情報記録媒体および情報記憶装置
【課題】媒体上における領域の有効活用が図られた情報記録媒体および情報記憶装置を提供する。
【解決手段】情報記録媒体110において、基板Sと、基板S上で周回状に並び互いに所定の第1の周回角度λ1ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドット111と、第1の記録ドットの周回に沿ってこの周回の内側あるいは外側で周回状に並び、互いに、第1の周回角度λ1とは異なる第2の周回角度λ2ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドット112と、第1の記録ドットの周回と第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って周回状に並び、互いの角度間隔が、第1の記録ドットおよび第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列115とを備える。
【解決手段】情報記録媒体110において、基板Sと、基板S上で周回状に並び互いに所定の第1の周回角度λ1ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドット111と、第1の記録ドットの周回に沿ってこの周回の内側あるいは外側で周回状に並び、互いに、第1の周回角度λ1とは異なる第2の周回角度λ2ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドット112と、第1の記録ドットの周回と第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って周回状に並び、互いの角度間隔が、第1の記録ドットおよび第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列115とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体およびこの情報記録媒体を備えた情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報記憶装置に搭載される情報記録媒体の記録密度を向上させる技術として、パターンドメディア方式の磁気ディスクが近年注目されている。パターンドメディア方式の磁気ディスクは、情報の最小単位を記憶する、磁性体からなるドットがディスク上に規則的な配列で並んだ構造を有している。
【0003】
図1は、パターンドメディア方式の磁気ディスクの構造を模式的に示す斜視図である。図1には、円板状の磁気ディスクから切り出された一部が示されている。
【0004】
図1に示す磁気ディスクDは、基板S上に複数の記録ドットQが規則的な配列で並べられた構造を有しており、記録ドットQのそれぞれには1ビット相当の情報が磁気的に記録される。記録ドットは円板の中心の周りに周回状に並んでおり、記録ドットの列はトラックTを形成する。このようなパターンドメディア方式の磁気ディスクは、一般にナノインプリント・リソグラフィと呼ばれる公知の製造プロセスによって製造されるが、本発明は製造プロセスに直接係るものではないため、製造プロセスについては説明を省略する。
【0005】
パターンドメディア方式に限らず一般的な磁気ディスクを搭載した磁気ディスク装置は、磁気ディスク上のサーボパターンを用いて磁気ヘッドを位置決めすることによって目的とする情報の記録再生を行っている。磁気ディスクのトラックには、サーボパターンが配置されたサーボ領域とデータを記録するデータ領域とがトラックに沿って交互に配置されており、回転する磁気ディスクのトラックに沿って相対移動する磁気ヘッドからは、(1回転当たりのサーボ領域の数×磁気ディスクの回転数)で表されるサーボサンプリング周波数でサーボパターンが読み出され磁気ヘッドの位置情報が得られる。この位置情報に基づいて離散時間領域でのサーボ制御が行われ磁気ヘッドが目標とするトラックに追従する。
【0006】
図2は、磁気ディスクにおける各領域の一般的な配置を示す図である。図2のパート(A)には、磁気ディスク90の各領域が磁気ヘッドとともに示されており、パート(B)には、磁気ディスク90の一部領域Rが直線状に展開され拡大して示されている。
【0007】
磁気ディスク90上の領域は半径方向にゾーン0からゾーンiまで複数のゾーンに区分されて使用されている。1つのゾーン内では記録周波数が一定のため1ビット当たりの記録領域の長さが内周から外周に向かって徐々に長くなるが、1ビット当たりの記録領域の長さがすべてのゾーンに亘って一定の範囲に収まるように、外周側のゾーンほど記録周波数が高い構造となっている(ゾーンCAV方式)。サーボ領域とこのサーボ領域に続くデータ領域とでセクタが構成される。なお、図2のパート(A)に示すように、磁気ヘッド91はアーム92の先端に取り付けられており、サーボ領域は、厳密には磁気ヘッドがアームの回転に伴い移動する軌跡93に沿って円弧状に配置されている。
【0008】
パターンドメディア方式に対し、従来広く用いられている連続媒体方式の磁気ディスクでは、一様に連続して広がった磁性膜にサーボ領域およびデータ領域が設けられている。この一方、パターンドメディア方式の磁気ディスクでは、サーボ領域に、サーボ情報に応じた磁性域/非磁性域のパターンが製造プロセスによって形成されており、サーボ領域全体が均一に磁化された場合に、サーボ情報を表す磁気パターンとなる。また、データ領域には微小な記録ドットが離散的に配置される。1つの記録ドットが情報の1ビットに相当し、磁化方向によってビットの値が表される。パターンドメディア方式の磁気ディスクでは、記録ドットと記録ドットとの間には情報が記録できないため、情報の記録は磁気ヘッドを記録ドット上に正確に位置決めした上で行う必要がある。この位置決めには、記録ヘッドを磁気ディスクの半径方向で位置決めすることと、記録ヘッドに信号を供給するタイミングおよび記録ヘッドから信号を読み出すタイミングを記録ドットの通過タイミングに同期させることとが含まれる。
【0009】
図3は、パターンドメディア方式の磁気ディスクの記録ドットとライトクロックとの関係を説明する図である。
【0010】
図3に示すように、パターンドメディア方式の磁気ディスクに情報を記録する場合には、磁気ヘッド95が記録ドットQを通過するタイミングに同期したライトクロックを生成し、このライトクロックに同期させて書き込みデータを磁気ヘッド95に供給することが必要となる。ここでの同期には、周期の一致と位相の一致とがある。例えば、図3に示すライトクロックC1およびライトクロックC2の周期はともに、磁気ヘッド95が記録ドットQを通過する周期と一致しているが、位相は互いにずれている。適切なライトクロックC1のタイミングに基づいて磁気ヘッド95に信号が供給される場合には情報が記録ドットQに記録されるが、不適切なライトクロックC2タイミングに基づいて信号が供給される場合には情報が正常に記録されない。
【0011】
例えば特許文献1には、ライトクロックを記録ドットの通過タイミングに同期させるため、磁気ディスクにタイミングの基準となるライトプリアンブルを設ける技術が提案されている。
【0012】
図4は、ライトプリアンブルが設けられたパターンドメディア方式の磁気ディスクの一部を示す図であり、図5は、図4の磁気ディスクを備えたハードディスク装置(HDD)のブロック図である。図5には主としてライトクロックの生成に関する構成が示されている。
【0013】
図4に示す磁気ディスク910は、サーボパターン912、磁性体のパターンからなるライトプリアンブル913がデータ領域に隣接して設けられている。なお、サーボについては、詳細な形状は省略し、その配置領域を示すに留める。HDD900において回転する磁気ディスク910のトラックに沿って相対移動するヘッドからリードアンプを介して読み出された信号は、PLL回路950とゲート生成回路944に供給される。ゲート生成回路944は、プリアンブルの信号が読み出された期間を表すゲートタイミング信号を生成する。PLL回路950には、サンプルホルダ回路952が備えられており、プリアンブルの期間ではリードアンプ941からの信号と生成するライトクロックとの比較結果をサンプルする一方、プリアンブルに続くデータ領域の期間では比較結果をホールドする。これによって、プリアンブルの信号に同期したライトクロックが生成され、ライトクロックに応じて記録ドットに対する情報の書き込みが行われる。
【特許文献1】特開2003−157507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、磁気ディスク装置では、磁気ヘッドにリードヘッドとライトヘッドが離れて設けられた構成が一般的になっている。リードヘッドとライトヘッドとは互いに異なるトラック上を通過する。
【0015】
図6は、図4に示す磁気ディスクの一部をリードヘッドおよびライトヘッドとともに示す図である。図6には、磁気ディスクのうち、N番目のゾーンとN+1番目のゾーンの一部が示されている。
【0016】
例えば図6に示すように、ライトヘッド932がN+1番目のゾーンにあり、リードヘッド931が隣のN番目のゾーンにある状態では、リードヘッドで読み出された信号に同期したタイミングで、ライトヘッド932によって記録ドット915に情報を記録しようとしても、記録ドット915には情報が適切に記録されない。このように、記録ドットの配列規則が互いに異なる2つのゾーンの境付近には、ライトヘッドによる記録が不能であり利用できない領域がある。
【0017】
上記事情に鑑み、本明細書に記載する1つまたは複数の実施形態は、媒体上における領域の有効活用が図られた情報記録媒体および情報記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成する情報記録媒体の基本形態は、
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って該周回の内側あるいは外側で周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って周回状に並び、互いの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えている。
【0019】
この基本形態によれば、再生ヘッドと記録ヘッドとが離れて配置された記憶装置でこの情報記録媒体を記録および再生する場合、第1の記録ドットの周回と第2の記録ドットの周回との間の領域は、記録ヘッドによる記録ができないが、読取専用の情報を表したビット列を配置することで媒体上の領域が有効活用される。
【0020】
上記基本形態に対し、「前記第1の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第1の記録ドットの角度間隔とは所定の整数比を有する角度間隔で記録された第1の磁気パターンと、
前記第2の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第2の記録ドットの角度間隔とは前記所定の整数比を有する角度間隔で記録された第2の磁気パターンとを更に備えた」という応用形態は好適である。
【0021】
記録ドットの配列の周回の途上に配置された磁気パターンから読み出した信号に同期したタイミングで記録ドットに書き込みを行う形態が知られているが、この好適な応用形態によれば、磁気パターンから読み出した信号に同期したタイミングでは書き込みができない領域に、読取専用の情報を表したビット列を配置することで媒体上の領域が有効に活用される。
【0022】
上記基本形態に対し、「前記ビット列が磁性材料と非磁性材料の配列パターンで構成され、該磁性材料であるか該非磁性材料であるかによってビット値が表現されたものである」という応用形態は好適である。
【0023】
この好適な応用形態によれば、情報記録媒体の使用中にビット列が誤って逆方向に磁化されても、後で均一に磁化し直すことにより情報の回復が可能となる。
【0024】
上記基本形態に対し、「前記ビット列の各ビットが前記基板の周回方向の位置に配した目盛りを表したものである」という応用形態は好適である。
【0025】
この好適な応用形態によれば、ビット列から情報を読み出すことによって、情報記録媒体を回転させた場合の回転ムラを検知することができ、第1の記録ドットと第2の記録ドットとの間の領域が上記ビット列によって有効に活用される。
【0026】
上記基本形態に対し、「前記ビット列が前記第1の記録ドットの周回軌道およびまたは前記第2の記録ドットの周回軌道の基準となる軌道を表したものである」という応用形態は好適である。
【0027】
この好適な応用形態によれば、情報記録媒体を回転させた場合における各記録ドットの周回の径方向における偏差を検知することができ、第1の記録ドットと第2の記録ドットとの間の領域が上記ビット列によって有効に活用される。
【0028】
上記基本形態に対し、「前記ビット列がこの情報記憶媒体の製造条件を表したものである」という応用形態は好適である。
【0029】
この好適な応用形態によれば、第1の記録ドットと第2の記録ドットとの間の領域に、情報記録媒体の製造条件を表したビット列を配置して有効に活用することができる。
【0030】
上記基本形態に対し、「この情報記憶媒体は情報が暗号化されて記憶されるものであり、
前記ビット列がこの情報記憶媒体に記憶される情報の暗号鍵情報を表したものである」という応用形態は好適である。
【0031】
この好適な応用形態によれば、第1の記録ドットと第2の記録ドットとの間の領域に、暗号鍵情報を表したビット列を配置して有効に活用することができる。
【0032】
また、上記目的を達成する情報記憶装置の基本形態は、
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って所定の幅を有して周回状に並び、互いの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えた情報記憶媒体;
前記第1の記録ドット、前記第2の記録ドット、および前記ビット列それぞれの並びに沿って相対的に移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに記録された情報と該ビット列が表した情報とを再生する再生ヘッド;および
前記第1の記録ドットおよび前記第2の記録ドットそれぞれの並びに沿って相対的に、前記再生ヘッドの移動経路とは前記所定幅以上の距離を置いた移動経路を移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに情報を記録する記録ヘッド;
を備えている。
【0033】
記録ヘッドは、再生ヘッドの移動経路とは前記所定幅以上の距離を置いた移動経路を移動するため、角度間隔が互いに異なる第1の記録ドットの周回と第2の記録ドットの周回との間には、記録ヘッドによる記録が行えない領域が生じるが、この領域に読取専用の情報を表したビット列を配置することで媒体上の領域が有効に活用される。
【0034】
なお、情報記憶装置については、ここではその基本形態のみを示すのに留めるが、これは単に重複を避けるためであり、情報記憶装置には、上記の基本形態のみではなく、前述した情報記憶媒体の各応用形態に対応する各種の応用形態が含まれる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、情報記録媒体および情報記憶装置の上記基本形態によれば媒体上における領域が有効に活用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
基本形態および応用形態について上記説明した情報記録媒体および情報記憶装置に対する具体的な実施形態を、以下図面を参照して説明する。
【0037】
図7は、情報記憶装置の具体的な第1実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図である。
【0038】
図7に示すHDD100は、磁気ディスク110、磁気ディスク110を回転駆動するスピンドルモータ120、磁気ディスク110に対する情報の読み書きを行う磁気ヘッド130、磁気ヘッド130を磁気ディスクに沿って移動するアーム133、アーム133を回転駆動するアーム駆動部134、および、電子回路部140を備えている。磁気ディスク110は、上述した基本形態における情報記録媒体の一例に相当する。磁気ヘッド130は、記録用のリードヘッド131と再生用のライトヘッド132を備えており、リードヘッド131とライトヘッド132とは間隔を置いて配置されている。リードヘッド131が上述した基本形態における再生ヘッドの一例に相当し、ライトヘッド132が上述した基本形態における記録ヘッドの一例に相当する。
【0039】
図8は、図7に示すHDDの磁気ディスクの一部を示す図である。
【0040】
図8に示す磁気ディスク110はパターンドメディア方式の磁気ディスクであり、基板Sと、基板S上に並べられた複数の記録ドットQを有する基本的な構造は、図1を参照して説明した構造と同様である。また、この図8に示す磁気ディスク110では、円周上に並んだ記録ドットの列によってトラックTが形成されている点や、各トラックは、サーボパターンが配置されたサーボ領域116によって区切られている点や、磁気ディスク110上の領域が径方向に複数のゾーンに区分されている点が図6に示す磁気ディスクと同じである。ここで径方向とは、磁気ディスク110上のある点において、磁気ディスク110の中心に向かう方向である。図8には、磁気ディスク110のうち、N番目のゾーンとN+1番目のゾーンの一部が示されている。
【0041】
磁気ディスク110のN番目のゾーンには、記録ドット111が同心円状の複数のトラックTx,Tx+1,Tx+2,Tx+3のそれぞれに沿って周回状に並んでいる。ゾーンNの記録ドット111は、互いに等しい周回角度λ1ずつの角度間隔を空けて配置されている。記録ドット111が周回状に配列したトラックTx,Tx+1,Tx+2,Tx+3の周回途上には、プリアンブル113が配置されている。プリアンブル113は、トラックTx,Tx+1,Tx+2,Tx+3に沿った方向(いわゆる周方向)における記録ドット111の角度間隔と1:1の整数比を有する周回角度、すなわち周回角度λ1ずつの角度間隔で記録された磁気パターンである。
【0042】
N番目のゾーンよりも内側のN+1番目のゾーンには、同心円状の複数のトラックTy,Ty+1,…に沿って記録ドット112が並んでいる。N+1番目のゾーンにおける記録ドット112は、互いに、第1の周回角度λ1よりも大きい第2の周回角度λ2ずつの角度間隔を空けて配置されている。記録ドット112の配列の周回であるトラックTy,Ty+1,…のそれぞれの途上には、プリアンブル114が配置されている。プリアンブル114は、トラックTy,Ty+1,…に沿った周方向における記録ドット112の角度間隔と1:1の整数比を有する周回角度、すなわち第2の周回角度λ2ずつの角度間隔で記録された磁気パターンである。
【0043】
ここで、N番目のゾーンに配置された記録ドット111のうちいずれかのトラックに配置された記録ドット111は、上述した基本形態における第1の記録ドット部の一例に相当し、N+1番目のゾーンに配置された記録ドット112のうちいずれかのトラックに配置された記録ドット112は、上述した基本形態における第2の記録ドット部の一例に相当し、ピッチテストパターン115は上述した基本形態におけるビット列の一例に相当する。また、N番目のゾーンのプリアンブル113は、上述した応用形態における第1の磁気パターンの一例に相当し、N+1番目のゾーンのプリアンブル114は、上述した応用形態における第2の磁気パターンの一例に相当する。
【0044】
N番目のゾーンとN+1番目のゾーンとの間に挟まれ、トラックTx+3とトラックTyに沿って周回状に全周に亘ってピッチテストパターン115が並んでいる。
【0045】
ピッチテストパターン115は、読取専用の情報を表す磁気パターンである。ピッチテストパターン115は、記録ドット112の角度間隔と同じく、第2の周回角度λ2ずつの角度間隔で並んだビット115bからなり、各ビット115bは、磁気ディスク110の周方向の位置に配された目盛りを表している。各ビット115bは磁性体材料で構成され予めHDD100の製造段階で磁化されている。
【0046】
また、ピッチテストパターン115は、リードヘッド131の移動経路とライトヘッド132の移動経路との間隔以下の幅で配置されている。ライトヘッド132が相対的に移動する移動経路と、リードヘッド131が相対的に移動する移動経路との間隔は実際には数十トラック分に及ぶが、図8では、見易さのため、ライトヘッド132が磁気ディスク110に対し相対的に移動するトラックと、リードヘッド131が相対的に移動するトラックとの間隔が3トラック分に簡略化され、ピッチテストパターン115の幅が2トラック分に簡略化して示されている。
【0047】
ここで再び図7に戻ってHDD100の電子回路部140について説明する。
【0048】
電子回路部140は、リードヘッド131から出力される信号を増幅するリードアンプ141、ライトヘッド132に供給する信号を増幅するライトアンプ142、リードアンプ141から供給された信号を処理して外部の図示しないホストコンピュータに情報を出力するとともにホストコンピュータから供給される情報に応じた信号をライトアンプ142に供給するホストIF143、リードアンプ141から供給された信号について、プリアンブルの信号が読み出された期間を表すゲートタイミング信号を生成するゲート生成回路144、リードアンプ141を介してリードヘッド131から得られる信号に同期したライトクロックを生成するPLL回路150、書き込みデータをライトクロックに同期してライトアンプに供給するタイミング制御部146、および、磁気ディスクの回転ムラを学習する回転ムラ学習回路160を備えている。
【0049】
PLL回路150は、リードヘッド131からプリアンブルの信号が得られる場合にはプリアンブルの信号に同期したライトクロックを生成するとともに、生成したライトクロックを次のプリアンブルまで供給し、リードヘッド131からテストパターンの信号が得られる場合には、テストパターンの信号に同期したライトクロックを生成する。PLL回路150は、ライトクロックを生成するVCO(Voltage Controlled Oscillator)153、ライトクロックの分周器154、分周されたライトクロックとリードアンプ141から供給された信号の位相を比較する比較器151、ゲート生成回路144からのゲートタイミング信号に応じて比較器151の出力信号をサンプルおよび保持するサンプルホルダ回路152、および、サンプルホルダ回路152の出力にオフセットを加算する加算器155を備えている。
【0050】
回転ムラ学習回路160は、PLL回路150がテストパターンの信号に同期したライトクロックを生成する場合には、ライトクロックの周波数を表す電圧を、磁気ディスク110の回転ムラを表す信号として記憶し、PLL回路150がプリアンブルに同期したライトクロックを生成する場合には、記憶した電圧をPLL回路150に供給してライトクロックの周波数を調整する。回転ムラ学習回路160は、ライトクロックの周波数を表す電圧である比較器151の出力信号をデジタル値に変換するA/Dコンバータ161、A/Dコンバータ161の出力値を記憶するメモリ162、メモリ162から読み出したデジタル値をアナログ値に変換するD/Aコンバータ163を備えている。
【0051】
また、電子回路部140には、各駆動部のドライバ、サーボ回路、装置全体を制御する制御部も備えられているが、説明および図示は省略する。
【0052】
磁気ディスクの回転には回転ムラが生じており、回転ムラには磁気ディスクの1回転ごとに周期的に繰り返す成分が含まれている。図7に示すHDD100では、磁気ディスク110のテストパターンから情報を読み出すことで1回転内での回転ムラの分布を学習し、記録ドット111,112への書き込みの際には、学習した回転ムラの分布に応じたフィードフォワード制御によってライトクロックを調整し、回転ムラの影響を低減している。
【0053】
HDD100の動作を説明する。まず、磁気ディスク110がスピンドルモータ120によって駆動され回転し、アーム133がアーム駆動部134によって回転駆動され、リードヘッド131が、ピッチテストパターン115が配置されたトラックTz上に位置づけられる。リードヘッド131は、トラックTzに沿ってピッチテストパターン115上を相対移動しながら、ピッチテストパターン115の情報を読み出す。
【0054】
リードヘッド131が読み出したピッチテストパターン115の信号は、リードアンプ141を介してPLL回路150に入力される。PLL回路150は、テストパターンの信号と、VCO153で発生するライトクロックを1/N分周した信号とを比較器151で比較し、比較結果の電圧をVCO153にフィードバックする。なお、このときPLL回路150のサンプルホルダ回路152および加算器155は、比較器151の比較結果の電圧値をそのまま通過させる。これにより、リードヘッド131がピッチテストパターン115を通過するタイミングに同期したライトクロックが生成される。このとき、PLL回路150内の比較器151が出力する電圧値の変動は、回転ムラに起因するテストパターンの信号の周波数変動を表している。A/Dコンバータ161は、比較器151が出力する電圧値をデジタル値に変換してメモリ162に記憶させる。メモリ162には、比較器151の電圧値が磁気ディスクの1回転分すなわちテストパターンの1周分に亘り、磁気ディスクの回転角に対応付けて記憶される。メモリ162に記憶された電圧値は、記録ドット111,112の書き込み時に利用される。
【0055】
通常の書き込みでは、アーム133の回転によってライトヘッド132が目標となるトラック、例えば図8に示すトラックとしては最外周のトラックTxに位置づけられる。このとき、リードヘッド131は、ライトヘッド132の移動経路にある最外周のトラックTxから距離Gだけ離れた移動経路にある、最外周のトラックTxから数えて4番目のトラックTx+3付近を移動することとなる。ライトヘッド132が最外周のトラックTx上の目標となるセクタに到達し、リードヘッド131がプリアンブル113に到達すると、まずリードヘッド131が、プリアンブル113の情報を読み出す。
【0056】
リードヘッド131が読み出したプリアンブル113の信号は、リードアンプ141を介してPLL回路150およびゲート生成回路144に供給される。PLL回路150は、プリアンブル113の信号と、ライトクロックを1/N分周した信号とを比較器151で比較し、比較結果の電圧をVCO153にフィードバックする。VCO153は、比較結果の電圧に応じた周波数のライトクロックを出力する。この一方で、ゲート生成回路144は、プリアンブル113の信号が読み出された期間を表すゲートタイミング信号を出力する。したがって、サンプルホルダ回路152はゲートタイミング信号に応じて比較器151による比較結果の電圧値をそのまま通過させる(サンプル状態)。
【0057】
次に、リードヘッド131がプリアンブル113を通過すると、ゲート生成回路144は、ゲートタイミング信号の出力を停止し、サンプルホルダ回路152が直前の電圧値を維持する(ホールド状態)。これによって、リードヘッド131がプリアンブル113を通過した後もライトクロックの周波数が維持される。タイミング制御部146は、PLL回路150のライトクロックに同期して書き込みデータをライトアンプ142に供給する。ライトヘッド132は、ライトアンプ142から供給された信号に応じて、最外周のトラックTxの記録ドット111に情報を記録する。
【0058】
ここで、リードヘッド131がプリアンブル113を通過した後は、比較器151の出力がサンプルホルダ回路152によって固定される。仮に、これに合わせてライトクロックの周波数が固定される場合、磁気ディスク110の回転に含まれる回転ムラによって、リードヘッド131が記録ドット111を通過するタイミングと、ライトクロックの間にずれが生じる。この結果、図3で説明したように、情報が記録ドット111に正常に記録できなくなるおそれがある。
【0059】
図7に示すHDD100では、D/Aコンバータ163が、磁気ディスク110の回転角度に応じた電圧値をメモリ162から読み出しアナログ値に変換する。そして、加算器155がD/Aコンバータ163の出力値をサンプルホルダ回路152の出力値にオフセットとして加算する。
【0060】
このようにして、リードヘッド131がプリアンブル113を通過した後は、ライトクロックの周波数が、ピッチテストパターン115を使って学習された回転ムラの情報に応じてフィードフォワード制御により調整される。
【0061】
図8に示す磁気ディスク110では、N番目のゾーン内の4番目のトラックTx+3と、N+1番目のゾーン内の最外周のトラックTyとの間にある書込み不能領域が、HDD100に回転ムラを学習させるためのピッチテストパターン115に活用されている。
【0062】
次に、情報記録媒体および情報記憶装置の具体的な第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する
図9は、情報記憶装置の具体的な第2実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図であり、図10は、図9に示す磁気ディスクの一部を示す図である。図9では、図7で省略したサーボ回路270が示されており、図7で示したPLL回路およびホストIFが省略されている。また、図9に示すHDD200は、更に、磁気ディスク210におけるトラック位置の径方向変位を学習するトラック変位学習回路280を備えている。
【0063】
図10に示す磁気ディスク210は、ビット列としてのピッチテストパターン115(図8)の代わりに、サーボテストパターン215が配置されている点が、図8に示した第1実施形態における磁気ディスク110と異なり、他の点は、図8の磁気ディスク110と同様である。サーボテストパターン215は、ピッチテストパターン115(図8)の場合と同様に、N番目のゾーンとN+1番目のゾーンとの間に全周に亘って配置されている。サーボテストパターン215のビット215a,215bはN+1番目のゾーンの最外周のトラックTzに沿って千鳥状に交互に配置されている。一方のビット215aは磁気ディスクの内側にずれ、他方のビット215bは外側にずれている。ビット215a,215bのそれぞれは、記録ドット111,112と同様の磁性体材料からなり、予めHDD200の製造段階で互いに等しい程度に磁化されている。サーボテストパターン215の一方のビット215aと他方のビット215bとの間を通るトラックTzは、N番目のゾーンおよびN+1番目のゾーンに配置された記録ドット111,112の周回の基準となる軌道を表している。より詳細には、サーボテストパターン215が配列したN+1番目のゾーンの最外周のトラックTzは、その他のトラックTx,Tx+1,Tx+2,Tx+3,Ty,Ty+1,…と同心円上に配置されている。
【0064】
ここで再び図9に戻ってHDD200のサーボ回路270およびトラック変位学習回路280について説明する。
【0065】
サーボ回路270は、リードヘッド131から得られる信号がサーボ領域116のサーボパターンの信号の場合には、サーボパターンの信号に含まれたトラック番号の情報および目標トラックからのずれを検知し、アーム駆動部134を制御して、リードヘッド131およびライトヘッド132の位置を目標のトラック上に追従させる。サーボ回路270は、サーボ領域116の信号が読み出された期間を表すゲートタイミング信号を生成するゲート生成回路271、リードヘッド131から得られる信号からサーボパターンまたはサーボテストパターン215の信号を復調することによって、サーボエラー信号すなわちリードヘッド131のトラックからの径方向のずれを表す信号を出力するサーボエラー復調回路272、サーボエラー復調回路272から出力されたサーボエラー信号を、ゲート生成回路271からのゲートタイミング信号に応じてサンプルおよび保持するサンプルホルダ回路273、サンプルホルダ回路273の出力にオフセットを加算する加算器274、および、加算器274の出力に応じてアーム駆動部134を駆動する駆動回路275を備えている。
【0066】
例えば、リードヘッド131がサーボテストパターン215の情報を読み出す場合、トラックTzのうねりによって、リードヘッド131が相対的にトラックTz中央より外側にずれると、外側にずれて配置されたビット215bに対する信号振幅が、内側にずれて配置されたビット215aに対する信号振幅よりも大きくなる。この場合、サーボエラー復調回路272は、サーボテストパターン215の2種類のビット215a,215bの信号振幅から、リードヘッド131が相対的にトラックTz中央より外側にずれたことを表す電圧をサーボエラー信号として出力する。リードヘッド131が内側にずれた場合も、そのことを表す電圧がサーボエラー信号として出力される。
【0067】
トラック変位学習回路280は、サーボ回路270がサーボテストパターン215に応じてサーボエラー信号を生成する場合には、サーボエラー信号の電圧を、磁気ディスク110におけるトラック位置の径方向変位を表す信号として学習し、サーボ回路270がサーボ領域116のサーボパターンに応じてサーボエラー信号を生成する場合には、学習した電圧をサーボ回路270に供給して駆動回路275の出力電圧を調整する。トラック変位学習回路280は、サーボエラー信号の電圧をデジタル値に変換するA/Dコンバータ281、A/Dコンバータ281の出力値を記憶するメモリ282、メモリ282から読み出したデジタル値をアナログ値に変換するD/Aコンバータ283を備えている。
【0068】
一般に磁気ディスクのトラックは、製造時の誤差が原因で、厳密には回転中心に対して偏心して配置されており、磁気ディスクを回転させた場合に、1周ごとに繰り返すうねりを有している。1周分のうねりは各トラックにほぼ共通である。図9に示すHDD200では、磁気ディスク210のサーボテストパターン215を用いることで1回転内でのトラックのうねりの分布を学習し、学習したトラックのうねりの分布に応じたフィードフォワード制御によってアーム駆動部134の駆動電圧を調整し、トラックのうねりの影響を低減している。
【0069】
従来の磁気ディスクでは、記録ドットの配置を高密度化するに従い、リードヘッドおよびライトヘッドのトラックに対する位置の制御をより精密に行うため、サーボ領域の数を増加させる必要がある。このため、記録ドットの配置面積効率が低下してしまう。
【0070】
図10に示す磁気ディスク210では、トラックTzの全周に亘って配置されたサーボテストパターン215によってトラックのうねりを学習し、学習した結果に応じてリードヘッド231およびライトヘッド232の位置を補正するので、サーボ領域の数を減少させることができる。N番目のゾーン内のトラックTx+3と、N+1番目のゾーン内のトラックTyとの間にある書込み不能領域が、サーボテストパターン215の配置領域として活用される。
【0071】
次に、情報記録媒体および情報記憶装置の具体的な第3実施形態について説明する。以下の第3実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する
図11は、情報記憶装置の具体的な第3実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図であり、図12は、図11に示す磁気ディスクの一部を示す図である。
【0072】
図11に示すHDD300は、回転ムラ学習回路160を備えていない点、およびホストIF343に暗号化部343Aを備えている点が、図7に示す第1実施形態のHDD100と異なる。また、HDD300は、磁気ディスク310における記録ドットの配置が第1実施形態のHDD100と異なる。第3実施形態のHDD300におけるその他の点は第1実施形態のHDD100と同様である。
【0073】
ホストIF343の暗号化部343Aは、図示しない外部のホストコンピュータから受け取った情報を、所定の暗号鍵情報に基づいて暗号化し、暗号化された情報を磁気ディスク310に記録する。また、リードヘッド131およびリードアンプ141を介して磁気ディスク310から読み出された情報を上記の暗号鍵情報に基づいて複合(暗号解除)する。暗号鍵情報は、予め磁気ディスク310に記録されている。
【0074】
図12に示す磁気ディスク310は、ピッチテストパターン115(図8)の代わりに、暗号鍵パターン315が配置されている点が、図8に示した第1実施形態における磁気ディスク110と異なり、他の点は、図8の磁気ディスク110と同様である。暗号鍵パターン315は、ピッチテストパターン115(図8)の場合と同様に、N番目のゾーンの記録ドット111のうち最内周の記録ドットのトラックTx+3とN+1番目のゾーンの記録ドット112のうち最外周の記録ドットのトラックTyとの間に全周に亘って配置されている。暗号鍵パターン315は、磁気ディスク310のトラックTx,Tx+1,Tx+2,Tx+3,Ty,Ty+1,…の記録ドットに記録された情報の暗号鍵情報を表している。暗号鍵パターン315の各ビット315bは、記録ドット112の角度間隔と同じく、第2の周回角度λ2ずつの角度間隔で並んでいる。暗号鍵パターン315には、暗号化情報がHDD300の製造時に例えばサーボライタ等により記録される。
【0075】
図11に示すHDD300は、N番目のゾーン内のトラックTx+3と、N+1番目のゾーン内のトラックTyとの間にある書込み不能領域が暗号鍵パターン315に活用される。また、暗号鍵パターン415は、書込み不能領域に配置されているので、不用意な書き込みや改ざんによって内容が変化する危険性が抑えられる。
【0076】
次に、上記第3実施形態とは、磁気ディスクの暗号鍵パターンの配置が異なる変形例について説明する。以下の変形例は、図12に示す磁気ディスクとは暗号鍵パターンの配置が異なり、他の要素は同一であるので、HDDの構成としては図11を流用し、磁気ディスクのみ図示するとともに、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0077】
図13は、変形例における磁気ディスクの一部を示す図である。
【0078】
図13に示す磁気ディスク410における暗号鍵パターン415は、磁性材料と非磁性材料の配列パターンで構成されている。より詳細には、記録ドット112の角度間隔と同じ第2の周回角度λ2ずつの角度間隔の位置にあるビット415b,415nが磁性材料であるか非磁性材料であるかによってビット値が表現される。暗号鍵パターン415のうち図13に示す例では、暗号鍵パターン415のうち実線で示すビット415bは記録ビット111,112と同様に磁性体材料で形成されており、一点鎖線で示すビット415nは非磁性体材料で形成されている。磁性材料からなるビット415bは、予めHDDの製造時に互いに同じ向きに磁化されている。磁性材料であるか非磁性材料であるかに応じた磁気のパターンが読み出されることによって、暗号鍵パターン415の情報が読み出される。
【0079】
図13に示す磁気ディスク410は、万が一、情報の書き込み中にライトヘッドが暗号鍵パターン415のトラックTz,Tz+1に移動し、暗号鍵パターン415が書き換わってしまった場合でも、トラックTz,Tz+1を均一に磁化し直すことによって、製造時における情報が回復できる。
【0080】
なお、上述した第3実施形態では、暗号鍵情報を表す暗号鍵パターンについて説明したが、更に別の変形例として、N番目のゾーンの記録ドット111のうち最内周の記録ドットのトラックTx+3とN+1番目のゾーンの記録ドット112のうち最外周の記録ドットのトラックTyとの間には、暗号鍵パターンではなく、磁気ディスクの製造条件を表すパターンを配置したものであってもよい。磁気ディスクの製造条件としては、磁気ディスクを製造する際の原盤として使用されたマスタ原盤を識別するための識別コードや、故障の原因を調査するための製造履歴が含まれる。
【0081】
また、具体的な各実施形態に対する上記説明では、「課題を解決するための手段」で説明した応用形態における磁気パターンの一例として、記録ドットの角度間隔と1:1の整数比を有する周回角度ずつの角度間隔で記録されたプリアンブルが示されているが、ここで磁気パターンは、記録ドットの角度間隔とは所定の整数比を有する角度間隔で記録されたものであればよく、例えば配列の角度間隔が、記録ドットの角度間隔に対し整数分の1であってもよい。
【0082】
以下、上述した基本形態および応用形態を含む種々の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0083】
(付記1)
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って該周回の内側あるいは外側で周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って周回状にビットが並び、該ビットどうしの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えたことを特徴とする情報記録媒体。
【0084】
(付記2)
前記第1の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第1の記録ドットの角度間隔とは所定の整数比を有する角度間隔で記録された第1の磁気パターンと、
前記第2の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第2の記録ドットの角度間隔とは前記所定の整数比を有する角度間隔で記録された第2の磁気パターンとを更に備えたことを特徴とする付記1記載の情報記録媒体。
【0085】
(付記3)
前記ビット列が磁性材料と非磁性材料の配列パターンで構成され、該磁性材料であるか該非磁性材料であるかによってビット値が表現されたものであることを特徴とする付記1または2記載の情報記録媒体。
【0086】
(付記4)
前記ビット列の各ビットが前記基板の周回方向の位置に配された目盛りを表したものであることを特徴とする付記1から3いずれか1項記載の情報記録媒体。
【0087】
(付記5)
前記ビット列が前記第1の記録ドットの周回軌道およびまたは前記第2の記録ドットの周回軌道の基準となる軌道を表したものであることを特徴とする付記1から4いずれか1項記載の情報記録媒体。
【0088】
(付記6)
この情報記憶媒体は情報が暗号化されて記憶されるものであり、
前記ビット列がこの情報記憶媒体に記憶される情報の暗号鍵情報を表したものであることを特徴とする付記1から5いずれか1項記載の情報記録媒体。
【0089】
(付記7)
前記ビット列がこの情報記憶媒体の製造条件を表したものであることを特徴とする付記1から6いずれか1項記載の情報記録媒体。
【0090】
(付記8)
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って所定の幅を有して周回状に並び、互いの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えた情報記憶媒体;
前記第1の記録ドット、前記第2の記録ドット、および前記ビット列それぞれの並びに沿って相対的に移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに記録された情報と該ビット列が表した情報とを再生する再生ヘッド;および
前記第1の記録ドットおよび前記第2の記録ドットそれぞれの並びに沿って相対的に、前記再生ヘッドの移動経路とは前記所定幅以上の距離を置いた移動経路を移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに情報を記録する記録ヘッド;
を備えたことを特徴とする情報記憶装置。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】パターンドメディア方式の磁気ディスクの構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】磁気ディスクにおける各領域の一般的な配置を示す図である。
【図3】パターンドメディア方式の磁気ディスクの記録ドットとライトクロックとの関係を説明する図である。
【図4】ライトプリアンブルが設けられたパターンドメディア方式の磁気ディスクの一部を示す図である。
【図5】図4の磁気ディスクを備えたハードディスク装置(HDD)のブロック図である。
【図6】図4に示す磁気ディスクの一部をリードヘッドおよびライトヘッドとともに示す図である。
【図7】情報記憶装置の具体的な第1実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示すHDDの磁気ディスクの一部を示す図である。
【図9】情報記憶装置の具体的な第2実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示す磁気ディスクの一部を示す図である。
【図11】情報記憶装置の具体的な第3実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図である。
【図12】図11に示す磁気ディスクの一部を示す図である。
【図13】変形例における磁気ディスクの一部を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
100,200,300 HDD
110,210,310,410 磁気ディスク
111 記録ドット(第1の記録ドット)
112 記録ドット(第2の記録ドット)
113 プリアンブル(第1の磁気パターン)
114 プリアンブル(第2の磁気パターン)
115 ピッチテストパターン(ビット列)
131 リードヘッド(再生ヘッド)
132 ライトヘッド(記録ヘッド)
215 サーボテストパターン(ビット列)
315,415 暗号鍵パターン(ビット列)
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体およびこの情報記録媒体を備えた情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報記憶装置に搭載される情報記録媒体の記録密度を向上させる技術として、パターンドメディア方式の磁気ディスクが近年注目されている。パターンドメディア方式の磁気ディスクは、情報の最小単位を記憶する、磁性体からなるドットがディスク上に規則的な配列で並んだ構造を有している。
【0003】
図1は、パターンドメディア方式の磁気ディスクの構造を模式的に示す斜視図である。図1には、円板状の磁気ディスクから切り出された一部が示されている。
【0004】
図1に示す磁気ディスクDは、基板S上に複数の記録ドットQが規則的な配列で並べられた構造を有しており、記録ドットQのそれぞれには1ビット相当の情報が磁気的に記録される。記録ドットは円板の中心の周りに周回状に並んでおり、記録ドットの列はトラックTを形成する。このようなパターンドメディア方式の磁気ディスクは、一般にナノインプリント・リソグラフィと呼ばれる公知の製造プロセスによって製造されるが、本発明は製造プロセスに直接係るものではないため、製造プロセスについては説明を省略する。
【0005】
パターンドメディア方式に限らず一般的な磁気ディスクを搭載した磁気ディスク装置は、磁気ディスク上のサーボパターンを用いて磁気ヘッドを位置決めすることによって目的とする情報の記録再生を行っている。磁気ディスクのトラックには、サーボパターンが配置されたサーボ領域とデータを記録するデータ領域とがトラックに沿って交互に配置されており、回転する磁気ディスクのトラックに沿って相対移動する磁気ヘッドからは、(1回転当たりのサーボ領域の数×磁気ディスクの回転数)で表されるサーボサンプリング周波数でサーボパターンが読み出され磁気ヘッドの位置情報が得られる。この位置情報に基づいて離散時間領域でのサーボ制御が行われ磁気ヘッドが目標とするトラックに追従する。
【0006】
図2は、磁気ディスクにおける各領域の一般的な配置を示す図である。図2のパート(A)には、磁気ディスク90の各領域が磁気ヘッドとともに示されており、パート(B)には、磁気ディスク90の一部領域Rが直線状に展開され拡大して示されている。
【0007】
磁気ディスク90上の領域は半径方向にゾーン0からゾーンiまで複数のゾーンに区分されて使用されている。1つのゾーン内では記録周波数が一定のため1ビット当たりの記録領域の長さが内周から外周に向かって徐々に長くなるが、1ビット当たりの記録領域の長さがすべてのゾーンに亘って一定の範囲に収まるように、外周側のゾーンほど記録周波数が高い構造となっている(ゾーンCAV方式)。サーボ領域とこのサーボ領域に続くデータ領域とでセクタが構成される。なお、図2のパート(A)に示すように、磁気ヘッド91はアーム92の先端に取り付けられており、サーボ領域は、厳密には磁気ヘッドがアームの回転に伴い移動する軌跡93に沿って円弧状に配置されている。
【0008】
パターンドメディア方式に対し、従来広く用いられている連続媒体方式の磁気ディスクでは、一様に連続して広がった磁性膜にサーボ領域およびデータ領域が設けられている。この一方、パターンドメディア方式の磁気ディスクでは、サーボ領域に、サーボ情報に応じた磁性域/非磁性域のパターンが製造プロセスによって形成されており、サーボ領域全体が均一に磁化された場合に、サーボ情報を表す磁気パターンとなる。また、データ領域には微小な記録ドットが離散的に配置される。1つの記録ドットが情報の1ビットに相当し、磁化方向によってビットの値が表される。パターンドメディア方式の磁気ディスクでは、記録ドットと記録ドットとの間には情報が記録できないため、情報の記録は磁気ヘッドを記録ドット上に正確に位置決めした上で行う必要がある。この位置決めには、記録ヘッドを磁気ディスクの半径方向で位置決めすることと、記録ヘッドに信号を供給するタイミングおよび記録ヘッドから信号を読み出すタイミングを記録ドットの通過タイミングに同期させることとが含まれる。
【0009】
図3は、パターンドメディア方式の磁気ディスクの記録ドットとライトクロックとの関係を説明する図である。
【0010】
図3に示すように、パターンドメディア方式の磁気ディスクに情報を記録する場合には、磁気ヘッド95が記録ドットQを通過するタイミングに同期したライトクロックを生成し、このライトクロックに同期させて書き込みデータを磁気ヘッド95に供給することが必要となる。ここでの同期には、周期の一致と位相の一致とがある。例えば、図3に示すライトクロックC1およびライトクロックC2の周期はともに、磁気ヘッド95が記録ドットQを通過する周期と一致しているが、位相は互いにずれている。適切なライトクロックC1のタイミングに基づいて磁気ヘッド95に信号が供給される場合には情報が記録ドットQに記録されるが、不適切なライトクロックC2タイミングに基づいて信号が供給される場合には情報が正常に記録されない。
【0011】
例えば特許文献1には、ライトクロックを記録ドットの通過タイミングに同期させるため、磁気ディスクにタイミングの基準となるライトプリアンブルを設ける技術が提案されている。
【0012】
図4は、ライトプリアンブルが設けられたパターンドメディア方式の磁気ディスクの一部を示す図であり、図5は、図4の磁気ディスクを備えたハードディスク装置(HDD)のブロック図である。図5には主としてライトクロックの生成に関する構成が示されている。
【0013】
図4に示す磁気ディスク910は、サーボパターン912、磁性体のパターンからなるライトプリアンブル913がデータ領域に隣接して設けられている。なお、サーボについては、詳細な形状は省略し、その配置領域を示すに留める。HDD900において回転する磁気ディスク910のトラックに沿って相対移動するヘッドからリードアンプを介して読み出された信号は、PLL回路950とゲート生成回路944に供給される。ゲート生成回路944は、プリアンブルの信号が読み出された期間を表すゲートタイミング信号を生成する。PLL回路950には、サンプルホルダ回路952が備えられており、プリアンブルの期間ではリードアンプ941からの信号と生成するライトクロックとの比較結果をサンプルする一方、プリアンブルに続くデータ領域の期間では比較結果をホールドする。これによって、プリアンブルの信号に同期したライトクロックが生成され、ライトクロックに応じて記録ドットに対する情報の書き込みが行われる。
【特許文献1】特開2003−157507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、磁気ディスク装置では、磁気ヘッドにリードヘッドとライトヘッドが離れて設けられた構成が一般的になっている。リードヘッドとライトヘッドとは互いに異なるトラック上を通過する。
【0015】
図6は、図4に示す磁気ディスクの一部をリードヘッドおよびライトヘッドとともに示す図である。図6には、磁気ディスクのうち、N番目のゾーンとN+1番目のゾーンの一部が示されている。
【0016】
例えば図6に示すように、ライトヘッド932がN+1番目のゾーンにあり、リードヘッド931が隣のN番目のゾーンにある状態では、リードヘッドで読み出された信号に同期したタイミングで、ライトヘッド932によって記録ドット915に情報を記録しようとしても、記録ドット915には情報が適切に記録されない。このように、記録ドットの配列規則が互いに異なる2つのゾーンの境付近には、ライトヘッドによる記録が不能であり利用できない領域がある。
【0017】
上記事情に鑑み、本明細書に記載する1つまたは複数の実施形態は、媒体上における領域の有効活用が図られた情報記録媒体および情報記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成する情報記録媒体の基本形態は、
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って該周回の内側あるいは外側で周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って周回状に並び、互いの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えている。
【0019】
この基本形態によれば、再生ヘッドと記録ヘッドとが離れて配置された記憶装置でこの情報記録媒体を記録および再生する場合、第1の記録ドットの周回と第2の記録ドットの周回との間の領域は、記録ヘッドによる記録ができないが、読取専用の情報を表したビット列を配置することで媒体上の領域が有効活用される。
【0020】
上記基本形態に対し、「前記第1の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第1の記録ドットの角度間隔とは所定の整数比を有する角度間隔で記録された第1の磁気パターンと、
前記第2の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第2の記録ドットの角度間隔とは前記所定の整数比を有する角度間隔で記録された第2の磁気パターンとを更に備えた」という応用形態は好適である。
【0021】
記録ドットの配列の周回の途上に配置された磁気パターンから読み出した信号に同期したタイミングで記録ドットに書き込みを行う形態が知られているが、この好適な応用形態によれば、磁気パターンから読み出した信号に同期したタイミングでは書き込みができない領域に、読取専用の情報を表したビット列を配置することで媒体上の領域が有効に活用される。
【0022】
上記基本形態に対し、「前記ビット列が磁性材料と非磁性材料の配列パターンで構成され、該磁性材料であるか該非磁性材料であるかによってビット値が表現されたものである」という応用形態は好適である。
【0023】
この好適な応用形態によれば、情報記録媒体の使用中にビット列が誤って逆方向に磁化されても、後で均一に磁化し直すことにより情報の回復が可能となる。
【0024】
上記基本形態に対し、「前記ビット列の各ビットが前記基板の周回方向の位置に配した目盛りを表したものである」という応用形態は好適である。
【0025】
この好適な応用形態によれば、ビット列から情報を読み出すことによって、情報記録媒体を回転させた場合の回転ムラを検知することができ、第1の記録ドットと第2の記録ドットとの間の領域が上記ビット列によって有効に活用される。
【0026】
上記基本形態に対し、「前記ビット列が前記第1の記録ドットの周回軌道およびまたは前記第2の記録ドットの周回軌道の基準となる軌道を表したものである」という応用形態は好適である。
【0027】
この好適な応用形態によれば、情報記録媒体を回転させた場合における各記録ドットの周回の径方向における偏差を検知することができ、第1の記録ドットと第2の記録ドットとの間の領域が上記ビット列によって有効に活用される。
【0028】
上記基本形態に対し、「前記ビット列がこの情報記憶媒体の製造条件を表したものである」という応用形態は好適である。
【0029】
この好適な応用形態によれば、第1の記録ドットと第2の記録ドットとの間の領域に、情報記録媒体の製造条件を表したビット列を配置して有効に活用することができる。
【0030】
上記基本形態に対し、「この情報記憶媒体は情報が暗号化されて記憶されるものであり、
前記ビット列がこの情報記憶媒体に記憶される情報の暗号鍵情報を表したものである」という応用形態は好適である。
【0031】
この好適な応用形態によれば、第1の記録ドットと第2の記録ドットとの間の領域に、暗号鍵情報を表したビット列を配置して有効に活用することができる。
【0032】
また、上記目的を達成する情報記憶装置の基本形態は、
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って所定の幅を有して周回状に並び、互いの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えた情報記憶媒体;
前記第1の記録ドット、前記第2の記録ドット、および前記ビット列それぞれの並びに沿って相対的に移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに記録された情報と該ビット列が表した情報とを再生する再生ヘッド;および
前記第1の記録ドットおよび前記第2の記録ドットそれぞれの並びに沿って相対的に、前記再生ヘッドの移動経路とは前記所定幅以上の距離を置いた移動経路を移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに情報を記録する記録ヘッド;
を備えている。
【0033】
記録ヘッドは、再生ヘッドの移動経路とは前記所定幅以上の距離を置いた移動経路を移動するため、角度間隔が互いに異なる第1の記録ドットの周回と第2の記録ドットの周回との間には、記録ヘッドによる記録が行えない領域が生じるが、この領域に読取専用の情報を表したビット列を配置することで媒体上の領域が有効に活用される。
【0034】
なお、情報記憶装置については、ここではその基本形態のみを示すのに留めるが、これは単に重複を避けるためであり、情報記憶装置には、上記の基本形態のみではなく、前述した情報記憶媒体の各応用形態に対応する各種の応用形態が含まれる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、情報記録媒体および情報記憶装置の上記基本形態によれば媒体上における領域が有効に活用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
基本形態および応用形態について上記説明した情報記録媒体および情報記憶装置に対する具体的な実施形態を、以下図面を参照して説明する。
【0037】
図7は、情報記憶装置の具体的な第1実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図である。
【0038】
図7に示すHDD100は、磁気ディスク110、磁気ディスク110を回転駆動するスピンドルモータ120、磁気ディスク110に対する情報の読み書きを行う磁気ヘッド130、磁気ヘッド130を磁気ディスクに沿って移動するアーム133、アーム133を回転駆動するアーム駆動部134、および、電子回路部140を備えている。磁気ディスク110は、上述した基本形態における情報記録媒体の一例に相当する。磁気ヘッド130は、記録用のリードヘッド131と再生用のライトヘッド132を備えており、リードヘッド131とライトヘッド132とは間隔を置いて配置されている。リードヘッド131が上述した基本形態における再生ヘッドの一例に相当し、ライトヘッド132が上述した基本形態における記録ヘッドの一例に相当する。
【0039】
図8は、図7に示すHDDの磁気ディスクの一部を示す図である。
【0040】
図8に示す磁気ディスク110はパターンドメディア方式の磁気ディスクであり、基板Sと、基板S上に並べられた複数の記録ドットQを有する基本的な構造は、図1を参照して説明した構造と同様である。また、この図8に示す磁気ディスク110では、円周上に並んだ記録ドットの列によってトラックTが形成されている点や、各トラックは、サーボパターンが配置されたサーボ領域116によって区切られている点や、磁気ディスク110上の領域が径方向に複数のゾーンに区分されている点が図6に示す磁気ディスクと同じである。ここで径方向とは、磁気ディスク110上のある点において、磁気ディスク110の中心に向かう方向である。図8には、磁気ディスク110のうち、N番目のゾーンとN+1番目のゾーンの一部が示されている。
【0041】
磁気ディスク110のN番目のゾーンには、記録ドット111が同心円状の複数のトラックTx,Tx+1,Tx+2,Tx+3のそれぞれに沿って周回状に並んでいる。ゾーンNの記録ドット111は、互いに等しい周回角度λ1ずつの角度間隔を空けて配置されている。記録ドット111が周回状に配列したトラックTx,Tx+1,Tx+2,Tx+3の周回途上には、プリアンブル113が配置されている。プリアンブル113は、トラックTx,Tx+1,Tx+2,Tx+3に沿った方向(いわゆる周方向)における記録ドット111の角度間隔と1:1の整数比を有する周回角度、すなわち周回角度λ1ずつの角度間隔で記録された磁気パターンである。
【0042】
N番目のゾーンよりも内側のN+1番目のゾーンには、同心円状の複数のトラックTy,Ty+1,…に沿って記録ドット112が並んでいる。N+1番目のゾーンにおける記録ドット112は、互いに、第1の周回角度λ1よりも大きい第2の周回角度λ2ずつの角度間隔を空けて配置されている。記録ドット112の配列の周回であるトラックTy,Ty+1,…のそれぞれの途上には、プリアンブル114が配置されている。プリアンブル114は、トラックTy,Ty+1,…に沿った周方向における記録ドット112の角度間隔と1:1の整数比を有する周回角度、すなわち第2の周回角度λ2ずつの角度間隔で記録された磁気パターンである。
【0043】
ここで、N番目のゾーンに配置された記録ドット111のうちいずれかのトラックに配置された記録ドット111は、上述した基本形態における第1の記録ドット部の一例に相当し、N+1番目のゾーンに配置された記録ドット112のうちいずれかのトラックに配置された記録ドット112は、上述した基本形態における第2の記録ドット部の一例に相当し、ピッチテストパターン115は上述した基本形態におけるビット列の一例に相当する。また、N番目のゾーンのプリアンブル113は、上述した応用形態における第1の磁気パターンの一例に相当し、N+1番目のゾーンのプリアンブル114は、上述した応用形態における第2の磁気パターンの一例に相当する。
【0044】
N番目のゾーンとN+1番目のゾーンとの間に挟まれ、トラックTx+3とトラックTyに沿って周回状に全周に亘ってピッチテストパターン115が並んでいる。
【0045】
ピッチテストパターン115は、読取専用の情報を表す磁気パターンである。ピッチテストパターン115は、記録ドット112の角度間隔と同じく、第2の周回角度λ2ずつの角度間隔で並んだビット115bからなり、各ビット115bは、磁気ディスク110の周方向の位置に配された目盛りを表している。各ビット115bは磁性体材料で構成され予めHDD100の製造段階で磁化されている。
【0046】
また、ピッチテストパターン115は、リードヘッド131の移動経路とライトヘッド132の移動経路との間隔以下の幅で配置されている。ライトヘッド132が相対的に移動する移動経路と、リードヘッド131が相対的に移動する移動経路との間隔は実際には数十トラック分に及ぶが、図8では、見易さのため、ライトヘッド132が磁気ディスク110に対し相対的に移動するトラックと、リードヘッド131が相対的に移動するトラックとの間隔が3トラック分に簡略化され、ピッチテストパターン115の幅が2トラック分に簡略化して示されている。
【0047】
ここで再び図7に戻ってHDD100の電子回路部140について説明する。
【0048】
電子回路部140は、リードヘッド131から出力される信号を増幅するリードアンプ141、ライトヘッド132に供給する信号を増幅するライトアンプ142、リードアンプ141から供給された信号を処理して外部の図示しないホストコンピュータに情報を出力するとともにホストコンピュータから供給される情報に応じた信号をライトアンプ142に供給するホストIF143、リードアンプ141から供給された信号について、プリアンブルの信号が読み出された期間を表すゲートタイミング信号を生成するゲート生成回路144、リードアンプ141を介してリードヘッド131から得られる信号に同期したライトクロックを生成するPLL回路150、書き込みデータをライトクロックに同期してライトアンプに供給するタイミング制御部146、および、磁気ディスクの回転ムラを学習する回転ムラ学習回路160を備えている。
【0049】
PLL回路150は、リードヘッド131からプリアンブルの信号が得られる場合にはプリアンブルの信号に同期したライトクロックを生成するとともに、生成したライトクロックを次のプリアンブルまで供給し、リードヘッド131からテストパターンの信号が得られる場合には、テストパターンの信号に同期したライトクロックを生成する。PLL回路150は、ライトクロックを生成するVCO(Voltage Controlled Oscillator)153、ライトクロックの分周器154、分周されたライトクロックとリードアンプ141から供給された信号の位相を比較する比較器151、ゲート生成回路144からのゲートタイミング信号に応じて比較器151の出力信号をサンプルおよび保持するサンプルホルダ回路152、および、サンプルホルダ回路152の出力にオフセットを加算する加算器155を備えている。
【0050】
回転ムラ学習回路160は、PLL回路150がテストパターンの信号に同期したライトクロックを生成する場合には、ライトクロックの周波数を表す電圧を、磁気ディスク110の回転ムラを表す信号として記憶し、PLL回路150がプリアンブルに同期したライトクロックを生成する場合には、記憶した電圧をPLL回路150に供給してライトクロックの周波数を調整する。回転ムラ学習回路160は、ライトクロックの周波数を表す電圧である比較器151の出力信号をデジタル値に変換するA/Dコンバータ161、A/Dコンバータ161の出力値を記憶するメモリ162、メモリ162から読み出したデジタル値をアナログ値に変換するD/Aコンバータ163を備えている。
【0051】
また、電子回路部140には、各駆動部のドライバ、サーボ回路、装置全体を制御する制御部も備えられているが、説明および図示は省略する。
【0052】
磁気ディスクの回転には回転ムラが生じており、回転ムラには磁気ディスクの1回転ごとに周期的に繰り返す成分が含まれている。図7に示すHDD100では、磁気ディスク110のテストパターンから情報を読み出すことで1回転内での回転ムラの分布を学習し、記録ドット111,112への書き込みの際には、学習した回転ムラの分布に応じたフィードフォワード制御によってライトクロックを調整し、回転ムラの影響を低減している。
【0053】
HDD100の動作を説明する。まず、磁気ディスク110がスピンドルモータ120によって駆動され回転し、アーム133がアーム駆動部134によって回転駆動され、リードヘッド131が、ピッチテストパターン115が配置されたトラックTz上に位置づけられる。リードヘッド131は、トラックTzに沿ってピッチテストパターン115上を相対移動しながら、ピッチテストパターン115の情報を読み出す。
【0054】
リードヘッド131が読み出したピッチテストパターン115の信号は、リードアンプ141を介してPLL回路150に入力される。PLL回路150は、テストパターンの信号と、VCO153で発生するライトクロックを1/N分周した信号とを比較器151で比較し、比較結果の電圧をVCO153にフィードバックする。なお、このときPLL回路150のサンプルホルダ回路152および加算器155は、比較器151の比較結果の電圧値をそのまま通過させる。これにより、リードヘッド131がピッチテストパターン115を通過するタイミングに同期したライトクロックが生成される。このとき、PLL回路150内の比較器151が出力する電圧値の変動は、回転ムラに起因するテストパターンの信号の周波数変動を表している。A/Dコンバータ161は、比較器151が出力する電圧値をデジタル値に変換してメモリ162に記憶させる。メモリ162には、比較器151の電圧値が磁気ディスクの1回転分すなわちテストパターンの1周分に亘り、磁気ディスクの回転角に対応付けて記憶される。メモリ162に記憶された電圧値は、記録ドット111,112の書き込み時に利用される。
【0055】
通常の書き込みでは、アーム133の回転によってライトヘッド132が目標となるトラック、例えば図8に示すトラックとしては最外周のトラックTxに位置づけられる。このとき、リードヘッド131は、ライトヘッド132の移動経路にある最外周のトラックTxから距離Gだけ離れた移動経路にある、最外周のトラックTxから数えて4番目のトラックTx+3付近を移動することとなる。ライトヘッド132が最外周のトラックTx上の目標となるセクタに到達し、リードヘッド131がプリアンブル113に到達すると、まずリードヘッド131が、プリアンブル113の情報を読み出す。
【0056】
リードヘッド131が読み出したプリアンブル113の信号は、リードアンプ141を介してPLL回路150およびゲート生成回路144に供給される。PLL回路150は、プリアンブル113の信号と、ライトクロックを1/N分周した信号とを比較器151で比較し、比較結果の電圧をVCO153にフィードバックする。VCO153は、比較結果の電圧に応じた周波数のライトクロックを出力する。この一方で、ゲート生成回路144は、プリアンブル113の信号が読み出された期間を表すゲートタイミング信号を出力する。したがって、サンプルホルダ回路152はゲートタイミング信号に応じて比較器151による比較結果の電圧値をそのまま通過させる(サンプル状態)。
【0057】
次に、リードヘッド131がプリアンブル113を通過すると、ゲート生成回路144は、ゲートタイミング信号の出力を停止し、サンプルホルダ回路152が直前の電圧値を維持する(ホールド状態)。これによって、リードヘッド131がプリアンブル113を通過した後もライトクロックの周波数が維持される。タイミング制御部146は、PLL回路150のライトクロックに同期して書き込みデータをライトアンプ142に供給する。ライトヘッド132は、ライトアンプ142から供給された信号に応じて、最外周のトラックTxの記録ドット111に情報を記録する。
【0058】
ここで、リードヘッド131がプリアンブル113を通過した後は、比較器151の出力がサンプルホルダ回路152によって固定される。仮に、これに合わせてライトクロックの周波数が固定される場合、磁気ディスク110の回転に含まれる回転ムラによって、リードヘッド131が記録ドット111を通過するタイミングと、ライトクロックの間にずれが生じる。この結果、図3で説明したように、情報が記録ドット111に正常に記録できなくなるおそれがある。
【0059】
図7に示すHDD100では、D/Aコンバータ163が、磁気ディスク110の回転角度に応じた電圧値をメモリ162から読み出しアナログ値に変換する。そして、加算器155がD/Aコンバータ163の出力値をサンプルホルダ回路152の出力値にオフセットとして加算する。
【0060】
このようにして、リードヘッド131がプリアンブル113を通過した後は、ライトクロックの周波数が、ピッチテストパターン115を使って学習された回転ムラの情報に応じてフィードフォワード制御により調整される。
【0061】
図8に示す磁気ディスク110では、N番目のゾーン内の4番目のトラックTx+3と、N+1番目のゾーン内の最外周のトラックTyとの間にある書込み不能領域が、HDD100に回転ムラを学習させるためのピッチテストパターン115に活用されている。
【0062】
次に、情報記録媒体および情報記憶装置の具体的な第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する
図9は、情報記憶装置の具体的な第2実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図であり、図10は、図9に示す磁気ディスクの一部を示す図である。図9では、図7で省略したサーボ回路270が示されており、図7で示したPLL回路およびホストIFが省略されている。また、図9に示すHDD200は、更に、磁気ディスク210におけるトラック位置の径方向変位を学習するトラック変位学習回路280を備えている。
【0063】
図10に示す磁気ディスク210は、ビット列としてのピッチテストパターン115(図8)の代わりに、サーボテストパターン215が配置されている点が、図8に示した第1実施形態における磁気ディスク110と異なり、他の点は、図8の磁気ディスク110と同様である。サーボテストパターン215は、ピッチテストパターン115(図8)の場合と同様に、N番目のゾーンとN+1番目のゾーンとの間に全周に亘って配置されている。サーボテストパターン215のビット215a,215bはN+1番目のゾーンの最外周のトラックTzに沿って千鳥状に交互に配置されている。一方のビット215aは磁気ディスクの内側にずれ、他方のビット215bは外側にずれている。ビット215a,215bのそれぞれは、記録ドット111,112と同様の磁性体材料からなり、予めHDD200の製造段階で互いに等しい程度に磁化されている。サーボテストパターン215の一方のビット215aと他方のビット215bとの間を通るトラックTzは、N番目のゾーンおよびN+1番目のゾーンに配置された記録ドット111,112の周回の基準となる軌道を表している。より詳細には、サーボテストパターン215が配列したN+1番目のゾーンの最外周のトラックTzは、その他のトラックTx,Tx+1,Tx+2,Tx+3,Ty,Ty+1,…と同心円上に配置されている。
【0064】
ここで再び図9に戻ってHDD200のサーボ回路270およびトラック変位学習回路280について説明する。
【0065】
サーボ回路270は、リードヘッド131から得られる信号がサーボ領域116のサーボパターンの信号の場合には、サーボパターンの信号に含まれたトラック番号の情報および目標トラックからのずれを検知し、アーム駆動部134を制御して、リードヘッド131およびライトヘッド132の位置を目標のトラック上に追従させる。サーボ回路270は、サーボ領域116の信号が読み出された期間を表すゲートタイミング信号を生成するゲート生成回路271、リードヘッド131から得られる信号からサーボパターンまたはサーボテストパターン215の信号を復調することによって、サーボエラー信号すなわちリードヘッド131のトラックからの径方向のずれを表す信号を出力するサーボエラー復調回路272、サーボエラー復調回路272から出力されたサーボエラー信号を、ゲート生成回路271からのゲートタイミング信号に応じてサンプルおよび保持するサンプルホルダ回路273、サンプルホルダ回路273の出力にオフセットを加算する加算器274、および、加算器274の出力に応じてアーム駆動部134を駆動する駆動回路275を備えている。
【0066】
例えば、リードヘッド131がサーボテストパターン215の情報を読み出す場合、トラックTzのうねりによって、リードヘッド131が相対的にトラックTz中央より外側にずれると、外側にずれて配置されたビット215bに対する信号振幅が、内側にずれて配置されたビット215aに対する信号振幅よりも大きくなる。この場合、サーボエラー復調回路272は、サーボテストパターン215の2種類のビット215a,215bの信号振幅から、リードヘッド131が相対的にトラックTz中央より外側にずれたことを表す電圧をサーボエラー信号として出力する。リードヘッド131が内側にずれた場合も、そのことを表す電圧がサーボエラー信号として出力される。
【0067】
トラック変位学習回路280は、サーボ回路270がサーボテストパターン215に応じてサーボエラー信号を生成する場合には、サーボエラー信号の電圧を、磁気ディスク110におけるトラック位置の径方向変位を表す信号として学習し、サーボ回路270がサーボ領域116のサーボパターンに応じてサーボエラー信号を生成する場合には、学習した電圧をサーボ回路270に供給して駆動回路275の出力電圧を調整する。トラック変位学習回路280は、サーボエラー信号の電圧をデジタル値に変換するA/Dコンバータ281、A/Dコンバータ281の出力値を記憶するメモリ282、メモリ282から読み出したデジタル値をアナログ値に変換するD/Aコンバータ283を備えている。
【0068】
一般に磁気ディスクのトラックは、製造時の誤差が原因で、厳密には回転中心に対して偏心して配置されており、磁気ディスクを回転させた場合に、1周ごとに繰り返すうねりを有している。1周分のうねりは各トラックにほぼ共通である。図9に示すHDD200では、磁気ディスク210のサーボテストパターン215を用いることで1回転内でのトラックのうねりの分布を学習し、学習したトラックのうねりの分布に応じたフィードフォワード制御によってアーム駆動部134の駆動電圧を調整し、トラックのうねりの影響を低減している。
【0069】
従来の磁気ディスクでは、記録ドットの配置を高密度化するに従い、リードヘッドおよびライトヘッドのトラックに対する位置の制御をより精密に行うため、サーボ領域の数を増加させる必要がある。このため、記録ドットの配置面積効率が低下してしまう。
【0070】
図10に示す磁気ディスク210では、トラックTzの全周に亘って配置されたサーボテストパターン215によってトラックのうねりを学習し、学習した結果に応じてリードヘッド231およびライトヘッド232の位置を補正するので、サーボ領域の数を減少させることができる。N番目のゾーン内のトラックTx+3と、N+1番目のゾーン内のトラックTyとの間にある書込み不能領域が、サーボテストパターン215の配置領域として活用される。
【0071】
次に、情報記録媒体および情報記憶装置の具体的な第3実施形態について説明する。以下の第3実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する
図11は、情報記憶装置の具体的な第3実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図であり、図12は、図11に示す磁気ディスクの一部を示す図である。
【0072】
図11に示すHDD300は、回転ムラ学習回路160を備えていない点、およびホストIF343に暗号化部343Aを備えている点が、図7に示す第1実施形態のHDD100と異なる。また、HDD300は、磁気ディスク310における記録ドットの配置が第1実施形態のHDD100と異なる。第3実施形態のHDD300におけるその他の点は第1実施形態のHDD100と同様である。
【0073】
ホストIF343の暗号化部343Aは、図示しない外部のホストコンピュータから受け取った情報を、所定の暗号鍵情報に基づいて暗号化し、暗号化された情報を磁気ディスク310に記録する。また、リードヘッド131およびリードアンプ141を介して磁気ディスク310から読み出された情報を上記の暗号鍵情報に基づいて複合(暗号解除)する。暗号鍵情報は、予め磁気ディスク310に記録されている。
【0074】
図12に示す磁気ディスク310は、ピッチテストパターン115(図8)の代わりに、暗号鍵パターン315が配置されている点が、図8に示した第1実施形態における磁気ディスク110と異なり、他の点は、図8の磁気ディスク110と同様である。暗号鍵パターン315は、ピッチテストパターン115(図8)の場合と同様に、N番目のゾーンの記録ドット111のうち最内周の記録ドットのトラックTx+3とN+1番目のゾーンの記録ドット112のうち最外周の記録ドットのトラックTyとの間に全周に亘って配置されている。暗号鍵パターン315は、磁気ディスク310のトラックTx,Tx+1,Tx+2,Tx+3,Ty,Ty+1,…の記録ドットに記録された情報の暗号鍵情報を表している。暗号鍵パターン315の各ビット315bは、記録ドット112の角度間隔と同じく、第2の周回角度λ2ずつの角度間隔で並んでいる。暗号鍵パターン315には、暗号化情報がHDD300の製造時に例えばサーボライタ等により記録される。
【0075】
図11に示すHDD300は、N番目のゾーン内のトラックTx+3と、N+1番目のゾーン内のトラックTyとの間にある書込み不能領域が暗号鍵パターン315に活用される。また、暗号鍵パターン415は、書込み不能領域に配置されているので、不用意な書き込みや改ざんによって内容が変化する危険性が抑えられる。
【0076】
次に、上記第3実施形態とは、磁気ディスクの暗号鍵パターンの配置が異なる変形例について説明する。以下の変形例は、図12に示す磁気ディスクとは暗号鍵パターンの配置が異なり、他の要素は同一であるので、HDDの構成としては図11を流用し、磁気ディスクのみ図示するとともに、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0077】
図13は、変形例における磁気ディスクの一部を示す図である。
【0078】
図13に示す磁気ディスク410における暗号鍵パターン415は、磁性材料と非磁性材料の配列パターンで構成されている。より詳細には、記録ドット112の角度間隔と同じ第2の周回角度λ2ずつの角度間隔の位置にあるビット415b,415nが磁性材料であるか非磁性材料であるかによってビット値が表現される。暗号鍵パターン415のうち図13に示す例では、暗号鍵パターン415のうち実線で示すビット415bは記録ビット111,112と同様に磁性体材料で形成されており、一点鎖線で示すビット415nは非磁性体材料で形成されている。磁性材料からなるビット415bは、予めHDDの製造時に互いに同じ向きに磁化されている。磁性材料であるか非磁性材料であるかに応じた磁気のパターンが読み出されることによって、暗号鍵パターン415の情報が読み出される。
【0079】
図13に示す磁気ディスク410は、万が一、情報の書き込み中にライトヘッドが暗号鍵パターン415のトラックTz,Tz+1に移動し、暗号鍵パターン415が書き換わってしまった場合でも、トラックTz,Tz+1を均一に磁化し直すことによって、製造時における情報が回復できる。
【0080】
なお、上述した第3実施形態では、暗号鍵情報を表す暗号鍵パターンについて説明したが、更に別の変形例として、N番目のゾーンの記録ドット111のうち最内周の記録ドットのトラックTx+3とN+1番目のゾーンの記録ドット112のうち最外周の記録ドットのトラックTyとの間には、暗号鍵パターンではなく、磁気ディスクの製造条件を表すパターンを配置したものであってもよい。磁気ディスクの製造条件としては、磁気ディスクを製造する際の原盤として使用されたマスタ原盤を識別するための識別コードや、故障の原因を調査するための製造履歴が含まれる。
【0081】
また、具体的な各実施形態に対する上記説明では、「課題を解決するための手段」で説明した応用形態における磁気パターンの一例として、記録ドットの角度間隔と1:1の整数比を有する周回角度ずつの角度間隔で記録されたプリアンブルが示されているが、ここで磁気パターンは、記録ドットの角度間隔とは所定の整数比を有する角度間隔で記録されたものであればよく、例えば配列の角度間隔が、記録ドットの角度間隔に対し整数分の1であってもよい。
【0082】
以下、上述した基本形態および応用形態を含む種々の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0083】
(付記1)
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って該周回の内側あるいは外側で周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って周回状にビットが並び、該ビットどうしの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えたことを特徴とする情報記録媒体。
【0084】
(付記2)
前記第1の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第1の記録ドットの角度間隔とは所定の整数比を有する角度間隔で記録された第1の磁気パターンと、
前記第2の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第2の記録ドットの角度間隔とは前記所定の整数比を有する角度間隔で記録された第2の磁気パターンとを更に備えたことを特徴とする付記1記載の情報記録媒体。
【0085】
(付記3)
前記ビット列が磁性材料と非磁性材料の配列パターンで構成され、該磁性材料であるか該非磁性材料であるかによってビット値が表現されたものであることを特徴とする付記1または2記載の情報記録媒体。
【0086】
(付記4)
前記ビット列の各ビットが前記基板の周回方向の位置に配された目盛りを表したものであることを特徴とする付記1から3いずれか1項記載の情報記録媒体。
【0087】
(付記5)
前記ビット列が前記第1の記録ドットの周回軌道およびまたは前記第2の記録ドットの周回軌道の基準となる軌道を表したものであることを特徴とする付記1から4いずれか1項記載の情報記録媒体。
【0088】
(付記6)
この情報記憶媒体は情報が暗号化されて記憶されるものであり、
前記ビット列がこの情報記憶媒体に記憶される情報の暗号鍵情報を表したものであることを特徴とする付記1から5いずれか1項記載の情報記録媒体。
【0089】
(付記7)
前記ビット列がこの情報記憶媒体の製造条件を表したものであることを特徴とする付記1から6いずれか1項記載の情報記録媒体。
【0090】
(付記8)
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って所定の幅を有して周回状に並び、互いの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えた情報記憶媒体;
前記第1の記録ドット、前記第2の記録ドット、および前記ビット列それぞれの並びに沿って相対的に移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに記録された情報と該ビット列が表した情報とを再生する再生ヘッド;および
前記第1の記録ドットおよび前記第2の記録ドットそれぞれの並びに沿って相対的に、前記再生ヘッドの移動経路とは前記所定幅以上の距離を置いた移動経路を移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに情報を記録する記録ヘッド;
を備えたことを特徴とする情報記憶装置。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】パターンドメディア方式の磁気ディスクの構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】磁気ディスクにおける各領域の一般的な配置を示す図である。
【図3】パターンドメディア方式の磁気ディスクの記録ドットとライトクロックとの関係を説明する図である。
【図4】ライトプリアンブルが設けられたパターンドメディア方式の磁気ディスクの一部を示す図である。
【図5】図4の磁気ディスクを備えたハードディスク装置(HDD)のブロック図である。
【図6】図4に示す磁気ディスクの一部をリードヘッドおよびライトヘッドとともに示す図である。
【図7】情報記憶装置の具体的な第1実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示すHDDの磁気ディスクの一部を示す図である。
【図9】情報記憶装置の具体的な第2実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示す磁気ディスクの一部を示す図である。
【図11】情報記憶装置の具体的な第3実施形態であるHDDの概略構成を示すブロック図である。
【図12】図11に示す磁気ディスクの一部を示す図である。
【図13】変形例における磁気ディスクの一部を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
100,200,300 HDD
110,210,310,410 磁気ディスク
111 記録ドット(第1の記録ドット)
112 記録ドット(第2の記録ドット)
113 プリアンブル(第1の磁気パターン)
114 プリアンブル(第2の磁気パターン)
115 ピッチテストパターン(ビット列)
131 リードヘッド(再生ヘッド)
132 ライトヘッド(記録ヘッド)
215 サーボテストパターン(ビット列)
315,415 暗号鍵パターン(ビット列)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って該周回の内側あるいは外側で周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って周回状にビットが並び、該ビットどうしの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えたことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記第1の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第1の記録ドットの角度間隔とは所定の整数比を有する角度間隔で記録された第1の磁気パターンと、
前記第2の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第2の記録ドットの角度間隔とは前記所定の整数比を有する角度間隔で記録された第2の磁気パターンとを更に備えたことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記ビット列が磁性材料と非磁性材料の配列パターンで構成され、該磁性材料であるか該非磁性材料であるかによってビット値が表現されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記ビット列の各ビットが前記基板の周回方向の位置に配された目盛りを表したものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記ビット列が前記第1の記録ドットの周回軌道およびまたは前記第2の記録ドットの周回軌道の基準となる軌道を表したものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の情報記録媒体。
【請求項6】
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って所定の幅を有して周回状に並び、互いの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えた情報記憶媒体;
前記第1の記録ドット、前記第2の記録ドット、および前記ビット列それぞれの並びに沿って相対的に移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに記録された情報と該ビット列が表した情報とを再生する再生ヘッド;および
前記第1の記録ドットおよび前記第2の記録ドットそれぞれの並びに沿って相対的に、前記再生ヘッドの移動経路とは前記所定幅以上の距離を置いた移動経路を移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに情報を記録する記録ヘッド;
を備えたことを特徴とする情報記憶装置。
【請求項1】
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って該周回の内側あるいは外側で周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って周回状にビットが並び、該ビットどうしの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えたことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記第1の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第1の記録ドットの角度間隔とは所定の整数比を有する角度間隔で記録された第1の磁気パターンと、
前記第2の記録ドットの配列の周回の途上に、該周回に沿う方向における該第2の記録ドットの角度間隔とは前記所定の整数比を有する角度間隔で記録された第2の磁気パターンとを更に備えたことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記ビット列が磁性材料と非磁性材料の配列パターンで構成され、該磁性材料であるか該非磁性材料であるかによってビット値が表現されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記ビット列の各ビットが前記基板の周回方向の位置に配された目盛りを表したものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記ビット列が前記第1の記録ドットの周回軌道およびまたは前記第2の記録ドットの周回軌道の基準となる軌道を表したものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の情報記録媒体。
【請求項6】
基板と、
前記基板上で周回状に並び互いに所定の周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第1の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回に沿って周回状に並び、互いに、前記周回角度とは異なる周回角度ずつの角度間隔を空けた、磁気的に情報が記録される複数の第2の記録ドットと、
前記第1の記録ドットの周回と前記第2の記録ドットの周回との間に挟まれてそれらの周回に沿って所定の幅を有して周回状に並び、互いの角度間隔が、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットの一方における角度間隔と同じ角度間隔となっている、読取専用の情報を表したビット列とを備えた情報記憶媒体;
前記第1の記録ドット、前記第2の記録ドット、および前記ビット列それぞれの並びに沿って相対的に移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに記録された情報と該ビット列が表した情報とを再生する再生ヘッド;および
前記第1の記録ドットおよび前記第2の記録ドットそれぞれの並びに沿って相対的に、前記再生ヘッドの移動経路とは前記所定幅以上の距離を置いた移動経路を移動しながら、該第1の記録ドットおよび該第2の記録ドットに情報を記録する記録ヘッド;
を備えたことを特徴とする情報記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−223962(P2009−223962A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68169(P2008−68169)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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