説明

情報記録再生装置

【課題】 電池の残り容量が少なくなると、カード排出用のモータに十分な電力が伝えられず、光カードを排出できないことがある。
【解決手段】 電池6の残り容量を検出する電源電圧検出回路7を設け、検出された残り容量が規定値に満たない場合、光カード1を装置外に強制排出する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報記録媒体に情報を記録し、あるいは記録情報を再生する情報記録再生装置、特に電池駆動方式の情報記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より情報記録媒体としては、磁気を用いて記録・再生を行うフロッピーディスク、光を用いて記録・再生を行う光学的情報記録媒体等が知られている。光学的情報記録媒体の形態としては、ディスク状、カード状、テープ状等各種のものが知られており、目的、用途等により使い分けられている。そのうち、カード状の光学的情報記録媒体(以下、光カードと称する)は、製造の容易さ、携帯性の良さ、アクセス性の良さと云った特徴を生かし、今後、用途がますます広がっていくと考えられている。情報記録媒体はその媒体の特性により、消去書換の可能なものと、不可能なものがあるが、光カードは現状においては消去書換が不可能なものが一般的で、医療分野等書換ができないことが利点となる分野での応用が期待されている。
【0003】図9は光カードの一例を示す図である。図9において、1は光カード1、70は情報記録領域70である。情報記録領域70には多数のトラッキングトラックが平行に設けられ、トラッキングトラック2の間に情報を記録するためのデータトラック3が設けられている。データトラック3の両端にはデータトラックの物理的な位置を示す物理トラック番号4が予めプリフォーマットされている。このような光カードに情報記録する場合、記録情報に従って変調された光ビームを微小スポットに絞り込んで、データトラック3上を走査することにより光学的に検出可能なピット列として情報が記録される。
【0004】また、記録情報を再生する場合は、光カードに記録が行われない程度の一定パワーの光スポットをデータトラック3上に走査して、情報ピット列からの反射光量あるいは透過光量の相違を検出することにより情報の再生を行う。光ビームスポットの記録面上でのスポットの大きさはオートフォーカス(AF)制御回路により制御され、データトラックの配置ずれは、オートトラッキング(AT)制御回路により制御される。トラッキングトラック2はATのためのガイドとして利用される。また、データトラック3上には、一般にセクタと呼ばれる1個または複数個の最小記録単位が配置されている。図9の例では、1トラックに4個のセクタ31〜34が配置されている。記録または再生すべきトラックを選択する場合は、光スポットと光カードを走査方向と略直交する方向、即ち、情報トラックの並び方向に相対移動させることにより光スポットを所望のトラックにアクセスする。また、光カードと光スポットを相対的にトラック方向に往復運動させることによって光スポットをトラック上に走査している。
【0005】このような光カードを利用したアプリケーションには光学的情報記録再生装置においても携帯性の良いものが望まれている。例えば、医療分野においては、電池駆動型の小型軽量の光学的情報記録再生装置を医師が携帯することにより、往診などの用途に利用することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の電池駆動型の情報記録再生装置では、電池の残り容量が少なくなると、カード排出用のカード搬送モータに充分な電力が伝えられず、光カードを排出できないことがあった。一般に、光カードを利用したアプリケーションでは光カードをサービス利用者個人が携帯するシステムとしていることが多く、サービスを終了した利用者には光カードを返却しなければならない。このとき、もし電池の電圧が低下し、光カードを排出できなくなってしまうと利用者のカードが装置内から出せなくなるため、光カードを返却できなくなってしまう。このような事態が発生すると、サービス利用者に多大な迷惑をかけてしまうという問題があった。
【0007】本発明は、上記従来の問題点に鑑み、電池の残り容量が少なくなった時に記録媒体を強制排出することにより記録媒体を返却できない事態を未然に防止できる情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、電池から供給された電源によって動作し、交換可能な記録媒体に情報を記録し、あるいは記録情報を再生する情報記録再生装置において、前記電池の残り容量を検出する検出手段を有し、検出された残り容量が規定値に満たない場合、前記記録媒体を装置外に強制排出することを特徴とする情報記録再生装置によって達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。図1において、50は光カード1を情報記録媒体として情報の記録、再生を行う情報記録再生装置(以下、ドライブという)である。このドライブ50には電池6が接続されていて、ドライブ50内の各部には電池6から電源が供給される。ドライブ50は上位制御装置であるCPU52に接続され、CPU52の指示に基づいて情報の記録、あるいは再生を行う。また、光カード1としては図9のものを用いているが、カードの裏面には図2に示すようにICチップ5が埋め込まれている。51は不図示の搬送機構を駆動して光カード1をドライブ50内に導入し、所定の位置まで光カード1をL方向に搬送する、また、所定の位置から光カード1をE方向へ搬送してドライブ50外へ光カード1を排出するためのカード搬送モータである。
【0010】54は光源を含む光ビーム照射光学系であり、情報記録時及び情報再生時には光カード1上に光スポットを照射する。55〜57は光検出器で、光カード1に照射された光スポットの反射光を受光する。58は光ビーム照射光学系54の一部を駆動して光カード1面上の光スポットのピント位置をZ方向、即ち光カード1面と垂直方向に移動させてオートフォーカス(AF)を行うためのAFアクチュエータ、59は光ビーム照射光学系54の一部を駆動して光カード1面上の光スポットをY方向のトラッキング方向に移動させてオートトラッキング(AT)を行うためATアクチュエータである。この光ビーム照射光学系54、光検出器55〜57、AFアクチュエータ58及びATアクチュエータ59などを一体化して光ヘッド60が構成されている。61は光ヘッド60をR方向、即ち光カード1の情報トラック3と平行に移動させることにより、光スポットを情報トラック3上に走査するための走査モータである。53は光カード1をY方向に移動させて光スポットを光カード1上の所望のトラックヘアクセスするためのシークモータである。
【0011】62はROM、RAMを内蔵したMPUであり、シークモータ53、走査モータ61等各部を制御する。電源電圧検出回路7は電池6の残り容量を検出する回路であり、検出された残り容量はMPU62に出力される。AT/AF制御回路63は光検出器55〜57の信号を受けて、AFアクチュエータ58、ATアクチュエータ59を駆動し、光スポットのフォーカス制御やトラッキング制御を行う。情報を再生する場合は、光検出器55〜57の出力は変復調回路64に出力され、変復調回路64で読み取り情報の復調等の信号処理を行うことで情報が再生され、再生された情報はMPU62からCPU52へ転送される。また、情報を記録する場合は、変復調回路64はMPU62から送られてくる情報信号を変調し、変調信号に従い光ビーム照射光学系54の光源を駆動して強度変調された光スポットを情報トラックに走査することにより情報の記録を行う。
【0012】65は走査モータ61に結合されたエンコーダであり、走査モータ61が所定角度移動するごとに信号を出力する。この信号は波形整形回路66で波形整形され、MPU62へ送られる。走査モータ61の回転角度と光スポットの移動量には一定の関係があるので、エンコーダ65からの信号をカウントすることにより、光スポットの位置を検出することができる。ICチップアクセス回路67はMPU62の制御に基づいて光カード1の裏面に設けられたICチップ5にアクセスする回路である。MPU62はCPU52からのアクセス要求に応じてICチップアクセス回路67を制御し、ICチップ5に情報の記録あるいは情報の読み出しを行う。
【0013】図3は光ヘッド60の詳細な構成を示す図である。図3において、80は記録再生用光源である半導体レーザである。半導体レーザ80から射出されたレーザビームはコリメータレンズ81で平行化された後、ビーム整形プリズム82で断面円形状に整形される。ビーム整形プリズム82を出射したレーザビームは回拆格子83で3つの光ビームに分割され、更に偏光ビームスプリッタ84、反射プリズム85を経由して対物レンズ86に入射する。そして、3つの光ビームは対物レンズ86で絞られ、図4に示すように光カード1上に微小光スポットS1、S2、S3として集光される。中央の光スポットS2は情報トラック3上に、その両側の光スポットS1、S3は各々その一部がトラッキングトラック2にかかるように照射される。
【0014】このように光カード1上に照射された光スポットは媒体面で反射され、その反射光は再び対物レンズ86、反射プリズム85を経由して偏光ビームスプリッタ84に入射する。この反射光は偏光ビームスプリッタ84で集光レンズ系87に反射され、集光レンズ系87を介して光検出器55〜57に入射する。集光レンズ系87は非点収差方式になっており、オートフォーカスは非点収差方式によって制御される。光検出器は図5に示すように配置され、中央に4分割の光検出器56、その両側に光検出器55と57が配置されている。図4の光スポットS2の反射光は光検出器56で、光スポットS1の反射光は光検出器55で、光スポットS3の反射光は光検出器57でそれぞれ検出される。
【0015】図6は光検出器55〜57からAT/AF制御回路63に至るまでの回路を示す図である。図6において、まず、光検出器55の出力電流は電流電圧変換器90で電圧信号に、光検出器57の出力電流は電流電圧変換器93で電圧信号に変換される。これらの電圧信号はAT/AF制御回路63内のトラッキング制御回路110に出力される。ここで、電流電圧変換器90、93のゲインはスイッチSWで抵抗器RR とRW を選択することで切り換えられる。つまり、情報の記録時においては、半導体レーザ80のレーザビームは情報信号に応じて駆動され、図4の記録用光スポットS2の強度を変調することで情報の記録を行っている。但し、ほかの光スポットも強度変調を受けるので、その反射光を検出する光検出器の信号も情報信号に応じて変化する。そこで、情報記録時においては、情報信号WDに応じて電流電圧変換器のゲインを切り換えることで、その出力信号の振幅が略一定となるように補正している。トラッキング制御回路110では、電流電圧変換器90と93の信号の差を検出してトラッキング誤差信号を生成し、それをもとにATアクチュエータ59を駆動し、対物レンズ86をトラッキング方向に変位させることで、光スポットS2が情報トラックから逸脱しないようにトラッキング制御を行う。
【0016】光検出器56の対角同志の検出片AとDの和信号、及び検出片CとBの和信号は、各々電流電圧変換器91、92で電圧信号に変換され、AT/AF制御回路63内のフォーカス制御回路111に出力される。電流電圧変換器91、92のゲインは同様に情報信号WDに応じて切り換えられ、電流電圧変換器91、92の出力信号もほぼ一定レベルに制御される。フォーカス制御回路111では、電流電圧変換器91と92の出力信号からフォーカス誤差信号を生成し、それをもとにAFアクチュエータ58を駆動し、対物レンズ86をフォーカス方向に変位させることで、光スポットが媒体面に焦点を結ぶようにフォーカス制御を行う。なお、情報再生時は4分割の光検出器56の総和信号が情報再生信号として用いられる。
【0017】図7は電源電圧検出回路7の回路の一例を示す回路図である。図7において、まず、電池6から供給される電圧Vpを用いて基準電圧発生回路10で基準電圧Vbが作成される。基準電圧Vbは供給電圧Vpよりも低い電圧に設定されており、電池6の電圧低下が発生しても、しばらくは基準電圧Vbの出力を維持することができる。基準電圧発生回路10で作成された基準電圧VbはA/D変換器12の基準電圧としても使用される。一方、電池6からの供給電圧Vpは抵抗R1及びR2により抵抗分割され、検出電圧Vmが作成される。検出電圧Vmは基準電圧Vbより低い電圧値に設定され、バッファ11を介してA/D変換器12に送られる。
【0018】MPU62ではA/D変換器12を読み出すことにより検出電圧Vmの電圧値を検出することができる。ここでは、例としてVpを8V、Vbを5V、R1とR2は同じ抵抗値としている。R1とR2を同じ抵抗値で構成することにより、検出電圧Vmは供給電圧Vp/2の電圧値となる。電池6の供給電圧Vpが充分にある場合は供給電圧Vpは8Vであり、検出電圧Vmはその1/2の4Vとなる。一方、電池6の供給電圧が低下し、例えば供給電圧Vpが6Vになると、検出電圧Vmは3Vになる。このようにMPU62はA/D変換器12から検出電圧Vmを読み込むことで、供給電源Vpの低下を検出することができる。検出された供給電圧Vpの情報はCPU52からもMPU62へ問い合わせることにより知ることができる。
【0019】次に、本実施形態の動作を図8のフローチャートを参照して説明する。図8において、まず、MPU62は電源電圧検出回路7から検出電圧Vmを読み込み(S300)、その後、ドライブ50内に光カード1があるかないかを判別する(S301)。光カード1の有無はカードセンサ(図示)の検出信号により判別可能である。ドライブ50内にカード1がある時は、検出電圧Vmがカード強制排出電圧の規定値Ve以上であるかを判定する(S302)。もし、検出電圧Vmが規定値Veに満たない場合は、カード搬送モータ51を制御して光カード1をドライブ50から強制排出する(S303)。S301でドライブ50内にカード1が無い場合は、検出電圧Vmがカード挿入禁止電圧の規定値V1以上であるかを判定する(S304)。
【0020】もし、検出電圧Vmが規定値V1に満たない場合は、カード搬送モータ51の動作を禁止して光カード1をドライブ50内に挿入する機能を停止させる(S305)。ここで、カード強制排出電圧は電池6の残り容量が少なくなって、これ以上少なくなったら光カード1を排出できないというカード排出可能な最低電圧である。カード強制排出電圧の規定値Veと規定値V1は同じ設定値でも良いが、規定値V1の方を高めに設定しておくことで、電池6の電圧が規定値Vlを満たさない限り、光カード1の挿入が禁止され、サービスの途中で電池交換を行わなければならない事態を防止することが可能になる。MPU62は図8のフローを定期的に実行し、検出電圧Vmの値に応じて光カード1の強制排出あるいは光カード1の挿入禁止の制御を行う。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、電池の残り容量が規定値に満たない時は記録媒体を強制排出することにより、記録媒体が装置内に閉じ込められて所有者に返却できない事態を未然に防止でき、利便性の高い安心した装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の実施形態に用いる光カードの裏面を示す図である。
【図3】図1の実施形態の光ヘッドの構成を示す斜視図である。
【図4】光カード上に照射された光スポットを示す図である。
【図5】光ヘッド内の光検出器の受光面を示す図である。
【図6】光検出器の出力からAT/AF制御回路までの回路を示す図である。
【図7】図1の実施形態の電源電圧検出回路の構成を示す回路図である。
【図8】図1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図9】光カードの平面図である。
【符号の説明】
1 光カード
5 ICチップ
6 電池
7 電源電圧検出回路
10 基準電圧発生回路
12 A/D変換器
50 情報記録再生装置(ドライブ)
51 カード搬送モータ
52 CPU
60 光ヘッド
62 MPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電池から供給された電源によって動作し、交換可能な記録媒体に情報を記録し、あるいは記録情報を再生する情報記録再生装置において、前記電池の残り容量を検出する検出手段を有し、検出された残り容量が規定値に満たない場合、前記記録媒体を装置外に強制排出することを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項2】 前記記録媒体は、追記記録媒体であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録再生装置。
【請求項3】 前記記録媒体は、光学式追記記録媒体であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録再生装置。
【請求項4】 前記記録媒体は、光カードであることを特徴とする請求項1に記載の情報記録再生装置。
【請求項5】 前記記録媒体を強制排出後、前記検出手段によって検出された残り容量が規定値以上になるまで前記記録媒体の挿入を禁止することを特徴とする請求項1に記載の情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2000−123459(P2000−123459A)
【公開日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−298403
【出願日】平成10年10月20日(1998.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】