説明

情報表示媒体

【課題】コントラストの良い情報表示媒体を提供する。
【解決手段】本発明に係る情報表示媒体1(いわゆる電子ペーパー)は、エラストマーシート7を備えると共に、このエラストマーシート7に、正電荷が帯電した黒色半球部分5、及び負電荷が帯電した白色半球部分6で構成されたツイストボール3が回転可能に複数埋入されている。さらに、黒色半球部分5には、正電荷に帯電した帯電制御剤(CCA)12が添加されている。また、前記ツイストボール3の周面15には、比誘電率が約2.65のジメチルシリコーンオイルで構成されるジメチルシリコーンオイル層9が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表裏で色が異なる二色式回転粒子を多数備え、各二色式回転粒子の向きを電界により反転制御して線画の表示を行う情報表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙のように薄くて軽く、可視情報を可逆的に書き換えて表示することができる情報表示媒体(いわゆる電子ペーパー、又はデジタルペーパー)が既に提案されている。この情報表示媒体の構成にはいくつか種類があり、そのなかに二色式回転粒子(例えば、ツイストボール)を用いた構成がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この情報表示媒体は、図3に示すように、半球ずつ白色と黒色とに色分けされた球形のツイストボールaが透光性のエラストマーシートbに多数埋入されている構成が一般的である。また、各ツイストボールaの周囲にはキャビティdが形成されており、該キャビティdとツイストボールaとの間隙に不揮発性の絶縁性溶媒(例えば、シリコーンオイル等)が満たされている。さらに、ツイストボールaの白色半球部分eには負電荷が帯電し、一方黒色半球部分fには正電荷が帯電しており、これにより永久双極子が形成されている。なお、各半球部分e,fの帯電は、各半球部分e,fに添加された顔料により制御されている。具体的には、白色半球部分eには酸化チタンが顔料として添加され、黒色半球部分fにはカーボンブラックが顔料として添加されている。
【0004】
そして、このエラストマーシートbの上面に負電荷パターンを印加すると、各ツイストボールaがキャビティd内で回転して正電荷を持つ黒色半球部分fが上を向き、当該エラストマーシートbの上面からは黒色が視認される。一方、エラストマーシートbの上面に正電荷パターンを印加すると、各ツイストボールaが回転して負電荷を持つ白色半球部分eが上を向き、当該エラストマーシートbの上面から白色が視認される。このようにツイストボールaを用いた情報表示媒体は、各ツイストボールaの向きを電界により反転制御して所定の線画の表示を行い、該線画を無電力で長時間保持することができるように構成されたものである。
【0005】
【特許文献1】特開2004−199022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の情報表示媒体は、黒色部分と白色部分とが各々明瞭に表示されると、コントラストが良好となって視認性が向上する。ここで、黒色部分と白色部分とが明瞭に表示されるためには、異なる電極パターンが印加される度に、ツイストボールが180°の回転角度で確実に反転制御される必要がある。これに対し、異なる電極パターンが印加された際に180°の回転角度が得られず、例えば90°程度の回転角度でツイストボールが回転停止してしまうと、中途半端な態様で黒色及び白色がシート表面に表示されることとなり、結果的に線画は不明瞭となる。
【0007】
そこで本発明は、二色式回転粒子の回転が従来構成に比べて安定し、コントラストが良好な情報表示媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透光性のシート材に、一側の半球部分が有色で、かつ正電荷が帯電し、他側の半球部分が白色で、かつ負電荷が帯電した二色式回転粒子が回転可能に複数埋入され、該二色式回転粒子の向きが電界によって反転制御されることにより当該シート材表面に線画が表示される情報表示媒体において、二色式回転粒子の一側の半球部分は、正電荷が帯電した帯電制御剤が添加されてなると共に、該二色式回転粒子の周面に、比誘電率が1.8以上2.8未満の低極性溶媒層が形成されたことを特徴とする情報表示媒体である。ここで、低極性溶媒層は、比誘電率が1.8以上2.8未満の低極性溶媒により構成されるものである。
【0009】
ここで本発明の二色式回転粒子に係る有色の半球部分は、正電荷が帯電した帯電制御剤(CCA)が添加されたものであり、これにより二色式回転粒子は、極性基が具備されることとなる。すなわち、本発明では、有色の半球部分に例えば顔料を用いて正極に帯電制御すると共に、前記帯電制御剤(CCA)を添加することによっても正極に帯電制御するものである。したがって本発明は、有色の半球部分と白色の半球部分との分極の度合いが、例えば顔料のみで帯電制御してなる従来構成の分極の度合いに比べて大きくなっている。さらに本発明は、二色式回転粒子の周面に比誘電率が1.8以上2.8未満の低極性溶媒層が形成されていることを特徴としている。そして、これまでに述べたように正電荷の帯電制御剤を加え、しかも上記した低極性溶媒層を形成すると、外部から正電荷パターン又は負電荷パターンが印加された場合に、当該電荷パターンに対して各半球部分の応答性が従来に比して高まり、当該二色式回転粒子は安定してほぼ180°の回転角度が得られることとなる。
【0010】
また、上記構成にあって、正電荷が帯電した帯電制御剤は、高分子量の帯電制御剤である構成が提案される。
【0011】
かかる構成とすることにより、一段と二色式回転粒子の回転が円滑となる。なお、高分子量の帯電制御剤の分子量としては、10000以上が好適である。
【0012】
また、低極性溶媒層を構成する低極性溶媒は、ジメチルシリコーンオイル、イソパラフィン系溶媒、及び直鎖パラフィン系溶媒のうちいずれかが選択されうる。
【0013】
かかる構成とすることにより、二色式回転粒子の回転が円滑となり、反転制御の精度が向上することとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の情報表示媒体は、二色式回転粒子の一側の有色半球部分に正電荷が帯電した帯電制御剤を添加すると共に、該二色式回転粒子の周面に比誘電率が1.8以上2.8未満の低極性溶媒層を形成したものとしたため、有色半球部分と白色半球部分とが従来構成に比べて大きく分極することとなり、二色式回転粒子の帯電が安定する利点がある。これにより、二色式回転粒子は、印加される電荷パターンに対する応答性が向上し、その回転が円滑となり、精度の高い反転制御が得られる利点がある。したがって、本発明の情報表示媒体は、有色の半球部分と白色の半球部分とが各々明瞭に表示されることとなって、コントラストが向上する優れた効果を有する。
【0015】
また、上記構成にあって、正電荷が帯電した帯電制御剤は、高分子量帯電制御剤である構成とした場合は、さらに二色式回転粒子の回転が円滑となり、精度の高い反転制御が得られる利点がある。
【0016】
また、上記構成にあって、低極性溶媒層の低極性溶媒を、ジメチルシリコーンオイル、イソパラフィン系溶媒、及び直鎖パラフィン系溶媒のうちいずれかとした場合は、好適に二色式回転粒子の回転を円滑にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る情報表示媒体1の実施例を、図1,2に従って説明する。
図1に示すように、情報表示媒体1は、後述するツイストボール3が回転可能に埋入された透光性のエラストマーシート7を備えている。このエラストマーシート7のシート厚は、500〜600μmである。また、エラストマーシート7の表面には、PETフィルム8が薄膜状に配設されている。このPETフィルム8のフィルム厚は、25〜50μmである。さらに、当該エラストマーシート7の裏面には、透明電極2が薄膜状に配設されている。なお、本実施例に係るエラストマーシート7により、本発明に係るシート材が構成される。
【0018】
上述のツイストボール3は、ほぼ完全な球形であり、その直径をほぼ30μmとしている。また、ツイストボール3のベース樹脂は、ポリエチレン(PE)樹脂としている。また、図2に示すように、ツイストボール3は二つの半球部分で構成されており、一側の半球部分を黒色半球部分5(有色半球部分)とし、他側の半球部分を白色半球部分6としている。なお、黒色半球部分5には、顔料としてカーボンブラックが添加されている。また、白色半球部分6には、顔料として酸化チタンが添加されている。
【0019】
さらに、前記黒色半球部分5は、正電荷が帯電しており、一方白色半球部分6は負電荷が帯電している。これによりツイストボール3は、永久双極子が形成されていることとなる。なお、各半球部分5,6の帯電は、添加された顔料(ブラックカーボン又は酸化チタン)により制御されている。かかる帯電技術は、周知技術である。
【0020】
そして、これまでに述べた構成にあって、透明電極2に負電荷パターンを印加すると、ツイストボール3が回転して正電荷を持つ黒色半球部分5が透明電極2側に向き、PETフィルム8を介して反対側の白色が視認される。一方、透明電極2に正電荷パターンを印加すると、ツイストボール3が回転して負電荷を持つ白色半球部分6が透明電極2側を向き、PETフィルム8を介して反対側の黒色が視認される。
【0021】
次に、本発明の要部について説明する。
図1に示すように、ツイストボール3の周囲には、ツイストボール3よりわずかに径大であるキャビティ4が形成されている。そして、このキャビティ4とツイストボール3との間隙に、ジメチルシリコーンオイルが充填されている。換言すれば、ツイストボール3の周面(図2参照)に、ジメチルシリコーンオイルにより構成されたジメチルシリコーンオイル層9が薄膜状に形成されていることとなる。このようにツイストボール3とキャビティ4との間にジメチルシリコーンオイルが介在することにより、ツイストボール3がエラストマーシート7内で円滑に回転できるようになっている。なお、このジメチルシリコーンオイルは、低極性溶媒であり、比誘電率は、約2.65である。
【0022】
また、図2に示すように、ツイストボール3の黒色半球部分5には、正電荷が帯電した帯電制御剤(CCA)が添加されている。これにより、当該ツイストボール3は、極性基を具備することとなる。したがって、本発明に係るツイストボール3は、黒色半球部分5と白色半球部分6との分極が、従来構成に比べて大きくなっている。なお、本実施例では、正電荷が帯電した帯電制御剤を樹脂に対して10wt%程度添加している。
【0023】
次に、本実施例に係る情報表示媒体1の作製手順について、簡単に説明する。
まず、ツイストボール3に係る黒色半球部分5に正電荷が帯電した帯電制御剤(CCA)を添加する。次に、かかるツイストボール3を未硬化のエラストマーシート7に分散させ、当該エラストマーシート7を硬化させる。次に、当該エラストマーシート7をジメチルシリコーンオイルに浸漬する。そうすると、かかるエラストマシート7が、膨潤し、前記ツイストボール3の周囲にジメチルシリコーンオイルで満たされたキャビティ4が形成される。すなわち、ツイストボール3の周面15(図2参照)に、ジメチルシリコーンオイルにより構成されたジメチルシリコーンオイル層9が薄膜状に形成されてなる情報表示媒体1が得られる。なお、このジメチルシリコーンオイル層9により、本発明に係る低極性溶媒層が構成される。ところで、ツイストボール3が埋入したエラストマーシート7を溶媒に浸漬し、膨潤させ、該溶媒が満たされたキャビティ4を形成する技術は、公知の技術が好適に用いられる。
【0024】
そして、得られた情報表示媒体1の反転応答性及び情報表示性を確認したところ、低電圧でツイストボール3が180°の回転角度で安定して反転することが認められた。これにより、上記構成の情報表示媒体1に係る反転制御は精度が高く、従来構成に比して優れたコントラスト性能を発揮することがわかった。なお、本実施例に係るツイストボール3により、本発明に係る二色式回転粒子が構成される。
【0025】
なお、これまでに述べた構成に代えて、以下のような構成としても良い。
低極性溶媒層9を構成する低極性溶媒を、前記ジメチルシリコーンオイルに代えて、アイソパー〔登録商標〕(イソパラフィン系溶媒)又はn−ヘキサデカン(脂肪族炭化水素)としても良い。具体的には、ツイストボール3を分散させたエラストマーシート7をアイソパー(イソパラフィン系溶媒)に浸漬すると、アイソパー(イソパラフィン系溶媒)で満たされたキャビティ4が形成された情報表示媒体1が得られる。また、ツイストボール3を分散させたエラストマーシート7をn−ヘキサデカンに浸漬すると、n−ヘキサデカン(脂肪族炭化水素)で満たされたキャビティ4が形成された情報表示媒体1が得られる。なお、アイソパー(イソパラフィン系溶媒)の比誘電率は、約1.95である。また、n−ヘキサデカン(脂肪族炭化水素)の比誘電率は、約2.04である。ここで、アイソパー(イソパラフィン系溶媒)と、n−ヘキサデカン(脂肪族炭化水素)の比誘電率は、以下のような条件で測定されている。
JISC2101:1999に準拠、誘電率測定試験用試料:50Hz,103Hz,104Hz,105Hz,106Hz、室温23℃、湿度50%RH
なお、n−ヘキサデカンにより、本発明に係る直鎖パラフィン系溶媒が構成される。
【0026】
次に、本発明に適用される低極性溶媒の比誘電率について述べる。
上記ジメチルシリコーンオイルの比誘電率が約2.65であること、n−ヘキサデカン(脂肪族炭化水素)の比誘電率が約2.04であること、及びアイソパー(イソパラフィン系溶媒)の比誘電率が約1.95であることを考慮すれば、上記実施例により比誘電率が1.9以上2.7以下の範囲については少なくとも有効であることが確認される。
【0027】
一方、本発明に係る低極性溶媒に含まれないものとしては、メチルフェニルシリコーンオイル、及び脂肪酸エステル類(例えばアジピン酸ジ−n−ブチル)が挙げられる。これらは比誘電率が2.8以上であるため、本発明に適用されない。仮にこれらの溶媒を使用すると、ツイストボール3が180°の回転角度で反転せず、中途半端な態様で黒色及び白色が表示されることとなり、表示しようとする線画が不明瞭となる。また、アイソパー(比誘電率が約1.95)が有効な構成であることを考慮すれば、比誘電率が1.8以上であれば本発明に適用可能であると考えられる。したがって、本発明に係る低極性溶媒としては、比誘電率が1.8以上2.8未満の範囲に特定されうる。
【0028】
なお、上記したツイストボール3のベース樹脂としては、前記PEの他、ポリプロピレン、ナイロン等を用いることができる。
【0029】
また、正電荷が帯電した半球体部分の色は、黒色に限定されず、他の色であっても良い。具体的には、黒色顔料又は染料に代えて、例えばイエロー、マゼンタ、シアン等の顔料又は染料を用いることができる。要は、負電荷が帯電した半球体部分の白色に対して、正電荷が帯電した半球体部分は有色であれば良い。
【0030】
また、本発明に係る二色式回転粒子は、上記寸法に限定されない。また、形状は球形に限定されることはなく、例えば円柱状であっても良いし、他の形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】情報表示媒体1の概略断面図である。
【図2】ツイストボール3の概略断面図である。
【図3】従来構成の情報表示媒体Aの概略断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 情報表示媒体
3 ツイストボール
5 黒色半球部分
6 白色半球部分
7 エラストマーシート
9 ジメチルシリコーンオイル層
12 帯電制御剤(CCA)
15 ツイストボールの周面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性のシート材に、一側の半球部分が有色で、かつ正電荷が帯電し、他側の半球部分が白色で、かつ負電荷が帯電した二色式回転粒子が回転可能に複数埋入され、該二色式回転粒子の向きが電界によって反転制御されることにより当該シート材表面に線画が表示される情報表示媒体において、
二色式回転粒子の一側の半球部分は、正電荷が帯電した帯電制御剤が添加されてなると共に、該二色式回転粒子の周面に、比誘電率が1.8以上2.8未満の低極性溶媒層が形成されたことを特徴とする情報表示媒体。
【請求項2】
正電荷が帯電した帯電制御剤は、高分子量の帯電制御剤であることを特徴とする請求項1記載の情報表示媒体。
【請求項3】
低極性溶媒層を構成する低極性溶媒は、ジメチルシリコーンオイル、イソパラフィン系溶媒、及び直鎖パラフィン系溶媒のうちいずれかであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の情報表示媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−206365(P2007−206365A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25001(P2006−25001)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000186566)小林記録紙株式会社 (169)