説明

情報表示用パネルの製造方法および製造装置

【課題】表示画像にスジ状の表示不良が生じない、表示品質に優れた情報表示用パネルを提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明な2枚の基板間の隔壁で形成されたセル内に、表示媒体として充填し、封入した粒子群を移動させて情報を表示する情報表示用パネルの製造方法であって、上記した粒子群を充填するに際し、上記隔壁上に、上記セルに対応した開口部を有するマスクを配置するステップと、上記マスク上に上記粒子群を載せるステップと、JIS−A硬度が50°〜70°の材料を少なくとも周囲に配置した回転型ローラを具える粒子移動部材を、上記粒子移動部材の進行方向に上記回転型ローラを押し付けながら回転移動させることによって、上記粒子群を上記セル内に充填するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示用パネルの製造方法および製造装置に関し、特に情報表示用パネルにおける表示品質の向上を図ろうとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、情報表示用パネルの製造方法として、図4(a)に示すように、表示媒体としての粒子群3をセル7内に充填するにあたり、隔壁4上にスクリーン14を配置し、スクリーン14上に粒子群3を載せ、板状のゴム材料からなるスキージ19をスクリーン14と接触させた状態でスクリーン14の一端から他端まで移動させることで、スクリーン14を介して、粒子群3をセル7内に充填する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
通常、スクリーン14としては、全体が均一な網目状であるメッシュ型スクリーンあるいは隔壁4に対応する部分がマスクされ、セル7に対応する部分が開口しているマスク型スクリーン等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−148381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のスキージ19を用いて粒子群3をセル7内に充填する場合、スキージ19をスクリーン14に強く押しつける(通常0.05MPa〜20MPa程度の押し付け力)必要があるため、粒子がスキージ19とスクリーン14とによって強く擦られて損傷する場合が生じていた。このように損傷した粒子がセル7内に充填された粒子駆動型の情報表示用パネルでは、粒子の駆動性に不具合が発生し、コントラスト低下のような表示品質が低下するという問題が生じていた。
さらに、損傷した粒子は凝集しやすいため、スクリーン14上で容易に凝集体を形成する。この凝集体はスクリーン14上に残留する場合があるが、その状態で、スキージ19を移動させると、図4(b)に示すように、スキージ19に疵17が生ずるおそれがある。このように疵17がついたスキージ19を用いて粒子の充填を行うと、スキージ19の疵17の部分では、押し付け力が作用しないため粒子充填が行われず、表示画像にスジ状のむらが生じる不具合が発生していた。
さらにまた、スキージ19が硬いことも、スキージ19に疵がつきやすい要因の1つであり、上述した例と同様に、疵がついたスキージを用いて粒子充填を行うと、製造した情報表示用パネルの表示画像にスジ状の表示不良を発生させてしまう。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するもので、セル内への充填時における粒子の破損および従来のスキージと呼ばれる粒子移動部材において発生していた疵の発生を有利に回避することにより、従来懸念されていたコントラストの低下やスジ状の表示不良の発生を解消した情報表示用パネルの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報表示用パネルの製造方法は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の隔壁で形成されたセル内に、表示媒体として充填し、封入した粒子群を移動させて情報を表示する情報表示用パネルの製造方法であって、粒子群を充填するに際し、隔壁上に、セルに対応した開口部を有するマスクを配置するステップと、マスク上に粒子群を載せるステップと、JIS−A硬度が50°〜70°の材料を少なくとも周囲に配置した回転型ローラを具える粒子移動部材を、粒子移動部材の進行方向に回転型ローラを押し付けながら回転移動させることによって、粒子群をセル内に充填するステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0007】
なお、本発明においてJIS−A硬度は、JIS K 6253で規定するタイプA硬度であり、株式会社テクロック製デュロメータGS−719Gで測定することができる。また、ASTMにおけるショアA硬度に対応するものである。
【0008】
また、本発明の情報表示用パネルの製造方法は、回転型ローラをマスク面に押し付ける力が1MPa〜20MPaであること、回転型ローラの少なくとも周囲に配置するJIS−A硬度が0°〜70°の材料は弾性材料であることが好適である。
【0009】
本発明の情報表示用パネルの製造装置は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間の隔壁で形成されたセル内に、表示媒体として充填し、封入した粒子群を移動させて情報を表示する情報表示用パネルの製造装置であって、隔壁上に配置する、セルに対応した開口部を有するマスクと、JIS−A硬度が50°〜70°の材料を少なくとも周囲に配置した回転型ローラを具える粒子移動部材と、を含むことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の情報表示用パネルの製造装置は、回転型ローラの少なくとも周囲に配置するJIS−A硬度が50°〜70°の材料は弾性材料であることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スジ状の表示不良の発生がなく表示品質に優れた情報表示用パネルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の対象となる情報表示用パネルの一例である帯電粒子気中駆動型の情報表示用パネルを説明するための図である。
【図2】本発明に従う粒子群の充填要領の一例を説明するための図である。
【図3】本発明に用いる粒子移動部材の変形例を示す図である。
【図4】従来法に従う粒子群の充填要領を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明の対象となる情報表示用パネルの一例である帯電粒子駆動型情報表示用パネルの基本的な構成について説明する。この情報表示用パネルでは、対向する基板間に封入した帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体に対向対電極から電界が付与される。付与された電界方向にそって、表示媒体が電界による力やクーロン力等によって引き寄せられ、表示媒体が電界方向の変化によって移動方向が切り換わることにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、表示情報を書き換える時あるいは表示した情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力等が考えられる。
【0014】
本発明の対象である帯電粒子駆動型の情報表示用パネルの例を、図1(a)、(b)に基づき説明する。
図1(a)、(b)に示す例では、光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セル7において、パネル基板1に設けた電極5(ストライプ電極)と観察側の透明なパネル基板2に設けた透明電極6(ストライプ電極)とが対向直交交差して形成する画素電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を、あるいは、図1(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を白黒のドットでマトリックス表示している。なお、図1(a)、(b)において、図面手前にある隔壁は省略している。ここではセルと画素(ドット)とが1対1に対応する例を示している。隔壁4と基板1とは接着剤8を介して接着している。
【0015】
本発明に従う、セル内への粒子群の好適な充填要領について、図2を用いて説明する。図2(a)は表示媒体とする粒子群をセル内に充填している様子を示し、図2(b)はその際に用いる粒子移動部材の構成を示している。
本発明の情報表示用パネルの製造方法では、図2(a)に示すように、隔壁4上にセルに対応する開口部を有するマスク15を配置し、マスク15上に粒子群3を載せ、粒子移動部材20aをマスク15と接触させた状態でマスク15の一端から他端まで移動させることで、マスク15の開口部から、粒子群3を落下させてセル7内に充填する。
なお、マスク15は、隔壁4に対応する部分がマスクされ、セル7に対応する部分が開口しており、マスクの開口部はセルの開口部以下の大きさとする。
【0016】
本発明では、使用する粒子移動部材20aがホルダ21と回転型ローラ22とを具え、マスク15と接触する回転型ローラ22のJIS−A硬度を50°〜70°の範囲とすることが肝要である。回転型ローラ22をマスク15に押し付けながら、回転型ローラ22の押し付け力によって粒子群3をセル7内に充填する際、図2(a)に示すように、回転型ローラ22を矢印方向に回転させながらマスク15上を矢印で示す右方向に移動させる。回転型ローラ22の回転方向と粒子移動部材20aの進行方向とを図2(a)にそれぞれ矢印で示したようにして、回転型ローラ22をマスク15に押し付けながらマスク15上を移動させることにより、粒子が回転型ローラ22とマスク15とによって強く擦られることがなくなり、粒子が損傷するおそれは低下する。それゆえ、粒子の損傷に起因したコントラストの低下のような表示品質の劣化は起こらなくなる。
損傷した粒子は、球形ではなくいびつな形をしており、粒子の表面積が大きくなるため、基板、電極、隔壁等に付着しやすい。それゆえ、基板間に所定の電圧を印加しても粒子が移動せず、コントラストの低下を招いてしまうのである。
【0017】
また、本発明ではマスク面に接するのは回転型ローラ22であるため、従来生じていた、損傷した粒子が凝集体となり板状スキージ19に疵を付けるという問題も発生しなくなり、その結果、製造した情報表示用パネルの表示画像においてスジ状のむらも発生しなくなる。
ところが、回転型ローラ22の材料としてJIS−A硬度が90°程度のものを用いた場合には、やはり、回転型ローラ22に疵が付き、情報表示用パネルの表示画像においてスジ状のむらが発生するという問題が生じる。そこで、回転型ローラ22のマスク15と接する周囲部分の材料硬度をJIS−A硬度で50°〜70°とすることにより、回転型ローラ22に疵が発生しにくくなり、その結果、製造した情報表示用パネルの表示画像においてスジ状のむらも発生しなくなることを後述する実施例によって確認した。
【0018】
また、本発明において、回転型ローラ22をマスク15に対して押し付ける力は、1MPa〜20MPaの範囲が好ましい。20MPaを超えると粒子の損傷が生じ、1MPa未満では十分な粒子移動が行えないおそれがある。押し付ける力を上記の範囲とすることによって、回転型ローラ22の表面が、マスク15と隔壁とを密着させることができる。
【0019】
図3に、回転型ローラ22をマスク15に対して押し付けるための押圧機構を有する粒子移動部材の変形例を示す。図3(a)に示す、押し付ける力(押圧力)を加えない状態の粒子移動部材20bから、所定の押圧力を加えると、図3(b)に示すように、ローラ軸23に取り付けられたゴム弾性体24が長さLの分だけ圧縮して粉流体およびマスクに押し圧力を伝える。図3(c)には粒子移動部材20bの側面図を示す。
図3(d)に示すように、押圧機構として板バネ25を有する粒子移動部材20c、図(e)に示すように、押圧機構としてコイルバネ26を有する粒子移動部材20dを用いることもできる。
このような押圧機構は、回転型ローラ22の両端部に設けることが好ましいが、どちらか一方に設けることもできる。
また、押圧機構を回転型ローラ22の両端部に設ける場合には、同じ押圧機構を設けることが好ましい。
【0020】
回転型ローラ22の幅Wを情報表示用パネルの情報表示領域の数および配置位置に合わせ、全ての情報表示領域に対してその幅より大きい幅となるようなローラ長にすることで、複数の情報表示領域に対して一括して表示媒体とする粒子群の充填を行うことができるので好ましい。また、複数の情報表示用パネルを同時に作製する場合、例えば、情報表示用パネルを2×2で配置した4面取り配置の場合は、回転型ローラ22の幅Wを2面の情報表示用パネルの幅より大きい幅とすることが好ましい。この場合、並設した2つの情報表示領域のそれぞれに対して、その情報表示領域の幅よりも広いローラを2段に構成した回転型ローラとすることもできる。
【0021】
回転型ローラ22の直径Dは10mm以上100mm以下とすることが好ましい。
なぜなら、100mm超の場合、回転型ローラ22が重くなり、回転型ローラ22を高速で移動することが困難になる他、移動機構を含めた粒子移動部材が大型になるからであり、一方、10mm未満の場合、回転型ローラ22のローラ径が細すぎてマスク15上に堆積している粒子群を効率よく移動できないおそれがあるからである。
回転型ローラ22の少なくとも外周に配置する材質は、天然ゴムの他、ウレタンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴムや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ塩化ビニルやそれらを複合した高分子材料および前記材料を複合化したものが挙げられる。これらの材料は、JIS−A硬度50°〜70°において適度な弾性を示し、押し付けによって変形しても元に戻るので本発明の回転型ローラを構成する材料として好ましく用いられる。
【0022】
以下、本発明の対象となる情報表示用パネルを構成する各部材について説明する。
基板としては、少なくとも一方の基板はパネル外側から表示媒体を確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。もう一方の基板となる背面側基板は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、アクリル等の有機高分子系基板や、ガラスシート、石英シート、絶縁膜で被膜した金属シート等を用い、表示面側にはこのうち透明なものを用いる。基板の厚みは、2μm〜2000μmが好ましく、さらに5μm〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、2000μmより厚いと、薄型の情報表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0023】
電極の形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類や酸化インジウム錫(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化インジウム、導電性酸化錫、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)-poly-(styrenesulfonate)(PEDOT:PSS)等の導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状にパターニング形成する方法、金属箔(例えば圧延銅箔等)をラミネートする方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布してパターニング形成する方法が用いられる。視認側(表示面側)基板に設ける電極は透明である必要があるが、背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、電極厚みは、導電性や光透過性を鑑みて決定され、0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μmである。背面側基板に設ける電極の材質や厚みについては光透過性を鑑みる必要はない。
【0024】
本発明で情報表示画面領域外に形成される接続用電極部となる電極は、導電性材料で形成された比較的脆くて割れやすい、例えば、導電膜金属酸化物膜のような導電膜の上に、可とう性のある、例えば、同などの導電性金属膜を積層した積層構造又は可とう性のある導電性金属膜の単層構造を有する。導電性のある金属酸化膜としては、インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられるが、いずれも金属と比較すれば可とう性に乏しく脆い。また、導電性材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)-poly-(styrenesulfonate)(PEDOT:PSS)等の導電性高分子類を用いることができる。このような高分子材料を製膜して得た導電膜が金属と比較して可とう性に乏しい場合には、この高分子材料導電膜の上に、可とう性のある導電性金属膜を積層した積層構造を採用するのが好ましい。可とう性を有する導電性金属としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム等やこれらを主成分とする合金が挙げられる。
【0025】
隔壁については、その形状は表示にかかわる表示媒体の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2μm〜100μm、好ましくは3μm〜50μmに、隔壁の高さは10μm〜500μm、好ましくは10μm〜200μmに調整される。基板間ギャップを確保するために配置する隔壁の高さは、確保したい基板間ギャップと合わせる。基板間空間をセルに仕切るために配置する隔壁の高さは、基板間ギャップと同じにしても、低くしてもよい。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も用いられる。
これらのリブからなる隔壁により形成されるセルは、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示状態の鮮明さが増す。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、マスク印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示装置に搭載する情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0026】
本発明の製造装置で製造する情報表示用パネルにおいて、表示媒体を構成する粒子群は平均粒子径d(0.5)が、1μm〜20μmの範囲であり、1種類の粒子で構成したり、複数種類の粒子を組み合わせて構成したりする。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体としての移動に支障をきたすようになる。
【0027】
さらに、示媒体を構成する粒子(粒子群)の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、表示媒体を構成する粒子のサイズが揃い、表示媒体としての均一な移動が可能となる。
【0028】
さらにまた、表示媒体として複数の粒子群を使用する場合には、使用した粒子群の内、最大の平均粒子径d(0.5)を示す粒子群の平均粒子径d(0.5)に対する、最小の平均粒子径d(0.5)を示す粒子群の平均粒子径d(0.5)の比を10以下とする。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、複数の粒子群は表示媒体として互いに反対方向に動くので、互いの粒子群を構成している粒子のサイズが近い方が表示媒体として容易に移動できるようになるので好適であり、それがこの範囲となる。
【0029】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子群を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、平均粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0030】
さらに、粒子群を表示媒体として気体中(真空中を含む)空間で駆動させる方式とする場合には、パネル基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6、表示媒体3B、3Wの占有部分、隔壁4の占有部分、パネル基板のシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるようにパネル基板間に封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0031】
本発明の対象とする情報表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、表示媒体が駆動できて、表示コントラストを維持できればよいが、通常2μm〜500μm、好ましくは5μm〜200μmに、表示媒体とする粒子群を構成する粒子の大きさや充填量に合わせて調整される。
表示媒体とする粒子群に帯電性粒子を用いる場合は、基板と基板との間隔は10μm〜100μm、好ましくは10μm〜50μmの範囲で調整される。さらに、基板間の気体中空間における表示媒体の体積占有率は5%〜70%が好ましく、さらに好ましくは5%〜60%である。70%を超える場合には表示媒体としての粒子の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。
【0033】
(表示媒体の準備)
発明例および比較例の情報表示用パネルでは表示媒体として、帯電特性の異なる白黒2色の表示媒体(粒子群A、粒子群B)を用いた。
粒子群Aは、アクリルウレタン樹脂EAU53B(亜細亜工業(株)製)/IPDI系架橋剤エクセルハードナーHX(亜細亜工業(株)製)にカーボンブラック(MA100三菱化学(株))4重量部、荷電制御剤ボントロンN07(オリエント化学(株)製)2重量部を添加し、混練り後、ジェットミルにて粉砕し、さらにハイブリダイザー装置(奈良機械製作所(株)製)を用いて機械的衝撃力を加えて略球状としてから分級して作製した。作製された粒子群Aは、平均粒子径が9.1μm、略球状で負帯電性の黒色粒子群であった。
粒子群Bは、ターシャリーブチルメタクリレ−トモノマー80重量部とメタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチルモノマ−20重量部に0.5重量部のAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を溶解し、カップリング剤処理して親油性とした酸化チタン20重量部を分散させて得られた液を、10倍量の0.5%界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)水溶液に懸濁、重合させ、濾過、乾燥させた後、分級機(MDS−2:日本ニュ−マチック工業)を用いて作製した。作製された粒子群Bは、平均粒子径が8.5μm、略球状で正帯電性の白色粒子群であった。
【0034】
(パネル基板の作製)
ITO電極付きガラス製透明基板を2枚準備し、一方の基板上に高さ50μmのリブを作り、四角形、格子状配置の隔壁を形成した。なお、基板は2×2配置で4面の情報表示用パネルを取得する構成とした。
隔壁の形成は次のように行った。感光性フィルムであるニチゴーモートン社製ドライフィルムフォトレジストNIT250(厚さ50μm)をITO付ガラス上にラミネートし、露光、現像により、所望とするライン30μm、スペース320μm、ピッチ350μmの隔壁を形成した。これで高さ50μmの隔壁を得た。
【0035】
(情報表示用パネルの作製)
粒子群Aと粒子群Bを、各別のマスクを用いて順番にセル内に充填した。マスクとしては、厚さ80μmのステンレス板に、直径100μmの孔(開口部)をセルの位置に対応させて設けたものを用いた。セルの面積に対するマスクの孔(開口部)の面積は7.6%であった。
はじめに、基板の隔壁上に上記マスクを配置し、黒色粒子群(粒子群A)をマスク上に載せ、マスク上で各種の粒子移動部材を2往復させて、セル内に黒色粒子群を充填した。次に、白色粒子群(粒子群B)を載せたマスクを隔壁上に配置して、同様に粒子移動部材を3往復させて、セル内に白色粒子群を充填した。黒色粒子群、白色粒子群を順次充填した基板と対向基板とを貼り合わせて情報表示用パネルを4個取得できるパネルを作製した。
ここで、粒子移動部材としては、表1に示すような構造および材質のものを使用した。なお、比較例において用いた粒子移動部材はウレタンゴム製の板状のいわゆるスキージであり、JIS−A硬度90°であった。
また、回転型ローラあるいはスキージをマスクに押し付ける際の押し付け力も表1に示す。
【0036】
(不良率およびパネル表示品位の評価)
上述した本発明の方法に従って、各発明例パネルを4面取り配置で連続して100枚作製し、各4個、計400個の情報表示用パネルにしてテスト画像を表示してその画像のコントラストを測定し、コントラスト変化を比較した。コントラスト変化とは、最後(100枚目)に作製したパネルのコントラスト値/最初(1枚目)に作製したパネルのコントラスト値で表している。また、コントラスト値は、情報表示用パネルに所定の電圧を印加して黒色を表示させ、黒色表示時輝度を測定し、次に、情報表示用パネルに所定の電圧を印加して白色を表示させ、白色表示時の輝度を測定し、測定した黒色表示時輝度および白色表示時輝度から計算している。それゆえ、コントラスト変化が1に近いほど良化した結果を表し、値が小さいほど、連続して情報表示用パネルを製造した際、連続枚数が多くなると、コントラストが低下した情報表示用パネルが製造されることを意味する。
また、光学顕微鏡を用いた目視観察によって、各発明例パネル400個にスジムラが発生しているか否かを評価した。
比較例においても同様の測定および評価を行った。それらの結果を併せて表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1より、本発明に従う回転型ローラ方式の粒子移動部材を用いることにより、コントラストの低下が大幅に改善され、またスジムラが発生しない情報表示用パネルが得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明により、表示画像にスジ状の表示不良が生じない表示品質に優れた情報表示用パネルを提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
1、2 パネル基板
3 粒子群
3W 白色表示媒体
3Wa 白色粒子
4 隔壁
5、6 ストライプ電極
7 セル
8 接着剤
14 スクリーン
15 マスク
17 疵
19 スキージ
20 粒子移動部材
22 回転型ローラ
23 ローラ軸
24 ゴム弾性体
25 板バネ
26 コイルバネ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間の隔壁で形成されたセル内に、表示媒体として充填し、封入した粒子群を移動させて情報を表示する情報表示用パネルの製造方法であって、上記した粒子群を充填するに際し、
上記隔壁上に、上記セルに対応した開口部を有するマスクを配置するステップと、
上記マスク上に上記粒子群を載せるステップと、
JIS−A硬度が50°〜70°の材料を少なくとも周囲に配置した回転型ローラを具える粒子移動部材を、上記粒子移動部材の進行方向に上記回転型ローラを押し付けながら回転移動させることによって、上記粒子群を上記セル内に充填するステップと、
を含むことを特徴とする情報表示用パネルの製造方法。
【請求項2】
前記回転型ローラをマスク面に押し付ける力が1MPa〜20MPaであることを特徴とする請求項1に記載の情報表示用パネルの製造方法。
【請求項3】
前記回転型ローラの少なくとも周囲に配置するJIS−A硬度が50°〜70°の材料は弾性材料であることを特徴とする請求項1または2に記載の情報表示用パネルの製造方法。
【請求項4】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間の隔壁で形成されたセル内に、表示媒体として充填し、封入した粒子群を移動させて情報を表示する情報表示用パネルの製造装置であって、
上記隔壁上に配置する、上記セルに対応した開口部を有するマスクと、
JIS−A硬度が50°〜70°の材料を少なくとも周囲に配置した回転型ローラを具える粒子移動部材と、
を含むことを特徴とする情報表示用パネルの製造装置。
【請求項5】
前記回転型ローラの少なくとも周囲に配置するJIS−A硬度が50°〜70°の材料は弾性材料であることを特徴とする請求項4に記載の情報表示用パネルの製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−257607(P2011−257607A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132162(P2010−132162)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】