説明

情報記録円盤の記録方法

【目的】 本発明は案内トラックが予め形成されている情報記録円盤の記録方法に関し、制御信号がノイズとして再生情報信号中に混入することがないように制御信号等の記録を行なう記録方法を提供することを目的とする。
【構成】 ディスク24はモータ23により回転制御される。モータ23はディスク24に予め記録されているアドレス信号のうち、最も先に再生されるアドレス信号のエッジに同期して立上るパルスeと、遅延回路21よりの立上りエッジが記録映像信号の垂直帰線消去期間内に位置するフレームパルスdとを位相比較回路22で位相比較して得られた誤差電圧で回転制御される。これにより、既記録アドレス信号を避けた位置にカラーバースト信号が記録される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は情報記録円盤の記録方法に係り、特に情報信号記録トラックを所定位置に記録し再生するための案内トラックが予め形成されている情報記録円盤の記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、予め案内溝(以下、これをプレグルーブという)が形成されている情報記録円盤(以下、ディスクともいう)が知られており、かかるディスクには予めアドレス信号が記録されている。このアドレス信号を再生することにより、トラック位置の管理が容易となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、上記のディスクにおいてはプレグルーブ上にはアドレス信号の他に情報信号を記録するようになっているため、主ビームがアドレス信号を拾ってしまい、たとえ上記アドレス信号がブランキング期間内に記録されていたとしても、再生された情報信号中の音声信号がアドレス信号によって変調されてノイズ成分として音声信号中に現われるという問題点があった。
【0004】そこで、本発明は情報信号トラックとは別の案内トラックにアドレス信号その他の制御信号を記録することにより、上記の問題点を解決した情報記録円盤の記録方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明になる情報記録円盤の記録方法は、渦巻状又は同心円状の案内トラックが、情報信号が記録されるべきトラック位置とは異なる位置に予め記録されてある情報記録円盤に対して、複合映像信号中の水平同期信号を案内トラックの再生パルスのエッジにロックさせて一定回転数の回転制御を行なうと共に、少なくとも上記複合映像信号を含む情報信号の垂直帰線消去期間内に上記制御信号の記録区間を位置せしめるよう上記情報信号を記録する。
【0006】
【作用】本発明方法により記録されるべき情報記録円盤では制御信号が記録されるべき各種情報信号との間での影響を殆ど受けないような周波数や記録区間に選定されて案内トラックのピット間に所定区間予め記録されている。このため、その後の情報信号記録時には記録するトラック位置等が常時判別できる。また、本発明方法では少なくとも複合映像信号を含む情報信号を制御信号記録区間がその垂直帰線消去期間内に位置するように記録する。このため、本発明方法により記録された情報記録円盤の再生時には制御信号がカラーバースト信号や低域変換搬送色信号と同じ帯域を占有しても制御信号だけを識別して再生できる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図1乃至図7R>7と共に説明するに、図1は本発明記録方法の一実施例を示すブロック系統図を示す。本実施例では情報信号が記録されるディスク24は案内トラック及びアドレス信号記録部分が所定の態様で記録されていることが前提であるので、まず、このディスク24について説明する。
【0008】本実施例は本出願人が先に特願昭60−141696号にて提案した図8及び図9に示す如き情報記録円盤に適用した例であるので、まずこの提案になる情報記録円盤について説明する。図8に示す本出願人の上記提案になる情報記録円盤の記録トラックパターンの一例において、情報記録円盤(以下、ディスクともいう)1は例えば直径が30cmで、情報信号記録トラックのトラック中心線が二点鎖線2で示す如く渦巻状になるように記録又は再生されるが、ディスク製造時に予めトラック中心線2の両側に案内トラックが形成されている。各案内トラックは断続するピット(これは予め記録されているのでプレピットというものとする。)3の列として形成されている。また、ディスク1の中心には中心孔4が穿設されており、その周囲にはレーベル部5が形成されている。情報信号記録トラックを挟んで隣接する2本の案内トラックのプレピット3は、半径方向上互い違いになるように形成されている。具体的には一周360°を奇数個の等回転角度の領域に分け、それらの領域に一つおきにプレピットを形成することにより、必然的に情報信号記録トラックを挟んだ隣接するプレピットは互い違いになる。一例として、上記一周当りの領域の数を525とすることにより、プレピット3の数は一周毎に262個と263個とが交互に形成される。また、プレピット3は1個当りの長さが、例えば映像信号の一水平走査周期(1H)となるように選定される。更に、情報信号記録トラックを挟んで隣接する2本の案内トラックのトラック中心線間の距離は、例えば1.6μmに選定されている。
【0009】プレピット3は図9に斜線を付して示す如く、プレピット個々の始端と終端とは、半径方向に隣接するプレピット3の個々の終端と始端とに夫々一致している。プレピット3の始端、終端をディスクの半径方向に結んだ境界線6は、図9に示す如く、ディスクの円心を中心として半径方向に等角度間隔で放射状になる。また、プレピット3は例えば1Hの長さの溝であり、その溝の深さは光ビームの波長の1/4倍に選定されている。
【0010】なお、プレピットは同心円状に形成してもよく、その場合は一周360°を偶数個の等回転角度の領域に分け、それらの領域に一つおきにプレピットが形成される。
【0011】かかる本出願人の提案になるディスクによれば、案内トラックを断続するピットの列として形成し、かつ、相隣る2本の案内トラックのピットは半径方向上互い違いになるように形成したので、トラッキング誤差信号を主光ビームの案内トラック再生信号から得ることができ、よって連続的な溝からなる案内トラックを情報信号記録トラックの両側に夫々設けた従来の記録円盤の如き2つの副光ビームの条件の違いによるトラッキング制御の不具合を解消でき、また案内トラックの溝の深さはλ/4であるから反射光に回折は生ぜず、よって光ビームが案内トラックを横切るような再生をされても、回折光による影響を受けることがなく、フォーカス誤差検出方式として非点収差法をとることができるから、一の案内トラック内に情報信号が記録される従来の記録円盤の再生装置に比し、光学系を簡単にすることができる等の数々の特長を有する。
【0012】次にディスク24のアドレス信号記録部分について説明するに、図3において二点鎖線Iは回転数一定で回転されるCAV方式のディスク24上に形成される情報信号記録トラックの中心線で、図8及び図9に2で示したトラック中心線に相当する。また、二点鎖線Iの下側(内周側)には案内トラックのプレピット10が1Hおき毎に形成されており、また二点鎖線Iの上側(外周側)にも案内トラックのプレピット11が1Hおき毎に、記録されている。また、プレピット10と11は走査方向と直交するトラック幅方向上互い違いに形成されている。すなわち、案内トラックに関してはディスク24は前記本出願人の提案になるディスクの案内トラックと同一である。
【0013】一方、図3にX印を付して示した12〜15は、制御信号の一例としてのアドレス信号記録部分を示し、内周側案内トラックの走査方向上、相隣るプレピット10間にはアドレス信号記録部分12及び13が配置されており、外周側案内トラックの走査方向(回転方向)上、相隣るプレピット11間にはアドレス信号記録部分14及び15が配置されている。すなわち、アドレス信号はエラーチェックのため案内トラックの1回転当り同一アドレス情報が2個所の位置にディスク製造時に予め記録されている。アドレス信号記録部分12〜15に記録されている各アドレス信号は、図4に示す如き信号フォーマットのディジタルデータで、所定の変調方式(例えばPE(Phase Encoding))で変調された後記録されている。
【0014】図4において、一のアドレス信号はX6 〜X0 の7ワードからなり、X6 →X5 →…→X0 の順で記録再生される。1ワードは4ビットであるので、アドレス信号は28ビットからなる。X6 はスタートビットで、例えば値が16進法で「F」(すなわち、2進法で「1111」)であり、X5 はディスク情報ビットである。また、X4 〜X0 がトラックアドレスを示すワードで、ディスク1回転当り形成されるトラックを1本としたときの最内周位置からのトラック本数を示しており、X4 ,X3 ,X2 ,X1 及びX0 がトラック本数(トラックアドレス)の“万”,“千”,“百”,“十”及び“一”の各桁の値を示す。従って、X4〜X0 により最大99,999本のトラックを示すことができる。
【0015】図5は一のアドレス信号の波形の一例を示し、MSBを含んだ4ビットが上記のX6 に相当し、図5R>5中、波形の下にデータの値を示す。また、アドレス信号記録部分12〜15は図3において14→12→15→13の順で再生されるが、奇数番目のトラックはアドレス信号記録部分14及び15の再生アドレス信号により識別され、偶数番目のトラックはアドレス信号記録部分12及び13の再生アドレス信号により識別されるよう予め設定されているところで、情報信号記録トラックには例えばカラー映像信号及び2チャンネルの音声信号が記録され再生される。カラー映像信号は輝度信号と搬送色信号に分離され、輝度信号は周波数変調(FM)されて図6に実線IIで示す如く、搬送波偏移帯域が例えば5.6MHz〜7.0MHzのFM波とされ、また搬送色信号は同図にIII で示す如く色副搬送波周波数が例えば約743kHzの低域変換搬送色信号に変換される。また2チャンネルの音声信号は図6にIV,Vで示す周波数1.5MHzと1.8MHzの搬送波を別々に周波数変調して2チャンネルのFM波とされる。これらの信号は周波数分割多重されて同じ情報信号記録トラックに記録されることになる。
【0016】これに対して、アドレス信号は前記した如くPE方式で変調されて記録されるが、その最高周波数は例えば水平走査周波数の52倍の周波数である約818kHz、最低周波数は水平走査周波数の26倍の周波数である約409kHzであり、その周波数スペクトラムは図6に破線VIで示す如くになる。すなわち、上記のアドレス信号の最高周波数及び最低周波数は、FM音声信号にできるだけ影響を与えないよう、上記IV及びVで示した音声信号の搬送波周波数位置で、その周波数スペクトラムVIの谷の位置がくるように選定されている。
【0017】この結果、PE方式で変調されているアドレス信号の周波数スペクトラムVIは、図6に示すように低域変換搬送色信号帯域III に重なるので、同時に低域変換搬送色信号とPE変調されたアドレス信号とを記録することはできない。このため、これら両信号は互いに時間軸位置をずらして記録する必要がある。低域変換搬送色信号は周知の如くバックポーチを除いた水平帰線消去期間及び垂直帰線消去期間内の特定期間にはカラーバースト信号も含めて伝送されないから、ディスク24にはアドレス信号記録部分12〜15が垂直帰線消去期間内のカラーバースト信号期間を避けた特定位置に入るように選定してディスク製造時に予め記録される。
【0018】更に、上記のFM輝度信号、低域変換搬送色信号及び2チャンネルのFM音声信号よりなる周波数分割多重信号をディスクに記録する場合、ディスクの偏芯等によるジッターが生ずる。後述する如く、情報信号(ここでは上記周波数分割多重信号)の記録時及び再生時には、プレピット10,11の再生パルスのエッジが情報信号中の水平同期信号にロックされるようにディスクの回転が制御されるが、その場合、上記のジッターによりアドレス信号に対するカラーバースト信号の位相が相対的に進んだり遅れたりする。
【0019】そこで、ディスク24では案内トラックから再生される図7(A)に示すプレピット再生パルスa中の相隣るアドレス信号b1 ,b2 の間の時間(t1 +t2)の略中央部分に、図7(B)に示す如き垂直帰線消去期間内のカラーバースト信号CBが位置するように、アドレス信号の記録区間及び記録位置が選定される。すなわち、情報信号記録トラックの両側の案内トラックのうち一方の案内トラックから再生されるアドレス信号b1 の記録区間の終端位置から次に他方の案内トラックから再生されるアドレス信号b2 の記録区間の始端位置までのアドレス信号非再生区間(t1 +t2 )の略中央にカラーバースト信号CBが位置するようにアドレス信号記録区間が選定される。その結果、ここでは、上記の区間(t1 +t2 )は29.4μsに選定され、プレピットの終端位置から約19.6μsより約34.2μsの期間アドレス信号がプレピットと共に予め記録される。次に上記ディスク24に情報信号を記録する本発明方法の一実施例について図1及び図2と共に説明する。図1中、入力端子18には記録されるべき複合映像信号が入来する。この複合映像信号の垂直帰線消去期間付近の波形は図2にaで示され、同期分離回路19により複合同期信号を分離抽出されて図2にbで示す如くになる。
【0020】フレーム分離回路20は入力複合同期信号bが第1(奇数)フィールドか第2(偶数)フィールドかを識別し、予め決めた一方のフィールドの垂直同期パルス内で立上り、他方のフィールドの垂直同期パルス内で立下る、図2にcで示す如きフレームパルスを生成する。1フレーム周期のこのフレームパルスcは例えば単安定マルチバイブレータよりなる遅延回路21によりその立上りエッジが走査線番号「16」の1水平走査期間内に位置するような、図2にdで示すパルスに変換された後、位相比較回路22に供給される。一方、ディスク24は予め記録されてあった図3に12〜15で示したアドレス信号記録部分を例えば副光ビームにより再生されてディスクフレーム分離回路25に供給される。
【0021】ディスクフレーム分離回路25はアドレス信号記録部分12〜15のうち最も先に再生されるアドレス信号記録部分14の再生アドレス信号のエッジに同期して立上る、図2にeで示すパルスを発生する。このパルスeは位相比較回路22に供給され、ここで前記パルスdと位相比較される。位相比較回路22はパルスd及びeの位相差に応じた誤差電圧を発生して所要の駆動回路(図示せず)を通してモータ23へ供給し、その回転を制御する。モータ23はディスク24が載置されたターンテーブルを回転するモータで、定常回転時には1800rpmでプレピット10及び11のエッジに位相同期して回転され、またその回転位相は位相比較回路22の出力信号で制御される。
【0022】このようにして回転制御されるディスク24には主光ビームにより複合映像信号を含む情報信号が、前記した如く2本の案内トラック間の一点鎖線Iあるいは2で示す位置にディスク1回転当り2フィールドの割合で記録される。また、上記回転制御により、複合映像信号はその垂直帰線消去期間内の走査線番号「16」の1水平走査期間が図3に示す如く、アドレス信号記録部分14内に位置するように記録されることになる。なお、図3のカッコ内の数値及び図2の波形上部の数値は、いずれも記録される複合映像信号の走査線番号を示す。
【0023】なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えばアドレス信号は案内トラックのピット中に形成することもできる。また、制御信号はアドレス信号のみならず、ディスク感度信号あるいはディスク半径位置に応じたレーザーパワーの設定信号を制御信号として記録してもよい。更に案内トラックはピット列に限らず、また案内トラックは情報信号記録トラックとは別の位置に予め記録形成されてあればよい。また、制御信号の変調方式はPE以外のセルフクロック復調可能な他の変調方式でもよいことは勿論であり、また情報信号としては他の信号でもよい。
【0024】
【発明の効果】上述の如く、本発明記録方法によれば、上記のディスクの案内トラックに予め記録されている制御信号の記録帯域と、記録しようとする情報信号中の低域変換搬送色信号の記録帯域とが重なり合ったとしても、低域変換搬送色信号が存在しない垂直帰線消去期間を制御信号記録区間に記録でき、従ってこのようにして記録された情報記録円盤の再生時には同じ帯域の低域変換搬送色信号と制御信号とを分離して再生することができるため、制御信号による画面内へのノイズの混入を防止でき、また、音声信号へのノイズの混入も案内トラックが情報信号記録トラックとは別に設けてあるので、防止できる等の特長を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明記録方法の一実施例を示すブロック系統図である。
【図2】図1図示ブロック系統の動作説明用信号波形図である。
【図3】本発明で記録するディスクの一例の要部のトラックパターンを示す図である。
【図4】アドレス信号のフォーマットの一例を示す図である。
【図5】アドレス信号の一例の波形図である。
【図6】ディスクに記録される情報信号の周波数スペクトラムとアドレス信号の記録周波数スペクトラムを夫々示す図である。
【図7】再生アドレス信号と記録信号との関係を示す波形図である。
【図8】本出願人が先に提案したディスクの記録トラックパターンの一例を示す図である。
【図9】図8の一部拡大図である。
【符号の説明】
1,24 情報記録円盤(ディスク)
2,I トラック中心線
3,10,11 プレピット
12〜15 アドレス信号記録部分
18 複合映像信号入力端子
19 同期分離回路
20 フレーム分離回路
21 遅延回路
22 位相比較回路
23 モータ
25 ディスクフレーム分離回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 渦巻状又は同心円状の案内トラックが、情報信号が記録されるべきトラック位置とは異なる位置に予め記録されてある情報記録円盤に対して、記録時に複合映像信号中の水平同期信号を該案内トラックの再生パルスのエッジにロックさせて一定回転数の回転制御を行なうと共に、少なくとも該複合映像信号を含む情報信号の垂直帰線消去期間内に該制御信号の記録区間を位置せしめて、該相隣る2本の案内トラックの間の領域に該情報信号の記録トラックを形成して記録を行なうことを特徴とする情報記録円盤の記録方法。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図1】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【公開番号】特開平5−303747
【公開日】平成5年(1993)11月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−302607
【分割の表示】特願昭60−230609の分割
【出願日】昭和60年(1985)10月16日
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)