扉付収納装置
【課題】 収納棚及び仮置棚機能を有すると共に、簡易な構造で使い勝手の良い扉付収納装置を提供する。
【解決手段】 扉付収納装置1は、収納体10と、収納体10の中に収納された棚本体20と、閉状態において収納体10の前面を塞ぐ扉30と、棚本体20と扉30とを連動させるアーム体40aとを備えている。アーム体40aは、ピン58を介して棚本体20に回動自在に接続されており、その第2部分42はローラ44を介して収納体10の側面11aに形成された第1ガイド溝17に係合している。第1ガイド溝17は、その最下端が最上端を共通とするピン58を中心とした円弧状の仮想溝の最下端より下方に位置する曲線形状に形成されている。従って、開状態でのピン58の位置は二点鎖線で示す閉状態での位置より低くなる。即ち、開状態への移動に伴って棚本体20が下方に移動するため、棚本体20への収納等の作業が容易となり、使い勝手が向上する。
【解決手段】 扉付収納装置1は、収納体10と、収納体10の中に収納された棚本体20と、閉状態において収納体10の前面を塞ぐ扉30と、棚本体20と扉30とを連動させるアーム体40aとを備えている。アーム体40aは、ピン58を介して棚本体20に回動自在に接続されており、その第2部分42はローラ44を介して収納体10の側面11aに形成された第1ガイド溝17に係合している。第1ガイド溝17は、その最下端が最上端を共通とするピン58を中心とした円弧状の仮想溝の最下端より下方に位置する曲線形状に形成されている。従って、開状態でのピン58の位置は二点鎖線で示す閉状態での位置より低くなる。即ち、開状態への移動に伴って棚本体20が下方に移動するため、棚本体20への収納等の作業が容易となり、使い勝手が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は扉付収納装置に関し、特に、キッチンの吊戸棚の下面等に取付けられる扉付収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調味料等を収納する、又は調理時に皿等を一時的に載せる仮置き棚として使用するために、キッチンの吊戸棚の下面に取付ける種々の扉付収納装置や昇降棚装置等が提案されている。
【0003】
図11は特許文献1で開示された昇降棚装置の開状態を示す概略斜視図であり、図12は図11で示したXII−XIIラインの拡大断面図である。
【0004】
これらの図を参照して、昇降棚装置70は、キッチンの壁面や天井に取付けられた吊戸棚80の下面であって、前方側(図12の左側)の照明装置81の後方側(図12の右側)に取付けられている。尚、昇降棚装置70は左右対称に構成されているため、以降では昇降棚装置70の左側部分(図12で示す部分)を中心に説明する。
【0005】
昇降棚装置70は、図で示す開状態において仮置き棚としての機能を発揮する二段の棚板71、72を備えている。又、吊戸棚80の下面に取付けられた取付部材79と上方側の棚板71の幅方向(図12の貫通方向)の端部との間には、前後に略平行に配置された一対の上アーム73a、73bが回動自在に接続されている。更に、上方側の棚板71の幅方向の端部と下方側の棚板72の幅方向の端部との間には、前後に略平行に配置された一対の下アーム74a、74bが回動自在に接続されている。この上アーム73a、73b及び下アーム74a、74bによって、棚板71、72は水平状態を保ったまま昇降自在となる。
【0006】
又、昇降棚装置70は、その一方端が取付部材79に回動自在に接続され、他方端が上アーム73bに接続された、付勢手段であるガススプリング77を備えている。ガススプリング77は、図で示す開状態においては上アーム73bを棚板71が降下する方向に付勢するため、各部材の配置態様が保持される。
【0007】
又、開状態における昇降棚装置70の棚板71、72は、後述する閉状態より下方側に位置しているため、使用者にとって適度な高さになると共に、使用時において照明装置81等に阻害されることが無い。
【0008】
このような昇降棚装置70は、下方側の棚板72の下面に形成された溝状の手掛部75を掴んで上方に押し上げると、上アーム73a、73b及び下アーム74a、74bが同時に回動して逆くの字形状となる。すると、棚板71、72が水平状態のまま上昇して、以下で示す閉状態となる。
【0009】
図13は図11で示した昇降棚装置の閉状態を示す断面図であって、図12に対応するものである。
【0010】
図を参照して、閉状態の昇降棚装置70にあっては、上アーム73a、73b及び下アーム74a、74bが折畳まれ、棚板71、72が照明装置81の後方側で重なるような配置状態となる。そして、ガススプリング77は、図で示す閉状態においては上アーム73bを棚板71が上昇する方向に付勢するため、各部材の配置態様が保持される。従って、不使用時(閉状態)においてはコンパクトに収容することができる。
又、上述したような昇降棚装置70に限らず、例えば棚板や収納棚に接続される複数のアームがクロス状に形成されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−175333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような従来の昇降棚装置等では、前後に略平行に配置された一対のアームやクロス状に形成されたアーム等、棚板の支持部毎に複数のアームが必要となる。そのため、装置全体の構造が複雑であった。
【0013】
又、特許文献1で開示された昇降棚装置においては、調味料等を常時収納できる収納部が設けられておらず、仮置き棚としての使用のみに限定されてしまうため、使用用途の限られた昇降棚装置となっていた。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、収納棚及び仮置棚機能を有すると共に、簡易な構造で使い勝手の良い扉付収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、扉付収納装置であって、少なくとも前面と下面とが開放された収納体と、収納体の中に収納される棚本体と、収納体の前面を開閉自在に塞ぐと共に、開状態では棚本体の下方に移動し、その背面が棚の機能を発揮する扉と、棚本体と扉とを連動させるアーム体とを備え、棚本体は、扉の開状態への移動に伴って下方に移動するものである。
【0016】
このように構成すると、棚本体は扉の開状態への移動に応じて下方に移動する。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、アーム体は、収納体の側面と棚本体の収納体側の側板との間に配置され、その位置で移動自在となるように棚本体の幅方向に延びる所定の軸の周りに回動自在に接続されるものである。
【0018】
このように構成すると、アーム体は棚本体の側板の外側で移動する。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、側板は、収納体の側面に対して上下にのみ移動するように係合するものである。
【0020】
このように構成すると、棚本体は移動時に傾かない。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載の発明の構成において、アーム体は、軸への接続部を中心として扉に接続される第1部分と収納体の側面に係合する第2部分とからなるL字状の平板を含むものである。
【0022】
このように構成すると、アーム体への荷重はその面内に生じる。
【0023】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、第2部分の端部にはローラが設けられると共に、側面にはローラが移動自在に係合するガイド溝が設けられ、ガイド溝は、棚本体が上方位置にある時の軸を中心とした円弧に対して、最上端は共通で且つその最下端が円弧の最下端より下方に位置する曲線形状に形成されるものである。
【0024】
このように構成すると、ローラの下方への移動に伴い、アーム体が回動する軸の位置が下方に移動する。
【0025】
請求項6記載の発明は、請求項3から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、アーム体は、軸の周りにおいて扉を閉状態に向かう方向に付勢されるものである。
【0026】
このように構成すると、扉の閉状態への移動に要する力が軽減される。
【0027】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、扉を閉状態にした時、上昇した棚本体の底面と扉の外面とで収納体の内部が囲われるものである。
【0028】
このように構成すると、収納体の前面及び下面を塞ぐための部材を別途必要としない。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、棚本体は扉の開状態への移動に応じて下方に移動するため、棚本体への収納等が容易となり、使い勝手が向上する。
【0030】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、アーム体は棚本体の側板の外側で移動するため、棚本体への収納等の作業をアーム体が阻害しない。
【0031】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、棚本体は移動時に傾かないため、使用状態が安定する。
【0032】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載の発明の効果に加えて、アーム体への荷重はその面内に生じるため、効率的なアーム体の形状となる。
【0033】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、ローラの下方への移動に伴い、アーム体が回動する軸の位置が下方に移動するため、曲線形状によって棚本体の下方への移動量を調整できる。
【0034】
請求項6記載の発明は、請求項3から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、扉の閉状態への移動に要する力が軽減されるため、使い勝手が更に向上する。
【0035】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、収納体の前面及び下面を塞ぐための部材を別途必要としないため、全体がコンパクトになり、効率的な構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の第1の実施の形態による扉付収納装置を示す概略斜視図であって、(1)は閉状態を示すものであり、(2)は開状態を示すものである。
【図2】図1で示したII−IIラインの拡大断面図である。
【図3】図1で示したIII−IIIラインの拡大断面図である。
【図4】図2で示したIV−IVラインの拡大断面図である。
【図5】図2で示したV−Vラインから見た図である。
【図6】図5で示したVI−VIラインの拡大断面図である。
【図7】図5で示したVII−VIIラインの拡大断面図である。
【図8】図3で示した第1ガイド溝の形状を示す模式図である。
【図9】図1の(1)で示した扉付収納装置の扉が中間的に開いた状態を示す概略断面図である。
【図10】図1の(2)で示した開状態の扉付収納装置を示す概略断面図である。
【図11】従来の昇降棚装置の開状態を示す概略斜視図である。
【図12】図11で示したXII−XIIラインの拡大断面図である。
【図13】図11で示した昇降棚装置の閉状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1はこの発明の第1の実施の形態による扉付収納装置を示す概略斜視図であって、(1)は閉状態を示すものであり、(2)は開状態を示すものであり、図2は図1で示したII−IIラインの拡大断面図であり、図3は図1で示したIII−IIIラインの拡大断面図であり、図4は図2で示したIV−IVラインの拡大断面図であり、図5は図2で示したV−Vラインから見た図である。
【0038】
これらの図を参照して、扉付収納装置1は、キッチンの壁面や天井に設置された吊戸棚80の下面に取付けられ、吊り状態で使用されている。そして、扉付収納装置1は、収納体10と、収納体10の中に収納された棚本体20と、図1の(1)で示す閉状態において収納体10の前面を塞ぐ扉30と、棚本体20と扉30の幅方向(図2の貫通方向)の各々とを接続してこれらを連動させるアーム体40a、40bとを備えている。そして、図1の(1)で示す閉状態から、扉30をアーム体40a、40bを介して下方側に回転させることによって、図1の(2)で示す開状態となり、棚本体20に収納された調味料等を取り出すことができる。尚、開状態の扉30の背面は略水平になるように設定されているため、開状態においては扉30の背面が仮置棚の機能を発揮することになる。従って、棚本体20による収納棚機能と扉30の背面による仮置棚機能とを有する扉付収納装置1となる。
【0039】
尚、開状態における扉付収納装置1の各部材の状態や効果については後述するため、以降ではまず閉状態における扉付収納装置1について説明する。又、扉付収納装置1は、後述する緩衝部材16を除いては左右対称に構成されているため、以降では特に棚本体20と収納体10との接続箇所及びアーム体40a、40bの構造等については、扉付収納装置1の左側部分(緩衝部材16側の部分)を中心に説明する。
【0040】
収納体10は、その幅方向の両端に位置する側面11a、11bと、側面11a、11bを接続する逆L字形状断面の背面12とからなり、前面、下面及び上面の前面側の一部が開放された箱形状を有している。又、側面11a、11bの前面側の上方の各々を接続するように、幅方向に延びる係止部材15が図示しないネジ等で取付けられている。係止部材15によって、扉30の閉状態を超える上方側への移動が阻止されている。又、係止部材15の長手方向の一方端部には、閉状態の扉30の背面に接触する緩衝部材16が設置されている。緩衝部材16の内部にはバネが設けられており、その付勢力によって扉30を閉じる際の背面と係止部材15との接触による衝撃が緩和される。
【0041】
又、収納体10の側面11aの内面には、特定曲線形状の第1ガイド溝17が形成されていると共に、前面側及び背面12側の各々には上下方向に延びる第2ガイド溝18a、18bの各々が形成されている。第1ガイド溝17及び第2ガイド溝18a、18bの各々の詳細な形状及び効果については後述する。
【0042】
棚本体20は、底板21と、底板21の幅方向の両端部に接続された側板22a、22bと、底板21に接続された背板23と、底板21と背板23との接続部の外方側に形成された軸受部24とを備えている。軸受部24は、幅方向に延びる凸部28を有する円筒形状に形成されており、その内部にはアーム体40aが接続される軸体50が設置されている。軸体50は後述する開閉補助バネ55を有しており、図2及び図3の破線矢印で示すように、アーム体40aを常に閉状態に向かう方向に付勢している。このような軸体50の詳細な構造については後述する。又、閉状態における棚本体20は、その全体が収納体10の中に収納されており、底板21が収納体10の下面を塞いだ状態となる。
【0043】
更に、側板22aの収納体10の側面11a側の外面には、収納体10の側面11aの第2ガイド溝18a、18bの各々に対応した位置に軸25a〜25cが形成されている。軸25aは第2ガイド溝18aに移動自在に係合するように形成されていると共に、軸25b、25cの各々の先端部には第2ガイド溝18bに移動自在に係合するローラ26a、26bの各々が取付けられている。従って、棚本体20は収納体10の側面11aに対して、第2ガイド溝18a、18bの方向にのみ、即ち上下方向にのみ移動自在となる。
【0044】
扉30は、上述した通り、閉状態において収納体10の前面をその外面で塞ぐように形成されている。従って、扉30と棚本体20の底板21とによって、収納体10の内部が囲われることになる。そのため、収納体10の前面及び下面を塞ぐための部材を別途必要としないので、扉付収納装置1全体がコンパクトになり、効率的な構造となる。
【0045】
アーム体40aは、収納体10の側面11aと棚本体20の側板22aとの間に配置され、上述した軸体50の周りに回動自在に接続されている。更に、この接続部を中心として、扉30の端面に接続される第1部分41と、収納体10の側面11aの第1ガイド溝17の最上端に係合する第2部分42とを有するL字板状に形成されている。従って、アーム体40aは、閉状態から開状態までの回動範囲において、収納体10の側面11aと棚本体20の側板22aとの間、即ち棚本体20の側板22aの外側で移動自在となる。そのため、棚本体20への調味料等の収納及び取出し等の作業をアーム体40aが阻害することが無い。
【0046】
又、第2部分42の先端部には、第1ガイド溝17に移動自在に係合するローラ44が取付けられている。このように、第2部分42が収納体10の側面11aに係合されることによって、開閉時に発生するアーム体40aへの荷重はその面内に生じることになる。従って、アーム体40aを薄い板状に形成できるので、効率的なアーム体40aの形状となる。
【0047】
このように、アーム体40aは単体で構成されており、図11で示した従来例の平行リンクのように複数のアームを必要としない。従って、簡易な構造の扉付収納装置1となる。
【0048】
更に、アーム体40aの第1部分41における扉30より前方側には、幅方向に延びる扉30の開閉補助用の把持棒31が取付けられている。把持棒31は、扉30の開閉補助機能に加えて、閉状態においては布巾やレードル等を仮掛けできるため、使い勝手が良い。
【0049】
次に、アーム体40aが回動自在に接続される軸体50の詳細な構造について説明する。
【0050】
図6は図5で示したVI−VIラインの拡大断面図であり、図7は図5で示したVII−VIIラインの拡大断面図である。
【0051】
これらの図及び図5を併せて参照して、アーム体40aは、上述した通り棚本体20の軸受部24内に設置された軸体50に接続されている。軸体50は、軸受部24の外方端部に設置された円柱形状の第1接続体51と、軸受部24の内方側に設置された突起体53を有する円柱形状の第2接続体52と、第1接続体51及び第2接続体52間に接続された開閉補助バネ55とを備えている。そして、アーム体40aは、軸体50の第1接続体51にピン58によって接続されている。
【0052】
尚、図6で示す第2接続体52の突起体53は、軸受部24の凸部28内に配置されているため、第2接続体52は軸体50の軸方向を中心とした回動が阻止されると共に、軸方向へは移動自在となる。一方、第1接続体51には突起体53が形成されていないため、軸体50の軸方向を中心として回動自在となるが、軸方向への移動はピン58によって阻止される。従って、アーム体40aが回転すると第1接続体51のみが回転するため、第1接続体51と第2接続体52との間に接続された開閉補助バネ55がねじられた状態となって付勢力を発生する。そして、この付勢力はアーム体40aを閉状態に向かう方向に付勢するように設定されている。尚、本実施の形態においては、閉状態においても開閉補助バネ55に上述した付勢力が発生するように、開閉補助バネ55を予め2〜3回程度ねじった状態で組み立てられているため、閉状態での扉30の位置が安定する。
【0053】
次に、特定曲線形状を有する第1ガイド溝の詳細な形状及び効果について説明する。
【0054】
図8は図3で示した第1ガイド溝の形状を示す模式図である。
【0055】
図を参照して、第1ガイド溝17の中心線は、閉状態にある時(図示しない棚本体が最上方位置にある時)のアーム体40の第2部分42の先端部46の位置を始点とした、下方に延びる円弧に類似した曲線形状に形成されている。従って、第1ガイド溝17の始点は最上端に位置することになる。一方、二点鎖線で示す仮想溝85の中心線の形状は、閉状態におけるアーム体40の軸体50を中心とした、軸体50から先端部46までの距離に相当する半径Rの円弧である。具体的には、仮想溝85の最上端に位置する始点は、第1ガイド溝17と共通であり、最下端に位置する終点は、閉状態と同一の高さ位置で軸体50を中心に角度θ1だけ下方に回転した、二点鎖線で示すアーム体40の先端部46の位置となる。尚、この角度θ1は、アーム体40を開状態(図示しない扉の背面が略水平となる状態)にするために必要な回転角度である。そして、第1ガイド溝17の最下端に位置する終点は、仮想溝85の終点より一点鎖線で示す垂直線上において距離L1だけ下方に位置している。
【0056】
従って、実線で示す開状態のアーム体40の先端部46の位置も、二点鎖線で示す先端部より距離L1だけ下方に位置することになる。この時、上述した通り、アーム体40は図示しない収納体の側面に対して上下にのみ移動自在に構成されているため、開状態におけるアーム体40は、二点鎖線で示すアーム体と同一の回転角度で、且つ距離L1だけ垂直下方に移動した状態となる。即ち、上述した角度θ1と、第1ガイド溝17に係合するアーム体40の開状態における回転角度θ2は同一となる。更に、アーム体40が接続された軸体50も、破線で示す直線上において、上述した距離L1と同一の距離L2だけ垂直下方に移動することになる。
【0057】
尚、第1ガイド溝17は円弧に類似した曲線形状に形成されているため、閉状態から開状態に移行する間は、アーム体40が徐々に下方に移動することになる。即ち、例えばアーム体40が角度θ2/2だけ回転した中間的に開いた状態においては、アーム体40の軸体50の下方への移動距離は約L2/2となる。
【0058】
又、上述した距離L1を変更する、即ち第1ガイド溝17の終点の高さ位置を変更して曲線形状を調整することによって、アーム体40の下方への移動量を容易に調整することができる。即ち、図示しない棚本体の下方への移動量を容易に調整することができる。
【0059】
次に、扉付収納装置1の扉30の具体的な動作概要について説明する。
【0060】
図9は図1の(1)で示した扉付収納装置の扉が中間的に開いた状態を示す概略断面図であって、図3に対応するものである。
【0061】
図を参照して、把持棒31を把持した状態で、白矢印で示すように扉30を下方側へ移動させると、アーム体40aがピン58を介して図示しない軸体を中心に回転する。すると、アーム体40aの第2部分42のローラ44が第1ガイド溝17に沿って移動する。上述した通り、第1ガイド溝17は特定の曲線形状に形成されているため、ローラ44が第1ガイド溝17に沿って移動することによって、アーム体40aのピン58を介して、棚本体20が破線で示す閉状態の位置から下方へ移動する。この時、上述した通り棚本体20は上下にのみ移動自在であるため、下方への移動時において棚本体20が不用意に傾く虞が無い。従って、使用状態が安定する。
【0062】
又、上述した通り、図で示す扉30が中間的に開いた状態においても、図示しない軸体が有する開閉補助バネによって、扉30を閉状態へ向かう方向に破線矢印で示すようにアーム体40aを付勢している。従って、開状態への移動時においては扉30が自重によって急激に開く虞が低減すると共に、閉状態への移動時においては移動に要する力(扉30を持ち上げる力)が軽減される。そのため、扉付収納装置1の使い勝手が更に向上する。
【0063】
そして、扉30を更に下方側へ移動させると、図10で示す開状態となる。
【0064】
図10は図1の(2)で示した開状態の扉付収納装置を示す概略断面図であって、図3に対応するものである。
【0065】
図を参照して、図9で示した状態から更に扉30を白矢印で示すように下方側へ移動させると、アーム体40aのローラ44が第1ガイド溝17の最下端(終点)に当接する。すると、扉30の背面が略水平となって仮置棚機能を発揮する状態となり、扉付収納装置1が開状態となる。この時、上述した通り、アーム体40aのピン58の位置(棚本体20の位置)は、二点鎖線で示す閉状態の位置より距離L2だけ下方側に移動している。即ち、棚本体20は破線で示す閉状態の位置から距離L2だけ下方側に移動している。従って、使用者は吊戸棚80の下面に取付けられた照明装置81等に阻害されず、棚本体20への調味料等の収納及び取出し等の作業が容易となり、使い勝手が向上する。
【0066】
又、開状態における棚本体20の位置は、閉状態での位置から前後方向には移動していないため、例えば開状態において棚本体20が前方側に移動することによって使用者に圧迫感を与えることが無い。
【0067】
尚、上記の実施の形態では、扉付収納装置は吊戸棚の下面に取付けて使用されているが、例えば収納体の背面を壁面に取付ける等、扉の開閉動作が発揮できる状態であれば、他の使用形態でも同様に適用できることは言うまでも無い。
【0068】
又、上記の実施の形態では、収納体は前面、下面及び上面の一部が開放された特定形状に形成されているが、収納体は少なくとも前面及び下面が開放されていれば、他の形状であっても良い。
【0069】
更に、上記の実施の形態では、特定構造の棚本体を備えているが、収納体の中に収納されると共に開状態への移動に伴って下方に移動できるものであれば、例えば底板のみで構成する等、他の構造であっても良い。
【0070】
更に、上記の実施の形態では、開状態における扉の背面が略水平になることで棚の機能を発揮しているが、開状態において扉の背面が棚の機能が発揮されていれば、例えば扉の背面に側壁を形成して、開状態において若干傾斜するように設定されていても良い。
【0071】
更に、上記の実施の形態では、特定形状のアーム体及び第1ガイド溝によって棚本体が移動するように構成されているが、棚本体が扉の開状態への移動に伴って下方に移動するように構成されていれば、第1ガイド溝は無くても良く、アーム体は他の構成によって棚本体と扉とを連動させるものであっても良い。
【0072】
更に、上記の実施の形態では、一対のアーム体によって扉の幅方向の両端面の各々を支持するように構成されているが、一つのアーム体によって扉の幅方向の一方端面のみを支持するように構成されていても良い。
【0073】
更に、上記の実施の形態では、アーム体は第1部分及び第2部分を有するL字板状に形成されているが、第1部分及び第2部分に相当する部分があれば、例えば三角板状等、他の形状に形成されていても良い。
【0074】
更に、上記の実施の形態では、アーム体は棚本体の外側で移動するように構成されているが、棚本体の内側で移動するように構成されていても良い。
【0075】
更に、上記の実施の形態では、アーム体は特定の軸体に接続されているが、アーム体が棚本体の幅方向に延びる所定の軸の周りに回動自在に接続されていれば、軸体は他の構造であっても良い。
【0076】
更に、上記の実施の形態では、棚本体の側板に形成された複数の軸のうち、後方側の第2ガイド溝に係合する軸のみにローラが設けられているが、前方側の第2ガイド溝に係合する軸にもローラを設けても良い。
【0077】
更に、上記の実施の形態では、棚本体は特定の構造で収納体の側面に取付けられているが、棚本体が収納体の側面に対して上下にのみ移動できれば、棚本体は他の構成で収納体に取付けられていても良い。又は、上下のみに限らず、棚本体が開状態への移動に伴って下方に移動できれば、例えば前後方向にも移動自在となるように構成しても良い。
【0078】
更に、上記の実施の形態では、アーム体の第2部分はローラによって収納体の側面の第1ガイド溝に係合されているが、第2部分が収納体の側面に係合できれば、他の方法で係合されていても良い。
【0079】
更に、上記の実施の形態では、特定構造の軸体によって扉を閉状態に向かう方向にアーム体を付勢しているが、このような付勢力が発揮できるものであれば、他の構造の軸体であっても良い。又は、このような付勢力は無くても良い。
【0080】
更に、上記の実施の形態では、閉状態において棚本体の底板(底面)と扉の外面とによって収納体の内部が囲われているが、閉状態において少なくとも扉の外面が収納体の前面を塞ぐように構成されていれば良い。
【符号の説明】
【0081】
1…扉付収納装置
10…収納体
11…側面
17…第1ガイド溝
20…棚本体
22…側板
30…扉
40…アーム体
41…第1部分
42…第2部分
44…ローラ
50…軸体
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【技術分野】
【0001】
この発明は扉付収納装置に関し、特に、キッチンの吊戸棚の下面等に取付けられる扉付収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調味料等を収納する、又は調理時に皿等を一時的に載せる仮置き棚として使用するために、キッチンの吊戸棚の下面に取付ける種々の扉付収納装置や昇降棚装置等が提案されている。
【0003】
図11は特許文献1で開示された昇降棚装置の開状態を示す概略斜視図であり、図12は図11で示したXII−XIIラインの拡大断面図である。
【0004】
これらの図を参照して、昇降棚装置70は、キッチンの壁面や天井に取付けられた吊戸棚80の下面であって、前方側(図12の左側)の照明装置81の後方側(図12の右側)に取付けられている。尚、昇降棚装置70は左右対称に構成されているため、以降では昇降棚装置70の左側部分(図12で示す部分)を中心に説明する。
【0005】
昇降棚装置70は、図で示す開状態において仮置き棚としての機能を発揮する二段の棚板71、72を備えている。又、吊戸棚80の下面に取付けられた取付部材79と上方側の棚板71の幅方向(図12の貫通方向)の端部との間には、前後に略平行に配置された一対の上アーム73a、73bが回動自在に接続されている。更に、上方側の棚板71の幅方向の端部と下方側の棚板72の幅方向の端部との間には、前後に略平行に配置された一対の下アーム74a、74bが回動自在に接続されている。この上アーム73a、73b及び下アーム74a、74bによって、棚板71、72は水平状態を保ったまま昇降自在となる。
【0006】
又、昇降棚装置70は、その一方端が取付部材79に回動自在に接続され、他方端が上アーム73bに接続された、付勢手段であるガススプリング77を備えている。ガススプリング77は、図で示す開状態においては上アーム73bを棚板71が降下する方向に付勢するため、各部材の配置態様が保持される。
【0007】
又、開状態における昇降棚装置70の棚板71、72は、後述する閉状態より下方側に位置しているため、使用者にとって適度な高さになると共に、使用時において照明装置81等に阻害されることが無い。
【0008】
このような昇降棚装置70は、下方側の棚板72の下面に形成された溝状の手掛部75を掴んで上方に押し上げると、上アーム73a、73b及び下アーム74a、74bが同時に回動して逆くの字形状となる。すると、棚板71、72が水平状態のまま上昇して、以下で示す閉状態となる。
【0009】
図13は図11で示した昇降棚装置の閉状態を示す断面図であって、図12に対応するものである。
【0010】
図を参照して、閉状態の昇降棚装置70にあっては、上アーム73a、73b及び下アーム74a、74bが折畳まれ、棚板71、72が照明装置81の後方側で重なるような配置状態となる。そして、ガススプリング77は、図で示す閉状態においては上アーム73bを棚板71が上昇する方向に付勢するため、各部材の配置態様が保持される。従って、不使用時(閉状態)においてはコンパクトに収容することができる。
又、上述したような昇降棚装置70に限らず、例えば棚板や収納棚に接続される複数のアームがクロス状に形成されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−175333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような従来の昇降棚装置等では、前後に略平行に配置された一対のアームやクロス状に形成されたアーム等、棚板の支持部毎に複数のアームが必要となる。そのため、装置全体の構造が複雑であった。
【0013】
又、特許文献1で開示された昇降棚装置においては、調味料等を常時収納できる収納部が設けられておらず、仮置き棚としての使用のみに限定されてしまうため、使用用途の限られた昇降棚装置となっていた。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、収納棚及び仮置棚機能を有すると共に、簡易な構造で使い勝手の良い扉付収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、扉付収納装置であって、少なくとも前面と下面とが開放された収納体と、収納体の中に収納される棚本体と、収納体の前面を開閉自在に塞ぐと共に、開状態では棚本体の下方に移動し、その背面が棚の機能を発揮する扉と、棚本体と扉とを連動させるアーム体とを備え、棚本体は、扉の開状態への移動に伴って下方に移動するものである。
【0016】
このように構成すると、棚本体は扉の開状態への移動に応じて下方に移動する。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、アーム体は、収納体の側面と棚本体の収納体側の側板との間に配置され、その位置で移動自在となるように棚本体の幅方向に延びる所定の軸の周りに回動自在に接続されるものである。
【0018】
このように構成すると、アーム体は棚本体の側板の外側で移動する。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、側板は、収納体の側面に対して上下にのみ移動するように係合するものである。
【0020】
このように構成すると、棚本体は移動時に傾かない。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載の発明の構成において、アーム体は、軸への接続部を中心として扉に接続される第1部分と収納体の側面に係合する第2部分とからなるL字状の平板を含むものである。
【0022】
このように構成すると、アーム体への荷重はその面内に生じる。
【0023】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、第2部分の端部にはローラが設けられると共に、側面にはローラが移動自在に係合するガイド溝が設けられ、ガイド溝は、棚本体が上方位置にある時の軸を中心とした円弧に対して、最上端は共通で且つその最下端が円弧の最下端より下方に位置する曲線形状に形成されるものである。
【0024】
このように構成すると、ローラの下方への移動に伴い、アーム体が回動する軸の位置が下方に移動する。
【0025】
請求項6記載の発明は、請求項3から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、アーム体は、軸の周りにおいて扉を閉状態に向かう方向に付勢されるものである。
【0026】
このように構成すると、扉の閉状態への移動に要する力が軽減される。
【0027】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、扉を閉状態にした時、上昇した棚本体の底面と扉の外面とで収納体の内部が囲われるものである。
【0028】
このように構成すると、収納体の前面及び下面を塞ぐための部材を別途必要としない。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、棚本体は扉の開状態への移動に応じて下方に移動するため、棚本体への収納等が容易となり、使い勝手が向上する。
【0030】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、アーム体は棚本体の側板の外側で移動するため、棚本体への収納等の作業をアーム体が阻害しない。
【0031】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、棚本体は移動時に傾かないため、使用状態が安定する。
【0032】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載の発明の効果に加えて、アーム体への荷重はその面内に生じるため、効率的なアーム体の形状となる。
【0033】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、ローラの下方への移動に伴い、アーム体が回動する軸の位置が下方に移動するため、曲線形状によって棚本体の下方への移動量を調整できる。
【0034】
請求項6記載の発明は、請求項3から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、扉の閉状態への移動に要する力が軽減されるため、使い勝手が更に向上する。
【0035】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、収納体の前面及び下面を塞ぐための部材を別途必要としないため、全体がコンパクトになり、効率的な構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の第1の実施の形態による扉付収納装置を示す概略斜視図であって、(1)は閉状態を示すものであり、(2)は開状態を示すものである。
【図2】図1で示したII−IIラインの拡大断面図である。
【図3】図1で示したIII−IIIラインの拡大断面図である。
【図4】図2で示したIV−IVラインの拡大断面図である。
【図5】図2で示したV−Vラインから見た図である。
【図6】図5で示したVI−VIラインの拡大断面図である。
【図7】図5で示したVII−VIIラインの拡大断面図である。
【図8】図3で示した第1ガイド溝の形状を示す模式図である。
【図9】図1の(1)で示した扉付収納装置の扉が中間的に開いた状態を示す概略断面図である。
【図10】図1の(2)で示した開状態の扉付収納装置を示す概略断面図である。
【図11】従来の昇降棚装置の開状態を示す概略斜視図である。
【図12】図11で示したXII−XIIラインの拡大断面図である。
【図13】図11で示した昇降棚装置の閉状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1はこの発明の第1の実施の形態による扉付収納装置を示す概略斜視図であって、(1)は閉状態を示すものであり、(2)は開状態を示すものであり、図2は図1で示したII−IIラインの拡大断面図であり、図3は図1で示したIII−IIIラインの拡大断面図であり、図4は図2で示したIV−IVラインの拡大断面図であり、図5は図2で示したV−Vラインから見た図である。
【0038】
これらの図を参照して、扉付収納装置1は、キッチンの壁面や天井に設置された吊戸棚80の下面に取付けられ、吊り状態で使用されている。そして、扉付収納装置1は、収納体10と、収納体10の中に収納された棚本体20と、図1の(1)で示す閉状態において収納体10の前面を塞ぐ扉30と、棚本体20と扉30の幅方向(図2の貫通方向)の各々とを接続してこれらを連動させるアーム体40a、40bとを備えている。そして、図1の(1)で示す閉状態から、扉30をアーム体40a、40bを介して下方側に回転させることによって、図1の(2)で示す開状態となり、棚本体20に収納された調味料等を取り出すことができる。尚、開状態の扉30の背面は略水平になるように設定されているため、開状態においては扉30の背面が仮置棚の機能を発揮することになる。従って、棚本体20による収納棚機能と扉30の背面による仮置棚機能とを有する扉付収納装置1となる。
【0039】
尚、開状態における扉付収納装置1の各部材の状態や効果については後述するため、以降ではまず閉状態における扉付収納装置1について説明する。又、扉付収納装置1は、後述する緩衝部材16を除いては左右対称に構成されているため、以降では特に棚本体20と収納体10との接続箇所及びアーム体40a、40bの構造等については、扉付収納装置1の左側部分(緩衝部材16側の部分)を中心に説明する。
【0040】
収納体10は、その幅方向の両端に位置する側面11a、11bと、側面11a、11bを接続する逆L字形状断面の背面12とからなり、前面、下面及び上面の前面側の一部が開放された箱形状を有している。又、側面11a、11bの前面側の上方の各々を接続するように、幅方向に延びる係止部材15が図示しないネジ等で取付けられている。係止部材15によって、扉30の閉状態を超える上方側への移動が阻止されている。又、係止部材15の長手方向の一方端部には、閉状態の扉30の背面に接触する緩衝部材16が設置されている。緩衝部材16の内部にはバネが設けられており、その付勢力によって扉30を閉じる際の背面と係止部材15との接触による衝撃が緩和される。
【0041】
又、収納体10の側面11aの内面には、特定曲線形状の第1ガイド溝17が形成されていると共に、前面側及び背面12側の各々には上下方向に延びる第2ガイド溝18a、18bの各々が形成されている。第1ガイド溝17及び第2ガイド溝18a、18bの各々の詳細な形状及び効果については後述する。
【0042】
棚本体20は、底板21と、底板21の幅方向の両端部に接続された側板22a、22bと、底板21に接続された背板23と、底板21と背板23との接続部の外方側に形成された軸受部24とを備えている。軸受部24は、幅方向に延びる凸部28を有する円筒形状に形成されており、その内部にはアーム体40aが接続される軸体50が設置されている。軸体50は後述する開閉補助バネ55を有しており、図2及び図3の破線矢印で示すように、アーム体40aを常に閉状態に向かう方向に付勢している。このような軸体50の詳細な構造については後述する。又、閉状態における棚本体20は、その全体が収納体10の中に収納されており、底板21が収納体10の下面を塞いだ状態となる。
【0043】
更に、側板22aの収納体10の側面11a側の外面には、収納体10の側面11aの第2ガイド溝18a、18bの各々に対応した位置に軸25a〜25cが形成されている。軸25aは第2ガイド溝18aに移動自在に係合するように形成されていると共に、軸25b、25cの各々の先端部には第2ガイド溝18bに移動自在に係合するローラ26a、26bの各々が取付けられている。従って、棚本体20は収納体10の側面11aに対して、第2ガイド溝18a、18bの方向にのみ、即ち上下方向にのみ移動自在となる。
【0044】
扉30は、上述した通り、閉状態において収納体10の前面をその外面で塞ぐように形成されている。従って、扉30と棚本体20の底板21とによって、収納体10の内部が囲われることになる。そのため、収納体10の前面及び下面を塞ぐための部材を別途必要としないので、扉付収納装置1全体がコンパクトになり、効率的な構造となる。
【0045】
アーム体40aは、収納体10の側面11aと棚本体20の側板22aとの間に配置され、上述した軸体50の周りに回動自在に接続されている。更に、この接続部を中心として、扉30の端面に接続される第1部分41と、収納体10の側面11aの第1ガイド溝17の最上端に係合する第2部分42とを有するL字板状に形成されている。従って、アーム体40aは、閉状態から開状態までの回動範囲において、収納体10の側面11aと棚本体20の側板22aとの間、即ち棚本体20の側板22aの外側で移動自在となる。そのため、棚本体20への調味料等の収納及び取出し等の作業をアーム体40aが阻害することが無い。
【0046】
又、第2部分42の先端部には、第1ガイド溝17に移動自在に係合するローラ44が取付けられている。このように、第2部分42が収納体10の側面11aに係合されることによって、開閉時に発生するアーム体40aへの荷重はその面内に生じることになる。従って、アーム体40aを薄い板状に形成できるので、効率的なアーム体40aの形状となる。
【0047】
このように、アーム体40aは単体で構成されており、図11で示した従来例の平行リンクのように複数のアームを必要としない。従って、簡易な構造の扉付収納装置1となる。
【0048】
更に、アーム体40aの第1部分41における扉30より前方側には、幅方向に延びる扉30の開閉補助用の把持棒31が取付けられている。把持棒31は、扉30の開閉補助機能に加えて、閉状態においては布巾やレードル等を仮掛けできるため、使い勝手が良い。
【0049】
次に、アーム体40aが回動自在に接続される軸体50の詳細な構造について説明する。
【0050】
図6は図5で示したVI−VIラインの拡大断面図であり、図7は図5で示したVII−VIIラインの拡大断面図である。
【0051】
これらの図及び図5を併せて参照して、アーム体40aは、上述した通り棚本体20の軸受部24内に設置された軸体50に接続されている。軸体50は、軸受部24の外方端部に設置された円柱形状の第1接続体51と、軸受部24の内方側に設置された突起体53を有する円柱形状の第2接続体52と、第1接続体51及び第2接続体52間に接続された開閉補助バネ55とを備えている。そして、アーム体40aは、軸体50の第1接続体51にピン58によって接続されている。
【0052】
尚、図6で示す第2接続体52の突起体53は、軸受部24の凸部28内に配置されているため、第2接続体52は軸体50の軸方向を中心とした回動が阻止されると共に、軸方向へは移動自在となる。一方、第1接続体51には突起体53が形成されていないため、軸体50の軸方向を中心として回動自在となるが、軸方向への移動はピン58によって阻止される。従って、アーム体40aが回転すると第1接続体51のみが回転するため、第1接続体51と第2接続体52との間に接続された開閉補助バネ55がねじられた状態となって付勢力を発生する。そして、この付勢力はアーム体40aを閉状態に向かう方向に付勢するように設定されている。尚、本実施の形態においては、閉状態においても開閉補助バネ55に上述した付勢力が発生するように、開閉補助バネ55を予め2〜3回程度ねじった状態で組み立てられているため、閉状態での扉30の位置が安定する。
【0053】
次に、特定曲線形状を有する第1ガイド溝の詳細な形状及び効果について説明する。
【0054】
図8は図3で示した第1ガイド溝の形状を示す模式図である。
【0055】
図を参照して、第1ガイド溝17の中心線は、閉状態にある時(図示しない棚本体が最上方位置にある時)のアーム体40の第2部分42の先端部46の位置を始点とした、下方に延びる円弧に類似した曲線形状に形成されている。従って、第1ガイド溝17の始点は最上端に位置することになる。一方、二点鎖線で示す仮想溝85の中心線の形状は、閉状態におけるアーム体40の軸体50を中心とした、軸体50から先端部46までの距離に相当する半径Rの円弧である。具体的には、仮想溝85の最上端に位置する始点は、第1ガイド溝17と共通であり、最下端に位置する終点は、閉状態と同一の高さ位置で軸体50を中心に角度θ1だけ下方に回転した、二点鎖線で示すアーム体40の先端部46の位置となる。尚、この角度θ1は、アーム体40を開状態(図示しない扉の背面が略水平となる状態)にするために必要な回転角度である。そして、第1ガイド溝17の最下端に位置する終点は、仮想溝85の終点より一点鎖線で示す垂直線上において距離L1だけ下方に位置している。
【0056】
従って、実線で示す開状態のアーム体40の先端部46の位置も、二点鎖線で示す先端部より距離L1だけ下方に位置することになる。この時、上述した通り、アーム体40は図示しない収納体の側面に対して上下にのみ移動自在に構成されているため、開状態におけるアーム体40は、二点鎖線で示すアーム体と同一の回転角度で、且つ距離L1だけ垂直下方に移動した状態となる。即ち、上述した角度θ1と、第1ガイド溝17に係合するアーム体40の開状態における回転角度θ2は同一となる。更に、アーム体40が接続された軸体50も、破線で示す直線上において、上述した距離L1と同一の距離L2だけ垂直下方に移動することになる。
【0057】
尚、第1ガイド溝17は円弧に類似した曲線形状に形成されているため、閉状態から開状態に移行する間は、アーム体40が徐々に下方に移動することになる。即ち、例えばアーム体40が角度θ2/2だけ回転した中間的に開いた状態においては、アーム体40の軸体50の下方への移動距離は約L2/2となる。
【0058】
又、上述した距離L1を変更する、即ち第1ガイド溝17の終点の高さ位置を変更して曲線形状を調整することによって、アーム体40の下方への移動量を容易に調整することができる。即ち、図示しない棚本体の下方への移動量を容易に調整することができる。
【0059】
次に、扉付収納装置1の扉30の具体的な動作概要について説明する。
【0060】
図9は図1の(1)で示した扉付収納装置の扉が中間的に開いた状態を示す概略断面図であって、図3に対応するものである。
【0061】
図を参照して、把持棒31を把持した状態で、白矢印で示すように扉30を下方側へ移動させると、アーム体40aがピン58を介して図示しない軸体を中心に回転する。すると、アーム体40aの第2部分42のローラ44が第1ガイド溝17に沿って移動する。上述した通り、第1ガイド溝17は特定の曲線形状に形成されているため、ローラ44が第1ガイド溝17に沿って移動することによって、アーム体40aのピン58を介して、棚本体20が破線で示す閉状態の位置から下方へ移動する。この時、上述した通り棚本体20は上下にのみ移動自在であるため、下方への移動時において棚本体20が不用意に傾く虞が無い。従って、使用状態が安定する。
【0062】
又、上述した通り、図で示す扉30が中間的に開いた状態においても、図示しない軸体が有する開閉補助バネによって、扉30を閉状態へ向かう方向に破線矢印で示すようにアーム体40aを付勢している。従って、開状態への移動時においては扉30が自重によって急激に開く虞が低減すると共に、閉状態への移動時においては移動に要する力(扉30を持ち上げる力)が軽減される。そのため、扉付収納装置1の使い勝手が更に向上する。
【0063】
そして、扉30を更に下方側へ移動させると、図10で示す開状態となる。
【0064】
図10は図1の(2)で示した開状態の扉付収納装置を示す概略断面図であって、図3に対応するものである。
【0065】
図を参照して、図9で示した状態から更に扉30を白矢印で示すように下方側へ移動させると、アーム体40aのローラ44が第1ガイド溝17の最下端(終点)に当接する。すると、扉30の背面が略水平となって仮置棚機能を発揮する状態となり、扉付収納装置1が開状態となる。この時、上述した通り、アーム体40aのピン58の位置(棚本体20の位置)は、二点鎖線で示す閉状態の位置より距離L2だけ下方側に移動している。即ち、棚本体20は破線で示す閉状態の位置から距離L2だけ下方側に移動している。従って、使用者は吊戸棚80の下面に取付けられた照明装置81等に阻害されず、棚本体20への調味料等の収納及び取出し等の作業が容易となり、使い勝手が向上する。
【0066】
又、開状態における棚本体20の位置は、閉状態での位置から前後方向には移動していないため、例えば開状態において棚本体20が前方側に移動することによって使用者に圧迫感を与えることが無い。
【0067】
尚、上記の実施の形態では、扉付収納装置は吊戸棚の下面に取付けて使用されているが、例えば収納体の背面を壁面に取付ける等、扉の開閉動作が発揮できる状態であれば、他の使用形態でも同様に適用できることは言うまでも無い。
【0068】
又、上記の実施の形態では、収納体は前面、下面及び上面の一部が開放された特定形状に形成されているが、収納体は少なくとも前面及び下面が開放されていれば、他の形状であっても良い。
【0069】
更に、上記の実施の形態では、特定構造の棚本体を備えているが、収納体の中に収納されると共に開状態への移動に伴って下方に移動できるものであれば、例えば底板のみで構成する等、他の構造であっても良い。
【0070】
更に、上記の実施の形態では、開状態における扉の背面が略水平になることで棚の機能を発揮しているが、開状態において扉の背面が棚の機能が発揮されていれば、例えば扉の背面に側壁を形成して、開状態において若干傾斜するように設定されていても良い。
【0071】
更に、上記の実施の形態では、特定形状のアーム体及び第1ガイド溝によって棚本体が移動するように構成されているが、棚本体が扉の開状態への移動に伴って下方に移動するように構成されていれば、第1ガイド溝は無くても良く、アーム体は他の構成によって棚本体と扉とを連動させるものであっても良い。
【0072】
更に、上記の実施の形態では、一対のアーム体によって扉の幅方向の両端面の各々を支持するように構成されているが、一つのアーム体によって扉の幅方向の一方端面のみを支持するように構成されていても良い。
【0073】
更に、上記の実施の形態では、アーム体は第1部分及び第2部分を有するL字板状に形成されているが、第1部分及び第2部分に相当する部分があれば、例えば三角板状等、他の形状に形成されていても良い。
【0074】
更に、上記の実施の形態では、アーム体は棚本体の外側で移動するように構成されているが、棚本体の内側で移動するように構成されていても良い。
【0075】
更に、上記の実施の形態では、アーム体は特定の軸体に接続されているが、アーム体が棚本体の幅方向に延びる所定の軸の周りに回動自在に接続されていれば、軸体は他の構造であっても良い。
【0076】
更に、上記の実施の形態では、棚本体の側板に形成された複数の軸のうち、後方側の第2ガイド溝に係合する軸のみにローラが設けられているが、前方側の第2ガイド溝に係合する軸にもローラを設けても良い。
【0077】
更に、上記の実施の形態では、棚本体は特定の構造で収納体の側面に取付けられているが、棚本体が収納体の側面に対して上下にのみ移動できれば、棚本体は他の構成で収納体に取付けられていても良い。又は、上下のみに限らず、棚本体が開状態への移動に伴って下方に移動できれば、例えば前後方向にも移動自在となるように構成しても良い。
【0078】
更に、上記の実施の形態では、アーム体の第2部分はローラによって収納体の側面の第1ガイド溝に係合されているが、第2部分が収納体の側面に係合できれば、他の方法で係合されていても良い。
【0079】
更に、上記の実施の形態では、特定構造の軸体によって扉を閉状態に向かう方向にアーム体を付勢しているが、このような付勢力が発揮できるものであれば、他の構造の軸体であっても良い。又は、このような付勢力は無くても良い。
【0080】
更に、上記の実施の形態では、閉状態において棚本体の底板(底面)と扉の外面とによって収納体の内部が囲われているが、閉状態において少なくとも扉の外面が収納体の前面を塞ぐように構成されていれば良い。
【符号の説明】
【0081】
1…扉付収納装置
10…収納体
11…側面
17…第1ガイド溝
20…棚本体
22…側板
30…扉
40…アーム体
41…第1部分
42…第2部分
44…ローラ
50…軸体
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉付収納装置であって、
少なくとも前面と下面とが開放された収納体と、
前記収納体の中に収納される棚本体と、
前記収納体の前記前面を開閉自在に塞ぐと共に、開状態では前記棚本体の下方に移動し、その背面が棚の機能を発揮する扉と、
前記棚本体と前記扉とを連動させるアーム体とを備え、
前記棚本体は、前記扉の前記開状態への移動に伴って下方に移動する、扉付収納装置。
【請求項2】
前記アーム体は、前記収納体の側面と前記棚本体の前記収納体側の側板との間に配置され、その位置で移動自在となるように前記棚本体の幅方向に延びる所定の軸の周りに回動自在に接続される、請求項1記載の扉付収納装置。
【請求項3】
前記側板は、前記収納体の前記側面に対して上下にのみ移動するように係合する、請求項2記載の扉付収納装置。
【請求項4】
前記アーム体は、前記軸への接続部を中心として前記扉に接続される第1部分と前記収納体の前記側面に係合する第2部分とからなるL字状の平板を含む、請求項2又は請求項3記載の扉付収納装置。
【請求項5】
前記第2部分の端部にはローラが設けられると共に、前記側面には前記ローラが移動自在に係合するガイド溝が設けられ、
前記ガイド溝は、前記棚本体が上方位置にある時の前記軸を中心とした円弧に対して、最上端は共通で且つその最下端が前記円弧の最下端より下方に位置する曲線形状に形成される、請求項4記載の扉付収納装置。
【請求項6】
前記アーム体は、前記軸の周りにおいて前記扉を閉状態に向かう方向に付勢される、請求項3から請求項5のいずれかに記載の扉付収納装置。
【請求項7】
前記扉を閉状態にした時、上昇した前記棚本体の底面と前記扉の外面とで前記収納体の内部が囲われる、請求項1から請求項6のいずれかに記載の扉付収納装置。
【請求項1】
扉付収納装置であって、
少なくとも前面と下面とが開放された収納体と、
前記収納体の中に収納される棚本体と、
前記収納体の前記前面を開閉自在に塞ぐと共に、開状態では前記棚本体の下方に移動し、その背面が棚の機能を発揮する扉と、
前記棚本体と前記扉とを連動させるアーム体とを備え、
前記棚本体は、前記扉の前記開状態への移動に伴って下方に移動する、扉付収納装置。
【請求項2】
前記アーム体は、前記収納体の側面と前記棚本体の前記収納体側の側板との間に配置され、その位置で移動自在となるように前記棚本体の幅方向に延びる所定の軸の周りに回動自在に接続される、請求項1記載の扉付収納装置。
【請求項3】
前記側板は、前記収納体の前記側面に対して上下にのみ移動するように係合する、請求項2記載の扉付収納装置。
【請求項4】
前記アーム体は、前記軸への接続部を中心として前記扉に接続される第1部分と前記収納体の前記側面に係合する第2部分とからなるL字状の平板を含む、請求項2又は請求項3記載の扉付収納装置。
【請求項5】
前記第2部分の端部にはローラが設けられると共に、前記側面には前記ローラが移動自在に係合するガイド溝が設けられ、
前記ガイド溝は、前記棚本体が上方位置にある時の前記軸を中心とした円弧に対して、最上端は共通で且つその最下端が前記円弧の最下端より下方に位置する曲線形状に形成される、請求項4記載の扉付収納装置。
【請求項6】
前記アーム体は、前記軸の周りにおいて前記扉を閉状態に向かう方向に付勢される、請求項3から請求項5のいずれかに記載の扉付収納装置。
【請求項7】
前記扉を閉状態にした時、上昇した前記棚本体の底面と前記扉の外面とで前記収納体の内部が囲われる、請求項1から請求項6のいずれかに記載の扉付収納装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−235903(P2012−235903A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106790(P2011−106790)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(591260166)太陽パーツ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(591260166)太陽パーツ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
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