説明

戸当たり装置

【課題】従来の不都合を伴うことなく、従来と同等もしくはそれ以上の戸当たり性能(停止性能)を保有しながら、部品点数を少なく構成できる安価かつ簡易な戸当たり装置を提供する。
【解決手段】本発明の戸当たり装置は、軸体と、軸体上に略同心状に装着されて、一方側と軸体とが嵌合し、他方側と軸体とが環状の遊び空間を画定して戸当たり時に前記嵌合部分を略支点にして傾動変形し得る、弾性円筒体と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開き戸(折れ戸等を含む)を所定位置に停止させる戸当たり装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、開き戸を定位置に停止させる戸当たり装置として、様々なものが提案されている。たとえば、特許文献1には、図8に示すような円錐面(斜面)を有する緩衝体83から成る戸当たり装置81が提案されている。これによれば、開き戸Dの下端縁部が常に緩衝体83の斜面に当接(衝突)するので、開き戸Dの戸表面を傷つけないで済む。
【0003】
しかしながら、特許文献1の戸当たり装置81の場合、戸当たり時に開き戸Dを持ち上げる方向(上方向)の無理な力が発生し易く、実用上好ましくない。また、基本的に円錐状のものに限られるというデザイン上の制約がある。
【0004】
これを解決するため、特許文献2には、図9に示すような内部に収容したコイルバネCで支持される緩衝筒93から成る戸当たり装置91が提案されている。
特許文献2の戸当たり装置91によれば、上述したような上方向の無理な力の発生を或る程度抑制できそうである。
【特許文献1】特許第2958300号公報
【特許文献2】特許第4024281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の戸当たり装置91の場合、緩衝筒93に加えてコイルバネCも使用するので、製造コストおよび組立コストの上昇を招き易い。また、戸当たり状態からの解放時等に、無用な揺れ動きが続き易く、これを避けるためにコイルバネCを強くすると今度は開き戸に衝撃ないし損傷を与えることになるといった相反する問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の不都合を伴うことなく、従来と同等もしくはそれ以上の戸当たり性能(停止性能)を保有しながら、部品点数を少なく構成できる安価かつ簡易な戸当たり装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の戸当たり装置の第1態様は、軸体と、軸体上に略同心状に装着されて、一方側と軸体とが嵌合し、他方側と軸体とが環状の遊び空間を画定して戸当たり時に前記嵌合部分を略支点にして傾動変形し得る、弾性円筒体と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2態様は、第1態様において、床、天井、側壁等の支持部に軸体を固定するための固定構造をさらに含み、前記固定構造は、軸体に備えられるアンカー部材と、アンカー部材に打ち込むことによりアンカー部材の拡張部を広げるアンカー心棒と、を含むことを特徴とする。
本発明の第3態様は、第2態様において、アンカー部材は、軸体とは別体で形成されることを特徴とする。
本発明の第4態様は、第2態様において、アンカー部材は、軸体と一体形成されることを特徴とする。
本発明の第5態様は、第2〜4態様のいずれか1つにおいて、固定構造は、軸体に備えられ、ネジ部品によって前記支持面に固定される取り付け部材を含むことを特徴とする。
本発明の第6態様は、第2〜5態様のいずれか1つにおいて、円筒体は、軸体と嵌合する小径穴部と、遊び空間を画定する大径穴部と、を含み、対応する軸体部の各々は、実質上同一径を有することを特徴とする。
本発明の第7態様は、第2〜5態様のいずれか1つにおいて、軸体は、円筒体と嵌合する大径軸部と、遊び空間を画定する小径軸部と、を含み、対応する円筒体穴部の各々は、実質上同一径を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、戸当たり時に無理な力を及ぼすことのない停止性能(戸当たり性能)を得ることができる。また、安価かつ簡易に装置を構成することができる。
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点(効果)については、本発明の実施形態の説明および図面から当業者にとって明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の複数の実施形態を説明するが、本発明自体はそれらの実施形態に何ら限定されないことは言うまでもない。
【0011】
図1〜3を参照すると、本発明の第1実施形態の戸当たり装置1は、開き戸Dの下端縁部に当接して、開き戸Dの衝撃を緩和させつつ、開き戸Dを所定位置に停止させると共に、当接時に開き戸Dに作用し易い上方向(持ち上げ方向)の力を低減させる。
【0012】
具体的には、本第1実施形態の戸当たり装置1は、図3から理解され得るように、上端に大径のフランジ部3aを備えた円柱状の軸体3と、軸体3の下端(先端)中央に挿入(および嵌合もしくは締結)される細長いアンカー部材5と、アンカー部材5の中央を貫通するようにセットされる釘状のアンカー心棒7と、軸体3が中央を貫通する大径の円筒体9と、を含んで略構成される。
【0013】
アンカー部材5は、先端(下端)に3〜5本程度のすり割り溝が形成されて成る拡張部5aを有し、床FL(例えば、コンクリート)に空けた下穴にアンカー部材5を挿入して、アンカー心棒7を打ち込むことにより、この拡張部5aが広がって下穴壁面に食い込んで床FLの床面に取りつく(図3A)。
【0014】
円筒体9は、弾性を有するように、たとえば、ゴム製材料から形成され、中央の長手中心線に沿って、下端側(先端側)の小径穴部9aと、これに繋がった上端側の大径穴部9bと、を有する。図3Bに示すように、床面に取りつけたアンカー部材5にめがけて装着される。
【0015】
軸体3は、図3Cに示すように、アンカー部材5および円筒体9にめがけて装着される。この際、軸体3は、円筒体9の小径穴部9aに対しては、隙間嵌め、好ましくは、締まり嵌めで嵌合し、円筒体9の大径穴部9bに対しては、両者の間に所定の大きさの環状の隙間(遊び空間)が画定されるように同心状に配置される。軸体3とアンカー部材5とは、詳細を図示しないが、アンカー部材5の上端外面の雄ネジと軸体3の下端内部の雌ネジとの螺合によって、締結固定される。尤も、固定形式はこれに限られないことは言うまでもない。
【0016】
軸体3の上側のフランジ部3aは、好ましくは、円筒体9が最も傾動(後述)した際に円筒体9の大径穴部9bが露出しない程度に、しかしながら、その際に開き戸Dに物理的に干渉しない程度に、円筒体9の上面を覆う適切な外径を有する。
【0017】
以上の構成を有する本第1実施形態にあっては、開き戸Dが開いて、図1のように軸体3が床面に固定された戸当たり装置1に対して当たった際(戸当たり時)には、円筒体9の小径穴部9aと軸体3との嵌合部分を略支点にして円筒体9が弾性的に傾動変形しながら開き戸Dの動きを制動して、図3に示すように開き戸Dを所定位置に停止させることができる。
【0018】
図示しないが、開き戸Dが閉じる際には、円筒体9は、自己の弾性によって、図1に示す元の状態に復帰することができる。
【0019】
以上のように、本第1実施形態の戸当たり装置1によれば、開き戸Dの下端縁部に係合(当接)するので、開き戸Dに特に損傷を与えずに済み、そして、確実に開き戸を停止させることができる。また、開き戸Dに傾斜面がいきなり当接するような従来の構造と比較して、開き戸を持ち上げるような上向きの力の発生を相当抑制することができる。しかも、従来構造と比較して、構造が比較的簡単であり、部品点数を低減できるので、非常に実用的・経済的である。
なお、本実施形態(および下記実施形態)に係る装置の設置時(施工時)においては、開き戸Dの下端縁部の高さについて、開き戸Dの下端縁部が円筒体3の大径穴部の高さ部分に適切に当接するように確認・調節することが好ましい。
【0020】
本第1実施形態においては、軸体3とアンカー部材5とが別個に形成され、その後に軸体3内にアンカー部材5が挿入(締結)されて固定されるが、この構成に代えて、図4に示すように、軸体とアンカー部材とを一体形成(たとえば、金属棒の削り出し加工や鋳造により)したような軸体3’(単一部品)を採用することができる。
【0021】
次に、本発明の第2実施形態の戸当たり装置11について、図5を参照して説明するが、分かり易いように、上記第1実施形態の構造と同一ないし共通する部品・部分については、同一の参照符号を付して、その説明を適宜省略し、主として異なる点について詳細に説明する。後述する他の実施形態の説明についても同様である。
【0022】
本第2実施形態においては、上記第1実施形態と比較して、戸当たり装置を床面に固定する構造が異なる。すなわち、本第2実施形態の戸当たり装置11は、軸体13の下端が、たとえば矩形板状または円板状の取り付けフランジ13aを有し、このフランジ13aを床面に、たとえばネジSで留めることにより固定される。軸体13の上端には、円板状のナット15が螺着され、円筒体9が傾動可能な状態に拘束される。
【0023】
次に、本発明の第3実施形態の戸当たり装置21について、図6を参照して簡潔に説明する。本第3実施形態においては、上記第1および第2実施形態と比較して、先ず戸当たり装置が床面ではなく鉛直な壁面に固定される点で異なる。すなわち、本実施形態の戸当たり装置21は、L字状断面の取り付けブラケット25の一片部を、たとえばネジSで留めることにより壁面に固定される。取り付けブラケット25の他片部(下面)には、円筒体9を傾動可能な状態に拘束する軸体23が螺着される。
【0024】
最後に、本発明の第4実施形態の戸当たり装置31について、図7を参照して簡潔に説明する。本第4実施形態においては、上記第1実施形態の軸体と円筒体の内部関係を逆にしたような構造を有する。すなわち、円筒体39は、段の無いストレートの穴部39aを有し、代わりに、軸体33が、下端側(先端側)の大径軸部33aと、これに繋がった上端側の小径軸部33bと、を有する。円筒体39と(軸体33の)小径軸部33bとの間には、上記第1〜第3実施形態と同様に、環状の隙間(遊び空間)が画定される。
【0025】
したがって、円筒体39は、この環状の遊び空間が存在するので、前述したと同様に戸当たり時に前記嵌合部分を略支点にして傾動変形することができる。また、各実施形態において傾動を円滑にするために、円筒体の外面の下端側に脆弱部を設ける、たとえば、大きさや形状を考慮した段部や切欠きを設けることにより対応することができる。
【0026】
本発明は、上述した幾つかの実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内、すなわち、特許請求の範囲に記載された範囲内で、各種の改変・変形等を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態の戸当たり装置の断面側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の戸当たり装置の作動状態を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態の戸当たり装置の設置の各段階を示す図であって、Aは床面に取りつける前のアンカー部材、Bは装着前の円筒体、および、装着前の軸体をそれぞれ示す。
【図4】軸体とアンカー部材とを一体形成した部品の断面側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の戸当たり装置の断面側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態の戸当たり装置の断面側面図である。
【図7】本発明の第4実施形態の戸当たり装置の断面側面図である。
【図8】従来の戸当たり装置の一例を示す側面図である。
【図9】従来の別の戸当たり装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1、11、21、31 戸当たり装置
3、13、23、33 軸体
3a フランジ部
5 アンカー部材
5a 拡張部
7 アンカー心棒
9、39 円筒体
9a 小径穴部
9b 大径穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、
軸体上に略同心状に装着されて、一方側と軸体とが嵌合し、他方側と軸体とが環状の遊び空間を画定して戸当たり時に前記嵌合部分を略支点にして傾動変形し得る、弾性円筒体と、
を含むことを特徴とする戸当たり装置。
【請求項2】
請求項1に記載の戸当たり装置において、
床、天井、側壁等の支持部に軸体を固定するための固定構造をさらに含み、
前記固定構造は、軸体に備えられるアンカー部材と、アンカー部材に打ち込むことによりアンカー部材の拡張部を広げるアンカー心棒と、を含むことを特徴とする戸当たり装置。
【請求項3】
請求項2に記載の戸当たり装置において、
アンカー部材は、軸体とは別体で形成されることを特徴とする戸当たり装置。
【請求項4】
請求項2に記載の戸当たり装置において、
アンカー部材は、軸体と一体形成されることを特徴とする戸当たり装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の戸当たり装置において、
固定構造は、軸体に備えられ、ネジ部品によって前記支持面に固定される取り付け部材を含むことを特徴とする戸当たり装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の戸当たり装置において、
円筒体は、軸体と嵌合する小径穴部と、遊び空間を画定する大径穴部と、を含み、
対応する軸体部の各々は、実質上同一径を有することを特徴とする戸当たり装置。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の戸当たり装置において、
軸体は、円筒体と嵌合する大径軸部と、遊び空間を画定する小径軸部と、を含み、
対応する円筒体穴部の各々は、実質上同一径を有することを特徴とする戸当たり装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−12844(P2012−12844A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150821(P2010−150821)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】