説明

感熱転写受像シートおよびその製造方法

【課題】転写濃度が高く、表面平滑性に優れ、かつ高速印画に適し、高濃度の画像部に剥離線が生じにくい高品位の感熱転写受像シートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】紙基材上に、ポリオレフィン樹脂が被覆され、該ポリオレフィン樹脂上にポリエステル樹脂層を有し、かつ少なくとも1層の受容層を有する感熱転写受像シートであって、該ポリエステル樹脂層の樹脂が、実質的に無核の長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂形成体であり、該受容層が少なくとも1種のポリマーラテックスおよび少なくとも1種の、HLB値が5以上10以下のポリエーテル変性シリコーンを含有する感熱転写受像シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料拡散転写記録に用いる感熱転写受像シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
染料拡散転写記録方式では、色素(染料とも称す)を含有する感熱転写シート(以下、単にインクシートとも称す)と感熱転写受像シート(以下、単に受像シートとも称す)を重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルヘッドによって感熱転写シートを加熱することで感熱転写シート中の色素を感熱転写受像シートに転写して画像情報の記録を行うものであり、シアン、マゼンタ、イエローの3色あるいはこれにブラックを加えた4色を重ねて記録することで色の濃淡に連続的な変化を有するカラー画像を転写記録することができる。
【0003】
従来、このような感熱転写記録方式に用いられる基材として、ポリエステル系樹脂などを用いて、受像シート内部に微細な空洞を多量に含有させる技術が開発されている(例えば、特許文献1〜2参照)。感熱転写受像シートに微細な空洞が含有させると、空気層により感熱転写受像シートの断熱効果が高まり、印字ヘッドの熱エネルギーを有効に印字することができるためである。
【0004】
特許文献1では、ポリエステル系樹脂フィルムの中に無機系微粒子などを含有させておき、樹脂の延伸製膜時に無機微粒子などと樹脂界面とが剥離することにより、感熱転写受像シート内に空洞を形成させることが提案されている。これによれば、無機系微粒子などの添加により、フィルムが白色になって画像が鮮明になるとともに、空洞の形成により断熱性を得ることができる。
【0005】
しかし、前記特許文献1の方法は、微分散化のために高度な技術、装置を必要とし、また、凝集を抑制するために添加剤を加えたり、微粒子の前処理を行ったりする必要が生じるので、製造工程が複雑になり、コストが掛かるという問題があった。また、粒子を微粒子にすればするほど、製品中のボイドが小さくできるため断熱効果が高くなって好ましいが、微粒子の凝集が発生すると、印字ムラの原因になるだけでなく、感熱転写受像シートの表面に小さな凸部が形成され、印字ヘッドを損傷したり、ひいては装置トラブルの原因となったりするおそれがあった。加えて、凹部が形成されると印字の欠けやかすれが発生する問題があり、これらは容易に解決し難かった。さらに感熱転写受像シート表面の近傍まで発泡層が発現すると、発泡により表面の平滑性が損なわれる問題もあった。
【0006】
特許文献2に記載では、主たる成分である樹脂(例えば、ポリエステル系樹脂)に、その樹脂と相溶しない(非相溶の)別の樹脂を添加して混練する事により2相構造(例えば海島構造)を形成し、樹脂の延伸製膜時に主たる成分である樹脂と、そこに添加・混練された別の樹脂との界面が剥離することにより、空洞を形成させることが提案されている。このとき、非相溶相のサイズを揃えることによって、ボイドの制御が容易になり、感熱転写受像シートの性能を向上させることができる。
【0007】
前記特許文献2の方法で感熱転写受像シートを製造する場合には、一般的に、海島構造を形成して製膜延伸時にその界面を剥離させてボイドを発生させる機構が用いられる。しかしながら、このような機構により製造する場合には、思うように島部分が充分小さくできないなどの理由により、所望する2相構造が得られにくいために、結果として、ボイドが充分に小さくできない(制御が難しい)などの問題があった。また、感熱転写受像シート表面の近傍まで発泡層が発現すると、発泡により表面の平滑性が損なわれたり、ボイドサイズが大きいと印字性が低下したり、高級感が損なわれたりする問題があった。
【0008】
特許文献1および2に提案の方法はいずれも、主たる成分中に異種の成分を混入させ、それを核としてボイドを発現させる方法のため、ボイドの中に異種の成分が残り、それが断熱性向上を阻害してしまうことがあった。
上記のような課題に対して特許文献3では、β晶比率の高い樹脂フィルムを二軸延伸することにより実質的に無核の空洞含有フィルムを形成し、更にその表面にスキン層を形成することで、表面平滑性の改良を達成しているが、スキン層を設ける工程が加わることで生産性が低いという問題があった。
【0009】
一方、特許文献4では、結晶性を有するポリマーを含むポリマーフィルムを高速延伸することにより実質的に無核の空洞含有フィルムを形成し、更に、形成された空洞含有樹脂フィルムは、フィルム表面から所定の距離においても空洞が形成されていないために、優れた表面平滑性を有する。
しかしながら、近年のプリント時間短縮の要求から印画スピードの高速化が検討されており、更なる表面平滑性の向上が要求されている。高速印画時において、冬場を想定した低温低湿環境下においては、熱転写ヘッドとの接触幅が小さくなり表面凹凸の大きい感熱転写受像シートは印画ムラ・ざらつきなどにより印画品質が低下するおそれがある。
また、高速印画時において、熱転写受像シートの表面平滑性を高めた際、印画時の感熱転写シートとの接触面積が増大し、黒および高濃度の画像部において剥離線あるいは融着が生じるという新たな問題が発生した。
【0010】
高速印画時においては、記録時に感熱転写シートに印加される温度はより高温に設定される(それに伴い、加熱時間は短縮される)傾向にある。そのため、感熱転写シートと感熱転写受像シートが連続的に剥離せず搬送負荷変動が生じ、剥離に起因する線状の痕跡(剥離線)が残るという画像故障が起こりやすくなる。(最悪の場合は印画後に感熱転写シートが感熱転写受像シートに融着する。)
特に梅雨時期、夏場雨天時などの印画環境が高温高湿条件の場合には、剥離線が発生しやすく、これらの故障が出力画像中にあると画像品位を損なうことになる。
これらの問題を克服することが強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3067557号
【特許文献2】特開2005−281396号公報
【特許文献3】特開2005−205905号公報
【特許文献4】特開2009−191112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、転写濃度が高く、表面平滑性に優れ、かつ高速印画に適し、高濃度の画像部に剥離線が生じにくい高品位の感熱転写受像シートおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、下記手段で本発明の上記目的が達成できることを見出した。
(1)紙基材上に、ポリオレフィン樹脂が被覆され、該ポリオレフィン樹脂上にポリエステル樹脂層を有し、かつ少なくとも1層の受容層を有する感熱転写受像シートであって、該ポリエステル樹脂層の樹脂が、実質的に無核の長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂形成体であり、該受容層が少なくとも1種のポリマーラテックスおよび少なくとも1種の、HLB値が5以上10以下のポリエーテル変性シリコーンを含有することを特徴とする感熱転写受像シート。
(2)前記ポリエステル樹脂層の樹脂が、テレフタル酸とアルキレンジオールとの縮合体であることを特徴とする(1)に記載の感熱転写受像シート。
(3)前記ポリエステル樹脂層の樹脂が、テレフタル酸と炭素数2〜6のアルキレンジオールとの縮合体であることを特徴とする(1)に記載の感熱転写受像シート。
(4)前記ポリエステル樹脂層が前記ポリオレフィン樹脂上に前記空洞含有樹脂形成体を張り合わせて形成されたポリエステル樹脂層であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
(5)前記空洞含有樹脂形成体の受容層側表面の表面粗さ(Ra)が0.10以下であり、かつ該空洞含有樹脂形成体の熱伝導率が0.05W/mK以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
(6)前記受容層中の前記ポリマーラテックスが、塩化ビニル/アクリル共重合体であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
(7)前記受容層中の前記ポリマーラテックスが、塩化ビニルのホモポリマーラテックスであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
(8)前記受容層中に少なくとも2種のポリマーラテックスを含有し、該少なくとも2種が、塩化ビニル/アクリル共重合体および塩化ビニルのホモポリマーラテックスから選択されることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
(9)前記受容層中の前記ポリマーラテックスの少なくとも1種が、塩化ビニルのホモポリマーラテックスであって、かつ該塩化ビニルのホモポリマーラテックスを全ポリマーラテックスに対する固形分比率で30%以上含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
(10)前記感熱転写受像シートが、前記ポリエステル樹脂層と前記受容層との間に無機微粒子を含有する中間層を有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
(11)紙基材上に、ポリオレフィン樹脂が被覆され、該ポリオレフィン樹脂上に、実質的に無核の長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有ポリエステル樹脂を貼り合せた後、少なくとも1種のポリマーラテックスおよび少なくとも1種の、HLB値が5以上10以下のポリエーテル変性シリコーンを含有する受容層を塗設することを特徴とする感熱転写受像シートの製造方法。
(12)前記受容層と前記空洞含有ポリエステル樹脂の間に少なくとも1層の中間層を有し、該受容層と該中間層を同時重層塗布することを特徴とする(11)に記載の感熱転写受像シートの製造方法。
(13)前記ポリエステル樹脂樹脂が、テレフタル酸とアルキレンジオールとの縮合体であることを特徴とする(11)または(12)に記載の感熱転写受像シートの製造方法。
(14)前記ポリエステル樹脂層の樹脂が、テレフタル酸と炭素数2〜6のアルキレンジオールとの縮合体であることを特徴とする(11)または(12)に記載の感熱転写受像シートの製造方法。
(15)前記空洞含有樹脂形成体の受容層側表面の表面粗さ(Ra)が0.10以下であり、かつ該空洞含有樹脂形成体の熱伝導率が0.05W/mK以下であることを特徴とする(11)〜(14)のいずれか1項に記載の感熱転写受像シートの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、転写濃度が高く、表面平滑性に優れ、かつ高速印画に適し、高濃度の画像部に剥離線が生じにくい高品位の感熱転写受像シートおよびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の空洞形成樹脂成形体の製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。
【図2A】図2Aは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、空洞含有樹脂成形体の斜視図である。
【図2B】図2Bは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂成形体のA−A’断面図である。
【図2C】図2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aにおける空洞含有樹脂成形体のB−B’断面図である。
【図2D】図2Dは、フィルム表面から最も近くに位置する10個の空洞の、フィルム表面からの距離を測定する方法を説明するための図であって、図2AにおけるA−A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0017】
本発明における感熱転写受像シートは紙基材上にポリオレフィン樹脂が被覆され、該ポリオレフィン樹脂上にポリエステル樹脂層である、実質的に無核の長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂形成体を有する。
最初に、本発明で使用される紙基材を説明する。
<紙基材>
紙基材は、いわゆる原紙とも称し、原料としては特に制限はなく針葉樹および広葉樹から選ばれる天然パルプ、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック材料性の合成パルプ、あるいは合成パルプと天然パルプの混合物などが挙げられる。
原紙の原料として使用できるパルプとしては、原紙の表面平滑性、剛性および寸度安定性(カール性)を同時にバランスよく、かつ十分なレベルにまで向上させる点から、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が好ましく、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)や広葉樹サルファイトパルプ(LBSP)等を使用することもできる。パルプ繊維は繊維長のもともと短い広葉樹パルプを主体に使用することが適当である。パルプの叩解にはビータやリファイナーを使用することができる。パルプの叩解後に得られるパルプスラリーには必要に応じて各種添加剤(例えば填料、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、湿潤紙力増強剤、定着剤、pH調整剤、その他の薬剤など)を添加できる。特開2004−271790号公報の段落番号0021〜0025にこれらの例が記載されている。
原紙の密度は0.9g/m2以上が好ましく、0.95g/m2〜1.2g/m2がより好ましい。原紙の厚みは目的に応じて適宜選択できるが、通常50〜300μmが好ましく、100g/m2〜250g/m2がさらに好ましい。
原紙の坪料は、特に制限はなく、目的に応じて選択することができ、例えば50〜250g/m2が好ましく、100〜200g/m2が特に好ましい。
【0018】
<ポリオレフィン樹脂>
本発明は、上記紙基材(原紙)上にポリオレフィン樹脂が被覆されている。
ポリオレフィン樹脂の被覆は、紙基材上の両面に被覆されるのが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられ、単一のモノマーから形成されたものでも、複数の異なったモノマーから形成された共重合体であってもよく、また、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
例えば、耐熱性を向上させるためには、ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂とのブレンド、高密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とのブレンドが好ましい。
【0019】
本発明においては、ポリオレフィン樹脂はポリエチレン樹脂が好ましい。
ポリエチレン樹脂は、低密度ポリエチレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂が存在する。
ポリエチレン樹脂においても、耐熱性を向上させかつコストや被覆適正(ラミネート適正)の観点で、高密度ポリエチレン樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とをブレンドしたポリエチレン樹脂が好ましい。
【0020】
前記高密度ポリエチレンと、前記低密度ポリエチレンとのブレンドは、例えば、ブレンド比率(質量比)1/9〜9/1で用いられる。該ブレンド比率としては、2/8〜8/2が好ましく、3/7〜7/3がより好ましい。紙基材の両面に熱可塑性樹脂層を形成する場合、紙基材の裏面は、例えば、高密度ポリエチレン、あるいは高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンドを用いて形成されるのが好ましい。ポリエチレンの分子量としては、特に制限はないが、メルトインデックスが、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンのいずれについても、1.0〜40g/10分の間のものであって、押出し適性を有するものが好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、増白剤、導電剤、填料、酸化チタン、群青、カーボンブラック等の顔料や染料を配合することが好ましい。
ポリエチレン樹脂層の厚みは10μm〜50μmが好ましく、20μm〜40μmがさらに好ましい。また、ポリエステル樹脂が塗設される側と反対側(バック面)にポリオレフィンを有する場合、このバック面のポリエチレン樹脂層の厚みは5μm〜50μmが好ましく、10μm〜30μmがさらに好ましい。
【0021】
紙基材のバック面上、もしくは紙基材のバックを被覆したポリエチレン樹脂上にカール調整層、筆記層層、帯電調整層を有することが好ましい。
(カール調整層)
紙基材もしくは紙基材のバックを被覆したポリエチレン樹脂が露出していると環境中の湿度・温度により感熱転写受像シートがカールしてしまうことがあるため、支持体の裏面側にカール調整層を形成することが好ましい。カール調整層は、感熱転写受像シートのカールを防止するだけでなく防水の役割も果たす。カール調整層は、紙基材のバックを被覆したポリエチレン樹脂が兼ねることもできるが新たに設置しても構わない。ポリエチレン樹脂をカール調整層として使用する場合も含め、具体的には、例えば特開昭61−110135号公報、特開平6−202295号公報などに記載されたものと同様にして形成することができる。
【0022】
(筆記層・帯電調整層)
筆記層・帯電調整層には、無機酸化物コロイドやイオン性ポリマー等を用いることができる。帯電防止剤として、例えば第四級アンモニウム塩、ポリアミン誘導体等のカチオン系帯電防止剤、アルキルホスフェート等のアニオン系帯電防止剤、脂肪酸エステル等のノニオン系帯電防止剤など任意のものを用いることができる。具体的には、例えば特許第3585585号明細書などに記載されたものと同様にして形成することができる。
【0023】
<ポリエステル樹脂層>
本発明においては、上記ポリオレフィン樹脂上(受容層を塗設する側のポリオレフィン樹脂上)にポリエステル樹脂層を有する。以下に空洞含有樹脂成形体と称して説明する。
(空洞含有樹脂成形体)
本発明の空洞含有樹脂成形体は、ポリエステル樹脂からなり、必要に応じてその他の樹脂成分を含んでもよい。空洞含有樹脂成形体における「成形体」としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルムやシートが挙げられる。
【0024】
[ポリエステル樹脂]
前記ポリエステル樹脂は、必要に応じて、空洞の発現に寄与しないその他の成分を含んでなる。本発明のポリエステル樹脂は、結晶性を有するポリマーのみからなることが特に好ましい。一般に、ポリマーは、結晶性を有するポリマーと非晶性(アモルファス)ポリマーとに分けられるが、結晶性を有するポリマーといえども100%結晶ということはなく、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶(アモルファス)領域とを含んでいる。本発明においては、分子構造の中に少なくとも結晶性領域を含んでいればよく、結晶性領域と非結晶領域とが混在していてもよい。
なお、ポリエステル樹脂は、一般にはその多くが結晶性を有し、例えば、PET、PEN、PTT、PBT、PPT、PHT、PBN、PES、PBSなどが結晶性を有するものとして挙げられる。ポリエステル樹脂は、上記のような単独のポリエステル重合体だけでなく、複数のポリエステル重合体を混合してもよい。
【0025】
また、前記結晶性を有するポリマーとしては、上記のポリエステル樹脂以外に、例えば、高密度ポリエチレン、ポリオレフィン類(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−シクロオレフィン共重合体、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1など)、ポリアミド類(PA)(例えば、ナイロン−6など)、ポリアセタール類(POM)、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンサルファイド類(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン類(PEEK)、液晶ポリマー類(LCP)、フッ素樹脂などが知られている。
結晶性ポリマーの中でも、ポリエステル樹脂、シンジオタクチック・ポリスチレン(SPS)、液晶ポリマー類(LCP)は力学強度や製造の観点から、優れており、本発明で使用するポリエステル樹脂は、これらの点でも特に優れている。
本発明においては、本発明で使用するポリエステル樹脂に、上記の結晶性を有するポリマーをブレンドしても構わない。ただし、この場合、空洞含有樹脂成形体に占めるポリエステル樹脂の比率は少なくとも50質量%有するものである。
【0026】
ポリエステル樹脂は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物の総称を意味する。結晶性を有するポリエステル樹脂としては、前記例示したPET(ポリエチレンテレフタエレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPT(ポリペンタメチレンテレフタレート)、PHT(ポリヘキサメチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PES(ポリエチレンサクシネート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)だけでなく、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合反応によって得られる高分子化合物が全て含まれる。
【0027】
前記ジカルボン酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、オキシカルボン酸、多官能酸などが挙げられ、中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0028】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましく、特にテレフタル酸が最も好ましい。
【0029】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。前記オキシカルボン酸としては、例えば、p-オキシ安息香酸などが挙げられる。前記多官能酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸の中では、コハク酸、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、コハク酸、アジピン酸がより好ましい。
なお、本発明においては、前述のように、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸が最も好ましい。
【0030】
前記ジオール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられ、中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
【0031】
前記脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールなどが挙げられ、中でも、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールが特に好ましい。前記脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどが挙げられる。
このうち、本発明においては、炭素数2〜6のアルキレンジオールが好ましく、炭素数3〜6のアルキレンジオールがより好ましく、炭素数4のアルキレンジオールがさらに好ましく、ブタン−1,4−ジオールが最も好ましい。
【0032】
ポリエステル樹脂の溶融粘度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜700Pa・sが好ましく、70〜500Pa・sがより好ましく、80〜300Pa・sが更に好ましい。前記溶融粘度が大きいほうが延伸時にボイドを発現しやすいが、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、破断しづらくなる点で好ましい。また、前記溶融粘度が50〜700Pa・sであると、製膜時にダイヘッドから吐出される溶融膜の形態が維持しやすくなって、安定的に成形できたり、製品が破損しにくくなったりするなど、物性が高まる点で好ましい。
ここで、溶融粘度は、プレートタイプのレオメーターやキャピラリーレオメーターにより測定することができる。
【0033】
ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4〜1.2が好ましく、0.6〜1.0がより好ましく、0.7〜0.9が更に好ましい。前記IVが大きいほうが延伸時にボイドを発現しやすいが、前記IVが0.4〜1.2であると、製膜時に押出しがしやすくなったり、樹脂の流れが安定して滞留が発生しづらくなり、品質が安定したりする点で好ましい。さらに、前記IVが0.4〜1.2であると、延伸時に延伸張力が適切に保たれるために、均一に延伸しやすくなり、装置に負荷がかかりにくい点で好ましい。加えて、前記IVが0.4〜1.2であると、製品が破損しにくくなって、物性が高まる点で好ましい。
ここで、前記IVは、ウベローデ型粘度計により測定することができる。
【0034】
ポリエステル樹脂の融点(Tm)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱性や製膜性などの観点から、150〜300℃が好ましく、160〜270℃がより好ましい。
ここで、融点は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0035】
なお、前記ポリエステル樹脂として、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とが、それぞれ1種で重合してポリマーを形成していてもよく、前記ジカルボン酸成分及び/又は前記ジオール成分が、2種以上で共重合してポリマーを形成していてもよい。また、前記ポリエステル樹脂として、2種以上のポリマーをブレンドして使用してもよい。
【0036】
前記2種以上でのポリマーのブレンドにおいて、主たるポリマーに対して添加されるポリマーは、前記主たるポリマーに対して、溶融粘度及び極限粘度が近く、添加量が少量であるほうが、製膜時や溶融押出し時に物性が高まり、押出ししやすくなる点で好ましい。
【0037】
また、前記ポリエステル樹脂の流動特性の改良、光線透過性の制御、塗布液との密着性の向上などを目的として、前記ポリエステル樹脂に対してポリエステル系以外の樹脂を添加してもよい。
【0038】
本発明の空洞含有樹脂形成体は、従来技術において添加されていた無機系微粒子、相溶しない樹脂などの空洞形成剤を特に添加しなくても、簡便な工程でボイドを形成させることができる。さらに、不活性ガスを予め樹脂の中に溶け込ませるための特殊な設備も必要としない。なお、空洞含有樹脂成形体の製造方法については、後記する。
【0039】
このように、本発明の空洞含有樹脂形成体は、実質的に無核のボイドを有する。ここで、“無核のボイド”とは、延伸によりボイドを形成するための核(ボイド形成剤)を有さないボイドをさす。このような無核のボイドでは、フィルム断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した際の断面増において、ボイド内に何も観察されない。一方、ボイド内に核を有する、即ち核(ボイド形成剤)により形成された、所謂“有核のボイド”では、そのボイド内に球状、または繊維状、または不定形状、またはその他の形状をした核が観察される。
【0040】
ここで、空洞含有樹脂成形体は、空洞の発現に寄与しない成分であれば、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、耐熱安定剤、酸化防止剤、有機の易滑剤、核剤、染料、顔料、白色微粒子、分散剤、カップリング剤及び蛍光増白剤などが挙げられる。前記その他の成分が空洞の発現に寄与したかどうかは、空洞内又は空洞の界面部分に、結晶性を有するポリマー以外の成分(例えば、後記する各成分など)が検出されるかどうかで判別できる。
【0041】
前記白色微粒子としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、有機微粒子、無機微粒子のいずれも使用可能である。たとえば、無機粒子としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属塩、窒化硼素、アルミナホワイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、硼酸アルミニウム、クレー、タルク、カオリン、合成雲母などが挙げられる。このうち、酸化チタンが特に好ましい。又、有機微粒子としては、弗素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコン樹脂粒子、中空粒子等の樹脂粒子などを挙げることができるが、いずれもこれらに限定されるものではない。
【0042】
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のヒンダードフェノール類を添加してもよい。前記ヒンダードフェノール類としては、例えば、イルガノックス1010、同スミライザーBHT、同スミライザーGA-80などの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
また、前記酸化防止剤を一次酸化防止剤として利用し、更に二次酸化防止剤を組み合わせて適用することもできる。前記二次酸化防止剤としては、例えば、スミライザーTPL−R、同スミライザーTPM、同スミライザーTP-Dなどの商品名で市販されている酸化防止剤が挙げられる。
【0043】
前記蛍光増白剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユビテック、OB-1、TBO、ケイコール、カヤライト、リューコプア、EGMなどの商品名で市販されているものを用いることができる。なお、前記蛍光増白剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。このように蛍光増白剤を添加することで、より鮮明で青味のある白色性を与え、高級感を持たせることができる。
【0044】
本発明の空洞含有樹脂成形体においては、空洞の発現に寄与する成分を使用せずに空洞を形成させることが可能なので、空洞部には、例えば熱可塑性樹脂や無機粒子などの空洞形成剤が含まれていない。即ち、本発明の空洞含有樹脂成形体の空洞部には、主に、熱伝導率の低い空気しか存在しないため、フィルムの熱伝導率は大幅に低下する。このような性質は、本発明の空洞含有樹脂成形体が、印字(印画)特性に優れた受像シートとして好適に利用できることを示す。
一方で、従来の空洞含有樹脂成形体においては、空洞形成剤を使用しなければ空洞を形成させることができないので、空洞部には空洞形成剤が含まれている。従来の空洞含有樹脂成形体の空洞部では、空洞形成剤が、本来開くべき空洞の一部を占有して、フィルム表面から裏面へ熱の通り道になったり(ブリッジ状に存在したり)、空洞形成剤そのものが高い熱伝導率を有するような場合には、この空洞形成剤がフィルムの表面から裏面への熱伝導を促進したり、ポリマー層内での熱伝導を促進したりする。
【0045】
<空洞>
本発明の空洞含有樹脂成形体は、長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有し、空洞含有率及び前記空洞のアスペクト比に特徴を有している。
前記空洞とは、樹脂成形体内部に存在する、真空状態のドメインもしくは気相のドメインを意味する。
【0046】
前記空洞含有率とは、樹脂成形体の固相部分の総体積と含有される空洞の総体積の和に対する、前記含有される空洞の総体積を意味する。前記空洞含有率としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、3体積%以上、50体積%以下が好ましく、5〜40体積%がより好ましく、10〜30体積%が更に好ましい。ここで、前記空洞含有率は、比重を測定し、前記比重に基づいて算出することができる。具体的には、前記空洞含有率は、下記の(1)式により求めることができる。
空洞含有率(%)={1-(延伸後の空洞含有樹脂成形体の密度)/(延伸前のポリマー成形体の密度)} ・・・(1)
【0047】
前記アスペクト比とは、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さをr(μm)として、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さをL(μm)とした際のL/r比を意味する。
前記アスペクト比としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10以上であることが好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。
【0048】
図2A〜2Cは、アスペクト比を具体的に説明するための図であって、図2Aは、空洞含有樹脂成形体の斜視図であり、図2Bは、図2Aにおける空洞含有樹脂成形体のA-A’断面図であり、図2Cは、図2Aにおける空洞含有樹脂成形体のB-B’断面図である。
【0049】
前記空洞含有樹脂成形体の製造工程において、前記空洞は、通常、第一の延伸方向に沿って配向する。従って、前記「空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))」は、空洞含有樹脂成形体1の表面1aに垂直で、かつ、第一の延伸方向に直角な断面(図2AにおけるA−A’断面)における空洞100の平均の厚みr(図2B参照)に相当する。また、「前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))」は、前記空洞含有樹脂成形体の表面に垂直で、かつ、前記第一の延伸方向に平行な断面(図2AにおけるB−B’断面)における空洞100の平均の長さL(図2C参照)に相当する。
【0050】
なお、前記第一の延伸方向とは、延伸が1軸のみの場合には、その1軸の延伸方向を示す。通常は、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸を行うため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
また、延伸が2軸以上の場合には、空洞形成を目的とした延伸方向のうち少なくとも1方向を示す。通常は、2軸以上の延伸においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われ、かつ、この縦延伸により空洞を形成することが可能であるため、この縦延伸の方向が前記第一の延伸方向に相当する。
【0051】
ここで、空洞の配向方向に直交する厚み方向における前記空洞の平均長さ(r(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。同様に、前記空洞の配向方向における前記空洞の平均長さ(L(μm))は、光学顕微鏡や電子顕微鏡の画像により測定することができる。
【0052】
このように、前記空洞含有樹脂成形体は、前記空洞を含有していることにより、例えば、熱伝導率などにおいて、様々な優れた特性を有している。言い換えると、前記空洞含有樹脂成形体に含有される空洞の態様を変化させることで、熱伝導率などの特性を調節することができる。
【0053】
−熱伝導率−
本発明の空洞含有樹脂成形体の熱伝導率としては、0.05(W/mK)以下であることで本発明の効果を発揮する。さらに0.04(W/mK)以下であることがより好ましく、0.03(W/mK)以下であることが更に好ましい。なお、下限値は特に制限されるものではないが、好ましくは0.001(W/mK)以上、さらに好ましくは0.01(W/mK)以上である。
【0054】
また、前記空洞含有樹脂成形体の好適な熱伝導率は、相対的な値として規定することもできる。即ち、前記空洞含有樹脂成形体の熱伝導率をX(W/mK)として、前記空洞含有樹脂成形体と同じ厚さで、前記空洞含有樹脂成形体を構成するポリマー組成物と同一のポリマー組成物からなり、空洞を含有しないポリマー成形体の熱伝導率をY(W/mK)とした際のX/Y比が、0.27以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.15以下であることが更に好ましい。
ここで、前記熱伝導率は、熱拡散率、比熱、密度の測定値の積によって算出することができる。前記熱拡散率は一般的にはレーザーフラッシュ法(例えば、TC−7000((株)真空理工製))により測定できる。前記比熱はDSCによりJIS K7123に記載の方法に従って測定できる。前記密度は一定面積の質量とその厚みを測定することにより、算出することができる。
【0055】
さらに、前記空洞含有樹脂成形体は、前記空洞を含有しつつも、従来技術において添加されていた、空洞を発現するための無機系微粒子、相溶しない樹脂、不活性ガスなどが添加されていないため、優れた表面平滑性を有している。
本発明の空洞含有樹脂成形体の表面平滑性としては、Ra=0.10μm以下であることで本発明の効果を発揮する。さらにRa=0.08μm以下が特に好ましい。
【0056】
更に、前記空洞含有樹脂成形体は、成形体表面だけでなく、成形体表面から所定の距離においても空洞が形成されていないことを特徴とする。
即ち、前記空洞含有樹脂成形体における、前記空洞の配向方向に直交する断面において、前記空洞の中心から前記空洞含有樹脂成形体の表面までの距離が最も短い10個の前記空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂成形体の表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)が、次式、h(avg)>T/100、の関係を満たすことが好ましい。
但し、Tは、前記断面における厚みの算術平均値を表し、10個の前記空洞は、前記厚み方向に平行な任意の一の直線と、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線とで挟まれた領域内に存在する空洞の中から選択される。
【0057】
前記「空洞の中心」とは、前記断面における空洞の断面形状が、真円である場合にはその中心を意味し、それ以外の形状の場合には、例えば、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。
前記「空洞含有樹脂成形体の表面」とは、厚み方向における、空洞含有樹脂成形体の最外面を意味する。通常、前記空洞含有樹脂成形体を載置したときの上面を意味する。
【0058】
具体的には、空洞含有樹脂成形体の表面に垂直で、かつ、縦延伸方向に直角な断面(図2D参照)を、走査型電子顕微鏡を用いて300〜3000倍の適切な倍率で検鏡し、断面写真を撮像する。前記断面写真内において、厚みの算術平均値Tを算出する。厚みの算術平均値Tとして、ロングレンジ接触式変位計などを用いて測定された厚さを用いてもよい。また、厚みの測定には、アンリツ製FILM THICKNESS TESTER KG601Bなども用いることができる。
次に、前記断面写真内において、厚み方向に平行な任意の一の直線を描画し、更に、前記一の直線に対し平行でかつ20×Tだけ離れて位置する他の直線を描画する。
そして、断面写真内の各空洞において、最大二乗中心法により任意に設定した基準円からの偏差の二乗和が最小となる円の中心を決定し、これを空洞の中心とする。そして、前記一の直線と前記他の直線とで挟まれた領域内において、空洞の中心から空洞含有樹脂成形体の表面までの距離が最も短い10個の空洞を選択する。なお、前記「空洞の中心から空洞含有樹脂成形体の表面までの距離」は、前記「空洞の中心」を中心とした円を描画する際に、描画する円の半径を順次大きくし、円弧が最初に空洞含有樹脂成形体の表面に接したときの円の半径とする。
そして、選択した10個の空洞について、各中心から前記空洞含有樹脂成形体の表面までの距離h(i)を算出し、算出された各前記距離h(i)の算術平均値h(avg)を下記(2)式により算出する。
h(avg)=(Σh(i))/10 ・・・(2)
なお、前記「各中心から前記空洞含有樹脂成形体の表面までの距離h(i)」は、前記空洞含有樹脂成形体が、湾曲していたり、応力がかかっていたりすると、正確に測定することができないため、測定の際には平面状に載置した状態で測定することが好ましい。
前記空洞含有樹脂成形体は、前記空洞を含有しつつも、空洞含有樹脂成形体の表面近くに空洞が形成されていないため、優れた表面平滑性を有している。
【0059】
(空洞含有樹脂成形体の製造方法)
前記空洞含有樹脂成形体の製造方法としては、少なくともポリマー成形体を延伸する延伸工程を含み、更に必要に応じて製膜工程などのその他の工程を含んでなる。
なお、前記ポリマー成形体とは、前記結晶性を有するポリマーを含むポリマー組成物からなり、特に空洞を含有していないものを示し、例えば、ポリマーフィルム、ポリマーシートなどが挙げられる。
【0060】
−延伸工程−
前記延伸工程では、前記ポリマー成形体が少なくとも1軸に延伸される。そして、前記延伸工程により、ポリマー成形体が延伸されるとともに、その内部に第一の延伸方向に沿って配向した空洞が形成されることで、空洞含有樹脂成形体が得られる。
【0061】
延伸により空洞が形成される理由としては、前記ポリマー成形体を構成する少なくとも1種類の結晶性を有するポリマーが、微小な結晶領域又は分子のあるレベルでの規則性を持った微小な領域を形成することによって、延伸時に伸張し難い結晶又は微細構造領域を含む相間の樹脂が引きちぎられるような形で、剥離延伸されることにより、これが空洞形成源となって、空洞が形成されるものと考えられる。
なお、このような延伸による空洞形成は、結晶性を有するポリマーが1種類の場合だけではなく、2種類以上の結晶性を有するポリマーが、ブレンド又は共重合されている場合であっても可能である。
【0062】
前記延伸の方法としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸が挙げられるが、いずれの延伸方法においても、製造時に成形体の流れる方向に沿って縦延伸が行われることが好ましい。
【0063】
一般に、縦延伸においては、ロールの組合せやロール間の速度差により、縦延伸の段数や延伸速度を調節することができる。
前記縦延伸の段数としては、1段以上であれば特に制限はないが、より安定して高速に延伸することができる点及び製造の歩留まりや機械の制約の点から、2段以上に縦延伸することが好ましい。また、2段以上に縦延伸することは、1段目の延伸によりネッキングの発生を確認したうえで、2段目の延伸により空洞を形成させることができる点においても、有利である。
なお、2段目以降の延伸における延伸条件(例えば、延伸速度、延伸温度など)は、1段目の延伸条件と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0064】
−延伸速度−
前記縦延伸の延伸速度としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜36,000mm/minが好ましく、800〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜12,000mm/minが更に好ましい。前記延伸速度が、10mm/min以上であると、充分なネッキングを発現させやすい点で好ましい。また、前記延伸速度が、36,000mm/min以下であると、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しづらくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。したがって、前記延伸速度が、10?36,000mm/minであると、充分なネッキングを発現させやすく、かつ、均一な延伸がしやすくなり、樹脂が破断しづらくなり、高速延伸を目的とした大型な延伸装置を必要とせずにコストを低減できる点で好ましい。
【0065】
より具体的には、1段延伸の場合の延伸速度としては、1,000〜36,000mm/minが好ましく、1,100〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜12,000mm/minが更に好ましい。
【0066】
2段延伸の場合には、1段目の延伸を、ネッキングを発現させることを主なる目的とした予備的な延伸とすることが好ましい。前記予備的な延伸の延伸速度としては、10〜300mm/minが好ましく、40〜220mm/minがより好ましく、70〜150mm/minが更に好ましい。
【0067】
そして、2段延伸における、前記予備的な延伸(1段目の延伸)によりネッキングを発現させた後の2段目の延伸速度は、前記予備的な延伸の延伸速度と変えることが好ましい。前記予備的延伸によりネッキングを発現させた後の、2段目の延伸速度としては、600〜36,000mm/minが好ましく、800〜24,000mm/minがより好ましく、1,200〜15,000mm/minが更に好ましい。
【0068】
前記延伸速度の測定方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができるが、例えば、以下の方法により測定できる。
バッチ式の場合には、ポリマー成形体の端部を把持したクランプが、延伸方向へ移動する際の移動速度、即ち、クランプの移動距離/クランプの移動に要した時間(mm/min)、を延伸速度とする。本実施形態において規定される延伸速度は、特に記載のない限り、前記バッチ式の場合の延伸速度である。
【0069】
また、ポリマー成形体が2対(又はそれ以上)のニップロールを通過する際の、ニップロールの表面速度の差によって、ポリマー成形体が延伸される場合(一般に、「Roll to Roll延伸」という。)には、ポリマー成形体の把持位置がニップロールで固定されており、移動しない。したがって、前記Roll to Roll延伸の場合には、延伸された倍率/延伸に要した時間(%/min)、を延伸速度とする。なお、前記ニップロールは、図1におけるロール15aに相当する。
【0070】
なお、前記バッチ式における延伸速度と、前記Roll to Roll延伸における延伸速度とは、いずれかの延伸方法において、ポリマー成形体の延伸前の長さ(mm)及び延伸後の長さ(mm)を測定していれば、互いに換算することが可能である。バッチ式における延伸速度から、Roll to Roll延伸における延伸速度に換算した例を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
−延伸温度−
延伸時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、延伸温度をT(℃)、結晶性を有するポリマーのガラス転移温度をTg(℃)としたときに、
(Tg-30)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが好ましく、
(Tg-25)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することがより好ましく、
(Tg-20)(℃)≦T(℃)≦(Tg+50)(℃)
で示される範囲の延伸温度T(℃)で延伸することが更に好ましい。
【0073】
一般に、延伸温度(℃)が高いほど延伸張力も低めに抑えられて容易に延伸できるが、前記延伸温度(℃)が、{ガラス転移温度(Tg)-30}℃以上、{ガラス転移温度(Tg)+50}℃以下であると、空洞含有率が高くなり、アスペクト比が10以上になりやすく、充分に空洞が発現する点で好ましい。
【0074】
ここで、前記延伸温度T(℃)は、非接触式温度計により測定することができる。また、前記ガラス転移温度Tg(℃)は、示差熱分析装置(DSC)により測定することができる。
【0075】
なお、前記延伸工程において、空洞の発現の妨げにならない範囲で、横延伸はしてもよく、しなくてもよい。また横延伸をする場合には、横延伸工程を利用してフィルムを緩和させたり、熱処理を行ったりしてもよい。
また、延伸後の空洞含有樹脂成形体は、形状安定化などの目的で、更に熱を加えて熱収縮させたり、張力を加えたりする等の処理をしても良い。
【0076】
前記ポリマー成形体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性を有するポリマーがポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂である場合には、溶融製膜方法により好適に製造することができる。
また、前記ポリマー成形体の製造は、前記延伸工程と独立に行ってもよく、連続的に行ってもよい。
【0077】
図1は、本発明の空洞含有樹脂成形体の製造方法の一例を示す図であって、二軸延伸フィルム製造装置のフロー図である。図1に示す二軸延伸フィルム製造装置は、Roll to Roll延伸を行うフィルム製造装置である。
図1に示すように、原料樹脂(ポリマー組成物)11は、押出機12(原料形状や、製造規模によって、二軸押出機を用いたり、単軸押出し機を用いたりする)内部で熱溶融、混練された後、Tダイ13から柔らかい板状(フィルム又はシート状)に吐出される。
次に、吐出されたフィルム又はシートFは、キャスティングロール14で冷却固化されて、製膜される。製膜されたフィルム又はシートF(「ポリマー成形体」に相当する)は、縦延伸機15に送られる。
そして、製膜されたフィルム又はシートFは、縦延伸機15内で再び加熱され、速度の異なるロール15a間で、縦に延伸される。この縦延伸により、フィルム又はシートFの内部に延伸方向に沿って空洞が形成される。そして、空洞が形成されたフィルム又はシートFは、横延伸機16の左右のクリップ16aで両端を把持されて、巻取機側(図示せず)へ送られながら横に延伸されて、空洞含有樹脂成形体1となる。なお、前記工程において、縦延伸のみを行ったフィルム又はシートFを横延伸機16に供さず、空洞形成樹脂成形体1として使用してもよい。
【0078】
本発明の空洞含有樹脂成形体は、前述の紙基材上に被覆されたポリオレフィン樹脂上に熱によりラミネートして積層してもよく、接着剤層などを支持体表面に形成して貼り合わせても良い。接着剤層には、公知の粘着剤、感熱接着剤、熱可塑性樹脂を使用することができるが、例として、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル−紫外線吸収剤共重合体樹脂、紫外線吸収性樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱時接着性の良好な樹脂を挙げることができる。これらの中でもガラス転移温度が40℃〜80℃の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0079】
以下、本発明においては、上記紙基材上にポリオレフィン樹脂を有し、この上にポリエステル樹脂を有するものを支持体として説明する。紙基材のバック面を有する場合、このバック面も含む。
本発明の感熱転写受像シートは、支持体上に少なくとも1層の受容層を有する。本発明において、前記空洞含有樹脂成形体(空洞含有ポリエステル樹脂層)は、断熱層としての機能を果たすが、これとは別に、中空ポリマー粒子を含有する断熱層を設けてもよい。
また、本発明の感熱転写受像シートは、前記ポリエステル樹脂層と受容層の間や、中空ポリマー粒子を含有する断熱層を有する場合はこの断熱層と前記受容層との間に、例えば白地調整、帯電防止、接着性、クッション性、平滑性などの各種機能を付与するために中間層を設けることも好ましい態様の一つである。
【0080】
<受容層>
本発明の受容層は、少なくともポリマーラテックスとHLB値が5以上10以下の少なくとも1種のポリエーテル変性シリコーンを含有する。受容層は、感熱転写シートから移行してくる染料を染着し、形成された画像を維持する役割を果たす。なお、この染料の移行は昇華転写方式で移行するのが好ましい。
【0081】
ポリマーラテックスは水分散物であり必然的に水を含む。しかも受容層の塗布液は水を使用する。一方、水ではなく塗布液にメチルエチルケトンやトルエンのような有機溶剤を用いた場合、空洞含有樹脂形成体の表面に浸潤し、乾燥時に収縮による微細な凹凸を引き起こす。このため、塗布液の溶媒に水を用いた受容層が好ましい。上記のような微細な凹凸は、高速印画時に冬場を想定した低温低質化の環境においては印画ムラの原因となるため、極力低減することが好ましい。
【0082】
(ポリマーラテックス)
本明細書中、ポリマーラテックスとは、水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したもののことを言う。分散状態としては、球状のポリマー重合粒子や、ポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよいが、特に球状のポリマー重合粒子が好ましい。
【0083】
また、受容層は、感熱転写時に感熱転写シートから移行された染料を受容して記録画像を形成する受容ポリマーとしてのポリマーラテックス以外にも、例えば、膜の弾性率を調整するなどの目的で、他の機能を有するポリマーラテックスも併用して用いてもよい。
【0084】
ポリマーラテックスの分散粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが好ましく、5〜500nmの範囲であることが特に好ましい。
【0085】
ポリマーラテックスとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体、ポリウレタン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリカプロラクトン等のポリマーラテックスが挙げられる。
このうち、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体が好ましく、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体が特に好ましく、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体が最も好ましい。
【0086】
(塩化ビニルホモポリマーラテックス)
本明細書中、前記ポリ塩化ビニルとは、重合体を得るためのモノマーとして塩化ビニルのみを使用したものであり、塩化ビニルホモポリマーを指す。本発明において、塩化ビニルホモポリマーラテックスを含有することで、本発明の効果を著しく発揮する。
【0087】
塩化ビニルホモポリマーラテックスの含有量としては、受容層中の全ポリマーラテックスに対して10質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜60質量%がより好ましい。
【0088】
塩化ビニルホモポリマーラテックスの分散粒子の平均粒径は5〜500nmであることが好ましく、10〜300nmの範囲であることが特に好ましい。
また、塩化ビニルホモポリマーラテックスの重合度は300〜1500であることが好ましく、500〜800の範囲であることが特に好ましい。
【0089】
(塩化ビニル系共重合体)
本明細書中、前記塩化ビニル系共重合体とは、重合体を得るためのモノマーとして塩化ビニルを少なくとも使用し、かつ他のモノマーと共重合させたものであり、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルとアクリレートの共重合体、塩化ビニルとメタクリレートの共重合体、塩化ビニルと酢酸ビニルとアクリレートの共重合体、塩化ビニルとアクリレートとエチレンの共重合体等が挙げられる。このように2元共重合体でも3元以上の共重合体でもよく、モノマーが不規則に分布していても、ブロック共重合していてもよい。これらのうち、塩化ビニルアクリル共重合体のポリマーラテックスが好ましい。
これらの共重合体にはビニルアルコール誘導体やマレイン酸誘導体、ビニルエーテル誘導体などの補助的なモノマー成分を添加してもよい。
本発明に用いる塩化ビニル系共重合体において、塩化ビニルを主成分とすることが好ましい。塩化ビニルを主成分とするとは塩化ビニル成分は50モル%以上含有されていることであり、塩化ビニル成分は50モル%以上含有されていることが好ましく、またマレイン酸誘導体、ビニルエーテル誘導体等の補助的なモノマー成分は10モル%以下であることが好ましい。
【0090】
本発明において、前記受容層に用いられるポリマーラテックスは単独でも混合物として使用してもよい。また前記受容層に用いられるポリマーラテックスは、均一構造であってもコア/シェル型であってもよく、このときコアとシェルをそれぞれ形成する樹脂のガラス転移温度が異なってもよい。
【0091】
本発明において、前記受容層で使用するポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は、−30℃〜100℃が好ましく、0℃〜90℃がより好ましく、20℃〜90℃がさらに好ましく、40℃〜90℃が特に好ましい。
なお、このガラス転移温度(Tg)は実測できない場合、下記式で計算することができる。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの質量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は「Polymer Handbook(3rd Edition)」(J.Brandrup,E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用できる。
【0092】
また、本発明に好ましく用いられるポリマーラテックスは、ポリマー濃度がラテックス液に対して10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。受容層中の全ポリマーラテックスの添加量は、ポリマーラテックスの固形分が受容層中の全ポリマーの50〜98質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。
【0093】
ポリマーラテックスの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリエステル類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリウレタン類、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体、塩化ビニルメタアクリル酸共重合体等の共重合体を含めたポリ塩化ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等の共重合体を含めたポリ酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン等のポリマーラテックスを好ましく用いることができる。これらポリマーラテックスとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000が好ましく、より好ましくは10000〜500000である。
【0094】
ポリマーラテックスとしては、ポリエステルラテックス、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックス、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体ラテックス、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックス等の塩化ビニル共重合体ラテックスのいずれか1つまたは任意の組み合わせが好ましい。
【0095】
塩化ビニル系共重合ラテックスとしては、例えば、ビニブラン240、ビニブラン270、ビニブラン276、ビニブラン277、ビニブラン375、ビニブラン380、ビニブラン386、ビニブラン410、ビニブラン430、ビニブラン432、ビニブラン550、ビニブラン601、ビニブラン602、ビニブラン609、ビニブラン619、ビニブラン680、ビニブラン680S、ビニブラン681N、ビニブラン683、ビニブラン685R、ビニブラン690、ビニブラン860、ビニブラン863、ビニブラン685、ビニブラン867、ビニブラン900、ビニブラン938、ビニブラン950(以上いずれも日信化学工業(株)製)、SE1320、S−830(以上いずれも住友ケムテック(株)製)が挙げられ、これらは本発明において好ましいポリマーラテックスである。
【0096】
(塩化ビニル系共重合体以外のポリマーラテックス)
塩化ビニル系共重合ラテックス以外のポリマーラテックスとしては、ポリエステル系ポリマーラテックスを挙げることができ、例えば、バイロナール MD1200、バイロナール MD1220、バイロナール MD1245、バイロナール MD1250、バイロナール MD1500、バイロナール MD1930、バイロナール MD1985(以上いずれも東洋紡(株)製)が挙げられる。
これらのなかでも、ポリ塩化ビニル、すなわち塩化ビニルのホモポリマーラテックス、あるいは塩化ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックス(特に、塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体ラテックス)、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体ラテックス、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックス(特に、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体ラテックス)等の塩化ビニル共重合体ラテックスが特に好ましく、塩化ビニルのホモポリマーラテックス、塩化ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックスが最も好ましい。また、本発明においては上記ラテックスを2種以上組み合わせて使用することも好ましい。
【0097】
上記ラテックスを2種以上組み合わせて使用する場合、上記いずれの組み合わせでもよいが、塩化ビニル成分を含有するポリマーラテックスを含有することが好ましい。中でも塩化ビニルのホモポリマーラテックスと他のポリマーラテックスとの組み合わせが好ましい。組み合わせる他のポリマーラテックスとしてはポリエステルラテックス、塩化ビニル/酢酸ビニル化合物共重合体ラテックス及び塩化ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックスが好ましく、塩化ビニル/酢酸ビニル化合物共重合体ラテックス及び塩化ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックスがより好ましく、もっとも好ましくは塩化ビニル/アクリル化合物共重合体ラテックスである。
上記ラテックスを2種以上組み合わせて使用する場合、受容層中の塩化ビニルのホモポリマーラテックスは、全ポリマーラテックスに対して固形分比率として25%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、最も好ましくは50%以上である。上限は90%以下が好ましい。
【0098】
(水溶性ポリマー)
受容層には水溶性ポリマーを含有してもよく、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン共重合体が好ましく用いられ、なかでも塗布時のセット性が良好であるという理由からゼラチンが好ましく用いられる。これらの水溶性ポリマーは受容層の親疎水性の制御に有効であり、多量に使用し過ぎない場合は感熱転写シートからの染料転写が良好であり、転写濃度も良好となる。
水溶性ポリマーの使用量は、受容層の固形分全体の質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0099】
(ポリエーテル変性シリコーンオイル)
本発明の受容層には、前記ポリマーラテックスとともにポリエーテル変性シリコーンオイルを使用する。
本発明で使用するポリエーテル変性シリコーンオイルは、画像印画時の感熱転写シートと感熱転写受像シートとの離型性を確保し、さらに本発明の効果を効果的に奏する。
また、本発明のポリエーテル変性シリコーンオイルは、非反応性のものが好ましく、エポキシ基を含まないものが特に好ましい。
本発明に用いられるポリエーテル変性シリコーンオイルは、下記一般式(1)に示す片末端変性型、下記一般式(2)に示す両末端変性型、下記一般式(3)に示す側鎖変性型、または下記一般式(4)に示す主鎖共重合型が好ましい。
【0100】
【化1】

【0101】
一般式(1)〜(4)において、Rはアルキル基を表し、Rは−Y−(CO)−(CO)−Rを表し、Rは、水素原子、1個のアシル部を有するアシル基、1価のアルキル基、1価のシクロアルキル基または、1価のアリール基を表し、Rは各々独立に、水素原子、アシル基、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。Yは単結合または2価の連結基を表し、Xは2価の連結基を表す。nは正の数を表し、n’は0または正の整数を表し、mは0または正の数を表し、lは正の数を表す。aおよびbは各々独立に0または正の数を表すが、aとbが同時に0であることはない。また、n’とmが同時に0になることはない。
【0102】
におけるアルキル基は置換基を有してもよい。Rのアルキル基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。また、置換アルキル基よりも無置換アルキル基が好ましい。なかでもメチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
におけるl個のアシル部を有するアシル基は、1個のアシル部を有するアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基が挙げられ、2個のアシル部を有するアシル基としては、例えば、オキザリル基、マロニル基、スクシノイル基、マレオイル基、テレフタロイル基が挙げられ、3個のアシル部を有するアシル基としては、例えば、1,2,3−プロパントリカルボニル基が挙げられる。これらのアシル期としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、炭素数2〜10のアシル基がより好ましい。
【0103】
における1価のアルキル基において、1価のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基が挙げられ、2価のアルキル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、3価のアルキル基としては、例えば、1,2,3−プロパントリイル基が挙げられ、4価のアルキル基としては、例えば、1,2,2,3−プロパンテトライル基が挙げられる。これらのアルキル基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。
【0104】
における1価のシクロアルキル基において、1価のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、2価のシクロアルキル基としては、2価のシクロヘキシル基としては、例えば、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基が挙げられ、3価のシクロアルキル基としては、例えば、1,3,5−シクロヘキサントリイル基が挙げられる。シクロヘキシル基の炭素数は、5〜10が好ましい。
における1価のアリール基において、1価のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、2価のアリール基としては、例えば、フェニレン基が挙げられ、3価のアリール基としては、例えば、ベンゼン−1,3,5−トリイル基が挙げられる。アリール基のアリール部としてはベンゼン環が好ましい。
は、1価のアルキル基が好ましい。
【0105】
におけるアシル基の炭素数は20以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下がさらに好ましく、アセチル基が最も好ましい。
におけるアルキル基は、置換基を有してもよい。Rのアルキル基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。また、置換アルキル基よりも無置換アルキル基が好ましい。なかでもメチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
におけるシクロアルキル基は、置換基を有してもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましく、無置換のシクロアルキル基がさらに好ましい。
におけるアリール基は、置換基を有してもよく、フェニル基、ナフチル基が挙げられるが、フェニル基が好ましい。置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子が好ましいが、無置換のフェニル基が最も好ましい。
は、水素原子、アシル基、アルキル基またはアリール基が好ましく、水素原子、アシル基またはアルキル基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
【0106】
X、Yにおける2価の連結基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、アルキレンオキシ基としては、例えば、−CHCHO−、−CH(CH)CHO−、−CHCH(CH)O−または−(CHO−が挙げられ、これらが好ましい。連結基の炭素数は1〜4が好ましく、2または3がより好ましい。
なお、Yにおいては、アルキレンオキシ基がさらに好ましく、プロピレンオキシ基(−(CHO−)が特に好ましい。
【0107】
aおよびbは、0または1以上の整数が好ましく、0以上500以下がより好ましく、0以上200以下がさらに好ましい。
nは1以上1000以下が好ましく、n’およびmは0以上1000以下が好ましい。
lは1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。
【0108】
前記ポリエーテル変性シリコーンは、平均分子量が55000以下であることが好ましい。より好ましくは40000以下が好ましい。本発明における平均分子量は、質量平均分子量のことを表す。ここで質量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒にTHFを用いて、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量で定義する。
【0109】
前記ポリエーテル変性シリコーンは、25℃で液体のものが好ましい。
また、前記ポリエーテル変性シリコーンは、粘度が500mPa・s以上10000mPa・s以下であることが好ましく、1000mPa・s以上5000mPa・s以下がより好ましく、2000mPa・s以上5000mPa・s以下がさらに好ましい。粘度の測定方法は、大別して液中の回転体にかかる抵抗力を測定する方法とオリフィスや細管を通過させる時の圧力損失を測定する方法とがある。前者は回転型粘度計でB型粘度計に代表される。後者は毛管粘度計でオストワルド粘度計に代表される。本発明においては、B型粘度計で25℃の温度で測定した値で定義する。
【0110】
一般式(1)〜(4)で表されるポリエーテル変性シリコーンオイルのなかでも、一般式(2)〜(4)で表されるポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましく、一般式(2)または(3)で表されるポリエーテル変性シリコーンオイルがより好ましく、一般式(3)で表されるポリエーテル変性シリコーンオイルが最も好ましい。
【0111】
本発明のポリエーテル変性シリコーンは、HLB値(Hydrophile−Lipophile Balance)は、5.0〜10.0であることが好ましい。より好ましくは5.0〜7.0が好ましい。HLB値が低過ぎると塗工液中で分離・凝集し、面状故障の原因となる。HLB値が高いと離型効果およびラテックス粒子表面への配向効果が小さく十分な効果が発揮されない。
本発明において、HLB値はグリフィン法に基づき、以下の式で定義された計算式で求める(西一郎、今井怡知朗、笠井正威 共編, 「界面活性剤便覧」, 産業図書株式会社(1960年))。
【0112】
HLB = 20 × Mw/M
【0113】
ここで、Mは分子量であり、Mwは親水性部分の式量(分子量)である。ちなみに、M=Mw + Mo であり、ここで、Moは新油性部分の式量(分子量)である。なお、親水性部分とは、エチレンオキシ基である。
【0114】
本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンオイルの具体例としては、信越化学株式会社製 KF−351A、KF-352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、KF−6011、KF−6012、KF-6015、KF-6017、X-22-4515、X−22−6191、東レ・ダウコーニング株式会社製 SH3749、SH3773M、SH8400、SF8427、SF8428、FZ-2101、FZ−2104、FZ−2110、FZ−2118、FZ−2162、FZ−2203、FZ−2207、FZ-2208、FZ−77、L-7001、L-7002等が挙げられる。
また、本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンオイルは、例えば、特開2002−179797号公報、特開2008−1896号公報、特開2008−1897号公報に記載の方法または、これに準じた方法で、容易に合成できる。
【0115】
本発明のポリエーテル変性シリコーンオイルは単独でも、2種類以上混合して使用することもできる。また、本発明においては、ポリエーテル変性シリコーンオイルに他の離型剤を併用してもよい。
【0116】
ポリエーテル変性シリコーンオイルの添加量としては、受容層中の全ポリマーラテックスに対して1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0117】
受容層には、紫外線吸収剤、滑剤、酸化防止剤、防腐剤、界面活性剤、造膜助剤、硬膜剤を含有させてもよい。
受容層の塗布量は、0.5〜10g/m(固形分換算、以下本発明における塗布量は特に断りのない限り、固形分換算の数値である。)が好ましい。受容層の膜厚は1〜20μmであることが好ましい。
【0118】
(中間層)
本発明の感熱転写受像シートは、断熱層である空洞含有樹脂成形体と受容層との間に少なくとも1層の中間層を有することが好ましい。
【0119】
中間層にはポリマーラテックスを含有することが特に好ましい。
ポリマーラテックスとして特に限定するものではないが、例として、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBRラテックス)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBRラテックス)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MBRラテックス)、スチレン−アクリル共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのポリマーラテックスなどから選択して用いられる。これらの中でも、ポリウレタン、SBR、NBR、MBRおよび塩化ビニル/(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、SBR、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。これらのポリマーラテックスは必要に応じて、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0120】
ポリウレタン系ラテックスとしては、大日本インキ化学(株)製HYDRAN AP10、AP20、AP30、AP40、APX−101H、1320NS、1610NS、1670NS、1980NS、HW−337、HW−350、HW−920、HW−940、大成ファインケミカル(株)製WEM−202U、WEM−3008、WEM−321U、WEM−031U、WBR−016U、WBR−2018U、WBR−2019、大日精化(株)製D−1000、D−2000、D−4000、D−6000、D−9000、高松油脂(株)製NS−155NX、NS−310A、NS−310X、NS−311X、日本ポリウレタン(株)製WOE−305、第一工業製薬(株)製エラストロンなどが挙げられる(いずれも商品名)。
【0121】
メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックスとしては、日本エイアンドエル(株)製MR−170、MR−171、MR−172、MR−173、MR−174、MR−180などが挙げられる(いずれも商品名)。
【0122】
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスとしては、日本エイアンドエル(株)製SR−141、SR−142、日本ゼオン(株)製Nipol 1561、1562、1571H、1571C2、1571CL、LX517A、LX517B、1577K、LX511A、LX513、LX531、LX531B、LX550、LX550L、LX551、LX552などが挙げられる(いずれも商品名)。
塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、受容層で説明した塩化ビニル共重合体ラテックスが挙げられる。
【0123】
本発明の中間層中には、水溶性ポリマーを含有させることができる。例としては、受容層の項で記載した水溶性ポリマーが挙げられる。これら水溶性ポリマーのなかで、ゼラチンが特に好ましい。これらの樹脂は単独又は混合して用いることができる。
【0124】
本発明の中間層には、白地調整を目的に白色微粒子を含有することが好ましい。この白色微粒子は、有機微粒子、無機微粒子のいずれも使用可能であるが、特に無機微粒子が好ましい。その代表例としては、無機粒子としては、例えば酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属塩、窒化硼素、アルミナホワイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、硼酸アルミニウム、クレー、タルク、カオリン、合成雲母などが挙げられる。このうち、酸化チタンが特に好ましい。
また、有機微粒子としては、弗素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコン樹脂粒子、中空粒子等の樹脂粒子などを挙げることができるが、いずれもこれらに限定されるものではない。
【0125】
無機及び/又は有機微粒子を添加する場合、中間層中における含有量は、通常5〜90質量%に選定するのが好ましく、10〜75質量%がより好ましい。
【0126】
無機微粒子及び有機微粒子の平均粒径は、通常0.01〜10μmであり、好ましくは0.02〜3μmである。
【0127】
本発明の中間層の塗布量は、3.0〜30g/m2であることが好ましく、5.0〜20g/m2であることがより好ましい。
【0128】
<その他の添加剤>
本発明の感熱転写受像シートには、必要に応じて前記受容層以外にも、添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、防腐剤、造膜助剤、硬膜剤、マット剤(滑剤を含む)、酸化防止剤、その他の添加剤を含有させることができる。
【0129】
紫外線吸収剤:
本発明の感熱転写受像シートには、紫外線吸収剤を含有させてもよい。その紫外線吸収剤としては、従来公知の無機系紫外線吸収剤、有機系紫外線吸収剤が使用できる。有機系紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、置換アクリロニトリル系、ヒンダートアミン系等の非反応性紫外線吸収剤や、これらの非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいは、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入し、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂に共重合若しくは、グラフトしたものを使用することができる。また、樹脂のモノマーまたはオリゴマーに紫外線吸収剤を溶解させた後、このモノマーまたはオリゴマーを重合させる方法が開示されており(特開2006−21333号公報)、こうして得られた紫外線遮断性樹脂を用いることもできる。この場合には紫外線吸収剤は非反応性のものでよい。
これら紫外線吸収剤に中でも、特にベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系が好ましい。これら紫外線吸収剤は画像形成に使用する染料の特性に応じて、有効な紫外線吸収波長域をカバーするように組み合わせて使用することが好ましく、また、非反応性紫外線吸収剤の場合には紫外線吸収剤が析出しないように構造が異なるものを複数混合して用いることが好ましい。
紫外線吸収剤の市販品としては、チヌビン−P(チバガイギー製)、JF−77(城北化学製)、シーソープ701(白石カルシウム製)、スミソープ200(住友化学製)、バイオソープ520(共同薬品製)、アデカスタブLA−32(旭電化製)等が挙げられる。
【0130】
防腐剤:
本発明の感熱転写受像シートには、防腐剤を添加してもよい。本発明の感熱転写受像シートに含有される防腐剤としては、特に限定されないが、防腐防黴ハンドブック、技報堂出版(1986)、堀口博著、防菌防黴の化学、三共出版(1986)、防菌防黴剤事典、日本防菌防黴学会発行(1986)等に記載されているものを用いることができる。具体的には、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンゾトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピロジン,キノリン,グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、2−メルカプトピリジン−N−オキサイドまたはその塩等が挙げられる。これらの中でも、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オンが好ましい。
【0131】
造膜助剤:
本発明の感熱転写受像シートには、高沸点溶剤を添加することが好ましい。高沸点溶剤は造膜助剤または可塑剤として機能し、ポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば室井宗一著,「合成ラテックスの化学」,高分子刊行会発行(1970年)に記載されている。高沸点溶剤(造膜助剤)の例として以下のものが挙げられる。
Z−1:ベンジルアルコール類
Z−2:2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレート類
Z−3:2−ジメチルアミノエタノール類
Z−4:ジエチレングリコール類
これらの高沸点溶剤を添加すると、画像のにじみが見られ、実用上好ましくない場合があるが、塗布膜中の上記溶剤類の含有量が固形分で1%以下であれば、性能上問題がない。
【0132】
硬膜剤:
本発明の感熱転写受像シートにおいては、硬膜剤を使用してもよい。感熱転写受像シートの塗設層(例えば、受容層、中間層、断熱層、下塗層など)中に添加することができる。
本発明で用いることができる硬膜剤としては、特開平1−214845号公報17頁のH−1,4,6,8,14,米国特許第4,618,573号明細書のカラム13〜23の式(VII)〜(XII)で表される化合物(H−1〜54)、特開平2−214852号公報8頁右下の式(6)で表される化合物(H−1〜76),特にH−14、米国特許第3,325,287号明細書のクレーム1に記載の化合物などが好ましく用いられる。硬膜剤の例としては米国特許第4,678,739号明細書の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、特開平4−218044号の公報または明細書等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒドなど)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N'−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタンなど)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素など)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号公報などに記載の化合物)が挙げられる。好ましくはビニルスルホン系硬膜剤やクロロトリアジン類が挙げられる。
【0133】
マット剤:
本発明の感熱転写受像シートにおいて、ブロッキング防止、離型性付与、滑り性付与のためにマット剤を添加してもよい。マット剤は感熱転写受像シートの受容層が塗布される面、受容層が塗布される他方の面、あるいはその両方の面に添加することができる。
【0134】
マット剤は、一般に水に不溶の有機化合物の微粒子、無機化合物の微粒子を挙げることができるが、本発明では、分散性の観点から、有機化合物を含有する微粒子が好ましい。有機化合物を含有していれば、有機化合物単独からなる有機化合物微粒子であってもよいし、有機化合物だけでなく無機化合物をも含有した有機/無機複合微粒子であってもよい。マット剤の例としては、例えば米国特許第1,939,213号、同2,701,245号、同2,322,037号、同3,262,782号、同3,539,344号、同3,767,448号等の各明細書に記載の有機マット剤を用いることができる。
【0135】
[感熱転写受像シートの製造方法]
以下、本発明の感熱転写受像シートの製造方法について説明する。
本発明の感熱転写受像シートは、少なくとも1層の受容層を有し、適宜、断熱層である空洞含有樹脂形成体と受容層の間に中間層を有しても良いが、その製造方法は各層の塗布液を支持体上に同時重層塗布して製造することが好ましい。
【0136】
このような同時重層塗布は、水系塗布であることが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60質量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、オキシエチルフェニルエーテルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。
【0137】
支持体上に複数の機能の異なる複数の層(断熱層、中間層、受容層など)からなる多層構成の感熱転写受像シートを製造する場合、特開2004−106283号、同2004−181888号、同2004−345267号等の各公報に示されている如く各層を順次塗り重ねていくか、あらかじめ各層を支持体上に塗布したものを張り合わせることにより製造することが知られている。一方、写真業界では例えば複数の層を同時に重層塗布することにより生産性を大幅に向上させることが知られている。例えば特開米国特許第2,761,791号、同第2,681,234号、同第3,508,947号、同第4,457,256号、同第3,993,019号、特開昭63−54975号、特開昭61−278848号、同55−86557号、同52−31727号、同55−142565号、同50−43140号、同63−80872号、同54−54020号、特開平5−104061号、同5−127305号、特公昭49−7050号の公報または明細書やEdgar B. Gutoffら著,「Coating and Drying Defects:Troubleshooting Operating Problems」,John Wiley&Sons社,1995年,101〜103頁などに記載のいわゆるスライド塗布(スライドコーティング法)、カーテン塗布(カーテンコーティング法)といわれる方法が知られている。これらの塗布方法では、複数の塗布液を塗布装置に同時に供給して異なる複数の層を形成する。
【0138】
本発明の感熱転写受像シートを製造する方法としては、同時重層塗布が可能で高い生産性を実現できることから、スライド塗布あるいはカーテン塗布が好ましい。本発明の感熱転写受像シートは、少なくとも1層の受容層を水系塗布により、支持体上に塗布して製造されるものであるが、これらが複数の層からなる場合、あるいは、中間層を有する場合には、それらを全て含めて支持体上に同時塗布することが好ましい。
同時重層塗布においては、均質な塗膜形成および良好な塗布性の点で、各層を構成する塗布液の粘度および表面張力を調整する必要がある。塗布液の粘度は、公知の増粘剤や減粘剤を他の性能に影響を与えない範囲で使用することにより容易に調整できる。また、塗布液の表面張力は各種の界面活性剤により調整可能である。
【0139】
これらの各層を塗布するための塗布液の温度は、25℃〜60℃が好ましく、30℃〜50℃であることがさらに好ましい。特に塗布液にゼラチンを使用する場合の塗布液の温度は33℃〜45℃であることが好ましい。
【0140】
本発明においては多層構成を構成する1層あたりの塗布液の塗布量は1g/m2〜500g/m2の範囲が好ましい。多層構成の層数は2以上で任意に選択できる。受容層は支持体から最も遠く離れた層として設けられることが好ましい。
【0141】
乾燥ゾーンでは、乾燥速度が一定で、材料温度とほぼ湿球温度が等しい恒率乾燥期間と、乾燥速度が遅くなり、材料温度が上昇する減率乾燥期間を経て乾燥が進む。恒率乾燥期間では、外部から与えられた熱はすべて水分の蒸発に使われる。減率乾燥期間では、材料内部での水分拡散が律速になり、蒸発表面の後退等により乾燥速度が低下し、与えられた熱は材料温度上昇にも使われるようになる。
【0142】
セットゾーンおよび乾燥ゾーンにおいては、各塗布膜の間および支持体と塗布膜の間で水分移動が起こり、また塗布膜の冷却と水分蒸発による固化が起こる。このため、製品の品質・性能には乾燥途中での膜面温度・乾燥時間等の履歴が大きく影響し、要求品質に応じた条件の設定が必要とされる。
【0143】
セットゾーンの温度は、15℃以下であり、なおかつその冷却工程時間を5秒以上30秒未満とすることが好ましい。5秒未満では十分な塗布液粘度上昇が得られずその後の乾燥時に面状が悪化してしまう。また30秒以上の冷却工程を経るとその後の乾燥工程においての水分除去に時間がかかり、生産効率が低下する。
【0144】
15℃以下での冷却工程後、15℃を越える環境下で乾燥を行うが、その際、本発明においては、冷却終了後から30秒以内に、重層塗布された塗布膜における水の蒸発量を、塗布直後に1m2あたりに塗りつけられた膜面に含まれる水分の60%以上とすることが好ましい。塗布直後に1m2あたりに塗りつけられた膜面に含まれる水分とは、塗布前に調液された塗工液中の含水量に等しい。蒸発水分量が少なすぎなければ、塗布面状の水分が多すぎず、面状が良好となる。一方、該蒸発量を60%以上とする際に乾燥温度を50℃より高くしすぎなければ、水分の蒸発が急激とならず、ひび割れなどを起こさず、面状が良好となるため、乾燥温度は50℃以下に抑えることが好ましい。
蒸発量の規定は、塗布後の感熱転写受像シートを110℃1時間の条件(雰囲気)で乾燥させたものの質量を100%蒸発したものと定義して、質量の差分を量ることで行うことができる。
【0145】
乾燥された塗布済み品は、一定の含水率に調整され巻き取られるが、巻取り、塗布済み品の保存過程での含水率、温度によって硬膜進行が影響されるため、巻取りでの含水率について適切な調湿過程条件の設定が必要となる。
一般に、硬膜反応は高温・多湿条件ほど進行しやすい。しかし、含水率が高すぎると、塗布品同士が接着したり、性能上の問題が生じたりする場合がある。この為、巻取りの含水率(調湿条件)と貯蔵条件は品質に応じた設定が必要とされる。
代表的な乾燥装置としては、エアループ方式、つるまき方式等がある。エアループ方式は、ローラーで支持された塗布済み品に乾燥風噴流を吹き付ける方式であり、ダクトは縦に配置する方式と、横に配置する方式がある。乾燥機能と搬送機能は基本的に分離されていて、風量等の自由度が大きい。しかし、多くのローラーを使うため、寄り・シワ・スリップ等のベースの搬送不良が発生しやすい。つる巻き方式は、円筒状のダクトに塗布済み品をつる巻き状に巻きつけて乾燥風で浮上させて(エアフローティング)搬送・乾燥する方式で、基本的にローラー支持がいらない(特公昭43−20438号公報)。その他、上下互いにダクトを設置して搬送する乾燥方式がある。一般的に乾燥分布はつるまき式に比べ良いが、浮上能力が劣る。
【0146】
<画像形成方法>
本発明の感熱転写受像シートを用いて画像形成する方法としては、本発明の感熱転写受像シートの受容層と感熱転写シートの染料層(熱転写層)とが接するように重ね合わせて、サーマルヘッドからの画像信号に応じた熱エネルギーを付与することにより画像を形成する。
具体的な画像形成は、例えば特開2005−88545号公報などに記載された方法と同様にして行うことができる。本発明では、消費者にプリント物を提供するまでの時間を短縮するという観点から、プリント時間は15秒未満が好ましく、3〜12秒がより好ましく、さらに好ましくは、3〜7秒である。
【0147】
上記プリント時間を満たすために、プリント時のライン速度は2.0msec/line以下が好ましく、1.5msec/line以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.73msec/line以下であり、最も好ましくは0.65msec/line以下である。また、高速化条件における転写効率向上の観点から、プリント時のサーマルヘッド最高到達温度は、180℃〜450℃が好ましく、さらに好ましくは200℃〜450℃である。さらには350℃〜450℃が好ましい。
【0148】
本発明の感熱転写受像シートは、感熱転写記録方式を利用したプリンター、複写機などに利用することができる。熱転写時の熱エネルギーの付与手段は、従来公知の付与手段のいずれも使用することができ、例えば、サーマルプリンター(例えば、日立製作所製、商品名、ビデオプリンターVY−100)等の記録装置によって記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm2程度の熱エネルギーを付与することによって所期
の目的を十分に達成することができる。また、本発明の感熱転写受像シートは、支持体を適宜選択することにより、熱転写記録可能な枚葉またはロール状の感熱転写受像シート、カード類、透過型原稿作成用シート等の各種用途に適用することもできる。
【実施例】
【0149】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、実施例中で、部または%とある場合、特に断りのない限り質量基準である。
【0150】
(実施例1)
(支持体1〜2の作製)
(支持体1の作製)
アカシアからなるLBKP50質量部およびアスペンからなるLBKP50質量部をそれぞれディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlに叩解し、パルプスラリーを調製した。
次いで、前記で得られたパルプスラリーに、対パルプ当り、カチオン変性でんぷん(日本NSC製、CAT0304L)1.3%、アニオン性ポリアクリルアミド(星光PMC製、DA4104)0.15%、アルキルケテンダイマー(荒川化学製、サイズパインK)0.29%、エポキシ化ベヘン酸アミド0.29%、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン(荒川化学(株)製、アラフィックス100)0.32%を加えた後、消泡剤0.12%を加えた。
【0151】
前記のようにして調製したパルプスラリーを長網抄紙機で抄紙し、ウェッブのフェルト面をドラムドライヤーシリンダーにドライヤーカンバスを介して押し当てて乾燥した。このとき、ドライヤーカンバスの引張り力を1.6kg/cmに設定して乾燥した。その後、サイズプレスにて原紙の両面にポリビニルアルコール((株)クラレ製、KL−118)を1g/m塗布して乾燥し、カレンダー処理を行った。なお、原紙の坪量は157g/mで抄造し、厚さ160μmの原紙(基紙)を得た。
【0152】
この原紙を毎分150m/分で走行させ、裏面にコロナ放電処理した後低密度ポリエチレン(密度0.924g/m3、MI=3g/10min)10質量部、高密度ポリエチレン(密度0.966g/m3、MI=11g/10min)90質量部からなる10μmの層と、低密度ポリエチレン(密度0.922g/m、MI=5g/10min)50質量部、高密度ポリエチレン(密度0.970g/m、MI=20g/10min)50質量部からなる15μmの最外層とをコートハンガータイプの2層同時共押出し用ダイを用いて溶融押出し、直後に冷却温度を適宜調整したマット面を有する冷却ロールを用いて型付けして裏面ポリオレフィン樹脂層を設けた。
【0153】
さらに前記原紙の表面にコロナ放電処理をした後、低密度ポリエチレン(密度0.920g/m、MI=5g/10min)38質量部にTiO60質量部およびステアリン酸亜鉛2.4質量部を練りこんだマスターバッチ10質量部と青み顔料を練りこんだマスターバッチ4質量部と、低密度ポリエチレン(密度0.918g/m、MI=8g/10min)86質量部からなる14μmの層と、低密度ポリエチレン(密度密度0.920g/m、MI=5g/10min)38質量部にTiO60質量部およびステアリン酸亜鉛2.4質量部を練りこんだマスターバッチ33質量部と蛍光増白剤を練りこんだマスターバッチ5質量部と、青み顔料を練りこんだマスターバッチ4質量部とからなる16μmの最外層をコートハンガータイプの2層同時共押出し用ダイを用いて溶融押出し、直後に冷却温度を適宜調整した微細なマット面を有する冷却ロールを用いて型付けして光表面ポリオレフィン樹脂層を設けた。以上のように支持体1を得た。
【0154】
また上記支持体1の表面ポリオレフィン樹脂層を設けないものを支持体2とした。
【0155】
(空洞含有樹脂成形体1〜8の作製)
<空洞含有樹脂成形体1>
IV=0.72であるPBT1(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂)を溶融押出機を用いて245℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約50μmの空洞含有樹脂成形体を得た。この空洞含有樹脂成形体を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、30℃の加温雰囲気下で、100mm/minの速度で1軸延伸し、ネッキングが発生したことを確認した後、12,000mm/minの速度で、初めと同一方向に更に1軸延伸した。
得られた空洞含有樹脂成形体1の熱伝導率は0.029W/mK、表面平滑性(Ra)は0.08μmであった。
【0156】
<空洞含有樹脂成形体2>
空洞含有樹脂成形体1において、延伸温度を40℃にしたこと、空洞含有樹脂成形体の厚みを約100μmにしたこと、延伸速度を1段で、11,000mm/minで延伸したこと以外は、空洞含有樹脂成形体1と同様にして樹脂フィルムを作製した。
得られた空洞含有樹脂成形体2の熱伝導率は0.037W/mK、表面平滑性(Ra)は0.09μmであった。
【0157】
<空洞含有樹脂成形体3>
IV=0.86であるPBT2(ポリブチレンテレフタレート100%樹脂)を溶融押出機を用いて250℃でTダイから押出し、キャスティングドラムで固化させて、厚さ約80μmの空洞含有樹脂成形体を得た。この空洞含有樹脂成形体を1軸延伸(縦延伸)した。
具体的には、40℃の加温雰囲気下で、4,800mm/minの速度で、1段で1軸延伸した。得られた空洞含有樹脂成形体3の熱伝導率は0.050W/mK、表面平滑性(Ra)は0.09μmであった。
【0158】
<空洞含有樹脂成形体4>
特開2005−205905号公報の実施例12に記載された方法により、スキン層の無い無核の二軸配向白色フィルムを得た。得られた空洞含有樹脂成形体4の熱伝導率は0.137W/mK、表面平滑性(Ra)は0.14μmであった。
【0159】
<空洞含有樹脂成形体5>
特開2005−205905号公報の実施例24に記載された方法により、スキン層を有する無核の二軸配向白色フィルムを得た。得られた空洞含有樹脂成形体5の熱伝導率は0.088W/mK、表面平滑性(Ra)は0.02μmであった。
【0160】
<空洞含有樹脂成形体6>
空洞含有樹脂成形体6として、クリスパーボイドPET(K2323)(東洋紡社製)を用いた。前記クリスパーボイドPET(K2323)は、ポリエステル樹脂に対して、空洞発現成分として無機粒子が含有されている。空洞含有樹脂成形体6の熱伝導率は0.061W/mK、表面平滑性(Ra)は0.33μmであった。
【0161】
<空洞含有樹脂成形体7>
空洞含有樹脂成形体7として、トヨパールSS(東洋紡社製)を用いた。前記トヨパールSSは、ポリプロピレン樹脂に対して、空洞発現成分として無機粒子が含有されている。空洞含有樹脂成形体7の熱伝導率は0.046W/mK、表面平滑性(Ra)は0.31μmであった。
【0162】
<空洞含有樹脂成形体8>
空洞含有樹脂成形体8として、空洞含有樹脂成形体1の延伸を行わない無延伸の空洞含有樹脂成形体を得た。得られた空洞含有樹脂成形体8の熱伝導率は0.35W/mK、表面平滑性(Ra)は0.10μmであった。
【0163】
−空洞含有樹脂成形体の評価方法−
前記空洞含有樹脂成形体1〜8について、下記の評価方法で評価を行なった。
【0164】
(1)熱伝導率の測定
熱伝導率は熱拡散率、密度および比熱の3つの測定値の積から求めた。
(1−1)熱拡散率
熱拡散率はTC−7000((株)真空理工製)を用いて測定した。樹脂フィルム両面をスプレーにより黒化し室温で測定した。
(1−2)密度
樹脂フィルムから一定面積を切り取り、その質量を天秤で測定し、その厚みを膜厚計で測定し、質量を体積で割ることで密度を求めた。
(1−3)比熱
JIS K7123に記載の方法で求めた。DSCとしては、Q1000(TAインスツルメント社製)を用いた。
【0165】
(2)表面平滑性(Ra)の測定
光干渉式三次元形状解析装置NewView5022(Zygo社製)を用い、対物レンズ50倍で測定した。
【0166】
(感熱転写受像シート1〜18の作製)
(感熱転写受像シート1の作製)
ポリエチレンで両面ラミネートした紙支持体1の表面に、空洞含有樹脂成形体1を熱によりラミネートし、断熱層を設けた。次に、下記組成の中間層、受容層を断熱層上にこの順に積層させた状態で、米国特許第2,761,791号明細書に記載の第9図に例示された方法により、同時重層塗布を行った。固形分が中間層:2.5g/m、受容層:2.5g/mとなるように塗布した。
【0167】
受容層塗布液1:
塩化ビニル系ラテックス 20.0質量部
(ビニブラン900、商品名、日信化学工業(株)製、固形分40%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
塩化ビニル系ラテックス 20.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
ポリビニルピロリドン 0.5質量部
(K−90、商品名、ISP(株)製)
ポリエーテル変性シリコーン離型剤 1.5質量部
(KF−6017、信越化学工業(株)製、HLB=5)
水 50.0質量部
【0168】
中間層塗布液1:
塩化ビニル系ラテックス 30.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%)
ゼラチン(10%水溶液) 20.0質量部
酸化チタン水分散物A 30.0質量部
水 20.0質量部
【0169】
上記酸化チタン水分散物Aは以下に述べる方法により作成した。
ルチル型二酸化チタン 600質量部
水 391質量部
平均分子量3000のカルボキシメチルセルロース 5質量部
ゼラチン 4質量部
上記をコロイドミルにて7日間分散し、酸化チタン水分散物Aを得た。
【0170】
(感熱転写受像シート2の作製)
感熱転写受像シート1の受容層塗布液1を、下記の受容層塗布液2に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート2を作製した。
【0171】
(組成)
受容層塗布液2:
塩化ビニル系ラテックス 20.0質量部
(ビニブラン900、商品名、日信化学工業(株)製、固形分40%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
塩化ビニル系ラテックス 20.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
ポリビニルピロリドン 0.5質量部
(K−90、商品名、ISP(株)製)
ポリエーテル変性シリコーン離型剤 1.5質量部
(KF−6012、信越化学工業(株)製、HLB=7)
水 50.0質量部
【0172】
(感熱転写受像シート3の作製)
感熱転写受像シート2の空洞含有樹脂成形体1を、空洞含有樹脂成形体2に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート3を作製した。
【0173】
(感熱転写受像シート4の作製)
感熱転写受像シート3の受容層塗布液1を、下記の受容層塗布液3に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート4を作製した。
【0174】
(組成)
受容層塗布液3:
塩化ビニル系ラテックス 20.0質量部
(ビニブラン900、商品名、日信化学工業(株)製、固形分40%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
ポリエステル系ラテックス 20.0質量部
(バイロナールMD1200、商品名、東洋紡(株)製、固形分34%、
ポリエステル)
ポリビニルピロリドン 0.5質量部
(K−90、商品名、ISP(株)製)
ポリエーテル変性シリコーン離型剤 1.5質量部
(KF−6012、信越化学工業(株)製、HLB=7)
水 50.0質量部
【0175】
(感熱転写受像シート5の作製)
感熱転写受像シート2の空洞含有樹脂成形体1を、空洞含有樹脂成形体3に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート5を作製した。
【0176】
(感熱転写受像シート6の作製)
感熱転写受像シート1の受容層塗布液1を、下記の受容層塗布液4に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート6を作製した。
【0177】
(組成)
受容層塗布液4:
塩化ビニル系ラテックス 20.0質量部
(ビニブラン900、商品名、日信化学工業(株)製、固形分40%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
塩化ビニル系ラテックス 20.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
ポリビニルピロリドン 0.5質量部
(K−90、商品名、ISP(株)製)
ポリエーテル変性シリコーン離型剤 1.5質量部
(KF−615A、信越化学工業(株)製、HLB=10)
水 50.0質量部
【0178】
(感熱転写受像シート7の作製)
感熱転写受像シート1の受容層塗布液1を、下記の受容層塗布液5に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート7を作製した。
【0179】
(組成)
受容層塗布液5:
塩化ビニル系ラテックス 20.0質量部
(ビニブラン900、商品名、日信化学工業(株)製、固形分40%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
塩化ビニル系ラテックス 20.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
ポリビニルピロリドン 0.5質量部
(K−90、商品名、ISP(株)製)
ポリエーテル変性シリコーン離型剤 1.5質量部
(KF−351A、信越化学工業(株)製、HLB=12)
水 50.0質量部
【0180】
(感熱転写受像シート8の作製)
感熱転写受像シート1の受容層塗布液1を、下記の受容層塗布液6に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート8を作製した。
【0181】
(組成)
受容層塗布液6:
(特開2007‐30275号公報の試料104の作製に記載されている受容層塗布液)
塩化ビニル系ラテックス 54.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤ポリマーラテックス 7.5質量部
(ULS1700、商品名、一方社油脂工業(株)製、固形分40%)
モンタン酸ワックス(J537、商品名、中京油脂(株)製) 10質量部
【0182】
(感熱転写受像シート9の作製)
感熱転写受像シート1の中間層塗布液1、受容層塗布液1を、下記の中間層塗布液2、受容層塗布液7に変更し、中間層、受容層の順にバーコーターにより塗布を行った。それぞれ、乾燥時の塗布量が、中間層2.5g/m、受容層2.5g/mとなるように塗布を行った。
【0183】
(組成)
受容層塗布液7:
塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂 100質量部
(ソルバインA、商品名、日信化学工業(株)製)
アミノ変性シリコーン 5質量部
(信越化学工業(株)製、商品名、X22-3050C)
エポキシ変性シリコーン 5質量部
(信越化学工業(株)製、商品名、X22-300E)
メチルエチルケトン/トルエン(=1/1) 400質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 5質量部
(Tinuvin900、商品名、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
【0184】
(組成)
中間層塗布液2:
ポリエステル樹脂 10質量部
(バイロン200、商品名、東洋紡績(株)製)
蛍光増白剤(Uvitex OB、商品名、チバガイギー社製) 1質量部
酸化チタン 30質量部
メチルエチルケトン/トルエン(=1/1) 90質量部
【0185】
(感熱転写受像シート10の作製)
感熱転写受像シート2の空洞含有樹脂成形体1を、空洞含有樹脂成形体4に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート10を作製した。
【0186】
(感熱転写受像シート11の作製)
感熱転写受像シート2の空洞含有樹脂成形体1を、空洞含有樹脂成形体5に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート11を作製した。
【0187】
(感熱転写受像シート12の作製)
感熱転写受像シート2の空洞含有樹脂成形体1を、空洞含有樹脂成形体6に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート12を作製した。
【0188】
(感熱転写受像シート13の作製)
感熱転写受像シート2の空洞含有樹脂成形体1を、空洞含有樹脂成形体7に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート13を作製した。
【0189】
(感熱転写受像シート14の作製)
感熱転写受像シート2の空洞含有樹脂成形体1を、空洞含有樹脂成形体8に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート14を作製した。
【0190】
(感熱転写受像シート14の作製)
感熱転写受像シート2の支持体1を、支持体2に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート15を作製した。
【0191】
(塩化ビニルホモポリマーラテックスの作製)
特開2009−202586号公報の実施例3に記載された方法と同様にして、攪拌機、コンデンサー、温度計及び窒素ガス導入口を備えた重合容器内を窒素で充分置換した後、脱イオン水600g、5質量%のドデベシベルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液80gを仕込み、さらに重合器内を減圧して塩化ビニル450gを仕込んだ。この反応混合物を攪拌翼で回転数120rpmを維持するように攪拌し、重合器内を60℃に昇温した後、重合圧が60℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.6MPa降下した時に重合を停止して、塩化ビニルホモポリマーラテックスAを得た。
【0192】
(感熱転写受像シート16の作製)
感熱転写受像シート1の受容層塗布液1を、下記の受容層塗布液8に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート16を作製した。
【0193】
(組成)
受容層塗布液8:
前記塩化ビニルホモポリマーラテックスA 10.0質量部
(固形分30%、塩化ビニルホモポリマー)
塩化ビニル系ラテックス 30.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
ポリビニルピロリドン 0.5質量部
(K−90、商品名、ISP(株)製)
ポリエーテル変性シリコーン離型剤 1.5質量部
(KF−6012、信越化学工業(株)製、HLB=7)
水 50.0質量部
【0194】
(感熱転写受像シート17の作製)
感熱転写受像シート1の受容層塗布液1を、下記の受容層塗布液9に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート17を作製した。
【0195】
(組成)
受容層塗布液9:
前記塩化ビニルホモポリマーラテックス 20.0質量部
(固形分30%、塩化ビニルホモポリマー)
塩化ビニル系ラテックス 25.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
ポリビニルピロリドン 0.5質量部
(K−90、商品名、ISP(株)製)
ポリエーテル変性シリコーン離型剤 1.5質量部
(KF−6012、信越化学工業(株)製、HLB=7)
水 50.0質量部
【0196】
(感熱転写受像シート18の作製)
感熱転写受像シート1の受容層塗布液1を、下記の受容層塗布液10に変更した以外は同様にして、感熱転写受像シート18を作製した。
【0197】
(組成)
受容層塗布液10:
前記塩化ビニルホモポリマーラテックス 35.0質量部
(固形分30%、塩化ビニルホモポリマー)
塩化ビニル系ラテックス 15.0質量部
(ビニブラン690、商品名、日信化学工業(株)製、固形分55%、
塩化ビニル/アクリル酸エステル共重合体)
ポリビニルピロリドン 0.5質量部
(K−90、商品名、ISP(株)製)
ポリエーテル変性シリコーン離型剤 1.5質量部
(KF−6012、信越化学工業(株)製、HLB=7)
水 50.0質量部
【0198】
本実施例で作成した感熱転写受像シート1〜18の内容と評価結果を表2〜4に示す。
【0199】
【表2】

【0200】
(画像形成方法)
画像形成のためのプリンターには 富士フイルム(株)製 フジフイルムサーマルフォトプリンターASK−2000(商品名)を用いた。該プリンター用の感熱転写シートと上記感熱転写受像シートを装填可能なように加工し、画像の出力を行った。
【0201】
(画像評価)
(転写濃度)
上記の画像形成で得られた最高濃度の黒ベタ画像において、V濃度をXrite310(Xrite社製、商品名)で測定した。感熱転写受像シート8のこの濃度値を100として相対値を下記判断で評価した。
5: 110よりも大きい
4: 105よりも大きく、110以下
3: 100よりも大きく、105以下
2: 90よりも大きく、100以下
1: 90以下
【0202】
(印画ムラの評価)
画像形成は下記の環境条件においた試料に対し、下記印画環境下で出力して、出力画像上の印画ムラ・ざらつきを以下のランクで評価した。画像としては、人物の肌、濃度0.4のグレーベタ、の2画像について上記出力を行った。
保存/印画環境条件
前記感熱転写シート、前記感熱転写受像シート、およびプリンターを、温度15℃、
相対湿度20%の環境下で12時間保管し、同条件下で印画を実施した。
評価ランク
5: 印画ムラ、ざらつきは目視で全く確認できず、均一である。
4: 印画ムラ、ざらつきは僅かに確認できる程度であり、画像鑑賞上実害にならない。
3: 部分的に印画ムラ、ざらつきが見られるが、画像鑑賞上実害にならない。
2: 画像一部、特に人物の肌部分に印画ムラ、ざらつきがあり、画像鑑賞上妨げとなる。
1: 画像全面に強い印画ムラが出ており、画像鑑賞上妨げとなる。
【0203】
(離型性1の評価)
画像形成は下記の環境条件においた試料に対し、下記印画環境下で連続50枚出力して、出力画像上の剥離線・融着を以下のランクで評価した。画像としては、人物(屋内)、人物(野外夜景)、黒ベタの3画像について上記出力を行った。
保存/印画環境条件
前記感熱転写シート、前記感熱転写受像シート、およびプリンターを、温度30℃、
相対湿度70%の環境下で12時間保管し、同条件下で印画を実施した。
評価ランク
5: 剥離線は目視で全く確認できない。
4: 剥離線は僅かに確認できる程度であり、画像鑑賞上実害にならない。
3: 部分的に剥離線が見られるが、画像鑑賞上実害にならない。
2: 画像一部に強い剥離線が出ており、画像鑑賞上妨げとなる。
1: 画像全面に強い剥離線が出ており、画像鑑賞上妨げとなる。
または、感熱転写シートと感熱転写受像シートが融着し、出力できない。
【0204】
【表3】

【0205】
(実施例2)
(離型性2の評価)
画像形成は上記離型性1評価の方法の保存/印画環境条件を下記条件に変更した以外は同様にして出力・評価を行った。なお、評価ランクは前記の離型性1と同じである。
保存/印画環境条件
全期間熱転写シート、前記感熱受像シート、およびプリンターを、温度35℃、
相対湿度80%の環境下で12時間保管し、同条件下で印画を実施した。
【0206】
【表4】

【0207】
上記表2〜4の結果から明らかなように、本発明の感熱転写受像シート1〜6、16〜18は、転写濃度も高く、冬場を想定される低温低湿環境下での印画ムラ・ざらつきが少なく、かつ梅雨時期や夏場を想定される高温高湿環境下での剥離線を防止できる高品位の画像が得られることが分かった。
【0208】
また、感熱転写受像シート2と感熱転写受像シート16〜18との比較から塩化ビニルホモポリマーラテックスを用いた本発明は、高温高湿環境下での剥離線をより効果的に低減させることができ、さらに塩化ビニルホモポリマーラテックスを受容層中の全ポリマーラテックスに対して30%以上含む本発明において、その効果が顕著であることが分かった。
【符号の説明】
【0209】
1 空洞含有樹脂成形体
1a 表面
100 空洞
L アスペクト比における空洞の長さ
r アスペクト比における空洞の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に、ポリオレフィン樹脂が被覆され、該ポリオレフィン樹脂上にポリエステル樹脂層を有し、かつ少なくとも1層の受容層を有する感熱転写受像シートであって、該ポリエステル樹脂層の樹脂が、実質的に無核の長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有樹脂形成体であり、該受容層が少なくとも1種のポリマーラテックスおよび少なくとも1種の、HLB値が5以上10以下のポリエーテル変性シリコーンを含有することを特徴とする感熱転写受像シート。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂層の樹脂が、テレフタル酸とアルキレンジオールとの縮合体であることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写受像シート。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂層の樹脂が、テレフタル酸と炭素数2〜6のアルキレンジオールとの縮合体であることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写受像シート。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂層が前記ポリオレフィン樹脂上に前記空洞含有樹脂形成体を張り合わせて形成されたポリエステル樹脂層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
【請求項5】
前記空洞含有樹脂形成体の受容層側表面の表面粗さ(Ra)が0.10以下であり、かつ該空洞含有樹脂形成体の熱伝導率が0.05W/mK以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
【請求項6】
前記受容層中の前記ポリマーラテックスが、塩化ビニル/アクリル共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
【請求項7】
前記受容層中の前記ポリマーラテックスが、塩化ビニルのホモポリマーラテックスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
【請求項8】
前記受容層中に少なくとも2種のポリマーラテックスを含有し、該少なくとも2種が、塩化ビニル/アクリル共重合体および塩化ビニルのホモポリマーラテックスから選択されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
【請求項9】
前記受容層中の前記ポリマーラテックスの少なくとも1種が、塩化ビニルのホモポリマーラテックスであって、かつ該塩化ビニルのホモポリマーラテックスを全ポリマーラテックスに対する固形分比率で30%以上含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
【請求項10】
前記感熱転写受像シートが、前記ポリエステル樹脂層と前記受容層との間に無機微粒子を含有する中間層を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の感熱転写受像シート。
【請求項11】
紙基材上に、ポリオレフィン樹脂が被覆され、該ポリオレフィン樹脂上に、実質的に無核の長尺状の空洞をその長さ方向が一方向に配向した状態で内部に含有する空洞含有ポリエステル樹脂を貼り合せた後、少なくとも1種のポリマーラテックスおよび少なくとも1種の、HLB値が5以上10以下のポリエーテル変性シリコーンを含有する受容層を塗設することを特徴とする感熱転写受像シートの製造方法。
【請求項12】
前記受容層と前記空洞含有ポリエステル樹脂の間に少なくとも1層の中間層を有し、該受容層と該中間層を同時重層塗布することを特徴とする請求項11に記載の感熱転写受像シートの製造方法。
【請求項13】
前記ポリエステル樹脂が、テレフタル酸とアルキレンジオールとの縮合体であることを特徴とする請求項11または12に記載の感熱転写受像シートの製造方法。
【請求項14】
前記ポリエステル樹脂層の樹脂が、テレフタル酸と炭素数2〜6のアルキレンジオールとの縮合体であることを特徴とする請求項11または12に記載の感熱転写受像シートの製造方法。
【請求項15】
前記空洞含有樹脂形成体の受容層側表面の表面粗さ(Ra)が0.10以下であり、かつ該空洞含有樹脂形成体の熱伝導率が0.05W/mK以下であることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の感熱転写受像シートの製造方法。

【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−201262(P2011−201262A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73113(P2010−73113)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】