情報記録媒体及びその製造方法
【課題】より優れた偽造防止効果を発揮する情報記録媒体を提供する。
【解決手段】本発明の情報記録媒体1は、基材30と、前記基材30上に設けられ、プロセスインキと可視光透過性インキとがこの順に積層した多層構造からなる第1印刷パターン10と、前記基材30上に、前記第1印刷パターン10の周縁の少なくとも一部に沿って及び前記第1印刷パターン10から間隔をあけて設けられ、前記プロセスインキからなる第2印刷パターン20とを具備したことを特徴とする。
【解決手段】本発明の情報記録媒体1は、基材30と、前記基材30上に設けられ、プロセスインキと可視光透過性インキとがこの順に積層した多層構造からなる第1印刷パターン10と、前記基材30上に、前記第1印刷パターン10の周縁の少なくとも一部に沿って及び前記第1印刷パターン10から間隔をあけて設けられ、前記プロセスインキからなる第2印刷パターン20とを具備したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード、パスポート及び有価証券などの媒体には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、このような媒体には、何らかの偽造防止技術を適用することが望ましい。この偽造防止技術の一例として、不可視光の照射により蛍光を発生する蛍光インキを用いた画像形成技術がある。例えば、特許文献1には、紫外線又は赤外線の照射により発光する蛍光体を含んだ感熱転写記録媒体及びそれを用いた画像形成方法が開示されている。
【特許文献1】特開平11−301121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年の偽造手法の巧妙化により、蛍光インキを用いて通常の画像を形成するだけでは、十分な偽造防止効果を達成できなくなりつつある。
【0004】
そこで、本発明は、より優れた偽造防止効果を発揮する情報記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面によると、基材と、前記基材上に設けられ、プロセスインキと可視光透過性インキとがこの順に積層されている多層構造からなる第1印刷パターンと、前記基材上に、前記第1印刷パターンの周縁の少なくとも一部に沿って及び前記第1印刷パターンから間隔をあけて設けられ、前記プロセスインキからなる第2印刷パターンとを具備したことを特徴とする情報記録媒体が提供される。
【0006】
本発明の第2側面によると、支持体上に可視光透過性インキからなる可視光透過性インキパターンを形成することと、前記支持体のうち、前記可視光透過性インキパターンの少なくとも一部が設けられている第1領域と、前記可視光透過性インキパターンが設けられておらず且つ前記第1領域を縁取っている第2領域と、前記可視光透過性インキパターンが設けられておらず且つ前記第2領域を間に挟んで前記第1領域と隣接した第3領域とに、プロセスインキからなる第1プロセスインキ層を転写して、前記第2領域を被覆することなしに前記可視光透過性インキパターンのうち前記第1領域上に位置している部分及び前記第3領域を被覆した第2プロセスインキ層を形成することと、前記可視光透過性インキパターンと前記第2プロセスインキ層とを基材上に熱転写することとを含んだことを特徴とする情報記録媒体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、より優れた偽造防止効果を発揮する情報記録媒体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1及び図2は、本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図である。図3は、図1及び図2に示す情報記録媒体のIII−III線に沿った断面図である。
【0010】
情報記録媒体1は、基材30と、基材30上に設けられた第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20とを含んでいる。
【0011】
基材30としては、例えば、洋紙、板紙及び特殊証券用紙などの紙、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネートなどのプラスチックフィルム又はプラスチック板を使用することができる。基材30は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0012】
第1印刷パターン10は、プロセスインキと可視光透過性インキとがこの順に積層されている多層構造からなる。
【0013】
プロセスインキとしては、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及び黒(K)色のインキ及びこれらの混合物を使用することができる。また、黒色単色の印字を行う場合、カーボンブラックなども使用可能である。
【0014】
可視光透過性インキとしては、例えば、有色又は無色の透明インキを使用する。この透明インキとしては、例えば、不可視光の照射により蛍光を発生する蛍光インキ、典型的には、紫外線又は赤外線の照射により蛍光を発生する蛍光インキを使用することができる。この蛍光インキとしては、例えば、紫外又は赤外蛍光体と透明樹脂との混合物を使用することができる。
【0015】
上記紫外蛍光体としては、例えば、硫化亜鉛及びアルカリ土類金属の酸化物などの高純度母体結晶に微量の付活剤を添加して高温焼成したものを使用することができる。このような紫外蛍光体としては、例えば、ZnS:Cu、Ca2B5O9Cl:Eu2+、CaWO4、ZnO:Zn、Zn2SiO4 :Mn、Y2O2S:Eu,ZnS:Ag,YVO4 :Eu,Y2O3:Eu、Gd2O2S:Tb,La2O2S:Tb又はY3Al5O12:Ceなどを使用することができる。また、複数の紫外蛍光体を使用してもよい。
【0016】
上記赤外蛍光体としては、例えば、YF3:(Yb,Er)、YF3:(Yb,Tm)及びBaFCl:(Yb,Er)などの赤外線の照射により可視光を発生する物質を使用することができる。或いは、LiNd0.9Yb0.1P4O12、LiBi0.2Nd0.7Yb0.1P4 O12、Nd0.9Yb0.1Nd5(MoO4)4、NaNd0.9Yb0.1P4O12、Nd0.8Yb0.2Na5(WO4)4、Nd0.8Yb0.2Na5(Mo0.5W0.5O4)4、Ce0.05Gd0.05Nd0.75Yb0.15Na5(W0.7Mo0.3O4)4、Nd0.9Yb0.1Al3(BO3 )4、Nd0.9Yb0.1Al2.7Cr0.3(BO3)4、Nd0.6Yb0.4P5O14又はNd0.8Yb0.2K3(PO4)2などの赤外線の照射により赤外光を発生する物質を使用してもよい。また、複数の赤外蛍光体を使用してもよい。
【0017】
可視光透過性インキは、上記蛍光体の他に、着色顔料及びバインダ樹脂を更に含んでいてもよい。
【0018】
着色顔料としては、上記プロセスインキが含んでいるのと同様の顔料を使用することができる。
【0019】
バインダ樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、石油樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類、アクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート及びブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、又は、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸エステル類、無水マレイン酸又はアクリロニトリルを使用することができる。
【0020】
上記可視光透過性インキ及び上記プロセスインキは、ワックス及びシリコン樹脂などを更に含んでいてもよい。これらを添加することにより、後述する支持体130からの剥離力や転写感度の調整をすることができる。
【0021】
また、上記可視光透過性インキ及び上記プロセスインキは、シリカ、アルミナ、クレー及び炭酸カルシウムなどの微細フィラーを更に含んでいてもよい。これらを添加することにより、後述する支持体130からの熱転写時の切れを向上させることができる。
【0022】
さらには、上記可視光透過性インキ及び上記プロセスインキは、分散剤及び界面活性剤などを更に含んでいてもよい。これらを添加することにより、上記可視光透過性インキ及び上記プロセスインキが含んでいる各成分の分散性を向上させたり、印刷及び塗工適性を向上させたりすることができる。
【0023】
第2印刷パターン20は、プロセスインキからなる。このプロセスインキとしては、第1印刷パターン10について説明したのと同様のインキを使用する。
【0024】
第2印刷パターン20は、第1印刷パターン10の周縁の少なくとも一部に沿って及び第1印刷パターン10から間隔をあけて設けられている。したがって、図1に例示するように、第1印刷パターン10を構成している可視光透過性インキが無色透明であっても、第1印刷パターン10と第2印刷パターン20とを別々の像として視認することが可能である。
【0025】
これら第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20は、基材30上に凸部を形成している。すなわち、これら第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20を、基材30から浮き上がって視認させることができる。
【0026】
また、第1印刷パターン10は、第2印刷パターン20と比較してより厚みが大きい。そのため、第1印刷パターン10を、第2印刷パターン20及び基材30から更に浮き上がって視認させることができる。
【0027】
さらには、これら印刷パターンの厚み、特には第1印刷パターン10の厚みを十分に大きくすることにより、これら印刷パターンの触覚による認識を可能とすることもできる。
【0028】
また、上記第1印刷パターン10が上記蛍光インキを含んでいる場合、情報記録媒体1を不可視光で照明することにより、図2に示すように、第1印刷パターン10のみに蛍光を発生させることができる。そのため、第1印刷パターン10と第2印刷パターン20とが肉眼で同色に見える場合であっても、不可視光の照射により、これら印刷パターンを別個の像として認識することが可能となる。
【0029】
情報記録媒体1が有している上記の特徴は、カラーコピー機などによる複写によっては再現できない。また、この情報記録媒体1を一般的なプリンタなどによって製造することは極めて困難である。したがって、この情報記録媒体1は、優れた偽造防止効果を有している。
【0030】
この情報記録媒体1は、例えば、以下のようにして製造する。
【0031】
図4乃至図7は、本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図である。
【0032】
この方法では、まず、間接熱転写用の支持体130上に上記可視光透過性インキからなる可視光透過性インキパターン110を形成する(図4)。この支持体130としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリイミド、ナイロン及びポリ塩化ビニリデンなどのプラスチックフィルム、又は、コンデンサペーパー及びパラフィン紙などの紙類を使用することができる。また、この支持体130は、後述するように、中間転写ベルト又は中間転写ローラなどであってもよい。
【0033】
次に、上記支持体130のうち、可視光透過性インキパターン110が設けられている第1領域130Aと、可視光透過性インキパターン110が設けられておらず且つ上記第1領域130Aを縁取っている第2領域130Bと、可視光透過性インキパターン110が設けられておらず且つ上記第2領域130Bを間に挟んで第1領域130Aと隣接した第3領域130Cとに、上記プロセスインキからなる第1プロセスインキ層を転写する。これにより、第2領域130Bを被覆することなしに可視光透過性インキパターン110のうち第1領域130A上に位置している部分及び第3領域130Cを被覆した第2プロセスインキ層120を形成する(図5)。なお、上記第1領域130Aは、支持体130のうち可視光透過性インキパターン110が設けられている領域の一部であってもよく、図5に示すように、可視光透過性インキパターン110と一致していてもよい。
【0034】
続いて、上記可視光透過性インキパターン110と上記第2プロセスインキ層120とを最終媒体用の基材30上に熱転写する(図6及び図7)。このようにして、図1乃至図3に示すような情報記録媒体1を得る。
【0035】
このように、第2プロセスインキ層120は、可視光透過性インキ110が形成された支持体130上に上記第1プロセスインキ層を転写することにより形成する。この場合、支持体130上に可視光透過性インキパターン110が凸部を形成していることに起因して、上記第1乃至第3領域のうち第2領域130Bにはプロセスインキが適用されない。すなわち、この方法により、第2領域130Bに隙間部分を形成することができる。
【0036】
また、この場合、例えば、可視光透過性インキとプロセスインキとを直接転写又はインクジェット法により積層させる場合と比較して、可視光透過性インキとプロセスインキとの接着がより強固になる。したがって、第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20により、段差を確実に形成することが可能となる。
【0037】
さらには、この場合、例えば、可視光透過性インキとプロセスインキとを直接転写又はインクジェット法により積層させる場合と比較して、可視光透過性インキとプロセスインキとの混合がより生じ難くなる。したがって、例えば、可視光透過性インキが蛍光インキである場合には、この蛍光インキが発生する蛍光をより明確に視認することが可能となる。
【0038】
図8は、本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造装置の一例を示す概略図である。
【0039】
この製造装置200は、印刷部210を含んでいる。印刷部210は、ブランク媒体1B上に、熱転写方式によって印刷パターンを形成する。なお、ブランク媒体1Bは、印刷部210において記録すべき情報、例えば個人情報などの個別情報を記録していない媒体である。このブランク媒体1Bに個別情報などを記録することにより、情報記録媒体1が得られる。
【0040】
印刷部210は、中間転写ベルト2101と、繰出ローラ2102と、巻取ローラ2103と、サーマルヘッド2104と、加圧ローラ2105と、転写ローラ2106と、加圧ローラ2107と、ガイドローラ2108とを含んでいる。この印刷部210には、インクリボン2111と、インクリボン2111を繰り出す繰出ローラ2112と、インクリボン2111を巻き取る巻取ローラ2113と、ガイドローラ2114とを含んだリボンカートリッジが着脱可能に装填されている。
【0041】
繰出ローラ2102は、中間転写ベルト2101を繰り出す。ガイドローラ2108は、繰出ローラ2102が繰り出した中間転写ベルト2101を、サーマルヘッド2104と加圧ローラ2105との間及び転写ローラ2106と加圧ローラ2107との間へと順次案内する。巻取ローラ2103は、サーマルヘッド2104と加圧ローラ2105との間及び転写ローラ2106と加圧ローラ2107との間を通過した中間転写ベルト2101を巻き取る。
【0042】
加圧ローラ2105は、サーマルヘッド2104と向き合って配置されている。サーマルヘッド2104と加圧ローラ2105とは、インクリボン2111のインキ層が設けられた面が中間転写ベルト2101と向き合うようにそれらを挟み込み、インクリボン2111の基材テープから中間転写ベルト2101上へとこのインキ層を熱転写する。
【0043】
具体的には、まず、中間転写ベルト2101上に可視光透過性インキパターン110を形成する。その後、同様の方法により、第2プロセスインキ層120を形成する。このようにして、図5に示す構造を得る。
【0044】
転写ローラ2106と加圧ローラ2107とは、互いに向き合って配置されている。転写ローラ2106は、例えば、ヒータを内蔵している。転写ローラ2106と加圧ローラ2107とは、中間転写ベルト2101の可視光透過性インキパターン110及び第2プロセスインキ層120を支持している面がブランク媒体1Bと向き合うようにそれらを挟み込む。これにより、中間転写ベルト2101からブランク媒体1Bへと可視光透過性インキパターン110及び第2プロセスインキ層120を熱転写する。すなわち、ブランク媒体1B上に印刷パターンを形成する。このようにして、図1乃至図3に示すような情報記録媒体1を得る。
【0045】
なお、ここでは、中間転写ベルト2101を使用する構成を採用しているが、その代わりに、中間転写ローラを使用する構成を採用してもよい。また、上記可視光透過性インキパターン110は、インクジェット法などの他の印刷方式で形成してもよい。
【0046】
この情報記録媒体1では、第1印刷パターン10中の可視光透過性インキ層の厚みは、例えば、約0.5μm以上とする。この厚みが小さいと、第1印刷パターン10により生じる凹凸に起因した視覚効果が発揮され難くなく可能性がある。また、可視光透過性インキとして上記蛍光インキを使用する場合には、十分な蛍光強度を得られない可能性がある。
【0047】
この情報記録媒体1では、第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20中のプロセスインキ層の厚みは、例えば、約0.3μm乃至約3μmとする。この厚みが小さい場合、プロセスインキの発色が不十分となる可能性がある。また、この厚みが大きいと、サーマルヘッドによる熱転写が比較的困難となり、階調再現性が低下する可能性がある。
【0048】
この情報記録媒体1において上記可視光透過性インキが蛍光体を含んでいる場合、この蛍光体の含有量は、可視光透過性インキの質量を基準として、約10質量%以上とする。この含有量が小さい場合、十分な蛍光強度が得られない可能性がある。
【0049】
この情報記録媒体1において上記可視光透過性インキがバインダ樹脂を含んでいる場合、その軟化点は、例えば、約40℃乃至約90℃とする。この軟化点が低いと、上記可視光透過性インキのブロッキングが生じやすくなり、第1印刷パターン10により生じた段差が崩れやすくなる可能性がある。この軟化点が高いと、熱転写の感度が低下する可能性がある。
【0050】
また、この場合、上記可視光透過性インキ中のバインダ樹脂の含有量は、可視光透過性インキの質量を基準として、例えば、約10質量%乃至約50質量%とする。この含有量が小さいと、上記可視光透過性インキを含んだ印刷パターンの耐久性が低下し、印字の際の地汚れなどが生じ易くなる可能性がある。また、この含有量が大きいと、上記蛍光体の濃度が相対的に低下し、十分な蛍光強度などを得られない可能性がある。
【0051】
また、支持体130の膜厚は、例えば、約0.1μm乃至約50μmとする。この膜厚が小さいと、支持体130の強度が不十分となる可能性がある。また、この膜厚が大きいと、熱転写の感度が低下する可能性がある。
【0052】
この情報記録媒体1には、様々な変形が可能である。例えば、情報記録媒体1は、基材30の背面に、粘着層を更に備えていてもよい。この場合、情報記録媒体1は、偽造防止効果を備えたステッカーなどとして使用することができる。
【0053】
図9は、図1乃至図3に示す情報記録媒体の一変形例に係る断面図である。
【0054】
この情報記録媒体1は、基材30と第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20との間にプライマ層40が設けられ、最表層として表面層50Aが設けられていること以外は、図1乃至図3を参照しながら説明した情報記録媒体と同様の構成を有している。
【0055】
プライマ層40は、基材30と第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20との接着性を向上させる機能を有している。このプライマ層40の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン又はビニル系樹脂を使用することができる。
【0056】
表面層50Aは、基材30、第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20を被覆するようにして設けられており、これらを保護して情報記録媒体1の耐久性を向上させる機能を有している。この表面層50Aの材料としては、例えば、塩化ゴム系樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ゴム系樹脂、ニトロセルロース系樹脂又はポリエーテル系樹脂を使用することができる。
【0057】
この情報記録媒体1は、例えば、以下のようにして製造する。
【0058】
図10及び図11は、本発明の一変形例に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図である。
【0059】
この方法では、まず、支持体130上に受像層50Bを形成する。この受像層50Bの材料としては、情報記録媒体1における表面層50Aに使用すべき材料を用いる。その後、この受像層50B上に、先に図4、図5及び図8を参照しながら説明したのと同様の方法により、可視光透過性インキパターン110と第2プロセスインキ層120とを形成する。
【0060】
次に、支持体130上に形成された可視光透過性インキパターン110、第2プロセスインキ層120及び受像層50Bを、基材30上に設けられたプライマ層40上へと熱転写する(図10及び図11)。これにより、プライマ層40上に第1印刷パターン10、第2印刷パターン20及び表面層50Aを形成する。このようにして図9に示すような情報記録媒体1を得る。
【0061】
情報記録媒体1は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、情報記録媒体1は、美観に優れた紙又はカードなどとしても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図。
【図2】本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図。
【図3】図1及び図2に示す情報記録媒体のIII−III線に沿った断面図。
【図4】本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【図5】本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【図6】本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【図7】本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【図8】本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造装置の一例を示す概略図。
【図9】図1乃至図3に示す情報記録媒体の一変形例に係る断面図。
【図10】本発明の一変形例に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【図11】本発明の一変形例に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【符号の説明】
【0063】
1…情報記録媒体、1B…ブランク媒体、10…第1印刷パターン、20…第2印刷パターン、30…基材、40…プライマ層、50A…表面層、50B…受像層、110…可視光透過性インキパターン、120…第2プロセスインキ層、130…支持体、130A…第1領域、130B…第2領域、130C…第3領域、200…製造装置、210…印刷部、2101…中間転写ベルト、2102…繰出ローラ、2103…巻取ローラ、2104…サーマルヘッド、2105…加圧ローラ、2106…転写ローラ、2107…加圧ローラ、2108…ガイドローラ、2111…インクリボン、2112…繰出ローラ、2113…巻取ローラ、2114…ガイドローラ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード、パスポート及び有価証券などの媒体には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、このような媒体には、何らかの偽造防止技術を適用することが望ましい。この偽造防止技術の一例として、不可視光の照射により蛍光を発生する蛍光インキを用いた画像形成技術がある。例えば、特許文献1には、紫外線又は赤外線の照射により発光する蛍光体を含んだ感熱転写記録媒体及びそれを用いた画像形成方法が開示されている。
【特許文献1】特開平11−301121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年の偽造手法の巧妙化により、蛍光インキを用いて通常の画像を形成するだけでは、十分な偽造防止効果を達成できなくなりつつある。
【0004】
そこで、本発明は、より優れた偽造防止効果を発揮する情報記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面によると、基材と、前記基材上に設けられ、プロセスインキと可視光透過性インキとがこの順に積層されている多層構造からなる第1印刷パターンと、前記基材上に、前記第1印刷パターンの周縁の少なくとも一部に沿って及び前記第1印刷パターンから間隔をあけて設けられ、前記プロセスインキからなる第2印刷パターンとを具備したことを特徴とする情報記録媒体が提供される。
【0006】
本発明の第2側面によると、支持体上に可視光透過性インキからなる可視光透過性インキパターンを形成することと、前記支持体のうち、前記可視光透過性インキパターンの少なくとも一部が設けられている第1領域と、前記可視光透過性インキパターンが設けられておらず且つ前記第1領域を縁取っている第2領域と、前記可視光透過性インキパターンが設けられておらず且つ前記第2領域を間に挟んで前記第1領域と隣接した第3領域とに、プロセスインキからなる第1プロセスインキ層を転写して、前記第2領域を被覆することなしに前記可視光透過性インキパターンのうち前記第1領域上に位置している部分及び前記第3領域を被覆した第2プロセスインキ層を形成することと、前記可視光透過性インキパターンと前記第2プロセスインキ層とを基材上に熱転写することとを含んだことを特徴とする情報記録媒体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、より優れた偽造防止効果を発揮する情報記録媒体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1及び図2は、本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図である。図3は、図1及び図2に示す情報記録媒体のIII−III線に沿った断面図である。
【0010】
情報記録媒体1は、基材30と、基材30上に設けられた第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20とを含んでいる。
【0011】
基材30としては、例えば、洋紙、板紙及び特殊証券用紙などの紙、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネートなどのプラスチックフィルム又はプラスチック板を使用することができる。基材30は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0012】
第1印刷パターン10は、プロセスインキと可視光透過性インキとがこの順に積層されている多層構造からなる。
【0013】
プロセスインキとしては、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及び黒(K)色のインキ及びこれらの混合物を使用することができる。また、黒色単色の印字を行う場合、カーボンブラックなども使用可能である。
【0014】
可視光透過性インキとしては、例えば、有色又は無色の透明インキを使用する。この透明インキとしては、例えば、不可視光の照射により蛍光を発生する蛍光インキ、典型的には、紫外線又は赤外線の照射により蛍光を発生する蛍光インキを使用することができる。この蛍光インキとしては、例えば、紫外又は赤外蛍光体と透明樹脂との混合物を使用することができる。
【0015】
上記紫外蛍光体としては、例えば、硫化亜鉛及びアルカリ土類金属の酸化物などの高純度母体結晶に微量の付活剤を添加して高温焼成したものを使用することができる。このような紫外蛍光体としては、例えば、ZnS:Cu、Ca2B5O9Cl:Eu2+、CaWO4、ZnO:Zn、Zn2SiO4 :Mn、Y2O2S:Eu,ZnS:Ag,YVO4 :Eu,Y2O3:Eu、Gd2O2S:Tb,La2O2S:Tb又はY3Al5O12:Ceなどを使用することができる。また、複数の紫外蛍光体を使用してもよい。
【0016】
上記赤外蛍光体としては、例えば、YF3:(Yb,Er)、YF3:(Yb,Tm)及びBaFCl:(Yb,Er)などの赤外線の照射により可視光を発生する物質を使用することができる。或いは、LiNd0.9Yb0.1P4O12、LiBi0.2Nd0.7Yb0.1P4 O12、Nd0.9Yb0.1Nd5(MoO4)4、NaNd0.9Yb0.1P4O12、Nd0.8Yb0.2Na5(WO4)4、Nd0.8Yb0.2Na5(Mo0.5W0.5O4)4、Ce0.05Gd0.05Nd0.75Yb0.15Na5(W0.7Mo0.3O4)4、Nd0.9Yb0.1Al3(BO3 )4、Nd0.9Yb0.1Al2.7Cr0.3(BO3)4、Nd0.6Yb0.4P5O14又はNd0.8Yb0.2K3(PO4)2などの赤外線の照射により赤外光を発生する物質を使用してもよい。また、複数の赤外蛍光体を使用してもよい。
【0017】
可視光透過性インキは、上記蛍光体の他に、着色顔料及びバインダ樹脂を更に含んでいてもよい。
【0018】
着色顔料としては、上記プロセスインキが含んでいるのと同様の顔料を使用することができる。
【0019】
バインダ樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、石油樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類、アクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート及びブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、又は、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸エステル類、無水マレイン酸又はアクリロニトリルを使用することができる。
【0020】
上記可視光透過性インキ及び上記プロセスインキは、ワックス及びシリコン樹脂などを更に含んでいてもよい。これらを添加することにより、後述する支持体130からの剥離力や転写感度の調整をすることができる。
【0021】
また、上記可視光透過性インキ及び上記プロセスインキは、シリカ、アルミナ、クレー及び炭酸カルシウムなどの微細フィラーを更に含んでいてもよい。これらを添加することにより、後述する支持体130からの熱転写時の切れを向上させることができる。
【0022】
さらには、上記可視光透過性インキ及び上記プロセスインキは、分散剤及び界面活性剤などを更に含んでいてもよい。これらを添加することにより、上記可視光透過性インキ及び上記プロセスインキが含んでいる各成分の分散性を向上させたり、印刷及び塗工適性を向上させたりすることができる。
【0023】
第2印刷パターン20は、プロセスインキからなる。このプロセスインキとしては、第1印刷パターン10について説明したのと同様のインキを使用する。
【0024】
第2印刷パターン20は、第1印刷パターン10の周縁の少なくとも一部に沿って及び第1印刷パターン10から間隔をあけて設けられている。したがって、図1に例示するように、第1印刷パターン10を構成している可視光透過性インキが無色透明であっても、第1印刷パターン10と第2印刷パターン20とを別々の像として視認することが可能である。
【0025】
これら第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20は、基材30上に凸部を形成している。すなわち、これら第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20を、基材30から浮き上がって視認させることができる。
【0026】
また、第1印刷パターン10は、第2印刷パターン20と比較してより厚みが大きい。そのため、第1印刷パターン10を、第2印刷パターン20及び基材30から更に浮き上がって視認させることができる。
【0027】
さらには、これら印刷パターンの厚み、特には第1印刷パターン10の厚みを十分に大きくすることにより、これら印刷パターンの触覚による認識を可能とすることもできる。
【0028】
また、上記第1印刷パターン10が上記蛍光インキを含んでいる場合、情報記録媒体1を不可視光で照明することにより、図2に示すように、第1印刷パターン10のみに蛍光を発生させることができる。そのため、第1印刷パターン10と第2印刷パターン20とが肉眼で同色に見える場合であっても、不可視光の照射により、これら印刷パターンを別個の像として認識することが可能となる。
【0029】
情報記録媒体1が有している上記の特徴は、カラーコピー機などによる複写によっては再現できない。また、この情報記録媒体1を一般的なプリンタなどによって製造することは極めて困難である。したがって、この情報記録媒体1は、優れた偽造防止効果を有している。
【0030】
この情報記録媒体1は、例えば、以下のようにして製造する。
【0031】
図4乃至図7は、本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図である。
【0032】
この方法では、まず、間接熱転写用の支持体130上に上記可視光透過性インキからなる可視光透過性インキパターン110を形成する(図4)。この支持体130としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリイミド、ナイロン及びポリ塩化ビニリデンなどのプラスチックフィルム、又は、コンデンサペーパー及びパラフィン紙などの紙類を使用することができる。また、この支持体130は、後述するように、中間転写ベルト又は中間転写ローラなどであってもよい。
【0033】
次に、上記支持体130のうち、可視光透過性インキパターン110が設けられている第1領域130Aと、可視光透過性インキパターン110が設けられておらず且つ上記第1領域130Aを縁取っている第2領域130Bと、可視光透過性インキパターン110が設けられておらず且つ上記第2領域130Bを間に挟んで第1領域130Aと隣接した第3領域130Cとに、上記プロセスインキからなる第1プロセスインキ層を転写する。これにより、第2領域130Bを被覆することなしに可視光透過性インキパターン110のうち第1領域130A上に位置している部分及び第3領域130Cを被覆した第2プロセスインキ層120を形成する(図5)。なお、上記第1領域130Aは、支持体130のうち可視光透過性インキパターン110が設けられている領域の一部であってもよく、図5に示すように、可視光透過性インキパターン110と一致していてもよい。
【0034】
続いて、上記可視光透過性インキパターン110と上記第2プロセスインキ層120とを最終媒体用の基材30上に熱転写する(図6及び図7)。このようにして、図1乃至図3に示すような情報記録媒体1を得る。
【0035】
このように、第2プロセスインキ層120は、可視光透過性インキ110が形成された支持体130上に上記第1プロセスインキ層を転写することにより形成する。この場合、支持体130上に可視光透過性インキパターン110が凸部を形成していることに起因して、上記第1乃至第3領域のうち第2領域130Bにはプロセスインキが適用されない。すなわち、この方法により、第2領域130Bに隙間部分を形成することができる。
【0036】
また、この場合、例えば、可視光透過性インキとプロセスインキとを直接転写又はインクジェット法により積層させる場合と比較して、可視光透過性インキとプロセスインキとの接着がより強固になる。したがって、第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20により、段差を確実に形成することが可能となる。
【0037】
さらには、この場合、例えば、可視光透過性インキとプロセスインキとを直接転写又はインクジェット法により積層させる場合と比較して、可視光透過性インキとプロセスインキとの混合がより生じ難くなる。したがって、例えば、可視光透過性インキが蛍光インキである場合には、この蛍光インキが発生する蛍光をより明確に視認することが可能となる。
【0038】
図8は、本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造装置の一例を示す概略図である。
【0039】
この製造装置200は、印刷部210を含んでいる。印刷部210は、ブランク媒体1B上に、熱転写方式によって印刷パターンを形成する。なお、ブランク媒体1Bは、印刷部210において記録すべき情報、例えば個人情報などの個別情報を記録していない媒体である。このブランク媒体1Bに個別情報などを記録することにより、情報記録媒体1が得られる。
【0040】
印刷部210は、中間転写ベルト2101と、繰出ローラ2102と、巻取ローラ2103と、サーマルヘッド2104と、加圧ローラ2105と、転写ローラ2106と、加圧ローラ2107と、ガイドローラ2108とを含んでいる。この印刷部210には、インクリボン2111と、インクリボン2111を繰り出す繰出ローラ2112と、インクリボン2111を巻き取る巻取ローラ2113と、ガイドローラ2114とを含んだリボンカートリッジが着脱可能に装填されている。
【0041】
繰出ローラ2102は、中間転写ベルト2101を繰り出す。ガイドローラ2108は、繰出ローラ2102が繰り出した中間転写ベルト2101を、サーマルヘッド2104と加圧ローラ2105との間及び転写ローラ2106と加圧ローラ2107との間へと順次案内する。巻取ローラ2103は、サーマルヘッド2104と加圧ローラ2105との間及び転写ローラ2106と加圧ローラ2107との間を通過した中間転写ベルト2101を巻き取る。
【0042】
加圧ローラ2105は、サーマルヘッド2104と向き合って配置されている。サーマルヘッド2104と加圧ローラ2105とは、インクリボン2111のインキ層が設けられた面が中間転写ベルト2101と向き合うようにそれらを挟み込み、インクリボン2111の基材テープから中間転写ベルト2101上へとこのインキ層を熱転写する。
【0043】
具体的には、まず、中間転写ベルト2101上に可視光透過性インキパターン110を形成する。その後、同様の方法により、第2プロセスインキ層120を形成する。このようにして、図5に示す構造を得る。
【0044】
転写ローラ2106と加圧ローラ2107とは、互いに向き合って配置されている。転写ローラ2106は、例えば、ヒータを内蔵している。転写ローラ2106と加圧ローラ2107とは、中間転写ベルト2101の可視光透過性インキパターン110及び第2プロセスインキ層120を支持している面がブランク媒体1Bと向き合うようにそれらを挟み込む。これにより、中間転写ベルト2101からブランク媒体1Bへと可視光透過性インキパターン110及び第2プロセスインキ層120を熱転写する。すなわち、ブランク媒体1B上に印刷パターンを形成する。このようにして、図1乃至図3に示すような情報記録媒体1を得る。
【0045】
なお、ここでは、中間転写ベルト2101を使用する構成を採用しているが、その代わりに、中間転写ローラを使用する構成を採用してもよい。また、上記可視光透過性インキパターン110は、インクジェット法などの他の印刷方式で形成してもよい。
【0046】
この情報記録媒体1では、第1印刷パターン10中の可視光透過性インキ層の厚みは、例えば、約0.5μm以上とする。この厚みが小さいと、第1印刷パターン10により生じる凹凸に起因した視覚効果が発揮され難くなく可能性がある。また、可視光透過性インキとして上記蛍光インキを使用する場合には、十分な蛍光強度を得られない可能性がある。
【0047】
この情報記録媒体1では、第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20中のプロセスインキ層の厚みは、例えば、約0.3μm乃至約3μmとする。この厚みが小さい場合、プロセスインキの発色が不十分となる可能性がある。また、この厚みが大きいと、サーマルヘッドによる熱転写が比較的困難となり、階調再現性が低下する可能性がある。
【0048】
この情報記録媒体1において上記可視光透過性インキが蛍光体を含んでいる場合、この蛍光体の含有量は、可視光透過性インキの質量を基準として、約10質量%以上とする。この含有量が小さい場合、十分な蛍光強度が得られない可能性がある。
【0049】
この情報記録媒体1において上記可視光透過性インキがバインダ樹脂を含んでいる場合、その軟化点は、例えば、約40℃乃至約90℃とする。この軟化点が低いと、上記可視光透過性インキのブロッキングが生じやすくなり、第1印刷パターン10により生じた段差が崩れやすくなる可能性がある。この軟化点が高いと、熱転写の感度が低下する可能性がある。
【0050】
また、この場合、上記可視光透過性インキ中のバインダ樹脂の含有量は、可視光透過性インキの質量を基準として、例えば、約10質量%乃至約50質量%とする。この含有量が小さいと、上記可視光透過性インキを含んだ印刷パターンの耐久性が低下し、印字の際の地汚れなどが生じ易くなる可能性がある。また、この含有量が大きいと、上記蛍光体の濃度が相対的に低下し、十分な蛍光強度などを得られない可能性がある。
【0051】
また、支持体130の膜厚は、例えば、約0.1μm乃至約50μmとする。この膜厚が小さいと、支持体130の強度が不十分となる可能性がある。また、この膜厚が大きいと、熱転写の感度が低下する可能性がある。
【0052】
この情報記録媒体1には、様々な変形が可能である。例えば、情報記録媒体1は、基材30の背面に、粘着層を更に備えていてもよい。この場合、情報記録媒体1は、偽造防止効果を備えたステッカーなどとして使用することができる。
【0053】
図9は、図1乃至図3に示す情報記録媒体の一変形例に係る断面図である。
【0054】
この情報記録媒体1は、基材30と第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20との間にプライマ層40が設けられ、最表層として表面層50Aが設けられていること以外は、図1乃至図3を参照しながら説明した情報記録媒体と同様の構成を有している。
【0055】
プライマ層40は、基材30と第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20との接着性を向上させる機能を有している。このプライマ層40の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン又はビニル系樹脂を使用することができる。
【0056】
表面層50Aは、基材30、第1印刷パターン10及び第2印刷パターン20を被覆するようにして設けられており、これらを保護して情報記録媒体1の耐久性を向上させる機能を有している。この表面層50Aの材料としては、例えば、塩化ゴム系樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ゴム系樹脂、ニトロセルロース系樹脂又はポリエーテル系樹脂を使用することができる。
【0057】
この情報記録媒体1は、例えば、以下のようにして製造する。
【0058】
図10及び図11は、本発明の一変形例に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図である。
【0059】
この方法では、まず、支持体130上に受像層50Bを形成する。この受像層50Bの材料としては、情報記録媒体1における表面層50Aに使用すべき材料を用いる。その後、この受像層50B上に、先に図4、図5及び図8を参照しながら説明したのと同様の方法により、可視光透過性インキパターン110と第2プロセスインキ層120とを形成する。
【0060】
次に、支持体130上に形成された可視光透過性インキパターン110、第2プロセスインキ層120及び受像層50Bを、基材30上に設けられたプライマ層40上へと熱転写する(図10及び図11)。これにより、プライマ層40上に第1印刷パターン10、第2印刷パターン20及び表面層50Aを形成する。このようにして図9に示すような情報記録媒体1を得る。
【0061】
情報記録媒体1は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、情報記録媒体1は、美観に優れた紙又はカードなどとしても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図。
【図2】本発明の一態様に係る情報記録媒体を概略的に示す平面図。
【図3】図1及び図2に示す情報記録媒体のIII−III線に沿った断面図。
【図4】本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【図5】本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【図6】本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【図7】本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【図8】本発明の一態様に係る情報記録媒体の製造装置の一例を示す概略図。
【図9】図1乃至図3に示す情報記録媒体の一変形例に係る断面図。
【図10】本発明の一変形例に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【図11】本発明の一変形例に係る情報記録媒体の製造工程の一例を示す概略図。
【符号の説明】
【0063】
1…情報記録媒体、1B…ブランク媒体、10…第1印刷パターン、20…第2印刷パターン、30…基材、40…プライマ層、50A…表面層、50B…受像層、110…可視光透過性インキパターン、120…第2プロセスインキ層、130…支持体、130A…第1領域、130B…第2領域、130C…第3領域、200…製造装置、210…印刷部、2101…中間転写ベルト、2102…繰出ローラ、2103…巻取ローラ、2104…サーマルヘッド、2105…加圧ローラ、2106…転写ローラ、2107…加圧ローラ、2108…ガイドローラ、2111…インクリボン、2112…繰出ローラ、2113…巻取ローラ、2114…ガイドローラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられ、プロセスインキと可視光透過性インキとがこの順に積層されている多層構造からなる第1印刷パターンと、
前記基材上に、前記第1印刷パターンの周縁の少なくとも一部に沿って及び前記第1印刷パターンから間隔をあけて設けられ、前記プロセスインキからなる第2印刷パターンとを具備したことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記可視光透過性インキは、不可視光の照射により蛍光を発生する蛍光インキであることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
支持体上に可視光透過性インキからなる可視光透過性インキパターンを形成することと、
前記支持体のうち、前記可視光透過性インキパターンの少なくとも一部が設けられている第1領域と、前記可視光透過性インキパターンが設けられておらず且つ前記第1領域を縁取っている第2領域と、前記可視光透過性インキパターンが設けられておらず且つ前記第2領域を間に挟んで前記第1領域と隣接した第3領域とに、プロセスインキからなる第1プロセスインキ層を転写して、前記第2領域を被覆することなしに前記可視光透過性インキパターンのうち前記第1領域上に位置している部分及び前記第3領域を被覆した第2プロセスインキ層を形成することと、
前記可視光透過性インキパターンと前記第2プロセスインキ層とを基材上に熱転写することとを含んだことを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられ、プロセスインキと可視光透過性インキとがこの順に積層されている多層構造からなる第1印刷パターンと、
前記基材上に、前記第1印刷パターンの周縁の少なくとも一部に沿って及び前記第1印刷パターンから間隔をあけて設けられ、前記プロセスインキからなる第2印刷パターンとを具備したことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記可視光透過性インキは、不可視光の照射により蛍光を発生する蛍光インキであることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
支持体上に可視光透過性インキからなる可視光透過性インキパターンを形成することと、
前記支持体のうち、前記可視光透過性インキパターンの少なくとも一部が設けられている第1領域と、前記可視光透過性インキパターンが設けられておらず且つ前記第1領域を縁取っている第2領域と、前記可視光透過性インキパターンが設けられておらず且つ前記第2領域を間に挟んで前記第1領域と隣接した第3領域とに、プロセスインキからなる第1プロセスインキ層を転写して、前記第2領域を被覆することなしに前記可視光透過性インキパターンのうち前記第1領域上に位置している部分及び前記第3領域を被覆した第2プロセスインキ層を形成することと、
前記可視光透過性インキパターンと前記第2プロセスインキ層とを基材上に熱転写することとを含んだことを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−143056(P2009−143056A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321079(P2007−321079)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]