説明

感圧性接着テ―プの供給方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クリ―ン度の高い作業領域、たとえば、精密印刷、リソグラフイ、医療関係でサブミクロンの異物管理が問題となる作業領域に供給される工程材料としての感圧性接着テ―プに関し、またこの感圧性接着テ―プの上記作業領域への供給方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
支持体上に感圧性接着剤層を設け、この層の表面に剥離ライナを貼り合わせてなる感圧性接着テ―プは、これをクリ―ン度の高い作業領域において工程材料として用いる場合、クリ―ンル―ム内で製造するのが常である。しかし、この場合でも、製造中や包装ないし輸送過程でテ―プに異物が付着することがあつた。この異物付着テ―プをクリン度の高い作業領域に供給すると、付着異物が作業領域内で飛散し、クリン度を低下させることがあつた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、サブミクロンの異物管理が問題となる作業領域に工程材料としての感圧性接着テ―プを供給する場合に、テ―プに付着する異物が作業領域内で飛散すると、作業領域のクリン度を低下させ、この領域内で製造される製品の不良を惹起し、歩留りや信頼性の低下などを引き起こしやすい。
【0004】
したがつて、このような作業領域内に工程材料としての感圧性接着テ―プを供給する場合、テ―プに付着している異物の数を低減させるとともに、付着異物の飛散を防止する手段を設けることが不可欠である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討した結果、感圧性接着テ―プに特定の異物付着ないし異物飛散防止手段を付加することにより、付着異物の低減とともに、付着異物の飛散を防止して、作業領域のクリン度を維持でき、この領域内で製造される製品の異物による不良の発生をなくし、歩留りや信頼性を向上できることを見い出し、本発明を完成するに至つた。
【0006】
すなわち、本発明は、支持体上に感圧性接着剤層を有し、この層の表面に剥離ライナが貼り合わされてなり、かつ支持体の背面に粘性層が接触している感圧性接着テ―プ、とくに、剥離ライナの背面に粘性層を有し、この粘性層が支持体の背面に接触するように捲回されてなる上記感圧性接着テ―プを使用し、この感圧性接着テ―プをクリン度の高い作業領域に供給するにあたり、供給直前に支持体の背面に接触している粘性層を剥離ライナとともに分離して供給することを特徴とする感圧性接着テ―プの供給方法を提供するものである。
【0007】
このように、本発明は、支持体、感圧性接着剤層および剥離ライナを有する感圧性接着テ―プを、クリン度の高い作業領域に供給するにあたり、とくに好ましい態様として、剥離ライナの背面に粘性層を設けて、テ―プをロ―ル状に捲回したときに支持体の表面に粘性層が接触するような構成とし、このテ―プをクリン度の高い作業領域に供給するにあたり、供給直前に上記の粘性層を剥離ライナとともに分離して供給し、これによりテ―プに付着するゴミ類をクリン度の高い作業領域に搬入させないようにしたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の感圧性接着テ―プの構成と、このテ―プのクリン度の高い作業領域への供給方法に関し、図1〜図3を用いて説明する。
【0009】
図1は、本発明の感圧性接着テ―プの一例を示したものであり、この感圧性接着テ―プ1は、支持体2上に感圧性接着剤層3を有し、この層3の表面に剥離ライナ4が貼り合わされており、しかも、この剥離ライナ4の背面4a、つまり、剥離処理を施していない面4aに粘性層5が設けられて、この粘性層5が支持体2の背面と接触するように捲回されている。
【0010】
このテ―プ1の材料構成は、とくに限定されないが、支持体2には、プラスチツクフイルムが好ましく用いられる。感圧性接着剤層3には、天然ゴム、合成ゴム、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などに代表される熱硬化性樹脂、シアノアクリレ―トなどに代表される吸湿硬化性樹脂、嫌気性硬化性樹脂などを主剤とした感圧性接着剤が好ましく用いられる。
【0011】
剥離ライナ4には、プラスチツクフイルムの一面にシリコン樹脂などの剥離処理剤を塗布したものが好ましく用いられる。剥離ライナ4の背面に設ける粘性層5は、感圧性接着剤層3とは異なる粘着性物質からなり、支持体2背面に対する剥離性が良好で捲き戻しが容易であり、また捲き戻し時に顕著に破壊したり粉体化しないものであればよく、とくに好適な粘着性物質として、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン−イソプレン系ゴムなどからなるものが挙げられる。
【0012】
このように構成される感圧性接着テ―プ1は、これをクリン度の高い作業領域に供給するにあたり、供給直前に支持体2の背面に接触している粘性層5を剥離ライナ4と一体に分離して供給する。ここで、粘性層5の支持体2背面に対する接着力が、感圧性接着剤層3の剥離ライナ4(の剥離処理面)に対する接着力よりも小さいか、あるいは大きいかにより、粘性層5および剥離ライナ4の分離方式が以下の如く異なつたものとなる。
【0013】
粘性層5の支持体2背面に対する接着力が、感圧性接着剤層3の剥離ライナ4に対する接着力より小さい場合、テ―プ捲き戻し時に、感圧性接着剤層3と剥離ライナ4とが貼り付いたまま捲き戻されるため、図2に示すように、クリン度の低い領域Yよりクリン度の高い作業領域Zへ供給する直前において、支持体2および感圧性接着剤層3からなるテ―プ本体10と、粘性層5を有する剥離ライナ4とを、連続的に分割し、これにより粘性層5を分離する。
【0014】
また、逆に、粘性層5の支持体2背面に対する接着力が、感圧性接着剤層3の剥離ライナ4に対する接着力より大きい場合、図3に示すように、クリン度の低い領域Yよりクリン度の高い作業領域Zへ供給する直前において、テ―プ最外周の剥離ライナ4を粘性層5ごと1層分引き剥がし、この粘性層5を有する剥離ライナ4と、支持体2および感圧性接着剤層3からなるテ―プ本体10とを、連続的に分割し、これにより粘性層5を分離する。
【0015】
このように、感圧性接着テ―プ1の支持体2の背面に粘性層5を接触させる構成として、かつこのテ―プ1をクリン度の高い作業領域内に供給するにあたり、供給直前に粘性層5を剥離ライナ4と一体に分離するようにしたことにより、仮にテ―プ1の製造工程において支持体2の背面などに異物が付着したとしても、この異物は粘性層5に移行することから、上記背面の異物は低減されて、クリン度の高い作業領域内への上記異物の飛散が防がれ、もとより、剥離ライナ4の背面に付着する異物も作業領域に飛散することはない。
【0016】
なお、上記構成の感圧性接着テ―プでは、剥離ライナの背面に粘性層を設け、これを捲回時に支持体背面に接触させる構成としているが、粘性層が支持体背面に接触する構成は、上記の態様に限らず、他の任意の構成をとれるものである。また、上記の実施態様では、感圧性接着テ―プをクリン度の低い領域より高い作業領域へ供給することを前提として説明しているが、本発明の供給方式は、クリン度がほぼ同等の作業領域間で感圧性接着テ―プの供給を行う場合でも、同様に適用できることは言うまでもない。
【0017】
なおまた、本発明の感圧性接着テ―プにおいて、支持体に帯電防止機能を付与しておくと、テ―プ製造時の静電気発生による異物の付着を減少でき、またクリン度の低い領域で支持体の背面から粘性層を剥離する際の帯電による異物の静電付着(再付着)を防止することもできるので、より望ましい。この帯電防止機能は、支持体の導電化により付与される。導電化には、導電処理層の塗布、帯電防止剤の支持体材料への練り込みなどがあるが、これに限定されず、支持体の表面抵抗が帯電防止効果の得られる程度まで下がればよく、とくに、上記表面抵抗が1011Ω以下となれば好都合である。
【0018】
【実施例】
つぎに、本発明を、実施例および比較例により、さらに具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
【0019】
実施例1
厚さが50μmのポリエステルフイルムを支持体とし、この支持体上に、アクリル系ポリマ―A100部、オクチルフタレ―ト10部およびイソシアネ―ト化合物5部からなる感圧性接着剤aを、厚さが20μmとなるように塗布して、感圧性接着テ―プのテ―プ本体を作製した。
【0020】
これとは別に、厚さが25μmのポリエステルフイルムの片面に、ポリメチルシロキサン樹脂を0.1μmの厚さで塗布して、剥離ライナとした。このライナの背面に、アクリル系ポリマ―B100部、イソシアネ―ト化合物5部からなる粘性物質bを、厚さが10μmとなるように塗布して、粘性層を形成した。
【0021】
この粘性層を形成した剥離ライナを、前記方法で作製した感圧性接着テ―プのテ―プ本体の感圧性接着剤層面に、この接着剤層面とポリメチルシロキサン樹脂を塗布した剥離処理面とが接触するように、長尺で貼り合わせたのち、捲回し、ロ―ル状の感圧性接着テ―プを作製した。
【0022】
この感圧性接着テ―プを、図2に示す方式により、クリン度100の作業領域に、供給直前に粘性層を有する剥離ライナを剥離しながら、供給した。その際、作業領域のダストレベル(φ>0.5μmダスト)を、パ―テイクルカウンタで測定した。作業前のクリン度の測定値は、27個/ftであつた。
【0023】
また、粘性層を有する剥離ライナを剥離したのち、支持体背面の付着異物を、下記の方法により測定した。さらに、粘性層の支持体背面に対する接着力と、感圧性接着剤層の剥離ライナに対する接着力を、下記の方法により測定した。これらの結果は、後記の表1に示されるとおりであつた。
【0024】
<付着異物数の測定>
▲1▼ 幅100mmの試験テ―プを長さ100mのロ―ル状に捲回した捲回ロ―ルと、巻き取りロ―ルとの間に、異物付着用粘着テ―プをその糊面が外を向くように捲き付けた回転ロ―ルを、配置した。
▲2▼ 捲回ロ―ルより試験テ―プを捲き戻し、粘性層を有する剥離ライナを剥離しながら、テ―プ本体の支持体背面に回転ロ―ル上の粘着テ―プの糊面が接触するように走行させ、巻き取りロ―ルに巻き取つた。
▲3▼ 50m捲き取つたのち、回転ロ―ル上の粘着テ―プを回収し、糊面に付着した異物の個数を、走査型電子顕微鏡(SEM)で数えた。
▲4▼ SEMのサンプリングは、約1cmの大きさの試料を、総量約250cm より10点採り、試料内の異物個数を計量し、面積当たりの個数に換算後、その平均値を求めた。
【0025】
<接着力の測定>
JIS K−Z−0237−91に準拠して、幅20mm、長さ300mmの短冊状の試験テ―プを切り出し、23℃、65%RHの条件下で、剥離速度300mm/分、剥離角度180度の接着力を測定した。
【0026】
実施例2
剥離ライナの背面に、粘性物質bに代え、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量28重量%)からなる粘性物質cを用いて、粘性層を形成するようにした以外は、実施例1と同様にして、長尺のテ―プを捲回したロ―ル状の感圧性接着テ―プを作製した。
【0027】
この感圧性接着テ―プを、図3に示す方式により、クリン度100の作業領域に供給した。その際、作業領域のダストレベルを、実施例1と同様にして、パ―テイクルカウンタで測定した。また、実施例1と同様にして、支持体背面の付着異物数、粘性層の支持体背面に対する接着力と、感圧性接着剤層の剥離ライナに対する接着力を測定した。結果は、表1に示されるとおりであつた。
【0028】
比較例1
剥離ライナの背面に粘性層を形成しなかつた以外は、実施例1と同様にして、長尺のテ―プを捲回したロ―ル状の感圧性接着テ―プを作製した。この感圧性接着テ―プを用いた以外は、実施例1と同様にして、作業領域のダストレベル、付着異物数、接着力を測定した。結果は、表1に示されるとおりであつた。
【0029】
【表1】



【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、感圧性接着テ―プに特定の異物付着ないし異物飛散防止手段を付加し、これをクリン度の高い作業領域に特定手段で供給するようにしたことにより、付着異物の低減とともに、付着異物の飛散を防止して、作業領域のクリン度を維持でき、この領域内で製造される製品の異物による不良の発生をなくし、歩留りや信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の感圧性接着テ―プの一例を示す構成図である。
【図2】本発明の感圧性接着テ―プをクリン度の高い作業領域に供給する際のテ―プ供給方式の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の感圧性接着テ―プをクリン度の高い作業領域に供給する際のテ―プ供給方式の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 感圧性接着テ―プ
2 支持体
3 感圧性接着剤層
4 剥離ライナ
5 粘性層
10 テ―プ本体
Z クリン度の高い作業領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に感圧性接着剤層を有し、この層の表面に剥離ライナが貼り合わされてなり、か支持体の背面に粘性層が接触している感圧性接着テ―プを使用し、この感圧性接着テ―プをクリン度の高い作業領域に供給するにあたり、供給直前に支持体の背面に接触している粘性層を剥離ライナとともに分離して供給することを特徴とする感圧性接着テ―プの供給方法
【請求項2】
感圧性接着テープは、剥離ライナの背面に粘性層を有し、この粘性層が支持体の背面に接触するように捲回されている請求項1に記載の感圧性接着テ―プの供給方法
【請求項3】
感圧性接着テープは、支持体に帯電防止機能が付与されている請求項1または2に記載の感圧性接着テ―プの供給方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3571422号(P3571422)
【登録日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【発行日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−212424
【出願日】平成7年7月28日(1995.7.28)
【公開番号】特開平9−40923
【公開日】平成9年2月10日(1997.2.10)
【審査請求日】平成13年11月12日(2001.11.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【参考文献】
【文献】実開昭54−084356(JP,U)
【文献】実開昭64−033545(JP,U)