説明

感圧記録紙用溶剤

【課題】作業環境において人体への有害性が改善され、永続的に供給できる天然系溶剤であり、感圧記録紙に使用されるマイクロカプセルの発色剤において染料の種類を選ぶことなく溶解し、マイクロカプセル化後の発色性が良好な感圧記録紙用溶剤を提供する。
【解決手段】
感圧記録紙用溶剤として、モノテルペンの含酸素化合物及び/またはセスキテルペンの含酸素化合物を含有する。モノテルペンの含酸素化合物とセスキテルペンの含酸素化合物として、ターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、シネオール、ターピネオール、リナロール、ゲラニオール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、メントール、テルピネン−4−オール、カリオフィレンオキシド、カリオフィレンアルコール、エレモール、カジノール、スパツレノールより選択される少なくとも1種を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子供与性発色剤と電子受容性顕色剤との発色反応を利用した感圧記録紙用マイクロカプセルにおいて、電子供与性発色剤に用いる染料を溶解する感圧記録紙用溶剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感圧記録紙は、電子供与性発色剤(以下、発色剤という)を溶剤に溶解した状態でマイクロカプセル皮膜に内蔵させて紙一面に塗布し、他の紙の一面に前記発色剤と反応して発色させる電子受容性顕色剤(以下、顕色剤という)を塗布し、使用の際にこれらの各面を対向させて重ね合わせ、圧力を加えることにより複写記録を得る形式の記録紙、すなわち感圧記録紙が知られている。この種の記録紙の複写記録機構は、筆圧、タイプ圧等の圧力によりマイクロカプセル皮膜を破壊し、発色剤の溶液を放出させ、対向して配置された紙の表面に塗布した顕色剤を接触させて発色させることにより、加圧印字と同時に複写像が得られるものである。また、このような発色機能を有する各塗布材料を、一枚の紙の片面に塗布した自己発色型記録紙も知られている。
【0003】
前記感圧記録紙に使用されるマイクロカプセルには、発色剤が溶剤に溶解されて内包されている。このようにマイクロカプセル化する際に発色剤を溶解する溶剤を、本発明では感圧記録紙用溶剤と呼ぶ。
【0004】
発色剤を内包するマイクロカプセルの製造方法としては、代表的なものとして、ゼラチン−アラビアゴムのポリイオンコンプレックスを利用したコアセルベーション法、分散媒となる親水性液体と内包すべき疎水性液体の界面において不溶性皮膜を形成する界面重合法、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂等の初期縮合物を分散媒となる親水性液体側から添加した後、樹脂膜を形成させるIn−Situ重合法が挙げられる。
【0005】
マイクロカプセルに感圧記録紙用溶剤と共に内包される発色剤として使用される染料には、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、フェノキシジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、インドリルアザフタリド系化合物、リューコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スピロピラン系化合物、キサンテン系化合物、トリアゼン系化合物等が知られている。
【0006】
青色系発色剤としては、トリフェニルメタンフタリド系化合物の1種である3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリドが、広く一般的に用いられている。
【0007】
上記発色剤を溶解させる感圧記録紙用溶剤としては、ジアリールアルカン、アルキル化ビフェニル、アルキル化ナフタレン、アルキル化ターフェニル、塩素化パラフィン、灯油、パラフィン、ナフテン油、アルキルベンゼン、フタル酸エステル等の石油系溶剤が使用されている。しかし、これらの溶剤は一般に不快臭を有するものが多く、作業環境への配慮という面では好ましいとはいえなかった。また、石油系溶剤は石油系資源を枯渇させることが指摘されており、地球及び人類の持続性を確保しながら、永続的に供給できる溶剤が望まれていた。
【0008】
これに対し、大豆油、菜種油、ヤシ油等の植物油や動植物油の脂肪酸モノエステル等の天然系溶剤を用いることが提案されているが、従来の石油系溶剤使用と同等の性能が得られていない。特許文献1〜4では、テルペン炭化水素を用いることが紹介されているが、染料の種類によって溶解状態にするものと、分散状態にするものとに区別され、特に、染料として広く一般的に用いられている3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリドを溶解するものではなく、分散状態にするものであった。また、特許文献5では、植物油と動植物油の脂肪酸モノエステルを使用する方法が紹介されているが、発色剤として使用される染料の3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリドを他の染料と組み合わせたり、配合比率を変えたりして使用することで染料の溶解性を上げているにも係わらず、良好な溶解性や発色性が得られないことが分かった。
【特許文献1】特開2000−326627号公報
【特許文献2】特開2000−326628号公報
【特許文献3】特開2001−1638号公報
【特許文献4】特開2001−1640号公報
【特許文献5】特開2007−268914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は作業環境において人体に有害でなく、地球及び人類の持続性を確保しながら永続的に供給できる天然系溶剤で、発色剤の染料を選ぶことなく溶解し、従来の石油系溶剤使用と遜色ない性能が得られる感圧記録紙用溶剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、発色剤の染料を溶解したマイクロカプセルにおいて、モノテルペンの含酸素化合物及び/またはセスキテルペンの含酸素化合物を含有する感圧記録紙用溶剤である。
【0011】
モノテルペンの含酸素化合物が、ターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、シネオール、ターピネオール、リナロール、ゲラニオール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、メントール、テルピネン−4−オールより選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0012】
また、セスキテルペンの含酸素化合物が、カリオフィレンオキシド、カリオフィレンアルコール、エレモール、カジノール、スパツレノールより選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
モノテルペンの含酸素化合物とセスキテルペンの含酸素化合物は、天然物由来の原料から得ることが可能なため、カーボンニュートラルな溶剤であり、環境や人体にやさしい。また、感圧記録紙に使用されるマイクロカプセルの発色剤において、染料の種類を選ぶことなく溶解し、特に青色系発色剤として広く一般的に用いられているトリフェニルメタンフタリド系化合物の1種である3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリドを溶解する。さらに、従来の石油系溶剤を使用した場合と比べても、同等で十分な発色性能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の感圧記録紙は、上記発色剤及び顕色剤を含むものである限り、その形態は特に限定されない。すなわち、発色剤と顕色剤が別々の紙の表面、または紙の別の表面に形成された感圧記録紙及び一枚の紙の片面に発色剤を含有するマイクロカプセルと顕色剤とを含む自己発色型感圧記録紙の何れの形態であってもよい。
【0015】
本発明で感圧記録紙用溶剤として用いるモノテルペンの含酸素化合物及びセスキテルペンの含酸素化合物とは、一般にイソプレン(C5H8)を基本単位とする多量体で、炭素数10をモノテルペン(C10H16)、炭素数15をセスキテルペン(C15H24)と称するうちの酸素原子を含む化合物を言う。
【0016】
モノテルペンの含酸素化合物及びセスキテルペンの含酸素化合物は、主として北米や中国本土に産するアカマツ、クロマツの立木から採取した生松脂を水蒸気蒸留して得られる精油、パルプ工業で副生する精油、あるいは木材、草本、果実等から抽出される精油またはこれらの精油から酸化反応、水和反応、エステル化、エーテル化反応等により誘導された化合物である。
【0017】
モノテルペンの含酸素化合物及びセスキテルペンの含酸素化合物には、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、フェノール類、エステル類、酸化物類、カルボン酸類等があり、これらは適宜混合してもよい。
【0018】
モノテルペンの含酸素化合物でアルコール類には、例えば、ターピネオール、シトロネロール、ロジノール、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール、ネロール、ゲラニオール、ジメチルオクタノール、テトラヒドロムコール、アロオシメノール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロミルセノール、メントール、オシメノール、3,6−ジメチル−3−オクタノール、ラバンジュロール、イソジヒドロラバンジュロール、ヒドロキシシトロネロール、ノナディル、エチルリナロール、イソプレゴール、テルピネン−4−オール、カルベオール、ジヒドロカルベオール、ペリラアルコール、4−ツヤノール、3−ツヤノール、イソシクロゲラニオール、ミルテノール、ノポール、ピノカルベオール、カルペオール、ツイルアルコール、ピノカンフェオール、フェンチルアルコール、フェンコール、メチルフェンコール、ボルネオール、イソボルネオール、β−ノルボルナン−2−エタノール、トリメチルノルボルナンメタノール、ジメチルサイクロモル、イソカンフィルシクロヘキサノール、ファルネソール、ネロリドール、α−ビザボロール、β−カリオフィレンアルコール、サンタロール、ベチベロール、セドロール、セドレノール、パチュリアルコール、フィトール、イソフィトール、ゲラニルリナロール、スクラレオール、カジノール、オイデスモール、グアヨール、カロトール、ランセオール、ケッソグリコール、マノール、ヒノキチオール、フェルギノール、トタロール等が挙げられ、この中でも特にターピネオール、リナロール、ゲラニオール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、メントール、テルピネン−4−オールが好ましい。
【0019】
モノテルペンの含酸素化合物でアルデヒド類には、例えば、シトロネラール、シトラール、シクロシトラール、サフラナール、フェランドラール、ペリルアルデヒド、ゲラニアール、シンナムアルデヒド、ネラール、バレラナール、ベンズアルデヒド、ミルテナール等が挙げられる。
【0020】
モノテルペンの含酸素化合物でケトン類には、例えば、ダゲトン、ヨノン、イロン、カルボン、カルボメントン、カルボタナセトン、ピペリトン、ピペリテノン、ツヨン、カロン、プレゴン、シペロン、エレモフィロン、ゼルンボン、スギオール、ケトマノイルオキシド、アセトフェノン、イオノン、カンファー、ジャスモン、タゲトン、2−ウンデカノン、ノートカトン、バレラノン、ピノカルボン、ピノカンフェン、フェンコン、プレゴン、ペリラケトン、ベルベノン、メンチルヘプテノン、メントン等が挙げられる。
【0021】
モノテルペンの含酸素化合物でフェノール類には、例えば、アネトール、エストラゴール、オイゲノール、カビコール、カルバクロール、チモール、メチルオイゲノール等が挙げられる。
【0022】
モノテルペンの含酸素化合物でエステル類には、例えば、酢酸リナリル、オイゲニルアセテート、ゲラニルアセテート、サビニルアセテート、サビネンヒドレート、シトロネリルアセテート、シトロネリルフォルメート、ターピニルアセテート、ネリルアセテート、ブチルアルゲレート、ベチベリルアセテート、ベンジルアセテート、ベンジルベンゾエート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、ボルニルイソバレレート、メチルアントラニレート、メチルサリチレート、メチルブチレート、メチルベンゾエート、メンチルアセテート、ラバンズリルアセテート、リナリルアセテート等が挙げられ、この中でも特にターピニルアセテート、イソボルニルアセテートが好ましい。
【0023】
モノテルペンの含酸素化合物で酸化物類には、例えば、シネオール、スクラレオールオキシド、ビサボロールオキシド、ビサボレンオキシド、リナロールオキシド、ローズオキシド、ピノール、アスカリドール、マノイルオキシド等が挙げられ、この中でも特にシネオールが好ましい。
【0024】
モノテルペンの含酸素化合物でカルボン酸類には、例えば、シトロネル酸等が挙げられる。
【0025】
上記モノテルペンの含酸素化合物のうち、ターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、シネオール、ターピネオール、リナロール、ゲラニオール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、メントール、テルピネン−4−オールより選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、この中でもマイクロカプセルの製造方法を限定しないターピニルアセテート、イソボルニルアセテートがより好ましい。
【0026】
セスキテルペンの含酸素化合物で含酸素化合物には、例えば、カリオフィレンオキシド、カリオフィレンアルコール、エレモール、カジノール、ユーデスモール、カリオラン−1−オール、スパツレノール、キャトロール、α−サンタロール、β−サンタロール、セドロール、ファルネソール、スクラレオール、ゲラニルリナロール、イソフィトール、ランセオール、グアヨール、パルテニオール、ケッソグリコール、カロトール、ベチボン、ジベロン、アコロン、トレヨール、ネロリドール、バチュリアルコール、パチュロール、バレリアノ−ル、α−ビザボロール、ビリディフロロール、イソロンギフォレノン、ゼルンボン、エレモフィレン、ヒノキ酸、サンタル酸等が挙げられる。この中でも特に、アビエス油、テレビン油、米松油、松根油等のマツ科の精油に含まれるセスキテルペンの含酸素化合物が好ましく、カリオフィレンオキシド、カリオフィレンアルコール、エレモール、カジノール、スパツレノールが挙げられる。
【0027】
テレピン油に含まれるセスキテルペンの含酸素化合物を、工業的に蒸留等により単体で取り出すことは難しく、ガムテレピン油の高沸点部を蒸留により精製したヤスハラケミカル社製の商品名「セスキテレピン」は、ロンギフォレンやカリオフィレン等のセスキテルペンの炭化水素を主成分とし、セスキテルペンの含酸素化合物を含有する混合物のセスキテルペン油である。
【0028】
上記モノテルペンの含酸素化合物及びセスキテルペンの含酸素化合物のうち、引火点が70℃以上200℃未満であるとより好ましい。引火点が70℃未満であると取扱いに注意が必要となり、200℃以上であると発色剤の染料を溶解し難くなる。
【0029】
モノテルペンの含酸素化合物を単独または組み合わせて使用する場合は、染料を選ぶことなく溶解するという点で好ましい。モノテルペンの含酸素化合物以外の感圧記録紙用溶剤と併用、混合して使用する場合は、広く一般的に用いられている染料の3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド等を溶解しないことがあり、染料を溶解できる使用量の調節が必要である。セスキテルペンの含酸素化合物の使用量は、1〜100重量%、好ましくは3〜100重量%である。1%より少ない量では、染料が溶解し難い恐れがある。
【0030】
他の感圧記録紙用溶剤としては、染料の溶解性を下げない程度にジアリールアルカン、アルキル化ビフェニル、アルキル化ナフタレン、アルキル化ターフェニル、塩素化パラフィン、灯油、パラフィン、ナフテン油、アルキルベンゼン、フタル酸エステル等の石油系溶剤や大豆油、菜種油、ヤシ油等の植物油や動植物油の脂肪酸モノエステル、テルペン系炭化水素化合物等の天然系溶剤、アジピン酸メチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル等の二塩基酸エステルを使用することができる。
【0031】
本発明で使用できる発色剤は感圧記録紙のマイクロカプセルに使用できるものであれば特に限定されず、青色系発色剤や黒色系発色剤等の各色の公知のものを用いることができる。発色剤の染料としては、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、フェノキシジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、インドリルアザフタリド系化合物、リューコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スピロピラン系化合物、キサンテン系化合物、トリアゼン系化合物等が挙げられる。これらは適宜混合してもよい。
【0032】
具体的には、青色系発色剤として使用できるものとして、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチル−3−インドリル)−4−アザフタリド、N−n−ブチル−3−[4,4’−ビス(N−メチルアニリノ)ベンズヒドリル]カルバゾール等の染料が挙げられる。この中でもトリフェニルメタンフタリド系化合物である3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド及び3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリドを使用できることが挙げられ、特に広く一般的に用いられている3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリドが挙げられる。
【0033】
黒色系発色剤として使用できるものとして、例えば、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−アミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−n−プロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−[N−エチル−N−(3−エトキシプロピル)アミノ]フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−4−メチルアニリノ)フルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3,7−ビスジメチルアミノベンゾイルフェノチアジン、3−N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−(ジベンジルアミノ)−6−(ジエチルアミノ)フルオラン等の染料が使用できる。
【0034】
マイクロカプセル中の発色剤の濃度は特に制限されないが、感圧記録紙用溶剤に対して1〜20質量%、特に3〜15質量%であることが好ましい。濃度が低いと十分な発色が得られ難くなり、また濃度が高いと感圧記録紙用溶剤への溶解が困難になるので好ましくない。
【0035】
発色剤を内包するマイクロカプセル分散液の製造方法は公知の方法で行えばよく、特に限定されないが、代表的なものとして、ゼラチン−アラビアゴムのポリイオンコンプレックスを利用したコアセルベーション法、分散媒となる親水性液体と内包すべき疎水性液体の界面において不溶性皮膜を形成する界面重合法、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂等の初期縮合物を分散媒となる親水性液体側から添加した後、樹脂膜を形成させるIn−Situ重合法が挙げられる。
【0036】
カプセルの膜材としては、ゼラチン、ポリウレタン、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド等がある。
【0037】
セスキテルペンの含酸素化合物がアルコール類の場合は、多価イソシアネート等のアルコール類と反応する製造方法の場合は使用できないが、感圧記録紙用溶剤がアルコール類でも可能なコアセルベーション法、In−Situ縮重合法等の製造方法により行うことができる。
【0038】
こうして得られたマイクロカプセルを含む分散液がマイクロカプセル分散液であり、発色剤層形成用塗布液として使用することができる。
【0039】
得られたマイクロカプセル分散液をそのまま発色剤層形成用塗布液とするか、またはこのマイクロカプセル分散液に更にバインダー、カプセル保護剤等を添加して発色剤層形成用塗布液を調製し、公知の方法によって支持体上に塗布し、乾燥することにより感圧記録紙の発色剤層を形成する。バインダーとしては水溶性バインダー、ラテックス系バインダー等を使用することができ、カプセル保護剤としては、デンプン粒子、セルロース粉末、タルク等を使用することができる。
【0040】
支持体としては、感圧記録紙の支持体として従来から使用されている支持体、例えば、木材パルプからの紙、この紙を表面処理した紙、プラスチックス材料からの合成紙、プラスチックスフィルム等を使用することができる。
【0041】
支持体に塗布する発色剤の最終塗布量は、0.05〜0.30g/m2、好ましくは0.08〜0.20g/m2の範囲が適当である。
【0042】
本発明の感圧記録紙の顕色層に含有される顕色剤としては、酸性白土、活性白土、アタパルジャイト、ゼオライト、ベントナイト、カオリンのような粘土物質、芳香族カルボン酸の金属塩、フェノールホルムアルデヒド樹脂等を挙げることができる。
【0043】
上記顕色剤層を形成するための塗布液は、それ自体公知の方法により調製することができ、例えば、この塗布液には更に、バインダーとして、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、アクリル酸エステル系ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、無水マレイン酸−スチレン−共重合体、デンプン、カゼイン、アラビアゴム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の合成または天然高分子物質が含有されていてもよい。支持体上への顕色剤層の形成は、公知の方法により行うことができる。
【0044】
支持体に塗布する顕色剤の最終塗布量は、0.1g/m2〜4.0g/m2、好ましくは0.2g/m2〜3.0g/m2が適当である。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明がこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例、比較例及び試験例の部及び%は、特に断らない限り、質量部及び質量%を示す。
【0046】
試験例
ターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、シネオール、ターピネオール、リナロール、ゲラニオール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、メントール、テルピネン−4−オール、セスキテルペン(セスキテルペンの含酸素化合物3%含有、商品名:セスキテレピン、ヤスハラケミカル社製)、リモネン、大豆油脂肪酸メチルエステル、ロンギフォレン(セスキテルペンの含酸素化合物0.6%含有、商品名:ロンギフォーレン♯60、ヤスハラケミカル社製)、アルキルジフェニルエタン(商品名:ハイゾールSAS−296、新日本石油化学社製)を表1示す配合比率で、それぞれ95gに3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(商品名:CVL、山田化学社製)を5g添加し、加熱溶解した後、24時間室温で放置した。この時の析出の有無を観察した結果を表1に示す。
さらに、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(商品名:CVL、山田化学社製)の代わりに、2−(ジベンジルアミノ)−6−(ジエチルアミノ)フルオランを用いて上記と同様に析出の有無を観察した結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例1
[マイクロカプセル分散液の調製]
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(商品名:CVL、山田化学工業社製)5部をターピニルアセテート95部に溶解した。一方、アクリル系共重合体の乳化剤の5%水溶液160部に尿素10部、レゾルシン1部を添加して撹拌溶解した。この水溶液に上記発色剤溶液100部を加え、激しく撹拌して乳化し、油滴の平均粒径5μのO/Wタイプエマルションを得た。この乳化液に、37%ホルムアルデヒド水溶液22部を撹拌下で添加した後、系の温度を55℃に加熱し、撹拌下2時間この温度を保持した。その後室温に戻し、マイクロカプセル分散液を得て、30%の固形分濃度に調整した。
【0049】
[発色剤層形成用塗布液の調製]
水200部にデンプン粒35部、マイクロカプセル分散液400部、10%ポリビニルアルコール180部を順次撹拌しながら混合し、水を加えて最終濃度を18%とした。
【0050】
[顕色剤層形成塗布液の調製]
3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛をサンドグラインダーにより均一分散して平均粒径2μの20%分散液を得た。更に、この分散液50部に、軽質炭酸カルシウムの50%分散液200部、水100部を添加分散し、次いでポリビニルアルコールの10%水溶液60部、40%スチレン−ブタジエン系ラテックス30部を添加後、水を加えて最終的に25%の濃度とした。
【0051】
[感圧記録紙の作成]
坪量40g/m2の上質紙のワイヤー面に、発色剤層形成用塗布液を固形分4g/m2をエアナイフコータで塗工し、感圧記録紙の上用紙を作成した。一方、同上質紙のフェルト面に顕色剤層形成塗布液を固形分6g/m2をバーコータで塗工し、感圧記録紙の下用紙を作成した。
【0052】
実施例2〜12、比較例1〜4
実施例1において使用したターピニルアセテートの代わりに表2に示す配合比率で感圧記録紙用溶剤を使用した以外は、実施例1と同様にして感圧記録紙用上用紙を作成した。なお、実施例11のセスキテルペンはヤスハラケミカル社製の商品名「セスキテレピン」(セスキテルペンの含酸素化合物3%含有)、実施例12と比較例2のロンギフォレンはヤスハラケミカル社製の商品名「ロンギフォーレン♯60」(セスキテルペンの含酸素化合物0.6%含有)、比較例4のアルキルジフェニルエタンは新日本石油化学社製の商品名「ハイゾールSAS−296」を使用した。
【0053】
実施例及び比較例で得られた上用紙、下用紙を用いて、下記の評価を行った。その評価結果を表2に示した。
【0054】
[発色性]
上用紙と下用紙を塗布面同士が対向するように重ね合わせ、オリンピア電子タイプライターelectric−65(オリンピア社製)の強圧で発色させ、24時間後に呈色剤塗布面の発色濃度をマクベス反射式濃度計RD−914(マクベス社製)で測定した。
【0055】
[溶剤臭]
上用紙のマイクロカプセル塗布面を摺り合わせ、溶剤臭の度合いを嗅覚により判定した。
◎:臭気なし
○:微臭あり
×:臭気あり
【0056】
【表2】

【0057】
実施例13
[マイクロカプセル分散液の調製]
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(商品名:CVL、山田化学社製)5部をターピニルアセテート100部に溶解した。この発色剤溶液をポリメチレンポリフェニルイソシアネート(商品名:ミリオネートMR−500、日本ポリウレタン工業社製)4部とイソシアヌレート環を有するヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(商品名:コロネートHX、日本ポリウレタン工業社製)8部、さらにN−アミノエチルピペラジンのブチレンオキサイド10モル付加物3部とを溶解した。
【0058】
この溶解液をポリビニルアルコール1部とカルボキシメチルセルロース1部とを溶解した水100部に添加し、ホモミキサーを用いて乳化し、平均粒径6.5μmの分散液を得た。この乳化分散液に、多価アミンであるジエチレントリアミン0.5部とヘキサメチレンジアミン0.1部を添加し室温下で15分間撹拌した後、乳化分散液を撹拌しながら85℃まで加温し、3時間反応させた後、室温まで温度を下げ、カプセル化を終了してマイクロカプセル分散液を得た。
【0059】
[発色剤層形成用塗布液の調製]
このようにして得られたマイクロカプセル分散液100部(固形分)に小麦デンプン60部、カルボキシ変性SBRラテックス15部を加え、発色剤層形成用塗布液を調製した。
【0060】
[顕色剤層形成塗布液の調製]
水酸化アルミニウム65部、酸化亜鉛20部、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛塩とα−メチルスチレン・スチレン共重合体との混融物(混融比80:20)15部、ポリビニルアルコール水溶液5部(固形分)及び水300部をボールミルで24時間粉砕して得た分散液に、カルボキシ変性スチレンブタジエン共重合体ラテックス20部(固形分)を加え、顕色剤層形成塗布液を調製した。
【0061】
[感圧記録紙の作成]
40g/m2の原紙上に、カプセル塗被液を乾燥塗布量が4g/m2になるように塗布乾燥して、感圧記録紙用上用紙を作成した。一方、40g/m2原紙上に、顕色剤層形成塗布液を乾燥質量が5g/m2になるように塗布、乾燥して、感圧記録紙用下用紙を作成した。
【0062】
実施例14〜16、比較例5〜8
実施例13において使用したターピニルアセテートの代わりに表3に示す配合比率で感圧記録紙用溶剤を使用した以外は、実施例13と同様にして感圧記録紙用上用紙を作成した。なお、実施例16のセスキテルペンはヤスハラケミカル社製の商品名「セスキテレピン」(セスキテルペンの含酸素化合物3%含有)、比較例6のロンギフォレンはヤスハラケミカル社製の商品名「ロンギフォーレン♯60」(セスキテルペンの含酸素化合物0.6%含有)、比較例8のアルキルジフェニルエタンは新日本石油化学社製の商品名「ハイゾールSAS−296」を使用した。
【0063】
実施例及び比較例で得られた上用紙、下用紙を用いて、下記の評価を行った。その評価結果を表3に示した。
【0064】
[発色性]
上用紙と下用紙を塗布面同士が対向するように重ね合わせ、オリンピア電子タイプライターelectric−65(オリンピア社製)の強圧で発色させ、24時間後に呈色剤塗布面の発色濃度をマクベス反射式濃度計RD−914(マクベス社製)で測定した。
【0065】
[溶剤臭]
上用紙のマイクロカプセル塗布面を摺り合わせ、溶剤臭の度合いを嗅覚により判定した。
◎:臭気なし
○:微臭あり
×:臭気あり
【0066】
【表3】

【0067】
[評価]
各実施例の発色性に対する試験の結果は、染料として広く一般的に用いられている3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(商品名:CVL、山田化学社製)を用いて、従来から感圧記録紙用溶剤として使用されているアルキルジフェニルエタン(商品名:ハイゾールSAS−296、新日本石油化学社製)と比較すると同等の結果を示すものである。また、リモネンや大豆油脂肪酸メチルエステル等の天然系溶剤を用いた場合よりも良好な発色性を示している。
【産業上の利用の可能性】
【0068】
本発明のマイクロカプセルは、電子供与性発色剤の染料を溶解したマイクロカプセルにおいて、作業環境に配慮し、永続的に供給できる天然系溶剤であるモノテルペンの含酸素化合物及び/またはセスキテルペンの含酸素化合物を含む感圧記録紙用溶剤であり、マイクロカプセル化後の発色性が良好な感圧記録紙用マイクロカプセル及びそれを用いた感圧記録紙が得られる。このマイクロカプセルは感熱記録材料、印刷インク、光像形成材料、光画像記録材料、熱現像写真感光材料にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子供与性発色剤の染料を溶解したマイクロカプセルにおいて、モノテルペンの含酸素化合物及び/またはセスキテルペンの含酸素化合物を含有する感圧記録紙用溶剤。
【請求項2】
電子供与性発色剤の染料が、トリフェニルメタンフタリド系化合物である請求項1記載の感圧記録紙用溶剤。
【請求項3】
モノテルペンの含酸素化合物が、ターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、シネオール、ターピネオール、リナロール、ゲラニオール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、メントール、テルピネン−4−オールより選択される少なくとも1種を含む請求項1または2記載の感圧記録紙用溶剤。
【請求項4】
セスキテルペンの含酸素化合物が、カリオフィレンオキシド、カリオフィレンアルコール、エレモール、カジノール、スパツレノールより選択される少なくとも1種を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の感圧記録紙用溶剤。