説明

感光体ドラム、その製造方法、印刷エンジン、及び画像形成装置

【課題】発光画素が出射する書き込み光の径の拡大による感光体ドラムの表面に形成される静電潜像の劣化を抑制する。
【解決手段】基板上に整列配置された発光画素10から出射する光を導電性の円筒状部材の表面上に形成された感光部31で受光して静電潜像を形成する、副走査方向に回転駆動される感光体ドラム30であって、感光部31が周囲を静電潜像を形成不可能な非感光部29で囲まれており、感光部31の主走査方向の配列ピッチが発光画素10の主走査方向の配列ピッチと同一であることを特徴とする感光体ドラム30。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に配列された発光画素が出射する光を感光体ドラムに照射して静電潜像を形成することにより画像の形成を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、円筒状部材の表面に感光体層を有した感光体ドラムと、該感光体ドラムの長手方向にわたって多数の発光画素を規則的に配列したラインヘッドと、を含んで成り、上記感光体ドラムを軸回りに回転させながらラインヘッドの多数の発光素子を画像データに基づいて個々に選択的に発光させるとともに、当該発光した光(以下、「書き込み光」と称する。)を感光体ドラム表面の感光体層に照射し結像させることにより静電潜像を形成し、当該静電潜像を現像後、紙等の媒体に転写して画像を形成している。したがって、媒体に形成される画像の品質は、画像データと感光体ドラムに形成される静電潜像との同一性に大きく影響される。そこで、同一性を向上させるための提案が色々成されている。
【0003】
例えば特許文献1では、感光体ドラムとラインヘッドとの位置関係、及び感光体ドラムと現像手段との間隙を高精度に保つとともに感光体ドラム自体の変形を防止して、上記書き込み光の焦点位置を感光体ドラム表面に一致させるべく、感光体ドラムとラインヘッドとの相対位置を規制する感光体ドラム位置規制部材を配置している。
【0004】
また特許文献2では、モータにより感光体ドラムを駆動する際の、当該感光体ドラムに直結された歯車のピッチに起因する、回転誤差(周速変動)による露光位置精度の悪化による濃度むら(バンディング)の発生に対処すべく、副走査方向に複数列の発光素子を配列したラインヘッドにより多重露光を行っている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−143159号公報
【特許文献2】特開2005−070484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上記構造の感光体ドラム及び画像形成装置は、上記書き込み光を変化させずに感光体ドラムに照射するため、書き込み光の径(書き込み光の光軸に垂直な断面は必ずしも円形ではないが、上記断面の寸法を便宜的に「径」と称する。)が発光画素の径よりも増大することにより上記同一性が損なわれる現象に対しては対処できていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る感光体ドラムは基板上に整列配置された発光画素から出射する光を、副走査方向に回転しつつ、導電性の円筒状部材の表面上に形成された感光部で受光して静電潜像を形成する感光体ドラムであって、上記感光部が上記静電潜像を形成不可能な非感光部で周囲を囲まれており、上記感光部の主走査方向の配列ピッチが上記発光画素の主走査方向の配列ピッチと同一であることを特徴とする。
【0008】
感光体ドラムの表面を全て感光部とするのではなく、周囲を非感光部で囲まれた感光部を発光画素と同一の配列ピッチで配置することで、周囲を非感光部で囲まれており、対向する発光画素と中心線が一致する感光部を配置できる。そして、中心線からの幅を調整することで、発光画素から出射した光が拡大する現象に左右されずに任意の面積の分だけ受光できる。したがってかかる構成により、発光画素から出射する光が拡大して生じる余分な光を受光することを抑制でき、上記感光体ドラムの表面にシャープな静電潜像を形成できる。
【0009】
好ましくは、上記感光部の形状が、上記発光画素の形状と略相似であることを特徴とする。
【0010】
発光画素から出射した光は進行するにつれて拡大し、上記感光体ドラムの表面では上記発光画素の形状を全周方向に均一に拡大した相似形となる。したがって対応する感光部の形状を発光画素の形状と相似させることで、発光画素から出射する光を有効に利用でき、感光体ドラムの表面により一層シャープな静電潜像を形成できる。
【0011】
また、好ましくは、上記感光部の形状が、上記感光体ドラムの表面を、互いに間隔を有しつつ副走査方向に一周するストライプ状であることを特徴とする。
【0012】
感光体ドラムは副走査方向に回転しつつ静電潜像を形成するが、上記感光部がストライプ状であれば発光画素との相対的な位置関係を上述の回転運動に影響されず常に一定の状態に保つことができる。したがってかかる構成であれば、コストの増加を抑制しつつ感光体ドラムの表面にシャープな静電潜像を形成できる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る印刷エンジンは、上述する感光体ドラムを具備することを特徴とする。
【0014】
好ましくは、上記発光画素と上記感光部の位置を合わせる機構をさらに具備することを特徴とする。
【0015】
感光体ドラムは副走査方向に回転しつつ静電潜像を形成するが、かかる構成であれば上述の回転運動に起因する発光画素と感光部との相対的な位置ずれを補正し、当該位置の関係を常に一定の状態に保つことができる。したがってかかる構成であれば、感光部の形状の設定の自由度が増し、感光体ドラムの表面により一層シャープな静電潜像を形成できる。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る画像形成装置は、上記の印刷エンジンを具備することを特徴とする。
【0017】
かかる構成であれば感光体ドラムの表面により一層シャープな静電潜像を形成できるため、記録媒体により一層シャープな画像を形成できる。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る感光体ドラムの製造方法は、基板上に整列配置された発光画素から出射する光を導電性の円筒状部材の表面上に形成された感光部で受光して静電潜像を形成する感光体ドラムの製造方法であって、上記円筒状部材表面に所定の範囲の光を受光して静電潜像を形成可能な感光体層を形成する工程と、上記感光体層の表面の一部の領域に上記所定の範囲の光を遮光可能な遮光層を形成することにより、上記感光体ドラムの表面に上記静電潜像を形成可能な感光部と、上記静電潜像を形成不可能な非感光部とを規則的に形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
かかる製造方法によれば、従来の感光体ドラムの製造工程に非感光部を形成する工程を付加するのみで上述する構成の感光体ドラムを製造できる。したがって、上述するシャープな静電潜像を形成可能な感光体ドラムを、製造コストの上昇を抑制しつつ製造できる。
【0020】
好ましくは、上記遮光層の形成は、上記感光体層の表面に塗布した感光性材料を、フォトリソグラフィーにより上記感光部を形成すべき領域から選択的に除去した後、硬化させることにより行なうことを特徴とする。
【0021】
感光性材料はフォトリソグラフィーにより高精細なパターニングが可能であるため、感光部の形状設定の自由度を向上させられる。したがってかかる製造方法によれば、より一層シャープな静電潜像を形成可能な感光体ドラムを製造コストの上昇を抑制しつつ製造できる。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る感光体ドラムの製造方法は、基板上に整列配置された発光画素から出射する光を導電性の円筒状部材の表面上に形成された感光部で受光して静電潜像を形成する感光体ドラムの製造方法であって、上記円筒状部材の表面の所定の領域にのみ上記感光部を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0023】
かかる製造方法で得られる感光体ドラムは、非感光部に遮光層を有しないため表面の段差を抑制できる。したがって、発光画素から出射する光を伝達する成立等倍像レンズ等と感光部との間隔を、非感光部の影響を受けずに自由に設定可能となるため、より一層シャープな静電潜像を形成可能な感光体ドラムを得ることができる。また感光体表面に不用な段差がなくなるために、次の書き込みの前に感光体上に残ったトナーをきれいにクリーニングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
(第1の実施形態)
【0025】
本発明は感光体ドラムに関するものである。そして当該感光体ドラムは、多数の発光画素を規則的に配列したラインヘッドから出射する光を受光して静電潜像を形成する機能を有するものである。そこで感光体ドラムの実施形態を記載する前に、まずラインヘッドについて述べる。
【0026】
図1(a)は、本実施形態の感光体ドラムが用いられる画像形成装置のラインヘッド32(図1(b)参照)上に配置される発光画素10等の構成を模式的に示したものである。電圧の印加により電流が流れると発光するエレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と称する。)現象を利用したEL素子を発光画素10として用いるものである。図1の横方向、すなわちX方向が主走査方向であり、各々の発光画素10は当該方向に沿って千鳥状に所定の間隔をもって配置されている。発光画素10は、第1の電極である画素電極20と、図示しない第2の電極とで狭持される、少なくとも発光層(上記EL現象を生じる物質の層)を含む機能層からなっている。画素電極20に電圧が印加されると上記発光層に電流が流れ、EL現象により光を出射する。
【0027】
画素電極20を駆動して、発光画素10に電圧を印加するのが駆動用薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と称する。)12である。駆動用TFT12のソース電極18はソース配線22を介して図示しない保持容量と導通し、またゲート配線14は同じく図示しないスイッチングTFTと導通している。ドレイン電極16は画素電極20と導通している。ゲート配線14を介してスイッチングTFTから信号電圧が印加されると駆動用TFT12がON状態となり、画素電極20に電圧が印加されると、上述する保持容量を通じて電流が流れ発光画素10は書き込み光を出射する。
【0028】
図1(b)は、ラインヘッド32の全体を模式的に示す図である。基板上に発光画素10および駆動用TFT12が主走査方向に千鳥状に配置されている。そして、上述する発光画素10の配置に沿って、スイッチング用TFT等からなるラインヘッドの制御回路(以下、「制御回路」と称する。)25が配置されている。当該ラインヘッドを用いて画像を形成する際には、図示しない画像形成装置のCPUで加工された画像データに基づき、制御回路25は各々の発光画素10を制御して感光体ドラムに向けて光を出射する。
【0029】
第2の電極27は上述したように画素電極20と共に発光層を狭持し、当該発光層に電流を流す機能を有している。各々の発光画素10に対して共通電位であるため、各画素毎には分割されず連続した一枚の板状である。そして接地部26を介して、画像形成装置本体の接地部と導通している。
【0030】
位置合わせ発光画素40は基板の両端に1個づつ配置されており、後述する感光体ドラム30(図2参照)とラインヘッド32の位置合わせに用いられる。位置合わせ発光画素40と静電潜像形成用の千鳥状に配置される発光画素10は、同一のフォトリソグラフィー工程で形成されるため、相対的な位置関係は常に一定となる。そして画像形成用の発光画素10と同様に、駆動用TFT12と制御回路25により発光する。
【0031】
EL素子を発光画素に用いるラインヘッドには、書き込み光を基板側から取り出すボトムエミッション方式と基板とは反対側から光を取り出すトップエミッション方式があり、本実施形態の感光体ドラム30(図2(c)参照)はどちらの方式にも対応している。ボトムエミッション方式の場合、ラインヘッド32の基板はガラス等の透光性材料を用いる。トップエミッション方式の場合、基板は金属、セラミック等の遮光性材料を用いることもできるが、第2の電極27は透光性を有する必要がある。その場合、Ba、MgAg等の金属、又は合金からなる10nm厚程の薄膜と、ITO(酸化インジウムすず)等の導電性透光材料を組み合わせて用い、透光性と導電性を両立させる。
【0032】
図2は、本実施形態の感光体ドラム30とラインヘッド32を模式的に示す図である。図2(a)はラインヘッド32上における発光画素10の配置を示すものである。図2(b)は感光体ドラム30の感光部31が形成されている面、すなわち円筒の側面を水平に展開して平面状にした状態を示すものである。図示するように、ラインヘッド32上において、発光画素10は千鳥状に主走査方向に連続して配置されている。そして、感光体ドラム表面の感光部31の配置パターンは、上述発光画素の配置パターンを連続したものである。そして個々の感光部31の形状も発光画素の形状と同一である。図2(b)に示すように、感光部31の配置パターンは、図2(a)の破線内に示す発光画素10の配置パターンを副走査方向に連続して並べて得られるパターンとなる。感光体ドラム表面の感光部31が形成されていない領域は非感光部29であり、発光画素10から出射する光が照射されても静電潜像を形成することはない。
【0033】
図2(c)は、図2(b)に示す、非感光部29で周囲を囲まれた感光部31が形成されている面を持つ感光体ドラムを示すものである。主走査方向の配列ピッチが発光画素10の当該配列ピッチと同一で、形状も同一の感光部が感光体ドラムを取り巻く形となる。なお、副走査方向の配列ピッチは発光画素を発光させるタイミングと感光体ドラムの回転速度で決定される。図2(c)では、感光体ドラム表面の感光部の主走査方向の配列ピッチと副走査方向の配列ピッチは略同一となっているが、本発明はこの態様に限定されるものではない。
【0034】
図3は、本実施形態にかかる感光体ドラム30を、ラインヘッド32を備えるラインヘッドモジュール100等と共に示すものである。後述する中間転写ベルト等とともに(図8参照)画像形成装置のエンジンを構成する。
【0035】
ラインヘッド32は、透光性材料からなる封止板34とAl等の金属からなる放熱板33とで狭持されており、複数の正立等倍結像レンズを束ねて形成されるレンズユニット35を介して感光体ドラム30と対向している。そして、各々の発光画素10の発光によりライン状の像を連続的に形成する。
【0036】
封止板34は、発光画素10等を接触等から保護するもので、基板とは反対側から光を出射するトップエミッション方式では必須である。また、放熱板33は発光画素の通電による発熱を拡散することで、発光画素10あるいは当該発光画素の制御回路25等(図1(b)参照)を安定的に動作させる機能を果たしている。
【0037】
レンズユニット35は正立等倍像レンズを束ねたものであり、ラインヘッド32上の発光画素10で形成されるライン状の像の正立等倍像を、感光体ドラム30の表面に照射する。ラインヘッドパネル32とレンズユニット35とで、ラインヘッドモジュール100を構成する。
【0038】
感光体ドラム30は、その円筒状部材の両端近傍の一部を除く全面に、図2(c)に示す態様の感光部31、および非感光部29が形成されている。そして両端近傍には位置合わせマーク38が形成されている。各々の位置合わせマーク38間の間隔は、ラインヘッド32上の位置合わせ発光画素40の間隔と同一である。感光体ドラム30とラインヘッド32は、位置合わせマーク38と位置合わせ発光画素40とがハーフミラー36を挟んで対向するようにセットされている。なお、具体的な位置合わせ機構については後述する。
【0039】
実際の静電潜像形成は以下のように行われる。まず、感光体ドラム30は、回転を開始する前すなわちラインヘッド32上の発光画素10が発光を開始する前に位置合わせを行い、千鳥状に形成されている一列の感光部31をレンズユニット35を介して発光画素10と正確に対向させる。
【0040】
そして、ラインヘッド32上の発光画素10が形成すべき画像のデータに基づき発光を開始するのと同時に発光画素10の発光の配列ピッチに合わせて回転を開始する。したがって、発光画素10が発光しているときに対応する感光部が、正確に当該発光画素と対向する。その結果、各々の感光部には、従来の感光体ドラムの表面に形成されていた静電潜像と同一の像が形成される。
【0041】
上述したように、ラインヘッド32に形成されている各々の発光画素10から出射する光は、レンズユニット35により、感光体ドラム30の表面に照射される。レンズユニット35はSELFOC(登録商標)レンズを束ねたものである。SELFOC(登録商標)レンズとは中心軸(光軸)からの距離によって屈折率が変わるように成分を調整したガラスファイバーを所定の長さに切断したもので、屈折率の変化による光の蛇行により等倍率で正立実像を結像する性質を持つ。したがって、各々の発光画素10から出る光は、理論上は当該発光画素と同一の面積で感光体ドラム30の表面に照射される。
【0042】
しかし実際のSELFOC(登録商標)レンズはガラスファイバー内の屈折率分布、あるいは寸法形状等の誤差により拡大されて照射される。例えば、発光画素の径が50μmの場合、感光体ドラム30の表面では80〜90μmの径となる。したがって、感光体ドラムの表面の全面が感光部である場合、発光画素と対向していない領域、すなわち本実施形態における非感光部にも静電潜像が形成される。その結果、当該表面に実際に形成される静電潜像は、発光画素の寸法や分布から導かれる像に比べてぼやけた像となる。
【0043】
しかし本実施形態の感光体ドラム30によれば、発光画素10と対向していない領域は非感光部29であるため、書き込み光の拡大にかかわらず、感光体ドラムの表面上にシャープな静電潜像を形成できる。その結果、最終的な目的物である紙等の記録媒体上に形成される画像をより一層シャープにできる。
【0044】
なお本実施形態においては、感光部31の形状を発光画素10の形状と一致させているが、上記双方の形状を完全に一致させなくとも本発明の効果は得られる。各々の感光部31の中心点の主走査方向の配列ピッチが発光画素10の当該配列ピッチと一致しており、また、各々の感光部31の中心点の副走査方向の配列ピッチが発光画素10の発光のタイミング、及び感光体ドラム30の回転速度に合わせてあれば、感光部31の形状を発光画素10の形状の相似形としても本実施形態における効果と同等の効果は得られる。例えば、発光画素10の配置が密である場合は、感光部31の形状を発光画素10の形状よりも小さくすることで、より一層シャープな静電潜像を得るという態様もあり得る。また、発光画素10、及び感光部31の形状は円形に限られるものではなく、方形等の形状でも本発明の効果は得られる。
(位置合わせ)
【0045】
本発明は感光体ドラム30の表面の一部の領域にのみ静電潜像を形成可能な感光部31を形成しているため、発光画素10と感光部31との相対位置を合わせて正確に対向させる必要がある。図4はその位置合わせの機構の一例を模式的に示すものである。上述したように感光体ドラム30の表面の感光部31が形成されている領域の両側には位置合わせマーク38が形成されている。一方、ラインヘッド32の位置合わせマーク38と対向する位置には、ハーフミラー36を挟んで位置合わせ発光画素40が形成されている。
【0046】
画像形成前に、まず感光体ドラム30は、大まかに位置合わせマーク38が位置合わせ発光画素40の方向を向く位置まで回転して停止する。次に位置合わせ発光画素40から出射する位置合わせ光41が、位置合わせマーク38に照射される。そして位置合わせマーク38で反射した位置合わせ光41のうちの一部が、ハーフミラー36により位置合わせマーク38の画像データとして撮像装置42に照射される。画像データは制御部44に伝達され、制御部44は内部に記憶している、感光体ドラム30が正しい位置にあるときの画像データと比較して、双方のデータの差と、その差をゼロにするために必要な感光体ドラム30の移動量を算出する。そして駆動制御部48により、上記の算出された移動量に基づき感光体ドラム30を移動する。
【0047】
回転方向の移動は、静電潜像形成時の回転に用いるモータを利用できる。一方それ以外の方向の移動、例えば縦軸方向の移動には、別途専用の移動機構を設ける必要がある。ただし、感光体ドラム30は静電潜像形成時に副走査方向に回転するため、ラインヘッド32との位置ずれは回転方向に発生しやすい。一方、軸方向等の位置ずれは組立て時に調整すれば長期間発生を抑制できる。したがって、本実施形態においては、軸方向の移動機構を省略することも可能である。また、感光体ドラム30は固定して、ラインヘッドモジュール100を移動させることで位置合わせを行なう態様も可能である。
(非感光部の形成)
【0048】
感光体ドラムの表面に周囲を非感光部で囲まれた感光部を形成する手段は、感光体ドラムの表面の全域に感光体からなる層を形成した後に非感光部とすべき領域に遮光層を形成する方式と、感光体ドラムの表面の感光部を形成すべき領域にのみ上記感光体からなる層を形成する方式がある。本実施形態では前者の方式を用いている。以下、その工程の概略を述べる。
【0049】
まず、表面の全域に感光体層が形成された感光体ドラムに遮光性材料を含有したフォトレジストを塗布する。レジストはポジ型とネガ型のどちらでも実施可能であるが、露光に用いるパターンを考慮すると、光が照射された部分が現像により除去されるポジ型が好ましい。レジストは感光性樹脂を溶剤に溶解させて得られる。感光性樹脂としては、一般的なノボラック樹脂を主成分とする混合・縮合物が好ましく、溶剤も一般的なエチルカルビトール等の有機系溶剤が好ましい。また遮光性材料については金属酸化物や顔料、あるいはカーボン微粒子等が適用可能である。レジストの塗布は、一般的なスピンコートが適用できないため、スプレーコートあるいはディップコート等の手法が好ましい。
【0050】
次に上記レジストを露光、および現像によりパターニングして、非感光部とすべき領域にのみ上記のレジストを残す。露光は一般的な紫外線で行なう場合、上述のラインヘッドに用いる発光素子は波長が異なるため不適当であり、専用の紫外線光源が必要となる。ただし、上述のラインヘッドを形成する際に使用するフォトマスク、特に発光画素のパターニングに用いるフォトマスクは流用し得る。また、現像液も上述するノボラック樹脂に対して一般的に用いられるものを用いればよい。なお上記露光の前にプレベークとして100度未満の温度で数分間加熱して溶剤をある程度除去することが好ましい。
【0051】
そして最後に、非感光部とすべき領域にのみ残されたレジストを焼成して遮光層とする。焼成は200℃程の温度で行い、レジストを完全に硬化させて感光体ドラムとしての使用に耐え得るようにする。
【0052】
なお、遮光層すなわちレジストの膜厚は焼成後で1μm以下が好ましい。1μm以下の段差であれば感光体ドラムとしての機能に悪影響を及ぼすことはない。また、遮光層は可視光を全て遮光する必要はなく、ラインヘッドの発光画素からの書き込み光を遮光できれば機能を果たすことができる。
(第2の実施形態)
【0053】
図5〜図7に本発明の第2の実施形態に係る感光体ドラム等を示す。第1の実施形態と同じく、感光体ドラムの実施形態を記載する前に、まずラインヘッドについて述べる。
図5(a)は、本実施形態の感光体ドラム30に対応するラインヘッド32(図5(b)参照)の発光画素の構成を模式的に示したものである。第1の実施形態と同様にEL素子を発光画素10として用いるものであり、配置パターンのみが異なっている。駆動用TFT12で駆動される画素電極20は千鳥状ではなく、主走査方向に一列に並ぶように配置されている。そして、画素電極20、及び発光画素10の大きさも第1の実施形態に比べ若干小さく、副走査方向に見た場合、各々の発光画素10の間に所定のスぺースが空いている。
【0054】
図5(b)は、本実施形態の感光体ドラムに対応するラインヘッド32の全体を模式的に示す図である。発光画素10が上述したように一列に並んでいる。
【0055】
図6は、本実施形態の感光体ドラム30の表面とラインヘッド32を模式的に示す図である。図6(a)はラインヘッド32を示し、図6(b)は感光体ドラム30の表面を展開した状態を示す図である。
【0056】
図6(a)に示すように、発光画素10はラインヘッド32の基板上に所定のスペースを空けて、主走査方向に等間隔で並んでいる。各々の発光画素10の中心点の間隔は等しい。
【0057】
また、図6(b)に示すように、感光部31は感光体ドラム30の表面を副走査方向に周回するストライプ状に形成されている。各々の感光部31の間には、同じくストライプ状の非感光部29が形成されている。各々の感光部31の中心線の間隔は等しい。そして、感光部31の配列ピッチ、すなわち各々の感光部31の中心線間の距離は、発光画素10の配列ピッチ、すなわち各々の発光画素10の距離と等しくなるように形成されている。
【0058】
図7に、図6に示すラインヘッド32を具備するラインヘッドモジュール100を感光体ドラム30と組み合わせた状態を示す。上記両要素の組み合わせ時には、書き込み光の光軸が感光部31の中心線上に位置するように調節する。その結果、感光体ドラム30が回転しても、発光画素10と対向する位置における感光部31の態様は変化しない。発光画素10の中心、すなわち発光画素10の書き込み光の光軸は、対向する感光部31の中心線上に位置する。同様に、各々の発光画素10の間のスペースに対向する位置には常に非感光部29が位置している。
【0059】
第1の実施形態で記載したように、ラインヘッド32上の各々の発光画素10で形成された画像の正立等倍像が感光体ドラム30の表面上に結像する。その際、ラインヘッドモジュール100内のレンズユニット35が完全な等倍像を形成できないため、感光体ドラム30の表面上の結像の径は発光画素10の径よりも拡大されたものとなる。拡大された領域は書き込み光の照射を意図していなかった領域であり、当該領域が感光して静電潜像を形成すると、全体的にぼやけた画像が形成されることとなる。しかし本実施形態のように、感光体ドラム30を周回する感光部31の周囲を非感光部29で囲み、発光画素10の光軸と感光部31の中心線を一致させると、上述するレンズユニット35に起因する画像の劣化を抑制できる。すなわち、感光体ドラム30の表面の感光部31と非感光部29の割合を調整して、上述する書き込み光の照射を意図していなかった領域が非感光部29となるようにすることで、意図しない領域に静電潜像が形成されることを回避でき、書き込み光の光軸の拡大による画像の劣化を抑制できる。
【0060】
本実施形態の特徴として、感光体ドラム30が副走査方向に回転しても、発光画素10と感光部31の相対位置には変化がないことが挙げられる。感光部31の形状が、第1の実施形態のような円形(スポット状)とは異なり感光体ドラム30を一定の幅を保ち周回するストライプ状なので、感光体ドラム30が回転しても発光画素10と対向する位置には常に感光部31が存在する。したがって本実施形態においては、感光体ドラム30の軸方向の変化のみに対処すればよく、上述したような位置合わせ動作を(図4参照)、画像形成毎に実施する必要性は少なくなる。ただし、軸方向の位置ずれも、長期間の使用により発生し得る。したがって、上記の説明では位置合わせ機構の記載を省略したが、本実施形態に係る感光体ドラム30を具備する画像形成装置においても、第1の実施形態と同様に位置合わせ機構を搭載することが好ましい。
【0061】
また、本実施形態において発光画素10の径と感光部31の幅は、同一である必要はない。上記両要素の軸方向の配列ピッチが同一であれば、発光画素10の径と感光部31の幅が異なっていても感光体ドラム30の表面に画像を形成できる。レンズユニット35に起因する光束の拡大の度合いに応じて感光体ドラム30の表面の感光部31と非感光部29の割合を調整し、最適な静電潜像を形成すれば良い。
(画像形成装置)
【0062】
次に、本発明に係る感光体ドラムを具備する画像形成装置について述べる。図8に、本発明に係る感光体ドラム30を具備する、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像形成装置の構成を示す。なお、添え字K、C、M、Yは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに対応していることを表す。他の構成要素についても同様である。
【0063】
図示するように、この画像形成装置には駆動ローラ171と従動ローラ172が設けられている。これらのローラには無端の中間転写ベルト170が巻回されて、矢印に示すように駆動ローラ171と従動ローラ172の周囲を回転する。中間転写ベルト170の周囲には互いに所定の間隔をおいて、第1、又は第2の実施形態のうちのいずれかに記載の4個の感光体ドラム30K、C、M、Yが、同じく第1、又は第2の実施形態に記載の発光画素が主走査方向に配列されたラインヘッドモジュール100K、C、M、Yの各々に対向して配置されている。
【0064】
各感光体ドラム30K、C、M、Yの周囲には、コロナ帯電器161K、C、M、Yと、ラインヘッドモジュール100K、C、M、Yと、現像器164K、C、M、Y、が配置されている。コロナ帯電器161K、C、M、Yは、対応する感光体ドラム30K、C、M、Yの表面に形成された感光部を帯電する。ラインヘッドモジュール100K、C、M、Yは、各々が独立に制御される複数の発光画素から光を出射する。当該出射光は光束の径が拡大した状態で感光体ドラム30K、C、M、Yの表面を照射する。感光体ドラム30K、C、M、Yは、ラインヘッドモジュール100からの出射光からなる、経時的に変化する画像を上記帯電した感光体上に定着させ、静電潜像を形成する。そして、当該定着された静電潜像を後述する中間転写ベルト170を介して記録媒体に転写することで、記録媒体上に画像を形成する。
【0065】
上記の第1および第2の実施形態で述べたように本発明に係る感光体ドラム30は従来の感光体ドラムとは異なり、表面上の全域が感光部31とはなっていない。表面上には、周囲を静電潜像を形成不可能な非感光部29で囲まれており、主走査方向の配列ピッチが発光画素10の主走査方向の配列ピッチと同一である感光部31が形成されている。感光部31の形状は発光画素10の形状等に合わせて決められており、感光部31の周囲の非感光部29を照射した光は静電潜像を形成しない。したがって、ラインヘッドモジュール100から出射する光が、径が拡大した状態で感光体ドラム30の表面を照射しても、当該表面上には当該拡大が起こらなかった場合と同様の静電潜像が形成される。
【0066】
感光体ドラム30上に形成された静電潜像は、従来の画像形成装置と同様に以下に記載するように媒体に転写される。
【0067】
まず、現像器164K、C、M、Y、は、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより、感光体ドラム30K、C、M、Yに顕像すなわち可視像を形成する。そして上記のブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各単色の顕像は、中間転写ベルト170上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト170上で重ね合わされて、フルカラーの顕像となる。
中間転写ベルト170の内側には、一次転写コロトロン(転写器)162K、C、M、Y、が配置されている。一次転写コロトロン162K、C、M、Yは、感光体ドラム30K、C、M、Yの近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム30K、C、M、Yから顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラム30K、C、M、Yと一次転写コロトロン162K、C、M、Y、の間を通過する中間転写ベルト170に顕像を転写する。
【0068】
最終的に、画像を形成する対象である記録媒体としての記録用紙152は、ピックアップローラ153によって給紙カセット151から1枚づつ搬出されて、駆動ローラ171に接した中間転写ベルト170と二次転写ローラ176の間のニップに送られる。中間転写ベルト170上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ176によって記録用紙152の片面に一括して二次転写され、定着部である定着ローラ対177を通ることで、記録用紙152上に定着される。この後、記録用紙152は、排紙ローラ対178によって、本画像形成装置上に設けられた図示しない排紙カセット上に排出される。
【0069】
このように本発明に係る画像形成装置は、静電潜像が形成される対象として第1、又は第2の実施形態に記載する感光体ドラムを具備することで、ラインヘッドモジュールの発光が当該書き込み光の光束の径が拡大した状態で感光体ドラムの表面を照射するにもかかわらず、記録媒体には当該拡大が起こらなかった場合と略同一のシャープな画像を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】(a)は、第1の実施形態の発光画素等の構成を模式的に示す図。(b)は、ラインヘッドの全体を模式的に示す図。
【図2】第1の実施形態の感光体ドラムとラインヘッドを示す模式図。
【図3】第1の実施形態に係る感光体ドラムとラインヘッドモジュールを示す図。
【図4】位置合わせの機構を模式的に示す図。
【図5】(a)は、第2の実施形態の発光画素の構成を模式的に示す図。(b)は、第2の実施形態の感光体ドラムに対応するラインヘッドを模式的に示す図。
【図6】第2の実施形態の感光体ドラムの表面とラインヘッドを模式的に示す図。
【図7】第2の実施形態に係る感光体ドラムとラインヘッドモジュールを示す図。
【図8】本発明に係る感光体ドラムを具備する画像形成装置の構成を示す図。
【符号の説明】
【0071】
10…発光画素、12…駆動用TFT、14…ゲート配線、16…ドレイン電極、18…ソース電極、20…画素電極、22…ソース配線、25…制御回路、26…接地部、27…第2の電極、29…非感光部、30…感光体ドラム、31…感光部、32…ラインヘッド、33…放熱板、34…封止板、35…レンズユニット、36…ハーフミラー、38…位置合わせマーク、40…位置合わせ発光画素、41…位置合わせ光、42…撮像装置、44…制御部、48…駆動制御部、100…ラインヘッドモジュール、151…給紙カセット、152…記録用紙、153…ピックアップローラ、161…コロナ帯電器、162…一次転写コロトロン、164…現像器、170…中間転写ベルト、171…駆動ローラ、172…従動ローラ、176…二次転写ローラ、177…定着ローラ対、178…排紙ローラ対。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に整列配置された発光画素から出射する光を、副走査方向に回転しつつ、導電性の円筒状部材の表面上に形成された感光部で受光して静電潜像を形成する感光体ドラムであって、
前記感光部が前記静電潜像を形成不可能な非感光部で周囲を囲まれており、
前記感光部の主走査方向の配列ピッチが前記発光画素の主走査方向の配列ピッチと同一であることを特徴とする感光体ドラム。
【請求項2】
前記感光部の形状が、前記発光画素の形状と略相似であることを特徴とする請求項1に記載の感光体ドラム。
【請求項3】
前記感光部の形状が、前記感光体ドラムの表面を、互いに間隔を有しつつ副走査方向に一周するストライプ状であることを特徴とする請求項1に記載の感光体ドラム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光体ドラムを具備することを特徴とする印刷エンジン。
【請求項5】
前記発光画素と前記感光部の位置を合わせる機構を具備することを特徴とする請求項4に記載の印刷エンジン。
【請求項6】
請求項4、又は5に記載の印刷エンジンを具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
基板上に整列配置された発光画素から出射する光を導電性の円筒状部材の表面上に形成された感光部で受光して静電潜像を形成する感光体ドラムの製造方法であって、
前記円筒状部材表面に所定の範囲の光を受光して静電潜像を形成可能な感光体層を形成する工程と、
前記感光体層の表面の一部の領域に前記所定の範囲の光を遮光可能な遮光層を形成することにより、前記感光体ドラムの表面に前記静電潜像を形成可能な感光部と、前記静電潜像を形成不可能な非感光部とを規則的に形成する工程と、を含むことを特徴とする感光体ドラムの製造方法。
【請求項8】
前記遮光層の形成は、前記感光体層の表面に塗布した感光性材料を、フォトリソグラフィーにより前記感光部を形成すべき領域から選択的に除去した後、硬化させることにより行なうことを特徴とする請求項7に記載の感光体ドラムの製造方法。
【請求項9】
基板上に整列配置された発光画素から出射する光を導電性の円筒状部材の表面上に形成された感光部で受光して静電潜像を形成する感光体ドラムの製造方法であって、
前記円筒状部材の表面の所定の領域にのみ前記感光部を形成する工程を含むことを特徴とする感光体ドラムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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