封入し、基板上に各別に設けた電極からなる電極対から粒子に静電界を与えて、粒子を飛翔移動させ画像を表示させる画像表示板を具備した表示装置であって、表示板が、電極対をマトリックス状に配置したマトリックス電極を備え、マトリックス電極を構成する各電極に高電位V又は低電位Vを印加することにより表示駆動が行われ、各電極はこれらの電位を印加されていない時には、VとVとの間にある中間電位Vに低インピーダンスで接続されていることを特徴とするもの。」がある。
【0004】
たとえば、情報表示媒体として用いることができる粒子群の、粒子同士のクーロン力、電極との電気影像力、分子間力、液架橋力、重力等に基いて、所要の文字、図形、記号、画像等を繰返し表示し、変更しそして消去できるこれらの情報表示装置は、情報表示の応答性が高く、単純な構造で,安価であるとともに大型化が容易で、しかもその表示の安定性および鮮明度にすぐれるという特性を有しており、また、これらの装置の情報表示媒体は、電極への駆動電圧の印加を停止してなお、電気影像力等によって表示情報を表示パネルに長期にわたって維持することができるので、すぐれた表示保存性を発揮することができ、また、情報の表示後の電力供給を不要として、情報表示のためのランニングコストを低減できるという利点を有することになる。
【特許文献1】特開2003−241235号公報
【特許文献2】特開2003−248245号公報
【特許文献3】特開2003−248249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、このような帯電特性を有する情報表示媒体を移動させて情報表示を行う乾式の情報表示方式に基づく情報表示パネルでは、高い表示保持特性の故に、最後に表示された情報が、それの作為的な消去なしには長期間にわたって表示され続けることになり、このような表示の継続下では、情報表示媒体が、移動している側の基板から液架橋力、電気影像力を受け続ける。情報表示媒体は、少なくとも、色彩と帯電特性の異なる二種類の粒子群または少なくとも、色彩と帯電特性の異なる二種類の粉流体から構成されるので、情報表示媒体によって基板から受ける前記影響が異なる。そのため、情報表示パネルの製品検査、使用等の語に、情報表示パネルに特定の情報を表示したまま、それを、比較的長期間にわたって保護、管理したり、出荷搬送、移送等したりする場合には、情報表示パネルのその後の使用における情報の書き換えに当って、情報表示媒体が移動しにくくなり、基板に相互に不均一に付着残留する二種類の情報表示媒体が表示における残像となって、その後の表示情報の鮮明度を低下させる一因となるという問題があった。
【0006】
この発明は、表示保存性にすぐれる、色彩および帯電特性の異なる情報表示媒体を用いることに起因するこのような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、それの目的とするところは、情報表示パネルの保存、出荷搬送、移送等の場合のように、比較的長時間にわたって情報表示パネルを不使用状態とした場合においても、その後における表示情報の鮮明度の低下のおそれを十分に取り除いた、情報表示パネルの保管方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る情報表示パネルの保管方法は、相互に対向する、少なくとも一方が透明な二枚の平行な基板間の密閉したガス封止空間、たとえば空気封止空間内に、色彩の異なる二種類の情報表示媒体を封止するとともに、それらの情報表示媒体を電界の形成下で移動させて、透明基板側に所要の情報を表示させる情報表示パネルを、保存、出荷、移送その他の目的の下に保管するに当って、最後に表示した二色情報の色彩関係を一旦逆転させて色彩を反転させた後、透明基板側、ひいては、両基板側の表示を、全体にわたっていずれかの単一色とするにある。
【0008】
ここで好ましくは、最後に表示した情報の色彩関係と、その色彩関係の逆転とを複数回にわたってもたらす。
【発明の効果】
【0009】
この方法によれば、情報表示パネルの、各種の目的の下での保管に先だって、最後に表示した二色情報の色彩関係を一旦逆転させて色彩を反転させることで、同一色彩の情報表示媒体が基板の特定の同一個所にそのまま付着残留等するのを防止し、しかる後、透明基板側の表示を、全体にわたっていずれかの単一色とすることで、その情報表示パネルの、たとえば比較的長期間のわたる保存、出荷搬送等に当って、透明基板の全体を十分均一な条件下に維持して、特定の情報が表示されたままの不均一性を除去することができるので、たとえ、そのいずれか一色の、および他方の色彩の情報表示媒体の少なくとも一方の動きが鈍くなったり、基板への付着残留等が生じても、その後の情報表示による色彩移動によって、所要の個所の色彩を反転変更させることにより、いわゆるコントラスト比を十分に高めて、特定の表示を長時間継続することによって生じる、一方の色彩の情報表示媒体が特定部位に不均一に付着残留等することに起因する、その後の情報表示の鮮明度の低下を有効に防止することができる。
【0010】
そしてこのことは、最後に表示した情報の色彩関係と、その色彩関係の逆転とを複数回にわたってもたらして、二色のそれぞれの情報表示媒体の、流動性等の移動性を高めるとともに、情報表示媒体の、基板上の局部的な付着残留をより十分に防止した状態で、透明基板側の表示を全体にわたって単一色とした場合により効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、この発明の対象となる情報表示パネルの基本的な構成について説明する。
この発明で用いる情報表示パネルは、対向する二枚の基板間の、たとえば空気を封じ込めた密閉空間内に封入した二種類の、互いに帯電特性の異なる粒子群、粉流体等の情報表示媒体に、たとえば、特許文献2および3に開示されたような駆動装置をもって電界を付与する。
【0012】
これによれば、高電位の電界方向に向かっては低電位に帯電した情報表示媒体がクーロン力などによって引き寄せられ、また低電位の電界方向ぬ向かっては高電位に帯電した情報表示媒体が引き寄せられ、それらの情報表示媒体が電界方向の変化に伴って往復運動することにより情報表示がなされる。
従って、情報表示媒体が、均一に移動し、かつ、繰り返し時あるいは保存時の安定性を維持できるように、情報表示パネルを設計する必要がある。
【0013】
ここで、情報表示媒体として用いる粒子等にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気影像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0014】
この発明の情報表示パネルの基本構造例を、図1(a)、(b)〜図2(a)、(b)に示すところに基づいて以下に説明する。
図1(a)、(b)に示す例では、二種類の、色の異なる情報表示媒体3(ここでは白色粒子3Wと黒色粒子3Bを示す)を、基板1、2の外部から形成される電界に応じて、基板1、2間で垂直に移動させて、画素を単位として、透明基板側の黒色粒子3Bを観察者に視認させる黒色の表面を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させる白色の表示を行っている。
なお、図1(b)に示す例では、図1(a)に示す例に加えて、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
【0015】
また、図2(a)、(b)に示す例では、二種類の色の異なる情報表示媒体3を、基板1に設けた電極5と、透明基板2に設けた透明電極6との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2間で垂直に移動させ、黒色粒子3Bを観察者に視認させる黒色の表面を行うか、あるいは、白色粒子3Wを観察者に視認させる白色の表示を行っている。
なお、図2(b)に示す例では、図2(a)に示す例に加えて、基板1、2との間に例えば格子状に隔壁4を設け表示セルを画成している。
【0016】
以上の説明は、白色粒子3Wを白色粉流体に、黒色粒子3Bを黒色粉流体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することが出来る。
【0017】
かかる情報表示パネルは、少なくとも一方が透明の対向する二枚の基板1,2間に、情報表示媒体3を封入し、その情報表示媒体3に電界を与えて、それを移動させて情報を表示する可逆性の表示パネルであり、ここでは、粒子または粉流体を情報表示媒体として使用し、その情報表示媒体を透明基板2を介して視認させることで、白黒の大きなコントラストの下で、広い視野角を確保することができる。
【0018】
また、情報表示媒体3を移動させる時だけ電界を働かせ、移動後は、電界の作用なしにも、情報表示媒体3は、一旦移動した位置に留まるので表示情報を長期間にわたって保持させることができる。
この一方で、情報を書き換えたい時には、再び電界を働かせることで、情報表示媒体が再度移動して別の情報を表示することになるので、情報の書換えを可逆的に行うことができる。
【0019】
そしてさらには、情報表示媒体が情報を直接的に表示するので、情報表示媒体のサイズが情報の鮮明さを決めることになる。そこでここでは、好ましくは、粒子径1〜20μmの粒子から形成される情報表示媒体を用いることで、鮮明な情報の表示を担保して、繊細で緻密な情報の表示を可能とする。
【0020】
ところで、このような情報表示パネルの基板1,2については、それらの少なくとも一方の基板2はパネルの外側から情報表示媒体の色が確認できる透明基板であり、この基板2は、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料で構成することが好適である。なお、基板1は透明でも不透明でもかまわない。
基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可撓性のあるもの、および、ガラス、石英などの可撓性のない無機シートが挙げられる。
【0021】
基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔の均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型の情報表示パネルとする場合に不都合がある。
【0022】
また、必要に応じて設けられる電極5,6の構成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。
電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。
この場合視認側基板2に設ける電極6は透明である必要があるが、背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。
いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。
なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。
背面側基板1にもうける電極の材質や厚みになどは上述した視認側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。
なお、この場合の外部電圧入力は、直流あるいは交流を重畳しても良い。
【0023】
そして、これもまた必要に応じて設けられる隔壁4については、その形状は表示にかかわる情報表示媒体の種類により適宜最適に設定されるので、一概には特定することができないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1,2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0024】
これらのリブからなる隔壁4により画成される表示セルは、図3に略線平面図で示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。
表示側から見える隔壁部分に相当する部分(表示セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示情報の鮮明さが増す。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明に係る情報表示パネルに好適に用いることができが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0025】
次に、情報表示用パネルに用いる情報表示媒体3としての粉流体について説明する。なお、この発明に用いる情報表示媒体としての粉流体の名称については、出願人が「電子粉流体(登録商標)」の権利を得ている。
【0026】
ここでの「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。
例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである。(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。
ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。
そこでここでは、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0027】
すなわち、この発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、この発明に係る情報表示パネルで固体状物質を分散質とするものである。
【0028】
この発明に係る情報表示パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、情報表示媒体として、例えば気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
この粉流体は、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。その粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、この発明に係る情報表示装置では、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
【0029】
次に、情報表示用パネルで用いる情報表示媒体3としての粒子について説明する。
粒子は、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことがきる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0030】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテル、ポリアミド等が挙げられ、二種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0031】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。
正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン、イミダゾール誘導体等が挙げられる。
その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0032】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0033】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等がある。
【0034】
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0035】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
【0036】
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0037】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0038】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0039】
また、情報表示媒体3としての粒子は平均粒子径d(0.5)が、0.1〜50μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために粒子の移動に支障をきたすようになる。
【0040】
更にここでは、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な粒子移動が可能となる。
【0041】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。
【0042】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0043】
情報表示媒体を形成する粒子の帯電量は当然その測定条件に依存するが、情報表示パネルにおける情報表示媒体を形成する粒子の帯電量はほぼ、初期帯電量、隔壁との接触、基板との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に情報表示媒体を形成する粒子の帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かった。
【0044】
さらに、乾式の情報表示媒体を用いる、ここにおける情報表示パネルでは、基板間の情報表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要である。
【0045】
この空隙部分とは、図1(a)、(b)〜図2(a)、(b)において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6、情報表示媒体3(粒子群あるいは粉流体)の占有部分、隔壁4の占有部分(隔壁を設けた場合)、情報表示パネルのシール部分を除いた、いわゆる情報表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
【0046】
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示パネルに封入することが必要であり、例えば、情報表示媒体の充填、情報表示パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0047】
ここでの情報表示用パネルにおける基板1と基板2との間隔は、情報表示媒体3が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における情報表示媒体3の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には情報表示媒体の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【0048】
以上のような可逆式の情報表示パネルについてのこの発明に係る保管方法は、それをたとえば、完成した情報表示パネルの全数検査を、テストパターンの表示によって行う場合を例として説明すると、以下のようにして実施することがきる。
【0049】
たとえば、単純マトリックス駆動方式またはダイナミック駆動方式等の粒子移動式情報表示パネルとすることができる表示パネルが完成したときは、たとえば白、黒二色の情報表示媒体3をもって、透明基板2側に、電界の作用下で、図4に例示するような塗り分け模様になるテストパターンを形成させ、このテストパターンが十分適正に形成されて検査に合格した表示パネルについては、それの出荷準備の一環として、そのテストパターンを、再度の電界の作用に基いて、図5に示すような、白色と黒色とを反転させた表示パターンとして、特定の情報表示媒体3の、特定部位への継続的な付着残留による不均一性を取り除く。
【0050】
なおこのことは、図4に示すテストパターンと、図5に示すそれの反転パターンとのそれぞれを複数回にわたって繰返し表示させた場合により効果的である。
【0051】
そしてその後は、透明基板2側、ひいては、両基板1,2側に、白もしくは黒のいずれか一方の色彩を全体にわたって均一に表示させ、これにより、情報表示媒体3の、電界の作用なしにもその単一色の表示を維持する表示保存性に基いて、以後、出荷搬送等の全期間にわたって、その単一色の、全体に均一な表示を維持させる。
【0052】
情報表示パネルをこのようにして出荷した場合には、荷解どきの後のそれの性能試験等に当っては、最後に表示したテストパターン表示に影響されることなく、鮮明度にすぐれた試験表示を行うことがきる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明に係る保管方法は、情報表示パネルの出荷時にのみならず、そのパネルが比較的長い時間にわたって不使用状態となる、保存、移送等に当っても適用し得ることはもちろんである。
また、二色の情報表示媒体の色彩の組み合わせは、白色と黒色のみならず、実現可能な各種の色彩の任意の組み合わせとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の情報表示パネルの基本構造を概念的に例示する断面図である。
【図2】この発明の情報表示パネルの他の基本構造を概念的に例示する断面図である。
【図3】隔壁により区画される表示セルの配置例を示す略線平面図である。
【図4】最後に表示した情報の一例としてのテストパターンを示す図である。
【図5】テストパターンの反転表示を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1,2 基板
3 情報表示媒体
3W 白色粒子
3B 黒色粒子
4 隔壁
5,6 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する、少なくとも一方が透明な二枚の基板間の密閉空間内に、色彩の異なる二種類の情報表示媒体を封入するとともに、それらの情報表示媒体を、電界の形成下で移動させて、透明基板側に所要の情報を表示させる情報表示パネルを保管するに当り、
最後に表示した情報の色彩関係を一旦逆転させた後、透明基板側の表示を、全体にわたっていずれかの単一色とする情報表示パネルの保管方法。
【請求項2】
最後に表示した情報の色彩関係と、その色彩関係の逆転とを複数回にわたってもたらす請求項1に記載の情報表示パネルの保管方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−58553(P2006−58553A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239626(P2004−239626)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)