説明

情報読取装置および磁気情報読取装置

【課題】情報読取装置の筐体の落下による衝撃から読取部を適切に保護し、情報読取不良の発生を防止する。
【解決手段】退避機構30は、平常時には、読取部20を筺体の側面17から突出する位置に支持するとともに、筺体が落下した場合には、読取部20の少なくとも一部を筐体内に退避させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに記録された情報を読み取る情報読取装置に関する。特にカードに記録された磁気情報を読み取る磁気情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置としては、筐体に形成されたスリットに、情報が記録されたカードをユーザーが手動で通過させることにより、当該カードに記録された情報を磁気ヘッドあるいは光学ヘッドにより読み取る型式のものが知られている。特許文献1には、こうした装置の例として携帯型のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−319468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような携帯型の情報読取装置では、据え付け型のものとは異なり、誤って筐体を落下させた場合にスリットの変形やヘッド自体の破損が生じ、正しく情報を読み取ることができなくなる可能性が高まる。とりわけ情報記録部との位置合わせに比較的高い精度が求められる磁気ヘッドを用いた装置では、こうした可能性が一層顕著なものとなる。
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、筐体の落下による衝撃から読取部を適切に保護し、情報読取不良の発生を防止しうる情報読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するため、本発明は以下に列挙する種々の態様を採り得る。
【0007】
本発明の第1の態様は、情報読取装置であって、筐体と、情報を記録したカードを通過させるスリットと、該スリットを通過する前記カードの前記情報を読み取るヘッドとを備える読取部と、平常時には、前記読取部を前記筺体の外部に突出する位置に支持するとともに、前記筺体が落下した場合には、前記読取部の少なくとも一部を前記筐体内に退避させる退避機構とを備える。
【0008】
このような構成によれば、落下時に読取部の少なくとも一部が、筺体内に退避するため読取部への落下時の衝撃を緩和できる。
【0009】
本発明の第1の態様において、前記退避機構は、前記読取部を前記筺体内部に向けて付勢する付勢部材と、前記付勢部材による付勢力に対抗して前記読取部の前記筺体に対する位置を固定するストッパーと、前記筺体の落下時に、前記ストッパーによる前記読取部の位置固定を解除する解除部とを有する。
【0010】
このような構成によれば、簡易な構成で読取部を筺体内に退避させることができる。
【0011】
本発明の第1の態様において、前記解除部は、前記読取部の近傍において前記筺体から突出するピンを備える。前記ピンの前記平常時における前記筐体からの突出寸法は、前記読取部の前記平常時における前記筺体からの突出寸法より大きい。前記ピンは、前記筐体側へ変位可能に設けられており、前記ピンの変位量に応じて前記読取部の位置固定が解除される。
【0012】
このような構成によれば、情報読取装置が読取部を下に向けた姿勢で落下した場合、ピンが読取部よりも早く地面と接触し、当該ピンの変位により読取部の退避動作が行なわれる。
【0013】
本発明の第1の態様において、前記解除部は、前記筺体の落下を検出する検出部と、前記検出部からの出力信号に応じて前記ストッパーを変位させる動作部とを備える。
【0014】
このような構成によれば、迅速に筺体の落下を検出することができる。
【0015】
特に検出部を加速度センサーにより構成すれば、筐体の落下の途中で読取部の退避動作を遂行することができる。また落下時の筐体の姿勢によらず読取部の退避動作を実行することができる。
【0016】
また、この場合、前記動作部材を、前記出力信号を受信する制御部と、前記制御部からの動作信号により動作するモーターとにより、簡易な構成で実現することができる。
【0017】
本発明の第1の態様において、前記読取部の近傍において前記筐体より突出する保護部材をさらに備え、前記保護部材の前記筐体からの突出寸法は、前記読取部の少なくとも一部が前記筺体内に退避した場合における前記読取部の前記筺体からの突出寸法よりも大とされている。
【0018】
このような構成によれば、異物の衝突から読取部を保護することができる。また読取部全体を筐体内部へ退避させる必要がなくなるため、読取部の筐体内への引き込み量を小さくすることができる。
【0019】
本発明の第1の態様において、前記保護部材は弾性体により形成すれば、異物の衝突等による衝撃を適切に吸収できる。
【0020】
また、前記情報は磁気情報とし、前記ヘッドを磁気ヘッドとすれば、高い位置決め精度が求められる磁気情報読取方式の装置において、読取部の適切な保護を図ることができる。
【0021】
また、前記筺体を電源を収容可能に形成すれば、本態様を携帯型の機器に適用できる。
【0022】
本発明の第2の態様は、磁気情報読取装置であって、筺体と、前記筺体から突出するように設けられた磁気読取部と、前記磁気読取部を前記筺体内部に進入可能に弾性的に支持する支持部とを備える。
【0023】
このような構成によれば、筺体の落下時に、磁気読取部へ作用する衝撃を支持部により吸収できる。
【0024】
本発明の第2の態様において、前記磁気読取部の前記筺体に対する位置を、前記筺体の状態変化に応じて解除可能に固定する固定部をさらに備える。前記支持部は前記磁気読取部を前記筺体の内部に向けて付勢する。
【0025】
このような構成によれば、落下等の状態変化により、磁気読取部を筺体の内部に引き込むことができる。
【0026】
この場合、センサーにより前記筺体の状態変化を検出するように前記固定部を構成してもよく、機械的変位により前記筐体の状態変化を検出するように構成してもよい。
【0027】
また、前記磁気読取部を前記筺体の外部に向けて付勢する付勢部材と、前記磁気読取部の前記筺体の外部への変位を規制し、前記筺体の内部への変位を許容する位置規制部とを前記支持部が備えた構成とすれば、簡易な構成により本態様を実現することができる。
【0028】
また、前記筺体を電源を収容可能に形成すれば、本態様を携帯型の機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る情報読取装置を示す斜視図である。
【図2】図1の情報読取装置を示す上面図である。
【図3】図1の情報読取装置が備える退避機構の動作を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る情報読取装置が備える退避機構の動作を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る情報読取装置を示す上面図である。
【図6】図5の情報読取装置が備える退避機構の動作を模式的に示す図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る情報読取装置が備える退避機構の動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付の図面を参照しつつ本発明について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0031】
図1および図2に本発明の第1の実施形態に係る情報読取装置(磁気情報読取装置)1を示す。情報読取装置1は、カード2をスキャンすることにより、当該カード2の情報記録部3に記録された磁気情報を読み取る携帯型の機器である。情報読取装置1は、筐体10と、読取部20とを備えた構成とされている。
【0032】
筐体10は、片手で持って操作ができる程度の寸法を有し、内部電源4が収容可能な構成とされている。筐体10は、操作部11と、表示部12と、印刷部13とを備えた構成とされている。
【0033】
操作部11は、筐体10の上面における下端部側(図1における左側、図2における下側)に設けられており、複数の操作キーを備えている。ユーザーは操作キーを適宜操作して情報読取装置1に所望の動作を実行させる。
【0034】
表示部12は、筐体10の上面における中央部に設けられており、種々の情報をユーザーに対して表示する。
【0035】
印刷部13は、筐体10の上端側(図1における右側、図2における上側)に設けられており、その内部には、図示しない用紙収容部、用紙搬送機構および印刷ヘッドが設けられている。
【0036】
用紙収容部に収容されたロール紙の先端部が用紙搬送機構により印刷ヘッドに対向する位置へと搬送され、印刷ヘッドによる印刷に供される。印刷ヘッドを通過したロール紙の先端部は用紙搬送機構により用紙出口14へと搬送される。用紙出口14より排出されたロール紙の先端部は切断されて、記録された情報を所望する者に手渡される。
【0037】
読取部20は、スリット21と、磁気ヘッド22(ヘッド、磁気読取部)とを備えた構成とされている。
【0038】
スリット21は、筐体10の幅方向(図2における左右方向)に沿って延設されている。スリット21は読取部20の左右側面および上面において開口しており、カード2の厚さよりも僅かに広い幅を有している。
【0039】
磁気ヘッド22は、スリット21の内壁の一方からスリット21内に突出するように設けられており、スリット21に挿入されたカード2の情報記録部3から磁気情報を読み取るようになっている。
【0040】
読取部20は、スリット21が形成された箇所が開口18から筐体10の外側へ突出して設けられているが、その一部は、筐体10の下端部側面17に形成された開口18を通じて、筐体10の内部に収容されている。
【0041】
図1および図2に示すように、筺体10の内部には、読取部20を支持するための支持部50が設けられている。支持部50は、読取部20を筺体10内部に進入可能に弾性的に支持するものであり、ユーザーが誤って情報読取装置1を落下させた際に、読取部20の少なくとも一部を筐体10の内部に退避させる退避機構30として構成されている。
【0042】
図3に示すように、退避機構30は、ばね31(付勢部材)と、ストッパー35と、ストッパー35を解除するための解除部60とを備えた構成とされている。筐体10の内部にはガイド壁19が設けられており、読取部20の退避路19aを画成している。
【0043】
解除部60は、ピン32と、センサー33(検出部)と、モーター34(動作部)と、モーター駆動部36(制御部)とを備えた構成とされている。
【0044】
ばね31は、上端部31aが筐体10の内部に固定されており、下端部31bが読取部20に接続されている。ばね31は、読取部20を筐体10内に引き込む向きに付勢している。
【0045】
ピン32は、図1および図2にも示すように、読取部20の近傍において筐体10の下端側面17から突出している。具体的には、読取部20の筐体10からの突出寸法よりも大きな突出寸法を有するように突出している。換言すると、平常時においてピン32の先端32aは、読取部20の外側端面20aよりも外側、すなわち下側側面17から離れた位置にある。
【0046】
ピン32は、突出方向に平行な向きに摺動可能に筐体10に取り付けられており、先端32aに外力が作用すると、筐体10の内部に進入可能な構成とされている。
【0047】
ピン32は、少なくともその先端部32aが弾性を有する材料により形成されている。
【0048】
センサー33は、ピン32が一定の寸法だけ筐体10の内部に進入したことを検出すると、検出信号を出力するように構成されている。例えば、センサー33は、ピン32の先端32aと読取部20の外側端面20aの筐体10の下端側面17からの突出量の差分未満の寸法だけピン32が筐体10の内部に進入したことを検出するように構成することができる。
【0049】
モーター34は筐体10の内部に配置されており、モーター軸34aがストッパー35に接続されている。
【0050】
ストッパー35は、モーター軸34aの回転に伴って回動可能とされており、図3の(a)に示される固定位置と図3の(b)に示される解除位置との間を移動できるようになっている。
【0051】
図3の(a)に示すように、ストッパー35が固定位置にあるときは、その一部が退避路19a内に進入し、ばね31の付勢力に対抗して読取部20を筐体10に対して所定の位置に固定する。具体的には、ストッパー35は、読取部20のスリット21が筐体10に形成された開口18を通じて下端側面17の外側に露出する位置に読取部20を固定する。
【0052】
図3の(b)に示すように、ストッパー35が退避路19aから退いて解除位置にあるときは、ばね31の付勢力に対する読取部20の拘束が解除され、ばね31の付勢力により、読取部20がガイド壁19に案内されつつ筐体10の内部に引き込まれる。
【0053】
モーター駆動部36は、センサー33が検出信号を出力するとモーター34を駆動してストッパー35を固定位置から解除位置へ回動させる。すなわち、ピン32が筐体10内に一定量押し込まれたことが検出されると、ストッパー35による読取部20の拘束が解除され、ばね31の付勢力により読取部20が筐体10の内部に引き込まれる。このように、ストッパー35および解除部60は、筺体10の落下等の状態変化により、読取部20の筺体10に対する位置を解除可能に固定する固定部として機能している。
【0054】
図1および図2に示すように、読取部20を挟んでピン32の反対側には、突起41(保護部材)が筐体10の下端側面17からピン32と同方向に突出している。突起41の突出寸法は、カード2のスリット21の通過を妨げない程度とされている。
【0055】
突起41は弾性体からなり、読取部20を挟んでピン32と反対側からの異物の衝突等から読取部20を保護している。
【0056】
以上を踏まえて、本実施形態に係る退避機構30の動作について説明する。図1、図2、および図3の(a)に示すように、平常時すなわちピン32に外力が作用していない状態においては、スリット21は筐体10の外側に露出しており、ユーザーはスリット21にカード2を通過させて情報記録部3に記録された磁気情報を磁気ヘッド22により読み取ることができる。退避機構30のストッパー35は固定位置にあって、ばね31の付勢力に対抗して読取部20を上記の位置に固定している。
【0057】
情報読取装置1が読取部20を下に向けた姿勢で落下した場合、図3の(b)に示すように、筐体10の下端側面17から最も離れた位置にあるピン32の先端32aが読取部20より先に地面Gと接触する。これにより読取部20の地面への直撃を回避することができる。
【0058】
落下の衝撃によりピン32が筐体10の内部に押し込まれ、その寸法が一定値に達したことがセンサー33により検出されると、センサー33が出力する検出信号によりモーター駆動部36がモーター34を駆動し、ストッパー35を固定位置から解除位置へと回動させる。
【0059】
ストッパー35の回動により読取部20に対する拘束が解除され、ばね31の付勢力によって読取部20が筐体10の内部に引き込まれる。上述のようにピン32の先端32aと読取部20の外側端面20aの筐体10の下端側面17からの突出量の差分未満の寸法だけピン32が押し込まれるとセンサー33が作動する構成の場合、読取部20が地面Gに接触する前にストッパー35が解除位置に回動して読取部20を筐体10の内部へ退避させることができる。
【0060】
よって落下の衝撃が読取部20に直接作用することがなく、スリット21および磁気ヘッド22を衝撃から適切に保護することができる。したがってスリット21や磁気ヘッド22の損傷により磁気情報の読み取り不良が生じるおそれを回避することができる。
【0061】
ピン32の押し込みにより退避機構30が作動するのは筐体10の落下時に限られるものではない。情報読取装置1の持ち運び時に筐体10を誤って何らかの物体にぶつけてしまった場合等、ピン32が衝突によって上記の所定量だけ筐体10内に押し込まれれば、退避機構30が作動して読取部20が筐体10内に引き込まれ、衝突の衝撃から読取部20が保護される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の情報読取装置1は、読取部20を弾性的に支持する支持部50を有し、筺体10が落下した場合に、読取部20を筐体10内に退避させる退避機構30を支持部50が備えた構成とされているので、落下時に読取部20を筺体10内に退避させて、読取部20への落下時の衝撃を緩和できる。これにより、スリット20および磁気ヘッド22を衝撃から適切に保護することができる。したがってスリット20や磁気ヘッド22の損傷により情報の読み取り不良が生じるおそれを回避することができ、信頼性の高い機器を実現することができる。
【0063】
この場合、退避機構30を、読取部20を筺体10内部に向けて付勢するばね31と、ばね31に対抗して読取部20の筺体10に対する位置を固定するストッパー35と、ストッパー35による読取部20の位置固定を解除する解除部60により構成したため、簡易な構成で読取部20を筺体内に退避させることができる。
【0064】
さらに、解除部60を、筺体10から読取部20よりも大きな突出寸法で突出させたピン32を有した構成としたため、情報読取装置1が読取部20を下に向けた姿勢で落下した場合、ピン32を読取部20よりも早く地面Gと接触させて、その変位により読取部20の退避動作が行なうことができる。これにより、読取部20の地面の直撃を回避することができ、より安全性の高い構造を実現することができる。
【0065】
また、解除部60を、筺体10の落下を検出するセンサー33と、センサー33からの出力信号に応じてストッパー35を変位させるモーター34と、モーター34を制御するモーター駆動部36とを備えた構成としたため、迅速に筺体10の落下を検出することができる。
【0066】
さらに、弾性体からなる突起41を設けたことにより、ピン32と反対側から読取部20を保護することも可能となり、読取部20をより安全に保護することができる。
【0067】
次に図4を参照しつつ本発明の第2の実施形態に係る情報読取装置1Aについて説明する。第1の実施形態と同一または同等の要素については同一の参照番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0068】
本実施形態に係る情報読取装置1Aは、外観上は第1の実施形態に係る情報読取装置1と相違ない。本実施形態に係る情報読取装置1Aは、支持部50として図4に示す退避機構30Aを備えている点において第1の実施形態に係る情報読取装置1と相違する。
【0069】
図4に示すように、退避機構30Aは、ばね31(付勢部材)と、ストッパー35Aと、ストッパー35Aを解除するための解除部60Aを備えた構成とされている。
【0070】
解除部60Aは、ピン32と、係止機構37とを備えている。係止機構37は、図4の(a)に示される初期位置と図4の(b)に示される退避位置との間で回動可能な構成とされている。係止機構37は、図4の(a)に矢印で示すように、図示しないばね等の付勢部材によって初期位置へ回動するように付勢されている。初期位置において係止機構37の一端部はピン32の後端部と当接可能な位置に配置され、他端部はストッパー35Aと当接可能な位置に配置される。
【0071】
ストッパー35Aは、図4の(a)に示される固定位置と図4の(b)に示される解除位置との間で回動可能な構成とされている。ストッパー35Aは、図4の(a)に矢印で示すように、図示しないばね等の付勢部材によって固定位置へ回動するように付勢されている。この付勢力は、ばね31の付勢力よりも小さく設定されている。
【0072】
図4の(a)に示すように、ストッパー35Aが固定位置にあるときは、その一端部が退避路19a内に進入し、読取部20を筐体10に対して所定の位置に固定する。具体的には、読取部20のスリット21が筐体10に形成された開口18を通じて下端側面17の外側に露出する位置に読取部20を固定する。係止機構37を初期位置へ向けて付勢する力は、ばね31の付勢力よりも大きく設定されており、ばね31の付勢力によって読取部20がストッパー35Aを退避位置へ回動させようとする動きは、係止機構37の他端部にストッパー35Aが当接することにより阻止される。
【0073】
図4の(b)に示すように、ピン32が一定の寸法だけ筐体10の内部に進入すると、ピン32の後端部が係止機構37の一端部に当接し、付勢力に対抗して係止機構37を退避位置へ回動させる。その結果、ストッパー35Aの解除位置への回動が許容され、ばね31の付勢力に対する読取部20の拘束が解除され、ストッパー35Aを固定位置へ回動させる付勢力よりも大きなばね31の付勢力により、読取部20がガイド壁19に案内されつつ筐体10の内部に引き込まれる。
【0074】
以上を踏まえて、本実施形態に係る退避機構30Aの動作について説明する。図1、図2、および図4の(a)に示すように、平常時すなわちピン32に外力が作用していない状態においては、スリット21は筐体10の外側に露出しており、ユーザーはスリット21にカード2を通過させることにより情報記録部3に記録された磁気情報を磁気ヘッド22により読み取らせることができる。退避機構30Aのストッパー35Aは係止機構37により固定位置に係止されており、ばね31の付勢力に対抗して読取部20を上記の位置に固定している。
【0075】
情報読取装置1Aが読取部20を下に向けた状態で落下した場合、図4の(b)に示すように、筐体10の下端側面17から最も離れた位置にあるピン32の先端32aが読取部20より先に地面Gと接触する。これにより読取部20の地面への直撃を回避することができる。
【0076】
落下の衝撃によりピン32が筐体10の内部に押し込まれ、その寸法が一定値に達すると、係止機構37によるストッパー35Aの係止が解除される。これにより読取部20に対する拘束が解除され、ばね31の付勢力によって読取部20が筐体10の内部に引き込まれる。このように、ストッパー35Aおよび解除部60Aは、筺体10の落下等の状態変化により、読取部20の筺体10に対する位置を解除可能に固定する固定部として機能している。
【0077】
ピン32を筐体10の内部へ向けて押し込む力が解除されると、係止機構37は図示しない付勢部材により回動されて初期位置に復帰する。この動作によってピン32が初期位置に圧し戻されると共に、ばね31の付勢力に対抗してストッパー35Aが固定位置へと回動される。これにより読取部20が開口18から筐体10の外側に再び突出し、所定位置に固定される。
【0078】
上述のようにピン32の先端32aと読取部20の外側端面20aの筐体10の下端側面17からの突出量の差分未満の寸法だけピン32が押し込まれると係止機構37の係止が解除される構成の場合、読取部20が地面Gに接触する前にストッパー35Aが解除位置に後退して読取部20を筐体10の内部へ退避させることができる。
【0079】
よって落下の衝撃が読取部20に直接作用することがなく、スリット21および磁気ヘッド22を衝撃から適切に保護することができる。したがってスリット21や磁気ヘッド22の損傷により磁気情報の読み取り不良が生じるおそれを回避することができる。
【0080】
また本実施形態の退避機構30Aは、センサーやモーターといった部品を必要としないため、部品コストや製造コストを抑制することができる。
【0081】
次に図5および図6を参照しつつ本発明の第3の実施形態に係る情報読取装置1Bについて説明する。第1の実施形態と同一または同等の要素については同一の参照番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0082】
本実施形態に係る情報読取装置1Bは、支持部50として図6に示す退避機構30Bを備えている点において第1の実施形態に係る情報読取装置1と相違する。
【0083】
本実施形態に係る退避機構30Bはピン32を備えていない。そのため読取部20を挟んで突起41の反対側には、突起42(保護部材)が筐体10の下端側面17から突起41と同方向に突出している。突起42の突出寸法は、カード2のスリット21の通過を妨げない程度とされている。
【0084】
突起42は弾性体からなり、読取部20を挟んで突起41と反対側からの異物の衝突等から読取部20を保護している。
【0085】
図6に示すように、退避機構30Bは、ばね31(付勢部材)と、ストッパー35と、ストッパー35を解除するための解除部60Bとを備えた構成とされている。
【0086】
解除部60Bは、加速度センサー38(検出部)と、モーター34(動作部)と、モーター駆動部36(制御部)とを備えた構成とされている。
【0087】
加速度センサー38は、筐体10が落下する際の加速度変化を検出すると、検出信号を出力するように構成されている。具体的には、筐体10に作用する鉛直下向きの加速度が略ゼロとなることをもって、筐体10が自由落下中であることを検出し、検出信号を出力する。
【0088】
モーター駆動部36は、加速度センサー38が検出信号を出力するとモーター34を駆動してストッパー35を固定位置から解除位置へ回動させる。すなわち筐体10の落下が検出されると、ストッパー35による読取部20の拘束が解除され、ばね31の付勢力により読取部20が筐体10の内部に引き込まれる。
【0089】
以上を踏まえて、本実施形態に係る退避機構30Bの動作について説明する。図5および図6の(a)に示すように、平常時すなわち通常範囲の重力加速度が検出されている状態においては、スリット21は筐体10の外側に露出しており、ユーザーはスリット21にカード2を通過させることにより情報記録部3に記録された磁気情報を磁気ヘッド22により読み取らせることができる。退避機構30Bのストッパー35は固定位置にあって、ばね31の付勢力に対抗して読取部20を上記の位置に固定している。
【0090】
筐体10が落下中であることを加速度センサー38が検出すると、図6の(b)に示すように、加速度センサー38が出力する検出信号によりモーター駆動部36がモーター34を駆動し、ストッパー35を固定位置から解除位置へと回動させる。
【0091】
ストッパー35の回動により読取部20に対する拘束が解除され、ばね31の付勢力によって読取部20が筐体10の内部に引き込まれる。このように、ストッパー35および解除部60Bは、筺体10の落下等の状態変化により、読取部20の筺体10に対する位置を解除可能に固定する固定部として機能している。
【0092】
よって読取部20が地面Gに接触する前にストッパー35が解除位置に回動し、読取部20を筐体10の内部へ退避させることができるため、落下の衝撃が読取部20に直接作用することがなく、スリット21および磁気ヘッド22を衝撃から適切に保護することができる。したがってスリット21や磁気ヘッド22の損傷により磁気情報の読み取り不良が生じるおそれを回避することができる。
【0093】
また本実施形態の退避機構30Bによれば、筐体10自体が落下中であることを検出するため、筐体10の落下姿勢に依らず読取部20を筐体10の内部に退避させることができる。したがってより確実に読取部20を落下の衝撃による損傷から保護することができる。
【0094】
加速度センサ38が検出するのは筐体10の落下に限られるものではない。例えば読取部20が筐体10より突出する方向に一定値以上の加速度を検出した場合、読取部20の前方に衝突の危険性のある物体が存在するおそれがあると判断し、退避機構30Bを作動させて読取部20を筐体10内に退避させる構成とすることもできる。
【0095】
次に図7を参照しつつ本発明の第4の実施形態に係る情報読取装置1Cについて説明する。第3の実施形態と同一または同等の要素については同一の参照番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0096】
本実施形態に係る情報読取装置1Cは、外観上は第3の実施形態に係る情報読取装置1Bと相違ない。本実施形態に係る情報読取装置1Cは、支持部50Aとして図7に示す退避機構30Cを備えている点において第3の実施形態に係る情報読取装置1Bと相違する。
【0097】
図7に示すように、本実施形態の退避機構30Cは、ばね31A(付勢部材)を備えている。ばね31Aは、読取部20を筐体10から押し出す向きに読取部20を付勢している。
【0098】
読取部20の側面には、筐体10の内部に配置される鍔部20b(位置規制部)が形成されている。鍔部20bの寸法は、その周縁が筐体10の下端側面17に形成された開口18の縁よりも外側に位置するように定められている。
【0099】
よって図7の(a)に示すように、鍔部20bは、ばね31Aの付勢力により下端側面17の内側に当接し、読取部20を筐体10に対して所定の位置に固定する。具体的には、読取部20のスリット21が筐体10に形成された開口18を通じて下端側面17の外側に露出する位置に読取部20を固定できるように、鍔部20bの位置が定められている。
【0100】
読取部20に突出方向と逆向き外力が加えられると、読取部20は、ばね31Aの付勢力に対抗してガイド壁19により画成された退避路19a内に進入可能とされている。
【0101】
以上を踏まえて、本実施形態に係る退避機構30Cの動作について説明する。図5および図7の(a)に示すように、平常時すなわち読取部20に外力が作用していない状態においては、スリット21は筐体10の外側に露出しており、ユーザーはスリット21にカード2を通過させて情報記録部3に記録された磁気情報を磁気ヘッド22により読み取ることができる。
【0102】
情報読取装置1Cが読取部20を下に向けた状態で落下した場合、図7の(b)に示すように、読取部20の一部が最も早く地面Gと接触する。外力が作用した読取部20は筐体10の内部に押し込まれ、ガイド壁19に沿って退避路19a内に進入する。
【0103】
このときばね31Aが緩衝部材の役割を果たすため、読取部20に作用した外力は、読取部20の退避動作と共に吸収される。よって、スリット21および磁気ヘッド22を衝撃から適切に保護することができる。したがってスリット21や磁気ヘッド22の損傷により磁気情報の読み取り不良が生じるおそれを回避することができる。
【0104】
上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる事は勿論である。
【0105】
本発明に係る情報読取装置は、カード2に記録された磁気情報を磁気ヘッド22により読み取る構成に限られない。例えばバーコード等を用いてカードに情報を記録し、スリットを通過する当該バーコード等を光学的に読み取るヘッドを読取部20が備える構成としてもよい。
【0106】
読取部20に付勢力を加える付勢部材は、必ずしもばね31、31Aである必要はない。所定の向きに読取部20を付勢できるのであれば、適宜の構成を採用できる。
【0107】
検出部材(センサー33、加速度センサー38)の出力信号に応じてストッパー35による読取部20の位置固定を解除する動作部材は、モーター34とモーター駆動部36に限られるものではない。例えばストッパー35を読取部20の退避路19aに対して進退させるアクチュエーターを、検出部材の出力信号に応じて動作させる構成としてもよい。また第2の実施形態のように電力を必要としない機構を適宜組み合わせる構成としてもよい。
【0108】
筐体10の下端側面17から突起41、42が突出する寸法は、退避機構の作動により読取部20が筐体10内に引き込まれた状態において、読取部20の外側端面20aよりも外側に突起41、42の先端が位置するように定めればよい。
【0109】
換言すると、読取部20の少なくとも一部が筐体10の内部に退避して、外側端面20aが突起41、42の先端よりも内側に位置していれば、読取部20全体を筐体10内部に引き込む必要はない。この場合、退避機構による読取部20の引き込み量を小さくすることができ、装置構造の小型化や部品・製造コストの抑制に寄与する。
【0110】
ピン32の形状は図示したものに限られない。またピン32の設置位置は筐体10の下側側面17における読取部20の近傍に限られるものではない。情報読取装置1、1Aの重量や重心位置に応じて適宜の位置において適宜の方向に突出するように設けるようにしてもよい。
【0111】
ピン32および突起41、42は、必ずしも弾性体である必要はない。落下や異物の衝突に伴う衝撃をある程度吸収し、読取部20を保護することができるのであれば、適宜の素材を選択できる。また突起41、42の設置は必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0112】
1:情報読取装置、2:カード、4:内部電源、10:筐体、20:読取部、20b:鍔部、21:スリット、22:磁気ヘッド、30:退避機構、31:ばね、32:ピン、33:センサー、34:モーター、35:ストッパー、36:モーター駆動部、37:係止機構、38:加速度センサー、41:突起、50:支持部、60:固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
情報を記録したカードを通過させるスリットと、該スリットを通過する前記カードの前記情報を読み取るヘッドとを備える読取部と、
平常時には、前記読取部を前記筺体の外部に突出する位置に支持するとともに、前記筺体が落下した場合には、前記読取部の少なくとも一部を前記筐体内に退避させる退避機構とを備える、情報読取装置。
【請求項2】
前記退避機構は、
前記読取部を前記筺体内部に向けて付勢する付勢部材と、
前記付勢部材による付勢力に対抗して前記読取部の前記筺体に対する位置を固定するストッパーと、
前記筺体の落下時に、前記ストッパーによる前記読取部の位置固定を解除する解除部とを有する、請求項1に記載の情報読取装置。
【請求項3】
前記解除部は、前記読取部の近傍において前記筺体から突出するピンを備え、
前記ピンの前記平常時における前記筐体からの突出寸法は、前記読取部の前記平常時における前記筺体からの突出寸法より大きく、
前記ピンは、前記筐体側へ変位可能に設けられており、前記ピンの変位量に応じて前記読取部の位置固定が解除される、請求項2に記載の情報読取装置。
【請求項4】
前記解除部は、
前記筺体の落下を検出する検出部と、
前記検出部からの出力信号に応じて前記ストッパーを変位させる動作部とを備える、請求項2に記載の情報読取装置。
【請求項5】
前記検出部は加速度センサーを有する、請求項4に記載の情報読取装置。
【請求項6】
前記動作部は、
前記出力信号を受信する制御部と、
前記制御部からの動作信号により動作するモーターとを有する、請求項4または5に記載の情報読取装置。
【請求項7】
前記読取部の近傍において前記筐体より突出する保護部材をさらに備え、
前記保護部材の前記筐体からの突出寸法は、前記読取部の少なくとも一部が前記筺体内に退避した場合における前記読取部の前記筺体からの突出寸法よりも大とされている、請求項1から6のいずれか一項に記載の情報読取装置。
【請求項8】
前記保護部材は弾性体により形成されている、請求項7に記載の情報読取装置。
【請求項9】
前記情報は磁気情報であり、前記ヘッドは磁気ヘッドである、請求項1から8のいずれか一項に記載の情報読取装置。
【請求項10】
前記筺体は、電源を収容可能に形成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の情報読取装置。
【請求項11】
筺体と、
前記筺体から突出するように設けられた磁気読取部と、
前記磁気読取部を前記筺体内部に進入可能に弾性的に支持する支持部とを備える、磁気情報読取装置。
【請求項12】
前記磁気読取部の前記筺体に対する位置を、前記筺体の状態変化に応じて解除可能に固定する固定部をさらに備え、
前記支持部は前記磁気読取部を前記筺体の内部に向けて付勢する、請求項11に記載の磁気情報読取装置。
【請求項13】
前記固定部は、センサーにより前記筺体の状態変化を検出する、請求項12に記載の磁気情報読取装置。
【請求項14】
前記固定部は、機械的変位により前記筐体の状態変化を検出する、請求項12または13に記載の磁気情報読取装置。
【請求項15】
前記支持部は、
前記磁気読取部を前記筺体の外部に向けて付勢する付勢部材と、
前記磁気読取部の前記筺体の外部への変位を規制し、前記筺体の内部への変位を許容する位置規制部とを備える、請求項11に記載の磁気情報読取装置。
【請求項16】
前記筺体は、電源を収容可能に形成されている、請求項11から15のいずれか一項に記載の磁気情報読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−45323(P2013−45323A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183378(P2011−183378)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】