説明

所望画像信号範囲決定方法

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、蓄積性蛍光体シート等の記録媒体に記録(撮影)された多値画像を担持する全ての多値信号のうち上記画像中の診断等に必要な所望画像部分を担持する多値画像信号の範囲である所望画像信号範囲を決定する方法に関する。
(従来の技術)
ある種の蛍光体に放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を照射すると、この放射線エネルギーの一部が蛍光体中に蓄積され、この蛍光体に可視光等の励起光を照射すると、蓄積されたエネルギーに応じて蛍光体が輝尽発光を示すことが知られており、このような性質を示す蛍光体は蓄積性蛍光体(輝尽性蛍光体)と呼ばれる。
この蓄積性蛍光体を利用して、人体等の被写体の放射線画像情報を一旦シート状の蓄積性蛍光体に記録し、その後、この蓄積性蛍光体シートをレーザ光等の励起光で走査して輝尽発光光を生ぜしめ、この輝尽発光光を光電的に読み取って多値画像信号を得、この多値画像信号に画像処理を施し、この画像処理が施された画像信号に基づき被写体の放射線画像を写真感光材料等の記録材料、CRT等の表示装置に可視像として出力させる放射線画像情報記録再生システムが本出願人によりすでに提案されている。(特開昭55−12429号、同56−11395号など)。
上記の如き撮影画像においては、一般にその画像全体の情報が必ずしも必要なものではなく、その中の一部分の情報のみが必要である場合が多い。
例えば、人体の頚部を撮影した画像は概略第3図に示すようなものとなり、この様な頚部撮影画像においては、通常診断に必要な情報は頚椎部Aおよびその周囲の軟部の画像情報のみであり、他の部分即ち放射線が直接蓄積性蛍光体シートに入射した素抜け部B(画像信号レベルが一番高い部分)、顎部Cおよび肩部Dの画像情報は特に必要としない。この様な場合には、可視出力画像においては予め定められた診断に適した適正濃度範囲が存在し、画像全体をその範囲内に再生するのではなくなるべく診断に必要な所望画像部分である頚椎部Aおよび軟部のみをその範囲内に再生し、コントラクト分解能等の観察読影適性の向上を図ることが望ましい。
その様な要望に答えるため、従来例えば特開昭60−156055号公報に記載の方法が本出願人によって提案されている。この方法は、同じく本出願人によって提案された特開昭58−67240号公報等に開示されている「先読み」、即ち放射線画像情報が蓄積記録されている蓄積性蛍光体シートを励起光により走査し、この走査により前記シートから発せられた輝尽発光光を光電読取手段により読み取って診断用可視像を再生するための電気的画像信号を得る「本読み」に先立って、予めこの本読みに用いられる励起光よりも低レベルの励起光により前記シートを走査してこのシートに蓄積記録された画像情報の概略を読み取る「先読み」を行い、この先読みにより得られた画像信号(画像信号レベル)のヒストグラムを求めると共にこのヒストグラムからこのヒストグラムにおける所望画像信号範囲の最大画像信号レベルSmaxおよび最小画像信号レベルSminを求め、このSmaxおよびSminがそれぞれ、可視出力画像における適正濃度範囲の最大濃度Dmaxおよび最小濃度Dminによって決定される画像処理手段における所望入力信号範囲の最大信号レベルQmaxおよび最小信号レベルQminに対応する様に本読みの読取条件を決定し、この様にして決定された読取条件に従って本読みを行なうものである。
また、上記要望に答えるための他の方法として、例えば上記先読みにより得られた画像信号のヒストグラムを求めると共にこのヒストグラムにおける所望画像信号範囲の最大画像信号レベルSmaxおよび最小画像信号レベルSminを求め、このSmaxおよびSminがそれぞれ、可視出力画像における適正濃度範囲の最大濃度Dmaxおよび最小濃度Dminによって決定される画像再生手段(可視像出力手段)における所望入力信号範囲の最大信号レベルRmaxおよび最小信号レベルRminに対応するように階調処理条件を決定し、この様にして決定された階調処理条件に従って階調処理を施す方法が考えられる。
なお、この方法においては上記先読みにより得られた画像信号の代りに本読みにより得られた画像信号を使用することも可能であり、その場合においても、例えば前記の場合と同様に本読みにより得られた画像信号のヒストグラムを作成し、このヒストグラムから前記SmaxおよびSminを求め、このSmaxおよびSminがそれぞれ前記RmaxおよびRminに対応するように階調処理条件を決定すれば良い。
なお、上記において読取条件とは読取手段における入力と出力との関係、例えば上記においては光電読取手段における入力(輝尽発光光量)と出力(電気的画像信号レベル)との関係に影響を及ぼす各種の条件を総称するものであり、例えば入出力の関係を定める読取ゲイン(感度)、スケールファクタ(ラチチュード)あるいは、読取りにおける励起光のパワー等を意味するものである。
また、上記において画像処理条件とは、画像処理手段における入力と出力との関係に影響を及ぼす各種の条件を総称するものであり、例えば階調処理条件や空間周波数処理条件等を意味する。
さらに、上記において先読みに用いられる励起光が本読みに用いられる励起光よりも低レベルであるとは、先読みの際に蓄積性蛍光体シートが単位面積当りに受ける励起光の有効エネルギーが本読みの際のそれよりも小さいことを意味する。
(発明が解決しようとする問題点)
上記の各方法を実施するにあたっては、まず上記所望画像信号範囲つまり上記SmaxおよびSminを適正に決定する必要がある。しかしながら、例えば上記頚部の画像の場合は所望画像部分である頚椎部Aおよび軟部の画像信号レベルよりも顎部Cや肩部Dのそれの方が低くなり、この様な場合には上記特開昭60−156055号公報に開示されている様な全画像信号のヒストグラムから撮影部位や撮影方法等を参照しつつ適当に定められた頻度しきい値を用いてSmax、Sminを決定する方法では十分に適正なSmax、Sminを決定することはできない。
即ち、上記頚部画像の全面像信号ヒストグラムは第1図R>図に示す様な形になり、もし例えば所望画像部分が顎及び肩部I、頚椎部IIおよび皮膚等の軟部IIIから成りヒストグラムの形態上明らかに区別し得る素抜け部IVを除きヒストグラムのほぼ全域に亘る場合、つまり所望画像部分よりも低レベル側に非所望画像部分が存在しない場合には、このヒストグラムからその形に基づいて適当に設定された頻度しきい値を用いてその所望画像部分を担持する所望画像信号範囲Smax、Sminをほぼ適正に決定することができるが、この場合の様に所望画像部分が頚椎部IIおよび軟部IIIのみであってその所望画像部分よりも低レベル側に非所望画像部分である顎及び肩部Iが存在する場合には、上記の単に所定の頻度しきい値を用いて画像全体のヒストグラムから決定する方法ではその所望画像部分を担持する所望画像信号範囲Smax、Sminを適正に決定することは困難である。
本発明の目的は、上記事情に鑑み、画像中に所望画像部分よりも画像信号レベルの低い非所望画像部分が存在している場合においてもその所望画像部分を担持する所望画像信号範囲を適正に決定することのできる所望画像信号範囲決定方法を提供することにある。
(問題点を解決するための手段)
本発明に係る所望画像信号範囲決定方法は、被写体部と該被写体部によって分離された2つの素抜け部とを有し、上記被写体部には所望画像部分と該所望画像部分よりも画像信号レベルが低い非所望画像部分とが存在し、かつ上記所望画像部分は上記2つの素抜け部に接してそれらを連結し得る位置にある多値画像における上述の如き所望画像信号範囲を決定する方法であって、 まず上記画像を担持する多値画像信号を所定のしきい値を用いて被写体部対応信号と素抜け部対応信号とに2値化することにより該被写体部対応信号によって担持される1つの被写体部対応部分と該素抜け部対応信号によって担持される上記被写体部対応部分によって分離された2つの素抜部対応部分とから成る2値画像を形成し、次いで上記2値画像における2つの素抜け部対応部分が連結されるまで上記しきい値を順次下げながら上記2値画像の形成を繰り返し、上記2つの素抜け部対応部分が連結されたらその連結された時点における素抜け部対応部分内の画素の多値画像信号に基づいて所望画像信号範囲を決定することを特徴とする。
上記素抜け部対応部分内の画素の画像信号に基づく所望画像信号範囲の決定は、素抜け部対応部分内の画素の画像信号のヒストグラムを求め、このヒストグラムから所定の頻度しきい値を用いて所望画像信号範囲の最大および最小画像信号レベルを決定する方法、および素抜け部対応部分内の画素の画像信号の最大レベルと最小レベルとを求め、この最大レベルと最小レベルに基づいて所望画像信号範囲の最大および最小画像信号レベルを決定する方法により行うことができる。
上記所望画像信号範囲を決定するとは、必ずしも該範囲の最大画像信号レベルSmaxと最小画像信号レベルSminの双方を決定する場合に限らず、いずれか一方のみを決定する場合も含むものである。例えば上記Sminを本発明に係る方法によって決定し上記Smaxは他の方法によって決定しても良い。
上記被写体部対応信号とは2値化前の画像信号レベルが上記所定のしきい値以下もしくはそれより低いレベルの画像信号を意味し、上記素抜け部対応信号とは2値化前の画像信号レベルが上記所定のしきい値よりも大きいもしくはそれ以上のレベルの画像信号を意味する。両信号を集めると常に上記画像を担持する全画像信号となる。被写体部を担持する画像信号は低レベル側に、素抜け部を担持する画像信号は高レベル側に位置するので、画像信号を所定のしきい値で2分した場合の低レベル側の信号を被写体部対応信号と、高レベル側の信号を素抜け部対応信号と称するものである。
(作用)
前述の頚部画像の場合のように中央部分に被写体部が存在し該被写体部の左右に該被写体部によって分離された素抜け部が存在する画像の場合、該画像を担持する画像信号を所定のしきい値によって2値化することにより被写体対応部分とその左右に分離された2つの素抜け部対応部分とから成る2値画像を形成することができる。
この2値画像の形成は、素抜け部は放射線が直接入射する部分であってその画像信号レベルは全画像中最も高くなるという前提に基づけば例えば全画像信号の最大画像信号レベルから一定値を差し引いた値を所定のしきい値とする等によって極めて容易にかつ確実に行なうことができる。
この様な方法でまず最初の2値画像を形成した後、順次しきい値を下げながら2値画像の形成を繰り返すと、2値画像中の素抜け部対応部分が徐々に広がり、画像信号レベルの高い画像部分から順番に徐々に素抜け部対応部分に取り込まれていく。
そして、頚部画像の様に頚椎部およびその周囲に位置する軟部から成る所望画像部分が2つに分離された素抜け部に直接接して両素抜け部を連結し得る位置関係にある場合は、上記しきい値を順次下げてゆくとこの軟部および頚部も徐々に素抜け部対応部分に取り込まれてゆき、遂には両素抜け部対応部分は連絡されて1つの素抜け部対応部分となる。
この時点における素抜け部対応部分は素抜け部の他所望画像部分である頚部および軟部を含んでいるがその所望画像部分よりも画像信号レベルの低い非所望画像部分である顎および肩部は含んでいない。
従って、上記2つの素抜け部対応部分が連結した時点における素抜け部対応部分の画素の画像信号は、上記非所望画像部分の画像信号を排除した残りの画像信号となる。
(発明の効果)
本発明に係る所望画像信号範囲決定方法は、上述の様に、画像信号を所定のしきい値を用いて2値化して2値画像を形成すると共にそのしきい値を順次下げながら当初分離していた2つの素抜け部対応部分が連結するまで2値画像の形成を繰り返し、連結した時点における素抜け部対応部分の画素の画像信号、即ち所望画像部分よりも画像信号レベルの低い非所望画像部分の画像信号を排除した画像信号に基づいて所望画像信号範囲を決定するので、低レベル側に位置する非所望画像部分の画像信号によって惑わされることなく容易かつ適正に所望画像信号範囲を決定することができる。
(実 施 例)
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。
以下に説明する実施例は前記蓄積性蛍光体シートを用いて頚部撮影を行なった場合に本発明を適用したものである。また頚部画像中の所望画像部分は頚椎部およびそれを取り囲む軟部であり、この所望画像部分を担持する画像信号レベルの範囲が決定しようとする所望画像信号範囲である。
まず、撮影済の蓄積性蛍光体シートから前述した先読みを行なうことにより頚部画像を担持する先読み画像信号を求める。つまり上記シートを先読み用の励起光により走査し、該シートから発せられる輝尽発光光を光電変換手段により読み取って該シート上の各走査点(各画素)毎の輝尽発光光量に対応する電気信号から成る画像信号を求める。なお、この画像信号から成る頚部画像は前述した第3図に示す如きものである。
次に、この画像信号を所定のしきい値を用いて被写体部対応信号と素抜け部対応信号とに2値化することにより、該被写体部対応信号によって担持される1つの被写体部対応部分と該素抜け部対応信号によって担持される上記被写体部対応部分によって分離された2つの素抜け部対応部分とから成る2値画像を形成する。
この2値画像を第2図(a)に示す。この図において非斜線部が(0)値を与えられた被写体部対応部分Gであり、斜線部が(1)値を与えられた素抜け部対応部分Fであり、かつこの素抜け部対応部分Fは被写体部対応部分Gによって左右に分離されている。
上記所定のしきい値は、要するにそのしきい値によって2値化した場合2値画像が第2図(a)の如く被写体部対応部分Gと該被写体部対応部分Gによって分離された2つの素抜け部対応部分Fとから成るようなものであれば良く、例えば第3図に示す頚部画像の画像信号ヒストグラム(画像信号レベル範囲S1〜S2)を実線で示す第1図1図における軟部IIIと素抜け部IVとの境界近傍の画像信号レベル値を所定のしきい値(Th)として設定すれば第2図(a)に示す様な第3図とほぼ一致する2値画像が得られるが、このしきい値は必ずしもその境界部分のレベル値である必要はなく、第1図における素抜け部IVの範囲内のレベル値であれば良いことは勿論、さらには例えば頚椎部の画像信号レベル範囲の最小値が図示のSminであったとするとこのSminより大きいレベル値であれば良い。
上述の様に、このしきい値は図中のSmin〜S2の範囲内に入るように設定する必要があるが、その様な設定は、Smin〜S2の範囲が非常に広く、またその範囲あるいは素抜け部IVの画像信号レベル範囲の広さは実験的、経験的にある程度把握できるので、例えば全画像信号レベルの最大値S2を求め、このS2から実験あるいは経験等に基づいて定められた確実にSmin〜S2の範囲の広さ内に入り得る一定値、例えば素抜け部IVの画像信号レベル範囲の広さに略一致する一定値を差し引いた値を所定のしきい値として設定する等の方法によって容易かつ確実に行なうことができる。
この様にして最初の2値画像を形成したら、次にしきい値を順次下げながら同様の2値画像を繰り返し形成する。すると、素抜け部対応部分Fは徐々に広くなり、例えばしきい値を第1図における頚椎部IIと軟部IIIとの境界付近のレベル値にまで下げると概略軟部までもが素抜け部対応部分Fに取り込まれ、その2値画像は第2図(b)の様になる。そして、さらに引き続きしきい値を下げて行きそのしきい値が頚椎部の画像信号範囲の最小値にまで達するとその2値画像は第2図(c)の如くなり、それまで分離していた2つの素抜け部対応部分Fが該素抜け部対応部分に頚椎部が完全に取り込まれることによって連結され、1つの素抜け部対応部分Fとなる。
つまり、両素抜け部対応部分Fが連結した時点においてはその連結された素抜け部対応部分Fには素抜け部の外所望画像部分である頚椎部および軟部が完全に取り込まれていると共に非所望画像部分である顎および肩部はこの素抜け部対応部分Fからほぼ排除された状態となっている。
次に、上記の如く両素抜け部対応部分が連結したらその時点における連結した両素抜け部対応部分中の画素の画像信号を抽出し、この画像信号のみのヒストグラムを作成し、このヒストグラムに基づいて所望画像信号範囲のSmax、Sminを決定する。
このヒストグラムは、第1図中の1点鎖線Hで示す様な形となり、そのヒストグラムは非所望画像部分である顎および肩部の画像信号が排除されると共に所望画像部分にある頚椎部や軟部の画像信号は含まれているものである。従って、このヒストグラムにおける最小画像信号レベル値はほぼ頚椎部の最小画像信号レベル値と一致し、よってこのヒストグラムに基づけば所望画像部分である頚椎部および軟部を担持する所望画像信号範囲のうち従来の全画像信号ヒストグラムに基づいて決定する方法では適正に決定することが困難であったSminを適正に決定することができる。
このSmin、Smaxの決定は上記ヒストグラムHから所定の頻度しきい値を用いて決定すれば良い。より具体的には、例えばSminとしては所定の頻度しきい値として120(零)を用いることによってヒストグラムHの最小画像信号レベル値を採用し、Smaxとしてはヒストグラムにおいて素抜け部が明確な形で表わされるのでこのヒストグラムの形に基づいて従来と同様の方法でこの素抜け部とそれ以外の部分の境界部の画像信号レベル値を求めて、即ち素抜け部とそれ以外の部分の境界部の頻度しきい値は大体どの程度になるかは経験的に求めることができるので、その予め経験的に求められた所定の頻度しきい値を用い、かつヒストグラムの最大画像信号レベル側には素抜け部領域を示す一つの山が存在するので、ヒストグラムを最大画像信号レベル側から走査していって最初に頻度が上記所定の頻度しきい値となっている画像信号レベルは無視して次に頻度が上記所定の頻度しきい値となっている画像信号レベル値を求めてそれを採用すれば良い。
次に、他の実施例として腹部撮影を行なった場合における本発明の適用例について説明する。
第4図は腹部撮影画像の一例を示す図であり、Aは胸腰椎部、Bは素抜け部、Cは内臓等の軟部、Dは小骨板部である。素抜け部Bは被写体部A,C,Dの両側に2つ存在する。
第6図は第5図に示す画像を担持する全画像信号のヒストグラムを示す図であり、図中Iは上記骨板部、IIは胸腰椎部、IIIは内臓等の軟部、IVは素抜け部である。
上記各部のうち、第5図に示すヒストグラムにおける胸腰椎部IIと内臓等の軟部IIIが所望画像部分であるが、それよりも低レベル側に非所望画像部分である骨盤部Iが存在している。
本実施例の場合も、前記実施例の場合と同様にして腹部画像を担持する先読み画像信号を求め、該画像信号を所定のしきい値(Th)を用いて被写体部対応信号と素抜け部対応信号とに2値化することにより、該被写体部対応信号によって担持される1つの被写体部対応部分と該素抜け部対応信号によって担持される上記被写体部対応部分によって分離された2つの素抜け部対応部分とから成る2値画像を形成する。
この2値画像を第6図(a)に示す。この図において非斜線部が(0)値を与えられた被写体部対応部分Gであり、斜線部が(1)値を与えられた素抜け部対応部分Fであり、かつこの素抜け部対応部分Fは被写体部対応部分Gによって左右に分離されている。
この様にして最初の2値画像を形成したら、次にしきい値を順次下げながら同様の2値画像を繰り返し形成する。すると、素抜け部対応部分Fは徐々に広くなり、例えばしきい値を第5図における胸腰椎部IIと軟部IIIとの境界付近のレベル値にまで下げると概略軟部までもが素抜け部対応部分Fに取り込まれ、その2値画像は第6図R>図(b)の様になる。そして、さらに引き続きしきい値を下げて行きそのしきい値が胸腰椎部の画像信号範囲の最小値にまで達するとその2値画像は第6図(c)の如くなり、それまで分離していた2つの素抜け部対応部分Fが該素抜け部対応部分に胸腰椎部が完全に取り込まれることによって連結され、1つの素抜け部対応部分Fとなる。
つまり、両素抜け部対応部分Fが連結した時点においてはその連結された素抜け部対応部分Fには素抜け部の外所望画像部分である胸腰椎部および軟部が完全に取り込まれていると共に非所望画像部分である骨盤部はこの素抜け部対応部分Fからほぼ排除された状態となっている。
次に、上記の如く両素抜け部対応部分が連結したらその時点における連結した両素抜け部対応部分中の画素の画像信号を抽出し、この画像信号のみのヒストグラム(第5図中の一転鎖線H)を作成し、このヒストグラムに基づいて所望画像信号範囲のSmax、Sminを決定する。
上記最初の所定のしきい値(Th)および上記ヒストグラムに基づくSmax、Sminの決定は上記頚部画像の場合と同様にして行なえば良い。
なお、Smax、Sminの決定は上記いずれの実施例の場合も必ずしも上記連結した両素抜け部対応部分中の画素の画像信号のヒストグラムに基づいて決定する必要はなく、例えば該画像信号の最小レベル(これは連結時における所定のしきい値Thと一致する)や最大レベルに基づいて決定しても良い。この場合には例えば最小レベルや最大レベルをそのままSmax、Sminとしても良いし、最小レベルや最大レベルに一定値を加えたり引いたりあるいはそれらを係数倍する等してSmax、Sminを決定しても良い。
上記実施例では先読み画像信号に基づいて所望画像信号範囲を決定しているが、本発明は本読み画像信号に基づいて決定することも可能であるし、もちろん蓄積性蛍光体シート以外の記録媒体から読み取った画像信号に基づいて決定することも可能である。
本発明に係る方法によって決定された所望画像信号範囲は例えば前述の如く読取条件や画像処理条件を決定する場合に使用し得るが、勿論その他の種々の目的のためにも使用し得るものである。
また、上記実施例は頚部画像や腹部画像の場合であったが、本発明に係る方法は、要するに、■被写体部と該被写体部によって分離された2つの素抜け部とを有する画像であり、■画像中に所望画像部分よりも画像信号レベルの低い非所望画像部分が存在し、■所望画像部分は2つの素抜け部に接してそれらを連結し得るものであるという3つの前提を備えた画像であればどの様な画像にも好適に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は第3図に示す頚部画像の画像信号ヒストグラムの一例を示す図、
第2図(a)、(b)、(c)はそれぞれ第3図に示す頚部画像について異なるしきい値を用いて形成した2値画像の一例を示す図、
第3図は頚部画像の一例を示す図、
第4図は腹部画像の一例を示す図、
第5図は第4図に示す腹部画像の画像信号ヒストグラムの一例を示す図、
第6図(a)、(b)、(c)はそれぞれ第4図に示す腹部画像について異なるしきい値を用いて形成した2値画像の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】被写体部と該被写体部によって分離された2つの素抜け部とを有し、上記被写体部には所望画像部分と該所望画像部分よりも画像信号レベルが低い非所望画像部分とが存在し、かつ上記所望画像部分は上記2つの素抜け部に接してそれらを連結し得る位置にある多値画像中の上記所望画像部分を担持する多値画像信号の範囲である所望画像信号範囲を決定する方法であって、まず上記画像を担持する多値画像信号を所定のしきい値を用いて被写体部対応信号と素抜け部対応信号とに2値化することにより該被写体部対応信号によって担持される1つの被写体部対応部分と該素抜け部対応信号によって担持される上記被写体部対応部分によって分離された2つの素抜部対応部分とから成る2値画像を形成し、次いで上記2値画像における2つの素抜け部対応部分が連結されるまで上記しきい値を順次下げながら上記2値画像の形成を繰り返し、上記2つの素抜け部対応部分が連結されたらその連結された時点における素抜け部対応部分内の画素の多値画像信号のヒストグラムを求め、このヒストグラムから所定の頻度しきい値を用いて所望画像信号範囲の最大および最小画像信号レベルを決定することを特徴とする所望画像信号範囲決定方法。
【請求項2】被写体部と該被写体部によって分離された2つの素抜け部とを有し、上記被写体部には所望画像部分と該所望画像部分よりも画像信号レベルが低い非所望画像部分とが存在し、かつ上記所望画像部分は上記2つの素抜け部に接してそれらを連結し得る位置にある多値画像中の上記所望画像部分を担持する多値画像信号の範囲である所望画像信号範囲を決定する方法であって、まず上記画像を担持する多値画像信号を所定のしきい値を用いて被写体部対応信号と素抜け部対応信号とに2値化することにより該被写体部対応信号によって担持される1つの被写体部対応部分と該素抜け部対応信号によって担持されると上記被写体部対応部分によって分離された2つの素抜部対応部分とから成る2値画像を形成し、次いで上記2値画像における2つの素抜け部対応部分が連結されるまで上記しきい値を順次下げながら上記2値画像の形成を繰り返し、上記2つの素抜け部対応部分が連結されたらその連結された時点における素抜け部対応部分内の画素の多値画像信号の最大レベルと最小レベルとを求め、この最大レベルと最小レベルに基づいて所望画像信号範囲の最大および最小画像信号レベルを決定することを特徴とする所望画像信号範囲決定方法。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【特許番号】第2631663号
【登録日】平成9年(1997)4月25日
【発行日】平成9年(1997)7月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−207212
【出願日】昭和62年(1987)8月20日
【公開番号】特開平1−50171
【公開日】平成1年(1989)2月27日
【審判番号】平7−4110
【出願人】(999999999)富士写真フイルム株式会社
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 昭58−211272(JP,A)
【文献】特開 昭59−90175(JP,A)
【文献】特開 昭56−47873(JP,A)
【文献】特開 昭61−285587(JP,A)
【文献】特開 昭61−255486(JP,A)
【文献】特開 昭61−95484(JP,A)
【文献】実開 昭57−118466(JP,U)
【文献】実開 昭61−60364(JP,U)