説明

感圧複写用顕色シート

【課題】発色速度、特に初期発色速度が速く、かつ優れた発色性と減感効果とを兼備する、オンマシン工程により製造された感圧複写用顕色シートを提供すること。
【解決手段】原紙と、該原紙の一方主面に顕色層とを備えた感圧複写用顕色シートであって、前記顕色層が、電子受容性顕色剤、バインダー及び顔料を配合した塗料にて形成され、前記電子受容性顕色剤は、重量平均粒子径が0.5〜1.0μm、融点が100〜160℃であり、原紙の抄造、塗料の塗工及び塗工層の乾燥が一貫されたオンマシン工程にて製造されてなる、感圧複写用顕色シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感圧複写用顕色シートに関する。さらに詳しくは、発色速度が速く、かつ優れた発色性と減感効果とを兼備し、例えばオフセット印刷、活版印刷、フレキソ印刷等に好適なオンマシン工程により製造された感圧複写用顕色シートに関する。
【背景技術】
【0002】
感圧複写紙は、通常、電子供与性の有機化合物(以下、発色剤という)等を溶解した発色液を内包するマイクロカプセルが主成分の発色剤マイクロカプセル組成物を含有する発色層が、基紙の一方主面に設けられた上用紙と、前記発色液との接触によって呈色する電子受容性化合物(以下、顕色剤という)が主成分の顕色剤組成物を含有する顕色層が基紙の一方主面に設けられ、かつ他方主面には前記発色層が設けられた中用紙と、基紙の一方主面に前記顕色層が設けられた下用紙とによって構成されている。
【0003】
前記感圧複写紙は、一般に、上用紙−下用紙の順に、あるいは上用紙−中用紙−下用紙の順に、発色層と顕色層とが相対するように組み合わせて使用され、筆圧、プリンタ等の圧力により発色液を内包するマイクロカプセルが破壊され、発色液が顕色層に付着し、発色剤と顕色剤とが反応することによって発色する仕組みである。このような感圧複写紙は、例えば各種伝票類等に使用されており、上用紙と下用紙との複写セット、あるいは上用紙と下用紙との間に必要枚数の中用紙を挟んだ複写セットとして使用されている。
【0004】
前記のごとき接触反応によって発色象を得る仕組みにおいて、前記中用紙や下用紙のように顕色層を設けた感圧複写用顕色シートに要求される品質としては、初期発色速度が速いこと、発色濃度が高いこと、擦れ・不要な圧力による汚れが少ないこと、発色画像の耐光性、耐薬品性及び耐水性が良好であること、顕色層の耐光性及び耐窒素酸化物性が良好であること、保存中の顕色剤能力の低下がないこと、さらに顕色層表面についてオフセット印刷、活版印刷、フレキソ印刷等における印刷適性が良好なこと、等があげられる。なかでも、特に初期発色速度に対する要望は大きく、該初期発色速度を改良するために、顕色剤組成物中に配合するバインダーを限定した、例えば特許文献1や特許文献2に開示の感圧複写用顕色シートが知られている。
【0005】
ところで、前記顕色剤組成物を基紙に塗工して感圧複写用顕色シートを製造する方法としては、抄紙機にて原紙を抄紙後、別体の塗工機にて塗料を塗工する、いわゆるオフマシン工程での方法と、原紙の抄造と塗工とを同一マシンで行う、いわゆるオンマシン工程での方法とがある。かかるオンマシン工程で製造する場合、工程数が少なくコスト面で優れており、サイズプレスで塗工後、ドライヤーシリンダー乾燥中に塗工面が直接ドライヤーに接触するため、表面の平滑性、印刷適性は向上する。しかしながら、ドライヤーシリンダー表面に顕色剤粒子がとられ、発色性の低下やドライヤー汚れが発生するという問題があり、例えば特許文献1や特許文献2に開示の感圧複写用顕色シートを得る際にも、かかるオンマシン工程における問題は改善されていない。
【0006】
また、前記複写セットになった各種伝票類は、通常発色剤と顕色剤との反応により発色して文字が読み取れるが、伝票の形式によっては発色文字として読み取れてはならない場合があり、予め発色反応を阻止する作用(以下、減感効果という)を呈する減感インクを用いた印刷が行われている。しかしながら、発色性と減感効果とは相反する効果であるため、これらの両立が困難であるのが現状である。
【特許文献1】2003−54124号公報
【特許文献2】2005−297251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、発色速度、特に初期発色速度が速く、かつ優れた発色性と減感効果とを兼備する、オンマシン工程により製造された感圧複写用顕色シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、原紙と、該原紙の一方主面に顕色層とを備えた感圧複写用顕色シートであって、
前記顕色層が、電子受容性顕色剤、バインダー及び顔料を配合した塗料にて形成され、
前記電子受容性顕色剤は、重量平均粒子径が0.5〜1.0μm、融点が100〜160℃であり、
原紙の抄造、塗料の塗工及び塗工層の乾燥が一貫されたオンマシン工程にて製造されてなる、感圧複写用顕色シート
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感圧複写用顕色シートは、発色速度、特に初期発色速度が速く、かつ相反する効果である優れた発色性と減感効果とを兼備しており、例えばオフセット印刷、活版印刷、フレキソ印刷等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明の感圧複写用顕色シートは、前記したように、原紙と該原紙の一方主面に顕色層とを備えており、該顕色層は電子受容性顕色剤、バインダー及び顔料を配合した塗料にて形成されている。
【0011】
まず、本実施形態に用いられる原紙について説明する。かかる原紙を構成する原料パルプの種類には特に限定がなく、通常の顕色シートに用いられるパルプを適宜使用することができる。
【0012】
原料パルプとしては、例えば針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)や針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)や広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の化学パルプ;サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)等の機械パルプ;デインキングパルプ(DIP)、ウェストパルプ(WP)等の化学パルプや機械パルプ由来の古紙パルプ等があげられ、これらの中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。これらのなかでは、白色度及び平滑性の向上の点から、JIS P 8120に記載の「繊維組成試験方法」に準拠して測定して、LBKPを原料パルプ全量の80〜100質量%用いることが好ましい。
【0013】
また原紙を得る際には、前記原料パルプに適宜填料を配合することができる。かかる填料にも特に限定がないが、例えばクレー、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン等の無機顔料;ロジンエマルジョンなどのサイズ剤;澱粉、変性澱粉、植物ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミドなどの紙力増強剤;歩留まり向上剤;ろ水性向上剤;紫外線防止剤などの各種抄紙用剤を使用することができる。
【0014】
また原紙の坪量にも特に限定がなく、JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定して、30〜200g/m2程度の一般的な顕色シートの坪量であればよい。
【0015】
次に、原紙の一方主面に顕色層を形成するための塗料について説明する。本実施形態に用いられる塗料には、電子受容性顕色剤、バインダー及び顔料が配合されており、該電子受容性顕色剤は、特定範囲の重量平均粒子径及び融点を有するものである。
【0016】
このように、特定の電子受容性顕色剤が塗料に用いられることが本実施形態の大きな特徴の1つであり、かかる塗料にて、電子受容性顕色剤がバインダーによって結着された顕色層を形成することにより、発色速度が速く、かつ優れた発色性と減感効果とを兼備した感圧複写用顕色シートを得ることができる。
【0017】
電子受容性顕色剤としては、感圧複写紙の分野で通常使用されるものから適宜選択することができ、例えば活性白土、酸性白土、アタパルジャイト等の無機顕色剤;フェノール樹脂及びその多価金属塩、サリチル酸、サリチル酸誘導体、サリチル酸含有共重合体及びこれらの多価金属塩等の有機顕色剤を好適に使用することができる。
【0018】
前記フェノール樹脂としては、例えばフェノールホルムアルデヒド樹脂、フェノールアセトアルデヒド樹脂、フェノールアセチレン樹脂、テルペンフェノール樹脂、これらの多価金属塩等があげられる。また、サリチル酸、サリチル酸誘導体、サリチル酸含有共重合体及びこれらの多価金属塩としては、例えばサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、5−t−ブチルサリチル酸、3−フェニルサリチル酸、3−メチル−5−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−t−アミルサリチル酸、3−シクロヘキシルサリチル酸、5−シクロヘキシルサリチル酸、3−メチル−5−イソアミルサリチル酸、5−イソアミルサリチル酸、3,5−ジ−sec−ブチルサリチル酸、5−ノニルサリチル酸、5,5−メチレンジサリチル酸、3,5−ジ(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸、サリチル酸ノボラック樹脂、サリチル酸とアルコキシキシレン、トリアルキルベンゼン、スチレン誘導体等の化合物との共重合物、これらの多価金属塩等があげられる。これらの電子受容性顕色剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、有機固体酸系化合物からなる電子受容性顕色剤は、発色濃度が高く、耐水性、耐光性及び経時安定性が良好であることから好適に使用することができ、特にサリチル酸誘導体及びその多価金属塩を好適に使用することができる。
【0019】
電子受容性顕色剤の重量平均粒子径は、発色性及び減感効果の点から、0.5μm以上、好ましくは0.6μm以上であり、また1.0μm以下、好ましくは0.9μm以下である。かかる電子受容性顕色剤の重量平均粒子径が0.5μ未満の場合には、顕色剤表面積が大きく減感効果に劣り、不要な発色汚れも発生し易い。一方1.0μmを超える場合には、顕色剤表面積が小さいため、発色液との接触面積も小さく、発色性、特に初期発色性に劣るほか、顕色剤スラリーの貯蔵安定性も劣る。
【0020】
電子受容性顕色剤の融点は、発色性及び操業性の向上の点から、100℃以上、好ましくは110℃以上であり、また160℃以下、好ましくは150℃以下である。かかる電子受容性顕色剤の融点が100℃未満の場合には、ドライヤーシリンダー内で溶融、軟化するため、顕色層の空隙が塞がれ、発色液の顕色層への浸透が遅く、初期発色性が悪くなるほか、ドライヤーシリンダーでの顕色剤とられにより、発色性の低下やドライヤー汚れが発生する。一方160℃を超える場合には、原紙への塗料の定着が悪く、印刷時のとられ(紙粉)が発生したり、発色性が低下する。
【0021】
塗料に配合するバインダーとして、例えばスチレン・ブタジエン系樹脂ラテックス、アクリルニトリルブタジエン系樹脂ラテックス、スチレン・アクリル系樹脂ラテックス、アクリル酸エステル系樹脂ラテックス、エチレン・酢酸ビニル系樹脂ラテックス等の各種樹脂ラテックスの中から1種以上を適宜選択して用いることができる。これらの中でも、特に発色性の向上の点から、スチレン・ブタジエン系樹脂ラテックス、アクリルニトリルブタジエン系樹脂ラテックス及びアクリル酸エステル系樹脂ラテックスが好ましい。
【0022】
前記樹脂ラテックスの平均粒子径は、良好な発色性を得るためには50nm程度以上であることが好ましく、また塗料安定性の低下による塗工性の低下をなくすためには200nm程度以下であることが好ましい。
【0023】
また樹脂ラテックスのガラス転移温度(Tg)は、塗料安定性の低下による塗工性の低下をなくすためには−10℃程度以上であることが好ましく、また低温時の初期発色性の低下をなくすためには15℃程度以下であることが好ましい。
【0024】
本実施形態において、顕色層の表面強度及び発色性の向上の点から、バインダーとして前記樹脂ラテックスとポリビニルアルコールとを併用することが好ましい。かかるポリビニルアルコールには特に限定がないが、例えばケン化度が95%以上で平均重合度が500〜1700程度の完全ケン化型ポリビニルアルコールを好適に用いることができる。
【0025】
塗料に配合する顔料として、例えばクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、微粉珪酸、ケイ酸カルシウム等の無機顔料;プラスチックピグメント、ポリエチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料の中から1種以上を適宜選択して用いることができる。これらの中でも、発色性の向上の点から、2次凝集により空隙をつくる軽質炭酸カルシウムを用いることが特に好ましく、顔料全量の60質量%以上、さらには70質量%以上となるように配合することが好ましい。
【0026】
塗料における電子受容性顕色剤、バインダー及び顔料の配合割合は、各成分の呈する効果が充分に発現されるように適宜調整することが好ましい。
【0027】
電子受容性顕色剤の配合量は、顔料100質量部に対して有効成分で10質量部以上、さらには15質量部以上であることが発色性、特に初期発色性を得るために好ましく、また減感インキによる効果を得るという点から、顔料100質量部に対して有効成分で25質量部以下、さらには20質量部以下であることが好ましい。
【0028】
バインダーの配合量は、例えば樹脂ラテックスの場合、印刷時の紙粉発生を充分に抑制するには、顔料100質量部に対して有効成分で10質量部以上、さらには15質量部以上であることが好ましい。また発色性の低下を充分に抑制するには、顔料100質量部に対して有効成分で30質量部以下、さらには25質量部以下であることが好ましい。
【0029】
バインダーとしてポリビニルアルコールを用いる場合、顕色層の表面強度を高め、印刷時の紙粉発生を充分に抑制するには、顔料100質量部に対して有効成分で0.5質量部以上、さらには0.7質量部以上であることが好ましい。また塗料安定性の低下による塗工性の低下を充分に抑制するには、顔料100質量部に対して有効成分で2質量部以下、さらには1.8質量部以下であることが好ましい。
【0030】
なお本実施形態に用いられる塗料には、その特性を損なわない限り、例えば顔料分散剤、pH調整剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、耐水化剤、湿潤剤、蛍光染料、紫外線吸収剤、カチオン性高分子電解質等の一般的な各種添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0031】
塗料の調製は、例えばバインダー及び顔料、さらに必要に応じてその他の各種添加剤などを所定の割合で混合し、次いで得られた溶液に電子受容性顕色剤を添加して適切な温度にて均一な組成となるように撹拌混合し、該電子受容性顕色剤を分散させることによって行うことができる。
【0032】
本実施形態に係る感圧複写用顕色シートは、原紙の抄造、塗料の塗工及び塗工層の乾燥が一貫されたオンマシン工程にて製造される。
【0033】
まず原紙の抄造は、前記原料パルプに、必要に応じて各種抄紙用剤を添加した後、例えばpH値などの条件を適宜調整し、抄紙マシンを用いて通常の抄紙工程にて行うことができる。ついで、原紙を抄造した同一の抄紙マシンにて、該原紙の一方主面に塗料を塗工して顕色層を形成させ、適切な温度及び時間で乾燥して目的とする感圧複写用顕色シートを得ることができる。
【0034】
オンマシン工程に用いられる、塗料を塗工するサイズプレスとしては、例えば2ロールサイズプレス、ゲートロールコータ、シムサイザー、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードコータ、バーコータ、ロッドブレードコータ等があげられる。
【0035】
原紙に対する塗料の塗工量は特に限定がないが、発色性の低下や印刷時の紙粉発生を充分に抑制するには、絶乾で3g/m2以上、さらには3.5g/m2以上であることが好ましく、また過剰となってコストアップに繋がらないようにするには、絶乾で5g/m2以下、さらには4.5g/m2以下であることが好ましい。また、このような塗工量にて形成された顕色層の厚さは、例えば3〜7μm程度であることが好ましい。
【0036】
このように、本実施形態に係る感圧複写用顕色シートは、特定の電子受容性顕色剤を用いて形成された顕色層を備えたものであるので、特に初期発色速度が速く、かつ相反する効果である優れた発色性と減感効果とを兼備しており、例えばオフセット印刷、活版印刷、フレキソ印刷等に好適に使用することができる。
【0037】
次に、本発明の感圧複写用顕色シートを以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
調製例1〜18及び比較調製例1〜4(塗料の調製)
顔料としてクレー(白石工業(株)製、商品名:カオファイン)及び軽質炭酸カルシウム(日成共益(株)製、商品番号:TP−121−M7)を、バインダーとしてスチレン・ブタジエンラテックス(旭化成(株)製、商品番号:L1571、平均粒子径:196nm、Tg:5℃)及びポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品番号:PVA117、ケン化度:98.5%、平均重合度:1700)を用い、これらを撹拌混合して均一な溶液を調製した。
【0039】
次いで得られた溶液に、表1に示す重量平均粒子径及び融点を有する電子受容性顕色剤(サリチル酸亜鉛塩)を添加して常温にて均一な組成となるように撹拌混合し、電子受容性顕色剤を分散させて塗料1〜18及び比較塗料1〜4を得た。
【0040】
なお、電子受容性顕色剤の配合量は、顔料100質量部に対して有効成分で18質量部であり、バインダーであるスチレン・ブタジエンラテックス及びポリビニルアルコールの配合量は、顔料100質量部に対して有効成分で各々表1に示すとおりである。
【0041】
また、顔料全量中の軽質炭酸カルシウムの量も、併せて表1に示す。クレーの配合量は、軽質炭酸カルシウムの残量である。
【0042】
実施例1〜18及び比較例1〜4(感圧複写用顕色シートの製造)
原料パルプとして針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、フリーネス(CSF):380ml)10質量%及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、フリーネス(CSF):300ml)90質量%を用い、パルプスラリーを調製した。このパルプスラリーに、パルプ固形分100質量部に対してタルク3質量部、軽質炭酸カルシウム(日成共益(株)製、商品番号:TP−121−M7)0.5質量部及びロジンエマルジョン(荒川化学工業(株)製、商品番号:SPN−773)を有効成分で10質量部を添加して抄紙を行い、JIS P 8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した坪量が40g/m2の原紙を得た。
【0043】
引き続き同一のシムサイザーを用い、塗工速度を適宜調整して、絶乾での塗工量が3.5g/m2となるように原紙の片面に塗料1〜18及び比較塗料1〜4を各々塗工した。これを常温で乾燥して厚さ約4μmの顕色層を形成させ、感圧複写用顕色シートを得た。
【0044】
次に、実施例1〜18及び比較例1〜4の感圧複写用顕色シートについて、以下の試験例1〜3に基づいて各特性を調べた。その結果を表2に示す。
【0045】
試験例1(発色性及び初期発色性)
感圧複写用顕色シートを、市販の上用紙(発色剤マイクロカプセル組成物を含有する発色層が基紙の一方主面に設けられたもの)と塗工面が対向するように重ね合わせ、温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置した。この後、同温同湿条件下において、ドットインパクトプリンター(日本電気(株)製、製品番号:PC−PR201/65)を使用して印字発色させ、発色濃度をマクベス濃度計(大日本スクリーン製造(株)製、製品番号:DM−620)にて測定した。なお、この測定値が大きいほど発色濃度が濃いことを示す。
【0046】
得られた測定値から、以下の評価基準に基づいて発色性及び初期発色性を評価した。
【0047】
(a)発色性(印字から15分間経過後の測定値)
[評価基準]
◎:測定値0.6以上
○:測定値0.5以上、0.6未満
×:測定値0.5未満
【0048】
(b)初期発色性(印字から10秒間経過後の測定値)
[評価基準]
◎:測定値0.4以上
○:測定値0.3以上、0.4未満
×:測定値0.3未満
【0049】
試験例2(減感効果)
フォーム印刷機((株)ミヤコシ製、製品番号:MVF−18D)にて市販の減感インク(富士フイルムビジネスサプライ(株)製、商品番号:FN−104)を、感圧複写用顕色シートの顕色層面に3g/m2印刷後、試験例1で用いたものと同じ市販の上用紙と塗工面が対向するように重ね合わせ、温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置した。この後、同温同湿条件下において、試験例1で用いたものと同じドットインパクトプリンターを使用して印字発色させ、印字から15分間経過後に目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0050】
[評価基準]
◎:発色が見られない。
○:点状に発色箇所はあるものの、使用上問題がないレベルである。
×:文字の輪郭が判別できる部分があり、減感効果がない。
【0051】
試験例3(紙粉発生)
オフセットカラー印刷機((株)小森コーポレーション製、製品番号:SYSTEM C−20)を使用し、16万部/時の印刷速度で感圧複写用顕色シートにカラー印刷を行った。1000m分の印刷を行った後、紙粉の発生、堆積度合いを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0052】
[評価基準]
◎:紙粉の発生が見られない。
○:ロール端部にわずかに付着があるものの、印刷部分への影響はない。
×:紙粉による印刷不良(白抜け)が見られ、ブランケットへの紙粉の付着もある。
【0053】
【表1】

【表2】

【0054】
表2に示された結果から、実施例1〜18の感圧複写用顕色シートには、重量平均粒子径が0.5〜1.0μm、融点が100〜160℃の電子受容性顕色剤が配合された塗料にて顕色層が形成されているので、これらの感圧複写用顕色シートはいずれも、発色性、特に印字から10秒後といった初期発色性に優れ、しかも相反する優れた発色性と減感効果とを兼備しており、紙粉の発生も少ないものであることがわかる。
【0055】
これに対して比較例1〜4の感圧複写用顕色シートは、重量平均粒子径又は融点が前記特定範囲外の電子受容性顕色剤が配合された塗料にて顕色層が形成されたものであるので、発色性、特に初期発色性に非常に劣るか、又は減感効果に非常に劣っており、相反する発色性と減感効果とを兼備したものではないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の感圧複写用顕色シートは、例えばオフセット印刷、活版印刷、フレキソ印刷等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙と、該原紙の一方主面に顕色層とを備えた感圧複写用顕色シートであって、
前記顕色層が、電子受容性顕色剤、バインダー及び顔料を配合した塗料にて形成され、
前記電子受容性顕色剤は、重量平均粒子径が0.5〜1.0μm、融点が100〜160℃であり、
原紙の抄造、塗料の塗工及び塗工層の乾燥が一貫されたオンマシン工程にて製造されてなる、感圧複写用顕色シート。