説明

戦闘車両のミサイル攻撃回避方法及び装置

【目的】 戦闘車両が赤外線センサを有するミサイルから攻撃されないようにする。
【構成】 戦闘車両10の排気部10aには、排気部10aからの高温の排気ガスを大気中に排出可能な多数の排気穴12aが形成された排気部材12が取り付けられている。排気部材の排気穴から排出された高温の排気ガスは、排気ガス拡散装置14・16によって大気と混合されることにより強制的に大気中に拡散可能である。これにより、戦闘車両の排気部から放射される赤外線の量を従来よりも少なくすることができ、ミサイルの赤外線センサに感知されないようにすることが可能である。なお、排気部材が中空ファン形状に形成されるとともにモータと連結される構成として、排気部材が排気ガス拡散装置のファンを兼用するようにすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、戦闘車両のミサイル攻撃回避方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の戦車、装甲車などの戦闘車両が、赤外線センサを有するミサイルから攻撃されるのを回避する方法としては、戦闘車両の周辺に欺まん用の熱源を配置しておき、ミサイルに欺まん用の熱源を攻撃させるようにしたものがある。これにより戦闘車両が赤外線センサを有するミサイルから攻撃される機会を少なくすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような従来の戦闘車両における赤外線センサを有するミサイルからの攻撃回避方法には、戦闘車両が排気熱を排出する(赤外線放射源である)ことに変りはないため、ミサイルの赤外線センサに排気熱を感知されて戦闘車両がミサイルから攻撃されることがあるという問題点があった。本発明はこのような課題を解決することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、戦闘車両の排気部から排出された高温の排気ガスを強制的に大気と混合しながら空中に放出することにより上記課題を解決する。すなわち本発明の戦闘車両のミサイル攻撃回避方法は、戦闘車両から排出される高温の排気ガスを大気と混合させ強制的に拡散させながら空中に放出するようにしている。また、上記方法を実施するための装置は、戦闘車両(10)の排気部(10a)に接続されるとともに排気部(10a)からの高温の排気ガスを大気中に排出可能な多数の排気穴(12a)が形成された排気部材(12)と、これの排気穴(12a)から排出された高温の排気ガスを大気と混合させ強制的に大気中に拡散させる排気ガス拡散装置(14・16)と、を有している。なお、上記排気ガス拡散装置(14・16)が、ファン(16)と、これを回転駆動するモータ(14)と、から構成されるようにするとよい。また、上記排気部材が、複数の中空状の翼部(20a)と、これらと一体的に接続されるとともに開口端部が形成された筒部(20b)と、を有しており、筒部(20b)が上記戦闘車両(10)に回転可能に支持されるとともにこれの開口端部が上記戦闘車両(10)の排気部(10a)と相対回転可能に接続されており、上記排気穴は翼部(20a)に形成されており、排気部材(20)が上記ファンを構成しているようにするとよい。さらに、上記排気部材が、中空円板状に形成されるとともにこれの円周面上に多数の取付穴(36a1)が形成された通路部(36a)と、これと互いの通路が連通するように一端部が取り付けられた筒部(36b)と、通路部(36a)の取付穴(36a1)にそれぞれ取り付けられるとともに排気穴(38a)が形成された翼部(38)と、を有しており、筒部(36b)が上記戦闘車両(10)に回転可能に支持されるとともにこれの開口端部が上記戦闘車両(10)の排気部(10a)と相対回転可能に接続されており、上記排気穴は翼部(38)に形成されており、排気部材(36)が上記ファンを構成するようにすることもできる。また、上記排気部材が、二重管状に形成されており、二重管の外管側通路(40b)が戦闘車両(10)の排気部(10a)と連通されるとともに排気穴(40a)が内管に外管側通路(40b)と内管側通路(40c)とを連通させるように形成されており、上記ファンは内管側通路(40c)内に配置されるようにすることもできる。なお、かっこ内の符号は実施例の対応する部材を示す。
【0005】
【作用】戦闘車両のエンジンなどから発生した高温の排気ガスは、排気穴から強制的に拡散されながら空中に放出される。これにより排気穴から排出される排気ガスの温度を従来よりも著しく低くすることができる。すなわち、戦闘車両の排気穴から放射される赤外線の量を著しく少なくすることができる。赤外線センサを有するミサイルは、飛しょう中赤外線を放射している物体を検知しようとするが、戦闘車両の排気穴から放射される赤外線の量が従来よりも著しく少ないので、戦闘車両の排気穴から赤外線を検知することができず、見過ごしてしまうことになる。これにより戦闘車両が赤外線センサを有するミサイルから攻撃されないようにすることができる。
【0006】
【実施例】図1に本発明の第1実施例を示す。戦闘車両10には、エンジンからの排気を排出する排気部10aが形成されている。戦闘車両10には、これの排気部10aに排気部材12が取り付けられている。図2に示すように、排気部材12には、多数の排気穴12aが形成されている。戦闘車両10の排気部10aから排出された高温の排気ガスは、排気部材12の排気穴12aから大気に放出可能である。戦闘車両10には、排気部材12と対向する位置にモータ14が取り付けられている。モータ14にはファン16が取り付けられている。モータ14及びファン16によって排気ガス拡散装置が構成されている。排気ガス拡散装置は、モータ14を駆動してファン16を回転させることにより、排気部材12の排気穴12aから大気に放出された高温の排気ガスを大気と混合させ強制的に大気中に拡散させることが可能である。
【0007】次に、この第1実施例の作用を説明する。戦闘車両10は、車両を停車した状態で図示してないエンジンを駆動して、これの動力によって図示してない砲側モータを駆動させることにより、図示してない砲のふ仰・旋回・給弾・装てんなどの動作を行わせるようにしている。したがって戦闘車両10の排気部10aから高温の排気ガスが排気部材12を通ってこれの排気穴12aから大気中に放出される。この際、排気ガス拡散装置を駆動することにより、高温の排気ガスは強制的に大気と混合されながら大気中に拡散・放出されることになる。これにより、排気部材12の排気穴12aから排出される排気ガスの温度が従来よりも著しく低いものとされる。すなわち、戦闘車両10から放射される赤外線の量が少ないものとされる。したがって、相手方から赤外線センサを有するミサイルが発射された場合であっても、ミサイルの赤外線センサは、戦闘車両10から放射される赤外線を検知することができず、これを見過ごしてしまう。これにより、戦闘車両10がミサイル攻撃を受けないで済むようになる。
【0008】次に、図3に本発明の第2実施例を示す。この第2実施例においては、排気部材20が、複数の中空状の翼部20aと、これと一体的に接合した筒状の筒部20bとから構成されている。すなわち、排気部材20は中空のファン状に形成されている。排気部材20は、これの筒部20bが軸受22を介して回転可能に戦闘車両10に支持されている。筒部20bの開放端部は、後述するようにシールカップリング26を介して戦闘車両10の排気部10aと相対回転可能に接続されている。翼部20aには多数の排気穴20cがそれぞれ形成されている。これにより、戦闘車両10の排気部10aは排気部材20の筒部20b及び翼部20aの排気穴20cを介して大気に開放可能である。排気部材20には、これの筒部20bにプーリ24が取り付けられており、また、筒部20bには、これの図中右端側の開口部にシールカップリング26の一端部が接続されている。シールカップリング26の他端部は、戦闘車両10の排気部10aとはめ合わされている。シールカップリング26は、筒部20bと一体的に回転可能であるとともに、戦闘車両10の排気部10aに対して排気ガスをシール可能かつ相対回転可能である。また、戦闘車両10には、モータ28が取り付けられており、これにプーリ30が取り付けられている。プーリ24及び30間には、ベルト32が掛け渡されている。モータ28、プーリ30、ベルト32、プーリ24、軸受22、排気部材20などによって排気ガス拡散装置が構成されている。モータ28を駆動することによりベルト32などを介して排気部材20を回転可能である。これにより、排気部材20は、翼部20aの図中右側の大気を吸引して、排気穴20cから排出された高温の排気ガスを大気と混合させることにより、強制的に拡散させることが可能である。
【0009】次に、この第2実施例の作用を説明する。戦闘車両10の排気部10aから排気部材20の排気穴20cを通って大気に排出された高温の排気ガスは、排気ガス拡散装置によって大気と混合されることにより、強制的に大気中に拡散されることになる。すなわち、モータ28を駆動してベルト32などを介して排気部材20を回転させることにより、排気部材20の翼部20aの後方から大気を吸引して前方に送り出す。したがって、排気ガスは大気と混合されながら強制的に大気中に拡散されることになる。これにより、排気部材20から放出される排気ガスの温度を従来よりも著しく低くすることができ、相手方のミサイルの赤外線センサに感知されないようにすることができる。
【0010】次に、図4に本発明の第3実施例を示す。排気部材36は、中空円板状の通路部36a、これに互いの通路が連通するように形成された筒部36b、及び翼部38から構成されており、通路部36aには、これの円周面上ラジアル方向に多数の取付穴36a1が形成されている。通路部36aには、これの取付穴36a1にそれぞれ翼部38が取り付けられている。翼部38には、通路部36aの通路と連通する排気穴38aが形成されている。通路部36aは、これの開放端部が戦闘車両の排気部(図4には示されていない)に接続されている。すなわち、排気部材36は、ファンとして構成されている。戦闘車両の排気部は、排気部材36の筒部36b、通路部36a、及び翼部材38の排気穴38aを通して大気に開放されている。その他の構成は第2実施例のものと同様である。
【0011】次に、この第3実施例の作用を説明する。戦闘車両の排気部から排出された高温の排気ガスが、排気部材36の筒部36b及び通路部36aの各通路を通り、翼部38の排気穴38aを通って大気に排出されるが、この際、翼部38が筒部36bの軸心を回転中心として回転されることによって大気が吸引されて排気ガスと混合されることによって、高温の排気ガスが強制的に大気中に拡散されることになる。
【0012】次に、図5に本発明の第4実施例を示す。この第4実施例においては、排気部材40は二重管状に形成されており、二重管の外管側通路40bの一端部が図示してない戦闘車両の排気部に接続されている。内管には、これの内周面に多数の排気穴40aが、外管側通路40bと内管側通路40cとを連通するように形成されている。二重管の内管側通路40c内には、モータ42が配置されている。モータ42は、他の実施例の場合と同様に戦闘車両に取り付けられている。モータ42にはファン44が取り付けられている。モータ42及びファン44によって排気ガス拡散装置が構成されている。
【0013】この第4実施例の作用は、モータ42を駆動してファン44を回転させて排気部材40の内管側通路40cに負圧を生じさせることにより、大気を内管側通路40cに吸い込むとともに、戦闘車両の排気部を通って排気部材40の排気穴40aから排気ガスを吸引して大気と混合することにより高温の排気ガスを強制的に大気に拡散させる点を除けば、第1実施例のものと同様である。
【0014】なお、上記第1実施例の説明においては、排気部材12として複数の筒状短冊形の分岐部を形成させるとともに、各分岐部に多数の排気穴12aを形成するものとしたが、このような形状に限定されるわけではなく、たとえば渦巻状の通路を形成した排気部材とするとともに、これに通路とそれぞれ連通する多数の排気穴を設けるようにすることもできる。また上記第2実施例の説明においては、排気部材20をベルト式動力伝達機構24・32・30を介してモータ28と連結するものとしたが、モータ28をシャフトレス形式のものとして、排気部材20の筒部20bをモータ28の回転部に貫通固定するようにすれば、排気部材20とモータ28とを直結することもできる。
【0015】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば戦闘車両が赤外線センサを有するミサイルから攻撃されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す図である。
【図2】図1の矢印2方向から見た図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す図である。
【図4】本発明の第3実施例を示す図である。
【図5】本発明の第4実施例を示す図である。
【符号の説明】
10 戦闘車両
10a 排気部
12 排気部材
12a 排気穴
14 モータ(排気ガス拡散装置)
16 ファン(排気ガス拡散装置)
20 排気部材(排気ガス拡散装置)
20a 排気穴
22 軸受
24 プーリ
28 モータ
30 プーリ
32 ベルト
36 排気部材(排気ガス拡散装置)
38 翼部(排気ガス拡散装置)
38a 排気穴
40 排気部材
40a 排気穴
42 モータ(排気ガス拡散装置)
44 ファン(排気ガス拡散装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 戦闘車両が赤外線センサを有するミサイルによる攻撃を回避する方法であって、戦闘車両の排気穴から排出される高温の排気ガスを大気と混合させ強制的に拡散させながら大気中に放出させることを特徴とする戦闘車両のミサイル攻撃回避方法。
【請求項2】 戦闘車両が赤外線センサを有するミサイルによって攻撃されることを回避するための装置であって、戦闘車両(10)の排気部(10a)に接続されるとともに排気部(10a)からの高温の排気ガスを大気中に排出可能な多数の排気穴(12a)が形成された排気部材(12)と、これの排気穴(12a)から排出された高温の排気ガスを大気と混合させ強制的に大気中に拡散させる排気ガス拡散装置(14・16)と、を有することを特徴とする戦闘車両のミサイル攻撃回避装置。
【請求項3】 上記排気ガス拡散装置(14・16)が、ファン(16)と、これを回転駆動するモータ(14)と、から構成されている請求項2記載の戦闘車両のミサイル攻撃回避装置。
【請求項4】 上記排気部材が、複数の中空状の翼部(20a)と、これらと一体的に接続されるとともに開口端部が形成された筒部(20b)と、を有しており、筒部(20b)が上記戦闘車両(10)に回転可能に支持されるとともにこれの開口端部が上記戦闘車両(10)の排気部(10a)と相対回転可能に接続されており、上記排気穴は翼部(20a)に形成されており、排気部材(20)が上記ファンを構成している請求項3記載の戦闘車両のミサイル攻撃回避装置。
【請求項5】 上記排気部材が、中空円板状に形成されるとともにこれの円周面上に多数の取付穴(36a1)が形成された通路部(36a)と、これと互いの通路が連通するように一端部が取り付けられた筒部(36b)と、通路部(36a)の取付穴(36a1)にそれぞれ取り付けられるとともに排気穴(38a)が形成された翼部(38)と、を有しており、筒部(36b)が上記戦闘車両(10)に回転可能に支持されるとともにこれの開口端部が上記戦闘車両(10)の排気部(10a)と相対回転可能に接続されており、上記排気穴は翼部(38)に形成されており、排気部材(36)が上記ファンを構成している請求項3記載の戦闘車両のミサイル攻撃回避装置。
【請求項6】 上記排気部材が、二重管状に形成されており、二重管の外管側通路(40b)が戦闘車両(10)の排気部(10a)と連通されるとともに排気穴(40a)が内管に外管側通路(40b)と内管側通路(40c)とを連通させるように形成されており、上記ファンは内管側通路(40c)内に配置されている請求項3記載の戦闘車両のミサイル攻撃回避装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平5−322488
【公開日】平成5年(1993)12月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−157450
【出願日】平成4年(1992)5月25日
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)