説明

情報資産価値算出システム及び情報資産価値算出プログラム

【課題】深い専門知識を有さなくとも、一定の業務知識を有する者であれば情報資産価値の算出を行うことを可能とする技術の提供。
【解決手段】各事業計画の準備費用額及び収益予想額を格納しておく事業計画DB18と、情報資産のカテゴリ別及び事業計画の発展段階別に配分比が設定されたテンプレートを複数格納しておくテンプレートDB20と、情報資産のカテゴリ入力欄、事業計画の発展段階入力欄、事業計画入力欄が設けられた画面32をディスプレイ26に表示し、情報資産のカテゴリ、事業計画の発展段階、及び事業計画の特定を促す手段と、特定された情報資産のカテゴリ、事業計画の発展段階に基づきテンプレートDB20から配分比を取得する手段と、特定された事業計画に基づき事業計画DB18から準備費用額及び収益予想額を取得する手段と、準備費用額及び収益予想額の和に配分比を乗じて情報資産の価値を算出する手段と、これをディスプレイ26に出力する手段とを備えた情報資産価値算出システム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報資産価値算出技術に係り、特に、事業の成否を左右するような重要な情報資産の価値を具体的な金額として提示することを可能とするシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業が新規な製品やサービスを需用者に提供する際には、その事業の成否を左右するような重要な情報(キラー情報)が複数存在するのが一般的である。
例えば、ある健康器具の開発に際し被験者から採取したバイタルデータが他社に漏れると、類似品が市場に出回り自社の優位性が脅かされることとなる。したがって、上記のバイタルデータは当該健康器具販売事業の成否を左右するキラー情報ということができる。
また、製品開発に係る試作データや失敗データが発売前に他社に漏れると自社の開発動向を探知され、対抗製品を準備する機会を他社に与えることになるため、試作データや失敗データも当該製品販売事業に関してキラー情報といえる。
【0003】
このように、企業内に蓄積された情報の中には極めて重要で経済的価値の高いものが存在しており、昨今では、各キラー情報の具体的な価格を事前に算定することの必要性が認識されるようになってきている。
例えば、ある情報の秘密性を維持するために一定の設備や人員を要する場合に、そのコストに見合うだけの価値が当該情報に存在するか否かを見極めることが必要となる。
また、ある重要情報の漏洩に備えて保険を掛ける場合に、その保険料を算出するためには当該情報の価値を認識することが不可欠である。
【0004】
このため、これまでも情報資産の価値を算出するための手法が幾つか提案されてきたが、何れも実用の域には達していない。
例えば、非特許文献1では、情報資産の価値を「再構築に必要な費用」と定義されているが、これでは当該情報資産の価値を消極的にしか評価できず、この情報が有する潜在的な価値を積極的に評価するものではない。
これに対し、情報資産価値の評価理論及び当該企業の属する業界事情に精通したエキスパートであれば、個別に各情報の潜在的な価値を鑑定すること自体は不可能ではないが、このようなエキスパートの絶対数が少ないため、各企業内に存在する多数の情報資産について事前に価値を算出することは非現実的である。
【非特許文献1】リスク値の算出/リスク値算出方法 例1[平成16年9月7日検索] インターネットURL:http://www.monthlysec.net/isms/estab/isms_const6.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上記の問題点を解決するために案出されたものであり、情報資産価値の評価理論について深い専門知識を有さなくとも、一定の業務知識を有する者であれば情報資産価値の算出を行うことを可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載した情報資産価値算出システムは、特定の事業計画に係る情報資産の価値を算出するシステムであって、各事業計画の準備費用額及び収益予想額を格納しておく事業計画記憶手段と、少なくとも情報資産のカテゴリ別及び事業計画の発展段階別に配分比が設定されたテンプレートを複数格納しておくテンプレート記憶手段と、少なくとも情報資産のカテゴリ入力欄、事業計画の発展段階入力欄、及び事業計画入力欄が設けられた画面をディスプレイに表示し、情報資産のカテゴリ、事業計画の発展段階、及び事業計画を特定するようにユーザに促す手段と、上記画面を通じてユーザが特定した情報資産のカテゴリ情報及び事業計画の発展段階情報に基づき、上記テンプレート記憶手段から特定の配分比を取得する手段と、上記画面を通じてユーザが特定した事業計画情報に基づき、上記事業計画記憶手段から特定の準備費用額及び収益予想額を取得する手段と、上記準備費用額及び収益予想額の和に上記配分比を乗ずることにより、当該情報資産の価値を算出する手段と、この算出結果をディスプレイやプリンタに出力する手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載した情報資産価値算出システムは、特定の事業計画に係る情報資産の価値を算出するシステムであって、各事業計画の準備費用額及び収益予想額を格納しておく事業計画記憶手段と、少なくとも情報資産のカテゴリ別、事業計画の発展段階別及び情報資産の媒体別に配分比が設定されたテンプレートを複数格納しておくテンプレート記憶手段と、少なくとも情報資産のカテゴリ入力欄、事業計画の発展段階入力欄、情報資産の媒体入力欄及び事業計画入力欄が設けられた画面をディスプレイに表示し、情報資産のカテゴリ、事業計画の発展段階、情報資産の媒体、及び事業計画を特定するようにユーザに促す手段と、上記画面を通じてユーザが特定した情報資産のカテゴリ情報、事業計画の発展段階情報及び情報資産の媒体情報に基づき、上記テンプレート記憶手段から特定の配分比を取得する手段と、上記画面を通じてユーザが特定した事業計画情報に基づき、上記事業計画記憶手段から特定の準備費用額及び収益予想額を取得する手段と、上記準備費用額及び収益予想額の和に上記配分比を乗ずることにより、当該情報資産の価値を算出する手段と、この算出結果をディスプレイやプリンタに出力する手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載した情報資産価値算出システムは、請求項1または2に記載のシステムであって、さらに上記画面に情報資産のユニーク度を示す数値の入力欄が設けられており、上記情報資産の価値を算出する手段が、事業計画の準備費用額及び収益予想額の和に上記配分比及び当該画面を通じてユーザが特定したユニーク度を示す数値(例えば1.0〜0.1)を乗算することにより、情報資産の価値を算出することを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載した情報資産価値算出システムは、請求項1〜3に記載のシステムであって、さらに上記テンプレート記憶手段に格納された特定のテンプレートを表示する画面をディスプレイに表示させ、その配分比を修正するようにユーザに促す手段と、上記画面を通じてユーザが配分比を修正した場合に、上記テンプレート記憶手段に修正後の配分比を更新登録する手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載した情報資産価値算出システムは、請求項1〜4に記載のシステムであって、さらに上記情報資産の価値を算出する手段が、上記画面を通じてユーザが特定した事業の発展段階情報が予め設定された特定の発展段階に該当する場合に、上記準備費用額に対して所定の数値を乗じ、準備費用額を低減させた上で情報資産価値の算出処理を実行することを特徴としている。
【0011】
請求項6に記載した情報資産価値算出プログラムは、特定の事業計画に係る情報資産の価値を算出するプログラムであって、コンピュータを、各事業計画の準備費用額及び収益予想額を格納しておく事業計画記憶手段、少なくとも情報資産のカテゴリ別及び事業計画の発展段階別に配分比が設定されたテンプレートを複数格納しておくテンプレート記憶手段、少なくとも情報資産のカテゴリ入力欄、事業計画の発展段階入力欄、及び事業計画入力欄が設けられた画面をディスプレイに表示し、情報資産のカテゴリ、事業計画の発展段階、及び事業計画を特定するようにユーザに促す手段、上記画面を通じてユーザが特定した情報資産のカテゴリ情報及び事業計画の発展段階情報に基づき、上記テンプレート記憶手段から特定の配分比を取得する手段、上記画面を通じてユーザが特定した事業計画情報に基づき、上記事業計画記憶手段から特定の準備費用額及び収益予想額を取得する手段、上記準備費用額及び収益予想額の和に上記配分比を乗ずることにより、当該情報資産の価値を算出する手段、この算出結果をディスプレイやプリンタに出力する手段として機能させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の情報資産価値算出システム及び請求項6の情報資産価値算出プログラムによれば、ユーザは画面上で情報資産のカテゴリ、事業計画の発展段階、及び関連事業計画を特定するだけで自動的に特定の情報資産に係る資産価値が具体的な金額として算出されることとなり、情報資産価値の評価理論に通じていない者であっても、一定の業務知識さえあれば情報資産価値を算出することが可能となる。
【0013】
請求項2の情報資産価値算出システムの場合も、ユーザは画面上で情報資産のカテゴリ、事業計画の発展段階、情報資産の媒体、及び関連事業計画を特定するだけで自動的に特定の情報資産に係る資産価値が具体的な金額として算出されることとなり、情報資産価値の評価理論に通じていない者であっても、一定の業務知識さえあれば情報資産価値を算出することが可能となる。
また、このシステム及びプログラムによれば、情報資産の媒体種別に応じて資産価値に軽重を付けることが可能となる。
【0014】
請求項3の情報資産価値算出システムによれば、ユーザは各情報資産に固有の価値であるユニーク度を算出結果に反映させることが可能となる。
【0015】
請求項4の情報資産価値算出システムによれば、算出結果に問題がある場合にユーザは配分比を修正してこれを是正することが可能となり、この修正作業を通じて算出結果の精度を高めていくことが可能となる。
【0016】
請求項5の情報資産価値算出システムによれば、準備費用がほとんどかからない事業の初期段階をユーザが特定した場合に、事業計画の準備費用額を算定対象から排除するといったことが可能となり、より実態に適合した算出結果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、この発明に係る情報資産価値算出システム10の機能構成を示すブロック図であり、マウスやキーボード等の入力装置12と、情報資産登録部14と、情報資産データベース16と、事業計画データベース18と、テンプレートデータベース20と、情報資産価値算出部22と、画面生成部24と、ディスプレイ26と、テンプレート修正部28を備えている。
上記情報資産登録部14、情報資産価値算出部22、画面生成部24、及びテンプレート修正部28は、コンピュータ30(PC等)のCPUが、OS及び専用のアプリケーションプログラムに従って必要な処理を実行することによって実現される。
また、情報資産データベース16、事業計画データベース18、及びテンプレートデータベース20は、同コンピュータ30のハードディスク内に設けられている。
【0018】
図2は、情報資産データベース16内に設定されたデータ項目及び登録レコードの一例を示すものであり、同データベース16には、情報資産コード、情報資産名、上位カテゴリ、下位カテゴリ、時間軸、媒体種別、関連事業計画、ユニーク度、資産価値の各データ項目が設定されている。
この情報資産データベース16には、このシステム10を用いて算出された情報資産価値が、その属性情報と関連付けて順に格納される。
【0019】
図3は、事業計画データベース18内に設定されたデータ項目及び登録レコードの一例を示すものであり、同データベース18には、事業計画コード、事業計画名、準備費用額、収益予想額の各データ項目が設定されている。
この事業計画データベース18には、ユーザが属する企業における全ての事業計画が事前に登録されている。
【0020】
図4は、テンプレートデータベース20内に設定されたデータ項目及び登録レコードの一例を示すものであり、同データベース20には、テンプレートコード、上位カテゴリ、下位カテゴリ、時間軸、媒体種別、重み値の各データ項目が設定されている。
このテンプレートデータベース20には、情報資産の上位カテゴリー、下位カテゴリー、時間軸、媒体種別の組合せパターン毎に、重み値(配分比)が1.0〜0.0の範囲で予め設定されている。
【0021】
つぎに、図5のフローチャートに従い、このシステム10を用いて特定の情報資産の価値を算出する際の処理手順について説明する。
まず、ユーザがPC30上で専用のアプリケーションプログラムを立ち上げると、画面生成部24によって資産価値算出用の基本画面が生成され、ディスプレイに表示される(S10)。
図6はこの基本画面32を示すものであり、情報資産名入力欄34、上位カテゴリ選択欄36、下位カテゴリ選択欄38、時間軸選択欄40、媒体種別選択欄42、関連事業計画選択欄44、ユニーク度入力欄46が設けられている。
これに対しユーザは、情報資産名入力欄34に目的の情報資産名(例えばBCP事業のシステム設計書)を打鍵入力する。
【0022】
つぎにユーザは、上位カテゴリ選択欄36のプルダウンボタン48をクリックし、展開表示されるメニューの中から当該情報資産が属する上位カテゴリ(例えば「技術情報」)を選択する。
この結果、下位カテゴリ選択欄38には、ユーザが選択した上位カテゴリに属する下位カテゴリが絞り込み表示される。
これに対しユーザは、当該情報資産が属する下位カテゴリのラジオボタンにチェックを入れ、一つの下位カテゴリ(例えば「設計書」)を特定する。
【0023】
上位カテゴリとしては、上記の技術情報の他に、例えば経営戦略情報、個人情報、営業情報、会計情報等が存在している。
また、各上位カテゴリには、固有の下位カテゴリがそれぞれ関連付けられている。
この上位カテゴリ自体は、下位カテゴリのインデックスとしての役目を果たすものである。
【0024】
つぎにユーザは、時間軸選択欄40に表示された企画段階、準備段階、提供段階の何れかのラジオボタンにチェックを入れ、一つの時間軸(例えば「準備段階」)を特定する。
この時間軸とは、当該情報資産が関連する事業計画の発展段階(進行状況)を指すものであり、この中の一つを特定することで、ユーザは当該情報資産の価値を事業計画の発展段階毎に算出することが可能となる。
例えばユーザが「企画段階」を選択すると、BCP事業の企画段階における当該設計書の資産価値が算出される。また、ユーザが「準備段階」を選択すると、BCP事業の準備段階における当該設計書の資産価値が算出される。さらに、ユーザが「提供段階」を選択すると、BCP事業において商品やサービスがリリースされた後における当該設計書の資産価値が算出されることとなる。
【0025】
つぎにユーザは、媒体種別選択欄42に表示された紙媒体、電子媒体、非文書化ノウハウ、その他の何れかのラジオボタンにチェックを入れ、一つの媒体種別(例えば「電子媒体」)を特定する。
【0026】
つぎにユーザは、関連事業計画選択欄44のプルダウンボタン50をクリックし、展開表示されるメニューの中から当該情報資産が関連する事業計画(例えば「BCP事業」)を選択する。
上記プルダウンメニューには、事業計画データベース18内に登録された全ての事業計画の名称及びコードが列挙されている(図示省略)。
【0027】
つぎにユーザは、ユニーク度入力欄46に1.0〜0.1の範囲でユニーク度を示す数値を打鍵入力する。
例えば、目的の情報資産が独自性や顧客アピール性、技術的進歩性、拡張性、模倣困難性を兼ね備えた極めてユニークなものである場合、この設定欄に1.0を設定する。これに対し、ややユニーク度に欠ける場合には0.7を、かなりユニーク度が欠ける場合には0.5を設定する。
このユニーク度の設定は任意的な設定事項であり、ブランクのままの場合には1.0として後述の算出処理が実行される。
【0028】
基本画面32に対する必要な入力や選択作業を済ませたユーザは、算出ボタン52をクリックし、上記の入力パラメータにおける情報資産価値の算出をシステム10に対して求める。
これを受け付けた情報資産価値算出部22は(S12)、ユーザの入力パラメータとテンプレートデータベース20及び事業計画データベース18内の登録情報とを比較することにより、具体的な資産価値を算出する。
以下に、その算出のプロセスを示す。
【0029】
まず情報資産価値算出部22はテンプレートデータベース20を参照し、ユーザが選択入力した「上位カテゴリ−下位カテゴリ−時間軸−媒体種別」にマッチするテンプレートを特定すると共に、その重み値を取得する(S14)。
ここでは、「技術情報−設計書−準備段階−電子媒体」にマッチするコード0025のテンプレートが特定され、重み値:0.3が取得される(図4参照)。
つぎに情報資産価値算出部22は事業計画データベース18を参照し、ユーザが選択入力した事業計画(BCP事業)の準備費用額(3億円)及び収益予想額(10億円)を取得する(S16)。
つぎに情報資産価値算出部22は、上記重み値、準備費用額及び収益予想額を以下の数式に代入することにより、当該情報資産の価格を算出する(S18)。
情報資産価値=(準備費用額+収益予想額)×重み値×ユニーク度
具体的には、(3億円+10億円)×0.3×1.0=3億9千万円となり、BCP事業のシステム設計書の準備段階における資産価値が求められる。
この資産価値の算出結果は、上記基本画面32の情報資産価値表示欄54に表示される(S20)。
これに対しユーザが登録ボタン56をクリックすると、情報資産登録部14によって今回の入力パラメータ及び算出結果が情報資産データベース16内に格納される(S22)。
【0030】
つぎに、このシステム10における情報資産価値算出の基本思想について説明する。
まず第1に、ある事業計画が執行不能に陥った場合の損失総額は、それまでの総投資額(総コスト額)のみならず、得べかりし利益をも加えるべきであるとの考え方に立脚している。
このため、上記の計算式では準備費用額の他に将来の収益予想額(収益期待額)をも情報資産価値の算出基準として利用している。
因みに、上記準備費用額には、当該情報資産が関係する事業計画に費やされる人件費や設備費、ライセンス料、研究開発費、マーケティング費等が広く含まれる。また、現実に支出された金額に限定されず、事業計画時に計上された予測額でもよい。
【0031】
第2に、各情報資産の価値は、事業計画のステージ毎に変化するという考え方を採用している。例えば、ある商品やサービスの企画書が情報資産である場合、当該情報資産は事業の企画段階においては高い貢献度を有しているが、次の準備段階に移行すると設計書や消費者動向調査情報、特許情報など他の情報資産の比重が高くなり、企画書の価値は相対的に低下することとなる。
このため、テンプレートデータベース20内には各時間軸毎に異なる重み値を備えたテンプレートが格納されており、ユーザが選択した時間軸に応じた資産価値が算出されるように仕組まれている。
【0032】
第3に、各情報資産の価値は媒体種別によって異なる場合もあり得るという考え方を採用している。例えば、文書化されていないノウハウよりも、文書化されたマニュアルの方が価値が高いと判断すべき場合がある。
このため、テンプレートデータベース20内には媒体種別毎に異なる重み値を備えたテンプレートが格納されており、ユーザが選択した媒体種別に応じた資産価値が算出されるように仕組まれている。
ただし、情報資産の類型によっては文書化されていないのが常態といえるものがあり、一概に媒体種別によって価値が左右されるともいえない場合があるため、媒体種別毎に異なる重み値を備えたテンプレートを用意することなく運用することもできる。
この場合、ユーザが入力した媒体種別データは、情報資産の単なる属性データとしてのみ機能することとなる。
【0033】
第4に、各情報資産の価値はそのユニーク度に応じて評価されるべきであるとの考え方に立脚している。
例えば、情報資産としてのある企画書が、極めてユニーク度の高い事業計画を提案するものである場合は高い資産価値が認められるべきであるのに対し、一般的な手法に基づいて収集された消費者動向調査情報には比較的低い資産価値が認められるべきである。
このためユーザは、基本画面32において当該情報資産のユニーク度を設定することができ、情報資産価値算出部22がこのユニーク度の設定値を算出結果に反映できるようにしている。
ただし、このユニーク度を設定するためには、ユーザの側に比較的高度の専門知識が必要となるため、このユニーク度の設定を省略することもできる。この場合、情報資産価値算出部22はユニーク度を1.0として資産価値を算出する。
【0034】
つぎに、テンプレートデータベース20に設定された重み値の修正処理について説明する。
すなわち、情報資産価値算出部22によって算出され、ディスプレイ26に表示された結果が妥当性を欠くと判断した場合、ユーザはテンプレートの修正ボタン58をクリックする(S24)。
この結果、画面生成部24はユーザが入力したパラメータに合致するテンプレートをテンプレートデータベース20から抽出し、ディスプレイ26に表示させる(S26)。
図7はその一例を示すものであり、基本画面32の下方にテンプレート表示欄60が出現し、対応のテンプレートが表示される。
これに対しユーザは、重み値を0.3から他の値(例えば0.4)に修正し、算出ボタン52を再度クリックする。
これに対し情報資産価値算出部22は、新たな重み値(0.4)に基づいた算出処理を実行し(S28)、情報資産価値表示欄54にその算出結果を表示させる(S30)。
【0035】
この算出結果に満足したユーザは、登録ボタン56をクリックして情報資産データベース16のレコードを更新させる(S32)。つぎにユーザは、テンプレートの更新ボタン62をクリックし、テンプレートの更新を要求する。これを受けたテンプレート修正部28は、テンプレートデータベース20における該当レコードの重み値を0.3から0.4に更新させる(S34)。
これに対し、再計算の結果になお納得がいかない場合、ユーザは妥当な結果が得られるまで重み値の修正及び再計算を繰り返せばよい。
【0036】
ところで、テンプレートに設定された重み値を修正するためには、その前提として情報資産価値算出部22による算出結果が妥当であるか否かを判断する必要があり、この時点ではユーザの側に比較的高度な専門知識が要求される。
しかしながら、システム10の運用を通じて資産価値の算出及び重み値の修正を繰り返す中に各テンプレートの妥当性が高まっていき、やがて高度な専門知識を有しない者であっても情報資産の価値を算出できるようになることが期待できる。
【0037】
この発明は上記のように、ある事業の成否に関わる重要な情報資産(キラー情報)の価値を算出するに際しては、その事業の準備費用だけでなく、将来の収益予想額をも基礎において算出すべきであるとの思想に立脚している。
そして、キラー情報を当該情報を喪失すれば事業自体が成り立たなくなるほど重要な情報と定義付けるとするならば、本来、各情報資産について「準備費用+収益予想額=資産価値」として認定すべきであるという論理も成立し得る。
しかしながら、これではある事業の成立に10件の情報資産が関わっている場合、各情報資産の総計が事業規模を遙かに超える金額となり、社会通念上の妥当性を欠く結果となる。
そこで、上記のように予め情報資産の類型毎に重み値を設定しておき、適当な比率で配分するようにしているのである。
【0038】
ただし、このシステム10によってある事業に係る全ての情報資産を算出した結果、その総計が事業規模(準備費用+収益予想額)を越えたものになることを排除するものではない。
すなわち、各情報資産の価値の総計が事業規模内に収るようにするためには、全ての関係情報資産が揃った時点でないと個々の情報資産額を算出できないことになるが、このシステム10は他の情報資産と切り離して特定の情報資産単体の価値を算出することを念頭に置いている。
また、無理に各情報資産の価値の総計が事業規模内に収るように調整すると、情報資産の数が多い事業ほど各情報資産の価値が低く見積もられることになり、実態と乖離した結果が生じてしまう。
【0039】
なお、事業の企画段階においては準備費用をほとんど要しないため、時間軸として「企画段階」が設定された情報資産の価値算出要求に対しては、準備費用額に0を乗ずることによってこれを排除することも可能である。
例えば、準備費用額=10億円、収益予想額=100億円の事業計画に係る企画書の、企画段階における資産価値を算出する場合、以下の通りとなる(ただし、重み値=1.0、ユニーク度=1.0とする)。
情報資産価値=(10億円×0+100億円)×1.0×1.0=100億円
【0040】
あるいは、時間軸の選択肢を企画段階前期、企画段階後期、準備段階、提供段階というように細分化し、企画段階前期には準備資金がほとんど掛らないため0を乗算し、企画段階後期には多少の準備資金を要するため0.5を乗算するというように、柔軟に運用することもできる。
【0041】
上記においては、テンプレートデータベース20の重み値を修正する方法について説明したが、システムの運用者はテンプレートの他の項目についても随時その適否を検討し、必要に応じてアップデートしていくことが望ましい。
例えば、上位概念や下位概念の種類や粒度の見直し、あるいは下位概念と上位概念との関連付けの見直しを定期的に行い、テンプレートデータベース20の構成を進化させていくことで、情報資産価値算出部22における算出精度を高めることが可能となる。
【0042】
上記にあっては、専用のアプリケーションプログラムをセットアップしたPC等のコンピュータ30によるスタンドアロン形式でこのシステム10を実現する例を説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、専用のアプリケーションプログラムをセットアップしたサーバによってこのシステム10の基幹部分を実現し、ユーザはこのサーバにネットワーク接続されたクライアント端末を通じてサービスを受けるように運用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】情報資産価値算出システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】情報資産データベースの構成を示す概念図である。
【図3】事業計画データベースの構成を示す概念図である。
【図4】テンプレートデータベースの構成を示す概念図である。
【図5】このシステムにおける情報資産価値の算出手順を示すフローチャートである。
【図6】基本画面の構成を示すレイアウト図である。
【図7】基本画面に対応テンプレートを表示させた状態を示すレイアウト図である。
【符号の説明】
【0044】
10 情報資産価値算出システム
12 入力装置
14 情報資産登録部
16 情報資産データベース
18 事業計画データベース
20 テンプレートデータベース
22 情報資産価値算出部
24 画面生成部
26 ディスプレイ
28 テンプレート修正部
30 コンピュータ
32 基本画面
34 情報資産名入力欄
36 上位カテゴリ選択欄
38 下位カテゴリ選択欄
40 時間軸選択欄
42 媒体種別選択欄
44 関連事業計画選択欄
46 ユニーク度入力欄
48 プルダウンボタン
50 プルダウンボタン
52 算出ボタン
54 情報資産価値表示欄
56 登録ボタン
58 テンプレートの修正ボタン
60 テンプレート表示欄
62 テンプレートの更新ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の事業計画に係る情報資産の価値を算出するシステムであって、
各事業計画の準備費用額及び収益予想額を格納しておく事業計画記憶手段と、
少なくとも情報資産のカテゴリ別及び事業計画の発展段階別に配分比が設定されたテンプレートを複数格納しておくテンプレート記憶手段と、
少なくとも情報資産のカテゴリ入力欄、事業計画の発展段階入力欄、及び事業計画入力欄が設けられた画面をディスプレイに表示し、情報資産のカテゴリ、事業計画の発展段階、及び事業計画を特定するようにユーザに促す手段と、
上記画面を通じてユーザが特定した情報資産のカテゴリ情報及び事業計画の発展段階情報に基づき、上記テンプレート記憶手段から特定の配分比を取得する手段と、
上記画面を通じてユーザが特定した事業計画情報に基づき、上記事業計画記憶手段から特定の準備費用額及び収益予想額を取得する手段と、
上記準備費用額及び収益予想額の和に上記配分比を乗ずることにより、当該情報資産の価値を算出する手段と、
この算出結果を出力する手段と、
を備えたことを特徴とする情報資産価値算出システム。
【請求項2】
特定の事業計画に係る情報資産の価値を算出するシステムであって、
各事業計画の準備費用額及び収益予想額を格納しておく事業計画記憶手段と、
少なくとも情報資産のカテゴリ別、事業計画の発展段階別及び情報資産の媒体別に配分比が設定されたテンプレートを複数格納しておくテンプレート記憶手段と、
少なくとも情報資産のカテゴリ入力欄、事業計画の発展段階入力欄、情報資産の媒体入力欄及び事業計画入力欄が設けられた画面をディスプレイに表示し、情報資産のカテゴリ、事業計画の発展段階、情報資産の媒体、及び事業計画を特定するようにユーザに促す手段と、
上記画面を通じてユーザが特定した情報資産のカテゴリ情報、事業計画の発展段階情報及び情報資産の媒体情報に基づき、上記テンプレート記憶手段から特定の配分比を取得する手段と、
上記画面を通じてユーザが特定した事業計画情報に基づき、上記事業計画記憶手段から特定の準備費用額及び収益予想額を取得する手段と、
上記準備費用額及び収益予想額の和に上記配分比を乗ずることにより、当該情報資産の価値を算出する手段と、
この算出結果を出力する手段と、
を備えたことを特徴とする情報資産価値算出システム。
【請求項3】
上記画面に情報資産のユニーク度を示す数値の入力欄が設けられており、
上記情報資産の価値を算出する手段が、事業計画の準備費用額及び収益予想額の和に上記配分比及び当該画面を通じてユーザが特定したユニーク度を示す数値を乗算することにより、情報資産の価値を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の情報資産価値算出システム。
【請求項4】
上記テンプレート記憶手段に格納された特定のテンプレートを表示する画面をディスプレイに表示させ、その配分比を修正するようにユーザに促す手段と、
上記画面を通じてユーザが配分比を修正した場合に、上記テンプレート記憶手段に修正後の配分比を更新登録する手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の情報資産価値算出システム。
【請求項5】
上記情報資産の価値を算出する手段が、上記画面を通じてユーザが特定した事業の発展段階情報が予め設定された特定の発展段階に該当する場合に、上記準備費用額に対して所定の数値を乗じ、準備費用額を低減させた上で情報資産価値の算出処理を実行することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の情報資産価値算出システム。
【請求項6】
特定の事業計画に係る情報資産の価値を算出するプログラムであって、
コンピュータを、
各事業計画の準備費用額及び収益予想額を格納しておく事業計画記憶手段、
少なくとも情報資産のカテゴリ別及び事業計画の発展段階別に配分比が設定されたテンプレートを複数格納しておくテンプレート記憶手段、
少なくとも情報資産のカテゴリ入力欄、事業計画の発展段階入力欄、及び事業計画入力欄が設けられた画面をディスプレイに表示し、情報資産のカテゴリ、事業計画の発展段階、及び事業計画を特定するようにユーザに促す手段、
上記画面を通じてユーザが特定した情報資産のカテゴリ情報及び事業計画の発展段階情報に基づき、上記テンプレート記憶手段から特定の配分比を取得する手段、
上記画面を通じてユーザが特定した事業計画情報に基づき、上記事業計画記憶手段から特定の準備費用額及び収益予想額を取得する手段、
上記準備費用額及び収益予想額の和に上記配分比を乗ずることにより、当該情報資産の価値を算出する手段、
この算出結果を出力する手段、
として機能させることを特徴とする情報資産価値算出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−99560(P2006−99560A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286587(P2004−286587)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)