説明

扁平形冷陰極蛍光ランプ

【課題】 ランプ初期点灯時の不純ガス除去方式を変更することにより、ランプ光量を改善した扁平形冷陰極蛍光ランプを提供する。
【解決手段】 本発明の扁平形冷陰極蛍光ランプは、管軸方向において少なくとも1箇所以上で楕円もしくは扁平形状に成形されたガラス管1の内面に蛍光体被膜2を形成し、ガラス管の内部に水銀及び希ガスを封入し、ガラス管の両端に導入線4を気密に封着し、この導入線のガラス管内側の端部に電極3を接続し、この電極3に不純ガス吸着作用を有する金属物質5を単体でもしくは複数種混合して装備させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平形冷陰極蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置のバックライト用光源等に用いられる冷陰極蛍光ランプは真円形状のものが主であった。しかし、近年の液晶の大型化、さらに軽量、薄型の要望に答えるべく扁平形状等の異形状の蛍光ランプが用いられるようになってきた。
【0003】
このような異形状の蛍光ランプとしては、例えば特開平9−245736号公報(特許文献1)や、実開平5−68068号公報(特許文献2)などで知られている。図7(a)、(b)は、従来の扁平形冷陰極蛍光ランプの管軸に沿った断面図及び側面図である。従来の扁平形冷陰極蛍光ランプの構成は、ガラス管1の管軸方向において少なくとも1箇所以上が楕円もしくは扁平形状に成形されたガラス管1の内面に発光体として蛍光体被膜2を形成し、ガラス管内にNe−Ar混合ガスを封入し、ガラス管1の両端に電極3、封着線4、リード線から構成されているマウントを装備し、封着線4にあらかじめ封着してあるビーズガラスをガラス管1の両端部に封着することでこれらをガラス管1の両端部それぞれに取り付けたものである。
【0004】
しかし、このような従来の扁平形冷陰極蛍光ランプでは、ガラス管1の成形時にその成形を容易にするためにガラス管1の表面を加熱しながら扁平形状に成形しているが、ガラス管1から放出された不純ガスがガラス管内の蛍光体被膜2に吸着され、ガラス管内の排気時に不純ガスを全て除去することが困難であり、その結果、ガラス管1内に残留している不純ガスのために、ランプ初期点灯時に陽光柱のスネーキング、チラツキ現象が発生する問題点があった。
【0005】
さらに、ランプ点灯時に扁平形冷陰極蛍光ランプはガラス管1を異形状に成形しているため、従来の真円形状の冷陰極蛍光ランプと比較して陽光柱拡散しづらく、ランプ管壁の一部分の温度が上昇しやすくなることも初期点灯時に陽光柱のスネーキング、チラツキ現象の要因となっている。そして、ガラス管1内に残留している不純ガス除去手段として、ランプ印加電流を増加させてガラス管1及び蛍光体被膜2を熱して不純ガスの除去を行っているが、ランプ印加電流が増加されることで蛍光体被膜2の表面にスパッタ層が形成されやすくなり、ランプ光量が低減する問題点があった。
【特許文献1】特開平9−245736号公報
【特許文献2】実開平5−68068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ランプ初期点灯時の不純ガス除去方式を変更することにより、ランプ光量を改善した扁平形冷陰極蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の扁平形冷陰極蛍光ランプは、ガラス管軸方向において少なくとも1箇所以上の楕円もしくは扁平形状に成形されたガラス管内面に蛍光体被膜を形成し、前記ガラス管内部に水銀及び希ガスを封入し、前記ガラス管両端に導入線を気密に封着し、前記導入線の前記ガラス管内の端部に電極を接続し、当該電極に不純ガス吸着作用(ゲッター効果)を有する金属物質(Zr,Al等)を単体でもしくは複数種を混合して装備したものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の扁平形冷陰極蛍光ランプにおいて、前記電極は形状を有底筒状金属もしくは円筒状金属電極とし、前記不純ガス吸着作用がある金属物質は当該電極の内周面部分のみに装備したことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明の扁平形冷陰極蛍光ランプは、ガラス管軸方向において少なくとも1箇所以上の楕円もしくは扁平形状に成形されたガラス管内面に蛍光体被膜を形成し、前記ガラス管内部に水銀及び希ガスを封入し、前記ガラス管両端に導入線を気密に封着し、前記導入線の前記ガラス管内の端部に電極を接続し、ランプ発光時にガラス管内の放電空間内で高温になる箇所である電極付近の蛍光体被膜表面部分に不純ガス吸着作用がある金属物質を単体でもしくは複数種混合して装備したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガラス管内の電極に不純ガス吸着作用を有する金属物質を装備させ、あるいはランプ発光時にガラス管内の放電空間内で高温になる箇所である電極付近の蛍光体被膜表面部分に不純ガス吸着作用がある金属物質を装備させることで、ランプ初期点灯時に蛍光体被膜から放出される不純ガスを金属物質にて吸着して除去することができ、従来よりもランプ光量を改善した扁平形冷陰極蛍光ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0012】
(第1の実施の形態)図1は、本発明の第1の実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプの管軸方向に沿った断面図及び側面図である。ガラス管1はその管軸方向において少なくとも1箇所以上が楕円もしくは扁平形状に成形してあり、このガラス管1の内面に蛍光体被膜2を形成し、水銀及び希ガスをガラス管1内に封入し、ガラス管1の両端に気密に導入線4を封着してある。導入線4のガラス管内側の端部に電極3が接続してあり、この電極3には、不純ガス吸着作用(ゲッター効果)を有する金属物質5(例えば、Zr,Al等)を単体でもしくは複数種混合して装備させてある。電極3の形状は有底筒状金属もしくは円筒状金属であり、その内周面にのみ不純ガス吸着作用がある金属物質5を装備させている。
【0013】
これにより、本実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプでは、ガラス管1内の電極4に不純ガス吸着作用を有する金属物質5を装備させることで、低いランプ印加電流でもガラス管1内に残留している不純ガスの除去を行うことが可能になり、さらには低いランプ印加電流で点灯が可能になるためランプ光量が向上する。
【0014】
(第2の実施の形態)図2(a)、(b)は、本発明の第2の実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプの管軸方向に沿った断面図及びA線断面図である。本実施の形態の特徴は、ガラス管1の内部両端の電極3の形状にあり、板状金属製であることを特徴とする。その他の各部の構成は図1に示した第1の実施の形態と共通であり、対応する要素には同一の符号を付して示してある。本実施の形態では、板状の電極3に不純ガス吸着作用がある金属物質5を装備させるときには、導入線4側に互いに向い合っている板状表面部分のみに装備させる。
【0015】
この第2の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様に、ガラス管1内の電極4に不純ガス吸着作用を有する金属物質5を装備させることで、低いランプ印加電流でもガラス管1内に残留している不純ガスの除去を行うことが可能になり、さらには低いランプ印加電流で点灯が可能になるためランプ光量が向上する。
【0016】
図3は、本発明の第1の実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプと従来の扁平形冷陰極蛍光ランプとの初期点灯時のスネーキング、チラツキ発生数を表にしたものである。従来ランプでは20本のうち17本でスネーキング、チラツキが発生していたが、本実施の形態のランプでは20本での試験中1本もスネーキング、チラツキが発生しなかった。
【0017】
図4は、本発明の第1の実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプと従来の扁平形冷陰極蛍光ランプとの不純ガス除去後によるランプ特性を表にしたものである。本実施の形態のランプと従来ランプとを比較すると、色度X、色度Yはほとんど変化しない一方で、輝度や全光束の値が上昇している。よって本実施の形態のランプは不純ガスが従来ランプよりもよく除去できていることが確認できた。
【0018】
図5は、本発明の第1の実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプと従来の真円形状冷陰極蛍光ランプの電力別管壁温度特性を示すグラフである。2.5Wを例にとって見ると、従来ランプは2.5Wの消費電力で51℃までしか温度上昇しなかったが、本実施の形態のランプでは55℃まで温度が上昇している。これにより、本実施の形態のランプでは、ランプ印加電流が増加されることで蛍光体被膜2表面にスパッタ層が形成されやすくなって、ランプ光量が低減するのをよりよく抑制できることが確認できた。
【0019】
(第3の実施の形態)図6(a)、(b)は、本発明の第3の実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプの管軸方向に沿った断面図及び正面図である。ガラス管1は軸方向において少なくとも1箇所以上が楕円もしくは扁平形状に成形されている。このガラス管1の内面に蛍光体被膜2を形成し、ガラス管1の内部に水銀及び希ガスを封入すると共に、両管端に導入線4を気密に封着し、当該導入線4のガラス管内側の端部に電極3を接続してある。さらに、ランプ発光時にガラス管1内の放電空間において高温になる箇所である電極3付近の蛍光体被膜2の表面部分に、不純ガス吸着作用(ゲッター効果)を有する金属物質5(例えば、Zr,Al等)を単体でもしくは複数種混合して装備させてある。この不純ガス吸着作用を有する金属物質5の装備位置は、電極3付近の蛍光体被膜2の表面部分であって、電極放電側先端(放電空間内)より中央寄りに突出しない位置、すなわち、蛍光体被膜2の表面のランプ発光時において電極3からのグロー放電に覆われない箇所にするのが好ましい。
【0020】
本実施の形態によれば、不純ガス吸着作用がある金属物質の存在によって第1の実施の形態、第2の実施の形態と同様に、低いランプ印加電流でもガラス管1内に残留している不純ガスを除去することが可能であり、従来よりも低いランプ印加電流で点灯が可能になるためランプ光量が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプの管軸方向に沿った断面図及び側面図。
【図2】本発明の第2の実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプの管軸方向に沿った断面図及びA線断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプと従来の扁平形冷陰極蛍光ランプとの初期点灯時のスネーキング、チラツキ発生数を示す表。
【図4】本発明の第1の実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプと従来の扁平形冷陰極蛍光ランプとの不純ガス除去後によるランプ特性を示す表。
【図5】本実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプと従来の真円形状冷陰極蛍光ランプとの電力別管壁温度特性を示すグラフ。
【図6】本発明の第3の実施の形態の扁平形冷陰極蛍光ランプの管軸方向に沿った断面図及び側面図。
【図7】従来の扁平形冷陰極蛍光ランプの管軸方向に沿った断面図及び側面図。
【符号の説明】
【0022】
1 ガラス管
2 蛍光体被膜
3 電極
4 導入線
5 不純ガス吸着作用を有する金属物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管軸方向において少なくとも1箇所以上の楕円もしくは扁平形状に成形されたガラス管の内面に蛍光体被膜を形成し、前記ガラス管内部に水銀及び希ガスを封入し、前記ガラス管両端に導入線を気密に封着し、当該導入線の前記ガラス管側の端部に電極を接続し、当該電極に、不純ガス吸着作用を有する金属物質を単体でまたは複数種混合して装備させたことを特徴とする扁平形冷陰極蛍光ランプ。
【請求項2】
前記電極は有底筒状金属もしくは円筒状金属であり、前記不純ガス吸着作用を有する金属物質は当該電極の内周面に装備させたことを特徴とする請求項1に記載の扁平形冷陰極蛍光ランプ。
【請求項3】
ガラス管軸方向において少なくとも1箇所以上の楕円もしくは扁平形状に成形されたガラス管の内面に蛍光体被膜を形成し、前記ガラス管内部に水銀及び希ガスを封入し、前記ガラス管両端に封着された導入線を気密に封着し、当該導入線の前記ガラス管側の端部に電極を接続し、ランプ発光時に前記ガラス管の放電空間内で高温になる箇所である電極付近の蛍光体被膜表面部分に不純ガス吸着作用を有する金属物質を単体でまたは複数種混合して装備させたことを特徴とする扁平形冷陰極蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−202514(P2006−202514A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10160(P2005−10160)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】