説明

感圧センサ

【課題】圧力の変化に対して抵抗値が連続的に変化する感圧センサを提供する。
【解決手段】感圧センサ1は、圧力により抵抗値が変化する感圧フィルム2と、感圧フィルム2を挟む一対の電極3と、一対の電極3の他方に対して一方が近接するように、一方の電極3に張り付けられた可撓性フィルム4とを備えている。この感圧センサ1では、一対の電極3が、感圧フィルム2を圧縮している。また、感圧センサ1は、厚さ方向に貫通した開口部5aを有するベースフィルム5を備えている。この感圧センサ1では、ベースフィルム5および感圧フィルム2の厚さ方向を一致させてベースフィルム5の開口部5aに感圧フィルム2が設けられている。また、ベースフィルム5と一方の電極3とで段差部11が構成されている。また、可撓性フィルム4が、ベースフィルム5から一方の電極3へ段差部11にならうようにして張り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧センサに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008−285052号公報(特許文献1)には、自動車などの車両に搭載される着座センサが開示されている。この着座センサは、導電パターン回路が形成された2枚の可撓性フィルム基板を、切欠部を有する絶縁スペーサを介して積層した構造を有している。これによれば、座席に乗員が着座した場合、その荷重によって一方の可撓性フィルム基板が撓み、その導電パターン回路が、絶縁スペーサの切欠部を通して他方の可撓性フィルム基板の導電パターン回路と接触し、電流が流れる。また、乗員が座席から離れた場合、導電パターン回路同士の接触がなくなり、電流が流れなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−285052号公報(図2、明細書段落[0013])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、座席に乗員が着座しているか否かを検知することを主眼とし、着座センサが、加圧された際の抵抗変化を設定された閾値によりONまたはOFFとして判定(出力)できることを利用している。具体的には、着座センサは、座席に乗員が着座する前では、導電パターン回路どうしが接触していないので、抵抗が無限大となり、出力がOFFとなる。また、着座センサは、座席に乗員が着座した後では、導電パターン回路どうしが接触するので、抵抗が所定の範囲内に収まり、出力がONとなる。
【0005】
このように、単に、出力がONかOFFかを段階的(デジタル的)に検知することに対しては、特許文献1の着座センサを用いることは有用である。しかしながら、圧力の変化に対して抵抗値を連続的(アナログ的)に検出すること(例えば、人間とクッションとの間や、マネキンと衣服との間の接触圧を測ること)に対しては、特許文献1の着座センサは用いにくいものと考えられる。
【0006】
なぜならば、可撓性フィルム基板が変位して、導電パターン回路どうしが接触し始めの状態は、抵抗値が高く、不安定な状態だからである。このため、特許文献1の着座センサは、例えば、図13に示すように、抵抗値Rが、圧力Pの増加により、無限大の状態Xから、数MΩ以上でばらつく不安定な状態Yを介して、安定した数kΩオーダの状態Zへと、不連続に変化してしまう。
【0007】
また、特許文献1の着座センサは、状態Yから所定の加圧領域(微小圧領域)では抵抗値Rが対数的に変化するため、例えば圧力Pに対して抵抗値Rが直線的に変化するものに比べて、制御が困難になるものと考えられる。
【0008】
本発明の目的は、圧力の変化に対して抵抗値が連続的に変化する感圧センサを提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る感圧センサは、圧力により抵抗値が変化する感圧フィルムと、前記感圧フィルムを挟む一対の電極と、前記一対の電極の他方に対して一方が近接するように、前記一方の電極に張り付けられた可撓性フィルムとを備えている。この感圧センサでは、前記一対の電極が、前記感圧フィルムを圧縮している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、圧力の変化に対して抵抗値が連続的に変化する感圧センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る感圧センサの要部を示す断面図である。
【図2】図1に示した感圧センサの平面図である。
【図3】図1に示した感圧センサの組立斜視図である。
【図4】図1に示した感圧センサの組立断面図である。
【図5】図1に示した感圧センサの組立平面図である。
【図6】図1に示した感圧センサに配線を接続した斜視図である。
【図7】図6に示した感圧センサの組立斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る感圧センサの動作を説明するための図である。
【図9】図8に続く感圧センサの動作を説明するための図である。
【図10】図9に続く感圧センサの動作を説明するための図である。
【図11】図8〜図10に示したセンサにおいて、圧力の変化に対して抵抗値が連続であることを説明するための図である。
【図12】本発明の実施形態2に係る感圧センサの要部を示す断面図である。
【図13】着座センサにおいて、圧力の変化に対して抵抗値が不連続であることを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
また、実施形態で示す構成要素は、本発明において必ずしも必須のものとは限らない。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0014】
[実施形態1]
本発明の実施形態では、物体が接触して発生した圧力の変化を電気抵抗値(単に抵抗値ともいう。)の変化として検出する感圧センサに適用して説明する。
【0015】
まず、本実施形態に係る感圧センサ1の構造について図1〜図7を参照して説明する。図1は感圧センサ1の要部を示す断面図であり、図2は図1に示した感圧センサ1の平面図である。図2のX−X線における感圧センサ1の断面が、図1に示されている。また、図3〜図5は感圧センサ1の組立段階の図であって、それぞれ斜視図、断面図、平面図である。図5のX−X線における感圧センサ1の断面が、図4に示されている。また、図6は感圧センサ1に配線14を接続した状態の斜視図であり、図7はその組立段階の斜視図である。
【0016】
感圧センサ1は、図1、図2に示すように、感圧フィルム2と、一対の電極3、3と、一対の可撓性フィルム4、4と、ベースフィルム5とを備えている。この感圧センサ1は、外形状が円盤状となっている。これら、感圧フィルム2と、一対の電極3、3と、一対の可撓性フィルム4、4と、ベースフィルム5とで構成されるモジュールは、感圧モジュールともいう。
【0017】
また、感圧センサ1は、図6に示すように、一対のパッド13、13と、一対の配線14、14(例えば、ビニール線などのリード線、導線などから構成される)とを備えている。一端が感圧センサ1側で例えばはんだ付けなどで接続された一対の配線14、14は、他端が外部測定機器に接続される。感圧センサ1は、感圧フィルム2を中心に対称構造となっている。
【0018】
感圧フィルム2は、圧力(荷重)により抵抗値が変化するものである。感圧フィルム2の構成材料は、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂(合成樹脂)に、複数の導電性粒子を混ぜ合わせてなる感圧導電性エラストマ(感圧導電性ゴム)である。また、感圧フィルム2の外形状は、平面視円形状のフィルム(厚さが、例えば100μm程度)である。
【0019】
感圧フィルム2は、厚さ方向に圧力が加えられる(圧縮される)と、フィルムが薄くなり、複数の導電性粒子が密になるため、抵抗値が低下する。すなわち、感圧フィルム2は、圧力により抵抗値が変化する。この感圧フィルム2の抵抗値は、一対の電極3、3(2端子)から取り出される。
【0020】
一対の電極3、3は、感圧フィルム2を圧縮するものであり、感圧フィルム2を抵抗部材としたときの外部接続端子でもある。一対の電極3、3は、互いに対向し、感圧フィルム2の両面を挟むように設けられている。感圧フィルム2と一対の電極3、3とは積層されて、これらを含んだ積層体12(電子部品)が構成される。
【0021】
各電極3は、同じ材料、同じ形状で構成されている。電極3の構成材料は、例えば、真鍮、銀などの金属を含む導体である。また、電極3の外形状は、図3に示すように、プレート部3aと、プレート部3aの一面中央を中心に設けられた突起部3bとを有した形状(最も肉厚の厚さが、例えば100μm程度)である。
【0022】
プレート部3aは、平面視円形状に形成されている。プレート部3aは、感圧フィルム2を圧縮する基部である。また、プレート部3aは、感圧フィルム2と接する面(平坦面)の平面積が感圧フィルム2の平面積と同じである。また、プレート部3aは、感圧フィルム2の平面領域内に設けられている。
【0023】
また、突起部3bは、感圧フィルム2と接する面と反対側の面(プレート部3aの一面)に該反対側の面から突起している。この突起部3bは、平面視円形状(例えばプレート部3aと同心)に形成されている。突起部3bは、配線14との接続部となる。このため、突起部3bの頂部面は、配線14と接続を容易にするために、平坦面に形成されている。
【0024】
可撓性を有する一対の可撓性フィルム4、4は、一対の電極3が互いに近接するように、その近接方向の力を発生させるものである。一対の可撓性フィルム4、4は、互いに対向し、積層体12の両面を挟むように設けられている。より具体的には、一対の可撓性フィルム4のそれぞれは、図1に示すように、一対の電極3の他方(下側電極3または上側電極3)に対して一方(上側電極3または下側電極3)が近接するように、一方の電極(上側電極3または下側電極3)に張り付けられている(張設されている)。これによれば、一対の電極3、3により、感圧フィルム2に一定の圧力を負荷した状態となる。
【0025】
各可撓性フィルム4は、同じ材料、同じ形状で構成されている。可撓性フィルム4の構成材料は、例えば、ポリイミド系樹脂などの熱硬化性樹脂(合成樹脂)から構成されている。また、可撓性フィルム4は、電子部品でもある積層体12を包んで電気的に保護するため、絶縁性を有している。すなわち、可撓性フィルム4は、絶縁性フィルムでもある。
【0026】
また、可撓性フィルム4の外形状は、平面視円形状のフィルム(厚さが、例えば50μm程度)であり、厚さ方向に貫通した開口部4aを有した形状である。この開口部4aは、例えば、プレスによる抜き加工によって形成される。なお、開口部4aには、図1に示すように、可撓性フィルム4から露出するように電極3の突起部3bが設けられる。
【0027】
この露出した電極3の突起部3bが、配線14との接続端子(接続部)となる。ここで、突起部3bを設けず、電極3がプレート部3aだけで構成された場合を考える。この場合、電極3(接続部)に配線14を接続させた後、この接続部を含んで可撓性フィルム4で覆うこともできる。しかしながら、電極3と可撓性フィルム4との間に配線14が挟まれることで、電極3に対する可撓性フィルム4の張り付け強度が低下するおそれもある。そこで、可撓性フィルム4から電極3を露出させて接続端子を確保するとともに、可撓性フィルム4の張り付け強度の低下を防止している。
【0028】
ベースフィルム5は、感圧センサ1自体の強度を向上するために、感圧センサ1の骨組みとして用いられるものである。ベースフィルム5の構成材料は、例えば、ポリイミド系樹脂などの熱硬化性樹脂(合成樹脂)である。ベースフィルム5の外形状は、平面視円形状のフィルム(厚さが、例えば75μm程度)であり、厚さ方向に貫通した開口部5aを有した形状である。この開口部5aは、例えば、プレスによる抜き加工によって形成される。なお、開口部5aには、図1に示すように、ベースフィルム5および積層体12の厚さ方向を一致させて、積層体12が設けられる。
【0029】
一対のパッド13、13は、感圧センサ1が外部から圧力を受ける際に、外部と直接接触される押圧子である。一対のパッド13、13は、図6、図7に示すように、互いに対向し、露出した突起部3bを覆って積層体12の両面を挟むように導電性接着剤で接着して設けられている。
【0030】
各パッド13は、同じ形状、同じ材料で構成されている。パッド13の外形状は、平面視円形状パッド(厚さが、例えば500μm程度)である。また、パッド13の構成材料は、例えば、合成ゴムなどのゴムから構成されている。このため、パッド13は、弾性を有している。このように弾性を有するパッド13に外部から圧力が加えられることで、感圧フィルム2の抵抗値に含まれて検出される接触抵抗を緩やかに変化させることができる。さらに、パッド13は、絶縁性も有しており、露出した電極3の突起部3b上に設けられ、積層体12を電気的に保護する。
【0031】
感圧センサ1は、図3〜図5に示すように、平面視円形状の各構成部材を同心に重ねて組み立てられる。これら図3〜図5に示す状態は、可撓性フィルム4が電極3に張り付けられる前の状態である。ここでは、感圧フィルム2の両面上に、それぞれ電極3、3が配置されている。また、各電極3上に、それぞれ可撓性フィルム4、4が、突起部3bを露出して配置されている。また、ベースフィルム5の開口部5a内に、感圧フィルム2が配置されている。また、一対の可撓性フィルム4、4の間に、ベースフィルム5(スペーサ)が配置されている。このとき、可撓性フィルム4とベースフィルム5との間には、感圧センサ1の設計上、隙間(ギャップ)が設けられる。
【0032】
感圧センサ1が感圧フィルム2を中心とする対称構造であるため、図4に示すように、感圧フィルム2の厚さの中間面と、ベースフィルム5の厚さの中間面とは、同一面(図4中、破線で示されている。)となるように治具などによって配置される。感圧フィルム2の厚さがベースフィルム5の厚さより厚いので、感圧フィルム2の両面部がベースフィルム5の両面からはみ出るように配置される。この感圧フィルム2の両面上に、それぞれ電極3、3が配置されるので、ベースフィルム5と各電極3とで段差部11が構成される。
【0033】
このように各構成部材が配置された状態で、可撓性フィルム4を加圧して電極3に張り付ける(図1参照)。可撓性フィルム4の加圧した状態の調整方法は、感圧フィルム2、電極3、ベースフィルムの厚さなどや、張り付けの際に係る圧力などの条件を基に行われる。これにより、一対の電極3、3の他方に対して一方が近接するように、一方の電極3に可撓性フィルム4が張り付けられる。
【0034】
本実施形態では、ベースフィルム5と一方の電極3とで段差部11が構成されており、可撓性フィルム4が、一方の電極3からベースフィルム5へ段差部11にならうようにして張り付けられている。これにより、可撓性フィルム4は、電極3の中央部からベースフィルム5の外周部へ引っ張られ、図1に示すように、力F1が発生する。この力F1の分力が、力F2、力F3である。この力F2は、一対の電極3が互いに近接する方向に発生するものである。これにより、一対の電極3、3が、感圧フィルム2を圧縮することになる。
【0035】
感圧フィルム2は、厚さ方向に圧力が加えられる(圧縮される)と、可撓性フィルム4の張り付け前からわずかに薄くなり、抵抗値が低下する。このため、感圧センサ1は、可撓性フィルム4の張り付け前の状態から抵抗値が低下するとともに、一定の(安定した)抵抗値を有する状態となる。
【0036】
このように、感圧フィルム2に一定の圧力を負荷した状態となるため、外部から圧力が加えられていない初期状態において安定した抵抗値が確保される。この初期状態から、圧力が加えられることで、圧力の変化に対して抵抗値が連続的に変化するようになる。
【0037】
次に、本実施形態に係る感圧センサ1について図8〜図11を参照して説明する。図8〜図10は動作中の感圧センサ1を説明するための図である。また、図11は感圧センサ1において、圧力(入力)の変化に対して抵抗値(出力)が連続であることを説明するための図である。
【0038】
ここで、図8に示す感圧センサ1が、図1に示す感圧センサ1と相違する点について説明する。電極3は、プレート部3aのみを有している。また、可撓性フィルム4は、開口部4aを有していない。また、電極3と配線14との接続部は、露出せずに可撓性フィルム4によって覆われている。また、感圧フィルム2の平面積は、電極3の平面積よりも大きい。
【0039】
このように、感圧フィルム2の平面積を大きくしたとしても、感圧センサ1の抵抗値に影響する電極3と接触する面積は変わらない。また、構造上は、感圧フィルム2と電極3の平面積は同じで良いが、感圧フィルム2を少し大きくすることで、組立時に感圧フィルム2と電極3にズレが生じても、確実に電極3全面で感圧フィルム2を圧縮することができる。
【0040】
このように、図8に示す感圧センサ1が、図1に示す感圧センサ1と相違するが、動作としては同様となる。また、感圧センサ1(感圧モジュール)は、対称構造となっているため、感圧モジュールが浮いた状態であれば、感圧センサ1の両面に対して、それぞれ外部から加圧することもできる。ここでは、説明を容易にするために、感圧センサ1の一方の面(上面)に対して、外部から加圧する場合を説明する。
【0041】
図8に示すように、一対の電極3、3の他方に対して一方が近接するように、可撓性フィルム4が一方の電極3に張り付けられることで、一対の電極3、3が、感圧フィルム2の両面側から圧力P1で圧縮している。この状態は、外部から圧力が加えられておらず(無負荷)、初期状態となる。この初期状態では、図11の符号Aに示すように、抵抗値Rが一定の値(例えば、数kΩ〜数百Ω)を示す。
【0042】
続いて、図9に示すように、外部から圧力P2を加えると感圧フィルム2が薄くなり、図11の符号Bに示すように、抵抗値Rが低下し始める。感圧センサ1では、初期状態において、感圧フィルム2が加圧された状態であるため、外部からの圧力に対して敏感に反応する。続いて、図10に示すように、外部から圧力P3(>P2)を加えるとさらに感圧フィルム2が薄くなり、図11の符号Cに示すように、抵抗値Rが直線的に変化する。
【0043】
このように、本実施形態によれば、圧力Pの変化に対して抵抗値Rが連続的に変化する感圧センサ1を提供することができる。ここで、電極3が突起部3bを有し、この上に弾性を有するパッド13が設けられる場合、感圧フィルム2と電極3との接触面積が緩やかになり、外部から圧力が加えられることで、感圧フィルム2の抵抗値に含まれて検出される接触抵抗を対数的のように急激ではなく、緩やかに変化させることができる。したがって、図11の破線に示すように、圧力Pの変化に対して抵抗値Rを直線的に変化させることができる。
【0044】
[実施形態2]
前記実施形態1では、ベースフィルム5を用いた場合について説明した。本実施形態では、ベースフィルム5を用いない場合について図12を参照して説明する。図12は本実施形態に係る感圧センサ1の要部を示す断面図である。
【0045】
ベースフィルム5は、感圧センサ1自体の強度を向上するために、感圧センサ1の骨組みとして用いられたものである。すなわち、感圧センサ1自体の強度が確保できるのであれば、ベースフィルム5を用いなくとも良い。
【0046】
感圧センサ1は、一対の電極3、3の他方(下側)に対して一方(上側)が近接するように、一方(上側)の電極3に張り付けられた可撓性フィルム4(上側)と、この可撓性フィルム4(上側)と対をなし、一対の電極3、3の一方(上側)に対して他方(下側)が近接するように、他方(下側)の電極3に張り付けられた可撓性フィルム4(下側)とを備えている。また、感圧フィルム2と一対の電極3、3とを含んで積層体12が構成されている。また、一対の可撓性フィルム4、4は、互いに積層体12の周囲で接し、積層体12を包むようにして張り付けられている。一対の電極3、3に張り付けられた一対の可撓性フィルム4、4は、対向する面どうしが感圧フィルム2の周囲で接着される。
【0047】
感圧センサ1が感圧フィルム2を中心とする対称構造であるため、感圧フィルム2の厚さの中間面と、可撓性フィルム4、4どうしの接触面とは、同一面(図12中、破線で示されている。)となるように配置される。また、感圧フィルム2の両面上に、それぞれ電極3、3が配置される。これにより、可撓性フィルム4、4どうしの接触面と、各電極3の表面とで段差部11が構成される。
【0048】
本実施形態では、可撓性フィルム4は、電極3の中央部から積層体12(感圧フィルム2)の周囲へ引っ張られるため、一対の電極3、3の一方に対して他方が近接する方向に力が発生する。これにより、一対の電極3、3が、感圧フィルム2を圧縮することになる。したがって、本実施形態によっても、圧力の変化に対して抵抗値が連続的に変化する感圧センサを提供することができる。
【0049】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、代表的なものの新規な特徴、作用および効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0050】
感圧センサ1は、圧力により抵抗値が変化する感圧フィルム2と、感圧フィルム2を挟む一対の電極3、3と、一対の電極3、3の他方に対して一方が近接するように、一方の電極3に張り付けられた可撓性フィルム4とを備えている。この感圧センサ1では、一対の電極3、3が、感圧フィルム2を圧縮している。
【0051】
これによれば、感圧フィルム2に一定の圧力を負荷した状態となるため、外部から圧力が加えられていない初期状態において安定した抵抗値が確保される。この初期状態から、圧力が加えられることで、圧力の変化に対して抵抗値が連続的に変化するようになる。
【0052】
また、感圧センサ1は、厚さ方向に貫通した開口部5aを有するベースフィルム5を備えている。この感圧センサ1では、感圧フィルム2と一対の電極3、3とを含んで積層体12が構成されている。また、ベースフィルム5および積層体12の厚さ方向を一致させてベースフィルム5の開口部5aに積層体12が設けられている。また、ベースフィルム5と一方の電極3とで段差部11が構成されている。また、可撓性フィルム4が、一方の電極3からベースフィルム5へ段差部11にならうようにして張り付けられている。
【0053】
これによれば、構造上の段差部11を用いることで、より確実に可撓性フィルム4を一対の電極3、3の他方に対して一方が近接するように張り付けることができる。また、ベースフィルム5を用いることで、感圧センサ1自体の強度を向上することができる。
【0054】
また、感圧センサ1は、可撓性フィルム4と対をなし、一対の電極3、3の一方に対して他方が近接するように、他方の電極3に張り付けられた可撓性フィルム4を備えている。この感圧センサ1では、感圧フィルム2と一対の電極3、3とを含んで積層体12が構成されている。また、一対の可撓性フィルム4、4は、互いに積層体12の周囲で接し、積層体12を包むようにして張り付けられている。
【0055】
これによれば、より確実に一方の可撓性フィルム4を一対の電極3、3の他方に対して一方が近接するように張り付けることができる。また、より確実に他方の可撓性フィルム4を一対の電極3、3の一方に対して他方が近接するように張り付けることができる。したがって、一対の可撓性フィルム4、4により、一対の電極3、3が互いに近接するように、その近接方向の力を発生させることができる。
【0056】
また、感圧センサ1では、感圧フィルム2を圧縮する電極3は、感圧フィルム2と接する面と反対側の面に該反対側の面から突起する突起部3bを有している。また、可撓性フィルム4は、厚さ方向に貫通した開口部4aを有している。また、可撓性フィルム4の開口部4aには、可撓性フィルム4から露出するように電極3の突起部3bが設けられている。この露出した電極3の突起部3bが、配線14との接続端子である。
【0057】
これによれば、接続端子を確保するとともに、電極3への可撓性フィルム4の張り付け強度の低下を防止することができる。なお、電極3を露出させずに、電極3に配線14を接続し、その接続部を覆うように可撓性フィルム4を設けることもできると考えられるが、電極3を露出させて接続端子とした方が、前述の効果をより高く得ることができる。
【0058】
また、感圧センサ1は、露出した電極3の突起部3b上に設けられた弾性を有するパッド13を備えている。
【0059】
これによれば、弾性パッド13を押圧子として用いることができ、これに外部から圧力が加えられることで、感圧フィルム2の抵抗値に含まれて検出される接触抵抗を緩やかに変化させることができる。したがって、圧力の変化に対して抵抗値を直線的に変化する感圧センサ1を得ることができる。なお、パッド13が弾性ではなく、硬度があるものを設けることもできると考えられるが、パッド13は弾性を有した方が、前述の効果をより高く得ることができる。
【0060】
以上、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0061】
例えば、感圧フィルムと、一対の電極と、可撓性フィルムとを備えた感圧センサにおいて、一対の電極の一方が感圧フィルム側に凸に反るように可撓性フィルムを張り付けて、一対の電極が感圧フィルムを圧縮するようにした場合であっても良い。このような場合であっても、感圧センサは、圧力の変化に対して抵抗値が連続的に変化するものとなる。
【0062】
また、例えば、前記実施形態では、積層体を挟む一対の可撓性フィルムを張り付けることで、初期状態において感圧フィルムの両面側から加圧された場合について説明した。これに限らず、感圧フィルムの片面側からのみ加圧した場合であっても良い。例えば、他方の電極側を基台に固定し、一方の電極側を押圧側として、感圧センサを用いることができる。このような場合であっても、感圧センサは、圧力の変化に対して抵抗値が連続的に変化するものとなる。
【0063】
また、例えば、前記実施形態では、感圧センサの外形状を円盤形状とした場合について説明した。これに限らず、感圧センサの外形状を平面視が矩形状、多角形状などの盤形状とした場合であっても良い。このような場合であっても、感圧センサは、圧力の変化に対して抵抗値が連続的に変化するものとなる。
【0064】
また、例えば、前記実施形態では、感圧フィルムの厚さがベースフィルムの厚さよりも厚い場合について説明した。これに限らず、感圧フィルムの厚さがベースフィルムの厚さ以下であっても良い。感圧フィルムと一対の電極とを含んでなる積層体の厚さが、ベースフィルムの厚さより厚ければ、段差部が構成され、この段差部にならってベースフィルムから一方の電極へ可撓性フィルムを張り付けることができるからである。
【0065】
また、例えば、前記実施形態では、開口部を有するベースフィルムを備え、この開口部に感圧フィルムを設けた場合について説明した。これに限らず、ベースフィルムを用いない代わりに、一対の電極よりも感圧フィルム自体の平面積を大きくして、この感圧フィルムの中央部に電極を設け、外周部に可撓性フィルムを接着して、一対の電極の他方に対して一方が近接するように、一方の電極に可撓性フィルムを張り付けても良い。
【0066】
また、例えば、前記実施形態では、電極の感圧フィルムと接する面を平坦面とした場合について説明した。これに限らず、感圧フィルムと接する面が感圧フィルム側にドーム状に膨らんで形成とした場合であっても良い。これにより、電極と感圧フィルムとの接触面積が緩やかになり、外部から圧力が加えられた場合、感圧フィルムの抵抗値に含まれて検出される接触抵抗を緩やかに変化させることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 感圧センサ
2 感圧フィルム
3 電極
3a プレート部
3b 突起部
4 可撓性フィルム
4a 開口部
5 ベースフィルム
5a 開口部
11 段差部
12 積層体
13 パッド
14 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力により抵抗値が変化する感圧フィルムと、
前記感圧フィルムを挟む一対の電極と、
前記一対の電極の他方に対して一方が近接するように、前記一方の電極に張り付けられた可撓性フィルムと
を備えており、
前記一対の電極が、前記感圧フィルムを圧縮していることを特徴とする感圧センサ。
【請求項2】
請求項1記載の感圧センサにおいて、
厚さ方向に貫通した開口部を有するベースフィルムを備えており、
前記感圧フィルムと前記一対の電極とを含んで積層体が構成されており、
前記ベースフィルムおよび前記積層体の厚さ方向を一致させて前記ベースフィルムの開口部に前記積層体が設けられており、
前記ベースフィルムと前記一方の電極とで段差部が構成されており、
前記可撓性フィルムが、前記一方の電極から前記ベースフィルムへ前記段差部にならうようにして張り付けられていることを特徴とする感圧センサ。
【請求項3】
請求項1記載の感圧センサにおいて、
前記可撓性フィルムと対をなし、前記一対の電極の一方に対して他方が近接するように、前記他方の電極に張り付けられた可撓性フィルムを備えており、
前記感圧フィルムと前記一対の電極とを含んで積層体が構成されており、
前記一対の可撓性フィルムは、互いに前記積層体の周囲で接し、前記積層体を包むようにして張り付けられていることを特徴とする感圧センサ。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の感圧センサにおいて、
前記感圧フィルムを圧縮する前記電極は、前記感圧フィルムと接する面と反対側の面に該反対側の面から突起する突起部を有しており、
前記可撓性フィルムは、厚さ方向に貫通した開口部を有しており、
前記可撓性フィルムの開口部には、前記可撓性フィルムから露出するように前記電極の突起部が設けられており、
露出した前記電極の突起部が、配線との接続端子であることを特徴とする感圧センサ。
【請求項5】
請求項4記載の感圧センサにおいて、
露出した前記電極の突起部上に設けられた弾性を有するパッドを備えていることを特徴とする感圧センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−83548(P2013−83548A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223673(P2011−223673)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)