説明

懸架装置制御システム、その集中制御装置、懸架装置

【課題】懸架装置同士の連結状況を自動的に検出して登録できるようにする。
【解決手段】懸架装置のバトン部2に、RF−IDアンテナ11とタグ読取り装置12を備え、連結器具が接続された場合には、この連結器具に備えられるRF−IDタグからこの連結器具に与えられている固有の識別番号を読み取る。そして、読み取った識別番号や自己の管理番号等を、集中制御装置に送信して登録させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降及び移動が出来る懸架装置に係り、特に連結した懸架装置同士を連動させて動作させる制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば舞台照明や舞台セット等の懸架物が吊るされ、この舞台照明や舞台セット等の昇降や移動が行える懸架装置が知られている。同一の懸架物を複数の懸架装置に吊り下げて使用する必要がある場合がある(例えば当該懸架物が巨大な場合等)。この場合、作業者は、まず、懸架装置同士の連結作業を行う。懸架装置同士の連結は、連結させる両懸架装置へ連結器具を装着する事で行う。この連結器具は、1つの懸架装置に複数装着させることが可能である。例えば、懸架装置Aの一端に連結器具を装着することで懸架装置Bと連結し、同じ懸架装置Aの他端に他の連結器具を装着することで懸架装置Cとも連結することができる。
【0003】
連結された複数台の懸架装置は、同時に昇降又は移動させることが求められる。この為、作業者は、上記懸架装置同士の連結作業を完了後、どの懸架装置同士を連結させたかを操作盤等により登録し、昇降又は移動を行う際には、連結した懸架装置が同時に移動又は昇降する様、誤り無く操作する作業を要した。
【0004】
この操作や懸架装置の識別の判断を誤ると、連結した懸架装置の傾きや脱落、衝突等を引き起こし、大きな事故に繋がる可能性があった。
また、従来技術として、特許文献1に記載の発明がある。特許文献1記載の発明は、舞台機構の運転制御方法において、複数の巻上装置を同期運転して1つの吊物を昇降させる吊物機構については、同期運転する複数の巻上装置を予めひとまとめにして固定グループとして番号を付して登録し、この固定グループの番号によりコンピュータに設定すると共に、この固定グループに属する複数の巻上装置の単独での設定及び運転を禁止することで、設定作業を軽減すると共に吊物が落下する危険性をなくすようにしている。
【特許文献1】特開平4−332585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、従来では、人間が判断、操作していた為、人的な誤判断による登録ミスや操作ミスによって、事故が発生する可能性があった。
また、特許文献1の発明では、登録作業は軽減されるものの行う必要はあり、登録ミスも発生し得る。
【0006】
本発明の課題は、懸架装置同士の連結状況を自動的に検出して登録することができるようにし、人的作業が必要なく以って人的ミスが発生する可能性を無くし、手間が掛からず安全に、連結された複数の懸架装置の昇降又は移動の同期制御を行える懸架装置制御システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の懸架装置制御システムは、複数の懸架装置と集中制御装置とがネットワークに接続された懸架装置制御システムであって、前記複数の懸架装置のうち任意の複数の懸架装置同士を接続する為の連結器具に、各々固有の識別番号を記憶した被検出体を設け、前記各懸架装置は、前記連結器具が装着されているときには該連結器具の前記被検出体から非接触で前記識別番号を読み取る読取り装置と、必要に応じて該読み取った識別番号に基づく検出情報を、前記ネットワークを介して前記集中制御装置に通知する制御装置とを有し、前記集中制御装置は、前記通知された検出情報に基づいて各懸架装置同士の連結状況を示す管理情報を登録・記憶する管理情報登録・記憶手段を有する。
【0008】
前記被検出体はRF−IDタグであり、前記読取り装置はRF−IDタグリーダである。
上記構成の懸架装置制御システムでは、例えば固有の識別番号を記憶したRF−IDタグ等の被検出体を、各連結器具に備え、各懸架装置には例えばRF−IDタグリーダ等の読取り装置を設ける。各懸架装置は、自装置に連結器具が接続された場合には、その識別番号を読み取って集中制御装置に通知する。これによって、集中制御装置は、各懸架装置の連結状況を示す管理情報を作成・記憶することができ、運用時には、管理情報に基づいて、連結された懸架装置を同期制御する。
【0009】
また、上記懸架装置制御システムにおいて、例えば更に、前記集中制御装置は、更に、前記管理情報の登録・記憶が行なわれる毎に、該新たな管理情報に矛盾点があるか否かを判別し、矛盾点がある場合には異常を報知する第1の異常検出手段を有するようにしてもよい。
【0010】
上記構成の懸架装置制御システムでは、人的ミスは無くなるが、誤検出が生じる可能性がある。検出ミス(不検出や重複検出等)が生じた場合には、この検出結果に従って作成/更新される管理情報の内容に矛盾点が生じる。矛盾点がある場合には、異常報知するので、この管理情報を用いて運用・制御されることはなく、安全性は損なわれない。
【0011】
上記懸架装置制御システムでは、運用時、集中制御装置は、上記管理情報を参照して、各懸架装置の上下動等の制御を行う。その際、集中制御装置は、例えば、任意の1つの懸架装置の制御指示を受けると、前記管理情報を参照して連動制御すべき全ての懸架装置を特定し、該特定した全ての懸架装置を同期制御する。あるいは、連動制御すべき全ての懸架装置をオペレータ等が逐一指定するようにしてもよい。この場合において、集中制御装置は、任意の1つの懸架装置の制御指示を受けると、前記管理情報を参照して連動制御すべき全ての懸架装置を特定し、該特定した全ての懸架装置に対して制御指示があった場合のみ懸架装置の制御を行うことを許可して該全ての懸架装置を同期制御する。
【0012】
そして、例えば、上記同期制御中、同期制御する複数の懸架装置のうち1つでも異常を検出した場合には、該同期制御する全ての懸架装置の制御を停止すると共に異常発生を報知することで、安全性を確保する。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の懸架装置制御システムによれば、懸架装置同士の連結状況を自動的に検出して登録することができるようにし、人的作業が必要なく以って人的ミスが発生する可能性を無くし、手間が掛からず安全に、連結された複数の懸架装置の昇降又は移動の同期制御を行える。また、誤検出した場合にも、誤検出があったことを判別でき、安全性を確保できる。運用時に何等かの異常が発生した場合でも、安全性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1に、懸架装置を配置した全体図を示す。
図1はフロア面を上部から見た図であり、フロア面に配置された懸架装置と、懸架装置同士を連結させる連結器具を示している。図示の例では、例えば懸架装置AとBとは連結器具aによって連結され、更に懸架装置Bは連結器具bによって懸架装置Cとも連結している。従って、この場合、懸架装置A,B,C全てを同期制御する必要がある。
【0015】
尚、特に図示しないが、各懸架装置には、舞台照明や舞台セット等が吊るされており、この舞台照明や舞台セット等を懸架装置によって昇降又は移動させることができる。
図2に懸架装置の概観例を示す。
【0016】
懸架装置は、舞台照明や舞台セット等を装着するバトン部2と、このバトン部2を昇降させる懸架部1とから成る。懸架部1は、昇降ワイヤ3により吊ったバトン部2を昇降させるモータ4と、このモータ4を制御する昇降装置6とフレーム5とから成る。昇降装置6は、通信回線7を介して集中制御装置と接続している。
【0017】
図3に、集中制御装置も含めた懸架装置制御システム全体の概略構成を示す。
図示の通り、通信回線7には、複数の懸架装置と集中制御装置8が接続している。通信回線7は、例えば、Ethernet又はRS485等である。各懸架装置内の上記昇降装置6は、予め設定されるユニークな管理番号を記憶しており、集中制御装置8は、この管理番号によって各懸架装置を識別している。
【0018】
本例の懸架装置では、まず、各連結器具には各々ユニークな識別番号が記憶された被検出体が設けられており、バトン部2にはこの識別番号を読み取る読取り装置が備えられている。本説明では、一例として、RF-ID(Radio Frequency Identification)を用いるものとする。すなわち、上記被検出体として以下に説明するRF-IDタグ24を用い、上記読取り装置としてRF−IDアンテナ11及びタグ読取り装置12を用いる例を説明する。但し、この例に限らない。データ(識別番号)を記憶できる何等かの被検出体と、この被検出体からデータ(識別番号)を非接触で読出し可能な何等かの読取り装置を用いる構成であれば、何でもよい。
【0019】
よく知られているように、RFID技術では、耐環境性に優れた数cm程度の大きさのタグにデータを記憶し、電波や電磁波で読み取り器と交信する。近年ではアンテナ側からの非接触電力伝送技術により、電池を持たない半永久的に利用可能なタグも登場している。タグは、ラベル型、カード型、コイン型、スティック型など様々な形状があり、用途に応じて選択する。通信距離は数mm程度のものから数mのものがあり、これも用途に応じて使い分けられる。
【0020】
図4は、本例の懸架装置の構成図である。
懸架装置の外観自体は、図1と同じであってよく、同一符号を付してある。
図4の構成では、バトン部2に、RF−IDアンテナ11とタグ読取り装置12とを設けている。尚、図示の例では、RF−IDアンテナ11をバトン部2の上部全体に複数設けているが、この例に限らない。連結器具をバトン部2の何処に連結しても、そのRF−IDタグ情報を読み取れるような構成であれば何でもよい。あるいは、連結器具の装着位置が決まっているならば、その部分にのみRF−IDアンテナ11を設けるようにしてもよい。タグ読取り装置12は、昇降装置6と、通信線13を介してデータ送受信可能である。昇降装置6は、図2の通り、通信回線7を介して、集中制御装置8とデータ送受信可能である。
【0021】
図5には、本例の連結器具20の構成例を示す。
図示の連結器具20は、フレーム部21と、このフレーム部21の両端に設けられるフック部22,23とから成る。フック部22,23を、それぞれ、連結対象の懸架装置のバトン部2に、図示のように引っ掛ける事で、当該懸架装置同士を連結する。
【0022】
フック部22には、図示の通り、RF-IDタグ24が装着されている。図示していないが、フック部23にも同様に、RF-IDタグ24が装着されている。尚、これは一例であり、RF-IDタグ24は、フレーム部21に設けられていてもよい。要は、当該連結器具20をバトン部2に装着したときに、タグ読取り装置12が、RF−IDタグ24に記憶されている情報(以下、RF-IDタグ情報と呼ぶ)を読み取れるのであれば、何処でも構わない。
【0023】
このRF-IDタグ情報が、上記識別番号である。ここで、図5の例において、フック部22のRF-IDタグ24とフック部23のRF-IDタグ24には、同一の識別番号が記憶されている。つまり、1つの連結器具20に設けられる複数のRF-IDタグ24には、全て同一の識別番号が記憶されている。
【0024】
以下、タグ読取り装置12、昇降装置6、及び集中制御装置8によって実行される処理について説明する。尚、これらタグ読取り装置12、昇降装置6、及び集中制御装置8には、特に図示しないが、CPU等の演算処理装置、メモリ等の記憶装置、通信制御装置等が備えられており、メモリに予め記憶されているアプリケーションプログラム/データ等を、CPU等が読出し・実行することにより、以下に説明するフローチャート図の処理を実現する。
【0025】
まず、タグ読取り装置12によって実行される処理について図6を参照して説明する。
図6は、タグ読取り装置12における処理フローチャート図である。
タグ読取り装置12は、常時又は一定周期で、RF−IDアンテナ11を介して、上記RF-IDタグ情報の読み取りを試みる(ステップS11,S12)。
【0026】
連結器具20が装着されていれば、RF-IDタグ情報(識別番号)を読み取れるので(ステップS13,YES)、読み取った識別番号とメモリに記憶してある情報(以下、旧情報又は既存IDと記す)とを比較して、これが新規ID(識別番号)を読み取ったものであるか否かを判定する(ステップS14)。読み取った識別番号と旧情報とが一致する場合には、新規IDの読み取りではないと判定し(ステップS14,NO)、ステップS11に戻る。一方、両者が不一致の場合には、新規IDを読み取ったものと判定し(ステップS14,YES)、ステップS15の処理へ進む。
【0027】
ここで、タグ読取り装置12内の上記メモリ等(不図示)には、前回読み取った識別番号を記憶してある。あるいは、前回、識別番号が読み取れなかった場合には(連結器具20が装着されていなかった為)、メモリには情報は何も記憶されていない。ステップS13がYESである場合、今回、識別番号は読み取れたので、上記ステップS14の判定がYESとなるケースとは、前回は未だ連結器具20が装着されていなかったケース、又は前回は今回とは別の連結器具20が装着されていたケースである。つまり、ステップS14の判定がYESとなるのは、連結器具20の装着状況が変化した場合である。前回、既に連結器具20が装着されており、今回もそのまま装着されている場合(つまり、装着状況に変化無しの場合)に、上記ステップS14の判定がNOとなる。
【0028】
一方、連結器具20がバトン部2に装着されていない状態であれば、当然、RF-IDタグ情報は読み取れないので(ステップS13,NO)、これを以ってタグ読取り装置12は、連結器具20が装着されていないと判定する。そして、既存IDを削除するか否かを判定する(ステップS16)。
【0029】
ここで、ステップS16の処理について説明する。ステップS16の判定は、上記不図示のメモリに情報が記憶されているか否かにより判定する。すなわち、前回も連結器具20が装着されていなかった場合には、メモリに情報が記憶されておらず、装着状況に変化がないことになるので、ステップS16の判定はNOとし、そのままステップS11に戻る。一方、前回、連結器具20が装着されていた場合には、メモリにその識別番号(既存ID)が記憶されており、装着状況が変化したことになるので、ステップS16の判定はYESとし、ステップS15に進む。
【0030】
つまり、今回、識別番号が読み取れたか否かに係らず、連結器具20の装着状況が変化した場合には、ステップS15の処理が実行されることになる。
上記ステップS14の判定がYESの場合のステップS15の処理は、上記新規IDと既存ID(既存IDが無い場合は、既存ID無しの情報)を昇降装置6へ通知し、その後、この新規IDをメモリに上書きする(従って、既存IDは消える)処理となる。上記ステップS16の判定がYESの場合のステップS15の処理は、“連結器具20無しの情報”と既存IDを、昇降装置6へ通知し、その後、メモリに記憶されている識別番号(既存ID)は削除する処理となる。
【0031】
図7に、昇降装置6の処理フローチャート図を示す。
まず、集中制御装置8は、ネットワーク上で存在を認識している全ての懸架装置の昇降装置6に対して、一定周期にて情報取得要求を行っている。
【0032】
昇降装置6は、この要求を受けると(ステップS21,YES)、タグ読取り装置12から上記ステップS15の処理による通知がある場合には(ステップS22,YES)、この通知内容を自己の管理番号と共に集中制御装置8に返信する(ステップS23)。上述してある通り、昇降装置6内の不図示のメモリ等には、予め、この昇降装置6を有する懸架装置を集中制御装置8側で識別できるようにするユニークな管理番号が記憶されている。
【0033】
上記ステップS23で返信される情報としては、以下のパターンが考えられる。但し、何れの場合でも、管理番号は必ず返信される。
パターンA;前回装着無しで今回装着された場合→既存ID無しの情報と新規ID
パターンB;連結器具20が交換された場合→既存IDと新規ID
パターンC;前回装着ありで今回外された場合→既存IDと連結器具20無しの情報
図8に、集中制御装置8の処理フローチャート図を示す。
【0034】
まず、既に述べた通り、集中制御装置8は、予め設定される一定周期経過すると(ステップS31)、ネットワーク上で存在を認識している全ての懸架装置の昇降装置6に対して、順次、ステップS32〜S36の処理を実行する。まず、任意の1つの懸架装置を対象として、その昇降装置6に対して情報取得要求を行う(ステップS32)。
【0035】
そして、この要求に対して対象の懸架装置の昇降装置6から上記ステップS23による返信があった場合には(ステップS33,YES)、この返信に含まれる各種情報(上記管理番号、既存ID又は既存ID無しの情報、連結器具20無しの情報又は新規ID)に基づいて、管理情報テーブルを検索して管理情報を更新する(ステップS34,S35)。そして、ステップS36の処理に進む。要求を出してから所定時間経過しても返信が無い場合には(ステップS33,NO)、そのままステップS36の処理に進む。
【0036】
上記ステップS34、S35の処理について、以下、図9に示す管理情報テーブルの具体例を参照して説明する。
図9(a)、(b)に示す通り、管理情報は2つのテーブル30,40に格納されている。テーブル30では、各検出タグNo.(識別番号)31に対応付けて、懸架装置の管理番号32が格納されている。つまり、各連結器具20に対応付けて、現在、その連結器具20が装着されている懸架装置の管理番号が格納されている。
【0037】
テーブル40では、各懸架装置の管理番号41に対応付けて、検出タグNo.(識別番号)42が格納されている。つまり、各懸架装置に対応付けて、現在、その懸架装置に装着されている連結器具20の識別番号が格納されている。
【0038】
管理番号と検出タグNo.(識別番号)の2種類を検索キーとして簡単に検索できる様に、テーブルを2つ用いている。
上記ステップS34,S35の処理では、例えば、まず、上記返信された管理番号を用いてテーブル40を検索して、管理番号41が一致するレコードを求める。そして、上記パターンAの場合には、このレコードの検出タグNo.42のフィールドに、新規IDを追加格納する。上記パターンB,Cの場合、このレコードの検出タグNo.42のフィールドに、既存IDと同一の識別番号が格納されているので、パターンBの場合はこれを新規IDに書き換え、パターンCの場合はこれを削除する。
【0039】
同様に、テーブル30も更新する。この場合、まず、パターンAの場合には、テーブル30に新たなレコードを追加し、このレコードの検出タグNo.31に新規IDを格納すると共に管理番号32に、返信された管理番号を格納する。パターンBの場合、パターンAと同じ処理を実行し、更に、検出タグNo.31が既存IDと同一のレコードの管理番号32において、返信元の懸架装置の管理番号を削除する。尚、管理番号32にデータが無くなったレコードは削除する。パターンCの場合は、検出タグNo.31が既存IDと同一のレコードの管理番号32において、返信元の懸架装置の管理番号を削除する。
【0040】
尚、パターンA〜Cの何れのパターンであるかを判定する方法は、様々であってよいが、例えば返信された情報の中に“既存ID無しの情報”が含まれていればパターンA、“連結器具20無しの情報”が含まれていればパターンC、どちらも含まれていなければパターンBと判定すればよい。判定し易いように、“既存ID無しの情報”、“連結器具20無しの情報”として、特殊な記号等(例えば“Null”、“@”等)を用いるようにしてもよい。
【0041】
以上述べたステップS32〜S35の処理を、全ての懸架装置について実行し終えたら(定期的な管理情報の更新処理が完了したら)(ステップS36,YES)、自動検出に伴う間違い(誤検出等)が生じていないかを確認する処理(ステップS37以降の処理)に移る。
【0042】
すなわち、上記更新した管理情報テーブル30,40を参照して、タグNo.に矛盾があるか否かを確認して(ステップS38)、矛盾がある場合には(ステップS38,YES)、懸架装置への制御停止、オペレータの端末のディスプレイに異常を表示する等の対応を行う(ステップS39)。これによって、オペレータ等による人的確認、復旧作業を行わないと、懸架装置は動作しないようになり、安全性が損なわれることはない。
【0043】
上記矛盾があるか否かの判定方法は、様々であってよいが、本例の構成では、正常に連結が行われていれば1つの連結器具20には2つの懸架装置が接続されていることになるので、例えばテーブル30を参照して、各レコード毎に、その管理番号32のフィールドに管理番号が2つ格納されていれば“正常”と判定し、それ以外の場合(管理番号が1つ又は3つ以上格納されている場合)には“異常”(矛盾あり)と判定する。
【0044】
上記矛盾判定処理は、テーブル40を参照して行っても良い。すなわち、テーブル40の検出タグNo.42のフィールドに格納されている各検出タグNo.(識別番号)を順次処理対象として、処理対象とした識別番号と同一の識別番号が1つ存在する場合(つまり、テーブル全体で、同一の管理番号が2つ格納されている)には“正常”と判定し、それ以外の場合には“異常”と判定する。例えば、図10に示す一例では、識別番号‘1000’は1つしか存在しないので、装着作業時の作業ミス(片がけ)又は連結器具20を接続した2つの懸架装置のどちらか一方で不検出(RF-IDタグの識別番号を読み取れなかった)異常が生じた可能性があるので、“異常”(矛盾あり)と判定する。または、識別番号‘1001’は図10に示す通りテーブル内に3つ存在するので、上記2つの懸架装置のどちらか一方で重複検出が行われた可能性があるので、これも“異常”と判定する。
【0045】
次に、以下、実際の運用時の集中制御装置8の処理動作について説明する。
図11に、運用時の懸架装置制御システム全体の概略構成を示す。
図示の構成は、図3の構成に、操作表示機45が加わっている。操作表示機45は、集中制御装置8に直接接続されている。特に図示しないが、操作表示機45には、オペレータ等が集中制御装置8に制御指示を出す為の入力装置、現在の動作状況や異常等を表示する為の表示装置等が備えられている。勿論、CPU、メモリ、通信インタフェース等も備えられている。オペレータ等は、入力装置を操作することで、任意の懸架装置に対して昇降を指示したり、後述する連動制御方式への設定又は設定解除等を行うことができる。
【0046】
図12は、運用時の集中制御装置8の処理フローチャート図である。
同図において、集中制御装置8は、上記操作表示機45から任意の懸架装置の制御指示が送られてくると(ステップS41,YES)、図9(a)、(b)の管理情報テーブル30,40を参照して、同期制御する懸架装置を特定する(ステップS42)。例えば、図1に示す例において、懸架装置Aの制御指示があった場合、管理情報テーブル30,40を参照することで、同期制御する懸架装置として、懸架装置A,B,Cが特定される(つまり、懸架装置Aと直接接続されている懸架装置Bに限るのではなく、同期制御すべき全ての懸架装置を特定する)。この処理は、例えばまず、上記制御指示された懸架装置の管理番号をキーにしてテーブル40を検索して、該当するレコードの検出タグNo.42を全て取得し、当該取得した各検出タグNo.をキーにしてテーブル30を検索して、該当するレコードの管理番号32を全て取得し、当該取得した管理番号を用いて再びテーブル40を検索して、該当するレコードの検出タグNo.42を全て取得するという処理を、新たな管理番号又は新たな検出タグNo.を取得できなくなるまで、繰り返し実行し、取得した管理番号の懸架装置は全て、同期制御するものと判定する。
【0047】
尚、グループ化されていない(連結器具20が接続されていない)懸架装置(単独の懸架装置)への制御指示であった場合には、特に図示しないが、従来通りの制御を行う。単独の懸架装置である場合、その管理番号はテーブル30,40に登録されていないので、これを以って単独の懸架装置への制御指示であると判定できる。
【0048】
続いて、制御方式が連動制御方式であるか否かを判定する(ステップS43)。これは、上記の通り、操作表示機45によって設定され、集中制御装置8内の不図示のメモリに格納されているので、これを参照して判定する。尚、連動制御方式とは、オペレータ等が、グループ化された(互いに連結されている)複数の懸架装置のうち1つの懸架装置のみを指定すれば、自動的に、同じグループ内の全ての懸架装置を判別して当該全ての懸架装置を同期制御する方式である。
【0049】
制御方式が連動制御方式である場合には(ステップS43,YES)、上記ステップS42で特定した全ての懸架装置に対して、制御指令を送信する(連動制御(同期制御)する)(ステップS44)。そして、制御指令を出した全ての懸架装置からの制御応答が確認できたら、正常に動作していると判定し(ステップS45,YES)、ステップS41に戻り、次の制御指示を待つ。もし、1つでも制御応答が確認できない懸架装置があったなら、懸架装置に異常が発生していると判定し(ステップS45,NO)、同期制御している全ての懸架装置の制御を停止すると共に、操作表示機45に対して異常発生を通知して表示等行わせる(ステップS46)。
【0050】
一方、制御方式が連動制御方式ではない場合には(ステップS43,NO)、一定時間、他の制御指示を待ち、上記ステップS42で特定した全ての懸架装置に対する制御指示を受信したら(ステップS47,YES)、当該制御指示された全ての懸架装置に対して制御指令を送信し(ステップS48)、上記ステップS45の処理へ進む。一定時間内に上記全ての懸架装置に対する制御指示が無かった場合には(ステップS47,NO)、指示内容に矛盾点があると判定し、制御指示があった懸架装置についても制御は行わずに、操作表示機45に対して異常発生を通知して表示等行わせる(ステップS49)。
【0051】
以上説明したように、本例の懸架装置制御システムによれば、全ての懸架装置及び連結器具が、ユニークな管理番号/識別番号を持ち、各懸架装置は自発的な連結器具の装着状況の検出と上位装置への通知を行う構成を有し、上位装置では通知された情報に基づき各懸架装置の連結状態の記憶・管理を行なう構成を有することで、人的な判断や操作を行う必要なく、自動的に、懸架装置同士の連結状況を登録・管理できるようになる。従って、従来の人的作業の煩わしさや人的ミスが発生する可能性を最小限にすることができ、手間が掛からず安全に、連結された複数の懸架装置の昇降又は移動の同期制御を行えるようになる(より高い安全性と操作性を提供することができる)。
【0052】
また、万が一、何等かの誤動作/誤検出等が原因で、安全性が損なわれる可能性がある状況になっても、異常を検出することができるので、安全性を確保できる。異常検出は、登録時、運用時の両方で行えるので、二重に安全対策がとられることになる。
【0053】
最後に、上記集中制御装置8(コンピュータ)のハードウェア構成の一例を、図13に示す。
同図に示すコンピュータ50は、CPU51、メモリ52、入力部53、出力部54、記憶部55、記録媒体駆動部56、及びネットワーク接続部57を有し、これらがバス58に接続された構成となっている。同図に示す構成は一例であり、これに限るものではない。
【0054】
CPU51は、当該コンピュータ50全体を制御する中央処理装置である。
メモリ52は、プログラム実行、データ更新等の際に、記憶部55(あるいは可搬型記録媒体59)に記憶されているプログラムあるいはデータを一時的に格納するRAM等のメモリである。CPU51は、メモリ52に読み出したプログラム/データを用いて、上述してある各種機能・処理を実行する。
【0055】
出力部54は、例えばディスプレイ等である。入力部53は、例えば、キーボード、マウス等である。尚、上記操作表示機45がある場合には、出力部54、入力部53は、無くてもよい。
【0056】
ネットワーク接続部57は、通信回線7に接続して、各懸架装置とコマンド/データ送受信を行う為の構成である。
記憶部55は、例えばハードディスク等であり、上述した図8や図12の処理を上記CPU51により実行させるための所定のアプリケーション・プログラムや図9に示すテーブル等が格納される。
【0057】
あるいは、これらプログラム/データは、可搬型記録媒体59に記憶されているものであってもよい。この場合、可搬型記録媒体59に記憶されているプログラム/データは、記録媒体駆動部56によって読み出される。可搬型記録媒体59とは、例えば、FD(フレキシブル・ディスク)59a、CD−ROM59b、その他、DVD、光磁気ディスク等である。
【0058】
あるいは、また、上記プログラム/データは、インターネット等の外部ネットワーク又はLAN等の内部ネットワークを介して、他の装置内に記憶されているものをダウンロードするものであってもよい。
【0059】
また、本発明は、上記本発明の各種処理をコンピュータ上で実現するプログラムを記録した可搬型記憶媒体として構成できるだけでなく、当該プログラム自体として構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】懸架装置を配置した全体図である。
【図2】懸架装置の概観例である。
【図3】懸架装置制御システム全体の概略構成図である。
【図4】本例の懸架装置の構成図である。
【図5】本例の連結器具の構成例である。
【図6】タグ読取り装置の処理フローチャート図である。
【図7】昇降装置の処理フローチャート図である。
【図8】集中制御装置の処理フローチャート図である。
【図9】(a)、(b)は、管理情報テーブルの具体例である。
【図10】矛盾有りと判定される場合の具体例である。
【図11】運用時の懸架装置制御システム全体の概略構成図である。
【図12】運用時の集中制御装置の処理フローチャート図である。
【図13】コンピュータ・ハードウェア構成図である。
【符号の説明】
【0061】
1 懸架部
2 バトン部
3 昇降ワイヤー
4 モータ
5 フレーム
6 昇降装置
7 通信回線
8 集中制御装置
11 RF−IDアンテナ
12 タグ読取り装置
13 通信線
20 連結器具
21 フレーム部
22、23 フック部
24 RF−IDタグ
30 テーブル
31 検出タグNo.
32 管理番号
40 テーブル
41 管理番号
42 検出タグNo.
45 操作表示機
50 コンピュータ
51 CPU
52 メモリ
53 入力部
54 出力部
55 記憶部
56 記録媒体駆動部
57 ネットワーク接続部
58 バス
59 可搬型記録媒体
59a FD(フレキシブル・ディスク)
59b CD−ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の懸架装置と集中制御装置とがネットワークに接続された懸架装置制御システムであって、
前記複数の懸架装置のうち任意の複数の懸架装置同士を接続する為の連結器具に、各々固有の識別番号を記憶した被検出体を設け、
前記各懸架装置は、前記連結器具が装着されているときには該連結器具の前記被検出体から非接触で前記識別番号を読み取る読取り装置と、必要に応じて該読み取った識別番号に基づく検出情報を、前記ネットワークを介して前記集中制御装置に通知する制御装置とを有し、
前記集中制御装置は、前記通知された検出情報に基づいて各懸架装置同士の連結状況を示す管理情報を登録・記憶する管理情報登録・記憶手段を有することを特徴とする懸架装置制御システム。
【請求項2】
前記被検出体はRF−IDタグであり、前記読取り装置はRF−IDタグリーダであることを特徴とする請求項1記載の懸架装置制御システム。
【請求項3】
前記集中制御装置は、更に、前記管理情報の登録・記憶が行なわれる毎に、該新たな管理情報に矛盾点があるか否かを判別し、矛盾点がある場合には異常を報知する第1の異常検出手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の懸架装置制御システム。
【請求項4】
運用時、前記集中制御装置は、任意の1つの懸架装置の制御指示を受けると、前記管理情報を参照して連動制御すべき全ての懸架装置を特定し、該特定した全ての懸架装置を同期制御する第1の懸架装置制御手段を更に有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの項に記載の懸架装置制御システム。
【請求項5】
運用時、前記集中制御装置は、任意の1つの懸架装置の制御指示を受けると、前記管理情報を参照して連動制御すべき全ての懸架装置を特定し、該特定した全ての懸架装置に対して制御指示があった場合のみ懸架装置の制御を行うことを許可して該全ての懸架装置を同期制御する第2の懸架装置制御手段を更に有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの項に記載の懸架装置制御システム。
【請求項6】
前記第1又は第2の懸架装置制御手段は、前記同期制御する懸架装置のうち1つでも異常を検出した場合には、該同期制御する全ての懸架装置の制御を停止すると共に異常発生を報知することを特徴とする請求項4又は5記載の懸架装置制御システム。
【請求項7】
複数の懸架装置と集中制御装置とがネットワークに接続された懸架装置制御システムにおける該各懸架装置であって、
任意の連結器具が装着されている場合、該連結器具の被検出体から非接触で識別番号を読み取る読取り手段と、
必要に応じて該読み取った識別番号に基づく検出情報を、前記ネットワークを介して前記集中制御装置に通知する制御手段と、
を有することを特徴とする懸架装置。
【請求項8】
複数の懸架装置と集中制御装置とがネットワークに接続された懸架装置制御システムにおける該集中制御装置であって、
前記各懸架装置が自己に接続された連結器具の識別番号を検出して通知してくると、該通知された検出情報に基づいて各懸架装置同士の連結状況を示す管理情報を登録・記憶する管理情報登録・記憶手段を有することを特徴とする集中制御装置。
【請求項9】
前記管理情報の登録・記憶が行なわれる毎に、該新たな管理情報に矛盾点があるか否かを判別し、矛盾点がある場合には異常を報知する第1の異常検出手段を更に有することを特徴とする請求項8記載の集中制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−297302(P2009−297302A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155846(P2008−155846)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(502367845)富士アイティ株式会社 (5)