説明

感染性レオウイルスの産生方法

【課題】レオウイルスをヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞内で培養することよって、レオウイルスを産生する簡潔かつ効率的な方法を提供すること。
【解決手段】哺乳動物レオウイルスを産生する方法であって、以下:(a)ヒト胚性腎臓(HEK293)細胞を、哺乳動物レオウイルスと接触させ、その結果、HEK293細胞のレオウイルス感染を生じる工程;(b)感染細胞培養物を、ウイルス複製を可能にするのに十分な期間でインキュベートする工程;および(c)産生されたウイルスを収集する工程、を包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ヒトを含む哺乳動物に対する臨床投与に適切な感染性哺乳動物レオウイルスを作製する方法に関する。
【0002】
(参考文献)
【0003】
【数1−1】

【数1−2】

【数1−3】

上記の刊行物、特許、および特許出願の全ては、個々各々の刊行物、特許出願、または特許出願が具体的かつ個々に本明細書中でその全体が参考として援用されるのと同じ程度に、本明細書中において全体が参考として援用される。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
レオウイルスは、セグメント化されたゲノムを有する二本鎖RNAウイルスである。この哺乳動物レオウイルスについてのレセプター、シアル酸は、遍在性の分子であり、従って、レオウイルスは、多くの細胞に結合し得る。しかし、ほとんどの細胞は、レオウイルス感染に対して感受性ではなく、そしてその細胞性レセプターに対するレオウイルスの結合によって、ウイルスの複製またはウイルス粒子の産生が生じることはない。これは、レオウイルスが特定の疾患のいずれかに関連することが知られていない理由であろう。
【0005】
ras癌遺伝子で形質転換された細胞は、レオウイルスに感受性になるが、これらの形質転換されていない対応物は感受性でないことが発見された(非特許文献1)。例えば、レオウイルス耐性NIH 3T3細胞が、活性化されたRasまたはSos(Rasを活性化するタンパク質)で形質転換された場合、レオウイルス感染は増大された。同様に、レオウイルス感染に対して耐性であるマウス線維芽細胞は、EGFレセプター遺伝子またはv−erbB癌遺伝子(これらの両方は、ras経路を活性化する(非特許文献2;非特許文献3))でのトランスフェクション後に、感受性になる。従って、レオウイルスは、活性されたRas経路を有する細胞において、選択的に感染し、そして複製し得る。
【0006】
このras癌遺伝子は、大部分の哺乳動物腫瘍の原因となる。ras遺伝子の活性化変異自体が、全ヒト腫瘍の約30%において生じ(非特許文献4)、これは、主に、膵臓癌腫(90%)、散発性の結腸直腸癌腫(50%)および肺癌腫(40%)ならびに骨髄性白血病(30%)において生じる。ras経路におけるrasの上流因子または下流因子の活性化はまた、腫瘍に関連する。例えば、HER2/Neu/ErbB2または上皮増殖因子(EGF)レセプターの過剰発現は、乳癌において一般的(25〜30%)であり、そして血小板由来増殖因子(PDGF)レセプターまたはEGFレセプターの過剰発現は、神経膠腫および神経膠芽細胞腫(glioblastoma)おいて優勢(40〜50%)である。EGFレセプターおよびPDGFレセプターの両方が、これらのそれぞれのリガンドに結合する際に、rasを活性化し、v−erbBが、この細胞外ドメインを欠く構成的に活性化されたレセプターをコードすることは公知である。
【0007】
多くのヒト腫瘍が、プロト癌遺伝子rasの遺伝的な変更または高度のRas活性によって説明されるので、レオウイルス治療は、このような状態に対する新規の有望な治療である(非特許文献5)。レオウイルス治療は、Ras関連腫瘍細胞に高度に選択的であり、そして正常な細胞を未感染の状態で残す。結果として、ヒトにおける臨床投与に適した感染性レオウイルスの産生のための単純かつ費用効率が高い方法が、必要である。
【0008】
レオウイルスは、ヒトの健康を脅かす深刻な脅威をもたらさないので、レオウイルスを効率的に産生する徹底的な努力はなされなかった。この哺乳動物レオウイルスは、本来、マウスL−929線維芽細胞内で増殖する(非特許文献6)。これは、チャイニーズハムスター卵巣細胞およびVero細胞(アフリカミドリザル腎細胞株)においても増殖することが報告された(非特許文献7;非特許文献8)。さらに、ブタ腎臓の一次培養物を使用して、ブタレオウイルスを培養した(特許文献1、1988年2月25日発行)。レオウイルスの大量生産を目的とする研究において、Berryらは、Vero細胞培養およびその後のレオウイルス感染の最適な方法の調査を実施した(非特許文献9)。Vero細胞を、Cytodex−1マイクロキャリアまたはCultispher−Gマイクロキャリアのいずれかにおいて増殖させ、培養パラメーター(例えば、細胞密度、ウイルス増殖の時間経過、およびマイクロキャリア中のビーズに対する細胞の比)をが変更し、そしてウイルス収率を決定した。この研究によって、ウイルスの収率が培養パラメーターによって大きく変化することおよび複雑な培養条件(例えば、感染効率に対するビーズ当たりの細胞数)が適切な収率を得るために必要であることが示された。従って、臨床的に有用なレオウイルスを産生する簡潔で、効率的な方法に対する必要性が、なお存在する。
【特許文献1】特許第63044532A号明細書
【非特許文献1】Strong,J.E.ら、「The molecular basis of viral oncolysis: usurpation of the Ras signaling pathway by reovirus」、EMBO J.(1998年)、17:p.3351−3362
【非特許文献2】Strong,J.E.ら、「Evidence that the Epidermal Growth Factor Receptor on Host Cells Congers Reovirus Infection Efficiency」、Virology(1993年)、197(1):p.405−411
【非特許文献3】Strong,J.E.およびP.W.Lee、「The v−erbV onocogene confers enhanced cellular susceptibility to reovirus infection」、J.Viol.(1996年)、70:p.612−616
【非特許文献4】Bos,J.E.、「Ras Oncogenes in Human Cancer: A Review」、Canc.Res.(1989年)、49(17):p.4682−4689
【非特許文献5】Coffey,M.C.ら、「Reovirus therapy of tumor with activated Ras pathway」、Science(1998年)、282:p.1332−1334
【非特許文献6】Nibertら、「Reovirus and their replication」Fieldsら著「Fundemental Virology」(第3版)(1996年)Lippincott−Raven
【非特許文献7】Taberら、「The selection of virus−resistant Chinese hamster ovary cells」、Cell(1976年)、8:p.529−533
【非特許文献8】Davisら、Microbiology(1990年)、Lippincott,Philadelphia
【非特許文献9】Berryら、「Production of Reovirus Type−1 and Type−3 from Vero Cells Grown on Solid and Macroporous Macrocarriers」、Biotechnology and Bioengineering(1999年)、62:p.12−19
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明により、以下が提供される。
(項目1) 哺乳動物レオウイルスを産生する方法であって、以下:
(a)ヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞を、該HEK293細胞のレオウイルス感染を生じる条件下で、哺乳動物レオウイルスと接触させる工程;
(b)該感染細胞培養物を、ウイルス複製を可能にするのに十分な期間でインキュベートする工程;および
(c)産生された該ウイルスを収集する工程、
を包含する方法。
(項目2) 前記哺乳動物レオウイルスが、ヒトレオウイルスである、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記ヒトレオウイルスが、血清型3のレオウイルスである、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記血清型3のレオウイルスが、Dearing株である、項目3に記載の方法。
(項目5) 工程(a)における感染効率が10以下である、項目1に記載の方法。
(項目6) 前記感染効率が5以下である、項目5に記載の方法。
(項目7) 前記感染効率が1以下である、項目6に記載の方法。
(項目8) 前記感染効率が0.5である、項目7に記載の方法。
(項目9) 前記感染効率が0.1である、項目8に記載の方法。
(項目10) 項目1に記載の方法であって、ここで前記培養物中の少なくとも5%の細胞が生存能力を維持している場合に、前記ウイルスが収集される、方法。
(項目11) 項目1に記載の方法であって、ここで前記培養物中の20〜95%の細胞が生存能力を維持している場合に、前記ウイルスが収集される、方法。
(項目12) 項目11に記載の方法であって、ここで前記培養物中の35〜90%の細胞が生存能力を維持している場合に、前記ウイルスが収集される、方法。
(項目13) 項目12に記載の方法であって、ここで前記培養物中の50〜80%の細胞が生存能力を維持している場合に、前記ウイルスが収集される、方法。
(項目14) 前記HEK293細胞が、接着細胞として培養される、項目1に記載の方法。
(項目15) 前記HEK293細胞が、懸濁物として培養される、項目1に記載の方法。
(項目16) 項目1に記載の方法であって、前記細胞を前記培養培地から分離し、該細胞を破壊して前記ウイルスを該細胞から放出させ、そして該ウイルスを精製することによって、該ウイルスが収集される、方法。
(項目17) 項目16に記載の方法であって、ここで前記細胞が前記培養培地から遠心分離により分離され、かつ凍結融解により破壊され、そして前記ウイルスが、CsCl勾配により精製される、方法。
(項目18) 前記収集したウイルスを保存するために、凍結する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目19) 前記収集したウイルスが、−60℃以下で保存される、項目18に記載の方法。
(項目20) 前記収集したウイルスを保存するために、凍結乾燥する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目21) 感染性レオウイルスを産生する方法であって、以下:
(a)293細胞を、4mM L−グルタミンを補充した293無血清培養培地中で、36℃±2℃、6%±2%COおよび相対湿度80%±5%において、回転速度35〜40rpmの攪拌フラスコで、細胞密度が約10細胞/mlに達するまで培養する工程;
(b)該細胞を、レオウイルスDearing株を用いて、感染効率0.5で感染させる工程;
(c)該感染細胞の培養物を、工程(a)と同様の条件で、生存可能細胞の割合が50〜80%まで落ち込むまで、インキュベートする工程;
(d)産生されたウイルスを、該培養物を遠心分離すること、凍結乾燥して該細胞から該ウイルスを放出させること、そしてCsCl勾配により該ウイルスを精製することによって収集する工程;ならびに
(e)−60℃以下で該ウイルスを保存する工程、
を包含する、方法。
(項目22) 項目1に記載の方法により調製されるレオウイルスを含む、哺乳動物レオウイルス組成物。
(項目23) 前記レオウイルスがヒトレオウイルスである、項目22に記載の組成物。
(項目24) 前記レオウイルスが血清型3のレオウイルスである、項目22に記載の組成物。
(項目25) 前記レオウイルスがDearing株である、項目22に記載の組成物。
(項目26) 薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤をさらに含む、項目22に記載の組成物。
本発明は、レオウイルスをヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞内で培養することよって、レオウイルスを産生する簡潔かつ効率的な方法に関する。HEK293細胞でのこの収率は、予想外に高く、特にL−929細胞またはVero細胞を使用する、以前の研究に比較して高かった。さらに、本発明を使用することによって、高収率が、ウイルス粒子が細胞から放出される前の、感染過程の初期において達成される。従って、このウイルスはインタクトな細胞から初期に収集され得、このウイルスが培養培地の非存在下で、精製されることを可能にする。これは、比較的簡潔な精製手順を生じる。
【0010】
従って、本発明の一つの局面は、哺乳動物レオウイルスを産生する方法を提供し、この方法は、HEK293細胞のレオウイルス感染を生じる条件下で、HEK293細胞と哺乳動物レオウイルスとを接触させる工程;ウイルス複製を可能にするのに十分な時間にわたって、上記の感染した細胞の培養物をインキュベートする工程;および産生されたウイルスを収集する工程を包含する。
【0011】
任意の哺乳動物レオウイルスは、この方法を使用して産生され得る。特に、ヒトにおける臨床投与のためのヒトレオウイルスは、この方法を使用して産生され得る。最も具体的には、レオウイルス第3血清型およびこのDearing株が産生される。他の哺乳動物レオウイルスは、本明細書中で特許請求された方法によって、同様に効率的に産生され得る。
【0012】
本発明の別の特徴は、レオウイルスがHEK293細胞内で迅速に産生されるので、本発明が、迅速かつ費用効率の高いレオウイルス産生方法を提供することである。また、HEK293細胞培養物中のウイルス力価が、この細胞が完全に溶解する前に高いので、このウイルスは、この細胞とまだ結合しているときに収集され得、従って、このウイルスの精製手順は比較的簡潔であり得、産生費用をさらに低減する。従って、本発明は、このウイルスが、全細胞が溶解する前に、回収される方法を提供する。より好ましくは、このウイルスは、20〜95%の細胞が生存しているときに、好ましくは35〜90%の細胞が生存しているときに、最も好ましくは50〜80%の細胞が生存しているときに、収集される。
【0013】
本発明の別の局面は、広範な感染効率を使用してウイスル産生を達成し得ることである。感染効率0.1は、十分であるが、より高い多重度(例えば、10までの多重度)を使用して、産生時間を短縮し得る。好ましくは、1未満の感染効率が使用されるが、より好ましくは0.5または0.5付近である。
【0014】
本発明の別の局面は、接着細胞培養物および懸濁細胞培養物の両方においてレオウイルスを産生する方法を提供し、これはHEK293細胞が、両方の種類の培養物で増殖するように適応され得るためである。他の目的または他の培養条件に適応されたか、または外因性DNAで形質転換された、HEK293細胞もまた、本発明において有用である。
【0015】
本発明はまた、上述の方法によって調製される哺乳動物レオウイルス組成物を提供する。この組成物は、好ましくは精製され得る。この組成物は、例えば、冷凍による、長期の貯蔵に適切である。この組成物は、腫瘍または活性化されたras経路によって引き起こされる他の細胞増殖性障害を処置するのに有用であり、そしてこの組成物は、HEK293細胞が生物学的産物を増殖させるために米国食品医薬品局によって認可されているので、ヒトにおける投与に適切である。この組成物は、薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤および/またはその意図された目的のためにレオウイルスと共に使用され得る治療剤をさらに含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞を使用することよる、哺乳動物レオウイルスを産生する方法に関する。本発明者らは、HEK293細胞が、L−929細胞またはVero細胞によりも、レオウイルスについて効率的な宿主細胞であることを見出した。以前にレオウイルスの複製を支持する報告はされていないが、HEK293細胞は、L−929細胞またはVero細胞に比べ、より短い時間経過でより多くのレオウイルスを産生した。結果として、HEK293を使用することによって、産生費用が低減され得る。さらに、レオウイルスがまだ、HEK293細胞と結合しているときに、この力価が十分高いので、比較的簡潔な手順を使用して、このウイルスを精製し得、そしてさらに産生費用を低減し得る。
【0017】
さらに詳細に本発明を記載する前に、本出願において使用される用語を、別段指摘しない限り、以下の様に定義する。
【0018】
(定義)
本明細書中で使用される場合、「HEK細胞」とは、293と称されるヒト胚性腎細胞株(ATCC番号CRL−1573)またはその誘導体をいう。例えば、293/SF細胞(ATCC番号CRL−1573.1)は、無血清培地で増殖するように適応されたHEK293細胞である。本発明においてまた企図されるのは、他の培養条件で増殖するように適応されたHEK293細胞、または外来性DNAで形質転換された任意の種類のHEK293細胞またはその誘導体であるが、但し、この形質転換は、本発明で記載されるような効率的なレオウイルス産生を支持するこの細胞の能力を損なうことはない。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「レオウイルス」とは、天然に存在するか、改変されるか、または組換え体であるかには関わらず、レオウイルス属に分類される任意のウイルスをいう。レオウイルスは、二本鎖のセグメント化されたRNAゲノムを有するウイルスである。このビリオンは、直径60〜80nmの寸法であり、そして2つの同心性のカプシド殻を保有している。殻のそれぞれは正二十面体である。このゲノムは、10〜12個の不連続なセグメントである二本鎖RNAから構成され、16〜27kbpの総ゲノムサイズを有する。個々のRNAセグメントは大きさが異なる。3種の別個のものだが、関連する型のレオウイルスが、多くの種から回収されている。3種全ての型は、共通の相体結合抗原を共有する。
【0020】
ヒトレオウイルスは3個の血清型から構成される:1型(Lang株またはT1L株)、2型(Jones株、T2J)、および3型(Dearing株またはAbney株、T3D)。この3種の血清型は、中和反応および血球凝集素阻害アッセイに基づいて容易に同定することができる(例えば、Fields,B.N.ら、1996を参照のこと)。
【0021】
このレオウイルスは、天然に存在し得るか、または改変され得る。このレオウイルスは、これが、天然における供給源から単離され得、そして実験室において人為的な改変がおこなわれていない場合に、「天然に存在する」。例えば、レオウイルスは、「フィールド供給源(field source)」、すなわち、このレオウイルスに感染したヒトに由来し得る。
【0022】
このレオウイルスは、改変され得るが、活性なras経路を有する哺乳動物細胞になお溶解的(lytically)に感染し得る。このレオウイルスは、増殖する細胞に対する投与の前に化学的または生化学的に(例えば、キモトリプシンまたはトリプシンのようなプロテアーゼのようなプロテアーゼを用いて処理することによって)前処理され得る。プロテアーゼを用いる前処理によって、このウイスルの外膜またはキャプシドが取り除かれ、そしてこのウイルスの感染性を増大し得る。このレオウイルスは、リポソームまたはミセルで被覆され得る(ChandronおよびNibert、1998)。例えば、このビリオンは、ミセル形成濃度の硫酸アルキル界面活性剤の存在下で、キモトリプシンで処理され得、新規の感染性サブビリオン粒子を生成し得る。
【0023】
このレオウイルスは、異なる病原性表現型を有する2以上の型のレオウイルス由来の組換えられた(すなわち、再連結された)レオウイルスであり得、その結果、これは、異なる抗原決定基を含み、これによって、以前にレオウイルスサブタイプに曝露された哺乳動物による免疫応答を低減するか、または予防する。このような組換えビリオンは、異なるサブタイプのレオウイルスを用いる哺乳動物細胞の同時感染によって生成され得、再連結および得られたビリオンキャプシドへの異なるサブタイプの被覆タンパク質の取り込みを生じる。
【0024】
本明細書中で使用される場合、細胞とこのウイルスとを「接触させる」とは、このウイルスを細胞の培養物中に置き、その結果、このウイルスがこの細胞と接触する機会を持つことをいう。ここで、この細胞は、ウイルスによる首尾よい感染を導き得る。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「ウイルス感染」とは、ウイルスの細胞への侵入およびその後の細胞内でのウイルスの複製をいう。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「感染効率」は、ウイルスが細胞と接触するために使用される場合のウイルスの数 対 細胞の数の比をいう。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「細胞溶解」は、細胞の細胞膜の破壊および細胞の成分の全てまたは一部の引き続く放出をいう。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「完全な溶解」は、複数の細胞の培養物における全ての細胞の溶解をいう。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「培養条件」は、細胞培養において使用される条件をいい、温度、培養容器の型、湿度、COの濃度または培養容器において使用される任意の他の気体、培養培地の型、培養細胞の最初の密度、および細胞がウイルスと感染する場合の最初の感染効率を含むが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「細胞(に)会合」したウイルスは、ウイルスが生成される細胞の一部に付着しているかまたは封入されているウイルスをいう。従って、ウイルスは、細胞に会合した後、宿主細胞が溶解する。細胞溶解が始まる場合、ウイルスは、破壊された細胞の一部に付着したままであり得るかまたは封入されたままであり得、そして細胞に会合したままである。しかし、ウイルスが培地に放出される場合、もはや細胞に会合していない。
【0031】
本明細書中で使用される場合、細胞は、細胞膜が破裂し、そして細胞成分の少なくともいくつかが細胞から放出される場合、「破壊され」ている。細胞は、例えば、凍結乾燥、超音波処理または界面活性剤処理によって破壊され得る。
【0032】
本明細書中で使用される場合、ウイルスを「収集する」とは、以前にウイルスに感染した細胞培養物から生成されたウイルスを収集する行為をいう。ウイルスの収集は、ウイルスがまだ細胞に会合している場合、宿主細胞を破壊する工程を包含し得る。あるいは、あまり好ましくないが、培養培地に放出されたウイルス粒子は、培地から収集され得る。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「細胞変性効果」は、細胞がみかけにおいて腫大しそして顆粒状になること、および細胞凝集塊が壊れることによって、示される。生存可能な細胞におけるネガティブな細胞変性効果の染色を示す細胞をカウントする。なぜなら、これらは、染色色素を奪ってしまうためである。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「接着細胞」は、細胞培養中の培養容器に接着する細胞をいう。接着細胞の例は、単層細胞を含み、これらは、培養容器の表面上に細胞の単一の層を形成する細胞である。「懸濁細胞」または「懸濁された細胞」は、細胞培養中の培養容器に接着しない細胞をいう。懸濁細胞は、「スピン培養」において増殖され得、これは、培養培地が、培養プロセスの間に連続的に撹拌される培養である。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「細胞の生存度」または「生存可能なままである細胞の割合」は、集団中で細胞変性効果を示さない細胞の割合である。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「収集時間」は、レトロウイルスが回収されそして精製される時点をいう。ウイルスは、好ましくは、力価が十分に高く、そしてウイルスがまだ細胞に会合している場合に、収集される。ウイルスは、完全な細胞溶解が発生した後でさえ収集され得るが、精製プロセスを単純化するために細胞から放出される前にウイルスを収集することが望ましい。従って、細胞の生存度は、ウイルスがまだ細胞に会合しているか否かの指標として慣例的に測定される。ウイルスは、一般に、細胞の少なくとも5%が生存している場合に、収集される。好ましくは、20〜95%の細胞が生存可能である場合に、より好ましくは、35〜90%の細胞が生存可能なままである場合に、そして最も好ましくは、50〜80%の細胞が生存可能なままである場合に、ウイルスは収集される。
【0037】
(方法)
正常な細胞は、一般に、レオウイルス感染に感受性ではなく、そして培養細胞株は、レオウイルス生成を支持するそれらの能力において非常に変化する。レトロウイルスを生成するための効率的な宿主細胞を開発する本発明者らの試みにおいて、種々の細胞を使用し、そしてHEK293細胞が非常に効率的であると証明された。代表的な実験において(実施例1)、HEK293、VeroおよびL−929細胞をコンフルエンシーまで増殖させ、そして1の感染効率(m.o.i.)でレトロウイルスと感染させた。ウイルスの収量を、感染後、種々の時間で決定した。驚くべきことに、HEK293細胞(これは、レトロウイルス増殖を支持することは報告されていない)は、感染の24時間後、L−929細胞よりも約50倍多いレトロウイルスを生成し、これらは、哺乳動物レトロウイルスを培養するために慣例的に使用される。Vero細胞は、この時点で、さらに少ないレトロウイルスを生成し、HEK−293細胞よりも3000倍少ないレトロウイルスを生成する。
【0038】
感染の36〜48時間後、HEK−293細胞におけるウイルス収量は、平衡状態に達し始めたが、力価は、L−929細胞において生成された力価よりもなお1オーダー高く、そしてVero細胞の濃度よりも2オーダー高かった。感染の96時間後になって初めて、全ての3細胞株が、1ミリリットル当り10〜1010のほぼ同じ力価のレオウイルスを生成した。
【0039】
これらの結果により、HEK−293細胞は、レオウイルスの産生について非常に効率的な系であり、産生の費用を顕著に減少させる、短縮された生成時間を可能にすることを示す。
【0040】
HEK293細胞生成条件をさらに最適化するために、レオウイルスを使用して、種々のm.o.i.でHEK293細胞を感染させ、そして収量を決定した(実施例2)。結果は、より低いm.o.i.が、さらに有利であることを示す。従って、感染の48時間後、0.5のm.o.i.で感染された細胞は、1ml当り1010より多くのウイルスを生成し、これらの培養条件において最大の収量であった。この時点後、力価を約2倍下げ、そして96時間で再び最大の収量に達した。同様のパターンを、0.1の最初のm.o.i.を有する培養について観察した。理由は明らかではないが、72時間における減少は、ウイルスのタンパク分解によって引き起こされることが可能である。これは、明らかに、96時間におけるより高い収量を生成するための複製が伴う。
【0041】
結果として、これらの培養条件下でレトロウイルスを収集する最良な時間は、感染の36〜60時間後である。この時点において、力価は高く、そしてウイルスは、まだ、細胞フラグメントおよび細胞膜に会合しており、このことは、ウイルスの精製を比較的単純にする。96時間で、全ての細胞は溶解し、そしてウイルスは、死んだ細胞の分解産物と共に培地に放出され、ウイルスが細胞に会合する場合よりも、精製をはるかにより複雑にする。
【0042】
最良の効率のために、収量が十分に高いが、ウイルスのほとんどがなお細胞に会合している場合、ウイルスは収集されるはずである。収集時間は、培養条件が変化する場合に、経験的に決定されるはずである。ウイルスが細胞に会合するか否かを決定するために、培養物の少量のアリコートを、感染後の異なる時点で細胞生存度の程度を決定するために、例えば、顕微鏡下で、調査し得る。あるいは、可視染色は、生存可能な細胞の割合を決定するために行なわれ得る。精製プロセスを単純化するために、代表的には、全ての細胞が溶解する前に、ウイルスを収集する。好ましくは、ウイルスは、細胞の20〜95%が生存可能なままである場合に収集される。より好ましくは、細胞の35〜90%、およびより好ましくは50〜80%が生存可能なままである場合、ウイルスが収集される。
【0043】
HEK293細胞は、接着細胞であり、そして細胞培養フラスコ、回転ビン、マイクロキャリアシステムまたは中空線維システム、または接着細胞を増殖するのに適切な任意の他のシステムで、増殖され得る。HEK293細胞は、誘導細胞改変して誘導細胞を生成し得る。例えば、293/SF細胞(ATCC番号CRL−1573.1)を、HEK293細胞から誘導し、そして無血清培養条件に適合させる。293/SF細胞は、接着細胞および懸濁細胞の混合物として増殖し、そして上記のような培養容器、ならびに撹拌ビン、撹拌容器(発酵槽)、中空線維システム、または懸濁細胞に適切な任意の他の培養容器のいずれかにおいて増殖され得る。
【0044】
工業的量のレオウイルスを生成するために、293/SF細胞を、15Lの撹拌フラスコ中で培養し、そして細胞密度が10/mlに達する際に、0.5の感染効率でレトロウイルスと感染させた。培地中のフェノールレッドの存在に起因する赤からオレンジへの培養培地の色の変化によってか、または顕微鏡下での可視細胞数によって証明されるように、培養物を、細胞溶解が始まるまでインキュベートした。この時点で、ウイルスを遠心分離によって収集した。次いで、ウイルスを、材料および方法において記載されるように精製し、そして臨床投与において使用し、そしてさらなる使用のために貯蔵した。貯蔵のために、ウイルスは、安定剤を用いてかまたは用いずに、当該分野で確立された方法に従って、凍結され得るかまたは凍結乾燥され得る。
【0045】
(レオウイルス組成物)
レオウイルス組成物は、上記の方法によって生成されたレオウイルスを使用して調製され得る。これらの組成物は、哺乳動物(ヒトを含む)における臨床投与に適切である。臨床投与に使用される場合、組成物は、好ましくは精製されている。ヒトレオウイルス(特に血清型3)(最も詳細にはDearing株)が、本発明の方法によって調製される好ましい組成物である。しかし、他の哺乳動物レトロウイルスも同様に生成され得る。
【0046】
本発明はまた、薬学的組成物を含み、これは、本発明に従って、「薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤」と会合した1つ以上のレオウイルスを含有する。本発明の組成物の作成においては、有効成分/レオウイルスは、通常は賦形剤と混合され、賦形剤によって稀釈されるか、またはカプセル、1回分の袋入りの薬(sachet)、紙、または他の容器の形態であり得るようなキャリア中に閉じられる。薬学的に受容可能な賦形剤が希釈剤として作用する場合には、これは固体、半固体、または液体材料であり得る。これは、有効成分についてのビヒクル、キャリア、または媒体として作用する。従って、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、トローチ剤、1回分の袋入りの薬、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳濁剤、液剤、シロップ剤、エアロゾル剤(固体として、または液体媒体中)、(例えば、10重量%までの)活性化合物を含有している軟膏、軟質および硬質ゼラチンカプセル、坐剤、滅菌の注射可能な溶液、ならびに滅菌のパッケージされた散剤の形態であり得る。
【0047】
適切な賦形剤のいくつかの例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、珪酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。処方物はさらに:タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油のような潤滑剤;湿潤剤;乳濁剤;ならびに懸濁剤;メチル−およびプロピルヒドロキシ−安息香酸のような保存料;甘味料;ならびに香味料を含有し得る。本発明の組成物は、当該分野で公知の手順を使用することによって、患者への投与後に有効成分の迅速な、持続的な、または遅延させられた放出を提供するように処方され得る。
【0048】
錠剤のような固体の組成物を調製するために、重要な有効成分/レオウイルスが、本発明の化合物の均質な混合物を含有している固体の事前処方組成物を形成するように、薬学的賦形剤と混合される。これらの事前処方組成物について均質であると言及する場合には、組成物が、錠剤、丸剤、およびカプセル剤のような等しく有効な単位投与量形態に容易に分割され得るように、有効成分が最終的に組成物全体にわたって分散させられことが意味される。
【0049】
本発明の錠剤または丸剤は、延長させられた作用の利点を付与する投与量形態を提供するように、被覆され得るかまたは他の方法で調合され得る。例えば、錠剤または丸剤は、内部の投薬成分、および外部の投薬成分(dosage component)を含有し得る。外部の投薬成分は、内部の投薬成分を包む形態である。2つの成分は、胃での分解に抵抗するように作用し、そして内部の成分が十二指腸内へと完全な状態で移動するかまたは放出を送らせることを可能にする、腸溶性層によって分離され得る。種々の材料が、このような腸溶性層または被覆のために使用され得る。このような材料としては、多数の重合酸(polymeric acid)、およびセラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースのような材料との重合酸の混合物が挙げられる。
【0050】
本発明の新規の組成物が、経口投与または注射による投与ためにその中に取り込まれ得る液体の形態として、水溶液、適切に風味をつけたシロップ、水性または油性懸濁剤、および食用油(例えば、トウモロコシ油、ナタネ油、ゴマ油、ココナッツ油、またはピーナッツ油)で香味づけた乳濁剤、ならびにエリキシル剤、および同様の薬学的ビヒクルが挙げられる。
【0051】
吸入(inhalation)または通気(insufflation)のための組成物は、薬学的に受容可能な水性溶媒もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物中の溶液および懸濁物、ならびに散剤を含む。液体または固体の組成物は、本明細書中に記載されるような適切な薬学的に受容可能な賦形剤を含有し得る。好ましくは、組成物は、局所または全身的な効果のために、経口または鼻腔の呼吸経路によって投与される。好ましい薬学的に受容可能な溶媒中の組成物は、不活性ガスの使用によって噴霧され得る。噴霧溶液は、噴霧デバイスから直接吸入され得るか、または噴霧デバイスはフェースマスクテント、または断続的陽圧呼吸機器(intermittent positive pressure breathing machine)に取り付けられ得る。溶液、懸濁物、または散剤組成物は、好ましくは、適切な様式で処方物を送達するデバイスから、経口または鼻腔によって投与され得る。
【0052】
本発明の方法において使用される別の好ましい処方物は、経皮送達デバイス(「パッチ」)を使用する。このような経皮パッチは、制御された量での本発明のレオウイルスの持続的または断続的な注入を提供するために使用され得る。薬学的薬剤の送達のための経皮パッチの構築および使用は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,023,252号(本明細書中で参考として援用されている)を参照のこと。このようなパッチは、薬学的薬剤の持続的、拍動性の、またはオンデマンド送達のために構築され得る。
【0053】
本発明での使用のための他の適切な処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに見出され得る。
【0054】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されるが、決して本発明を限定するとは解釈されない。
【実施例】
【0055】
(実施例)
以下の実施例においては、以下の略号は以下の意味を有する。略号が定義されていない場合は、それはその一般的に容認されている意味を有する:
CI=信頼区間
TCID50=組織培養感染用量50
μM=マイクロモル濃度
mM=ミリモル濃度
M=モル濃度
ml=ミリリットル
μl=マイクロリットル
mg=ミリグラム
μg=マイクログラム
g/L=1リットル当たりのグラム
rpm=毎分回転数
FBS=ウシ胎仔血清
DTT=ジチオスレイトール
NP−40=Nonidet P−40(オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)
SDS=ドデシル硫酸ナトリウム
PBS=リン酸緩衝化生理食塩水
β−ME=β−メルカプトエタノール
MOIまたはm.o.i.=感染効率
PFU=プラーク形成単位
hr=時間
℃=摂氏温度。
【0056】
(一般的方法)
(細胞およびウイルス)
ヒト胚性腎臓293(HEK293)、Vero(アフリカサバンナモンキー腎臓)細胞、およびマウス繊維芽細胞L−929細胞は、製造業者(BioReliance Corporation(Rockville、Maryland))によって提供された。HEK293細胞を、10%の熱不活化ウマ血清および90%の以下の混合物(2mMのL−グルタミンを含むイーグル最少必須培地ならびに1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、0.1mMの非必須アミノ酸および1.0mMのピルビン酸ナトリウムを含むように調節されたEarle’s Balanced Salt Solution)を含む培養倍地中で増殖させた。マウスL−929細胞およびVero細胞を、10%のFBSおよび90%の以下の混合物を含む培養倍地中で増殖させた:2mMのL−グルタミンを含むイーグル最少必須培地ならびに1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、0.1mMの非必須アミノ酸および1.0mMのピルビン酸ナトリウムを含むように調節されたEarle’s Balanced Salt Solution。
【0057】
293/SF細胞を、4mMのL−グルタミンを補充した293無血清培地(Life Technologies、Rockville、Maryland)中で、35〜40rpmの回転速度で、攪拌フラスコ中で36℃±2℃、6%±2% COおよび80%±5%の相対湿度で増殖させた。
【0058】
これらの実験に使用される血清型3のレオウイルスのDearing株を、β−メルカプトエタノール(β−ME)を抽出緩衝液から除外したこと以外は、Smith(Smithら、1969)に従って精製したL−929細胞の懸濁培養物において増殖させた。[35S]メチオニンで標識したレオウイルスを増殖させ、そしてMcRaeおよびJoklikによって記載されているように精製した(MaRaeおよびJoklik、1979)。精製したレオウイルスについての粒子/PFU比は、代表的には100/1であった。
【0059】
(単層細胞の感染およびウイルスの定量)
HEK293細胞、Vero細胞およびL−929細胞のコンフルエントな単層を、24ウェルのプレートで増殖させ、そして既知の感染効率でレオウイルスを感染させた。37℃で1時間のインキュベーション後、この単層を、温培地で洗浄し、次いでこれらの培養培地中でインキュベートした。感染後の種々の時点で、NP−40およびデオキシコール酸ナトリウムの混合物を、1%〜0.5%の最終濃度まで、感染した単層上の培地にそれぞれ直接添加した。次いで、溶解物を収集し、そしてウイルスの収率をL−929細胞でのプラーク力価決定によって決定し、そしてLog10TCID50/mlとして表した。
【0060】
(懸濁細胞の感染およびウイルスの精製)
293/SF細胞を10/mlまで増殖させ、そしてレオウイルスを感染させた。培養物を、培地の色が赤からオレンジに変わるまで、または生存細胞の計数によって明らかなように、所望のレベルまで細胞の生存率が減少するまで増殖させた。生存細胞の計数を、細胞変性効果(これは、細胞の外観が膨れて顆粒状になり、そして細胞の集合がばらばらになることによって示される)を示さない細胞について、顕微鏡下で実行し得る。生存細胞計数はまた、当該分野で一般に使用される生存染色によって実行され得る。所望の細胞生存率レベルが達成された場合、細胞を遠心分離によってペレット化し、そして10mM Tris、pH7.4、250mM NaClおよび0.1% Triton X−100中に再懸濁した。
【0061】
次いで、細胞を凍結融解によって溶解し、そして氷上に20〜40分間保って周期的にボルテックスして細胞を混合および溶解させた。懸濁物を、予め冷却した等容量のFreon(登録商標)(1,1,2−トリクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン)を用いて、10分間のボルテックスによって抽出し、次に2500rpmで4℃にて10分間遠心分離して、異なる相を分離した。水相(上)を取り出し、そして上記のように2回再抽出した。最後の抽出後、水層を新たなチューブに移し、そしてTriton X−100を、0.5%の最終濃度まで添加した。
【0062】
ウイルスを、塩化セシウム階段勾配によって精製した。勾配は、10mM Tris(pH7.4)中に調製されたCsCl溶液の2つの層(それぞれ、1.20g/mlおよび1.4g/ml)を含んだ。ウイルス懸濁物を、勾配の上端にロードし、そしてSW 28.1ローターで、4℃にて2時間、26,000rpmで遠心分離した。ウイルスのバンド(上のバンドは、空のキャプシドを含むので、2つのバンドのうちの下のバンド)を収集し、そして滅菌PBSに対して透析した。
【0063】
(実施例1)
(レオウイルスの産生のために最適な細胞株の決定)
感染の結果として産生されたレオウイルスの量において、感受性の細胞株間で差異が存在するか否かを決定するため、レオウイルス感受性を示す多くの異なる細胞株を、産生されたレオウイルスの相対的な量についてアッセイした。特に目的の細胞株は、生物学的因子の産生のために種々の監督機関によって承認されている細胞株である。従って、HEK293細胞、Vero細胞およびL−929細胞をレオウイルスに曝露し、そしてその細胞がレオウイルスを産生する能力を比較した。
【0064】
ウイルス産生の定量を、感染後種々の時点で感染細胞およびその増殖培地を収集することによって達成した。産生された溶解物を、続いて、プラーク力価決定分析に供して、ウイルス収率を決定し、この収率を力価±95%CI(Log10TCID50/ml)として、以下の表1に示す。これらの結果は、試験された全ての細胞が、レオウイルス感染に感受性であったが、これらの細胞株の各々において産生されたウイルスの量においては、かなりの差異が存在することを示す。
【0065】
【表1】

これらの結果は、産生されたウイルスの量が、HEK293細胞において最も高いことを明らかに示す。さらに、HEK293細胞は、ウイルスをより早く産生し、レオウイルスの製造のための産生時間を短縮した。
【0066】
(実施例2)
(最終ウイルス産生に対する開始感染効率の影響)
開始感染効率が、最終的なウイルス産生を決定するか否かを決定するため、HEK293細胞を、1と0.1との間の範囲の開始感染効率(m.o.i.)で感染させた。表2に示される本発明者らの結果は、開始m.o.i.と最終ウイルス産生との間に実際に関連性が存在することを示す。1未満の開始m.o.i.は、レオウイルスの大規模製造に最適である。
【0067】
【表2】

さらに、本発明者らの結果は、細胞を収集する最適な時間がまた存在し、これが重要であることを実証する。本発明者らは、ウイルス産生が24時間後に最大であることを見出した。このことは驚くべきことではない。なぜなら、24時間より前には、適切なウイルスタンパク質合成および成熟ビリオンの集合のための時間が不十分だからである。より驚くべきことは、72時間の時点でのウイルス量の減少、その後の96時間の時点での感染性粒子の数の顕著な増大の観察である。72時間での僅かな減少は、96時間の時点での第二回のウイルス複製の前の、ウイルスのタンパク質溶解性分解に起因する可能性があると仮定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物レオウイルスを産生する方法であって、以下:
(a)ヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞を、該HEK293細胞のレオウイルス感染を生じる条件下で、哺乳動物レオウイルスと接触させる工程;
(b)該感染細胞培養物を、ウイルス複製を可能にするのに十分な期間でインキュベートする工程;および
(c)産生された該ウイルスを収集する工程、
を包含する方法。

【公開番号】特開2006−314336(P2006−314336A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234596(P2006−234596)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【分割の表示】特願2002−517726(P2002−517726)の分割
【原出願日】平成13年7月20日(2001.7.20)
【出願人】(503051567)オンコリティクス バイオテック, インコーポレイティッド (4)
【Fターム(参考)】