説明

戸開閉装置付き戸及び戸開閉装置用スペーサ

【課題】段差のある戸の表面に戸開閉装置の本体部及び受具の一方を取り付けることが可能な戸開閉装置付き戸を提供する。
【解決手段】戸4の開き動作及び閉じ動作の少なくとも一方をアシストする戸開閉装置1の本体部2及び受具3の一方が戸4に取り付けられ、枠5に取り付けられる本体部2及び受具3の他方と協働する戸開閉装置付き戸であって、表面に段差4aがある戸4と、戸4の段差4aを挟んだ高低差の異なる表面に取り付けられる戸開閉装置の本体部2及び受具3の一方と、戸開閉装置の本体部2及び受具3の一方と戸4の低い方の表面との間に介在し、段差分のすきまを埋める戸開閉装置用スペーサ24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や家具の扉や引き戸の開閉動作をアシストする戸開閉装置を取り付けた戸開閉装置付き戸及び戸開閉装置と戸との間に介在する戸開閉装置用スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や家具の戸は、扉や引き戸に分類することができる。扉は回転して開く戸である。引き戸は鴨居や敷居から構成される枠の溝を滑らせることによって、左右に開閉する戸である。
【0003】
これらの戸の開閉動作の少なくとも一方をアシストする戸開閉装置が知られている。戸開閉装置は、一般的にはドアクローザーと呼ばれていて、戸及び枠の一方に取り付けられる本体部と、戸及び枠の他方に取り付けられる受具と、を備える。戸開閉装置の本体部及び受具は、互いに協働して、閉まりきらない状態の戸が完全に閉まるように戸の閉じ動作をアシストしたり、風等で戸が勢いよく閉められるときの衝撃を緩和したり、戸の開き動作をアシストしたりする。
【0004】
この種の戸開閉装置として、特許文献1には、枠に取り付けられる戸開閉装置の本体部が、垂直線の回りを回転可能なアームを有する戸開閉装置が開示されている。開いた状態の扉が閉まり、扉に取り付けた受具がアームに係合すると、扉が完全に閉まるようにアームが受具を引き込む。本体部には扉が閉まる時の衝撃を緩和するダンパが内蔵される。逆に閉じた状態の扉が所定角度まで開くと、自動的に扉が開くようにアームが受具に付勢力を与える。アームが扉を開閉させる力は、本体部に内蔵されるコイルばねによって与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2011/021414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、扉や引き戸の表面には装飾のために模様としての段差が付けられることがある。この段差を挟んで高低差のある戸の表面に戸開閉装置の本体部及び受具の一方を取り付けると、戸開閉装置の本体部及び受具の一方が曲がって取り付けられてしまう。そうすると、戸開閉装置の円滑な動作が阻害されたり、見栄えが悪くなったりするという問題が発生する。段差に合わせて特別仕様の戸開閉装置を製造することも考えられるが、段差に合わせて多種の製品を製造する必要があり、現実的でない。
【0007】
そこで、本発明は、段差のある戸の表面に戸開閉装置の本体部及び受具の一方を取り付けることが可能な戸開閉装置付き戸及び戸開閉装置用スペーサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様は、戸の開き動作及び閉じ動作の少なくとも一方をアシストする戸開閉装置の本体部及び受具の一方が戸に取り付けられ、枠に取り付けられる前記本体部及び前記受具の他方と協働する戸開閉装置付き戸であって、
表面に段差がある戸と、前記戸の前記段差を挟んだ高低差の異なる表面に取り付けられる前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方と、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方と前記戸の低い方の表面との間に介在し、段差分のすきまを埋める戸開閉装置用スペーサと、を備える戸開閉装置付き戸である。
【0009】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様の戸開閉装置付き戸において、前記戸開閉装置用スペーサは一枚の単位スペーサ、又は重ね合わせた複数枚の単位スペーサから構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の第三の態様は、上記第二の態様の戸開閉装置付き戸において、前記単位スペーサは、板状のスペーサ本体と、前記スペーサ本体の、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方に対向する面に形成される凸部又は凹部と、を備え、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方を前記戸に対して一方向に位置調整するとき、前記単位スペーサが前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方と一緒に前記一方向に移動するように、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方に前記単位スペーサの前記凸部又は前記凹部が嵌まることを特徴とする。
【0011】
本発明の第四の態様は、上記第三の態様の戸開閉装置付き戸において、前記単位スペーサはさらに、前記スペーサ本体の、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方に対向する面と反対側の面に形成されるスペーサ用凸部又はスペーサ用凹部を備え、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方を前記戸に対して一方向に位置調整するとき、前記単位スペーサに重ね合わされた他の単位スペーサが前記単位スペーサと一緒に前記一方向に移動するように、前記他の単位スペーサに前記単位スペーサの前記スペーサ用凸部又は前記スペーサ用凹部が嵌まることを特徴とする。
【0012】
本発明の第五の態様は、上記第三の態様又は上記第四の態様の戸開閉装置付き戸において、前記単位スペーサはさらに、前記スペーサ本体に形成され、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方を前記戸に取り付けるための締結部材が通される長孔を備え、前記長孔の伸びる方向が前記一方向であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第六の態様は、戸の開き動作及び閉じ動作の少なくとも一方をアシストする戸開閉装置の本体部及び受具の一方と戸との間に介在する戸開閉装置用スペーサであって、板状のスペーサ本体と、前記スペーサ本体の、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方に対向する面に形成される凸部又は凹部と、前記スペーサ本体に形成され、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方を前記戸に取り付けるための締結部材が通される長孔と、を備え、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方を前記戸に対して前記長孔の伸びる方向に位置調整するとき、前記戸開閉装置用スペーサが前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方と一緒に前記長孔の伸びる方に移動するように、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方に前記戸開閉装置用スペーサの前記凸部又は前記凹部が嵌まる戸開閉装置用スペーサである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第一の態様によれば、段差があっても戸の表面に平行に戸開閉装置の本体部及び受具の一方を取り付けることができる。したがって、戸開閉装置を円滑に動作させることができ、取り付けた戸開閉装置の見栄えをよくすることができる。
【0015】
本発明の第二の態様によれば、戸によって段差の高さが異なっても、戸の表面に平行に戸開閉装置の本体部及び受具の一方を取り付けることができる。
【0016】
本発明の第三の態様によれば、戸開閉装置の本体部及び受具の一方を戸に対して一方向に位置調整するとき、戸開閉装置用スペーサが戸開閉装置の本体部及び受具の一方に対して位置ずれするのを防止できる。このため、位置調整が容易になり、また見栄えが悪くなるのを防止できる。
【0017】
本発明の第四の態様によれば、重ね合わせた複数枚の単位スペーサが戸開閉装置の本体部及び受具の一方と一緒に一方向に移動するので、複数枚の戸開閉装置用スペーサが戸開閉装置の本体部及び受具の一方に対して位置ずれするのを防止できる。このため、位置調整が容易になり、また見栄えが悪くなるのを防止できる。
【0018】
本発明の第五の態様によれば、戸開閉装置の本体部及び受具の一方を戸開閉装置用スペーサと一緒に長孔の伸びる方向に位置調整することができる。
【0019】
本発明の第六の態様によれば、戸の表面に段差があっても、戸の表面に平行に戸開閉装置の本体部及び受具の一方を取り付けることができる。また、戸開閉装置の本体部及び受具の一方を戸に対して戸開閉装置用スペーサの長孔の伸びる方向に位置調整するとき、戸開閉装置用スペーサが戸開閉装置の本体部及び受具の一方と一緒に長孔の伸びる方向に移動するので、戸開閉装置用スペーサが戸開閉装置の本体部及び受具の一方に対して位置ずれするのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態の戸開閉装置付き戸としての受具付き扉の斜視図(図1(a)は受具付き扉が閉じた状態を示し、図1(b)は受具付き扉が開き始めた状態を示す。)
【図2】戸開閉装置の本体部の分解斜視図
【図3】、受具付き扉の斜視図(図3(a)は受具3に受具カバー21が取り付けられた状態を示し、図3(b)は受具カバー21が取り外された状態を示す。)
【図4】受具付き扉の分解斜視図
【図5】受具の詳細図を示す(図5(a)は受具の正面図を示し、図5(b)は図5(a)のB−B線断面図を示し、図5(c)は図5(a)のC−C線断面図を示す。)
【図6】戸開閉装置用スペーサの斜視図(図6(a)は受具側(正面側)の斜視図を示し、図6(b)は受具とは反対側(背面側)の斜視図を示す。)
【図7】戸開閉装置用スペーサの詳細図(図7(a)は平面図を示し、図7(b)は図7(a)のB−B線断面図を示し、図7(c)は図7(a)のC−C線断面図を示し、図7(d)は図7(a)のD−D線断面図を示す。)
【図8】受具付き扉の詳細図(図8(a)は正面図を示し、図8(b)は図8(a)のB−B線断面図を示し、図8(c)は図8(a)のC−C線断面図を示し、図8(d)は図8(a)のD−D線断面図を示す。)
【図9】受具付き扉の分解斜視図(戸開閉装置用スペーサとして二枚の単位スペーサを重ねた例を示す)
【図10】受具付き扉の水平断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下添付図面に基づいて、本発明の一実施形態の戸開閉装置付き戸、及び戸開閉装置用スペーサを詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態の戸開閉装置付き戸としての受具付き扉の斜視図を示す。図1(a)は受具付き扉が閉じた状態を示し、図1(b)は受具付き扉が開き始めた状態を示す。この実施形態では、戸開閉装置1の本体部2を枠5に、受具3を扉4に取り付けている。受具3が取り付けられた扉4が戸開閉装置付き戸を構成する。
【0022】
戸開閉装置1の本体部2は、枠5に取付けられる。本体部2には、引込みアーム6がその基部を中心に回転可能に設けられる。引込みアーム6の先端には、ローラ7(図2参照)が回転可能に設けられる。引込みアーム6のローラ7は、受具3に形成された溝部8aに嵌合する。
【0023】
図2は、本体部2の分解斜視図を示す。本体部2は、一方向に細長い直方体形状の本体ケース11と、本体ケース11に回転可能に取り付けられる引込みアーム6と、本体ケース11及び引込みアーム6を覆う化粧カバー12と、を備える。本体ケース11には、二つの通し孔11aが空けられている。二つの通し孔11aに木ねじ、止めねじ等の締結部材14を通し、締結部材14を枠5にねじ込むことにより、本体ケース11が枠5に取り付けられる。
【0024】
本体ケース11の底面にはアーム軸15が露出する。アーム軸15の中心部には、嵌合穴15aが形成される。アーム軸15の嵌合穴15aには、引込みアーム6の嵌合軸6aが嵌合する。アーム軸15の嵌合穴15aに引込みアーム6の嵌合軸6aを嵌合させた後、アーム軸15と引込みアーム6とはボルト等の締結部材17によって結合される。引込みアーム6は、アーム軸15を中心として回転する。引込みアーム6の先端にはローラ7が回転可能に設けられる。このローラ7は受具3の溝部8aに嵌まり、引込みアーム6の力を受具3に伝える。引込みアーム6の基部はアームカバー18によって覆われる。
【0025】
化粧カバー12は、本体ケース11の上面以外の全面を覆うように、箱形状に形成される。化粧カバー12は樹脂の成型品である。化粧カバー12の底壁には、引込みアーム6の回転を許容する半円形状の切欠き12aが形成される。
【0026】
なお、図示しないが、本体ケース11の内部には、扉4が自動的に閉まるように引込みアーム6に付勢力を与えるコイルばね等の付勢機構、及び扉4がゆっくり閉まるように引込みアーム6の回転を制動するダンパが収納される。図1(a)に示すように、扉4が閉じた状態では、付勢機構は引込みアーム6に閉じる方向に付勢力を与える。これにより、扉4が閉じた状態が保たれる。
【0027】
図1(b)に示すように、閉じた状態の扉4を開くとき、扉4の開き動作に伴って、引込みアーム6が開く方向に回転する。引込みアーム6が思案点をすぎるまで回転すると、付勢機構が引込みアーム6に反対に開く方向の付勢力を与える。これにより、扉4の開き動作をアシストできる。扉4が全開近くまで開くと、引込みアーム6のローラ7が受具3の溝部8aから外れ、扉4がフリーになる。引込みアーム6は、受具3から離れ、所定の角度開いた状態を保つ。
【0028】
逆に、全開状態の扉4を閉めるとき、扉4が所定角度まで閉じると、受具3の溝部8aが開いた状態の引込みアーム6のローラ7に接近し、溝部8aに引込みアーム6のローラ7が入るようになる。扉4をさらに閉めると、扉4の閉じ動作に伴って、引込みアーム6が閉じる方向に回転する。引込みアーム6が思案点をすぎるまで回転すると、付勢機構が引込みアーム6に閉じる方向の付勢力を与える。これにより、扉4の閉じ動作をアシストできる。扉4が完全に閉じるとき、ダンパが引込みアーム6の回転を制動するので、扉4がゆっくり閉まる。
【0029】
図3は、受具3付き扉4の斜視図を示す。図3(a)は受具3に受具カバー21が取り付けられた状態を示し、図3(b)は受具カバー21が取り外された状態を示す。扉4の上部には、扉4の上端まで垂直方向に伸びる段差4aが形成される。受具3は水平方向に細長く伸び、段差4aを跨るように扉4に取り付けられる。段差4aによって扉4の表面は高低差の異なる平面に区画される。すなわち、扉4の表面は、手前側にある第一の平面4−1(高い方の平面)と、第一の平面4−1よりも僅かに奥側にある第二の平面4−2(低い方の平面)とに区画される。
【0030】
図4は、受具3付き扉4の分解斜視図を示す。受具3の水平方向の一端側の取付け部9−2は直接第一の平面4−1に取り付けられる。受具3の水平方向の他端側の取付け部9−1は戸開閉装置用スペーサ24を介して第二の平面4−2に取り付けられる。戸開閉装置用スペーサ24は段差の高低差と同じ厚みを持ち、受具3が扉4の表面に平行に取り付けられるように段差分のすきまを埋める。
【0031】
受具3の構成は以下のとおりである。図5は受具3の詳細図を示す。図5(a)は受具3の正面図を示し、図5(b)は図5(a)のB−B線断面図を示し、図5(c)は図5(a)のC−C線断面図を示す。
【0032】
受具3は、引込みアーム6の先端のローラ7が嵌まる溝部8aが形成される受具本体8と、受具本体8が取り付けられる取付けステー9と、受具本体8及び取付けステー9を覆う受具カバー21(図4参照)と、を備える。
【0033】
受具本体8は、水平方向に細長く伸びる。受具本体8の上面には、受具本体8の長手方向に沿って伸びる溝部8aが形成される。溝部8aを形成することによって、受具本体8には、互いに平行な手前側の第一の壁部8−1と、奥側の第二の壁部8−2と、が形成される。溝部8aはその一端部(図5(b)中左端部)で手前側に折れ曲がっており、第一の壁部8−1が一端部(図中左端部)で切り欠かれている。引込みアーム6のローラ7は、第一の壁部8−1の切り欠かれた部分8a1を介して溝部8aに出入りする。図4に示すように、受具カバー21には、受具本体8の溝部8aよりもやや大きい切欠き部21aが形成されており、受具カバー21が引込みアーム6の動きを妨げないようにしている。
【0034】
図5に示すように、取付けステー9は板を曲げ加工することにより形成される。取付けステー9の両端部には、木ねじ、止めねじ等の締結部材26(図4参照)によって受具3を扉4に取り付けるための取付け部9−1,9−2が形成される。取付け部9−1,9−2には、水平方向に細長い長孔9aが形成される。取付けステー9の水平方向の位置は、長孔9aの長さ内で調節される。
【0035】
取付け部9−1,9−2の扉4側の取付け面9bは平面に形成される。取付け部9−1,9−2には凹部9cが形成される。凹部9cは上下方向に細長く伸びる溝からなる。凹部9cは取付け面9bよりも一段低く形成される。凹部9cには上下方向に細長い長孔9dが形成される。受具本体8は、取付けねじ31及び取付けナット32により取付けステー9に固定される。受具本体8の通し孔及び取付けステー9の長孔9dに取付けねじ31を通し、取付けねじ31に取付けナット32を螺合させることで、受具本体8が取付けステー9に固定される。図5(b)に示すように、凹部9cは、取付け面9bから取付けナット32が突出するのを防止する機能を持つ。図5(c)に示すように、凹部9cに上下方向に細長い長孔9dを形成することで、取付けステーに9対する受具本体8の上下方向の取付け位置を調整することができる。受具本体8の位置を固定するために、受具本体8と取付けステー9との接触面にはぎざぎざ33が付けられる。
【0036】
図6は、受具3と扉4との間に介在する戸開閉装置用スペーサ24の斜視図を示す。図6(a)は受具3側(正面側)の斜視図を示し、図6(b)は受具3とは反対側(背面側)の斜視図を示す。戸開閉装置用スペーサ24は、四角形の板状のスペーサ本体24aと、水平方向に細長く伸びる上下一対の長孔24cと、スペーサ本体24aの、受具3に対向する面に形成される枠状の凸部24bと、受具3に対向する面と反対側の面に形成されるスペーサ用凹部24dと、を備える。
【0037】
スペーサ本体24aの四角形の大きさは、受具3の取付けステー9の取付け部9−1,9−2に合わせられる。図3(b)に示すように、受具3の取付けステー9の取付け部9−1と戸開閉装置用スペーサ24とを重ね合わせたとき、戸開閉装置用スペーサ24は取付けステー9の取付け部9−1の周囲から僅かにはみ出す。図6に示すように、スペーサ本体24aの厚さは段差に合わせて3mm、2mm等に設定される。スペーサ本体24aの表面には、3mm、2mm等、スペーサ本体24aの厚さを表す文字24eが付けられる。
【0038】
図7は戸開閉装置用スペーサ24の詳細図を示す。枠状に形成される凸部24bは、スペーサ本体24aの表面から受具3に向かって突出する。凸部24bの長辺側の二辺24b1は、断面が先端が尖った三角形に形成される。凸部24bの短辺側の二辺24b2は、断面が四角形に形成される。戸開閉装置用スペーサ24を受具3の取付けステー9に重ね合わせたとき、戸開閉装置用スペーサ24の凸部24bが受具3の取付けステー9の凹部9cに嵌まる(図4参照)。これにより、戸開閉装置用スペーサ24が受具3に水平方向に位置決めされる。
【0039】
図7に示すように、戸開閉装置用スペーサ24に形成される長孔24cは、受具3の取付けステー9に形成される長孔9a(図5(a)参照)と同じ大きさを持つ。戸開閉装置用スペーサ24を受具3の取付けステー9に重ねたとき、これらに形成される長孔24c,9aも同じ位置で重なる。この例では、図3に示すように、戸開閉装置用スペーサ24が取付けステー9の右側の取付け部9−1に重なり、戸開閉装置用スペーサ24の上側の長孔24cが取付け部9−1の長孔9aに重なる。ところで、戸開閉装置用スペーサ24を左側の取付け部9−2に重ねる必要があるときは、戸開閉装置用スペーサを反転させる必要がある。右側の取付け部9−1の長孔9aにも左側の取付け部9−2の長孔9aにも、戸開閉装置用スペーサ24の長孔24cを重ねることができるように、戸開閉装置用スペーサ24には上下一対の長孔24cが形成される。
【0040】
図6(b)に示すように、戸開閉装置用スペーサ24の裏面に形成されるスペーサ用凹部24dは、底のある四角形に形成される。スペーサ用凹部24dの四角形は、凸部24bの四角形に対応している。図9に示すように、戸開閉装置用スペーサ24は複数枚の単位スペーサ24−1,24−2から構成される場合もある。スペーサ用凹部24dは複数枚の単位スペーサ24−1,24−2を重ねて戸開閉装置用スペーサ24を構成する場合を考慮して形成される。単位スペーサ24−1,24−2を上下方向に重ねたとき、下側の単位スペーサ24−2の凸部24bが上側の単位スペーサ24−1のスペーサ用凹部24dに嵌まる。これにより、受具3を扉4に対して水平方向に位置調整するとき、重ねた合わせた複数枚の単位スペーサ24−1,24−2が受具3と一緒に水平方向に移動する。
【0041】
図8は、段差のある扉4に戸開閉装置用スペーサ24を介して取り付けた受具3を示す。戸開閉装置用スペーサ24は段差と等しい厚みを持つ。戸開閉装置用スペーサ24を扉の低い方の平面4−2に取り付けると、戸開閉装置用スペーサ24の表面が扉の高い方の平面4−1と同じ高さになる。このため、受具3を扉4の表面と平行に取り付けることが可能になる。受具3の水平方向の位置を微調整するときは、締結部材26を緩め、長孔9aの伸びる水平方向に受具3を移動させる。このとき、戸開閉装置用スペーサ24が受具3と一緒に水平方向に移動するので、戸開閉装置用スペーサ24が受具3に対して位置ずれすることがない。受具本体8の垂直方向の位置を調整するときは、締結部材31を緩め、取付けステー9の長孔9dの伸びる垂直方向に受具本体8を移動させる。
【0042】
図9は、戸開閉装置用スペーサ24として二枚の単位スペーサ24−1,24−2を重ね合わせた例を示す。扉4の表面の段差が大きく、一枚の単位スペーサ24−1では不十分な場合、二枚の単位スペーサ24−1,24−2を重ねて使用する。二枚の単位スペーサ24−1,24−2を重ねた全体の厚みは、段差に等しく設定される。図10に示すように、二枚の単位スペーサ24−1,24−2を扉4の低い方の平面4−2に取り付けると、単位スペーサ24−1の表面が扉4の高い方の平面4−1と同じ高さになる。このため、受具3を扉4の表面と平行に取り付けることが可能になる。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲でさまざまに変更可能である。
【0044】
例えば、戸開閉装置の本体部を扉に取り付け、受具を枠に取り付けてもよい。この場合、戸開閉装置の本体部と扉との間に位置調整スペーサが介在する。
【0045】
上記実施形態では、スペーサ本体に凸部を形成し、受具に凹部を形成しているが、これとは逆に、スペーサ本体に凹部を形成し、受具に凸部を形成してもよい。また、上記実施形態では、単位スペーサに他の単位スペーサに嵌まるスペーサ用凹部を形成しているが、他の単位スペーサに嵌まるスペーサ用凸部を形成してもよい。
【0046】
戸開閉装置の本体部の内部部品はさまざまに変更可能であり、例えばダンパを省略することや、アームを回転させるリンク機構の替わりにラックアンドピニオン機構を用いることができる。引込みアームは本体ケースに対して回転しなくても、本体ケースに対して直線運動してもよい。
【0047】
扉の低い方の平面と受具との間だけでなく、扉の高い方の平面と受具との間にも戸開閉装置用スペーサを介在させてもよい。
【0048】
本発明は、戸開閉装置の本体部と受具とがリンクで連結されるドアクローザーにも適用することができる。ドアクローザーのリンクは、戸が開いた状態から閉じた状態まで常に本体部と受具とを連結する。
【0049】
本発明は、扉の戸開閉装置だけでなく、引き戸の戸開閉装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…戸開閉装置
2…本体部
3…受具
4…扉(戸)
4a…段差
9a…長孔
24…戸開閉装置用スペーサ,
24−1,24−2…単位スペーサ
24a…スペーサ本体
24b…凸部
24c…長孔
24d…スペーサ用凹部
26…締結部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸の開き動作及び閉じ動作の少なくとも一方をアシストする戸開閉装置の本体部及び受具の一方が戸に取り付けられ、枠に取り付けられる前記本体部及び前記受具の他方と協働する戸開閉装置付き戸であって、
表面に段差がある戸と、
前記戸の前記段差を挟んだ高低差の異なる表面に取り付けられる前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方と、
前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方と前記戸の低い方の表面との間に介在し、段差分のすきまを埋める戸開閉装置用スペーサと、を備える戸開閉装置付き戸。
【請求項2】
前記戸開閉装置用スペーサは一枚の単位スペーサ、又は重ね合わせた複数枚の単位スペーサから構成されることを特徴とする請求項1に記載の戸開閉装置付き戸。
【請求項3】
前記単位スペーサは、
板状のスペーサ本体と、
前記スペーサ本体の、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方に対向する面に形成される凸部又は凹部と、を備え、
前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方を前記戸に対して一方向に位置調整するとき、前記単位スペーサが前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方と一緒に前記一方向に移動するように、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方に前記単位スペーサの前記凸部又は前記凹部が嵌まることを特徴とする請求項2に記載の戸開閉装置付き戸。
【請求項4】
前記単位スペーサはさらに、
前記スペーサ本体の、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方に対向する面と反対側の面に形成されるスペーサ用凸部又はスペーサ用凹部を備え、
前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方を前記戸に対して一方向に位置調整するとき、前記単位スペーサに重ね合わされた他の単位スペーサが前記単位スペーサと一緒に前記一方向に移動するように、前記他の単位スペーサに前記単位スペーサの前記スペーサ用凸部又は前記スペーサ用凹部が嵌まることを特徴とする請求項3に記載の戸開閉装置付き戸。
【請求項5】
前記単位スペーサはさらに、前記スペーサ本体に形成され、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方を前記戸に取り付けるための締結部材が通される長孔を備え、
前記長孔の伸びる方向が前記一方向であることを特徴とする請求項3又は4に記載の戸開閉装置付き戸。
【請求項6】
戸の開き動作及び閉じ動作の少なくとも一方をアシストする戸開閉装置の本体部及び受具の一方と戸との間に介在する戸開閉装置用スペーサであって、
板状のスペーサ本体と、
前記スペーサ本体の、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方に対向する面に形成される凸部又は凹部と、
前記スペーサ本体に形成され、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方を前記戸に取り付けるための締結部材が通される長孔と、を備え、
前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方を前記戸に対して前記長孔の伸びる方向に位置調整するとき、前記戸開閉装置用スペーサが前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方と一緒に前記長孔の伸びる方に移動するように、前記戸開閉装置の前記本体部及び前記受具の一方に前記戸開閉装置用スペーサの前記凸部又は前記凹部が嵌まる戸開閉装置用スペーサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−225093(P2012−225093A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95186(P2011−95186)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000107572)スガツネ工業株式会社 (153)