説明

感熱転写記録媒体

【課題】高速印画時における転写感度が高く、すなわち染料層に使用する染料を低減でき、また高温・高湿下に保存後においても、印画における異常転写を防止した感熱転写記録
媒体を提供する。
【解決手段】基材10の一方の面に耐熱滑性層40を設け、該基材10の他方の面に下引き層20、染料層30を順次形成した感熱転写記録媒体である。前記下引き層20は、アルコキシド、その加水分解物、及び塩化錫の少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と水溶性高分子と、水分散性ポリエステルとを主成分として含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写方式のプリンタに使用される感熱転写記録媒体に関するものであり、基材の一方の面に耐熱滑性層を設け、該基材の他方の面に下引き層、染料層を順次形成した感熱転写記録媒体に関する。さらに詳しくは、高速印画時における転写感度が高く、すなわち、染料層に使用する染料を低減でき、また、高温・高湿下に保存後においても、印画における異常転写を防止でき、しかも、高濃度部で発生する画質不良、すなわち、被転写体の受容層が感熱転写記録媒体に融着することで色相変動が起こり、その結果、印画物表面が部分的にマット化する、いわゆる「テカリ」の現象を少なくすることができる感熱転写記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱転写記録媒体は、サーマルリボンと呼ばれ、感熱転写方式のプリンタに使用されるインクリボンのことであり、基材の一方の面に感熱転写層、その基材の他方の面に耐熱滑性層(バックコート層)が設けられている。このうち感熱転写層は、インクの層であって、プリンタのサーマルヘッドに発生する熱によって、そのインクを昇華(昇華転写方式)あるいは溶融(溶融転写方式)させ、被転写体側に転写するものである。
【0003】
現在、感熱転写方式の中でも昇華転写方式は、プリンタの高機能化と併せて各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等、広く利用されている。さらに、その用途の多様化と共に、小型化、高速化、低コスト化、また得られる印画物への耐久性を求める声も大きくなり、近年では、基材シートの同じ側に印画物への耐久性を付与する保護層等を重ならないように設けられた複数の感熱転写層をもつ感熱転写記録媒体がかなり普及してきている。
【0004】
被転写体側である受像シートは、溶剤系の染料受容層を備える溶剤系受像シートと水系の染料受容層を備える水系受像シートが知られている。溶剤系の受像シートは、水系の受像シートと比較して、染料層と染料受容層との離型性の点で優れるが、光沢度が低い。さらに、溶剤系の受像シートは刺激臭が強く、人体に吸引されると健康被害を及ぼすこと、さらには廃液等の処理による環境への影響等の問題から、使用が敬遠される傾向にある。
【0005】
近年、用途の多様化と普及拡大に伴い、よりプリンタの印画速度の高速化が進むに従って、従来の感熱転写記録媒体では十分な印画濃度が得られないという問題が生じてきた。そこで、転写感度を上げるべく、感熱転写記録媒体の薄膜化により印画における転写感度の向上を試みることが行われてきたが、感熱転写記録媒体の製造時や印画の際に熱や圧力等により「シワ」が発生したり、場合によっては破断が発生するという問題を抱えている。
【0006】
また、感熱転写記録媒体の染料層における染料/樹脂(Dye/Binder)の比率を大きくして、印画濃度や印画における転写感度の向上を試みることが行われているが、染料を増やすことでコストアップとなるばかりではなく、製造工程における巻き取り状態時に感熱転写記録媒体の耐熱滑性層へ染料の一部が移行し(裏移り)、その後の巻き返し時に、その移行した染料が他の色の染料層、あるいは保護層に再転移し(裏裏移り)、この汚染された層を被転写体へ熱転写すると、指定された色と異なる色相になったり、いわゆる地汚れが生じたりする。
【0007】
また、さらに、感熱転写記録媒体側ではなく、プリンタ側で画像形成時のエネルギーをアップする試みも行われているが、消費電力が増えるばかりではなく、プリンタのサーマルヘッドの寿命を短くする他、染料層と被転写体とか融着し、いわゆる異常転写が生じやすくなる。それに対して異常転写を防止するために、染料層あるいは被転写体に多量の離型剤を添加すると、画像のにじみや地汚れが生じたりする。
【0008】
さらには感熱転写記録媒体と水系の染料受容層(以下、「受容層」)を備えた受像シートを組合せて画像を形成する際に、水系の受容層と熱転写シートが熱融着を起こし、その結果、印画物表面が部分的にマット化する、いわゆる「テカリ」が発生する。
【0009】
このような要望を解決するために、いくつかの方法が提案されている。例えば、特許文献1では、基材と染料層との間にポリビニルピロリドン樹脂と変性ポリビニルピロリドン樹脂を含有する接着層を有する熱転写シートが提案されている。
【0010】
また、特許文献2には、基材と染料層の間にポリビニルピロリドン樹脂またはポリビニルアルコール樹脂の熱可塑性樹脂とコロイド状無機顔料超微粒子からなる接着層を有する熱転写シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−231354号公報
【特許文献2】特開2006−150956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記特許文献1に提案されている感熱転写記録媒体では、昨今の昇華転写方式の高速プリンタを用いて印画を行ったところ、高温・高湿下に保存したものを含めて、異常転写は確認されないものの印画における転写感度が低く、充分なレベルまで至らず、また、「テカリ」も充分に抑えることができなかいという問題を有する。
【0013】
また、前記特許文献2に提案されている感熱転写記録媒体では、同様に印画を行ったところ、印画における転写感度は高く、充分なレベルに至っているものの、高温・高湿下に保存したもので異常転写が確認され、「テカリ」も確認された。
【0014】
このように従来の技術による感熱転写記録媒体では、印画における転写感度が高く、高温・高湿下に保存した場合においても異常転写を発生せず、「テカリ」の現象を十分改善した高速プリンタに対応することが困難であるという問題を有する。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、高速印画時における転写感度が高く、すなわち、染料層に使用する染料を低減でき、また、高温・高湿下に保存後においても、印画における異常転写を防止でき、しかも、高濃度部で発生する画質不良、すなわち、被転写体の受容層が感熱転写記録媒体に融着することで色相変動が起こり、その結果、印画物表面が部分的にマット化する、いわゆる「テカリ」の現象を少なくすることができる感熱転写記録媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は、基材上に、水系バインダーと中空粒子とを含有する水系中空粒子層を介して水系バインダーと離型剤とを含有する水系受容層が形成された熱転写受像シートに熱転写によって画像を形成するための感熱転写記録媒体であって、前記基材の一方の面に耐熱滑性層を設け、該基材の他方の面に下引き層、染料層を順次形成し、該下引き層は、アルコキシド、その加水分解物、及び塩化錫の少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と水溶性高分子と、水分散性ポリエステルとを主成分として含むことを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る発明は、前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする感熱転写記録媒体である。
【0018】
請求項3に係る発明は、前記水分散性ポリエステルが、少なくともジカルボン酸成分としてエステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物が共重合され、ジグリコール成分としてジエチレングリコールが共重合されることを特徴とする感熱転写記録媒体である。
【0019】
請求項4に係る発明は、前記アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、またはそれらの混合物であることを特徴とする感熱転写記録媒体である。
【0020】
請求項5に係る発明は、前記下引き層の乾燥後の塗布量が、0.10g/m2以上0.30g/m2以下の範囲内であることを特徴とする感熱転写記録媒体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前記下引き層は、アルコキシド、その加水分解物、及び塩化錫の少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と水溶性高分子と、水分散性ポリエステルとを主成分として含むことにより、高速印画時における転写感度が高く、染料層に使用する染料を低減でき、また、高温・高湿下に保存後においても、印画における異常転写を防止でき、いわゆる「テカリ」の現象の少ない、十分に満足できる印画物を得ることができる。
【0022】
また、前記下引き層のポリエステルは基材および染料層との接着性にすぐれており、エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物およびジエチレングリコールを導入することにより水溶性高分子との相溶性が向上し、また、MEK・トルエン・キシレン等の有機溶剤に対する耐性が得られる。
【0023】
さらに、前記下引き層のビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体は高温・高湿下に保存後の基材と染料層との接着性が良好、かつ、高速印画時における高濃度部の「テカリ」を少なくする機能を発揮できる。
【0024】
また、さらに前記下引き層のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または塩化錫は、反応性に富む無機成分であり、水溶液中から乾燥形成される中で自らが重縮合反応して鎖状あるいは三次元構造のポリマーを形成する他、水溶性高分子とは分子レベルの複合体を形成する。そこで、下引き層のアルコキシドまたは/およびその加水分解物または塩化錫の重縮合物は、水溶性高分子だけでは不足する高速印画時における転写感度の向上を図り、前記下引き層の水分散性ポリエステル、アルコキシドまたは/およびその加水分解物または塩化錫と水溶性高分子、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体との複合体は、水溶性高分子だけでは劣る高温・高湿下に保存後における異常転写および「テカリ」に関して、改善をもたらす。
【0025】
さらに、前記水溶性高分子をポリビニルアルコール、前記水分散性ポリエステルを、少なくともジカルボン酸成分としてエステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物、ジグリコール成分としてジエチレングリコールが共重合された共重合体、前記アルコキシドをテトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、またはそれらの混合物とし、前記下引き層の乾燥後の塗布量を0.10g/m2以上0.30g/m2以下の範囲内にすることで、高速印画時における転写感度が高く、より高濃度の印画が得られ、かつ高温・高湿下に保存後においても印画における異常転写がなく、より充分に満足できる印画物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態に係る感熱転写記録媒体の要部を断面して示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る感熱転写記録媒体について図面を参照して説明する。
【0028】
すなわち、本発明に実施の形態に係る感熱転写記録媒体は、基材の一方の面に耐熱滑性層を設け、該基材の他方の面に下引き層、染料層が順次形成される。このうち下引き層は、アルコキシド、その加水分解物、及び塩化錫の少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と水溶性高分子と、水分散性ポリエステルとを主成分として含む。
【0029】
ここで、前記主成分とは、本発明の効果を損なわない限り、前記水溶性高分子と、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水分散性ポリエステルと、アルコキシドまたは/およびその加水分解物または塩化錫の少なくともいずれか1つの他に、さらに他の成分が添加されていても良い旨を表し、前記水溶性高分子と、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と、水分散性ポリエステルと、アルコキシドまたは/およびその加水分解物または塩化錫の少なくともいずれか1つの合計が、下引き層形成時の全体からみて50質量%超で含まれる意味であるが、好ましくは80質量%以上である。
【0030】
図1は、本発明の一実施の形態に係る感熱転写記録媒体の要部を取出して示すもので、基材10の一方の面にサーマルヘッドとの滑り性を付与する耐熱滑性層40を設け、基材10の他方の面にアルコキシド、その加水分解物、及び塩化錫の少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と水溶性高分子と、水分散性ポリエステルとを主成分として含む塗布液を塗布、乾燥して形成される下引き層20、染料層30を順次形成した構成を有する。
【0031】
前記基材10としては、熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度が要求されるので、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、およびコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独で又は組み合わされた複合体として使用可能であるが、中でも、物性面、加工性、コスト面などを考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、その厚さは、操作性、加工性を考慮し、2〜50μmの範囲のものが使用可能であるが、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2〜9μm程度のものが好ましい。
【0032】
また、前記基材10においては、耐熱滑性層40または/および下引き層20を形成する面に、接着処理を施すことも可能である。接着処理としては、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、プラズマ処理、プライマー処理等の公知の技術を適用することができ、それらの処理を二種以上併用することもできる。本発明では、基材と下引き層との接着性を高めることが有効であり、コスト面からもプライマー処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。次に、前記耐熱滑性層40は、従来公知のもので対応でき、例えば、バインダーとなる樹脂、離型性や滑り性を付与する機能性添加剤、充填剤、硬化剤、溶剤などを配合して調製し、塗布、乾燥して形成することができる。この耐熱滑性層の乾燥後の塗布量は、0.1〜2.0g/m2程度が適当である。
【0033】
前記耐熱滑性層40の一例を挙げると、バインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。機能性添加剤としては、動物系ワックス、植物系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等の界面活性剤等を挙げることができる。充填剤としては、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート類、およびその誘導体を挙げることができるが、前記は全て特に限定されるわけではない。
【0034】
前記下引き層20は、本発明の必須成分として、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と水溶性高分子と、水分散性ポリエステルと、アルコキシドまたは/およびその加水分解物または塩化錫の少なくともいずれか1つとを、主成分として含む。
【0035】
前記水溶性高分子の一例を挙げると、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。その中でもポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが好ましく、より好ましくはポリビニルアルコールである。なおここでいうポリビニルアルコールは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存しているいわゆる部分けん化ポリビニルアルコールから、酢酸基が数%しか残存していないいわゆる完全けん化ポリビニルアルコールまでを含み、特に限定されるものではない。
【0036】
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体は、N−ビニルピロリドン系モノマーとビニル重合性モノマーであるビニルカプロラクタムとの共重合体である。なお、共重合形態は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合いずれに限定されるものではない。ここで、N−ビニルピロリドン系モノマーとは、N−ビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等)およびその誘導体をいうものであって、誘導体としては、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドン、N−ビニル−3−ベンジルピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチルピロリドン等のピロリドン環に置換基を有するものを挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0037】
前記水分散性ポリエステルの一例をあげると共重合成分であるジカルボン酸成分はエステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物を必須成分とし、フタル酸、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、2,5−ジメチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及び、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0038】
エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物以外のジカルボン酸成分としては芳香族ジカルボン酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の芳香核が、疎水性のプラスチックと親和性が大きいために密着性の向上、耐加水分解性に優れている利点がある。特にテレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物は全酸成分中に6〜20モル%含有することが好ましい。更に好ましくは10〜18モル%である。エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物が6モル%未満では水に対する樹脂の分散時間が長くなり、耐溶剤性も十分とはいえない。逆に20モル%を超えると耐水性が低下する傾向がある。
【0039】
エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン酸−2,7−ジカルボン酸などのアルカリ金属塩(スルホン酸のアルカリ金属塩)及び、これらのエステル形成性誘導体が挙げられ、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩及び、そのエステル形成性誘導体がより好ましく用いられる。
【0040】
ジグリコ−ル成分としては、ジエチレングリコールと炭素数2〜8の脂肪族または炭素数6〜12の脂環族グリコ−ル等が挙げられる。炭素数2〜8の脂肪族または炭素数6〜12の脂環族グリコ−ルの具体例としては、エチレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,3−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,2−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,6−ヘキサンジオール、p−キシリレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ルなどが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を併用してもよい。ジエチレングリコールを全グリコール成分中に20〜80モル%含有することが好ましい。ジエチレングリコールが、この範囲外でもアルコールに対して耐溶剤性は得られるが、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤に対して耐溶剤性が不十分である。
【0041】
水分散性ポリエステルは公知の製造技術により、ジカルボン酸とジグリコールとをエステル化或いはエステル交換反応後、重縮合反応させることによって製造されるが、その製造方法についてはなんら限定されるものではない。前記アルコキシドの一例を挙げると、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−C37)3〕(−C37はイソプロピルアルキル基)などの下記一般式で表せるものである。その中でもテトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウムが水系の溶媒中においても比較的安定であるため好ましい。
【0042】
一般式:M(OR)n
(M:Si、Ti、Al、Zr等の金属元素、
R:CH3、C2H5等のアルキル基、n:金属元素の酸化数)
前記塩化錫に関しては、塩化第一錫(SnCl2)、塩化第二錫(SnCl3)、あるいはそれらの混合物であってもよく、無水物でも水和物でも用いることができる。
【0043】
前記下引き層20の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、0.10g/m2以上0.30g/m2以下の範囲内であることが好ましい。0.10g/m2未満では、染料層積層時の劣化により、高速印画時における転写感度が不足したり、基材あるいは染料層との密着性に問題を抱える不安がある。一方、0.30g/m2超では、感熱転写記録媒体自体の感度低下に影響し、高速印画時における転写感度が不足する不安がある。
【0044】
水系熱転写受像シートは、基材上に、少なくとも水系バインダーと中空粒子を含有する水系中空粒子層と、水系バインダーと離型剤を主成分とする水系受容層を積層したものである。水系熱転写受像シートに用いられる基材について特に制限はなく、使用目的等に応じて種々の材質、層構成およびサイズのものを適宜に選定、使用することができる。例えば、紙、コート紙、および合成紙(ポリプロピレン、ポリスチレン、または、それらを紙と貼り合わせた複合材料)等の各種紙類などを挙げることができる。
【0045】
(中空粒子層)
更に前記受像紙基材上に、中空粒子と接着成分を含有する中空粒子層を形成することが好ましい。熱転写方式の印画は、サーマルヘッドからの加熱により行われ、サーマルヘッドと受像紙基材の密着性が良好なことが要求される。中空粒子層を有する受像紙基材は、クッション性があるために、サーマルヘッドとの密着性が向上し、印画の際により均一な画像を得ることが可能である。中空粒子の壁を形成する材料としてアクリロニトリル、塩化ビニリデン、スチレンアクリル酸エステルの重合体等が好ましく使用される。中空粒子の製造方法としては、樹脂粒子中にブタンガス等の発泡剤を封入し、加熱発泡させる方式や、エマルジョン重合方式などが挙げられる。加熱発泡させる方式としては、中空粒子を予め過熱処理によって発泡させた既発泡中空粒子を用いる場合と、未発泡の粒子を含有した層を塗工などにより形成した後、乾燥工程などの加熱処理によって中空構造を形成する場合がある。中空粒子の中空率や粒子径を一定に制御することが容易な点から、一般的には既発泡粒子を用いることが好ましい。
【0046】
(受容層)
本発明の受容層で使用される染着性樹脂としては、染料に対する親和性が高く、染料染着性の良好な熱可塑性樹脂を使用する。
【0047】
前記樹脂としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル化合物モノマーとベンゾトリアゾール骨格及び/又はベンゾフェノン骨格を有するモノマーとの共重合樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの熱可塑性樹脂は単独で使用してもよいし、また二種以上を併用して使用してもよい。
上記の中でも、印画された画像の耐光性に優れることからアクリル系樹脂、ビニル化合物モノマーとベンゾトリアゾール骨格及び/又はベンゾフェノン骨格を有するモノマーとの共重合樹脂、ウレタン系樹脂が好ましい。ウレタン系樹脂は分子内に結晶領域を持つため、異常転写が起こりにくいためである。また、前記染着性樹脂は、環境負荷の面から水溶性もしくは水分散系のいわゆる水系からなることがより好ましい。
【0048】
熱転写方式の印画においては、受像紙基材上の受容層とインクリボンの染料層を重ね合わせてサーマルヘッドで加熱した後、受容層からインクリボンを剥がす工程があり、受容層には、インクリボンとの離型性も要求される。このため、受容層には、インクリボンとの融着を防止し、印画走行性を向上する目的で離型剤を添加することが好ましい。添加する離型剤としては、シリコーンオイル、ポリシロキサングラフトアクリル樹脂、ワックス類、フッ素化合物などが挙げられる。
【0049】
受容層には架橋剤を添加して耐熱性を向上させることが好ましい。架橋剤としては、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、有機チタンキレート化合物が好ましい。これら架橋剤の中でも、耐熱性向上の効果が高く、印画時のリボン融着などの走行性の問題が発生しにくい点や、水性塗料中での安定性の点で、カルボジイミド系架橋剤が好ましい。カルボジイミド系架橋剤の添加量は、受容層に含有される樹脂100部に対しカルボジイミド系架橋剤が1〜30部となるようにすることが好ましく、3〜25部がより好ましい。1部未満では、充分な架橋の効果が得られず、印画走行不良が発生する場合がある。30部を超えると、樹脂の染着性を硬化剤が阻害して印画画像の濃度が低下する場合がある。
【0050】
受容層の塗布量は、0.5〜5g/mが好ましく、より好ましくは0.5〜4g/mである。0.5g/m未満では、画像の耐光性が劣る場合がある。5g/mを超えると、受容層中で染料が拡散してしまう場合があり、画像の滲みが発生する場合がある。
【0051】
(塗工方法)
前記各塗布層には、一般の塗被紙製造において使用される濡れ剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。各塗布層は、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、及びスライドビードコーター等の公知のコーターを使用して、所定の塗工液を各層毎、或いは2層以上を同時に塗工、乾燥して形成することができる。
【0052】
前記染料層30は、従来公知のもので対応でき、例えば、熱移行性染料、バインダー、溶剤などを配合して染料層形成用塗布液を調製し、塗布、乾燥することで形成され、1.0g/m2程度が適当である。なお染料層は、1色の単一層で構成したり、色相の異なる染料を含む複数の染料層を、同一基材の同一面に面順次に、繰り返し形成することもできる。
【0053】
そして、前記染料層30の熱移行性染料は、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料であれば、特に限定されるわけではなく、例えば、イエロー成分としては、ソルベントイエロー56,16,30,93,33、ディスパースイエロー201,231,33等を挙げることができる。マゼンタ成分としては、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等を挙げることができる。シアン成分としては、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、あるいはC.I.ディスパースブルー24等を挙げることができる。墨の染料としては、前記の各染料を組み合わせて調色するのが一般的である。
【0054】
また、前記染料層30のバインダーは、従来公知の樹脂バインダーがいずれも使用でき、特に限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。
【0055】
ここで、前記染料層30の染料とバインダーとの割合は、染料/バインダー=10/100から300/100が好ましい。これは、染料/バインダーの割合が、10/100下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不十分となり良好な熱転写画像が得られず、また、この割合が300/100を越えると、バインダーに対する染料の溶解性が極端に低下するために、感熱転写記録媒体となった際に保存安定性が悪くなって染料が析出し易くなってしまうためである。また染料層あるいは染料層形成塗布液には、性能を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の公知の添加剤を使用することができる。なお、耐熱滑性層40、下引き層20、染料層30は、いずれも従来公知の塗布方法にて、塗布、乾燥することで形成可能であり、塗布方法の一例を挙げると、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、リバースロールコート法を挙げることができる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明による具体的な実施例1〜4および各比較例1〜6を以下の如く作製して比較検討する。なお、以下の文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0057】
<耐熱滑性層付き基材の作製>
基材として、4.5μmの片面易接着処理付きポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その非易接着処理面に下記組成の耐熱滑性層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が1.0g/m2になるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、耐熱滑性層付き基材を得た。
【0058】
<耐熱滑性層塗布液>
アクリルポリオール樹脂 12.5部
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステル 2.5部
タルク 6.0部
2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 4.0部
トルエン 50.0部
メチルエチルケトン 20.0部
酢酸エチル 5.0部
(実施例1)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、下記組成の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層を形成し、実施例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0059】
<下引き層塗布液−1>
テトラエトキシシラン 2.8部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 2.8部
ポリビニルアルコール 2.8部
水分散ポリエステル 2.1部
0.1N塩酸 53.8部
純水 31.8部
イソプロピルアルコール 3.9部
<染料層塗布液>
C.I.ソルベントブルー63 6.0部
ポリビニルアセタール樹脂 4.0部
トルエン 45.0部
メチルエチルケトン 45.0部
(実施例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱記録転写媒体を得た。
【0060】
<下引き層塗布液−2>
塩化第一錫 2.8部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 2.8部
ポリビニルアルコール 2.8部
水分散ポリエステル 2.1部
0.1N塩酸 53.8部
純水 31.8部
イソプロピルアルコール 3.9部
(実施例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を乾燥後の塗布量が0.05g/m2になるように塗布、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録転写媒体を得た。
【0061】
(実施例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を乾燥後の塗布量が0.35g/m2になるように塗布、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱記録転写媒体を得た。
【0062】
(比較例1)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下引き層を形成することなく、易接着処理面の上に、実施例1と同様の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層を形成し、比較例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0063】
(比較例2)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層塗布液−3を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、実施例1と同様の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層を形成し、比較例2の感熱転写記録媒体を得た。
【0064】
<下引き層塗布液−3>
ポリビニルアルコール 4.2部
水分散ポリエステル 4.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
(比較例3)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層塗布液−4を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、実施例1と同様の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層を形成し、比較例3の感熱転写記録媒体を得た。
【0065】
<下引き層塗布液−4>
テトラエトキシシラン 4.2部
ポリビニルアルコール 4.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
(比較例4)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層塗布液−5を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、実施例1と同様の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層を形成し、比較例4の感熱転写記録媒体を得た。
【0066】
<下引き層塗布液−5>
テトラエトキシシラン 4.2部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 4.2部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
(比較例5)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層塗布液−6を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、実施例1と同様の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層を形成し、比較例5の感熱転写記録媒体を得た。
【0067】
<下引き層塗布液−6>
テトラエトキシシラン 4.2部
ポリビニルアルコール 4.2部
水分散ポリエステル 2.1部
0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
(比較例6)
耐熱滑性層付き基材の易接着処理面に、下記組成の下引き層塗布液−7を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布、乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、実施例1と同様の染料層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m2になるように塗布、乾燥することで、染料層を形成し、比較例6の感熱転写記録媒体を得た。
【0068】
<下引き層塗布液−7>
テトラエトキシシラン 3.5部
ポリビニルアルコール 3.5部
ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体 3.5部0.1N塩酸 53.8部
純水 33.9部
イソプロピルアルコール 3.9部
<受像紙の作製>
<受像紙基材の用意>
受像紙基材として、厚さ180g/mのアート紙を用いた。
<中空粒子層の形成>
前記受像紙基材の上に、下記組成中空粒子層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が10g/m2になるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、中空粒子層付き受像紙を得た。
【0069】
<中空粒子層塗布液>
アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを
主成分とする共重合体からなる既発泡中空粒子 … 45部
(平均粒子径3.2μm、体積中空率85%)
ポリビニルアルコール … 10部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 … 45部
(塩化ビニル/酢酸ビニル=70/30、Tg64℃)
水 … 200部
<受容層の形成>
前記断熱層上に、下記組成受容層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が4g/m2になるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、受容層を得た。
【0070】
<受容層塗布液>
ウレタン樹脂 … 97部
(ガラス転移温度:−20℃)
会合型ウレタン系増粘剤 … 1部
スルホン酸系界面活性剤 … 2部
水 … 200部
<常温における染料層の密着性評価>
実施例1〜4、比較例1〜6の感熱転写記録媒体に関して、常温にて保存された感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅18mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより評価した結果を、表1に示す。
【表1】

【0071】
ここで、評価は、以下の基準にて行った。
【0072】
○:染料層の付着が、認められない
△:染料層の付着が、ごく僅かに認められる
×:染料層の付着が、全面で認められる
<高温・高湿保存後における染料層の密着性評価>
実施例1〜4、比較例1〜6の感熱転写記録媒体に関して、40℃90%RH環境下に72時間保存された後、常温にてさらに24時間保存された感熱転写記録媒体の染料層の上に、幅18mm、長さ150mmのセロハンテープを貼り、その後すぐに剥がしたときの、セロハンテープ側への染料層の付着の有無を調べることにより評価した結果を、表1に示す。なお、評価は、上記の常温における評価と同基準にて行った
<印画評価>
実施例1〜4、比較例1〜6の感熱転写記録媒体に関して、常温にて保存された感熱転写記録媒体、および40℃90%RH環境下に72時間保存された後、常温にてさらに24時間保存された感熱転写記録媒体と被転写体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度、異常転写の有無、および「テカリ」を評価した結果を、表1に示す。なお最高反射濃度は、「テカリ」の確認されない印画部を、X−Rite528にて測定した値である。
【0073】
<印画条件>
印画環境:23℃50%RH
印加電圧:29V
ライン周期:0.7msec
印画密度:主走査300dpi 副走査300dpi
<異常転写評価>
また、異常転写の評価は、以下の基準にて行った。
【0074】
異常転写の評価は、以下の基準にて行った。
【0075】
○:被転写体への異常転写が、認められない
△:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
<テカリ評価>
また、テカリの評価は、以下の基準にて行った。
【0076】
○:テカリが、認められない
△:テカリが、部分的に認められる。
【0077】
×:テカリが、はっきりと認められる。
【0078】
以上、表1からも明らかなように下引き層が設けられた感熱転写記録媒体は、下引き層を設けていない比較例1の感熱転写記録媒体と比較して、明らかに高速印画時における転写感度が高いことが確認される。
【0079】
また、実施例1と比較6および比較例3と5から水分散ポリエステルを含まない場合、高温・高湿保存における染料層の密着性および印画における異常転写もおきており、高温・高湿保存における染料層の密着性に問題を抱えることが確認される。
【0080】
さらに、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体を含まない比較例2,3,5では「テカリ」が発生した。ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体を含むが、水溶性高分子を含まない比較例4をみると「テカリ」は実用上問題ないレベルであったものの、最高反射濃度および異常転写に問題があることが確認される。
【0081】
これに対して、アルコキシド、その加水分解物、及び塩化錫の少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体とポリビニルアルコールと、水分散性ポリエステルとを主成分とする実施例1,2では常温保存および高温・高湿保存における染料層の密着性および印画における異常転写、さらに高濃度部で発生する「テカリ」も実用上問題ないことが確認される。
【0082】
また、実施例3の感熱転写記録媒体は、転写感度は良好なものの、下引き層の塗布量が0.10g/m2未満であるせいか、幾分高温・高湿保存後の密着性が低下し、さらにまた、実施例4の感熱転写記録媒体は、下引き層の塗布量が0.30g/m2超であるせいか、転写感度の効果が低下していることが確認される。
【0083】
本発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより、種々の発明が抽出され得る。
【0084】
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明により得られる感熱転写記録媒体は、昇華転写方式のプリンタに使用されるインクリボンのことであり、プリンタの高速・高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラー形成できるため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
10…基材
20…下引き層
30…染料層
40…耐熱滑性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、水系バインダーと中空粒子とを含有する水系中空粒子層を介して水系バインダーと離型剤とを含有する水系受容層が形成された熱転写受像シートに熱転写によって画像を形成するための感熱転写記録媒体であって、
前記基材の一方の面に耐熱滑性層を設け、該基材の他方の面に下引き層、染料層を順次形成し、該下引き層は、アルコキシド、その加水分解物、及び塩化錫の少なくとも1つと、ビニルピロリドン−ビニルカプロラクタム共重合体と水溶性高分子と、水分散性ポリエステルとを主成分として含むことを特徴とする感熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記水分散性ポリエステルが、少なくともジカルボン酸成分としてエステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物が共重合され、ジグリコール成分としてジエチレングリコールが共重合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項5】
前記下引き層の乾燥後の塗布量が、0.10g/m2以上0.30g/m2以下の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の感熱転写記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−187853(P2012−187853A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54174(P2011−54174)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】