説明

情報表示用パネル

【課題】非導電性の透明なカラーフィルタと内部導電部材とを配設することに起因する、情報表示用パネルそれ自体の総厚みの増加を有効に抑制して、内部導電部材を設ることの目的を有利に達成することができる、情報のカラー表示が可能な情報表示用パネルを提供する。
【解決手段】対向する一対の基板11、12と、これらの両基板間に配設した隔壁13とで区画した複数個のセル14の内部に、互いに帯電特性が異なる白黒二種類の表示媒体15、16を封入し、それらの表示媒体15、16を、それぞれの基板11、12の外部に配設した電界形成手段からの電界の付与によって移動させて所要の情報を表示するものであって、三個のセル14で単位画素を構成するとともに、少なくとも上面側の透明基板11の内側に、透明な三原色カラーを有する三個の導電部材17a、17b、17cをそれぞれ配設し、背面側となる基板12の内側に、他の導電部材をそれぞれ配設してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯電特性が相互に異なる、粉流体または粒子群からなる白黒二種類の表示媒体のそれぞれを、電界の付与の下に、相互に平行な対向する一対の基板間で移動させて、所要の画像、文字、図形、記号等の情報を表示側の基板に表示する乾式の情報表示用パネルに関するものであり、特には、情報表示用パネルの総厚みを十分薄くして、情報のカラー表示を可能とする技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
情報の表示および消去の繰り返しを可能とする従来の乾式の情報表示用パネルとしては、たとえば特許文献1に開示されたものがある。
これは、所定の間隔で対向する、少なくとも一方が透明な2枚のシート間に、周囲を仕切り壁で囲まれた1又は2以上のセルを形成し、各セルに易移動性粒子群もしくは粉流体(以下、「表示媒体」という)を収納するに際し、表示媒体を、互いに帯電極性の異なる、且つ、互いに色の異なるものとし、互いに異なる帯電極性に帯電している状態でセル内に収納し、シートの外部表面に形成された、表示させたい画像に対応した静電潜像に基づく静電場によって、表示媒体を移動させることによって画像表面を行うものであり、外部の電界形成手段によって情報を表示し、消去するものである。
【特許文献1】特開2004−341123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるにこの従来技術は、具体的には図15に略線縦断面図で例示するように、上下に対をなす、相互に平行な共通の基板51、52と、これらの両基板間に配設されて、たとえばそれらの基板間を閉止するそれぞれの隔壁53とで区画してなる複数個のセル54の内部に表示媒体55を封入したものであって、その表示媒体55を、色と帯電極性とが互いに相違するものとするとともに、セル54内に封入する時点で、それぞれ、所定の帯電極性に帯電させたものであり、ここでの画像等の情報表示は、たとえば、表示用パネルの透明基板51の側の表面に、外部の静電場印加手段56で電界を付与して静電場を形成し、この静電場に従って、正極性に帯電した基板部分に、予め負極性に帯電させた表示媒体55Bを、クーロンカ等によって引き寄せ、一方、負極性に帯電した基板部分には、予め正極性に帯電させた表示媒体55Wを引き寄せて、それらの表示媒体55を透明基板51の内表面に静電付着させることによって行われることになる。
【0004】
これがため、このような情報表示用パネルにおいて、情報のカラー表示を行うべく、導電性を有しない透明基板51の内側に、図16に例示するように、表示媒体55と接触する、これも導電性を有しない透明なカラーフィルタ57を配置した場合には、外部の静電場印加手段56の作用に基く表示媒体55の駆動性が悪くなり、これを解消するためには、透明基板51に大きな電界を付与することが必要になるという問題があった。
【0005】
この一方で、表示媒体55の駆動性を、低電界の作用下で向上させることを目的として、透明基板51の内側に、その表示媒体55と接触する導電性部材を配置した場合は、情報のカラー表示のための透明なカラーフィルタをその導電性部材と透明基板51との間に配置すると、情報表示用パネルそれ自体の総厚みの増加を余儀なくされることになる、という他の問題があった。
【0006】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、透明なカラーフィルタと、内部導電部材とを配設することに起因する、情報表示用パネルそれ自体の総厚みの増加を有効に抑制してなお、表示媒体の良好な駆動性を確保して、情報表示用パネルの外部に電界形成手段を設けることによる、軽量化、小型化等の目的を有利に達成することができる、情報のカラー表示が可能な情報表示用パネルを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る情報表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する一対の基板と、これらの両基板間に配設した隔壁とで区画した複数個のセルの内部気中空間に、互いに帯電特性の異なる白黒二種類の、粉流体または粒子群からなる表示媒体を封入し、それらの表示媒体を、それぞれの基板の外側に設けた外部の電界形成手段からの電界の付与によって移動させて、画像、文字、図形、記号等の所要の情報を表示するものであって、三個のセルで単位画素を構成するとともに、少なくとも表示面側となる透明基板の内側に、透明な三原色カラーを有する三個の導電部材をそれぞれ配設し、背面側となる基板の内側に、透明であると否とを問わない他の導電部材をそれぞれ配設して構成したことを特徴とするものである。
なおここでは、各導電部材は、隔壁で囲まれる領域の全体にわたって配設することが好ましい。
またここでは、両方の基板をともに透明とし、それらの両方の基板に透明なカラー導電部材を配設することもでき、これによって両面での表示を行うことができる一方で、一対の基板の一方を透明として、その透明な基板に対してのみ透明なカラー導電部材を配設することもできる。
【0008】
ところで、ここでいう「隔壁」は、平面視で縦横に連続する例えば格子仕様の連続的なものであっても、また、例えば縦横の格子を交差部で不連続としたような断続的なものであってもよいが、これらのいずれにあっても、基板間ギャップを所定の大きさに保持する機能と、表示媒体の偏在を防止する機能とを有することが必要である。
またここで、「セル」というときは、区画された内部空間のみならず、その内部空間の区画に寄与する区画壁部分をも含む意味で観念するものとする。
【0009】
この発明に係る他の情報表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する一対の基板と、これらの両基板間に配設した隔壁とで区画した複数個のセルの内部に、互いに帯電特性が異なる白黒二種類の表示媒体を封入し、それらの表示媒体を、それぞれの基板の外部に配置した電界形成手段からの電界の付与によって移動させて所要の情報を表示するものであって、四個のセルで単位画素を構成するとともに、少なくとも表示面側となる透明基板の内側に、透明な三原色カラーを有する三個の導電部材と、無色透明な一個の導電部材とをそれぞれ配設し、背面側となる基板の内側に、透明または不透明のいずれをも可とする他の導電部材をそれぞれ配置して構成したことを特徴とするものである。
【0010】
これらの情報表示用パネルにおいては、「導電部材」は、導電性金属酸化物または導電性高分子材で構成することが好ましく、また、「三原色」は、色の三原色(シアン、マゼンダ、イエロー)とすることもできるが、光の三原色(赤、緑、青紫)とすることが好ましい。
【0011】
また三個のセルで単位画素を構成するときは、双方が透明な、対向する一対の基板と、これらの両基板間に配設した隔壁とで区画した複数個のセルの内部に、互いに帯電特性が異なる白黒二種類の表示媒体を封入し、それらの表示媒体を、それぞれの基板の外部に配置した電界形成手段からの電界の付与によって移動させて所要の情報を表示するものにおいて、三個のセルで単位画素を構成するとともに、双方の基板において前記複数個の各セルに対応するように個別に、透明な三原色カラーを有する三個の導電部材をそれぞれ配設することもできる。
【0012】
そしてまた、四個のセルで単位画素を構成するときは、双方が透明な、対向する一対の基板と、これらの両基板間に配設した隔壁とで区画した複数個のセルの内部に、互いに帯電特性が異なる白黒二種類の表示媒体を封入し、それらの表示媒体を、それぞれの基板の外部に配置した電界形成手段からの電界の付与によって移動させて所要の情報を表示するものにおいて、四個のセルで単位画素を構成するとともに、双方の基板において前記複数個の各セルに対応するように個別に、透明な三原色カラーを有する三個の帯電部材と、無色透明な一個の導電部材とをそれぞれ配設することもできる。
【0013】
ところで、このように、一対の基板の双方を透明としたときは、各セルに対応させて配置する一対の透明導電部材のそれぞれの色彩を相互に同一にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、それぞれのセルに対応させて、たとえば、金属酸化物等からなって、表示媒体に接触する、透明な三原色カラーを有する三個のそれぞれの導電部材を配設することにより、外部の電界形成手段からの電界の付与下での、表示媒体の駆動性、いいかえれば表示媒体用粒子の動きやすさを、その導電部材によって大きく高めることができ、しかも、導電部材それ自体で透明カラーフィルタを構成することで、相互に機能分離させた導電部材と透明カラーフィルタとを積層させることが必須となる従来技術に比して情報表示用パネルの総厚みを有効に低減させて、外部の電界形成手段を設けることの目的を有利に達成することができる。
【0015】
そしてこのことは、対向する一対の透明基板の内側に配設したそれぞれの透明カラー導電部材の各々を、光の三原色のそれぞれに相当する色彩を有するそれぞれの透明カラーフィルタとして機能させる場合により顕著になる。
【0016】
なおこの場合において、各セルに対応させて配設した一対の透明カラー導電部材のそれぞれの色彩は相互に同一のものとすることが好ましく、これによれば、赤色、緑色および青紫色の三色のそれぞれの透明カラー導電部材に対応するそれぞれのセルの各々について、表示媒体の駆動制御を行うことで、少なくとも一方の基板側にフルカラー(階調表示を含む)に近い多色カラーでの表示を行うことができる。
【0017】
この一方で、各セルに対応させて配設した一対の透明カラー導電部材のそれぞれの色彩を相互に相違させたときは、少なくとも一方の基板側において、黒色表示媒体の色(黒)と、カラーフィルタ色との混合色を強調した表示や、逆に白色表示媒体の色(白)と、カラーフィルタ色との混合色を強調した表示を行うことができる。
なお、無色透明なフィルタであれば、白黒表示が行えることはいうまでもないが、この場合でも無色透明なカラーフィルタの無色の程度によって若干の色味を付加することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の対象となる情報表示用パネルでは、基本的には、対向する一対の基板間に封入した表示媒体に電界が付与されると、付与された電界方向にそって、帯電した表示媒体が電界による力やクーロン力などによって移動し、電界方向の変化によって表示媒体の移動方向が変わることにより、少なくとも一方の透明基板側に画像等の情報が表示されることになる。
従ってここでは、表示媒体が、均一に移動し、かつ、表示する情報を繰り返し書き換える時、あるいは表示した情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。
なおこの場合、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0019】
このような情報表示用パネルの基本構造例を、図1に示すところに基づいて以下に説明する。
図1に示す例では、一種以上の粒子から構成される、少なくとも二種類の、光学的反射率および帯電特性の異なる表示媒体3(ここでは白色表示媒体用粒子3Waの粒子群からなる白色表示媒体3Wと、黒色表示媒体用粒子3Baの粒子群からなる黒色表示媒体3Bを示す)を、一対の基板1、2の外部から加えられる電界に応じて、基板1、2と垂直方向に移動させることにより、黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行うか、あるいは、白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を行うことができる。
なお、この図に示すところでは、基板1、2間に、例えば、隔壁4を格子状に設けてセル5を形成しているも、この図では、手前にある隔壁は省略している。
【0020】
以上の説明は、粒子群からなる白色表示媒体3Wを粉流体からなる白色表示媒体に、粒子群からなる黒色表示媒体3Bを粉流体からなる黒色表示媒体に、それぞれ置き換えた場合も同様に適用することが出来る。
なお、粉流体については後述する。
【0021】
ところで、図2は、この発明に係る、外部の電界形成手段によって駆動される乾式の情報表示用パネルの実施形態を示す略線図であり、図2(a)はそのパネルの正面断面図、図2(b)は側面断面図である。
これは、相互に対向する一対の基板11、12と、これらの両基板11、12間に、たとえば格子状に連続させて配設したそれぞれの隔壁13とで、複数個のセル、図に示すところでは、各断面内で六個ずつのセル14を区画形成するとともに、各セル14の内部の気中空間に、帯電特性の異なる白黒二種類の、表示媒体用粒子からなる表示媒体15、16を封入し、それらの表示媒体15、16を、それぞれの基板11、12の外部に配置した電界形成手段からの電界の付与によってそれらの基板11、12と垂直な方向に移動させて所要の情報を表示するものであって、図2(a)に示す九個のセル14のうち、相互に隣接して位置する三個のセル14で単位画素を構成し、少なくとも表示面側、図では上方側の基板11を透明にするとともに、それぞれの基板11、12の内側に、表示媒体15、16に接触する、単位画素毎の導電部材17、および他の導電部材18のそれぞれを配設したところにおいて、透明な基板11の内側に配設した各導電部材17を、図2(a)に示すように、三個のセル14のそれぞれに対応して位置して、隔壁13によって囲まれる領域のほぼ全体にわたって配置される、透明な三原色のそれぞれのカラーを有するそれぞれのライン状の導電部材17a、17b、17cにより構成したものである。
【0022】
なおここで、透明の有無を問わない他方の導電部材18は、たとえば、図2(c)に、両導電部材17、18の相対関係を斜視図で例示するように、三本のそれぞれのライン状導電部材17a、17b、17cと、それらと直交する方向に延びる一本のライン状の導電部材18との一組を対として配置し、対向する対電極の重なる領域を一画素とするものである。
【0023】
かくして、図示のこの情報表示用パネルでは、三個のセル14からなる単位画素を、九個有する構成となっている。
なお、導電性の点からは、導電部材17と同一の材料で構成することが好ましい他方の導電部材18は、ライン状導電部材17a、17b、17cの三本の幅方向長さの合計に対応する幅を有する導電部材とする。
ここにおいて、他方の基板12は、透明であってもなくてもよい。
【0024】
なお、図2の変更例を示す図3において、図中19は、単位画素を単位として、各隔壁13と、表示面側の透明基板11との間に配設されて、基板11側に表示される情報のコントラストを高めるべく機能するブラックマトリクス等の有色層を示し、また図4は、図4(b)に示すところではセル14を単位として、そして図4(c)に示すところでは単位画素を単位として配設した有色層を示すが、この有色層19の配設は、この発明においては必須ではない。
【0025】
以上ような構成の情報表示用パネルにおいて、三個のセル14からなる単位画素の、それぞれの透明カラー導電部材17a、17b、17cの色彩を、たとえば、光の三原色である赤色、緑色および青紫色のそれぞれとした場合、セル14内で、白色の表示媒体15がそれらの各透明カラー導電部材側へ移動した状態の下では、透明基板11の外側からの目視に対しては、各個の透明カラー導電部材の色彩が顕在化されることになり、三個のセルにおいて白色表示媒体が導電部材側に移動しているときその三個のセルで構成される画素は白色表示となる。
この一方で、黒色の表示媒体16が各カラー導電部材側へ移動した状態の下では、各個のカラー導電部材の色彩が潜在化されることになり、この場合は、三個のセルで構成される画素は黒色表示となる。
【0026】
そしてまた、二個以上のセル14内で、白色の表示媒体15が透明カラー導電部材17a、17b、17c側へ移動したときは、光の三原色の加法混合下で、混合されたそれぞれの色彩が視認されることになる。
【0027】
かくしてここでは、それぞれの透明カラー導電部材17a、17b、17cで導電部材17を構成することにより、背景技術で述べたように、相互に独立の導電部材と透明カラーフィルタとの両者を積層配置する従来技術に比して、情報表示用パネルの総厚みを有効に低減させることが可能となる。
【0028】
図5は、図4に示すそれぞれの導電部材の配置態様の変更例を示す相対斜視図であり、これは、ライン状をなすそれぞれの透明カラー導電部材17a、17b、17cの各々の間に有色層を配設したところにおいて、他方の導電部材18を、一枚の板状導電部材としたものであり、これによっても九個の単位画素が構成され、それに対応した外部駆動電界が付与されることになる。
【0029】
図6は、両導電部材17、18の他の配設態様を例示する斜視図であり、これは三個のセル14からなる単位画素の三つを一組としたところにおいて、表示側の透明カラー導電部材17a、17b、17cのそれぞれを、各個のセル14に固有の個別導電部材としたものである。
【0030】
図6(a)に示す例は、両導電部材17、18のそれぞれをともに、個別の導電部材17a、17b、17cおよび18、18、18で形成するとともに、図の矢印A方向に整列する三個のセル14で単位画素を構成するものであり、図6(b)に示す例は、導電部材17、18のそれぞれを矢印A方向に整列する三個のセル14で単位画素を構成するものである。
そして、図6(c)および(d)に示す例はそれぞれ、個別の透明カラー導電部材17a、17b、17cを、図6(b)に示すところと同様に配設する一方で、他方の導電部材18を、ライン状に配置したものであり、また、一枚の板状部材としたものである。
【0031】
図7は他の実施形態を示す図であり、図7(a)は、情報表示用パネルの正面断面図を、図7(b)は側面断面図をそれぞれ示す。
これは、先の場合と同様に、上方側の基板11を透明にするとともに、それぞれの基板11、12の内側にそれぞれの導電部材17、18を、図7(c)に斜視図で例示するような態様をもって配設することにより、図7(a)に示す、相互に隣接する四個のセル14によって単位画素を構成し(図では二つの単位画素を並置して示している)、そして、上方側基板11の内側の導電部材17を、それらの四個のセル14のそれぞれに対応して位置して、隔壁13によって囲まれる領域のほぼ全体にわたってライン状に配置される、透明な三原色のそれぞれの色彩を有するそれぞれの透明カラー導電部材17a、17b、17cおよび、無色透明の導電部材17dで構成したものである。なお、それぞれのセル14内に封入される表示媒体はいずれのセル14にも共通のものである。
【0032】
この一方で、下方側基板12の内側の、透明であると否とを問わない他方の導電部材18は、図7(c)に例示するように、ライン状のそれぞれの透明導電部材等17a、17b、17c、17dと直交する方向に延びる、ライン状の二本を一組として配置することができる。
なおここで、二本の導電部材18を相互に合体させて、一枚の板状の導電部材とすることも可能である。
【0033】
四個ずつのセル14をもって単位画素を構成するこの例によれば、四個の単位画素のそれぞれで、透明導電部材17a〜17dの一つを無色透明にすることができ、四個のセルで構成される単位画素で白色表示を行う際に、セル内の白色表示媒体からの反射光が三原色カラー導電部材を通して合成される白色光と、無色透明の導電部材を通してそのまま認識される白色光とで白色表示されるので白色度が増すことになり、また、他の色彩を表示する際にも表示色の明るさが増すことになる。
そして、四個のセルで構成される単位画素で黒色表示を行う際は、セル内の黒色表示媒体の色を三原色カラー導電部材および無色透明の導電部材を通して認識することになるので、黒色度が増すことになる。
【0034】
図8は、図7に示すそれぞれの導電部材の配置態様の変更例を示す図であり、これは、ライン状をなすそれぞれの透明導電部材17a、17b、17c、17dの各々の間に有色層19を配設し、表示の鮮明度を高めたものである。
【0035】
なお、図8(a)に示すところでは、他方の導電部材18を、図7(c)に示すと同様に、透明導電部材17a、17b、17c、17dの延在方向と直交する方向に延びる二本を一組として配置したものであるが、それらの両導電部材18を、一枚の板状部材として構成することもできる。
【0036】
ところで、図7および8に例示する画素では、それぞれの透明導電部材17a〜17dを、図の左側から順に、光の三原色の赤、緑、青紫とするとともに、無色としているも、色彩の配置順序等は所要に応じて適宜に選択することができる。
【0037】
図9はその一例を示す図であり、これは、ライン状のそれぞれの透明導電部材17a〜17dの配置を、それらの間に有色層19を配設すると否とにかかわらず、図の左側から順に、赤、青紫、無色および緑としたものである。
それぞれの透明導電部材17a〜17dをこのような順序で配置しても、他方の導電部材18は、図7(c)および図8(a)について前述したと同様に、透明導電部材17a〜17dと直交する方向に延びるライン状の二本を一組として配置することができ、また、図示はしないが、一枚の板状部材として配置することもできる。
なお、この図に示すところでは、矢印A方向に順次に整列する四個のセル14で単位画素が構成されることになる。
【0038】
図10は、四個のセル14からなる単位画素の四つを一組として構成する場合の、それぞれの導電部材17、18のさらに他の形成態様を例示する斜視図であり、これは、それぞれ16個ずつの個別の透明導電部材17a〜17dをもって導電部材17を形成した場合を示すものであり、図10(a)に示すものは、図の矢印A方向に整列する四個のセル14で単位画素を構成し、図10(b)に示すものは、図に仮想線で囲んで例示するように、田字状に隣接する四個のセル14で単位画素を構成し、そして、図10(c)、(d)に示すものは、図の矢印A方向に整列する四個のセル14によって単位画素を構成するものである。
なおここにおいて、図10(a)、(b)に示すものは基板12側の他の導電部材110を、セル14の数に対応する16個の個別の導電部材18、18、1818により形成し、図10(c)に示すものは、その導電部材18を、ライン状に延びる四本を一組として配置したものであり、そして図10(d)に示すものは、一枚の板状部材として配置したものである。
【0039】
図11は、さらに他の実施形態を示す略線縦断面図であり、図11(a)に示すものは、上下両側の基板11、12をともに透明とするとともに、上側基板11の内側に配設した導電部材17を、光の三原色の色彩を有する透明カラー導電部材17a、17b、17cによって構成し、下側基板12の内側に配設した導電部材18をもまた同様に、三個のセル14のそれぞれに対応して位置するそれぞれの透明カラー導電部材18a、18b、18cによって構成したものであり、この情報表示用パネルによれば、パネル総厚みの一層の低減を可能としてなお、所要の情報(ただし、色情報は片面のみとなる)をいずれの基板側からも視認することが可能となる。
なおここでは、それぞれの透明カラー等導電部材はいずれも、各個のセル14に固有の個別導電部材となる。
【0040】
この場合は、各個のセル14の、相互に対向する一対の透明カラー導電部材17a、18a・17b、18b・17c、18cの色彩を、たとえば図12に示すような平面展開配置の下で、ともに同色にし得ることはもちろんであるが、各個のセル14の一対のカラー導電部材の色彩を相互に相違させることもできる。
【0041】
ここで、図12(a)に示すところでは、図の左側から右側に向く矢印A方向に整列する三個のセル14で単位画素を構成することとし、図12(b)に示すところでは、矢印A方向でも、その方向を直交する矢印B方向でもよいがそれぞれの方向に整列する三個のセル14で単位画素を構成することとしている。
【0042】
そして図11(b)に示すものは、四個のセル14によって単位画素を構成するとともに、透明とした両基板11、12の内側に配置されて、表示媒体15、16に接触するそれぞれの導電部材17、18を、たとえば、光の三原色のそれぞれの色彩を有するそれぞれの個別の透明カラー導電部材17a、17b、17cおよび18a、18b、18cと、無色透明の導電部材17d、18dとで構成したものである。
なおここで、基板12側の導電部材18は、透明であること、および、光の三原色を有することのいずれをも必須とするものではない。
【0043】
このような単位画素によれば、図11(a)に示すところに比して、透明導電部材の一つを無色透明にすることができるので、先にも述べたように、四個のセルで構成される単位画素で白色表示を行う際に、セル内の白色表示媒体からの反射光が三原色の導電部材を通して合成される白色光と、無色透明の導電部材を通してそのまま認識される白色光とで白色表示されるため、白色度が増すことになる。そして、このことは、他の色彩を表示する際にも同様である。
また、四個のセルで構成される単位画素で黒色表示を行う際は、セル内の黒色表示媒体の色を三原色の透明導電部材および無色の透明導電部材を通して認識するので黒色度が増すことになる。
【0044】
また、図11(b)に示すところでは、各セル14の、対をなす透明カラー導電部材17aと18a、17bと18bそして、17cと18cとをともに同色として、たとえば、左側から順に赤、緑および青紫とし、また、対をなす他の導電部材17dと18dを、ともに無色透明としているが、このような同色配置は、図13に、それぞれの個別透明導電部材の平面配置態様を例示するようにして行うこともでき、この場合は、パネルの両面から、表示された情報を視認することができる。
この一方で、対をなす導電部材の相互の色彩は、互いに相違させることもできる。
【0045】
なお、図13(a)に示すところでは、図の左側から右側に向く矢印A方向に整列する四個のセル14で単位画素を構成することし、また図13(b)に示すところでは、図に仮想線で囲んで例示するように、田字状に相互に隣接させて配置した四個のセル14で単位画素を構成することとしているも、これとは別に、矢印A方向および、その方向と直交する方向のそれぞれの方向に整列する四個のセルのそれぞれによって単位画素を構成することもできる。
【0046】
以上この発明の実施形態を図面に示すところに基づいて説明したが、これらのいずれによっても、無色を含む所要の色彩の複数個の透明導電部材それ自体をもって導電部材17および/または18を形成することにより、情報表示用パネルの総厚みを従来技術に比して有効に低減させることができる。
【0047】
ところで、この発明に係る主要構成部材であって、導電部材を構成する、導電性の透明フィルタ17a〜17dおよび18a〜18dは、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の透明性の導電金属酸化類、ポリアニン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの透明性の導電性高分子類を構成材料とし、かかる導電材料に着色剤を混ぜて(無色透明カラーフィルタの場合には着色剤を混ぜないで)形成することができる。
この場合の透明カラーフィルタの厚みは、導電性を確保することができ、かつ、光透過性に支障がなければ良く、たとえば3〜1000nmの範囲、好ましくは5〜400nmの範囲とすることができる。
ここで、光透過性を損わない着色剤としては、赤色系、緑色系、青色系、マゼンタ色系、シアン色系、黄色系などの染料や、粒子径が1μm以下の顔料を選択することが好ましい。
なお、表示面側に配置しない、透明であると否とを問わない導電部材18は、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類を構成材料とし形成することができる。
この場合の導電部材18の厚みは、導電性を確保することができれば光透過性がなくても良く、たとえば3〜1000nmの範囲、好ましくは5〜400nmの範囲とすることができる。
【0048】
このような、透明カラー導電部材17a〜17c、18a〜18c用の着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能であるが、なかでも、染料系の着色剤や、粒子径が1μm以下の顔料がとくに好適である。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0049】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0050】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0051】
このような着色剤に含ませることのできる無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
【0052】
これに対し、透明性および色彩の少なくとも一方を必須としない、不透明を可とする導電部材の形成材料としては、酸化インジウム錫(ITO)酸化インジウム、導電性酸化錫、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類を挙げることができる。この場合の導電部材18の厚みは、導電性を確保することができれば光透過性がなくても良く、たとえば3〜1000nmの範囲、好ましくは5〜400nmの範囲とすることができる。
【0053】
また、導電部材の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状にパターニング形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布してパターニング形成する方法が用いることができ、これらのいずれの場合もパターン形成可能である導電材である上記材料を好適に用いることができる。
【0054】
そして、他の主要構成部材としての基板については、少なくとも一方の基板11は、パネルの外側から、透明カラーおよび無色透明の導電部材17a〜17dを通して表示媒体が確認できる透明なものであり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。なお、他方の基板12は、透明とすることまたは不透明とすることを、所要に応じて選択することができる。
基板材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリルなどのポリマーシートや、金属シートのように可撓性のあるもの、および、ガラス、石英などの可撓性のない無機シートを例示することができ、表示面側基板には透明なものを選択して用いる。
基板の厚みは、2〜5000μmが好ましく、さらに5〜2000μmが好適である。薄すぎると、強度、基板間の間隔の均一性を保ちにくくなり、5000μmより厚いと、薄型情報表示用パネルとする場合に不都合がある。
【0055】
また、隔壁13については、その形状は、表示にかかわる表示媒体15、16の種類や、配置する導電部材18や、透明導電部材17等の形状、配置により適宜最適設定することができるので、一律には特定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜100μm、好ましくは10〜50μmに調整される。
また、隔壁を形成するに当っては、対向する両基板11、12の各々にリブを形成した後にそれらを接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0056】
これらのリブからなる隔壁により形成されるセルは、図14に示すごとく、基板の平面視で、四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、表示の鮮明さが増す。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法がとくに好適に用いられる。
【0057】
次に、この発明の情報表示用パネルに表示媒体として例えば用いることができる、粉流体について説明する。
なお、この発明の情報表示用パネルで用いる粉流体の名称については、本出願人が「電子粉流体(登録商標):登録番号4636931」の権利を得ている。
【0058】
ここにおける「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。
例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである(平凡社:大百科事典)。一方、粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。
ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。
この発明では、このような気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることを見いだし、これを粉流体と定義した。
【0059】
すなわち、この発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、この発明の情報表示用パネルで固体状物質を分散質とするものである。
【0060】
この発明の情報表示用パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、例えば気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、小さな電界の力等でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。
この発明に表示媒体として用いることができる粉流体とは、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。この粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、この発明の情報表示用パネルでは、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で表示媒体として用いられる。
【0061】
次に、この発明の情報表示用パネルにおいて表示媒体として用いることができる表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)について説明する。
表示媒体用粒子は、そのまま該表示媒体用粒子だけで構成して表示媒体としたり、その他の粒子と合わせて構成して表示媒体としたり、粉流体となるように調整、構成して表示媒体としたりして用いられる。
粒子には、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ませることができる。
以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0062】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等を挙げることができ、これらの二種以上を混合することもできる。
なかでも特に、基板への付着力を制御する観点からは、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂を選択することが好適である。
【0063】
また、荷電制御剤としては特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。
正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。
その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることができる。
【0064】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等があり、白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0065】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。
その他、上記した添加剤を複数組み合わせてこの発明で用いる表示媒体を構成する白色表示媒体用粒子や黒色表示媒体粒子を作製することができる。このうち、白色表示媒体用粒子には酸化チタンなどの白色顔料を用いることが好ましく、黒色表示媒体粒子にはカーボンブラックなどの黒色顔料を用いることが好ましい。
【0066】
また、ここにおける表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)は平均粒子径d(0.5)が、1〜20μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体の移動に支障をきたすようになる。
【0067】
更にこの発明では、表示媒体用粒子の粒子径分布に関して、好ましくは、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、より好適には3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な表示媒体としての移動が可能となる。
【0068】
さらにまた、表示媒体用粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電特性の異なる粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズが近く、互いの粒子が当量ずつ反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0069】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。
すなわち、測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここにおける粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行うことができる。
【0070】
表示媒体用粒子の帯電量は当然その測定条件に依存するが、情報表示用パネルにおける表示媒体用粒子の帯電量は、ほぼ、初期帯電量、隔壁との接触、基板との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に表示媒体用粒子の帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かった。
【0071】
発明者らは鋭意検討の結果、ブローオフ法において同一のキャリア粒子を用いて、表示媒体に用いる粒子の帯電量測定を行うことにより、表示媒体用粒子の適正な帯電特性値の範囲を評価できることを見出した。
【0072】
更に、表示媒体用粒子で構成する粒子群や粉流体等の表示媒体をこの発明の情報表示用パネルに適用する場合には、基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、図示の実施形態の情報表示用パネルにおいて、対向する一対の基板に挟まれる部分から、導電部材、表示媒体の占有部分、隔壁の占有部分、情報表示用パネルのシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示用パネルに封入することが必要であり、例えば、表示媒体の載置、情報表示用パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0073】
この発明の対象となる情報表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに調整される。
対向する基板間の空間における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には表示媒体の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【産業上の利用可能性】
【0074】
この発明の情報表示用パネルは、ノートパソコン、PDA、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子ブック、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板等の掲示板、電卓、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(Point of Presence、Point Of Purchase advertising)、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部などに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】情報表示用パネルの基本構造を例示する略線縦断面図である。
【図2】この発明の実施形態を示す略線図である。
【図3】図2の変更例を示す図である。
【図4】図3の変更例を示す図である。
【図5】導電部材の配置態様の変更例を示す相対斜視図である。
【図6】導電性部材の他の配設態様を例示する斜視図である。
【図7】他の実施形態を示す図である。
【図8】透明導電部材の他の配置例を示す相対斜視図である。
【図9】導電部材の配置態様の変更例を示す相対斜視図である。
【図10】導電部材のさらに他の配設態様を例示する相対斜視図である。
【図11】さらに他の実施形態を示す略線縦断面図である。
【図12】透明カラー導電部材の配設例を示す図である。
【図13】透明カラー導電部材の他の配設例を示す図である。
【図14】情報表示用パネルにおける隔壁の形成態様を例示する図である。
【図15】従来技術を示す略線縦断面図である。
【図16】従来技術に非導電性カラーフィルタを付加した例を示す略線断面図である。
【符号の説明】
【0076】
11、12 基板
13 隔壁
14 セル
15 白色表示媒体
16 黒色表示媒体
17、18、18、18、18、18 導電部材
17a、17b、17c、18a、18b、18c 透明カラー導電部材
17d、18d 無色透明導電部材
19 有色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な、対向する一対の基板と、これらの両基板間に配設した隔壁とで区画した複数個のセルの内部に、互いに帯電特性が異なる白黒二種類の表示媒体を封入し、それらの表示媒体を、それぞれの基板の外部に配置した電界形成手段からの電界の付与によって移動させて所要の情報を表示する情報表示用パネルにおいて、
三個のセルで単位画素を構成するとともに、少なくとも表示面側となる透明基板の内側に、透明な三原色カラーを有する三個の導電部材をそれぞれ配設し、背面側となる基板の内側に、他の導電部材をそれぞれ配設して構成したことを特徴とする情報表示用パネル。
【請求項2】
少なくとも一方が透明な、対向する一対の基板と、これらの両基板間に配設した隔壁とで区画した複数個のセルの内部に、互いに帯電特性が異なる白黒二種類の表示媒体を封入し、それらの表示媒体を、それぞれの基板の外部に配置した電界形成手段からの電界の付与によって移動させて所要の情報を表示する情報表示用パネルにおいて、
四個のセルで単位画素を構成するとともに、少なくとも表示面側となる透明基板の内側に、透明な三原色カラーを有する三個の導電部材と、無色透明な一個の導電部材とをそれぞれ配設し、背面側となる基板の内側に、他の導電部材をそれぞれ配設して構成したことを特徴とする情報表示用パネル。
【請求項3】
前記導電部材が、導電性金属酸化物または導電性高分子材であることを特徴とする請求項1または2に記載の情報表示用パネル。
【請求項4】
前記三原色が、光の三原色(赤:R、緑:G、青紫:B)である請求項1〜3のいずれか一項に記載の情報表示用パネル。
【請求項5】
双方が透明な、対向する一対の基板と、これらの両基板間に配設した隔壁とで区画した複数個のセルの内部に、互いに帯電特性が異なる白黒二種類の表示媒体を封入し、それらの表示媒体を、それぞれの基板の外部に配置した電界形成手段からの電界の付与によって移動させて所要の情報を表示する情報表示パネルにおいて、
三個のセルで単位画素を構成するとともに、双方の基板において前記複数個の各セルに対応するように個別に、透明な三原色カラーを有する三個の導電部材をそれぞれ配設して構成したことを特徴とする請求項1に記載の情報表示用パネル。
【請求項6】
双方が透明な、対向する一対の基板と、これらの両基板間に配設した隔壁とで区画した複数個のセルの内部に、互いに帯電特性が異なる白黒二種類の表示媒体を封入し、それらの表示媒体を、それぞれの基板の外部に配置した電界形成手段からの電界の付与によって移動させて所要の情報を表示する情報表示用パネルにおいて、
四個のセルで単位画素を構成するとともに、双方の基板において前記複数個の各セルに対応するように個別に、透明な三原色カラーを有する三個の導電部材と、無色透明な一個の導電部材とをそれぞれ配設して構成したことを特徴とする請求項2に記載の情報表示用パネル。
【請求項7】
各セルに対応させて配設した一対の透明導電部材のそれぞれの色彩を相互に同一にしてなることを特徴とする請求項5または6に記載の情報表示用パネル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−164122(P2007−164122A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102340(P2006−102340)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)