説明

感知器

【目的】温度を電気的に検出して火災を感知する感知器に関し、回路収納部の機密性を確保すると共に組立を簡単にして自動化を可能とすることを目的とする。
【構成】温度変化を電気的に検出するサーミスタ等の測温素子1を先端部に封入した素子ユニット11と、素子ユニット1の先端を外部に露出させた状態で樹脂成形により一体化すると共に内側に位置して感知器ベースに電気的且つ機械的に結合させる一対の嵌合金具12を同時に樹脂成形して一体化した感知器本体(外カバー13とモールド本体14で構成)と、感知器本体内側の回路収納部15に装着され素子ユニット11及び嵌合金具12に電気的に接続される感知器回路を実装した回路基板16と、感知器本体の回路収納部15を裏側から密封閉鎖する蓋部材17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、温度を電気的に検出して火災を感知する感知器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の感知器としては、例えば図8に示すものが知られている。図8において、1は温度により抵抗値が変化するサーミスタ等を用いた測温素子であり、感知器本体2の回路収納部3に組み込まれた回路基板4にリード線を接続して外部に取り出さしている。測温素子1及び感知器本体2の素子取り出し穴の部分は、例えば接着剤等をポッティングして封止部5としている。尚、接着剤でポッティングする代わりにパッキンを使用してもよい。
【0003】回路収納部3の裏側は蓋部材6がゴムパッキン7等を介して装着される。また蓋部材6の裏側には感知器ベースに電気的且つ機械的に結合される一対の嵌合金具8が設けられる。蓋部材6に対する回路基板4と嵌合金具8の装着は、ビス9と円筒状の接触金具10を使用して行われる。即ち、回路基板4と嵌合金具10の間に接触金具10を入れた状態でビス9を締めることで蓋部材6に固定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の感知器の構造にあっては、回路収納部3の機密を保つために回路基板4に細いリード線で接続された測温素子1を外部に取り出した状態でポッティングやパッキンの使用等により機密性を保つようにしていたため、測温素子1のリード線が細く扱いづらいために手作業とせざるを得ず、組立の自動化が困難であり、また接着剤等を使用したポッティングでは乾燥固定するまでに時間がかかるという問題があった。
【0005】また蓋部材6に対する回路基板4と嵌合金具8もビス10による取付けであるために手作業となり、また取付け部分に隙間ができるので機密性の確保が十分にできないという問題もあった。本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、回路収納部の機密性を確保すると同時に組立を簡単にして自動化を可能とする感知器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため本発明は次のように構成する。尚。実施例図面中の符号を併せて示す。まず本発明は、温度変化を電気的に検出するサーミスタ等の測温素子1を先端部に封入した素子ユニット11と、素子ユニット11の先端を外部に露出させた状態で樹脂成形により一体化すると共に内側に位置して感知器ベースに電気的且つ機械的に結合させる一対の嵌合金具12を同時に樹脂成形して一体化した感知器本体(外カバー13とモールド本体14で構成)と、感知器本体内側の回路収納部15に装着され素子ユニット11及び嵌合金具12に電気的に接続される感知器回路を実装した回路基板16と、感知器本体の回路収納部15を裏側から密封閉鎖する蓋部材17とを備えたことを特徴とする。
【0007】また本発明は、温度変化を電気的に検出するサーミスタ等の測温素子1を先端部に封入した素子ユニット11と、素子ユニット11の先端を外部に露出させた状態で樹脂成形により一体化した感知器本体18と、感知器本体18内側の回路収納部15に装着され前記素子ユニット及び嵌合金具に電気的に接続される感知器回路を実装した回路基板16と、感知器ベースに電気的且つ機械的に結合させる一対の嵌合金具12を樹脂成形により一体化した状態で感知器本体18の回路収納部15を裏側から密封閉鎖する蓋部材17とを備えたことを特徴とする。
【0008】この嵌合金具12を樹脂成形により一体化した蓋部材17は、更に嵌合金具12の一方に電気的に接続されるシールド板19を樹脂成形により内部に埋設したことを特徴とする。更に、素子ユニット11は、一対のリードフレーム20と、リードフレーム20の両端を外部に露出して樹脂成形したユニット本体21と、ユニット本体21の先端に突出した一対のリードフレーム20にリード線22を接続した測温素子1と、ユニット本体21の先端側に設けた測温素子1及びリード線22の全体を覆って設けられたコーティング材23とを備えたことを特徴とする。
【0009】
【作用】このような構成を備えた本発明の感知器によれば、測温素子を備えた素子ユニット及び嵌合金具が予めインサート成形によって感知器本体と一体に1部品として樹脂成形されているため、感知器本体に対する測温素子及び嵌合金具の組付け作業が不要となり、組立の自動化を可能とする。
【0010】またインサート成形により感知器本体に素子ユニットと嵌合金具が一体化されているため、回路収納部の機密性をより一層高めることができる。
【0011】
【実施例】図1は本発明の一実施例を示した断面図である。図1において、11は素子ユニットであり、内部にサーミスタ等の測温素子を封入している。素子ユニット11はモールド本体14の中央に測温素子を内蔵した先端部を外部に突出した状態でインサート成形によって一体に樹脂成形されている。更に、モールド本体14には天井面に設置される感知器ベースに電気的且つ機械的に結合される一対の嵌合金具12も同時にインサート成形により一体に樹脂成形されている。
【0012】嵌合金具12は外側から水平部12a、垂直部12b、水平部12c、垂直部12dとなる略直角に屈曲した形状をもち、外側上部の水平部12aは感知器ベースの嵌合金具に嵌着し、また内側の垂直部12bはモールド本体14内に形成された回路収納部15に突出し、回路基板16を貫通して半田付け固定される。このような嵌合金具12はその水平部12cにおいて、モールド本体14を樹脂成形する際のインサート成形によって一体化されている。
【0013】モールド本体14の回路収納部15に組み込まれたプリント基板16には適宜の感知器回路が実装されており、更に素子ユニット11の背後のリード端子及び嵌合金具12の垂直部12dが半田付け固定される。回路収納部15の上部には間にOリング24を介して蓋部材17が装着される。このような素子ユニット11及び嵌合金具12を一体に樹脂成形したモールド本体14は外カバー13に組み込まれる。外カバー13は外部に突出した素子ユニット11の部分を覆って保護カバー25を一体に備えている。
【0014】図2は図1の天井面側から見た平面図であり、蓋部材17は4カ所をビス26によって外カバー13の内側に固定している。また、外カバー17の両側からは水平方向に嵌合金具12が位置している。図3は図1R>1の床面側から見た平面図である。図3において、外カバー13には3カ所のアーム部27で支えられたリング状の枠28と中央の円盤部29が一体に設けられ、側面の3カ所に上下に2段に分かれた通気穴30を開口しており、中央の円盤部29の中心には通気穴31を開口している。ここで、図3のA−A断面が図1の断面図となる。
【0015】図4は図3のB−B断面図であり、外カバー13の下部に延在したアーム部27の状態を明らかにしている。また、外カバー13の1カ所のアーム部27の内側には図示のように発報表示灯を回路収納部15側より収納可能なランプケース32を設けている。勿論、場合によってはランプケース32を設けなくても良い。
【0016】図5は図1及び図4に示した素子ユニット11の断面図である。図5において、素子ユニット11はユニット本体21を有し、ユニット本体21を樹脂成形する際に2本のリードフレーム20をインサート成形により一体に樹脂成形している。リードフレーム20はユニット本体21に対する成形の際に両端が外部に突出されており、上部が回路基板16に対する接続部、下側が測温素子1の接続部となる。
【0017】リードフレーム20の下側には測温素子1のリード線22が接続され、測温素子1及びリード線22全体を覆って接着剤等への型への流し込みによってコーティング材23が設けられ、測温素子1及びリード線22が外気に触れないように密封閉止している。更に、ユニット本体21は図1に示したようにモールド本体14に一体に樹脂成形した際の固定を確実にするため、中間部に鍔を備えた形状をもっている。
【0018】次に図1〜図5に示した本発明の感知器の組立て及び使用状態での機能を説明する。まず、感知器の組立てに際しては、図5に示した素子ユニット11が予め1つの部品として準備されている。そして、モールド本体14を樹脂成形する際に図5に示した素子ユニット11を金型にセットし、同時に一対の嵌合金具12を金型にセットし、この状態で所謂インサート成形を行って素子ユニット11及び嵌合金具12を一体に備えたモールド本体14を1部品として準備する。
【0019】続いて組立作業となり、図1に示すようにモールド本体14の回路収納部15に部品実装の済んだ回路基板16を差し込んで素子ユニット11のリードフレーム及び嵌合金具12の垂直部12dを嵌め入れて回路パターンに半田付け固定する。次に回路収納部15に間にOリング24を入れて蓋部材17を被せ、図2に示すように外カバー13に対し4カ所をビス26により固定することで組立てが完了する。
【0020】このような組立状態で回路収納部15に対する素子ユニット11及び嵌合金具12は両者ともモールド本体14に一体に樹脂成形されているため、この部分に隙間は発生せず、外部からの湿気の侵入を略完全に防ぐことができる。一方、回路収納部15の上側についても、間にOリング24を入れた蓋部材17のネジ止めによる構造で確実に機密を保つことができる。
【0021】また、組立作業自体はモールド本体14に対する回路基板16の組付け、蓋部材17の装着で良いことから、手作業によらずとも簡単な組立工程で済み、組立ての自動化が可能である。図6は本発明の他の実施例を示した実施例構成図であり、この実施例にあっては蓋部材17に嵌合金具12をインサート成形したことを特徴とする。
【0022】図6において、感知器本体18は図1の実施例に示したモールド本体14と外カバー13を一体化した形状となっている。この感知器本体18にはモールド成形により素子ユニット11が一体に樹脂成形されている。感知器本体18の内側の回路収納部15には感知器回路を実装した回路基板16が組み込まれ、素子ユニット11のリードフレームを半田付け固定している。
【0023】一方、回路収納部15の上部にOリング24を介して装着される蓋部材17には、この実施例にあっては一対の嵌合金具12をモールド成形により一体化して設けている。更にこの実施例にあっては、一方の嵌合金具12に接続した状態で蓋部材17の内部に円盤状のシールド板19をモールド成形により埋設しており、シールド板19を設けることで回路収納部15に組み込んだ回路基板16に対する静電シールドを行っている。
【0024】図7は図6を天井面側から見た平面図であり、嵌合金具12を一体に樹脂成形した蓋部材17はビス26により4カ所で感知器本体18に固定され、左側の嵌合金具12に接続された状態で蓋部材17の中には破線で示すシールド板19が埋設されている。この図6及び図7の実施例にあっても、素子ユニット11を一体成形した感知器本体18が1部品となり、また嵌合金具12及びシールド板19を一体成形した蓋部材17が1部品となり、これに加えて回路基板16の3部品の組立てで済むことから組立ての自動化が可能で、更に回路収納部15の機密を略完全に確保することができる。
【0025】尚、上記実施例ではモールド本体14と外カバー13を一体化した形状となっているが、図1の実施例同様モールド本体14と外カバー13とを別々に形成し組み込むようにしても勿論よい。
【0026】
【発明の効果】以上説明してきたように本発明によれば、サーミスタ等の測温素子を備えた素子ユニット及び嵌合金具が感知器本体と一体成形されて1部品として準備されているため、感知器本体に対する測温素子及び嵌合金具の組付作業が不要となり、組立ての自動化を実現することができる。
【0027】また、感知器本体に素子ユニットと嵌合金具が樹脂成形により一体化されているため、回路収納部の機密性をより一層高めることができ、感知器の耐久性と信頼性を大幅に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示した断面図(図3のA−A断面図)
【図2】図1を天井面側から見た平面図
【図3】図1の床側から見た平面図
【図4】図3のB−B断面図
【図5】本発明で用いる素子ユニットの断面図
【図6】本発明の他の実施例を示した断面図
【図7】図6の天井面側から見た平面図
【図8】従来の感知器構造を示した断面図
【符号の説明】
1:測温素子(サーミスタ)
11:素子ユニット
12:嵌合金具
13:外カバー
14:モールド本体
15:回路収納部
16:回路基板
17:蓋部材
18:感知器本体
19:シールド板
20:リードフレーム
21:ユニット本体
22:リード線
23:コーティング材
24:Oリング
25:保護カバー
26:ビス
27:アーム部
28:リング部
29:円盤部
30:開口部
31:開口穴
32:ランプケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】温度変化を電気的に検出するサーミスタ等の測温素子を先端部に封入した素子ユニットと、該素子ユニットの先端を外部に露出させた状態で樹脂成形により一体化すると共に内側に位置して感知器ベースに電気的且つ機械的に結合させる一対の嵌合金具を同時に樹脂成形して一体化した感知器本体と、該感知器本体内側の回路収納部に装着され前記素子ユニット及び嵌合金具に電気的に接続される感知器回路を実装した回路基板と、前記感知器本体の回路収納部を裏側から密封閉鎖する蓋部材と、を備えたことを特徴とする感知器。
【請求項2】温度変化を電気的に検出するサーミスタ等の測温素子を先端部に封入した素子ユニットと、該素子ユニットの先端を外部に露出させた状態で樹脂成形により一体化した感知器本体と、該感知器本体内側の回路収納部に装着され前記素子ユニット及び嵌合金具に電気的に接続される感知器回路を実装した回路基板と、感知器ベースに電気的且つ機械的に結合させる一対の嵌合金具を樹脂成形により一体化した状態で前記感知器本体の回路収納部を裏側から密封閉鎖する蓋部材と、を備えたことを特徴とする感知器。
【請求項3】請求項2記載の感知器に於いて、前記蓋部材は、更に前記嵌合金具の一方に電気的に接続されるシールド板を樹脂成形により内部に埋設したことを特徴とする感知器。
【請求項4】請求項1,2記載の感知器に於いて、前記素子ユニットは、一対のリードフレームと、該リードフレームの両端を外部に露出して樹脂成形したユニット本体と、該ユニット本体の先端に突出した一対のリードフレームにリード線を接続した測温素子と、前記ユニット本体の先端側に設けた測温素子及びリード線の全体を覆って設けられたコーティング材とを備えたことを特徴とする感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平5−210791
【公開日】平成5年(1993)8月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−15703
【出願日】平成4年(1992)1月31日
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)