説明

情報記録再生装置

【課題】プロセス中の熱処理による記録層の特性劣化を低減する。
【解決手段】本発明の例に係る情報記録再生装置は、第1の電極層13と、第2の電極層11と、第1の電極層13と第2の電極層11との間にある記録層12と、第1及び第2の電極層11,13間に電圧を印加して記録層12の抵抗を変化させて情報を記録する手段とを備える。第1及び第2の電極層11,13は、P型或いはn型キャリアーがドープされたIV族或いはIII-V族の半導体から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高記録密度の情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型携帯機器が世界的に普及し、同時に、高速情報伝送網の大幅な進展に伴い、小型大容量不揮発性メモリの需要が急速に拡大してきている。その中でも、NAND型フラッシュメモリ及び小型HDD(hard disk drive)は、特に、急速な記録密度の進化を遂げ、大きな市場を形成するに至っている。
【0003】
このような状況の下、記録密度の限界を大幅に超えることを目指した新規メモリのアイデアがいくつか提案されている。
【0004】
例えば、PRAM(相変化メモリ)は、記録材料として、アモルファス状態(オン)と結晶状態(オフ)の2つの状態をとることができる材料を使用し、この2つの状態を2値データ“0”,“1”に対応させてデータを記録する、という原理を採用する。
【0005】
書き込み/消去に関しては、例えば、大電力パルスを記録材料に印加することによりアモルファス状態を作り、小電力パルスを記録材料に印加することにより結晶状態を作る。
【0006】
読み出しに関しては、記録材料に、書き込み/消去が起こらない程度の小さな読み出し電流を流し、記録材料の電気抵抗を測定することにより行う。アモルファス状態の記録材料の抵抗値は、結晶状態の記録材料の抵抗値よりも大きく、その比は、103程度である。
【0007】
PRAMの最大の特長は、素子サイズを10nm程度にまで縮小しても動作できるという点にあり、この場合には、約10Tbpsi (terra bit per square inch)の記録密度を実現できるため、高記録密度化への候補の一つとされる(例えば、非特許文献1を参照)。
【0008】
また、PRAMとは異なるが、これと非常に似た動作原理を有する新規メモリが報告されている(例えば、非特許文献2を参照)。
【0009】
この報告によれば、データを記録する記録材料の代表例は、酸化ニッケルであり、PRAMと同様に、書き込み/消去には、大電力パルスと小電力パルスとを使用する。この場合、PRAMに比べて、書き込み/消去時の消費電力が小さくなる、という利点が報告されている。
【0010】
現在までのところ、この新規メモリの動作メカニズムについては解明されていないが、再現性については確認されており、高記録密度化への候補の他の一つとされる。また、動作メカニズムについても、いくつかのグループが解明を試みている。
【0011】
これらの他、MEMS(micro electro mechanical systems)技術を使ったMEMSメモリが提案されている(例えば、非特許文献3を参照)。
【0012】
特に、ミリピード(Millipede)と呼ばれるMEMSメモリは、アレイ状の複数のカンチレバーと有機物質が塗布された記録媒体とが対向する構造を有し、カンチレバーの先端のプローブは、記録媒体に適度な圧力で接触している。
【0013】
書き込みに関しては、選択的に、プローブに付加されるヒータの温度を制御することにより行う。即ち、ヒータの温度を上げると、記録媒体が軟化し、プローブが記録媒体にめり込んで、記録媒体に窪みを形成する。
【0014】
読み出しに関しては、記録媒体が軟化しない程度の電流をプローブに流しながら、記録媒体の表面に対し、このプローブをスキャンさせることにより行う。プローブが記録媒体の窪みに落ち込むとプローブの温度が低下し、ヒータの抵抗値が上昇するため、この抵抗値の変化を読み取ることによりデータをセンスできる。
【0015】
ミリピードのようなMEMSメモリの最大の特長は、ビットデータを記録する各記録部に配線を設ける必要がないため、記録密度を飛躍的に向上できる点にある。現状で、既に、1Tbpsi程度の記録密度を達成している(例えば、非特許文献4を参照)。
【0016】
また、ミリピードの発表を受けて、最近、MEMS技術と新たな記録原理とを組み合わせ、消費電力、記録密度や、動作速度などに関して大きな改善を達成しようという試みがなされている。
【0017】
例えば、記録媒体に強誘電体層を設け、記録媒体に電圧を印加することにより強誘電体層に誘電分極を引き起こしてデータの記録を行う方式が提案されている。この方式によれば、ビットデータを記録する記録部同士の間隔(記録最小単位)を結晶の単位胞レベルにまで近づけることができる、との理論的予測がある。
【0018】
仮に、記録最小単位が強誘電体層の結晶の1単位胞になると、記録密度は、約4Pbpsi(peta bit per square inch)という巨大な値になる。
【0019】
最近では、SNDM(走査型非線形誘電率顕微鏡)を用いた読み出し方式の提案により、この新規メモリは、実用化に向けてかなり進展してきている(例えば、非特許文献5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2005−252068号公報
【特許文献2】特開2004−234707号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】T. Gotoh, K. Sugawara and K. Tanaka, Jpn. J. Appl. Phys., 43, 6B, 2004, L818
【非特許文献2】A.Sawa, T.Fuji, M. Kawasaki and Y. Tokura, Appl. Phys. Lett., 85, 18, 4073 (2004)
【非特許文献3】P. Vettiger, G. Cross, M. Despont, U. Drechsler, U. Durig, B. Gotsmann, W. Haberle, M. A. Lants, H. E. Rothuizen, R. Stutz and G. K. Binnig, IEEE Trans. Nanotechnology 1, 39(2002)
【非特許文献4】P. Vettiger, T. Albrecht, M. Despont, U. Drechsler, U. Durig, B. Gotsmann, D. Jubin, W. Haberle, M. A. Lants, H. E. Rothuizen, R. Stutz, D. Wiesmann and G. K. Binnig, P. Bachtold, G. Cherubini, C. Hagleitner, T. Loeliger, A. Pantazi, H. Pozidis and E. Eleftheriou, in Technical Digest, IEDM03 pp.763-766
【非特許文献5】A. Onoue, S. Hashimoto, Y. Chu, Mat. Sci. Eng. B120, 130(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の例では、高記録密度及び低消費電力の不揮発の情報記録再生装置においてプロセス中の熱処理による特性劣化を低減する方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の例に係る情報記録再生装置は、第1の電極層と、第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2との電極層との間にある記録層と、前記第1及び第2の電極層間に電圧を印加して前記記録層の抵抗を変化させて情報を記録する手段とを備え、前記第1及び第2の電極層は、P型或いはn型キャリアーがドープされたIV族或いはIII-V族の半導体から構成される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の例によれば、高耐熱性を有する高記録密度及び低消費電力の不揮発の情報記録再生装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る記録層の構造を示す図である。
【図2】プローブメモリを示す図である。
【図3】記録媒体を示す図である。
【図4】記録時の様子を示す図である。
【図5】書き込み動作を示す図である。
【図6】ブロック内の記録単位を示す図である。
【図7】読み出し動作を示す図である。
【図8】半導体メモリを示す図である。
【図9】セルアレイ構造を示す図である。
【図10】メモリセルを示す図である。
【図11】セルアレイ構造を示す図である。
【図12】セルアレイ構造を示す図である。
【図13】フラッシュメモリを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0027】
1. 概要
本発明の例に係る情報記録再生装置は、電圧の印加或いは電流の供給により抵抗値が変化する抵抗変化材料を記録層とし、その上下にP型或いはn型キャリアーがドープされたIV族或いはIII-V族の半導体層(電極層)を接触させたことを特徴とする。
【0028】
この半導体層は、セット/リセット動作(書き込み/消去動作)の繰り返しによる特性劣化、即ち、記録層を構成する化合物(抵抗変化材料)の可逆性がなくなり、不可逆性を有するようになること、を防止する。
【0029】
但し、本発明の例に係る情報記録再生装置は、記録層の抵抗変化により情報を記録するため、半導体の抵抗率は、記録層の最小の抵抗率よりも小さいことが望ましい。例えば、半導体のキャリアー濃度を1×1018個/cc以上とするか、或いは、半導体の抵抗率を10-1Ωcm以下とする。
【0030】
記録層の特性劣化を防止する原理は、以下の通りである。
【0031】
初期の記録層は絶縁体であるが、記録層の両端に電位差を設けることにより記録層の内部に存在する陽イオン元素の一部が負極側に移動する。この結果、正極側に第1化合物が、負極側に第2化合物が位置づけられていると、第1化合物中から排出された陽イオン元素が第2化合物中に挿入され、第2化合物中では相対的に陽イオンの数の割合が陰イオンの割合よりも多くなると同時に電気的中性を保つために負極から電子を受け取り、第2化合物中の遷移元素の価数は低下し、低い酸化状態の化合物になる。
【0032】
また正極側に位置づけられている第1化合物は相対的に陽イオンの割合が陰イオンの割合よりも小さくなるため正極側に電子を放出して高い酸化状態の化合物になる。
【0033】
これがセット動作である。
【0034】
このセット状態の記録層(低抵抗材料)に再び電流を印加すると、低抵抗のために低電位差であっても大電流が流れることになるが、このときジュール熱が発生し、記録層の温度が上昇することになる。
【0035】
先ほどのセット動作によって引き上げられた高エネルギー準安定状態から、熱エネルギーにより、再びセット前の低エネルギー安定状態である絶縁体の状態に戻ることになる。
【0036】
これがリセット動作である。
【0037】
しかしながら、記録層の両端に電圧が印加されると、正極側には酸化力(化合物から酸素を引き抜こうとする力)が働き、負極側には還元力(化合物側に酸素を引き抜こうとする力)が働く。同時に電流によるジュール加熱が反応を促進し、記録層を構成する化合物が不可逆な劣化を引き起こす可能性がある。
【0038】
本発明では、上記のようにドープされたIV族或いはIII-V族の半導体から構成される電極層が記録層に直接接触する構造を有するため、この電極層が上記不可逆な反応を抑制し、情報記録再生装置の大幅な耐電圧及び熱耐性の改善をもたらす。
【0039】
2. 記録/再生の基本原理
本発明の例に係る情報記録再生装置における情報の記録/再生の基本原理について説明する。
【0040】
図1は、記録部の構造を示している。
【0041】
11は、電極層、12は、記録層、13は、電極層である。記録層12内の小さな白丸は、拡散イオンAを表し、小さな黒丸は、遷移元素イオンMを表す。また、大きな白丸は、陰イオンXを表す。
【0042】
記録層12に電圧を印加し、記録層12内に電位勾配を発生させると、拡散イオンの一部が結晶中を移動する。そこで、本発明の例では、記録層12の初期状態を絶縁体(高抵抗状態)とし、情報記録に関しては、電位勾配により記録層12を相変化させ、記録層12に伝導性を持たせる(低抵抗状態にする)ことにより行う。
【0043】
ここで、本明細書では、高抵抗状態をリセット状態とし、低抵抗状態をセット状態と定義する。但し、この定義は、以下の説明を簡単にするためのものであり、材料の選択や製造方法によっては、この定義と逆の場合、即ち、低抵抗状態がリセット(初期)状態となり、高抵抗状態がセット状態となる場合もある。つまり、このような場合も、本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。
【0044】
まず、例えば、電極層13の電位が電極層11の電位よりも相対的に低い状態を作る。電極層11を固定電位(例えば、接地電位)とすれば、電極層13に負の電位を与えればよい。
【0045】
この時、記録層12内の拡散イオンの一部が電極層(陰極)13側に移動し、記録層(結晶)12内の拡散イオンが陰イオンに対して相対的に減少する。電極層13側に移動した拡散イオンは、電極層13から電子を受け取り、メタルとして析出するため、メタル層14を形成する。
【0046】
記録層12の内部では、陰イオンが過剰となり、結果的に、記録層12内の遷移元素イオンの価数を上昇させる。つまり、記録層12は、キャリアーの注入により電子伝導性を有するようになるため、情報記録(セット動作)が完了する。
【0047】
情報再生に関しては、電流パルスを記録層12に流し、記録層12の抵抗値を検出することにより容易に行える。但し、電流パルスは、記録層12を構成する材料が相変化を起こさない程度の微小な値であることが必要である。
【0048】
以上の過程は、一種の電気分解であり、電極層(陽極)11側では、電気化学的酸化により酸化剤が生じ、電極層(陰極)13側では、電気化学的還元により還元剤が生じた、と考えることができる。
【0049】
このため、情報記録の状態(低抵抗状態)を初期状態(高抵抗状態)に戻すには、例えば、記録層12を大電流パルスによりジュール加熱して、記録層12の酸化還元反応を促進させればよい。即ち、大電流パルスの遮断後の残留熱により記録層12は、絶縁体に戻る(リセット動作)。
【0050】
但し、この動作原理を実用化するには、室温でリセット動作が生じないこと(十分に長いリテンション時間の確保)と、リセット動作の消費電力が十分に小さいこととを確認しなければならない。
【0051】
前者に対しては、拡散イオンの配位数を小さく(理想的には2以下に)する、若しくは、価数を2以上にする、又は、陰イオンの価数を上げる(理想的には3以上にする)ことで対応できる。
【0052】
また、後者に対しては、結晶破壊を引き起こさないために拡散イオンの価数を2以下にする必要があると共に、記録層(結晶)12内を移動する拡散イオンの移動パスを数多く有する材料を見つけ出すことにより対応できる。
【0053】
ところで、セット動作後の電極層(陽極)11側には酸化剤が生じるが、電極層11は、P型或いはn型キャリアーがドープされたIV族或いはIII-V族の半導体から構成されるため、これによる劣化は軽減される。
【0054】
同時に電極層11は、イオン伝導性を有しない材料から構成するのがよい。
【0055】
また、セット動作後の電極層(陰極)13側には還元剤が生じるが、電極層13は、P型或いはn型キャリアーがドープされたIV族或いはIII-V族の半導体から構成されるため、これによる劣化は軽減される。
【0056】
同時に電極層13は、記録層12が大気と反応することを防止する機能を持っていることが好ましい。
【0057】
上記の条件を共に満たす材料としては、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、Si、SiC、SiGe、Ge、GaNなどのIV族或いはIII-V族半導体に、p型或いはn型キャリアーを注入したものがある。
【0058】
3. 実施形態
次に、最良と思われるいくつかの実施形態について説明する。
【0059】
以下では、本発明の例を、プローブメモリに適用した場合と半導体メモリに適用した場合の2つについて説明する。
【0060】
(1) プローブメモリ
A. 構造
図2及び図3は、本発明の例に係るプローブメモリを示している。
【0061】
XYスキャナー50上には、記録媒体が配置される。この記録媒体に対向する形でプローブアレイが配置される。
【0062】
プローブアレイは、半導体基板24と、半導体基板24の一面側にアレイ状に配置される複数のプローブ(ヘッド)25とを有する。複数のプローブ25の各々は、例えば、カンチレバーから構成され、マルチプレクスドライバ26,27により駆動される。
【0063】
複数のプローブ25は、それぞれ、半導体基板24内のマイクロアクチュエータを用いて個別に動作可能であるが、ここでは、全てをまとめて同じ動作をさせて記録媒体のデータエリアに対するアクセスを行う例を説明する。
【0064】
まず、マルチプレクスドライバ26,27を用いて、全てのプローブ25をX方向に一定周期で往復動作させ、記録媒体のサーボエリアからY方向の位置情報を読み出す。Y方向の位置情報は、ドライバ28に転送される。
【0065】
ドライバ28は、この位置情報に基づいてXYスキャナー50を駆動し、記録媒体をY方向に移動させ、記録媒体とプローブとの位置決めを行う。
【0066】
両者の位置決めが完了したら、データエリア上のプローブ25の全てに対して、同時、かつ、連続的に、データの読み出し又は書き込みを行う。
【0067】
データの読み出し及び書き込みは、プローブ25がX方向に往復動作していることから連続的に行われる。また、データの読み出し及び書き込みは、記録媒体のY方向の位置を順次変えることにより、データエリアに対して、一行ずつ、実施される。
【0068】
尚、記録媒体をX方向に一定周期で往復運動させて記録媒体から位置情報を読み出し、プローブ25をY方向に移動させるようにしてもよい。
【0069】
記録媒体は、例えば、半導体基板20と、半導体基板20上の電極層21と、電極層21上の記録材料層22とから構成される。
【0070】
電極層21は、図1の電極層11,13とは異なり、金属から構成される。
【0071】
記録材料層22は、図1の電極層11、記録層12及び電極層13から構成される。
【0072】
記録材料層22は、複数のデータエリア、並びに、複数のデータエリアのX方向の両端にそれぞれ配置されるサーボエリアを有する。複数のデータエリアは、記録材料層22の主要部を占める。
【0073】
サーボエリア内には、サーボバースト信号が記録される。サーボバースト信号は、データエリア内のY方向の位置情報を示している。
【0074】
記録材料層22内には、これらの情報の他に、さらに、アドレスデータが記録されるアドレスエリア及び同期をとるためのプリアンブルエリアが配置される。
【0075】
データ及びサーボバースト信号は、記録ビット(電気抵抗変動)として記録材料層22に記録される。記録ビットの“1”,“0”情報は、記録材料層22の電気抵抗を検出することにより読み出す。
【0076】
本例では、1つのデータエリアに対応して1つのプローブ(ヘッド)が設けられ、1つのサーボエリアに対して1つのプローブが設けられる。
【0077】
データエリアは、複数のトラックから構成される。アドレスエリアから読み出されるアドレス信号によりデータエリアのトラックが特定される。また、サーボエリアから読み出されるサーボバースト信号は、プローブ25をトラックの中心に移動させ、記録ビットの読み取り誤差をなくすためのものである。
【0078】
ここで、X方向をダウントラック方向、Y方向をトラック方向に対応させることにより、HDDのヘッド位置制御技術を利用することが可能になる。
【0079】
B. 記録/消去/再生動作
図2及び図3のプローブメモリの記録/消去/再生動作について説明する。
【0080】
図4及び図5は、記録/消去時の状態について示している。
【0081】
記録媒体は、半導体基板(例えば、シリコンチップ)20上の電極層21と、電極層21上の記録材料層22と、記録材料層22上の保護層23とから構成されるものとする。保護層23は、例えば、薄い絶縁体から構成される。
【0082】
記録動作は、記録材料層22の記録ビット29に電圧を印加し、記録ビット29の内部に電位勾配を発生させることにより行う。具体的には、電流/電圧パルスを記録ビット29に与えればよい。
【0083】
本例では、プローブ25の電位が電極層21の電位よりも相対的に高い状態を作る。電極層21を固定電位(例えば、接地電位)とすれば、プローブ25に正の電位を与えればよい。
【0084】
この時、記録材料層22の第1化合物(陽極側)12A内の陽イオン元素の一部(拡散イオン)は、結晶中を移動し、第2化合物(陰極側)12Bの空隙サイトに収まる。
【0085】
これに伴い、第1化合物12A内の陽イオン(遷移元素イオン)の価数が減少し、第2化合物12B内の陽イオン(遷移元素イオン)の価数が増大する。
【0086】
その結果、記録材料層22の記録ビット29は、低抵抗状態から高抵抗状態に変化し、セット動作(記録)が完了する。
【0087】
消去動作は、プローブ25の電位が電極層21の電位よりも相対的に低い状態を作る。電極層21を固定電位(例えば、接地電位)とすれば、プローブ25に負の電位を与えればよい。
【0088】
この時、記録材料層22の第2化合物(陽極側)12B内の陽イオン元素の一部(拡散イオン)は、結晶中を移動し、第1化合物(陰極側)12Aの空隙サイトに収まる。
【0089】
これに伴い、第2化合物12B内の陽イオン(遷移元素イオン)の価数が減少し、第1化合物12A内の陽イオン(遷移元素イオン)の価数が増大する。
【0090】
その結果、記録材料層22の記録ビット29は、高抵抗状態から低抵抗状態に変化し、リセット動作(消去)が完了する。
【0091】
尚、記録/消去動作に関して、第1及び第2化合物12A,12Bの位置関係を逆にすれば、プローブ25の電位を電極層21の電位よりも相対的に低くしてセット動作を実行することもできる。
【0092】
図6は、情報記録が完了した後のデータ領域内のブロックを示している。
【0093】
黒丸は、情報記録がなされた記録単位を表している。本例のプローブメモリによれば、ハードディスクと同様に、記録媒体の記録単位に情報記録を行うことができると共に、新規な記録材料を採用することにより、従来のハードディスクや半導体メモリよりも高記録密度が実現できる。
【0094】
図7は、再生時の状態について示している。
【0095】
再生動作は、電流パルスを記録ビット29に流し、記録ビット29の抵抗値を検出することにより行う。但し、電流パルスは、記録ビット29を構成する記録材料が抵抗変化を起こさない程度の微小な値とする。
【0096】
例えば、センスアンプS/Aにより発生した読み出し電流(電流パルス)をプローブ25から記録材料層(記録ビット)22に流し、センスアンプS/Aにより記録ビットの抵抗値を測定する。
【0097】
このような構造を採用すると、セット/リセット状態の抵抗値の差は、103以上を確保できる。
【0098】
尚、再生動作は、プローブ25を走査(スキャン)させることで、連続的に行うことができる。
【0099】
C. まとめ
このようなプローブメモリによれば、現在のハードディスクやフラッシュメモリよりも高記録密度及び低消費電力を実現できる。
【0100】
(2) 半導体メモリ
A. 構造
図8は、本発明の例に係るクロスポイント型半導体メモリを示している。
【0101】
ワード線WLi−1,WLi,WLi+1は、X方向に延び、ビット線BLj−1,BLj,BLj+1は、Y方向に延びる。
【0102】
ワード線WLi−1,WLi,WLi+1の一端は、選択スイッチとしてのMOSトランジスタRSWを経由してワード線ドライバ&デコーダ31に接続され、ビット線BLj−1,BLj,BLj+1の一端は、選択スイッチとしてのMOSトランジスタCSWを経由してビット線ドライバ&デコーダ&読み出し回路32に接続される。
【0103】
MOSトランジスタRSWのゲートには、1本のワード線(ロウ)を選択するための選択信号Ri−1,Ri,Ri+1が入力され、MOSトランジスタCSWのゲートには、1本のビット線(カラム)を選択するための選択信号Cj−1,Cj,Cj+1が入力される。
【0104】
メモリセル33は、ワード線WLi−1,WLi,WLi+1とビット線BLj−1,BLj,BLj+1との交差部に配置される。いわゆるクロスポイント型セルアレイ構造である。
【0105】
メモリセル33には、記録/再生時における回り込み電流(sneak current)を防止するためのダイオード34が付加される。
【0106】
図9は、図8の半導体メモリのメモリセルアレイ部の構造を示している。
半導体チップ30上には、ワード線WLi−1,WLi,WLi+1とビット線BLj−1,BLj,BLj+1が配置され、これら配線の交差部にメモリセル33及びダイオード34が配置される。
【0107】
このようなクロスポイント型セルアレイ構造の特長は、メモリセル33に個別にMOSトランジスタを接続する必要がないため、高集積化に有利な点にある。例えば、図11及び図12に示すように、メモリセル33を積み重ねて、メモリセルアレイを3次元構造にすることも可能である。
【0108】
メモリセル33は、例えば、図10に示すように、記録材料層22から構成される。1つのメモリセル33により1ビットデータを記憶する。また、ダイオード34は、ワード線WLiとメモリセル33との間に配置される。
【0109】
尚、ダイオード34は、電圧の向きのみによってセット/リセットを変える場合には省略したほうが好ましい。
【0110】
B. 書き込み/消去/読み出し動作
図8乃至図10を用いて書き込み/消去/読み出し動作を説明する。
ここでは、点線Aで囲んだメモリセル33を選択し、これについて書き込み/消去/読み出し動作を実行するものとする。
【0111】
書き込み動作(セット動作)は、選択されたメモリセル33に電圧を印加し、そのメモリセル33内に電位勾配を発生させて電流パルスを流せばよいため、例えば、ワード線WLiの電位をビット線BLjの電位よりも相対的に高くする。ビット線BLjを固定電位(例えば、接地電位)とすれば、ワード線WLiに正の電位を与えればよい。
【0112】
この時、点線Aで囲まれた選択されたメモリセル33では、例えば、図5の第1化合物12A内の陽イオンの一部(拡散イオン)が第2化合物12Bの空隙エリア内に移動する。このため、第1化合物12A内の陽イオン(遷移元素イオン)の価数が増大し、第2化合物12B内の陽イオン(遷移元素イオン)の価数が減少する。
【0113】
その結果、メモリセル33は、高抵抗状態から低抵抗状態に変化し、セット動作(書き込み)が完了する。
【0114】
尚、書き込み時には、非選択のワード線WLi−1,WLi+1及び非選択のビット線BLj−1,BLj+1については、全て同電位にバイアスしておくことが好ましい。
【0115】
また、書き込み前のスタンバイ時には、全てのワード線WLi−1,WLi,WLi+1及び全てのビット線BLj−1,BLj,BLj+1をプリチャージしておくことが好ましい。
【0116】
消去動作(リセット動作)は、選択されたメモリセル33に大電流パルスを流すことにより発生するジュール熱とその残留熱を利用するため、例えば、ワード線WLiの電位をビット線BLjの電位よりも相対的に高くする。ビット線BLjを固定電位(例えば、接地電位)とすれば、ワード線WLiに正の電位を与えればよい。
【0117】
この時、点線Aで囲まれた選択されたメモリセル33では、例えば、図7の第2化合物12B内の陽イオンの一部(拡散イオン)が第1化合物12Aの空隙エリア内に移動する。このため、第2化合物12B内の陽イオン(遷移元素イオン)の価数が増大し、第1化合物12A内の陽イオン(遷移元素イオン)の価数が減少する。
【0118】
その結果、メモリセル33は、低抵抗状態から高抵抗状態に変化し、リセット動作(消去)が完了する。
【0119】
ここで、消去動作は、以下の方法により行うこともできる。但し、この場合には、上述したように、図8及び図9の半導体メモリからダイオード34を取り除くことが好ましい。
【0120】
例えば、ワード線WLiの電位をビット線BLjの電位よりも相対的に低くする。ビット線BLjを固定電位(例えば、接地電位)とすれば、ワード線WLiに負の電位を与えればよい。
【0121】
この時、点線Aで囲まれた選択されたメモリセル33では、例えば、図7の第2化合物12B内の陽イオンの一部(拡散イオン)が第1化合物12Aの空隙エリア内に移動する。このため、第2化合物12B内の陽イオン(遷移元素イオン)の価数が増大し、第1化合物12A内の陽イオン(遷移元素イオン)の価数が減少する。
【0122】
その結果、メモリセル33は、低抵抗状態から高抵抗状態に変化し、リセット動作(消去)が完了する。
【0123】
尚、消去時にも、非選択のワード線WLi−1,WLi+1及び非選択のビット線BLj−1,BLj+1については、全て同電位にバイアスしておくことが好ましい。
【0124】
また、消去前のスタンバイ時には、全てのワード線WLi−1,WLi,WLi+1及び全てのビット線BLj−1,BLj,BLj+1をプリチャージしておくことが好ましい。
【0125】
読み出し動作は、電流パルスを点線Aで囲まれた選択されたメモリセル33に流し、そのメモリセル33の抵抗値を検出することにより行う。但し、電流パルスは、メモリセル33を構成する記録材料が抵抗変化を起こさない程度の微小な値とすることが必要である。
【0126】
例えば、読み出し回路により発生した読み出し電流(電流パルス)をビット線BLjから点線Aで囲まれたメモリセル33に流し、読み出し回路によりそのメモリセル33の抵抗値を測定する。
【0127】
図5及び図7に示すような二層構造の記録層を採用すれば、セット/リセット状態の抵抗値の差は、103以上を確保できる。
【0128】
C. まとめ
このような半導体メモリによれば、現在のハードディスクやフラッシュメモリよりも十分な信頼性を有する高記録密度及び低消費電力を実現できる。
【0129】
(3) その他
本実施の形態では、プローブメモリと半導体メモリの2つについて説明したが、本発明の例で提案する材料及び原理を、現在のハードディスクやDVDなどの記録媒体に適用することも可能である。
【0130】
4. 実験例
いくつかのサンプルを作成し、リセット(消去)状態とセット(書き込み)状態との抵抗差について評価した実験例を説明する。
【0131】
サンプルとしては、図5及び図7に示す構造を有する記録媒体を使用する。
【0132】
評価は、先端の径が10nm以下に先鋭化されたプローブ対を使用する。
【0133】
プローブ対を電極層13に接触させ、書き込み/消去は、そのうちの1つを用いて実行する。書き込みは、記録材料層22に、例えば、10nsec幅で、1Vの電圧パルスを印加することにより行う。消去は、記録材料層22に、例えば、100nsec幅で、0.2Vの電圧パルスを印加することにより行う。
【0134】
また、書き込み/消去の合間に、プローブ対の他の1つを用いて読み出しを実行する。読み出しは、記録材料層22に、10nsec幅で、0.1Vの電圧パルスを印加し、記録材料層(記録ビット)22の抵抗値を測定することにより行う。
【0135】
(1) 第1実験例
第1実験例のサンプルの仕様は、以下の通りである。
記録材料層22は、TiN 10nm上に下部電極層として5nm厚のB doped Si(ボロンドープトシリコン)を積層し、その上に記録層として10nm厚のMn3O4を直接積層し、その上に上部電極層として5nm厚のB doped Siを直接積層した構造で構成する。
【0136】
その後750℃×10secのアニール処理を実施し、10試料でSWサイクル特性を確認した。
【0137】
ここで、SWサイクル特性とは、記録層の特性を保証できるスイッチング(セット/リセット)回数の上限のことを意味する。
【0138】
このサンプルによれば、100サイクル以上のサイクル寿命を実現できる。
【0139】
(2) 第2実験例
第2実験例のサンプルの仕様は、以下の通りである。
記録材料層22は、TiN 10nm上に5nm厚のB doped SiC(ボロンドープトSiC)を積層し、その上に10nm厚のMn3O4を直接積層し、その上に5nm厚のB doped SiCを直接積層した構造で構成する。
【0140】
その後750℃×10secのアニール処理を実施し、10試料でSWサイクル特性を確認した。
【0141】
このサンプルによれば、100サイクル以上のサイクル寿命を実現できる。
【0142】
(3) 第3実験例
第3実験例のサンプルの仕様は、以下の通りである。
記録材料層22は、TiN 10nm上に5nm厚のAl doped Ge(アルミドープトGe)を積層し、その上に10nm厚のMn3O4を直接積層し、その上に5nm厚のAl doped Geを直接積層した構造で構成する。
【0143】
その後750℃×10secのアニール処理を実施し、10試料でSWサイクル特性を確認した。
【0144】
このサンプルによれば、100サイクル以上のサイクル寿命を実現できる。
【0145】
(4) 第4実験例
第4実験例のサンプルの仕様は、以下の通りである。
記録材料層22は、TiN 10nm上に5nm厚のB doped DLC (ボロンドープトダイヤモンドライクカーボン)を積層し、その上に10nm厚のMn3O4を直接積層し、その上に5nm厚のB doped DLCを直接積層した構造で構成する。
【0146】
その後750℃×10secのアニール処理を実施し、10試料でSWサイクル特性を確認した。
【0147】
このサンプルによれば、100サイクル以上のサイクル寿命を実現できる。
【0148】
(5) 第5実験例
第5実験例のサンプルの仕様は、以下の通りである。
記録材料層22は、TiN 10nm上に5nm厚のAl doped GaAs(アルミドープトGaAs)を積層し、その上に10nm厚のHfO2を直接積層し、その上に5nm厚のAl doped GaAsを直接積層した構造で構成する。
【0149】
その後750℃×10secのアニール処理を実施し、10試料でSWサイクル特性を確認した。
【0150】
このサンプルによれば、100サイクル以上のサイクル寿命を実現できる。
【0151】
(6) 第6実験例
第6実験例のサンプルの仕様は、以下の通りである。
記録材料層22は、TiN 10nm上に5nm厚のIn doped GaAs(インジウムドープトGaAs)を積層し、その上に10nm厚のHfO2を直接積層し、その上に5nm厚のIn doped GaAsを直接積層した構造で構成する。
【0152】
その後750℃×10secのアニール処理を実施し、10試料でSWサイクル特性を確認した。
【0153】
このサンプルによれば、100サイクル以上のサイクル寿命を実現できる。
【0154】
(7) 第7実験例
第7実験例のサンプルの仕様は、以下の通りである。
記録材料層22は、TiN 10nm上に5nm厚のB doped GaN(ボロンドープトGaN)を積層し、その上に10nm厚のHfO2を直接積層し、その上に5nm厚のB doped GaNを直接積層した構造で構成する。
【0155】
その後750℃×10secのアニール処理を実施し、10試料でSWサイクル特性を確認した。
【0156】
このサンプルによれば、100サイクル以上のサイクル寿命を実現できる。
【0157】
(8) 比較例
比較例のサンプルの仕様は、以下の通りである。
記録材料層22は、TiN 10nm上に10nm厚のMn3O4、5nm厚のPtを積層した構造で構成する。
【0158】
その後750℃×10secのアニール処理を実施し、10試料でSWサイクル特性を確認した。
【0159】
このサンプルによれば、サイクル寿命は、10サイクル未満となる。
【0160】
(7) まとめ
以上、説明したように、第1乃至第7実験例のいずれのサンプルにおいても、10試料で100サイクル以上のサイクル寿命を満たしている。
【0161】
これに対して、比較例のケースでは、全試料とも、サイクル寿命は、10サイクルに満たない。このことは、本発明を適用した実施例の方が比較例よりも熱処理後の特性、即ち、耐熱性が優れていることを意味する。
【0162】
なお、実験例の効果を最大にするためには、上部電極層および下部電極層と記録層とが直接接していることが望ましいが、上部電極層または下部電極層と記録層との間に自然酸化膜等の意図しない薄い層が存在したとしても、実験例の効果を得ることができる。
【0163】
また、実験例で使用した各電極層を多結晶層により形成すれば、前述のようなメモリセルの積層構造およびメモリセルアレイの3次元化が容易になる。
【0164】
5. フラッシュメモリへの適用
本発明の例は、フラッシュメモリに適用することも可能である。
【0165】
図13は、フラッシュメモリのメモリセルを示している。
【0166】
フラッシュメモリのメモリセルは、MIS(metal-insulator-semiconductor)トランジスタから構成される。
【0167】
半導体基板41の表面領域には、拡散層42が形成される。拡散層42の間のチャネル領域上には、ゲート絶縁層43が形成される。ゲート絶縁層43上には、本発明の例に係る記録材料層(ReRAM: Resistive RAM)44が形成される。記録材料層44上には、コントロールゲート電極45が形成される。
【0168】
半導体基板41は、ウェル領域でもよく、また、半導体基板41と拡散層42とは、互いに逆の導電型を有する。コントロールゲート電極45は、ワード線となり、例えば、導電性ポリシリコンから構成される。
【0169】
記録材料層44は、図1の記録層12及び電極層11,13、或いは、図5及び図7の記録材料層22に相当する。
【0170】
図13を用いて基本動作について説明する。
セット(書き込み)動作は、コントロールゲート電極45に電位V1を与え、半導体基板41に電位V2を与えることにより実行する。
【0171】
電位V1,V2の差は、記録層44が相変化又は抵抗変化するのに十分な大きさであることが必要であるが、その向きについては、特に、限定されない。
【0172】
即ち、V1>V2およびV1<V2のいずれでもよい。
【0173】
例えば、初期状態(リセット状態)において、記録層44が絶縁体(抵抗大)であると仮定すると、実質的にゲート絶縁層43が厚くなったことになるため、メモリセル(MISトランジスタ)の閾値は、高くなる。
【0174】
この状態から電位V1,V2を与えて記録層44を導電体(抵抗小)に変化させると、実質的にゲート絶縁層43が薄くなったことになるため、メモリセル(MISトランジスタ)の閾値は、低くなる。
【0175】
尚、電位V2は、半導体基板41に与えたが、これに代えて、メモリセルのチャネル領域に拡散層42から電位V2を転送するようにしてもよい。
【0176】
リセット(消去)動作は、コントロールゲート電極45に電位V1’を与え、拡散層42の一方に電位V3を与え、拡散層42の他方に電位V4(<V3)を与えることにより実行する。
【0177】
電位V1’は、セット状態のメモリセルの閾値を越える値にする。
【0178】
この時、メモリセルは、オンになり、電子が拡散層42の他方から一方に向かって流れると共に、ホットエレクトロンが発生する。このホットエレクトロンは、ゲート絶縁層43を介して記録層44に注入されるため、記録層44の温度が上昇する。
【0179】
これにより、記録層44は、導電体(抵抗小)から絶縁体(抵抗大)に変化するため、実質的にゲート絶縁層43が厚くなったことになり、メモリセル(MISトランジスタ)の閾値は、高くなる。
【0180】
このように、フラッシュメモリと類似した原理により、メモリセルの閾値を変えることができるため、フラッシュメモリの技術を利用して、本発明の例に係る情報記録再生装置を実用化できる。
【0181】
6. 材料例
本発明の例において、記録層の上面及び下面に接触する電極層は、P型或いはn型キャリアーがドープされたIV族或いはIII-V族の半導体から構成される。
【0182】
この半導体としては、Si、SiC、SiGe、Ge、GaN、DLC或いはダイヤモンドなどがある。また、半導体の抵抗率は、記録層の最小の抵抗率よりも小さいことが望ましく、半導体のキャリアー濃度は、1×1018個/cc以上であることが望ましい。
【0183】
記録層は、 i). CoOx, FeOx, MnOx, NiOx, CuOx, TiOx, ZrOx, HfOx, NbOx, TaOx, MoOx, WOx (但し、1≦x≦3である。)、 ii). ABxOy (但し、Aは、Mg, Ca, Sr, Al, Ga, Sb, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Rh, In, Tl, Pb Siのうちの一つ、Bは、Al, Ga, Ti, Ge, Sn, V, Nb, Ta, Cr, Mn, Mo, W, Ir, Osのうちの一つ、0.5≦x≦2.2、2≦y≦5である。)のうちの一つを含むのが望ましい。
【0184】
7. むすび
本発明の例に関わる情報記録再生装置によれば、ReRAM動作特性を維持したまま耐熱性の向上を実現することができる。
【0185】
本発明の例は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施の形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明は、電圧の印加或いは電流の供給により抵抗値が変化する抵抗変化材料を記録層として情報を記録する情報記録再生装置に適用可能であり、産業上のメリットは多大である。
【符号の説明】
【0187】
11,13: 電極層(半導体層)、 12: 記録層、 12A: 第1化合物、 12B: 第2化合物、 14: メタル層、 20,24,30,41: 半導体基板、21: 電極層(金属層)、 22,44: 記録材料層、 23: 保護層、 25: プローブ、 26,27: マルチプレクスドライバ、 28: ドライバ、 29: 記録ビット、 31: ワード線ドライバ&デコーダ、 32: ビット線ドライバ&デコーダ&読み出し回路、 33: メモリセル、 34: ダイオード、 42: 拡散層、 43: ゲート絶縁層、 45: コントロールゲート電極、 50: XYスキャナー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極層と、第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間にある記録層と、前記第1及び第2の電極層間に電圧を印加して前記記録層の抵抗を変化させて情報を記録する手段とを具備し、前記第1及び第2の電極層は、P型或いはn型キャリアーがドープされたIV族或いはIII-V族の半導体から構成されることを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項2】
前記半導体は、Si、SiC、SiGe、Ge、GaN、DLC或いはダイヤモンドであることを特徴とする請求項1に記載の情報記録再生装置。
【請求項3】
前記半導体の抵抗率は、前記記録層の最小の抵抗率よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の情報記録再生装置。
【請求項4】
前記記録層は、
i). CoOx, FeOx, MnOx, NiOx, CuOx, TiOx, ZrOx, HfOx, NbOx, TaOx, MoOx, WOx
但し、1≦x≦3である。
ii). ABxOy
但し、Aは、Mg, Ca, Sr, Al, Ga, Sb, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Rh, In, Tl, Pb Siのうちの一つ、Bは、Al, Ga, Ti, Ge, Sn, V, Nb, Ta, Cr, Mn, Mo, W, Ir, Osのうちの一つ、0.5≦x≦2.2、2≦y≦5である。
のうちの一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の情報記録再生装置。
【請求項5】
前記半導体のキャリアー濃度は、1×1018個/cc以上であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−225226(P2010−225226A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70835(P2009−70835)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)