説明

感熱記録材料および塗料

【課題】サーマルヘッドの摩耗や損傷が著しく低減され、また、サーマルヘッドの非汚染性に優れ、かつスティッキング防止性に優れる感熱記録材料、および該感熱記録材料の製造に有用な塗料を提供すること。
【解決手段】基材シートと、該基材シートの一方に設けた感熱記録層と、該基材シートの他の面に設けたサーマルヘッドのスティッキング防止層を有してなる感熱記録材料において、該スティッキング防止層が、シリコーン共重合樹脂と合成粘土鉱物とを含有することを特徴とする感熱記録材料および該感熱記録材料の製造に使用する塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感熱記録材料に関し、さらに詳しくは、スティッキング防止機能およびサーマルヘッドの摩耗防止機能を有する感熱記録材料および該感熱記録材料の製造に使用する塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料としては、ポリエステルフィルムなどの基材シートの一方の面に染料または顔料をバインダー樹脂で担持させて感熱記録層(インク層)を形成し、その裏面からパターン状に加熱してインク層を被転写材に転写する熱溶融型感熱記録材料や、さらには染料として加熱昇華性の染料を使用し、染料のみを被転写材に昇華転写する昇華型感熱記録材料がある。
【0003】
このような感熱記録材料を用いる記録方法は、いずれも基材シートの裏面からサーマルヘッドにより熱エネルギーを付与する方式であるため、使用する感熱記録材料の基材シートの裏面がサーマルヘッドに対して充分な滑り性、剥離性、非粘着性および耐熱性などを有し、サーマルヘッドが裏面に粘着(スティッキング現象)しないことが要求されている。
【0004】
そのために、例えば、感熱記録材料の基材シートの裏面に、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、変性セルロース樹脂あるいはこれらの混合物からなるスティッキング防止層を形成する技術が提案されている(特許文献1)。しかし、これらの樹脂でも最近のサーマルプリンターの高速化に伴い、従来よりさらに高いエネルギーがサーマルヘッドに加えられるようになり、スティッキング防止層の耐熱性不足により印字品質の低下を招くという問題点を抱えている。
【0005】
このような問題を解決するために、上記スティッキング防止層に耐熱性の微粒子を含有させることが提案されている(特許文献2)。しかしながら、この方法も、最近のサーマルプリンターの高速化による高エネルギー化には対応しきれず、十分なスティッキング防止効果が得られない。
【0006】
また、上記スティッキング防止層に球状有機微粒子を含有させることが提案されている(特許文献3)。しかしながら、上記の球状有機微粒子を含有したスティッキング防止層では、微粒子が有機物質であるため、該微粒子には、サーマルヘッドに汚染物質が付着した場合の除去性能がないため、サーマルヘッドの汚染により、印字品質の低下を招くという問題がある。
【0007】
さらに、上記問題点を解決するために、スティッキング防止層に球状粒子とその粒径より小さな微粒子を含有させることが提案されている(特許文献4および5)。しかし、この場合には球状粒子がスティッキング防止層より突出しているため、サーマルヘッドと接触した時に球状粒子が脱落して粕となり、印字品質に影響を与えたり、球状粒子が無機粒子の場合には、サーマルヘッドを摩耗させるという問題点がある。
【0008】
また、スティッキング防止層として、シリコーン樹脂などの樹脂にタルクや雲母粉などの粘土鉱物が分散混合された樹脂層が提案されている(特許文献6)。しかし、この場合は天然粘土鉱物であるタルクや雲母粉は媒体中での分散が難しく、スティッキング防止層形成用塗料の製造時にタルクなどが凝集しやすく、得られる塗料の安定性に欠けるといった問題点がある。
【0009】
【特許文献1】特開昭58−13359号公報
【特許文献2】特開昭57−129789号公報
【特許文献3】特開昭63−145088号公報
【特許文献4】特開平3−65396号公報
【特許文献5】特開平9−30138号公報
【特許文献6】特開昭56−155794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、サーマルヘッドの摩耗や損傷が著しく低減され、また、サーマルヘッドの非汚染性に優れ、かつスティッキング防止性に優れる感熱記録材料、および該感熱記録材料の製造に有用な塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、基材シートと、該基材シートの一方に設けた感熱記録層と、該基材シートの他の面に設けたサーマルヘッドのスティッキング防止層を有してなる感熱記録材料において、該スティッキング防止層が、シリコーン共重合樹脂と合成粘土鉱物とを含有することを特徴とする感熱記録材料を提供する。
【0012】
上記本発明においては、合成粘土鉱物が、合成スメクタイトおよび有機ベントナイトから選ばれる少なくとも1種であること;および合成粘土鉱物の含有量が、スティッキング防止層全体の5〜50質量%を占める量であることが好ましい。
【0013】
上記本発明においては、シリコーン共重合樹脂が、シリコーン−ポリウレタン共重合樹脂、シリコーン−アクリル共重合樹脂、シリコーン−ポリエステル共重合樹脂、シリコーン−ポリアミド共重合樹脂、シリコーン−ポリイミド共重合樹脂およびシリコーン−ポリアミドイミド共重合樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、シリコーン共重合樹脂と合成粘土鉱物とを含有することを特徴とする感熱記録材料のスティッキング防止層形成用塗料を提供する。
【0015】
上記本発明の塗料においては、合成粘土鉱物が、合成スメクタイトおよび有機ベントナイトから選ばれる少なくとも1種であること;および合成粘土鉱物の含有量が、シリコーン共重合樹脂と合成粘土鉱物との合計量の5〜50質量%を占める量であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、サーマルヘッドの摩耗や損傷が著しく低減され、また、サーマルヘッドの非汚染性に優れ、かつスティッキング防止性に優れた感熱記録材料および該感熱記録材料の製造に使用する塗料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の感熱記録材料は、スティッキング防止層が合成粘土鉱物とシリコーン共重合樹脂からなることが特徴である。
【0018】
本発明に用いる合成粘土鉱物としては、例えば、合成スメクタイト、有機ベントナイト、フッ素系、珪素系などの膨潤性または非膨潤性の合成雲母などが挙げられる。天然粘土鉱物と合成粘土鉱物とはその純度に大きな差があり、天然粘土鉱物では生成時の複雑な反応系により様々な副生成物の混入があるが、合成粘土鉱物の場合は、目的に応じた純粋な鉱物相を作ることができるため純度が高く、その分散性が高いという特徴がある。
【0019】
例えば、代表的な合成雲母であるNa四珪素雲母は、水と接触すると結晶の層間に水分子を吸着して膨潤し、バラバラになって水中に分散する特徴を有している天然には存在しない雲母である。また、層間陽イオンを溶媒に親和性の高い有機イオンに置き換えることで有機溶媒や溶融樹脂に膨潤するように改質されたものは、有機溶媒中に容易に分散することができる。
【0020】
また、合成スメクタイトでは、純度の高い親水性スメクタイトが得られるため分散安定性が良く、さらに親水性スメクタイトを有機修飾することによって得られた親油性スメクタイトは各種有機溶媒に容易に分散することができる。
【0021】
有機ベントナイトも同様に、ベントナイトを有機修飾することによって、有機溶媒に対する分散性が向上し、各種有機溶媒に容易に分散することができる。このような合成粘土鉱物を用いることにより、分散安定性の良いスティッキング防止層形成用塗料が作成できる。
【0022】
さらに、これら合成粘土鉱物はアスペクト比が高いため、スティッキング防止層中において配向性が良くなり、より一層スティッキング防止性能を発揮しやすくなる。これら合成粘土鉱物は、2種類以上混合して用いることもできる。
【0023】
特に、合成粘土鉱物が、合成スメクタイトおよび有機ベントナイトから選ばれる少なくとも1種であると、スティッキング防止層用塗料に対するこれらの合成粘土鉱物の分散性向上の効果が大きく、塗料安定性に優れるため、安定した性能のスティッキング防止層を得ることができる。
【0024】
本発明に用いる合成粘土鉱物の好ましい配合割合はスティッキング防止層中において5〜50質量%を占める量で、特に好ましくは5〜30質量%を占める量である。スティッキング防止層中において合成粘土鉱物の割合が多すぎると、スティッキング防止層の基材シートに対する密着性が低下し、印字品質の低下を招きやすくなるといった問題が生じる。一方、スティッキング防止層中において合成粘土鉱物の割合が少なすぎると、スティッキング防止層に要求されるスティッキング防止性能が得られなくなり、印字性能の低下を招きやすいといった問題が生じる。
【0025】
本発明に用いるシリコーン共重合樹脂としては、特に限定はされないが、シリコーン−ポリウレタン共重合樹脂、シリコーン−アクリル共重合樹脂、シリコーン−ポリエステル共重合樹脂、シリコーン−ポリアミド共重合樹脂、シリコーン−ポリイミド共重合樹脂、シリコーン−ポリアミドイミド共重合樹脂などがある。ここで「ポリウレタン」とは、ポリウレタン、ポリウレア、およびポリウレタン−ポリウレアの総称である。上記のシリコーン共重合樹脂は、1種または2種以上を組合せて使用することができる。
【0026】
これらの樹脂は市場から容易に入手できるとともに、下記の分子中に1個または2個以上の反応性基、例えば、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基などを有するポリシロキサン化合物を使用して、公知の重合法によって、本発明で用いるシリコーン共重合樹脂がそれぞれ得られる。
【0027】
反応性基を有するポリシロキサン化合物の好ましい例としては、例えば、下記のような化合物が挙げられる。
【0028】
(1)アミノ変性ポリシロキサン化合物

【0029】

【0030】

【0031】

【0032】

【0033】

【0034】
(2)エポキシ変性ポリシロキサン化合物

【0035】

【0036】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】
上記のエポキシ化合物はポリオール、ポリアミド、ポリカルボン酸などと反応させ末端活性水素を有するようにして使用することができる。
【0041】
(3)アルコール変性ポリシロキサン化合物

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】

【0046】

【0047】

【0048】
(4)メルカプト変性ポリシロキサン化合物

【0049】

【0050】

【0051】

【0052】
(5)カルボキシル変性ポリシロキサン化合物

【0053】

【0054】

【0055】

【0056】
以上列記した有機官能基を有するポリシロキサン化合物は、本発明において使用する好ましい化合物の例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他現在市販されており市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
【0057】
本発明において、必要によりシリコーン共重合樹脂に硬化剤を添加して、スティッキング防止層の耐熱性や皮膜強度の向上を図ることもできる。使用する硬化剤としては、ポリイソシアネート、メラミン、エポキシなどの従来公知のいずれのものも使用でき、特に制限はない。硬化剤の含有量は前記シリコーン共重合樹脂の種類や硬化剤の種類によって異なるが、シリコーン共重合樹脂の1〜50質量%であることが好ましい。
【0058】
本発明で使用できるシリコーン共重合樹脂に、他の樹脂を混合して使用することも、特に制限されない。これらの樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂、変性セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂などを使用することができる。本発明により形成されるスティッキング防止層には、必要に応じ、帯電防止剤や分散剤などの界面活性剤および添加剤を適宜使用することができる。
【0059】
本発明のスティッキング防止層形成用塗料は、シリコーン共重合樹脂と合成粘土鉱物とを含有することを特徴としている。上記合成粘土鉱物は、合成スメクタイトおよび有機ベントナイトから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、上記合成粘土鉱物の含有量は、シリコーン共重合樹脂と合成粘土鉱物との合計量の5〜50質量%、好ましくは5〜30質量%を占める量である。
【0060】
なお、本発明に関わるスティッキング防止層形成用塗料は無溶剤でもよいし、水または有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤として好ましいのは、例えば、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。また、アセトン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、パークロルエチレン、トリクロルエチレン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテートなども使用することができる。水または有機溶剤を用いて調製した塗料の固形分は、特に限定されないが、通常、3〜95質量%程度である。
【0061】
本発明のスティッキング防止層形成用塗料の製造に使用する分散・混合の手段としては、撹拌、超音波処理、振動分散、混練などが挙げられるが、特に限定されない。塗料の濃度や粘度に応じて、慣用の混合分散機(例えば、ボールミル、バスケットミル、サンドミル、ロールミル、アトライター、湿式ジェットミル、ディゾルバー、ペイントシェーカー、押出混合機、ホモジナイザー、超音波分散機など)を用いて混合することにより製造できる。
【0062】
本発明に用いる基材としては、従来から感熱記録材料の基材として使用されているものが使用可能である。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミドフィルム、ポリイミド、セロハンなどのプラスチックフィルムやグラシン紙、コンデンサー紙などの高密度紙などで、厚さが1.5〜10μm程度のものが好ましい。
【0063】
本発明の感熱記録材料のスティッキング防止層を形成するに際しては、スティッキング防止層形成用塗料を、従来公知の方法によって基材シートの裏面(表面は感熱記録層)に、乾燥厚さが0.02〜1μm程度となるよう塗布してスティッキング防止層を形成させる。好ましくは、0.05〜0.5μmの範囲内である。
【0064】
本発明の感熱記録材料は、上記のスティッキング防止層形成用塗料を用い、従来公知の方法で製造することができ、製造方法自体は特に限定されない。また、基材シート、感熱記録層(インク層)形成材料などのスティッキング防止層形成用材料以外の材料は、いずれも公知の材料が使用でき、特に限定されない。
【実施例】
【0065】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の文中の「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0066】
[合成例1]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、下記式Aに記載した2価アルコール変性ポリシロキサン(分子量:1,000)100部、ポリカーボネートジオール(分子量:2,000)100部、1,3−ブタンジオール30部およびトルエン416部とメチルエチルケトン416部を加えて均一に溶解させ、続いてヘキサメチレンジイソシアネートを127部加えて80℃で、IRにてイソシアネートのピークが消失するまで反応させ、不揮発分30%のシリコーン−ポリウレタン共重合樹脂溶液を得た。
【0067】

【0068】
[合成例2]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、シリコーンマクロマー(信越化学工業株式会社製「X−22−2426」;分子量12,000)20部、メチルメタクリレート70部、ブチルメタクリレート10部、メタクリル酸10部、アゾビスイソブチロニトリル1.0部およびメチルエチルケトン100部を仕込み、窒素を導入しながら75℃で3時間維持した後、アゾビスイソブチロニトリル0.5部を追加し、同温度でさらに2時間反応させ、反応後メチルエチルケトン80部およびシクロヘキサノン77部を加え、不揮発分30%のシリコーン−アクリル共重合樹脂溶液を得た。
【0069】
[合成例3]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、N−メチル−2−ピロリドン817部、無水トリメリット酸194部、ジアミノプロピルジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製「KF8012」;アミン当量2,200)40部を仕込み、窒素雰囲気下において、50℃にて2時間反応させた後、180℃まで昇温しさらに5時間反応させ、反応系内より流出する水を除去した。その後溶液を120℃まで冷却し、ジフェニルメタンジイソシアネート250部を加えて3時間反応させた。反応後、N−メチル−2−ピロリドン210部を加えて、不揮発分30%のシリコーン−ポリアミドイミド共重合樹脂溶液を得た。
【0070】
[実施例1]
(スティッキング防止層形成用塗料1)
・合成例1のシリコーン−ポリウレタン共重合樹脂溶液 100部
・有機ベントナイト 6部
・メチルエチルケトン 395部
・シクロヘキサノン 99部
上記のスティッキング防止層形成用塗料を用い、グラビア印刷により、厚さ3.5μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製)の表面に、乾燥後の厚みが0.3μmになるように塗布した後、乾燥機中で溶剤を蒸発させてスティッキング防止層を形成した。
【0071】
次に、下記の配合処方で感熱記録材料用の転写用インクを作成し、このインク組成物を100℃に加熱し、上記のスティッキング防止層を形成したPETフィルムの裏面にホットメルトによるロールコート法により塗布厚みが5μmとなるように塗布してインク層を形成し、感熱記録材料を得た。
【0072】
〔転写用インク〕
・パラフィンワックス 10部
・カルナウバワックス 10部
・ポリブテン(新日本石油社製) 1部
・カーボンブラック 2部
【0073】
[実施例2]
実施例1において、スティッキング防止層形成用塗料を下記のものに変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
(スティッキング防止層形成用塗料2)
・合成例1のシリコーン−ポリウレタン共重合樹脂溶液 100部
・合成スメクタイト 6部
・メチルエチルケトン 395部
・シクロヘキサノン 99部
【0074】
[実施例3]
実施例1において、スティッキング防止層形成用塗料を下記のものに変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
(スティッキング防止層形成用塗料3)
・合成例2のシリコーン−アクリル共重合樹脂溶液 100部
・有機ベントナイト 3部
・メチルエチルケトン 358部
・シクロヘキサノン 89部
【0075】
[実施例4]
実施例1において、スティッキング防止層形成用塗料を下記のものに変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
(スティッキング防止層形成用塗料4)
・合成例3のシリコーン−ポリアミドイミド共重合樹脂溶液 100部
・合成スメクタイト 6部
・N−メチルピロリドン 494部
【0076】
[比較例1]
実施例1において、スティッキング防止層形成用塗料を下記のものに変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
(スティッキング防止層形成用塗料5)
・合成例2のシリコーン−アクリル共重合樹脂溶液 100部
・タルク(天然粘土鉱物) 30部
・メチルエチルケトン 696部
・シクロヘキサノン 174部
【0077】
[比較例2]
実施例1のシリコーン共重合樹脂の代わりに下記のポリウレタン樹脂を用いて、下記に示す配合量とした以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料を得た。
〔ポリウレタン樹脂溶液の調整〕
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリカーボネートジオール(分子量:2,000)150部、1,3−ブタンジオール50部およびトルエン426部とメチルエチルケトン426部を加えて均一に溶解させ、続いてヘキサメチレンジイソシアネートを165部加えて80℃で、IRにてイソシアネートのピークが消失するまで反応させ、不揮発分30%のポリウレタン樹脂溶液を得た。
【0078】
(スティッキング防止層形成用塗料6)
・上記のポリウレタン樹脂溶液 100部
・メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂微粒子 6部
・メチルエチルケトン 395部
・シクロヘキサノン 99部
【0079】
上記で得られた各感熱記録材料をそれぞれ用い、薄膜型サーマルヘッドを用いて下記の条件下で印字を行い、サーマルヘッドのスティッキング性、ヘッドの損傷、ヘッドの汚染性、密着性および静止摩擦係数を観察および測定し評価した。また、用いた塗料の分散安定性についても評価した。
【0080】
(印字条件)
プリンター Zebra製110XiIIIplus
ドット密度 300dpi
印字濃度 12
印字走行距離 300m
被転写紙 平滑度50秒の上質紙
【0081】
(1)スティッキング性
感熱記録材料を実装試験に供した場合の、サーマルヘッドと感熱記録材料との間の押圧操作時における感熱記録材料の皺の発生、サーマルヘッドのスティッキング防止層に対するスティッキングの発生およびサーマルヘッドと感熱記録材料との熱融着を目視にて評価し、スティッキングのないものを5、感熱記録材料の破損によりサーマルヘッドが走行不能であったものを1として5段階評価した。
【0082】
(2)サーマルヘッドの損傷状態
(株)キーエンス製デジタルマイクロスコープVHXを使用してヘッドの損傷および摩耗状態を観察した。印字後のサーマルヘッドの状態が未使用の状態と比べ変化が無いものを5、ヘッド部分にクラックや摩耗が見られるものを1として5段階評価した。
【0083】
(3)サーマルヘッドの汚染性
感熱記録材料を実装試験に供した場合の、サーマルヘッドのヘッド熱素子部分に対する汚れの付着の有無を観察し、汚れのないものを○とし、汚れのあるものを×とした。
【0084】
(4)密着性
感熱記録材料のスティッキング防止層と基材シートとの接着性を碁盤目セロハンテープ剥離試験(クロスカット法)にて評価した。
【0085】
(5)静止摩擦係数
感熱記録材料のスティッキング防止層側を表面性試験機HEIDON(新東科学製)を用いて評価した。
【0086】
(6)分散安定性
実施例1〜4、比較例1、2のスティッキング防止層用塗料を、50mlガラス瓶にて1ヶ月間放置後、ディスパーにて攪拌したときに、再分散できるかどうかを目視にて観察し、再分散可能なものを○、再分散不可能なものを×とした。
【0087】

【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明によれば、サーマルヘッドの摩耗や損傷が著しく低減され、また、サーマルヘッドの非汚染性に優れ、かつスティッキング防止性に優れた感熱記録材料および該感熱記録材料の製造に使用する塗料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、該基材シートの一方に設けた感熱記録層と、該基材シートの他の面に設けたサーマルヘッドのスティッキング防止層を有してなる感熱記録材料において、該スティッキング防止層が、シリコーン共重合樹脂と合成粘土鉱物とを含有することを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
合成粘土鉱物が、合成スメクタイトおよび有機ベントナイトから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の感熱記録材料。
【請求項3】
合成粘土鉱物の含有量が、スティッキング防止層全体の5〜50質量%を占める量である請求項1または2に記載の感熱記録材料。
【請求項4】
シリコーン共重合樹脂が、シリコーン−ポリウレタン共重合樹脂、シリコーン−アクリル共重合樹脂、シリコーン−ポリエステル共重合樹脂、シリコーン−ポリアミド共重合樹脂、シリコーン−ポリイミド共重合樹脂およびシリコーン−ポリアミドイミド共重合樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【請求項5】
シリコーン共重合樹脂と合成粘土鉱物とを含有することを特徴とする感熱記録材料のスティッキング防止層形成用塗料。
【請求項6】
合成粘土鉱物が、合成スメクタイトおよび有機ベントナイトから選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の塗料。
【請求項7】
合成粘土鉱物の含有量が、シリコーン共重合樹脂と合成粘土鉱物との合計量の5〜50質量%を占める量である請求項5に記載の塗料。

【公開番号】特開2008−30233(P2008−30233A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203379(P2006−203379)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000238256)浮間合成株式会社 (99)
【Fターム(参考)】