説明

感度調整装置及び腕時計

【課題】簡易な機構により、用途に応じた感度となるようにアンテナの送受信感度を調整することのできる感度調整装置及びこれを適用した腕時計を提供する。
【解決手段】アンテナ5を収納する外装ケース1と、この外装ケース1の外周縁に沿って環状に形成され、外装ケース1の上であってアンテナ5を覆う位置に配置されるとともに、外装ケース1に外側から嵌合してその環状中心を中心として回転可能に設けられる回転ベゼル7とを備え、回転ベゼル7は、電波の透過を妨げる遮蔽部と電波を透過させる開放部74とを備え、回転ベゼル7を回転させることにより遮蔽部及び開放部74の位置を変更し、遮蔽部により遮蔽されるアンテナ5の被遮蔽範囲を調整することにより、アンテナ5の電波送受信感度を調整可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感度調整装置及びこれを適用した腕時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信機能を備える腕時計等の電子機器間において、無線方式によってデータのやり取りをしたり、情報の同期を取ったりする等、各種データの送受信(通信)を行う手法が浸透しつつある。
こうした無線通信によって送受信されるデータには個人情報も多く含まれる可能性がある。このため、個人のプライバシー等を保護するためにも、データの送受信は特定の電子機器から特定の電子機器に対して正確に行われる必要がある。
【0003】
しかし、身の回りに複数の電子機器がある場合、他の電子機器との干渉が起こって目的の電子機器との間で正確に無線通信を行うことができないおそれがある。特にBluetooth(登録商標)など波長の長い電波を取り扱う際には、障害物等に強く電波が遮断されにくいという性質があるために、他の電子機器との干渉を起こしやすい。
【0004】
従来、無線通信システムにおいて、他の電子機器との干渉を避けて、通信を行いたい電子機器同士を適切にペアリング(すなわち、初期の認識作業)する方法として、ペアリングしたい電子機器(電子デバイス)を互いに近傍となる位置に配置するとともに、一方の電子機器から、無線通信システムにおける標準の信号出力電力レベルよりも小さい電力レベルに制限された問い合わせ信号を送信し、他方の電子機器がこの問い合わせ信号を検出すると、これに対する応答信号を送信する。そして、当該電子機器が問い合わせ信号に応答する最初の電子機器であることに基づいて、双方の電子機器間で、ポイントツーポイント接続を開始するという手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような手法でペアリングを行った場合には、他の電子機器との干渉を避けて目的とする電子機器間でのみ通信を成立させ、適切にペアリングを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−536852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電子機器間でデータの送受信を行う目的は様々であり、ペアリングを行う場合のように電子機器同士を接触させる程度に近接させて通信を行う場合の他、例えばユーザ自身が身に着けている携帯端末装置と腕時計等の電子機器との間で各種データの送受信を行う場合のように多少離れた位置にある電子機器間でデータの送受信を行う場合や、ユーザが手元から離してしまった電子機器の所在を捜索する場合のようにある程度離れた場所にあると想定される電子機器との間で送受信を行う必要がある場合もある。
【0008】
このため、電子機器間でデータの送受信する際の電波の送受信感度は、その目的・用途・状況等に応じて適宜切り替えられることが求められる。
【0009】
この点、携帯電話やパーソナルコンピュータ(personal computer)等では、受信回路等、通信関連モジュールにおいて送受信感度の切り替えを行っている。
しかし、通信関連モジュールにおいて送受信感度の切り替えを行う場合、通信関連モジュールの制御構成が複雑化する等の問題がある。
【0010】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な機構により、用途に応じた感度となるようにアンテナの送受信感度を調整することのできる感度調整装置及びこれを適用した腕時計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係る感度調整装置は、
外部の機器との間で無線信号を送受信可能なアンテナの電波送受信感度を調整する感度調整装置であって、
前記アンテナを収納する外装ケースと、
この外装ケースの外周縁に沿って環状に形成され、前記外装ケースの上であって前記アンテナを覆う位置に配置されるとともに、前記外装ケースに外側から嵌合してその環状中心を中心として回転可能に設けられる回転ベゼルと、
を備え、
前記回転ベゼルは、電波の透過を妨げる遮蔽部と電波を透過させる開放部とを備え、前記回転ベゼルを回転させることにより前記遮蔽部及び前記開放部の位置を変更し、前記遮蔽部により遮蔽される前記アンテナの被遮蔽範囲を調整することにより、前記アンテナの電波送受信感度を調整可能に構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アンテナの電波送受信感度を通信モードに適した感度に調整する手法として回転ベゼルを回転させて遮蔽部により覆われるアンテナの被遮蔽範囲を調整するという機械的な構成をとっているため、受信回路等、通信関連モジュールにおいて送受信感度の切り替えを行う場合と比較して、アンテナの電波送受信感度の調整にかかる電力消費量を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における感度調整装置を適用した腕時計の正面図である。
【図2】図1の腕時計におけるII−II線断面図である。
【図3】図1の腕時計における6時位置周辺を拡大した要部断面図である。
【図4】本実施形態における回転ベゼルを示す斜視図である。
【図5】アンテナの送受信感度が低い状態となる場合の回転ベゼルとアンテナとの位置関係を示した斜視図である。
【図6】アンテナの送受信感度が高い状態となる場合の回転ベゼルとアンテナとの位置関係を示した斜視図である。
【図7】回転ベゼルの一変形例を示す斜視図である。
【図8】アンテナの送受信感度が低い状態となる場合の図7に示す回転ベゼルとアンテナとの位置関係を示した斜視図である。
【図9】アンテナの送受信感度が高い状態となる場合の図7に示す回転ベゼルとアンテナとの位置関係を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1から図6を参照しつつ、本発明に係る感度調整装置及びこれを備える腕時計の好適な実施形態について説明する。なお、以下では、本発明に係る感度調整装置を電波通信機器としての機能を備える腕時計に適用した場合について説明するが、感度調整装置を適用可能な実施形態はこれに限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る腕時計の正面図であり、図2は、図1におけるII−II線に沿う断面図であり、図3は、図1における腕時計の6時方向周辺を拡大した要部断面図である。
本実施形態に係る腕時計100は、電気的な駆動により図示しない指針(秒針、分針、時針)を回転させて時刻を表示するものである。なお、図1から図3では、指針等について図示を省略している。
【0016】
この腕時計100は、中空の短柱形状に形成された外装ケース1を備えている。本実施形態において外装ケース1は、例えばステンレス、チタニウム等の金属材料によって形成されている。なお、外装ケース1は、金属材料で形成されているものに限定されず、例えば樹脂等により形成されているものであってもよい。
【0017】
この外装ケース1の外側面であって時計の12時方向側及び6時方向側(すなわち図1において上下両端部)には、時計バンド(図示せず)が取り付けられるバンド取付部11が形成されている。また、外装ケース1の側部には図示しない竜頭や操作ボタン等が設けられている。
また、外装ケース1は、裏面側(図2において下側)に開口部を有しており、この外装ケース1の裏面側の開口部には、裏蓋部材3が図示しない防水リング等を介して裏面側の開口部を閉塞するように取り付けられている。
【0018】
外装ケース1の上部(腕時計100における表面側、図2において上側)の外周部分は、後述する回転ベゼル7の幅とほぼ同じ幅だけほぼ水平に平板状に形成されたベゼル載置部12となっている。
ベゼル載置部12の一部であって、腕時計100における6時方向の位置には、電波が透過可能な電波透過部13が形成されている。電波透過部13は、例えば、金属材料によって形成された外装ケース1の一部を切り欠いて、この切り欠き部に樹脂やガラス等の電波を透過させる材料で形成された部材を嵌め込むことにより形成されている。なお、電波透過部13の構成はこれに限定されず、外装ケース1の一部を彫り込むことにより電波が透過可能な程度に肉薄にすることで形成してもよい。なお、外装ケース1が樹脂等、電波を透過可能な材料により形成されている場合には、電波透過部13を設ける必要はない。
【0019】
外装ケース1の上部であってベゼル載置部12の内側には、腕時計100における表面側(すなわち図2における上側)に突出した立設部14が形成されている。立設部14の上部は開口して外装ケース1の表面側(図2において上側)の開口部となっている。
この外装ケース1の表面側の開口部には、透明なガラス等の材料で形成された風防部材2が図示しない防水リング等を介して表面側の開口部を閉塞するように取り付けられている。
また、立設部14の外周面には、後述する回転ベゼル7の溝部73と嵌合する鍔部15が周方向に沿って形成されている。
【0020】
外装ケース1の内部には、ほぼ円柱形状に形成されたモジュール4が配置されている。モジュール4は、腕時計100の指針(図示せず)を運針させる時計ムーブメント(例えば駆動用のモータや輪列機構等。図示せず)、各種電子部品を実装した回路基板(図示せず)等が例えば樹脂等によって形成されたハウジング(図示せず)に組み込まれたものである。
【0021】
また、図2及び図3に示すように、外装ケース1の内部であって、腕時計のほぼ6時方向にあたる位置(図1における下側位置)には、チップ状又はループ状の小型のアンテナ5が収納されている。本実施形態では、アンテナ5は、外装ケース1におけるベゼル載置部12に設けられている電波透過部13の下方に位置するように配置されている。
アンテナ5は、例えばモジュール4の上側(腕時計100における表面側)に、接着固定等により固定されている。なお、アンテナ5は、モジュール4の表面に貼着されていてもよいし、モジュール4内に埋設されていてもよい。
なお、アンテナ5の配置される位置はここに例示したものに限定されず、他の位置であってもよい。アンテナ5が他の位置に配置される場合には、ベゼル載置部12におけるアンテナ5に対応する位置に電波透過部13が設けられる。
【0022】
アンテナ5は、外部の機器との間で無線信号を送受信可能なものであり、例えばBluetooth(登録商標)等の規格により通信を行う。なお、アンテナ5の通信規格、通信可能な周波数帯は、Bluetooth(登録商標)に限定されず、腕時計100によって行われる各種通信に適したもの(すなわち、周波数等が適合するもの)が適宜適用される。また、アンテナ5は小型のものであればよく、種類、形状は特に限定されない。また、後述するように、本実施形態では、アンテナ5として、最大で5m程度の範囲内に存する機器との間で信号の送受信を行うことのできる電波送受信感度のものを適用しているが、アンテナ5の電波送受信感度はこれに限定されず、感度を最大としたときにさらに離れた機器との間で信号の送受信を行うことのできるものを用いてもよい。
このアンテナ5は、図示しないコネクタ等を介して回路基板と電気的に接続されており、このコネクタを介して、図示しない電波送受信制御回路と接続されている。
なお、本実施形態では、アンテナ5及び図示しない送受信制御回路自体は、常に最大の電波送受信感度(例えば本実施形態ではアンテナ5から5m程度の範囲内で電波を送受信可能な電波送受信感度)が維持されており、感度調整装置10(図2参照)によるアンテナ5の被遮蔽範囲を変えることで電波送受信感度を機械的構成により調整するようになっている。
【0023】
外装ケース1内であって、上記風防部材2とモジュール4との間には文字板6が配置されている。なお、風防部材2とモジュール4との間にはアナログ方式の文字板6の他に数字や文字等をデジタル方式で表示する液晶表示部等が設けられていてもよい。
【0024】
外装ケース1のベゼル載置部12の上には、この外装ケース1の外周縁に沿って環状(リング状)に形成された回転ベゼル7が設けられている。回転ベゼル7は、例えば樹脂等、電波を透過可能な材料により形成されており、その一部が外装ケース1内に収納されているアンテナ5(図2及び図3参照)の上を覆うように配置されている。なお、回転ベゼル7を形成する材料は樹脂に限定されない。
回転ベゼル7は、外装ケース1の鍔部15に対応する位置に鍔部15と嵌合する溝部71を備えている。回転ベゼル7は、溝部71を鍔部15に外側から嵌合させることによりベゼル載置部12の上に係止されており、回転ベゼル7の環状中心を中心として(すなわち、本実施形態では外装ケース1の周方向に沿って)回転可能となっている。回転ベゼル7を回転させるときには、ユーザが回転ベゼル7の外周縁を持って回転ベゼル7を所望の方向(時計回り又は反時計回り)に回転させる。
【0025】
図4は、回転ベゼル7を裏面側(ベゼル載置部12に対向する側、すなわち腕時計100の裏蓋3側)から見た斜視図である。
図4に示すように、回転ベゼル7の裏側の面には、回転ベゼル7の周方向に沿って磁性シート72が貼付されている。磁性シート72は、例えばフェライト等の磁性材料や磁性粉を含有する材料をシート状に加工した磁性体である。
本実施形態において、磁性シート72は、リング状に形成されたシートの一部が切り欠かれたほぼC字型となっている。
磁性シート72は、アンテナ5に入射しようとする電波を磁性材料の磁気損失により吸収して電波の透過を妨げるものであり、回転ベゼル7のうち、磁性シート72が貼付されている部分は電波の透過を妨げる遮蔽部となり、磁性シート72が貼付されていない部分(すなわち、磁性シート72が切り欠かれている部分)は電波を透過させる開放部74となっている。
【0026】
回転ベゼル7の表側(視認側、すなわち腕時計100の風防部材2に対向する側)の面には、内周側から外周側に向かうにしたがって、風防部材2側から裏蓋3側に傾斜する傾斜面で構成された情報表示面73が形成されている。この情報表示面73には、例えば周方向に沿って等間隔で60分割される目盛等(図示せず)が形成されており、この目盛に指針を合わせることにより所定時刻からの経過時間を計測可能なタイマー等として回転ベゼル7を機能させることができる。なお、回転ベゼル7の情報表示面73に形成される目盛等はここに例示したものに限定されない。情報表示面73に複数の目盛等を形成して、複数の情報を表示可能としてもよい。
【0027】
なお、この情報表示面73上であって、開放部74に対応する位置に、当該部分が電波を透過させる開放部74であることを示す感度指標(図示せず)を印刷、貼着、蒸着、彫刻等の手段により付してもよい。感度指標を設けた場合には、ユーザは感度指標の位置を見ることによって、腕時計100の視認側から目視にて容易に遮蔽部及び開放部74の位置を確認することができる。なお、情報表示面73に設けられる一般的な目盛の他に別途感度指標を設けなくても、例えば回転ベゼル7にタイマー用に付されるゼロの目盛位置の裏面に開放部74を設ける等、開放部74の位置を示す所定の指標を決めておくことにより、ユーザは情報表示面73の目盛を見るだけで容易に遮蔽部及び開放部74の位置を確認することができる。
【0028】
前述のように、回転ベゼル7は、磁性シート72が貼付されている部分である遮蔽部と、磁性シート72が貼付されていない部分である開放部74とを備えており、ユーザの操作により回転ベゼル7が外装ケース1の周方向に沿って回転すると、これにより遮蔽部及び開放部74の位置が変更され、遮蔽部により覆われるアンテナ5の被遮蔽範囲を調整することができるように構成されている。
アンテナ5の被遮蔽範囲の調整について、図5及び図6を参照して説明する。図5及び図6は、モジュールに固定されたアンテナ5及び回転ベゼル7の配置を腕時計100の裏面側から見た図であり、モジュール4及びアンテナ5を二点鎖線で表している。
【0029】
ユーザの操作により、図5に示すように、遮蔽部(すなわち磁性シート72が貼付されている部分)がアンテナ5の配置されている位置(すなわち、腕時計100における6時方向の位置)の上方に来るように回転ベゼル7を回転させると、アンテナ5の上方が磁性シート72によって覆われるため(すなわち、アンテナ5の被遮蔽範囲が広くなるため)、アンテナ5に入射しようとする電波が磁性シート72によって吸収され、アンテナ5の電波送受信感度は低くなる。
また、ユーザの操作により、図6に示すように、開放部74(すなわち磁性シート72が貼付されていない部分)がアンテナ5の配置されている位置(すなわち、腕時計100における6時方向の位置)の上方に来るように回転ベゼル7を回転させると、アンテナ5の上方が磁性シート72によって覆われないため(すなわち、アンテナ5の被遮蔽範囲がなくなるため)、アンテナ5に入射しようとする電波がアンテナ5に入りやすくなり、アンテナ5の電波送受信感度は高くなる。
【0030】
なお、本実施形態では、アンテナ5を収納する外装ケース1と、この外装ケース1の上方であってアンテナ5を覆う位置に配置された回転ベゼル7とにより、アンテナ5の電波送受信感度を調整する感度調整装置10が構成されている。
【0031】
この他、腕時計100は、例えば、各種モード切り替え等を行うための入力操作部、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、等から構成される制御部、電波の送受信を制御する送受信制御回路部、時刻補正等を行う計時回路部、発振回路部、指針を駆動させる指針駆動回路部等を備えている。これらは、一般的な腕時計に設けられているものと同様のものであるため、図示及び説明を省略する。
【0032】
次に、本実施形態における感度調整装置10及び電波通信機器である腕時計100の作用について説明する。
【0033】
本実施形態において、腕時計100は、感度調整装置10によってアンテナ5の被遮蔽範囲を調整することにより、アンテナ5の電波送受信感度を調整できるようになっている。
すなわち、腕時計100は、異なる電波送受信感度の下で実現される複数の通信モード(本実施形態では後述する「ペアリングモード」「データ同期モード」「端末捜索モード/忘れ物防止モード」)を実現可能となっており、感度調整装置10は、これら各通信モードに適した電波送受信感度となるようにアンテナ5の被遮蔽範囲を調整する。
なお、通信モードの種類はこれに限定されない。「データ同期モード」「端末捜索モード/忘れ物防止モード」のうちいずれか1つのみを有するものであってもよいし、これら3つの通信モード以外の通信モードを実現可能となっていてもよい。
【0034】
このうち、ペアリングモードは、例えばユーザが腕時計100と新たな端末装置(例えば友人の端末装置等)との間で新たにペアリングを成立させ(すなわち、端末装置間において相互に関連付けを行う初期の登録作業を行い)、データの送受信等ができる状態にするための通信モードである。例えば腕時計100と新たな端末装置である友人の携帯電話との間でペアリングを行う場合には、腕時計100からペアリングしたい端末装置に対して問合せ信号を送信し、送信先の端末装置からこの問合せ信号に対する応答信号が腕時計100に送信され、腕時計100のアンテナ5がこの応答信号を受信して制御部に送ると、腕時計100と当該端末装置との間でペアリングが成立する。
【0035】
ペアリングを行う際には、周囲に存する他の端末装置との間で予期せぬペアリングが成立することのないように、腕時計100と端末装置とが接触又はそれに近い距離まで接近した場合にのみ電波の送受信が可能な程度までアンテナ5の電波送受信感度が低くなるように調整することが好ましい。
このため、本実施形態では、入力操作部等からペアリングモードを選択する指示が入力されペアリングモードで通信を行う場合には、回転ベゼル7の遮蔽部である磁性シート72が貼付されている部分がアンテナ5の上方に位置するように回転ベゼル7を回転させ、アンテナ5の電波送受信感度が低くなるように調整する。
具体的には、ユーザが回転ベゼル7を回転操作することにより、開放部74が腕時計100の6時位置以外に配置される位置まで回転ベゼル7を回転させ、遮蔽部(磁性シート72が貼付されている部分)がアンテナ5の上方を覆う位置にくるように調整する(図5参照)。
この状態で、ユーザがペアリングの対象となる端末装置を腕時計100に接触又は10cm程度の距離まで近接させると、腕時計100のアンテナ5からペアリングのための問合せ信号(例えば腕時計100の個体識別番号等を含む信号)が送信され、この問合せ信号を受信可能な距離にある端末装置のみが当該信号を受信する。問合せ信号を受信した端末装置は応答信号(例えば当該端末装置の個体識別番号等を含む信号)を腕時計100に返信し、腕時計100のアンテナ5がこの応答信号を受信すると、当該応答信号が制御部に送られ、制御部は当該端末装置を以後腕時計100との間でデータの送受信が可能な端末装置として登録する。これによりペアリング(端末装置間の初期登録作業)が完了する。
【0036】
なお、ペアリングが成立したか否かは、文字板6上での指針や液晶表示部等におけるその旨の表示、図示しないライトの点滅、アラーム音等によりユーザに報知されるようにすることが好ましい。
また、アンテナ5の電波送受信感度の低い状態(すなわち、磁性シート72がアンテナ5の上方を覆っている状態)では目的の端末装置との間で適切にペアリングを成立させることができなかった場合(すなわち、ペアリングが成立していない旨の表示等がされた場合)には、ユーザが回転ベゼル7を回転操作して、開放部74が腕時計100の6時位置に配置される位置まで回転ベゼル7を回転させ、開放部74(磁性シート72が貼付されていない部分)がアンテナ5の上方を覆う位置にくるように調整した上で、再度ペアリングを試みるようにしてもよい。
【0037】
これに対して、データ同期モードは、例えば既に腕時計100との間でペアリングが成立している端末装置であって、ユーザが身につけている端末装置等(例えば、ユーザの所持している図示しない携帯電話)、腕時計100の比較的近距離(例えばアンテナ5からの距離が1〜2m程度の範囲内)に位置する端末装置との間でデータの同期を図ることを想定した通信モードである。
また、端末捜索モードは、例えばユーザが腕時計100との間でペアリング済みである自己又は友人の端末装置等の場所を捜索する場合を想定した通信モードであり、忘れ物防止モードは、例えばユーザが腕時計100との間でペアリング済みである自分の端末装置から所定の距離(例えば5m程度)以上離れたときに、ブザー等により警告を発することを想定した通信モードである。
【0038】
これらはいずれも、既に腕時計100との間でペアリングが成立している端末装置との間で行われる通信であるため、予期しない端末装置との間で通信が成立するおそれはない。
このため、本実施形態では、入力操作部等から「データ同期モード」又は「端末捜索モード/忘れ物防止モード」を選択する指示が入力されこれらの通信モードで通信を行う場合には、回転ベゼル7の開放部74である磁性シート72が貼付されていない部分がアンテナ5の上方に位置するように回転ベゼル7を回転させ、アンテナ5の電波送受信感度が高くなるように調整する。
具体的には、ユーザが回転ベゼル7を回転操作することにより、開放部74が腕時計100の6時位置に配置される位置まで回転ベゼル7を回転させ、開放部74(磁性シート72が貼付されていない部分)がアンテナ5の上方位置にくるように調整する(図6参照)。
これにより、腕時計100は、アンテナ5が多少離れた距離にある端末装置との間で電波を送受信することのできる状態となり、例えばユーザが身に付けている携帯電話等との間でデータの送受信を行うことにより、相互のデータを同期させることができる。また、例えば端末捜索モードであれば、腕時計100から5m程度の範囲内に存するペアリング済みの端末装置に対して、腕時計100のアンテナ5から応答を要求する信号が送信され、端末装置がこの信号を受信して応答信号を腕時計100に送信すると、その旨がブザー等の音やライトの点滅等によりユーザに報知される。また、例えば忘れ物防止モードであれば、腕時計100のアンテナ5からペアリング済みの端末装置に対して応答を要求する信号が送信され、端末装置はこの信号を受信して応答信号を腕時計100に送信する。そして、端末装置からの応答信号が受信できなくなると、腕時計100の制御部は端末装置が所定の距離(本実施形態ではアンテナ5の電波送受信可能な範囲である5m)以上ユーザから離間したと判断して、その旨をブザー等の音やライトの点滅等によりユーザに報知する。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、異なる電波送受信感度の下で実現される複数の通信モード(例えばペアリングモード、データ同期モード、端末捜索モード/忘れ物防止モード)を実現可能であるため、ユーザの目的・用途に応じた各種の通信を行うことができる。
そして、アンテナ5の電波送受信感度をこれらの通信モードに適した感度に調整する手法として回転ベゼル7を回転させて遮蔽部により覆われるアンテナ5の被遮蔽範囲を調整するという機械的な構成をとっているため、受信回路等、通信関連モジュールにおいて電波送受信感度の切り替えを行う場合と比較して、アンテナ5の電波送受信感度の調整にかかる電力消費量を抑えることができる。
また、腕時計100の場合、小型・軽量化が求められ、大型のバッテリを収容するスペースを確保することが難しいが、本実施形態における腕時計100は、アンテナ5を保持する外装ケース1と、この外装ケース1の上方であってアンテナ5を覆う位置に配置された回転ベゼル7とにより構成される感度調整装置10を備えており、機械的な構成によりアンテナ5の電波送受信感度を調整することができる。このため、通信関連モジュールにおいて電波送受信感度の切り替えを行う場合と比較して電力消費量を抑えることができ、大型のバッテリ等を備える必要がないため、装置の小型・軽量化を図ることができる。
また、遮蔽部と開放部74とを有する回転ベゼル7を回転させることによりアンテナ5の電波送受信感度を調整することができるため、新たに電波送受信感度を調整するための部材を設けることなく通信モードに適した感度の調整を行うことが可能であり、装置構成の簡易化、小型・軽量化を実現することができる。
また、遮蔽部は、回転ベゼル7の裏面側に磁性体である磁性シート72を貼付することにより構成されているため、既存の規格の回転ベゼル7を容易に流用することができ、生産コストを低く抑えることが可能である。
【0040】
なお、本実施形態では、磁性体である磁性シート72がほぼC字型に配置される場合を例としたが、磁性シート72の形状はこれに限定されない。
例えば、図7に示すように、回転ベゼル81の裏面側の一部分のみに、アンテナ5を被覆することのできる大きさの磁性シート82を貼付してもよい。この場合には、磁性シート82が貼付されている部分が遮蔽部となり、それ以外の部分が開放部84となる。
したがって、ペアリングを行う際(すなわち「ペアリングモード」のとき)には、図8に示すように、磁性シート82が貼付されている部分がアンテナ5を被覆する位置まで回転ベゼル8を回転させる。これによりアンテナ5の電波送受信感度をペアリングに適した感度まで低下させることができる。そして、図8に示す状態において端末装置間のペアリングが成立しなかったとき、又はペアリングが成立している端末装置同士でデータを同期させたり(すなわち「データ同期モード」のとき)、ペアリングが成立している端末の捜索等を行う場合(すなわち「端末捜索モード/忘れ物防止モード」のとき)には、図9に示すように、磁性シート82が貼付されていない部分がアンテナ5の上に位置するように回転ベゼル8を回転させる。これにより離れた場所にある端末装置間でも電波の送受信が可能な程度までアンテナ5の電波送受信感度を高くすることができる。
【0041】
また、本実施形態では、磁性体が回転ベゼル7に貼付された磁性シート72である場合について説明したが、磁性体はシート状のものでなくてもよい。例えば、回転ベゼル7の一部に磁性体を埋め込むことにより遮蔽部を形成してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、回転ベゼル7において、磁性体である磁性シート72が貼付されている部分が遮蔽部となり、磁性シート72が貼付されていない部分が開放部74となる場合について説明したが、遮蔽部及び開放部の構成はこれに限定されない。
例えば、回転ベゼルの一部を他の部分よりも厚く形成された肉厚部として、他の部分よりも電波が透過しにくいように構成してもよい。この場合には、肉厚部が遮蔽部となり、それ以外の部分が開放部となる。なお、肉厚部の位置を示すために、回転ベゼルの表面側であって、肉厚部に対応する位置に、当該部分が遮蔽部であることを示す感度指標が付されることが好ましい。
このように肉厚部が遮蔽部となり、それ以外の部分が開放部となる場合にも、機械的な構成によりアンテナ5の電波送受信感度を調整することができ、感度調整のために大型のバッテリ等を備える必要がないため、装置の小型・軽量化を図ることができる。
また、例えば、金属材料によって形成された回転ベゼルの一部を切り欠いて、この切り欠き部(又は孔部)に樹脂やガラス等の電波を透過させる材料で形成された部材を嵌め込んでもよい。この場合には、電波を透過させる材料で形成された部材を嵌め込んだ部分が開放部となり、それ以外の部分が遮蔽部となる。
【0043】
また、本実施形態では、遮蔽部に磁性体を配置して、磁性材料の磁気損失により電波を吸収することによって電波の透過を妨げる場合について説明したが、遮蔽部は電波の透過を妨げることができるものであればよく、その構成は磁気損失により電波を吸収するものに限定されない。
【0044】
また、本実施形態においては、腕時計100が指針を備えるアナログ式の腕時計である場合について説明したが、腕時計は、アナログ式に限定されない。例えば、液晶パネル等で構成された液晶表示部を備えるデジタル式の腕時計でもよいし、指針及び液晶表示部の双方を備える腕時計であってもよい。
【0045】
また、本実施形態では、「ペアリングモード」で通信を行う際にはアンテナ5の上に遮蔽部を位置させ、「データ同期モード」又は「端末捜索モード/忘れ物防止モード」で通信を行う際にはアンテナ5の上に開放部を位置させるというように、アンテナ5の電波送受信感度について2段階の調整を行う場合を例として説明したが、アンテナ5の電波送受信感度の調整は2段階に限定されない。
例えば、遮蔽部とアンテナ5との位置関係を段階的に調整することにより、アンテナ5全体が遮蔽される状態、アンテナ5が一部遮蔽される状態、アンテナ5全体が遮蔽されない状態のように、複数段階の調整ができるようにしてもよい。この場合には、ユーザは、「ペアリングモード」で通信を行う際に、アンテナ5全体が遮蔽される状態ではペアリングが成立しなかった場合に、ペアリングが成立するまでアンテナ5の電波送受信感度を段階的に上げていくことができる。
【0046】
その他、本発明が本実施形態に限定されず、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0047】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
外部の機器との間で無線信号を送受信可能なアンテナの電波送受信感度を調整する感度調整装置であって、
前記アンテナを収納する外装ケースと、
この外装ケースの外周縁に沿って環状に形成され、前記外装ケースの上であって前記アンテナを覆う位置に配置されるとともに、前記外装ケースに外側から嵌合してその環状中心を中心として回転可能に設けられる回転ベゼルと、
を備え、
前記回転ベゼルは、電波の透過を妨げる遮蔽部と電波を透過させる開放部とを備え、前記回転ベゼルを回転させることにより前記遮蔽部及び前記開放部の位置を変更し、前記遮蔽部により遮蔽される前記アンテナの被遮蔽範囲を調整することにより、前記アンテナの電波送受信感度を調整可能に構成されていることを特徴とする感度調整装置。
<請求項2>
前記遮蔽部は、前記回転ベゼルの裏面側に磁性体を貼付することにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の感度調整装置。
<請求項3>
請求項1又は請求項2に記載の感度調整装置と、
前記感度調整装置により電波送受信感度を調整されるアンテナと、
を備えることを特徴とする腕時計。
【符号の説明】
【0048】
1 外装ケース
4 モジュール
5 アンテナ
6 文字板
7 回転ベゼル
10 感度調整装置
72 磁性シート
73 感度指標
74 開放部
100 腕時計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の機器との間で無線信号を送受信可能なアンテナの電波送受信感度を調整する感度調整装置であって、
前記アンテナを収納する外装ケースと、
この外装ケースの外周縁に沿って環状に形成され、前記外装ケースの上であって前記アンテナを覆う位置に配置されるとともに、前記外装ケースに外側から嵌合してその環状中心を中心として回転可能に設けられる回転ベゼルと、
を備え、
前記回転ベゼルは、電波の透過を妨げる遮蔽部と電波を透過させる開放部とを備え、前記回転ベゼルを回転させることにより前記遮蔽部及び前記開放部の位置を変更し、前記遮蔽部により遮蔽される前記アンテナの被遮蔽範囲を調整することにより、前記アンテナの電波送受信感度を調整可能に構成されていることを特徴とする感度調整装置。
【請求項2】
前記遮蔽部は、前記回転ベゼルの裏面側に磁性体を貼付することにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の感度調整装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の感度調整装置と、
前記感度調整装置により電波送受信感度を調整されるアンテナと、
を備えることを特徴とする腕時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−2978(P2013−2978A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134815(P2011−134815)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】