説明

或る角度をなす伸縮性パネルを備えた防護服

【課題】通常の作業行動中に着用者が動きやすいようにする低価格の使い捨て式防護衣が必要とされている。
【解決手段】背面上に或る角度をなすエラストマーパネルを有する使い捨て式防護服衣服が提供される。防護カバーオールなどの衣服には、腰背部から上向きに脇下部に向かってかつ袖部に沿って延在するようなV字形状のエラストマーパネルが含まれる。そのようなエラストマーパネルにより、着用者は、そのような衣服を着用するときに、より大きな動きが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、或る角度をなす伸縮性パネルを備えた防護服に関する。
【背景技術】
【0002】
限られた回数だけ使用するための、または使い捨て式の、バリア特性を提供するようにデザインされた防護服には、多くのタイプのものがある。防護服の1つのタイプが防護カバーオールである。カバーオールを用いることにより、例えば、ドレープ、ガウンなどの開き部分があるかまたは袖無し外套スタイルであるような衣服では実現不可能な方法で、着用者が有害な環境に曝されないようにする効果的な密閉構造を提供することができる。それゆえに、カバーオールには、着用者の隔離が望まれる用途が多くある。防護服は、内側(インナー)の服をクリーンに保ち、汚れや他の残留物を着用者の肌に触れさせないようにする。様々な理由で、有害液体及び/または液体によって運ばれ得る病原体が防護服を通過することは望ましくない。作業場や事故現場に存在し得る粉塵、粉末及び他の微粒子から着用者を守るために防護服を用いることも非常に望ましい。逆に、クリーンルーム環境において、防護服は、防護服がなければ着用者がその環境中に持ち込んでいるであろう粉塵及び破片からクリーンルーム環境を守る。
【0003】
一般に、労働者は通常、労働者のそれぞれの産業の要求または規格に応じて、1日1回、または1日おきにカバーオールを着替える。場合によっては、労働者はさらに頻繁に防護服を着替えることもある。使用後、有害物質に曝された防護服の汚染物質を除去することはかなりコストがかさむ場合がある。それゆえ、防護服が使い捨てできるように低価格であることは重要である。一般的に、防護カバーオールは、液体及び/または微粒子を比較的通さないように処理されたバリア性材料/布地から作られる。そのような材料のコストの他にカバーオールのデザイン及び製作もまた、コストに影響する重要な因子である。これらの因子は全て、必要であればたった1回の使用の後でもカバーオールを捨てることが経済的であり得るような低コストでカバーオールなどの防護服を製造するのに適したものであることが望ましい。
【0004】
有害な環境に曝される危険性を減らすためには、防護服を正しく着用しなければならない。防護服が快適であれば、労働者は防護服をきちんと着用しやすい傾向にある。残念ながら、様々な産業環境または医療環境で用いられる典型的な使い捨て式防護服は、多くの場合、着用者の身体の全ての部分にうまくフィットしている訳ではない。そのような使い捨て式の防護服を作るためによく用いられる材料は、伸縮性や柔軟性がない。動作に必要な空間を提供するために、現行のカバーオールのデザインは腰及び胴体領域を他より大きくする傾向にある。この余分な材料からは、ダブつきがあり、かさばり、かつ着心地の悪い衣服が作られ、それは着用者が作業を行う際に妨げになる場合がある。一部の着用者は、テープを用いて余分な材料を集め、それをさらに体に近づけている。そのような労働者による衣服の変更には時間が掛かり、結果的に得られる衣服は、だらしなく見え、デザインが着用者に全く合っていない。さらに、余分な材料は、ひだ、しわ、または他の材料形状を形成することがあり、それらは、フィット性の悪さの一因となり得、機械類に巻き込まれたり障害物に引き裂かれたりし得るので危険である。
【0005】
労働者が(そのデザインによるものであれ、労働者による変更のおかげであれ)体にフィットした衣服を着用しているときでさえ、日常的な作業を行うときに衣服の着心地が悪いことがある。労働者は、手を伸ばすか、腰を曲げるか、あるいは衣服の材料が応力を加えられることになるような他の動作を行わなければならないことが多い。衣服の材料におけるそのような応力は労働者の動きを制限することになるか、あるいは、その限界まで応力が強くかけられたら、材料が裂けるかもしれないかのいずれかである。労働者の動きに対するそのような制限は、労働者の快適性に影響し、生産性を直接低下させる。衣服の材料が破損するまで応力を加えられれば、多くの場合、衣服を交換しなければならないことになり、それは生産性の低下、全体コストの増加の一因となり、労働者を有害な環境に曝し得るので危険である。
【0006】
そのようなあってはならない応力を低下(緩和)しようと試みるためのよくある方法は、あってはならない応力が加えられたときに布地が伸長するように、エラストマー材料または回復可能な伸縮性のある材料から衣服を製作することである。そのような目的のために様々なエラストマー不織布材料及び布地が入手可能であり、その中には、エラストマーフィルム及び不織ウェブの積層体が含まれる。しかし、エラストマー材料の衣服全体またはパネル部分全体を製造する難点は、そのような材料がかなり高価になり、それゆえに製品の総コストを増大させることである。複数の不連続の応力点にエラストマーパネルを利用する解決策は、衣服デザインの複雑さを増し、その結果、そのような衣服に付随するコストを増大させる。
【0007】
定義
【0008】
本明細書中では、「不織布ベースの材料」または「不織ウェブ」なる語は、層間に挿入されている(しかし識別可能な繰り返し方法ではない)複数の個別の繊維またはフィラメント(長繊維)の構造を有するような材料またはウェブを指す。不織ウェブは、従来、例えばメルトブロー法、スパンボンド法、ボンディング・カーディング(bonded carded)ウェブ法などの当業者に既知の様々な方法によって形成されていた。
【0009】
本明細書中では、「スパンボンドウェブ」なる語は、フィラメント及び/または小径繊維のウェブであって、溶融熱可塑性材料を、紡糸口金の複数の細くて通常は円形である穴(毛管)から、フィラメントとして押し出し(穴は押し出されるフィラメントの径を有する)、その後、例えば非抽出(non-eductive)または抽出の流動体延伸機構あるいは他の公知のスパンボンド機構によって急速に糸状にされることによって形成されるようなウェブを指す。スパンボンド不織ウェブの生成は、特許文献1ないし特許文献9などの特許に説明されている。
【0010】
本明細書中では、「メルトブローン繊維」なる語は、繊維であって、溶融熱可塑性材料を、複数の細くて通常は円形であるダイ穴から、溶融糸またはフィラメントとして高速ガス(例えば空気)流中へ押し出し、溶融熱可塑性材料のフィラメントの径を細くする(極細繊維径まで細くすることもある)ことによって形成された繊維を意味する。その後、メルトブローン繊維は、高速ガス流によって運ばれ、捕集面上に堆積されてランダムに分配されたメルトブローン繊維のウェブを形成する。メルトブローン法は公知であり、非特許文献1、非特許文献2、特許文献10を含む様々な特許及び出版物に記載されている。
【0011】
本明細書中では、「極細繊維(マイクロファイバー)」なる語は、約100ミクロン以上の平均径を有しないような、例えば約0.5ミクロンないし約50ミクロンの径を有する小径の繊維を意味し、さらに具体的に言うと、極細繊維は、約1ミクロンないし約20ミクロンの平均径を有し得る。約3ミクロン以下の平均径を有する極細繊維は、通常、超極細繊維(ウルトラファインマイクロファイバー)と呼ばれる。超極細繊維を製造する例示的な方法の説明は、例えば特許文献11に見られるであろう。
【0012】
本明細書中では、「シート」及び「シート材料」なる語は、同じ意味で用いられるものとし、修飾語がない場合、フィルム、不織ウェブ、織物または編物であり得る材料を指す。
【0013】
本明細書中では、「マシン方向」(以下、「MD」と呼ぶ。)なる語は、材料ウェブの平面的な特徴を指し、それは処理中にその前進方向と平行な材料の方向にある。「クロスマシン方向」(以下、「CD」と呼ぶ。)なる語は、材料の平面的な特徴を指し、それはマシン方向と概ね垂直な方向にある。
【0014】
本明細書中では、「耐液性」なる語は、以下の(1)、(2)を除いて標準水圧試験法AATCCTM No.1998に従い判定された少なくとも約25センチメートルの水圧ヘッドを有する材料を指す。AATCC試験と異なる点は、(1)試験片は、通常より大きく、試験片のクロスマシン方向両端部上へクランプする引張試験機(stretching frame)に取り付けられているので、試験片は、様々な引き伸ばし条件(例えば10%、20%、30%、40%の引き伸ばし)下で試験され得る点と、(2)水柱の重みで試験片が撓まないようにワイヤメッシュによって試験片が下に支持される点である。
【0015】
本明細書中では、「通気性」なる語は、少なくとも約8m/min/m(約25cfm/ft(立方フィート/分/平方フィート))のフラジール通気量(Frazier porosity)を有する材料を指す。例えば、通気性材料のフラジール通気量は、約8ないし140m/min/m(約25ないし45cfm/ft)以上であり得る。フラジール精密機械会社(Frazier Precision Instrument Company)から購入できるフラジール形通気度試験機(Frazier Air Permeability Tester)を利用してフラジール通気量を決定する。フラジール通気量の測定は、試験片サイズが178cm×178cm(7''×7'')の代わりに203.2cm×203.2cm(8''×8'')である以外は、米国連邦政府試験法(Federal Test Method)5450,規格No.191Aに従って行う。
【0016】
本明細書中では、「粒子抵抗性」なる語は、微粒子の浸透に対する抵抗が有用なレベルである布地を指す。微粒子の浸透への抵抗は、乾燥粒子のエアフィルタ捕集性能(retention)を決定することによって測定され得、粒子抵抗効率(particle holdout efficiency)として表されることができる。具体的に言えば、粒子抵抗効率は、一定のサイズ範囲の粒子が材料を通過しないようにする材料の効率を指す。粒子抵抗効率は、例えばミシガン州グラスレイクのインターベーシック・リソース社(InterBasic Resources, Inc.)によって行われるIBR試験法No.E−217,リビジョンG(1991年1月15日改訂)などの試験を利用してエアフィルタによる乾燥粒子の捕集性能を決定することによって測定され得る。一般的に、バリア性材料/布地に対して高い粒子抵抗効率が望ましい。望ましくは、粒子抵抗性材料は、約0.1ミクロンより大きな径を有する粒子に対して少なくとも約40%の粒子抵抗効率を有していなければならない。カタログに述べられていることを実証するためにLMS Labが用いられる。アパレルカタログは、快適性能に関連する方法としてASTM D737(通気度試験規格)及びASTM E96(水蒸気透過率試験規格)に言及している。
【0017】
本明細書中では、「エラストマー(の)」なる語は、引っ張る力を加えていないときの長さの少なくとも25%引き伸ばされるかまたは伸長されることができ、加えられた力を解放すると伸びの少なくとも10%を回復することになるような材料または複合材料を指す。一般的には、エラストマー材料または複合材料が少なくとも100%伸長されることができかつ伸びの少なくとも50%を回復することが好ましい。エラストマー材料はこのように伸縮可能であり、「伸縮可能(な)」、「エラストマー(の)」及び「伸張性(の)」は同じ意味で用いられ得る。
【0018】
本明細書中では、「弾性(的)」または「伸縮性のある」なる語は、材料または複合材料の特性であって、その特性のおかげで、材料または複合材料が、変形を生じさせる力を取り除いた後に元のサイズ及び形状に戻りやすいものを意味する。
【0019】
本明細書中では、「ネッキングボンディング(necked-bonded)」積層体なる語は、非弾性部材がマシン方向に引き伸ばされ、横またはクロス方向に弾性的であるようなネッキングされた材料が作られている間に、その非弾性部材に接着されるような弾性部材を有する複合材料を指す。ネッキングボンディング積層体の例は、特許文献12ないし特許文献15に開示されている。
【0020】
本明細書中では、「ストレッチボンディング(stretch-bonded)」積層体なる語は、1層がギャザー寄せ可能な層であり別の1層が弾性層であるような少なくとも2つの層を有する複合材料を指す。層から力を除いたときにギャザー寄せ可能な層にギャザーが入るように、弾性層が引き伸ばされた状態にあるときに、層同士が接合される。例えば、1つの弾性部材を、引っ張る力を加えていないときの長さの少なくとも約25%引き伸ばしている間に、別の部材に接着することができる。そのような多層複合弾性材料は、非弾性層が完全に引き伸ばされるまで伸長され得る。ストレッチボンディング積層体の例は、例えば、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20に開示されている。
【0021】
本明細書中では、「使い捨て」なる語は、1回使い切りの物品に限定されるものではなく、消費者にとって比較的低価格であるので汚損または別の方法でたった1回または2〜3回の使用の後で使用できなくなった場合に廃棄することができるような物品も指す。
【0022】
本明細書中では、「衣(衣服)」なる語は、例えば、限定されるものではないが、サージカルガウン、患者用ドレープ、作業服、カバーオール、ジャンパー、エプロンなどを含む防護衣及び/またはシールド(保護物)を指す。
【0023】
本明細書中では、「カバーオール」なる語は、他の衣料品の上から着用することができ、着用者の身体のかなりの面積、典型的には着用者の首領域から胴体を越えて手首や足首などの四肢端(ときには手足を含むこともある)までを防護するような、比較的ゆったりした上下続きの防護衣を指す。一部の実施形態では、衣服には、フードなどの付加的な頭の覆い、または一体化した手袋及び靴下、ブーツまたは他の履物が含まれることがある。
【0024】
本明細書中では、「ポリマー」なる語は、一般的に、限定されるものではないが、ホモポリマー、コポリマー(例えばブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマーなど)、ターポリマー、その他と、それらの混合及び修飾を含む。さらに、他に明確に限定されていなければ、「ポリマー」なる語は、材料の全ての可能な幾何学形状を含むものとする。これらの形状は、限定されるものではないが、アイソタクチック、シンジオタクチック及びランダム対称を含む。
【0025】
本明細書中では、「実質的に〜から構成される」なる語は、所与の組成物または製品の所望の特性に実質的に影響しないような追加的な材料の存在を除外しない。この種の例示的な材料は、限定されるものではないが、色素、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、フロー促進剤、微粒子、あるいは、組成物を処理する能力を高めるために加えられる材料を含むものとする。
【0026】
本明細書中では、「結合」なる語は、限定されるものではないが、2つのものを、一体的にまたは隙間に入って、接合、接続、締結、連結するかまたは関連付けることを含む。本明細書中では、「解除可能に接続(された)」なる語は、安定的に結合され、同時に互いから離れるように操作されることができるような、2つ以上のものを指す。
【0027】
本明細書中では、「構成する」または「構成」なる語は、特定の用途または使用を視野に入れたデザイン、配置、組立てまたは形成(すること)を意味する。用例:起伏の多い地形のために構成された軍用車;システムのパラメータを設定することによってコンピュータを構成した。
【0028】
本明細書中では、「実質的に」なる語は、何かがかなりの程度までなされていることを指しており、例えば、「実質的にカバーされている」とは、或るものが少なくとも95%カバーされていることを意味する。
【0029】
本明細書中では、「整合」なる語は、直線上または平行線上にある複数のものの配列または位置が持つ空間特性を指す。
【0030】
本明細書中では、本明細書中で同じ意味で用いられる「向き」または「位置」なる語は、何かがある場所または方向の空間特性を指す。用例:「時計の針の位置」。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】米国特許第4,340,563号明細書
【特許文献2】米国特許第3,692,618号明細書
【特許文献3】米国特許第3,338,992号明細書
【特許文献4】米国特許第3,341,394号明細書
【特許文献5】米国特許第3,276,944号明細書
【特許文献6】米国特許第3,502,538号明細書
【特許文献7】米国特許第3,502,763号明細書
【特許文献8】米国特許第3,542,615号明細書
【特許文献9】カナダ特許第803,714号明細書
【特許文献10】米国特許第3,849,241号明細書
【特許文献11】米国特許第5,213,881号明細書
【特許文献12】米国特許第4,965,122号明細書
【特許文献13】米国特許第4,981,747号明細書
【特許文献14】米国特許第5,226,992号明細書
【特許文献15】米国特許第5,336,545号明細書
【特許文献16】米国特許第4,720,415号明細書
【特許文献17】米国特許第4,789,699号明細書
【特許文献18】米国特許第4,781,966号明細書
【特許文献19】米国特許第4,657,802号明細書
【特許文献20】米国特許第4,655,760号明細書
【特許文献21】米国特許第4,041,203号明細書
【特許文献22】米国特許第4,374,888号明細書
【特許文献23】米国特許第4,753,843号明細書
【特許文献24】米国特許第5,491,753号明細書
【特許文献25】米国特許第5,401,446号明細書
【特許文献26】米国特許第5,226,992号明細書
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】NRL Report 4364, "Manufacture of Super-Fine Organic Fibers" by V.A. Wendt, E.L. Boone, and C.D. Fluharty
【非特許文献2】NRL Report 5265, "An Improved device for the Formation of Super-Fine Thermoplastic Fibers" by K.D. Lawrence, R.T. Lukas, and J.A. Young
【非特許文献3】"The Measure of Man and Woman," by Alvin R. Tilley, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
上記した問題を考慮すると、通常の作業行動中に着用者が動きやすいようにする低価格の使い捨て式防護衣が必要とされている。例えば、経済的な量のエラストマー材料を効果的に利用した防護カバーオールが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、従来のエラストマー材料のカバーオールに付き物である莫大なコストなしにエラストマー材料のプラス面を享受する防護衣のための独特な構成、特にカバーオールのデザインを対象にしている。本発明の使い捨て式防護衣は、本体(身頃)部分、脚部分、袖部分及び少なくとも1つのエラストマーストリップを含む。エラストマーストリップは、腰背部の一点から左脇下部に向かってかつ左脇下部から左袖部の下側に沿って延在するように構成されている。ストリップはまた、上向きに腰背部の一点から右脇下部へかつ右脇下部から右袖部の下側に沿って延在する。エラストマーストリップは、カバーオール本体の上部部分を脚部分に接合する。
【0035】
そのようなエラストマーストリップは、縫目(シーム)のないエラストマー材料の連続ストリップであり得るか、あるいは複数のストリップであり得る。追加的に、ストリップは約50.8ミリメートルないし152.4ミリメートル幅(約2ないし6インチ幅)であり得、約25%ないし400%の弾性伸びを有し得る。また、エラストマーストリップは、一方向伸縮性布地、多方向伸縮性布地を有するエラストマー材料、または一方向及び/または多方向伸縮性布地を有する複数のストリップの組合せから作られ得る。そのような方向伸縮性は、衣服上でエラストマーストリップの向きに沿って整合され得るか、概ね衣服の襟から股部まで延在する線と平行して整合され得るか、あるいは伸縮性布地が異なる方向に整合された複数のストリップで作られ得る。
【0036】
様々な衣服において、エラストマーストリップは、左脇下部に向かって延出するストリップの一部分と右脇下部に向かって延出するストリップの一部分の間の角度を形成するように衣服上で方向付けされ得る。衣服が平置きの状態のとき、エラストマーストリップによって形成されるそのような角度は約83°ないし約155°であり得る。そのような角度は、約90°ないし150°であり得る。他の衣服では、角度は約95°ないし130°であり得る。
【0037】
本発明はまた、V字形部を形成するように背面に構成されたエラストマーストリップを含むようなバリア性布地から形成される使い捨て式防護カバーオールも対象にしている。V字形部は、腰背部の一点に位置する先端部と、先端部から右脇下部に向かって延在する第1の延在部と、先端部から左脇下部に向かって延在する第2の延在部とを含む。
【0038】
一部のそのようなカバーオールでは、第1及び第2の延在部は、それぞれの脇下部へ、それぞれの袖部の下側に沿って延在する。一部のカバーオールでは、2つの延在部は、二者択一的に袖部の背面に沿って延在し得るか、あるいは二者択一的にそのような袖部の上縁に沿って延在し得る。そのような延在部は、袖部に沿って手首までずっと延在し得る。
【0039】
追加的に、V字形部の2つの延在部は或る角度を形成する。その角度は、一部のカバーオールでは約83°ないし約155°であり得る。角度は、二者択一的に約90°ないし150°であり得、あるいは二者択一的に95°ないし130°であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に従っている例示的な防護カバーオールの正面図。
【図2】図1の例示的な防護カバーオールの背面図。
【図3】本発明に従っている例示的な防護カバーオールの背面図。
【図4】本発明に従っている例示的な使い捨て式防護カバーオールの詳細。
【図5】本発明に従っている例示的な使い捨て式防護カバーオールの詳細。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、衣服の背面を横断して或る角度をなして構成されたエラストマーストリップを有するような、限られた回数だけ使用するための、好適には使い捨て式の、洗濯されない防護カバーオールに関連する。そのようなカバーオールは、例えば、保健医療、家の修繕・日曜大工(DIY)、化学、工業、公衆衛生、クリーンルーム及び他の類似の用途などの作業領域及び産業に特に関係している。エラストマーストリップによって、着用者は、上半身、腕及び肩を、前または横方向により容易に曲げることができる。エラストマーストリップのエラストマー材料は、一方向または多方向に伸びる特性を有する。エラストマーストリップ材料は、着用者の身体に対する衣服の総合的な快適性、フィット性、適合性を高める。特定の角度に伸縮性布地材料を配置することで、着用者の動作に必要な弾性及び柔軟性を与え、衣服中の緩んだ布地の量を最小にすることができ、衣服にスタイリッシュな外観を与える。フィット性を向上させ、運動の自由度を大きくし、見た目をよりスタイリッシュにしていることで、そのような衣服は、着用者のコンプライアンスを向上させることができ、そのような防護衣を着用しようというする気持ちを高めることができる。
【0042】
図1を参照すると、本発明を具体化したカバーオール12の正面図10が示されている。防護カバーオール12には、左半身パネル14及び右半身パネル16が含まれる。各半身パネル14、16は、縫目のないシート材料から形成されるのが望ましい。右半身パネル16は、実質的に左半身パネル14の鏡像である。防護カバーオール12には、左右の袖部18、20と、左右の脚部22、24が含まれる。カバーオール12の上部に首開口部26が見えている。図1に示すように、閉じ手段28が首開口部26からカバーオール12の股部に向かって延在する。
【0043】
そのようなカバーオールの製造は、既知の自動、半自動または手作業の組み立て手順に従い得る。より良好なバリア特性のために衣服中の縫目の数を減らし、製造ステップを単純化するために、使い捨て式防護カバーオールには最も少ない実際的な数のパネル、部分または部位しか含まれないことが望ましい。しかし、本発明の使い捨て式防護カバーオールは、特定用途のためのカバーオールをあつらえるための異なる程度の強度を有し得るバリア性布地の部位、パネル、または部分を含み得ると考えられる。例えば、袖部分または他の部分(例えばカバーオールの脚部分、肩部分または背中部分)は、非常に高いレベルの強度及び靱性を有する二重層のバリア性布地を含み得る。
【0044】
左袖部18は左半身パネル14の一体部分であり得る(すなわち左半身パネル14は左袖部18を形成するように裁断される)のが望ましい。左袖部18は、縫目(図示せず)によって左半身パネル14に接合され得る別の生地であり得ると考えられる。同じように、右袖部20は右半身パネル16の一体部分であり得る(すなわち右半身パネル16は右袖部20を形成するように裁断される)のが望ましい。右袖部20は、縫目(図示せず)によって右半身パネル16に接合され得る別の生地であり得ると考えられる。閉じ手段28がカバーオール12の正面10上で左半身パネル14を右半身パネル16に接合する。図2に示すように、背中の垂直縫目32は、カバーオール12の背面30上で半身パネル14、16を互いに対して接合する。
【0045】
図1及び図2に示すカバーオール12では、袖部18、20が、実質的に肩部分に平行に、本体から外向きに延出するものとして示されている。しかし、他のデザインも可能であり、例えば、図3に示すカバーオール12には、肩部分から上向きに延出するようにデザインされた袖部18、20が含まれる。
【0046】
脚部22、24は、袖部18、20の形成と似た方法で形成されるのが望ましい。左脚部22は、左半身パネル14の一体部分であり得る(すなわち左半身パネル14は左脚部22を形成するように裁断される)のが望ましい。左脚部22は、縫目(図示せず)によって左半身パネル14に接合され得る別の生地であり得ると考えられる。同様に、右脚部24は、右半身パネル16の一体部分であり得る(すなわち右半身パネル16は右脚部24を形成するように裁断される)のが望ましい。右脚部24は、縫目(図示せず)によって右半身パネル16に接合され得る別の生地であり得ると考えられる。
【0047】
左半身パネル14及び右半身パネル16は、左右の半身パネル14、16に対応するカバーオール12の左右の上部23、25並びに左右の脚部22、24が各々1つの材料すなわち一枚生地から作られるように製作されるのが望ましい。望ましさはそれほどでもないが、縫目(図示せず)を用いて、上部23、25を脚部22、24に接合したり、袖部18、20を上部23、25に接合したり、あるいはそれらの組合せを接合したりすることもできると考えられる。
【0048】
図2は、図1の例示的な防護カバーオール12の背面図30を示す。防護カバーオール12は、左半身パネル14及び右半身パネル16を含む(後ろから見て逆の位置にある)。左右の袖部18、20並びに左右の脚部22、24も逆の位置にある。
【0049】
カバーオール12の背面30にはエラストマーストリップ80も含まれ、エラストマーストリップ80は、そのようなカバーオール12の着用者が、腰を曲げ、手などを伸ばし、かがみ、全般的な軽快な動作を行うことをより一層可能にする。エラストマーストリップ80は、概ね、カバーオール12の背面30において、カバーオール12の腰背部90または腰部領域から上向きにカバーオール12の右及び左の脇下部91、92に向かってV字形状で方向付けされている。エラストマーストリップ80は、カバーオール12の脇下部91、92から袖部18、20の下側66にさらに延在する。正面10から見たとき、左右の袖部18、20に沿ったエラストマーストリップ80の一部のみが見える。背面30から見たとき、V字形部ははっきりと見えており、着用者が腕を上に上げればもっとはっきりするであろう。着用者が両腕を両脇に垂らすと、エラストマーストリップ80は背面30から見てM字形に見える。
【0050】
図1及び図2に示すカバーオール12の場合、エラストマーストリップ80は、第1のエラストマーストリップ81及び第2のエラストマーストリップ82で構成されている。第1のエラストマーストリップ81は、背中の縫目32にある腰背部90上の或る点から右半身パネル16に沿って右脇下部91まで、そして右手首93に向かって右袖部20の下側66に延在する。同様に、第2のエラストマーストリップ82は、背中の縫目32にある腰背部の一点90から左半身パネル16に沿って左脇下部92まで、そして左手首94に向かって左袖部18の下側66に延在する。
【0051】
エラストマーストリップ80は、エラストマーストリップ80が着用者の動きと一緒になって容易に伸びることができるように半身パネル14、16に取り付けられるのが望ましい。図1及び図2のカバーオール12の場合、第1の弾性ストリップ81は、上方縫目34に沿って右上部25の縁部に取り付けられ、下方縫目36に沿って右脚部24の縁部にも取り付けられる。同じように、第2の弾性ストリップ82は、上方縫目34に沿って左上部23の縁部に取り付けられ、下方縫目36に沿って左脚部24の縁部にも取り付けられる。
【0052】
そのような第1及び第2のエラストマーストリップ81、82は、上方縫目及び下方縫目34、36が作られる間は伸びた形態を保ちながら、カバーオール12に取り付けられ得る。縫目34、36が仕上がった後、エラストマーストリップ81、82はその後伸びた形態から解放され、カバーオール12と共に縮められ得る。衣服の製作中のエラストマー材料のそのような伸びは、用いられる特定のエラストマー材料の伸び及び収縮特性、製造能力及び所望のデザインによって決まることになる。
【0053】
第1及び第2のエラストマーストリップ81、82は、図1及び図2に、袖部18、20の下側66に沿ってカバーオール12の手首93、94まで延在しているものとして示されている。エラストマーストリップ80は、袖部18、20に一部分だけ延出し得ると考えられる。例えば、図3に示すカバーオール12には、右及び左の袖部20、18それぞれの下側66に右及び左の肘95、96と右及び左の手首93、94の間の或る点までしか延在していないような第1及び第2のエラストマーストリップ81、82が含まれる。
【0054】
代替形態においては、エラストマーストリップは、図2及び図3に示すように袖部の下側66の下に延在するのではなく、袖部に沿って延在し得る。図4に示すように、エラストマーストリップ80は、上向きに腰背部90から左右の脇下部92、91に向かって延在し、それから左右の袖部18、20の背面30に沿って延在し得る。あるいは、図5に示すように、エラストマーストリップ80は、上向きに腰背部90から左右の脇下部92、91に向かって延在し、それから左右の袖部18、20の上縁62に沿って延在し得る。
【0055】
エラストマーストリップ80を用いることで、さらなる柔軟性、手などの届く範囲及び全般的な動作を着用者に提供するような衣服の製作が可能になる。しかし、そのようなエラストマー材料は多くの場合に高価であり、そのようなエラストマー材料の使用は、経済的であるが使い捨てできることを目的とした防護衣において最小にされる必要がある。これを受けて、本発明は、コストを最小にしながら人間生理学を巧みに利用するために或る特定の形状で不連続なエラストマーストリップを用いる。エラストマー材料でできた全体パネルを用いる代わりに、エラストマーストリップは、少なくとも最低レベルの利用可能な伸びを提供できる大きさにされ、それにもかかわらずそのような伸びを経済的に提供できるほど小さい。そのようなバランスを念頭に置いて、エラストマーストリップの幅は約50.8ミリメートルないし約152.4ミリメートル(約2インチないし約6インチ)の範囲にあるのが望ましい。エラストマーストリップは、約50.8ミリメートルないし約101.6ミリメートル(約2インチないし約4インチ)の幅になるのが望ましい。
【0056】
エラストマーストリップが約100%ないし約300%の範囲で伸長できる(すなわち引き伸ばされると長さが約2倍から約4倍増加する)ことも望ましい。しかし、一部の実施形態では、カバーオール12のデザイン及びエラストマーストリップの伸縮方向の向きが、材料の利用可能な伸びの完全利用を妨げることがある。そのようなデザインでは、より低いレベルの伸びを有するエラストマー材料を利用することは、よりコスト効果が高くかつ効果的であり得る。例えば、所望の伸びのレベルは、約25%に等しいかまたはそれ以上であり得る。約25%ないし約300%の伸びを有する材料は、本発明のエラストマーストリップ用として考えられる。
【0057】
本発明のカバーオール12のエラストマーストリップの伸縮能力を最大にするために、エラストマーストリップは、エラストマーストリップを横断するような縫目または材料がないことが望ましい。図2に示すカバーオール12の場合、1つだけの縫目すなわち背中の垂直縫目32がエラストマーストリップ80を横断している。(図2のカバーオール12において、背中の垂直縫目32は第1のエラストマーストリップ81を第2のエラストマーストリップ82に実際に接合している)。背中の垂直縫目32は図2のカバーオール12の背面から取り除かれることができ、2つのエラストマーストリップ81、82を、間に縫目が介在しない単一エラストマーストリップに置き換えることも可能であると考えられる。そのような縫目なしエラストマーストリップ80を有するカバーオールの例を、図4及び図5に示す。
【0058】
エラストマーストリップの代替デザインも考えられる。例えば、図3に示すカバーオール12は、本発明の概ねV字形状のエラストマーストリップを含む。しかし、エラストマー腰部パネル84は、V字形部の先端部を占めている腰背部領域90に含まれる。第1のエラストマーストリップ81は、腰部パネル84から右脇下部91に向かってかつ右袖部20の下側66に沿って延在する。同様に、第2のエラストマーストリップ82は、腰部パネル84の左側から上向きに左脇下部92に向かってかつ左袖部18の下側66に沿って延在する。
【0059】
エラストマー腰部パネル84の上縁は、背中の上方縫目34によって両上部23、25の縁部に取り付けられる。エラストマー腰部パネル84の下縁は、腰背部 縫目36によって両脚部分22、24の縁部に取り付けられる。エラストマーストリップ81、82は、エラストマー腰部パネル84のいずれかの側にある腰部縫目38によって腰部パネル84に取り付けられる。
【0060】
図3に示すように、エラストマー腰部パネル84は、エラストマーストリップ81、82の幅よりも幅が大きいことがある。追加的に、腰部パネル84は、そのようなカバーオール12の着用者の腰部領域とのフィット性を最大にするような輪郭または形状にされ得る。そのような腰部パネル84は、エラストマーストリップ80の一体部分であり得ると考えられる。そのような実施形態では、腰部パネル84は、カバーオール12の腰背部領域90においてエラストマーストリップ80の輪郭形成された部分、すなわち幅広部分であり得る。
【0061】
本発明のエラストマーストリップ80のV字形部は、そのようなエラストマーストリップのない衣服で利用可能であるよりも容易に、そのようなカバーオール12の着用者が、手などを伸ばし、腰を曲げ、または脊椎に沿って曲げることができるように、柔軟性及び動作を向上させるように構成される。上記したように、このことは、背面の腰部領域から上向きに脇下部までかつ両袖部に沿って延在して所望のV字形部を形成するようなエラストマー材料を提供することによって達成される。V字形部の先端部は、概ね着用者の腰椎領域と一致することが期待されるが、腰より低くてもよく、あるいは着用者の下位胸椎と同じ高さの領域に配置されることさえある。
【0062】
V字形部の2つの延在部は、互いに対して角度θで、カバーオール12の背面30の垂直中心(すなわち図2及び図3に示す衣服の背中の垂直縫目32)に対して角度θで、先端部から延出している。角度θは、エラストマーV字形部の2つの延在部の間の全角度θの半分である。角度θが第2のエラストマーストリップ82の背中の垂直縫目32と背中の上方縫目34の間の角度として図2及び図3に示されているが、当然のことながら、角度θはエラストマーストリップ81、82によって形成されるV字形部の2つの延在部の間の有効角度θの半分である。均一幅を有しないエラストマーストリップの場合、V字形部の角度θは、カバーオール12の右及び左の脇下部91、92に向かって腰背部90から延在するエラストマーストリップ80の一部分の実効中心に沿って続く軸線間の角度である。
【0063】
V字形部の角度θは、そのようなカバーオール12を着用することになる一般的な範囲の人々を網羅するようにデザインされるのが望ましい。本願発明者は、米国の人口における男性及び女性の体測値分布に関するデータを利用して、エラストマーストリップ80の必要なV字形部角度θ及び関連角度θを推定した。非特許文献3を参照されたい。具体的には、本願発明者は、サイズ分布データを利用して米国の人口の98%を占める(すなわち、男性の1パーセンタイル、女性の1パーセンタイル、男性の99パーセンタイル及び女性の99パーセンタイルを考慮する)ようにエラストマーストリップ角度をデザインした。
【0064】
肩幅、体の厚み(胸部から背中まで)及び肩頂部幅に関するデータを利用して、胴囲が推定され得る。具体的には、人間の上半身は、楕円として推定され得る。その後、そのような推定胴囲の半分を用いて、所望のV字形部の2つの延在部の端部間の幅を推定することができる。追加的に、全胸椎高さ(すなわち脊椎中の12個の胸椎に沿った測定寸法)に関するデータを用いて、V字形部の先端部から、V字形部の2つの延在部の両端部をむすぶ線分までの垂直高さを推定し得る。この高さ及び幅は、カバーオールの背面に想像上の逆三角形を形成する。全胸椎高さ及び上記のように計算した推定幅を用いて、角度θ及びθを計算することができる。推定値については表1を参照のこと。
【0065】
そのような身体データは、身体寸法だけに対する理論的な角度の計算を可能にするが、そのような防護カバーオールの必要寸法を完全には与えないことがある。着用者の服の必要寸法を与えるためには、追加のバリアンスファクタが必要である。カバーオールの着脱に必要な空間を提供するために、胸部幅推定値にあと数十ないし二百数十ミリメートル程度(数インチ)加えられる。50.8ないし152.4ミリメートル(6ないし8インチ)の胴体幅推定値の増加が推定され得る。
【0066】
同様に、衣服のデザイン選択に起因して、V字形部の先端部の実際の配置は、カバーオール上でより高いかまたはより低い位置に配置されることがある。このことは、カバーオールのデザインが、提供される様々なサイズのカバーオールに対する高さ:幅の比に必ずしも比例していないことに起因する。追加的に、または二者択一的に、先端部の配置は、必要な空間を提供されるのが望ましい動作のバランスに基づいて、より高いかまたはより低い位置に配置されることがある。例えば、より多くの手などを伸ばす動きが望まれたならば、先端部は背面上のより高い位置に配置され得、より多くの腰を曲げる動きが望まれるならば、先端部はより低い位置に配置され得る。それゆえ、理論的な身体計算に用いられた全胸椎高さよりも高いかまたは低い高さを使用することが望まれるであろう。デザイン要求に基づき、V字形部の先端部は、全胸椎高さが示したであろう高さよりも50.8ないし203.2ミリメートル(6ないし8インチ)高いかまたは低い位置に配置され得ると考えられる。そのようなより大きな胸部寸法を、より高いかまたはより低い先端部と組み合わせることにより、少し異なる角度θ及びθの推定値が提供される。これらの追加の推定値については表1を参照のこと。
【表1】

【0067】
表1からの推定値を用いて、角度θは、身体データに基づき、約47°ないし約58°であろう。その結果として、カバーオール12上のエラストマーストリップのV字形部によって形成される角度θは、人体の推定値のみに基づいて、約94°ないし約116°になるであろう。表1に示すように、より高いかまたはより低い位置に配置されたV字形部と共に追加の胸部幅が含まれるとき、角度θの範囲は約42°ないし約77°であり得、V字形部角度θの範囲は約83°ないし約154°であり得る。
【0068】
これらの範囲及び角度は、本発明のカバーオールに適しているであろう角度の推定である。当業者は、そのような身体サイズデータ及び妥当なデザイン上の配慮が、ここで推定した角度よりも大きいかまたは小さい角度を如何にしてもたらし得るかを知ることになるであろう。
【0069】
本発明のカバーオール12に用いられるエラストマー材料は、一方向伸縮性材料であり得るか、あるいは多方向伸縮性材料であり得る。一方向伸縮性を有する材料は、1つの顕著な軸線に沿って弾性的であり、かつ一般的にはそのような弾性軸線に垂直な軸線に沿って実質的に弾性的ではないような材料である。例えば、一方向伸縮性材料は、材料のマシン方向に沿って弾性的であり得、材料のクロスマシン方向に沿って実質的に非弾性的であり得る。
【0070】
多方向伸縮性材料は、材料の2つ以上の軸線に沿って、ある程度の弾性を有することになる。例えば、多方向伸縮性材料は、材料のマシン方向及びクロスマシン方向の両方に沿って、ある程度の弾性を有し得る。多方向伸縮性材料が2つ以上の軸線に沿ってある程度の弾性を有し得るにしても、材料は、材料がそれに沿ってより高度の弾性すなわち顕著な伸縮方向を有するような軸線を、尚も有し得る。一方向伸縮性材料(または主伸縮方向を有する多方向伸縮性材料)を用いるとき、顕著な伸縮軸線は衣服の一般的な伸縮ニーズと整合されているのが望ましい。
【0071】
一部の実施形態では、カバーオール12は、エラストマー材料のための顕著な伸縮方向がエラストマーストリップ80が配置される方向に沿って方向付けされるように製作され得る。図2に示すカバーオール12の場合、そのようなエラストマーストリップ80は、エラストマー材料のための顕著な伸縮方向が腰背部の一点90から脇下部91、92に向かって概ね延在する方向と実質的に同じ方向に方向付けされることになるように、裁断され、配置されることになる。
【0072】
あるいは、エラストマー材料を、顕著な伸縮方向が背中の縫目32に実質的に平行であるように、裁断し、方向付けするのが望ましいことがある。
【0073】
一部の実施形態では、複数の部位に分けられたエラストマーストリップと伸縮方向の組合せが用いられ得る。例えば、エラストマーストリップ80は、4つの不連続な部位から作られることができ、それは図2に示すような第1及び第2のエラストマーストリップ81、82に類似のものであり得るが、このとき、エラストマーストリップ81、82の各々は2つの部分(図示せず)で作られ得る。この例では、カバーオール12の背面に沿ったエラストマーストリップ81、82の一部分は背中の縫目32と実質的に平行であり得る一方で、各袖部の下側66上に存在する部分は脇下部から手首に向かう方向に平行であり得る。
【0074】
一方向伸縮性材料と多方向伸縮性材料の組合せも考えられる。例えば、図3に示すカバーオール12は、腰部パネル84が多方向伸縮性材料であり得るが、エラストマーストリップ81、82が一方向伸縮性材料であり得るように製作され得る。
【0075】
本発明のカバーオール12は、他の追加機能も含み得る。図1では、カバーオール12には、カバーオール12の肩部62に沿った首開口部26が含まれる。そのようなカバーオール12のための追加機能は、そのような首開口部26にぴったりの追加の襟及び/またはフードであり得る。一部の実施形態では、図3に示すような、カバーオール12は伸縮性のあるウエストバンド17を含み得る。別の機能は、そのような開口部が着用者にぴったりとフィットすることを保証するために衣服の脚開口部または手首開口部に加えられた弾性カフであり得る。衣服材料の完全性を損なうことなくカバーオールにバッジを取り付けられるように、本発明のカバーオールに縁取り(パイピング)を付けることができる。そのような縁取りは、追加的に、または二者択一的に、審美的な目的のために含まれ得る。ポケットなどの他の機能も考慮される。カバーオールは、着用者がカバーオールを脱がなくてもカバーオールの内部にアクセスできるようにするための再び閉じることのできる開口部をさらに含み得る。
【0076】
カバーオール12の閉じ手段28は、そのような防護衣にはよくあるように任意のタイプの留め具を含み得る。閉じ手段28は、バリア防護のための標準的なジッパーなどの機械的閉じ具であるのが望ましい。しかし、カバーオールに必要な防護レベルに応じて、マジックテープ(登録商標)、スナップ、再び閉じることのできるテープ、または他の同様の留め具など、他の留め具を用いてもよいと考えられる。
【0077】
本発明のカバーオール12は、衣服の中に入るための従来の垂直開口部の代わりに、衣服の前身頃領域を横切って斜めに方向付けした開口部を、付随する留め具と共に、二者択一的に組み込むことができる。例えば、ジッパーが、肩から始まり、胴体を斜めに横切って大腿上方領域に至るまで進み得る。これにより、衣服の身頃を大きく開くことができる。着用者の首から離れて始まるような、或る角度をなすジッパーは、刺激が少ないであろう。ジッパーは、自身を覆うフラップを有し得る。フラップは、様々な留め具によって固定され得る。
【0078】
相対的な防護レベルなどの特定のメッセージを伝えるため、またはスタイル要素としての特有の外観を提供するために、色、記号、言葉またはロゴが用いられ得る。色は、カバーオール全体の生地、カバーオールの個々の部分に、あるいは縫目、ポケットまたはすね当ての周りに沿って布地の縁取りとして、あるいは独特のパターンで、付けられ得る。ブランドまたは防護レベルを示すロゴが、カバーオール上に配置され得る。色は、メッセージを伝えるため及び外観を提供するために、閉じ手段に加えられ得る。
【0079】
一般的に、そのようなカバーオールの製造は、既知の自動、半自動または手作業の組み立て手順に従い得る。例えば、衣服の様々な部分の取付けは、縫製または縫い合わせ、超音波接合、溶剤接着、接着剤、熱接合(サーマルボンディング)及び同様な技術を利用して達成され得る。
【0080】
本発明に従って、特定の実施形態では、防護カバーオールに用いられる全ての材料は、それぞれの指定された防護レベルに対して工業規格に合っているバリア特性を有する。カバーオール材料は、一般的に通気性及び耐液性のあるバリア性材料である。材料の通気性は、特に高熱指数条件下で、活発な身体活動が行われ、あるいは長期間にわたって、衣服が着用される場合、そのような衣服の着用者の快適性を増加させる。様々な適切な織及び不織バリア性材料が既知であり、当分野でサージカルガウン、カバーオール、産業用防護衣などの衣服に用いられている。そのような材料は全て、本発明の範囲内にある。
【0081】
衣服を形成するために用いられる材料は、1若しくは複数のボンディング・カーディングされたウェブ、スパンボンド繊維のウェブ、メルトブローン繊維のウェブ、スパンレース繊維のウェブ、他の不織布材料のウェブ、1若しくは複数のニット材料または織物材料、1若しくは複数のフィルム、及びそれらの組合せであり得る。材料は、ポリマーから形成され得、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフルオロカーボン、ポリスチレン、カプロラクタム、エチレンと少なくとも1つのビニルモノマーのコポリマー、エチレンとアクリル酸n−ブチルのコポリマー、セルロース樹脂及びアクリル樹脂、並びにこれらの混合物及び配合物から形成され得る。材料がポリオレフィンから形成されていれば、ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー及びブテンコポリマーであり得る。
【0082】
多層の縫目なしシート材料を接合して縫目なし積層体にし、それを用いて望ましいバリア特性を有するカバーオールを形成することができる。複数の縫目なしシート材料の層を互いに結びつけかつ/またはそのような材料の層を互いの上に形成または堆積させることによって、積層体を形成することができる。例えば、材料は、2つ以上の不織ウェブの積層体であり得る。さらなる例として、材料は、少なくとも1つのスパンボンド繊維ウェブ、少なくとも1つのメルトブローン繊維のウェブ及びこれらの混合物の積層体であり得る。
【0083】
例えば、有用な多層材料は、少なくとも1つのメルトブローン繊維(メルトブローン極細繊維を含み得る)のウェブを少なくとも1つのスパンボンド連続フィラメントウェブと接合することによって作られ得る。本発明の防護カバーオールの製造に有用な例示的な多層の縫目なし材料は、スパンボンド連続フィラメントウェブとメルトブローン繊維(メルトブローン極細繊維を含み得る)のウェブの層同士を接着することによって製作される積層不織布であり、ボンディング・カーディングされたウェブまたは他の不織布も含み得る。
【0084】
スパンボンドウェブから成る第1の外層、メルトブローンウェブから成る中間層、スパンボンドウェブから成る第2の外層を有するような例示的な3層布地は、略語でSMSと呼ばれ得る。そのような布地については、特許文献21、特許文献22、特許文献23に詳細に記載されており、これらの特許は全て、本発明の譲受人であるキンバリークラーク社(Kimberly-Clark Corporation)に譲渡されている。
【0085】
本発明の使い捨て式防護カバーオールの製造に用いることができる例示的な材料は、少なくとも1つの不織ウェブ層を少なくとも1つのフィルム層と接着することによって製作される積層布地である。一般的に、フィルム層は、約0.25ミルないし約5.0ミルの厚さであり得る。例えば、フィルムは、
約0.5ミルないし約3.0ミルの厚さを有することになる。フィルムは、約1.0ミルないし約2.5ミルの厚さを有するのが望ましい。
【0086】
例示的なフィルム層には、ポリマーから形成されたフィルムが含まれ、ポリマーは、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化炭素、ポリスチレン、カプロラクタム、エチレンと少なくとも1つのビニルモノマーのコポリマー、エチレンとアクリル酸n−ブチルのコポリマー、セルロース樹脂及びアクリル樹脂を含み得る。フィルム層がポリオレフィンでできているならば、ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、ブテンコポリマー及び上記の配合物であり得る。
【0087】
本発明に従って、本発明のカバーオール12の縫目なしシート材料は、約15gsm(すなわちグラム毎平方メートル)ないし約300gsmの坪量を有し得る。例えば、縫目なしシート材料は、約20gsmないし約100gsmの坪量を有し得る。材料は、約20gsmないし約75gsmの坪量を有し得ることが望ましい。
【0088】
例えば、材料は、デュポン社タイベック(登録商標)ブランドの高密度ポリエチレン材料など、様々な形のカレンダリング処理された不織布材料から作られ得る。タイベック(登録商標)でできている衣服は、危険な環境での使用または一般的な危険でない産業利用がなされている。危険な環境での使用の例には、水性の酸、塩基、塩及び殺虫剤、除草剤などの特定の液体の飛散からの防護が含まれる。衣服はまた、鉛ダスト、アスベスト、放射汚染された粒子などの有害な乾燥粒子への暴露に対する信頼できるバリアを提供する。危険でない産業利用には、工場、作業場、エンジニアリングプラント、農場及び建設現場での「汚れる仕事」のための衣服の着用を含む。
【0089】
防護物品の静水圧耐性は、一部分において、物品が製作される特定の種類の材料によって決まることになる。カバーオールは、少なくとも約15、17または20ミリバール、最大で約180、187または200ミリバール(それらの間の範囲の組合せを全て含む)の液体静水圧耐性を有するようにデザインされ得る。より一般的には、カバーオールは、約25または30ないし約115ミリバール、好適には約45ないし約110ミリバール、より好適には約50ミリバールないし約95ミリバールの圧力の静水圧耐性を有し得る。
【0090】
カバーオール材料の通気度は、少なくとも約0.056m/min(約2cfm(立方フィート/メートル))ないし最大で約1.316または1.4m/min(約47または50cfm)(それらの間の範囲の組合せを全て含む)の範囲にあり得る。より典型的には、通気度は、約0.14または0.28m/min(約5または10cfm)ないし約1.204または1.26m/min(約43または45cfm)、好適には約0.42、0.476、0.56または0.7m/min(約15、17、20または25cfm)ないし約1.12または1.176m/min(約40または42cfm)の範囲にあり得る。
【0091】
カバーオールは、最大約4700g/m/24時間の水蒸気透過率(MVTR)、より典型的には約2700または3600MVTRないし約4500または4600MVTRを有し得る。防護カバーオールは、0.3〜05ミクロンの粒子サイズの乾燥粒子のバリア侵入に対して約9〜100%の耐性で着用者を防護し得る。
【0092】
カバーオールは、粉塵及び微小粒子(例えば約0.05〜0.10ミクロン以上の範囲のサイズ(例えば特許文献24を参照)または液はねに対するバリアを与えるような材料から作られ得る。カバーオールの材料はまた、不織ウェブの繊維内に局所的な帯電を発生させるようにエレクトレット処理され得る(例えば特許文献25)。例えば、これらの材料は、デラウエア州ウィルミントンにあるイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール社(E. I. DuPont de Nemous)から入手可能なZepel(登録商標)及びZelec(登録商標)などの組成物で処理され得る。
【0093】
エラストマーストリップ80に用い得る様々なエラストマー材料が当分野で知られている。エラストマー材料は、例えば1つの層、複数の層、積層、スパンボンド布、フィルム、メルトブローン布、弾性網、微小孔性のウェブ、ボンディング・カーディングされたウェブ、または発泡体であってエラストマーまたはポリマーの織物または不織布からなるものから構成され得る。エラストマー積層不織布ウェブには、1若しくは複数のギャザー寄せ可能な不織ウェブ、フィルムまたは発泡体に接合された不織布材料が含まれ得る。ストレッチボンディング積層体(SBL)及びネッキングボンディング積層体(NBL)は、エラストマー積層不織布ウェブの例である。エラストマー材料には、キャスト(流延)またはブローされたフィルム、発泡体、または不織布であってポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリオレフィンコポリマー、及びそれらの組合せからなるものが含まれ得る。エラストマー材料には、Vistamaxx(登録商標)(テキサス州ヒューストンにあるエクソンモービル社から入手可能)、VERSIFY(登録商標)(ミシガン州ミッドランドにあるダウ・ケミカル社から入手可能)などの弾性ポリオレフィン、PEBAX(登録商標)エラストマー(ペンシルバニア州フィラデルフィアにあるアトケム社(AtoChem)から入手可能)などのポリエーテルブロックアミド、熱可塑性ポリウレタン樹脂(例えば脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルの両タイプ)、HYTREL(登録商標)エラストマーのコポリエステル(デラウエア州ウィルミントンにあるイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール社から入手可能)、KRATON(登録商標)エラストマー(テキサス州ヒューストンにあるシェルケミカル社(Shell Chemical Company)から入手可能)、またはLYCRA(登録商標)エラストマー(デラウエア州ウィルミントンにあるイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール社から入手可能)を撚糸状に加工したものなど、及びそれらの組合せが含まれ得る。エラストマーストリップ80、82には、機械的処理、印刷処理、加熱処理または化学処理を経てエラストマー特性を有する材料が含まれ得る。例えば、そのような材料は、開口加工、クレープ加工、ネッキングストレッチ加工、加熱活性化、エンボス加工、及びマイクロストレイン加工(micro-strain)され得、かつ、フィルム、ウェブ及び積層体の形であり得る。
【実施例】
【0094】
試験用に本発明の防護カバーオールの一例を作製した(コードA)。カバーオールの材料及びデザインは、ジョージア州ロズウェルにあるキンバリークラーク・プロフェッショナル社(Kimberly-Clark Professional)からKLEENGUARD(登録商標)A30カバーオールとして販売されているものと同じデザインであった。コードA及びBの両者に対してA30デザインの本体に用いた材料は、61g/m(1.8oz/yd)のポリプロピレンSMS材料であった。A30デザインを、図1及び図2に示すようなエラストマーストリップを含むように変更した。ストリップは、76.2ミリメートル幅(3インチ幅)であり、V字形部の角度が130°(カバーオールを平置きの状態で測定した)でカバーオール上に存在していた。
【0095】
コードAに用いられるエラストマー材料を、同様に、特許文献12、特許文献13、特許文献26、特許文献15に教示されているようなネッキングボンディング積層体になるように構成した。外表面をエラストマーフィルムで押し出しコーティングする代わりに、ポリプロピレンスパンボンド材料でできた2つのネッキングされた外表面を2つの外表面層の間のエラストマーフィルム層に熱接合してエラストマー材料を作った。スパンボンドの2つの外表面層は各々、25.4g/m(0.75oz/yd)の開始坪量を有していて、50%ネッキングされて47.5g/m(1.4oz/yd)の最終坪量が得られた。結果的に得られた材料は、約85%の伸びを有していた。
【0096】
エラストマー材料を、縁かがり縫いの縫目を用いて図2に図示されているような本体部分及び脚部分の縁部に接合する際に、その最大伸び付近まで引き延ばした。得られたエラストマーストリップは、カバーオールから力を除いたときに衣服の縫目に沿って約9%縮んだ(すなわち、100mmの材料が、91mmの長さまで縮んだ衣服に縫い付けられていた)。これにより、エラストマーストリップ及びカバーオールは、エラストマーストリップに沿って約10ないし15%伸びることができる(すなわち、100mmのエラストマーストリップが約110〜115mmまで引き伸ばされたカバーオールに組み込まれる)。
【0097】
比較のために、第2の衣服(コードB)を作製した。第2の衣服(コードB)も同様にKLEENGUARD(登録商標)A30カバーオールに準拠していた。コードBカバーオールを、本発明のカバーオール(コードA)のエラストマーストリップと同じ方法で構成されるV字形の挿入部分を含むように変更した。しかし、V字形の挿入部分は、コードAで用いたエラストマー材料とは対照的に、カバーオールの本体を構成する材料と同じ材料でできていた。第2の衣服(コードB)を用いた意図は、第1の衣服(コードA)との直接比較対照としての機能を果たすことができるような現在入手可能なカバーオールに似た衣服を提供するためであった。
【0098】
最後に、競合製品との比較として第3の衣服が試験に加えられた。第3の衣服(コードC)は、デラウエア州ウィルミントンにあるイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール社から入手可能なデュポンTMタイベック(登録商標)カバーオール(品番TY125S)であった。
【0099】
3つの異なる試験法を用いて3つの衣服を試験した。各衣服を、被験者が試験用衣服を着用する前に行ったベースライン測定に対して比較した。次に、そのような差(試験コード対ベースライン)を用いて個々の試験用衣服を比較した。
【0100】
様々な体重及び身長の21人の被験者を、各々3つの試験コードについて試験した。表2は、被験者の体重及び身長分布を説明している。各被験者は、製造業者が勧めるような、被験者のサイズに適したカバーオールを試験した。推奨サイズの中間に属する被験者に対しては、動き易さを確保するために、より大きなサイズのカバーオールを選択した。
【表2】

【0101】
被験者1人につき1試験日当たり1つの衣服コードのみを試験した。与えられた日に試験された実際の衣服コードは、被験者に対して無作為に選んだものであった。各衣服試験日に、各衣服に対して3つの試験プロトコール(壁リーチ、高所リーチ、生産性)全てを行った。毎日、被験者がその日に割り当てられた衣服を着用する前に、各試験に対するベースライン測定を行った。
【0102】
各試験日に、試験の開始前に被験者の準備を行った。各被験者は、支給されたTシャツ及び医療衣下衣を、被験者自身のつま先が覆われかつ踵が覆われた靴及び靴下と共に着用した。試験前に、各被験者は、軽いストレッチ運動を課された。
【0103】
被験者ができる限り肘を真っ直ぐにして左腕の上に右腕を置くことからストレッチを開始し、力を抜く前に5秒間その位置を保持した。被験者は次に同様に右腕の上に左腕を交差させ、力を抜く前に5秒間その位置を保持した。その後、両腕を交差させて保持することを追加で2サイクル行った。被験者は次に、腰の位置で体を前に傾け、腕をできる限り遠くまで前に外向きに伸ばし、5秒間その位置を保持し、力を抜き、毎回もっと遠くに手を伸ばそうと努めて3回繰り返すように指示された。最後に、被験者は、両腕を頭の上に伸ばして腕を天井に向けてできる限り伸ばし、5秒間その位置を保持し、力を抜き、さらに2回繰り返すように指示された。
【0104】
被験者は次に、試験用衣服を着用する前に、ベースラインとして、3つの試験プロトコールをそれぞれ行った。ベースライン試験を行った後、被験者はそのまま試験用カバーオールを着用し、衣服については上まで完全にジッパーを締めた。試験責任者は、試験用衣服の手首カフを被験者の肌にしっかりとテープで貼った。テープで貼った位置は、被験者が腕を体の前に伸ばしたときにカフが自然に被験者の上に当たった箇所であった。その後、被験者は再び3つの試験プロトコール全てを行った。
【0105】
壁リーチ試験:
【0106】
各被験者は、両足を腰幅に開いて壁の前に立った。被験者はそこで腰の位置で体を前に曲げ、指先が壁に触れるように腕を前に伸ばし、腕は肩と同じ高さに保持した。被験者が前かがみになったときに壁に触れることができるが壁に圧力を加えるほどには近づかない程度に壁との距離を調整しながら、被験者は前または後ろに移動させられた。壁からちょうどよい距離だけ離れた位置で、被験者のつま先がある床の部分にマークが付けられた。次に被験者は1.36kg(3ポンド)の重りが与えられ、再び両手で重りを掴みながら壁に向かって腕を伸ばした。壁に面した重りの先端から壁までの距離をベースライン測定として記録した。
【0107】
試験用カバーオールを着用した後、被験者は、以前に付けた床のマークのところにつま先が来るようにして再び壁の前に立たされた。次に被験者には再び1.36kgの重りが与えられ、被験者はそれを両手で握り、壁に向かって腕を伸ばし、腕を肩と同じ高さにして腰の位置で体を曲げた。被験者は、手首が強く引かれるかまたは引っ張られたら、あるいはテープが手首からとれ始めたら、それ以上は腕を伸ばさないことを求められた。それから、壁と重りの先端の間の距離を記録した。
【0108】
高所リーチ試験:
【0109】
各被験者は、前頭部が壁に触れるように、かつ両足のつま先をおおよそ腰幅に開いてつま先が壁に触れるようにして、壁にぴったりくっついて立った。被験者は、踵を床から離して上げずに、利き手を壁のできるだけ高いところまで伸ばした。そのとき最高到達位置を壁上にマークし、ベースライン測定として記録した。
【0110】
被験者が試験用衣服を着用した後、被験者は高所リーチ手順を繰り返した。被験者は、手首が強く引かれるかまたは引っ張られたら、あるいはテープが手首からとれ始めたら、それ以上は腕を伸ばさないことを求められた。それから、試験用カバーオールを着用しているときの到達位置からベースラインマークまでの距離を記録した。
【0111】
生産性試験:
【0112】
生産性試験は、被験者が一連の肉体作業を完了するのに必要な時間を測定した。被験者が試験用衣服を着用している間の必要時間を、試験用衣服を着用していないときに作業を完了するのに必要な(ベースライン)時間と比較した。
【0113】
各被験者は、つま先が棚ユニットの底部に触れた状態で棚ユニットの前に立つことによってベースラインを設定した。棚ユニットは、床よりも1.74m(68.5インチ)上にある上段棚板と、床よりも1.34m(52.75インチ)上にある下段棚板とを有していた。被験者は、重りの付いた塗料缶(1.36kgのダンベルが中に入っている塗料缶)の取っ手を持ち、上段棚板の上でできる限り奥まで届くように腕を伸ばした。その状態で缶の先端がくる棚板上の位置にマークを付けた。試験中、被験者は、塗料缶を棚板上でこの線より後ろに置くことになった。
【0114】
6個の塗料缶を床の上にセットした。各缶には1.36kgのダンベルが入れられ、各缶にはしっかりと蓋が被せられていた。棚ユニットの底部から1.63m(64インチ)離れたところに缶を置いた。缶の取っ手を、下に下ろした状態で、被験者の利き手と同じ缶の側に向くようにして置いた。
【0115】
被験者は利き手でない方の手を背中の後ろに置いた状態で試験を開始した。被験者が第1の塗料缶を持ち上げたときにタイマーをスタートさせた。被験者は、利き手を用いて、第1の塗料缶を取っ手を持って持ち上げ、それを棚ユニットまで運び、上段棚板の上に、棚板上の配置マークの後ろに置いた。被験者はその後も残りの缶を同様に1回に1缶持ち上げて棚板に置き、開始位置まで戻って各缶を取って来続けた。
【0116】
被験者は次に、蓋を取り外して缶の下の棚板に置き、各々を互いに隣接して下段棚板の上に置き、左から右へ動かした。被験者は次に、各缶を上段棚板から床上の開始位置まで、1回に1缶、番号付けされた順序で戻した。次に、被験者は再び6個の缶を、1回に1缶、上段棚板に戻し、各缶蓋をしっかりと適切な缶上に戻した。最後に、被験者は、蓋をした缶を床上の適切な開始位置に戻した。第1のサイクルは、床の上に6つ目の缶が置かれたときに完了する。被験者はその次に第2のサイクルのステップを繰り返した。第1のサイクルの終わりに時間を記録し、第2のサイクルの終わりにタイマーを停止させた。試験サイクルの間中、試験責任者は、被験者にペースを保つように働きかけ、一連の行為の間中、被験者を誘導するのに一役買った。
【0117】
第1及び第2のサイクルに対して、試験用カバーオールを着用する前に被験者が生産性試験を行うベースライン時間を記録した。被験者は後で、試験用カバーオールを着用しながら試験を繰り返した。
【0118】
3つの試験の結果を下表3に示す。壁リーチデータは、カバーオールを着用する前(ベースライン)の壁リーチ試験と、試験用カバーオールを着用している間の同試験の測定結果との差として報告され、その差は小さいほど望ましい。同様に、高所リーチデータは、カバーオールを着用する前(ベースライン)の高所リーチ試験と、試験用カバーオールを着用している間の同試験の測定結果との差として報告され、その差は小さいほど望ましい。最後に、生産性データが、試験用カバーオールを着用している間に作業に掛かった時間と、カバーオールなしで作業を完了するのに掛かった時間(秒)との差として報告される。生産性の差は、生産性試験の第1のサイクル及び第2のサイクルの両方に対して報告され、その差は小さいほど望ましい。
【表3】

【0119】
表3の結果を見れば分かるように、本発明のカバーオール(コードA)は、どの測定結果においても、エラストマーストリップのない同一カバーオール(コードB)よりも方向性の観点で良好な特性を示した。本発明のカバーオールはまた、壁リーチ試験及び生産性試験の両方で競合比較カバーオール(コードC)よりも方向性の観点で良好な特性を示した。
【0120】
競合比較カバーオールは、高所リーチ試験において本発明のカバーオールよりも方向性の観点で良好な特性を示した。そのような結果は、本発明のカバーオールには存在しないが競合比較カバーオールの臀部及び胴部に存在するような、より多くの空間に起因する。
【0121】
そのような試験の結果は、防護カバーオールに存在する或る角度をなすエラストマーストリップが、そのような角度をなすエラストマーストリップのないカバーオールに比べて、着用者の動作能力を向上させることを示している。そのような角度をなすエラストマーストリップは、より大きなエラストマーパネルを用いることなく、多方向への伸び及び運動を許容する。さらに、或る角度をなすエラストマーストリップは、衣服上の様々な場所に配置された複数の個々の弾性パネルとは対照的に、カバーオールにおいて応力がかけられる複数の部分に同時に関与するような、伸び、曲げ及び他の動作に必要な空間を提供する。
【0122】
本発明について、例として、一般的にも詳細にも説明してきた。当業者は、本発明が、開示されている特定の実施形態に限定されるものではないことを理解する。以下の請求項または均等要素を含む同等のものによって画定される本発明の範囲から逸脱することなく、一般概念の変更及び変形がなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア性布地から形成される使い捨て式防護衣であって、
正面、背面及び上部部分を含み、首開口部を有する本体部分と、
前記本体部分から延出する右脚部及び左脚部と、
前記上部部分から延出する右袖部及び左袖部と、
少なくとも1つのエラストマーストリップとを含み、
前記右袖部及び左袖部が共に上縁及び下側を含み、
前記左袖部の前記下側が前記上部部分と接する部分に左脇下部が形成され、前記右袖部の前記下側が前記上部部分と接する部分に右脇下部が形成され、
前記右袖部及び左脚部が前記本体部分と接する部分に股部が形成され、
前記少なくとも1つのエラストマーストリップが、前記本体部分の前記背面上に構成され、かつ前記上部部分を前記両脚部に接合するように適合され、
前記少なくとも1つのエラストマーストリップが、V字形部を形成するように構成され、前記V字形部が、腰背部の一点に位置する先端部と、前記先端部から前記右脇下部に向かって延在する第1の延在部と、前記先端部から前記左脇下部に向かって延在する第2の延在部とを含むことを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記第1の延在部が、前記右脇下部まで、前記右袖部の前記下側に沿って延在し、前記第2の延在部が、前記左脇下部まで、前記左袖部の前記下側に沿って延在することを特徴とする請求項1の衣服。
【請求項3】
前記第1の延在部が、前記右袖部の前記背面に沿って延在し、前記第2の延在部が、前記左袖部の前記背面に沿って延在することを特徴とする請求項1の衣服。
【請求項4】
前記第1の延在部が、前記右袖部の前記上縁に沿って延在し、前記第2の延在部が、前記左袖部の前記上縁に沿って延在することを特徴とする請求項1の衣服。
【請求項5】
前記第1の延在部が、前記右袖部の前記下側に沿って右手首まで延在し、前記第2の延在部が、前記左袖部の前記下側に沿って前記左手首まで延在することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの衣服。
【請求項6】
前記衣服が、平置きの状態のとき、第1の延在部と第2の延在部の間に形成される角度が、83°ないし155°、好適には90°ないし150°、好適には95°ないし130°であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの衣服。
【請求項7】
前記少なくとも1つのエラストマーストリップが、エラストマー材料の連続ストリップであり、前記ストリップを横断する縫目がないことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの衣服。
【請求項8】
前記少なくとも1つのエラストマーストリップが、一方向伸縮性布地を有するエラストマー材料を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの衣服。
【請求項9】
前記一方向伸縮性布地が、前記首開口部から前記股部への線に沿って概ね延在する方向と平行に整合されていることを特徴とする請求項8の衣服。
【請求項10】
前記一方向伸縮性布地が、前記少なくとも1つのエラストマーストリップが前記衣服内で方向付けされているような方向と平行に整合されていることを特徴とする請求項8の衣服。
【請求項11】
前記少なくとも1つのエラストマーストリップが、多方向伸縮性布地を有するエラストマー材料を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの衣服。
【請求項12】
前記少なくとも1つのエラストマーストリップが、第1のエラストマーストリップ及び第2のエラストマーストリップを含むことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかの衣服。
【請求項13】
前記背面の前記腰背部の一点上に構成されたエラストマーパネルをさらに含み、
第1のエラストマーストリップが、前記エラストマーパネルから上向きに前記左脇下部まで、かつ前記左脇下部から前記左袖部の前記下側に沿って延在するように構成され、前記第1のエラストマーストリップを横断する縫目がなく、
前記第2のエラストマーストリップが、上向きに前記エラストマーパネルから前記右脇下部まで、かつ前記右脇下部から前記右袖部の前記下側に沿って延在し、前記第2のエラストマーストリップを横断する縫目がないことを特徴とする請求項12の衣服。
【請求項14】
前記エラストマーパネルが、一方向伸縮性布地を含むエラストマー材料を含み、前記のエラストマーパネルの前記一方向伸縮性布地が、前記少なくとも1つのエラストマーストリップと同じ伸縮方向に沿って方向付けされていることを特徴とする請求項13の衣服。
【請求項15】
前記エラストマーパネルが、一方向伸縮性布地を含むエラストマー材料を含み、前記エラストマーパネルの前記一方向伸縮性布地が、前記少なくとも1つのエラストマーストリップの前記伸縮方向の向きと異なる方向に沿って方向付けされていることを特徴とする請求項13の衣服。
【請求項16】
前記エラストマーパネルが、多方向伸縮性エラストマー材料を含むことを特徴とする請求項13の衣服。
【請求項17】
前記少なくとも1つのエラストマーストリップが、50.8ミリメートルないし152.4ミリメートル幅であり、25%ないし400%の弾性伸びを有し、好適には50.8ミリメートルないし101.6ミリメートル幅であることを特徴とする請求項1ないし16のいずれかの衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−525181(P2010−525181A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503628(P2010−503628)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050615
【国際公開番号】WO2008/125993
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】