説明

手乾燥装置

【課題】悪臭のもととなる排水経路や、汚れの気になる手乾燥室の底面部の清掃が容易な手乾燥装置を提供する。
【解決手段】電動送風機75が内蔵された箱状の本体ケーシング71と、手を乾燥するため前記本体ケーシング71内に設けられた手乾燥室74と、前記手乾燥室74内に手を挿入するため前記本体ケーシングの前面に開設された開口部72と、前記電動送風機75から送給される空気流を前記手乾燥室74内に挿入された手に向かって吹き出すために設けられたノズル76とを備えた手乾燥装置70において、前記手乾燥室74内の水滴を前記手乾燥室74の底面部78周縁の少なくとも一縁部から下方へ排出する排水経路80を前記手乾燥室74下方の前記本体ケーシング71の外表部に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の駅、ホテル、映画館あるいは大型商業施設などの各種公共施設のトイ
レや洗面所などに設置される手乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道の駅、ホテル、映画館あるいは大型商業設備などの公共施設のトイレや洗面
所などには、水洗いした後の濡れた手を所定の場所に挿入すると、自動的に吹き出す空気
流によって乾燥することのできる手乾燥装置が設置されていることが多い。従来の手乾燥
装置はトイレや洗面所の壁面に取り付けられ、上面に設けられた開口部から手乾燥室内へ
濡れた手を挿入すると、内蔵された電動送風機が自動的にONして手乾燥室内へ空気流が
吹き出し、この空気流により、手に付着した水を吹き飛ばしながら乾燥するものが代表的
である(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
特許文献1に記載された手乾燥装置の場合、手乾燥室内に差し込まれた濡れた手から吹
き飛ばされた水滴は、手乾燥室の奥底部に設けられた排水口へ流れ込んだ後、排水口に接
続されたドレンホース内を落下して、装置の下部に内蔵されたドレンタンクに回収される
ようになっている。
【0004】
特許文献2に記載された手乾燥装置の場合、濡れた手から吹き飛ばされた水滴は空気流
とともに吸気口に吸入され、循環経路の回収部流路で空気流にのって下方へ加速され、環
流部への屈曲位置において、慣性により水滴回収口の位置に落下分離され、ドレンタンク
に回収されるようになっている。
【0005】
特許文献3に記載された手乾燥装置の場合、濡れた手から飛散した水滴は空気流ととも
に吸気口に吸入され、慣性により下方の壁面に衝突し、ドレン穴およびドレンパイプを通
って、装置本体外へ排出されるようになっている。
【0006】
【特許文献1】特許第3148435号公報
【特許文献2】特開2002-34844号公報
【特許文献3】特開2001-104211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された手乾燥装置における排水口に接続されたドレンホース内部や、
特許文献2,3に記載された手乾燥装置における循環経路内部において、夫々の内部に付
着した排水中の汚れや、その汚れ内で繁殖した雑菌により悪臭が発生するという問題があ
った。これらを清掃しようとしても、ドレンホースや循環経路が手乾燥装置の内部に設け
られた構造であるため簡単に清掃をし難いという問題があった。
【0008】
また、特許文献1に記載された手乾燥装置における手挿入部奥側の底面部は排水回収の
ため両端縁部に形成された排水口に向かう傾斜面とし、底面部の端縁部には立上部を形成
しているため、底面部と立上部との境界部分に溜まった汚れの清掃には、その汚れを掬い
取らなければならず手間がかり、汚れが残ってしまうことがあった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、悪臭発生のもととなる排水経路や、汚れの気になる
手乾燥室の底面部の清掃がし易い手乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
電動送風機が内蔵された箱状の本体ケーシングと、手を乾燥するため前記本体ケーシン
グ内に設けられた手乾燥室と、前記手乾燥室内に手を挿入するため前記本体ケーシングの
上面または正面に開設された開口部と、前記電動送風機から送給される空気流を前記手乾
燥室内に挿入された手に向かって吹き出すために設けられたノズルとを備えた手乾燥装置
において、前記手乾燥室内の水滴を前記手乾燥室の底面部周縁の少なくとも一縁部から下
方へ排出する排水経路を前記手乾燥室下方の前記本体ケーシングの外表部に設けたことを
特徴とする。
【0011】
このような排水経路を手乾燥室下方の本体ケーシングの外表部に設けた構成とすれば、
排水経路に付着した汚れを外部から簡単に拭き取ることができるため清掃が容易となる。
また、簡単に清掃することができるので、定期的な清掃を行いやすくなり、悪臭発生を予
防することができる。
【0012】
請求項2の発明は、前記排水経路を前記本体ケーシングの外表部に設けるとともに、前
記排水経路を覆う着脱可能なカバーを設けたことを特徴とする。
【0013】
このようなカバーを本体ケーシングに装着した構成とすれば、外表部に配置した排水経
路に水滴が滴下している状態や滴下残跡が外側から被覆され外部に露出しなくなるため、
外観が良好となる。また、排水経路から水滴が飛散するおそれもなくなるため、設置した
周辺の環境を清潔に維持することができる。そして、清掃の際には、カバーを本体ケーシ
ングから離脱させればよく、排水経路もカバーも容易に清掃することができる。
【0014】
請求項3の発明は、前記排水経路が、前記本体ケーシング外表部に形成された前記手乾
燥室の底面部に連通する排水溝であることを特徴とする。
【0015】
このような排水溝を設けた構成とすれば、排水溝に沿って水滴が落下し、排水溝以外の
外表部を汚さずに済むため、清掃は排水溝だけでよくなり、さらに清掃が簡単となる。
【0016】
請求項4の発明は、前記手乾燥室の底面部に、該底面部の中央から周縁に向かって下り
勾配の傾斜面または前記底面部周縁の一縁部から他縁部に向かって下り勾配の傾斜面を設
けたことを特徴とする。
【0017】
このように、底面部の中央から周縁に向かって下り勾配の傾斜面とする構成、または底
面部周縁の一縁部から他縁部に向かって下り勾配の傾斜面とする構成とすれば、空気流の
方向と手乾燥室の底面部の下り方向の傾斜面が同方向となり、水滴が空気流により押し戻
されることなく底面部に落下した水滴を排水経路に向かって速やかに誘導することができ
るようになるので、手乾燥室内の排水性がさらに向上する。また、このような構成とすれ
ば、底面部の清掃の際、傾斜面に沿って拭き下して清掃することができるようになるため
、従来のように、隅にたまった汚れを拭き上げて掬い取ったりする手間を省くことができ
る。
【0018】
請求項5の発明は、前記排水経路を経由して流下する水滴を排水経路の下端に対応させ
て回収する水受け部を前記手乾燥室の下方に配設するとともに、前記排水経路を本体ケー
シングの内方に向け緩かに傾斜するよう入り込ませたことを特徴とする。
【0019】
このような排水経路を本体ケーシングの内方に向け緩かに傾斜する構成とすれば、排水
経路を通って流下した水滴を排水経路の下端に対応させた水受け部で確実に回収すること
ができるため、手乾燥装置周辺への水分の漏洩を防止することができる。また、水受け部
を小さくすることができるため、デザイン的に良好となる。
【0020】
請求項6の発明は、前記手乾燥室の底面部から前記排水経路に連係する部分を、緩やか
な曲面としたことを特徴とする。
【0021】
このような緩かな曲面とする構成とすれば、手乾燥室の底面部に付着した水滴は、空気
流によって吹き流される際にも表面張力で曲面上を伝って排水経路へ流下していくため、
底面部から排水経路に流下する間に吹き飛んで底面上から離脱することがなくなる結果、
手乾燥装置の周辺に水滴が飛散して汚すことがない。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、悪臭発生のもととなる排水経路や、汚れの気になる手乾燥室の底面部の
清掃がし易い手乾燥装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の第1実施形態である手乾燥装置について説明する。図
1は本発明の第1実施形態である手乾燥装置を洗面所に設置した状態を示す斜視図、図2
は前記手乾燥装置を示す斜視図、図3は前記手乾燥装置の一部分解斜視図、図4は図2の
A-A線における断面図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の手乾燥装置1は、例えば、洗面所などの壁面Wに設置
されている水栓21付きの洗面器20の側方に設置され、水栓21および洗面器20を利
用して手を洗った人が、濡れた手を乾燥するために使用するものである。
【0025】
図2〜図4に示すように、手乾燥装置1は、電動送風機75が内蔵された箱状の本体ケ
ーシング2と、手を乾燥するため本体ケーシング2内に設けられた手乾燥室4と、手乾燥
室4内に手を挿入するため本体ケーシング2の上面に開設された開口部3と、電動送風機
から送給される空気流を手乾燥室4内に挿入された手に向かって吹き出すために背面部材
10に水平方向に直線状に等間隔に列設された複数のノズル5と、を備えている。そして
、ノズル5の下方には、手乾燥室4内に挿入された手を検知するためのセンサ12が配置
されている。
【0026】
また、手乾燥室4を構成する本体ケーシング2の右側面には上部側面カバー7aおよび
下部側面カバー8aが着脱可能に装着され、上部側面カバー7aには、水滴の通過を防止
するルーバー6を有する台形状の通気口9が設けられている。なお、本体ケーシング2の
左側面にも上部側面カバー7aおよび下部側面カバー8aと鏡面対称な形状を有する上部
側面カバー7bおよび下部側面カバー8bが着脱可能に装着されている。
【0027】
図3,図4に示すように、手乾燥室4内の底面部14の左右の端縁部15a,15bに
連通してそれぞれ排水経路17a,17bが設けられている。底面部14の左右の端縁部
15a,15bは緩やかな曲面(望ましくは曲率半径2mm以上)となっており、底面部
14と排水経路17a,17bとを繋いでいる。また、本体ケーシング2の外表部の排水
経路の外側には着脱可能に下部側面カバー8a,8bが設けられている。
【0028】
排水経路17a,17bは溝形状となっており、底面部14に対して略垂直方向に配置
され、下部側面カバー8a,8bを本体ケーシング2から離脱させたときに露出し、それ
ぞれの下端部は回収容器11の回収口11a,11bに臨む位置に配置されている。また
、図3に示すように、排水経路17a,17bの下部は緩やかな曲線状を描いて内方に向
けて入り込み、回収口11a,11bに至っている。
【0029】
手乾燥装置1の使い方は、濡れた手を開口部3から手乾燥室4内へ挿入すると、センサ
12がそれを検知して電動送風機75が自動的に作動して複数のノズル5から一斉に空気
流が吹き出し、手に付着している水分を吹き飛ばすことによって手を乾燥する。
【0030】
複数のノズル5から手乾燥室4内へ吹き出された空気流は濡れた手に当接して下方へ進
行し、手乾燥室4内の底面部14に当接して底面部14に沿って外側に曲がり、上部側面
カバー7a,7bの通気口9から速やかに外部へ排出される。したがって、開口部3から
空気流が吹き返すことがなく、また、開口部3から水滴が飛散することがないので、快適
に手の乾燥をすることができる。
【0031】
前述したように、手乾燥室4内に挿入された手から飛散した水滴は、手乾燥室4の内壁
に付着または手乾燥室4内の底面部14に落下し、内壁に付着した水滴はノズル5から吹
き出す空気流に押されて底面部14に集められた後、底面部14に落下した水滴とともに
ノズル5から吹き出す空気流に押されて更に底面部14の左右の端縁部15a,15bへ
流下し、更に排水経路17a,17bを回収口11a,11bに流入し、回収容器11内
に回収される。
【0032】
このように水分は電動送風機や電子基板などが内蔵された本体ケーシング2の外表部を
伝って流下して排出されるため、本体ケーシング内に配設されたドレンホースから本体ケ
ーシングに内蔵された電動送風機や電子基板等に漏水や浸水が発生することはない。
【0033】
また、図3で示したように、本体ケーシング2から下部側面カバー8a,8bを離脱さ
せると、排水経路17a,17bが外表部へ露出するので、排水経路17a,17bの部
分を拭くことにより簡単に清掃を行うことができる。
【0034】
なお、上部側面カバー7a,7bと下部側面カバー8a,8bとはそれぞれ上下に2分
割されているが、これに限定されるものではないので、上下合わせて一体としたものとし
てもよい。
【0035】
図4に示すように、手乾燥室4内の底面部14は、底面部14の中央から左右方向に向
かって下り勾配をなす屋根形状の傾斜面を設けている。このため、底面部14に落下した
水滴は傾斜面に沿って重力落下で流れ、更にノズル5から吹き出された底面部14に沿っ
て外側に向かう空気流により吹き流されるため、左右の端縁部15a,15bに向かって
速やかに誘導されることとなり、手乾燥室4内の排水性向上を図ることができる。
【0036】
排水経路17a,17bの下端付近は、本体ケーシング2の内方に向け緩に傾斜するよ
う入り込ませ、それに対応させる位置に回収容器11の回収口11a,11bを配置して
いる。したがって、回収容器11を本体ケーシング2からはみ出ることなく形成すること
ができるだけでなく、また、本体ケーシング2より小さく形成することができる。このた
め、手乾燥装置1は、スッキリとしたデザインとなり美観を損なわず、且つ床などを汚す
こともなく清潔性を維持することができる。
【0037】
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態である手乾燥装置について説明する。な
お、図5に示す手乾燥装置の構成部材において、前述した手乾燥装置1の構成部材と同じ
構造、機能を有する部材は図1〜図4に示す符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
図5に示す第2実施形態の手乾燥装置25においては、第1実施形態と同じ形態である
が、底面部54の傾斜形状を相違させている。手乾燥室4の底面部24には、その左端縁
部15bから右端縁部15aに向かって下り勾配をなす傾斜面を設け、右端縁部15aに
は排水経路17aへ水分を誘導するための曲面Rを設けている。
【0039】
従来の手乾燥装置においては、手乾燥室の底面の両側部付近に設けたドレンホースから
排水するようにしたものがあるが、側面からの水分の横漏れを防止するため側面部を隆起
させており、掃除の際、隆起部が邪魔になって掃除がし難かった。しかしながら、手乾燥
装置1および25によれば、底面部14または底面24の清掃の際、傾斜面に沿って拭き
下すことで、従来のような隅にたまった汚れを拭き上げて掬い取ったりする手間を省くこ
とができ、清掃を簡単に済ませることができる。
【0040】
手乾燥装置25においては、右端縁部15a、排水経路17aおよび回収容器11の回
収口11aを本体ケーシングの右側のみに配置しているため、例えば、装置25の左側に
清掃作業のスペースを確保できない場所に設置する場合に好適である。なお、手乾燥装置
の左側のみに左端縁部、排水経路および回収容器の回収口を配置した構造とすることも可
能である。
【0041】
次に、図6〜図9を参照して、本発明の第3〜6実施形態である手乾燥装置について説
明する。図6は本発明の第3実施形態である手乾燥装置を示す斜視図、図7は本発明の第
4実施形態である手乾燥装置を示す斜視図、図8は本発明の第5実施形態である手乾燥装
置を示す一部切欠側面図、図9は本発明の第6実施形態である手乾燥装置を示す斜視図で
ある。なお、図6〜図9に示す手乾燥装置の構成部材において、前述した手乾燥装置1の
構成部材と同じ構造、機能を有する部材は図1〜図4に示す符号と同じ符号を付して説明
を省略する。
【0042】
図6に示す手乾燥装置40においては、本体ケーシング42の側面部材42aを一体的
に形成させ、側面部材42aの上方にはルーバー6を備えた通気口9が、側面部材42a
の通気口9の下方には手乾燥室4の底面部14の幅寸に合わせた排水溝44が、下端部分
を回収容器11の回収口11aに臨ませるように形成されている。また、排水溝44の上
部の底面を一部切り欠け、切り欠けた底面上端と手乾燥室4の底面部14とは、底面部1
4の右端縁部43aに形成された曲面Rで連通し、底面部14と排水溝44とを繋げてい
る。
【0043】
第1実施形態の場合と同様、手乾燥室4内において手から吹き飛ばされ底面部14に落
下した水滴は、右端縁部43aから排水溝44を伝わって流下し、回収口11aから回収
容器11に流入する。手乾燥装置40の場合、排水溝44が外部に露出しているため、汚
れを直ちに発見することが可能であり、カバーなどを取り外す必要がなく清掃が容易であ
る。
【0044】
次に、図7に示す手乾燥装置50においては、本体ケーシング52の側面部材52aの
通気口9の下方に、手乾燥室4の底面の幅寸に合わせてスリット状の排水口54が形成さ
れている。また、排水口54の下端と手乾燥室4の底面の右端縁部53aとは曲面Rで連
係し、排水口54に繋がっている。これにより、水滴は排水口54より本体ケーシング5
2の側面部材52aの外表部を伝って流下する。
【0045】
手乾燥装置50の場合、排水口54が外部に露出しているため、汚れを直ちに発見する
ことが可能であることに加え、側面部材52aの外表部に溝などが形成されていないため
、デザイン的にもスッキリしたものとなる。
【0046】
次に、図8に示す手乾燥装置60においては、手乾燥室4の底面部61を正面側に向か
って下り勾配の傾斜面とし、底面部61の前縁部分から垂直下方に垂下する排水経路63
を本体ケーシング62に設け、排水経路63の下端部分を、最下部に配置された回収容器
11に連通させている。手乾燥室4内において手から吹き飛ばされ底面部61に落下した
水滴は、その下り勾配に沿って前縁方向(正面側)へ移動した後、排水経路63内を流下
して、回収容器11内へ回収される。
【0047】
一般に、手乾燥装置の両サイドに手洗い器等が配置されている場合、手乾燥装置の両サ
イドからの清掃がし難くなるが、手乾燥装置60の排水経路63は正面に位置しているた
め、清掃作業が極めて容易である。即ち、手乾燥装置60の場合、排水経路63が本体ケ
ーシング62の正面部分に配置されており、本体ケーシング62の前面を覆う正面カバー
62aを取り外せば排水経路63が正面に露出した状態となるため、清掃作業が極めて容
易である。
【0048】
本実施形態の手乾燥装置60においては、排水経路63は溝形状であり、底面部61の
中央付近から垂直に1本設けているが、これに限定するものではないので、複数の排水経
路を設けることも可能である。また、排水経路は溝形状に限定するものではないので、本
体ケーシング62の前面部分全体に幅広く排水経路を設けることもできる。
【0049】
次に、図9に示す手乾燥装置70においては、本体ケーシング71と、本体ケーシング
71の前面に設けられた開口部72と、開口部72から手を挿入して乾燥するための手乾
燥室74とを備え、手乾燥室74の上方には電動送風機75が内蔵されている。また、電
動送風機75から送給される空気流を手乾燥室74に吹き出して、手乾燥室74に挿入さ
れた手に吹き付けるためのノズル76が手乾燥室74の天井部分の前縁寄りの位置に配置
されている。また、手乾燥室74の上方には、開口部72から手乾燥室74に差し込まれ
た手を検知するセンサ77が配置されている。
【0050】
また、手乾燥室74の底面部78全体を前縁部分に向かって下り勾配に傾斜させるとと
もに、その前縁部分に、底面部78よりも急な下り勾配をなす垂下部78aを設けること
により、前縁部材79と垂下部78aとの間に排水経路80を形成している。前縁部材7
9は、底面部78の下方に形成されている、水を回収するための回収容器81と一体的に
形成されており、着脱可能に装着されている。
【0051】
開口部72から手乾燥室74内へ手が差し込まれると、センサ77がそれを検知して自
動的に電動送風機75が作動し、手乾燥室74内にある手に向かって空気流を吹き付け、
手の表面の水を吹き飛ばしたり、蒸発させたりすることによって手を乾燥する。手から吹
き飛ばされた水は底面部78で受け止められ、底面部78の下り勾配に沿って前縁部分へ
移動していき、垂下部78aから排水経路80を経由して回収容器81に流れ込むように
なっている。手乾燥室74から手を抜き取ると、センサ77がそれを検知して自動的に電
動送風機75を停止する。
【0052】
なお、手乾燥室74の左右側面には、それぞれ側面部材82が配置され、これらの側面
部材82には、ルーバー84を有する通気口83が設けられている。通気口83は、ノズ
ル76から吹き出した空気流が開口部72から吹き返さないように、手乾燥室74内の空
気流を速やかに排出する機能を有する。遮水手段でもあるルーバー84は、手乾燥室74
内で吹き飛ばされた水滴が、通気口83から直接飛散しないように水滴の飛散経路を遮蔽
するものである。
【0053】
前述したように、手乾燥室74においては、手乾燥室74内に挿入された手から飛散し
た水滴は、手乾燥室74の底面部78に落下した後、底面部78の垂下部78aから前縁
部分にある排水経路80を経由して回収容器81内へ流下するため、水滴を速やかに手乾
燥室74の外へ排出することができ、これによって装置内への水分の浸入も防止すること
ができる。また、清掃も容易であり、部品点数が少なく、全体的にコンパクトなサイズと
することができる。
【0054】
また、排水経路80は手乾燥室74の底面部78の前縁部分に配設されているため、清
掃の際に回収容器81を外して雑巾などで底面部78から続けて垂下部78aに拭き下ろ
せば、同時に排水経路80の清掃も完了する。このように、手乾燥装置70は、簡単且つ
十分に清掃をすることができるため、常に清潔に維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の手乾燥装置は、鉄道の駅、ホテル、映画館あるいは大型商業施設などの各種公
共施設のトイレや洗面所などに設置して広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態である手乾燥装置を洗面所に設置した状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す手乾燥装置の斜視図である。
【図3】図1に示す手乾燥装置の一部分解斜視図である。
【図4】図2のA-A線における垂直断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態である手乾燥装置を示す垂直断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態である手乾燥装置を示す斜視図である。
【図7】本発明の第4実施形態である手乾燥装置を示す斜視図である。
【図8】本発明の第5実施形態である手乾燥装置を示す一部切欠側面図である。
【図9】本発明の第6実施形態である手乾燥装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1,25,40,50,60,70 手乾燥装置
2,42,52,62,71 本体ケーシング
3,72 開口部
4,74 手乾燥室
5 ノズル
6,84 ルーバー
7a,7b 上部側面カバー
8a,8b 下部側面カバー
9,83 通気口
10 背面部材
11,81 回収容器
11a,11b 回収口
12,77 センサ
14,24,61,78 底面部
15a,15b,43a,43b,53a,53b 端縁部
16a,16b,36a 導水部材
17a,17b,37a,63,80 排水経路
20 洗面器
21 水栓
42a,52a,82 側面部材
44 排水溝
54 排水口
62a 正面カバー
75 電動送風機
76 ノズル
78a 垂下部
79 前縁部材
R 曲面
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機が内蔵された箱状の本体ケーシングと、手を乾燥するため前記本体ケーシング内に設けられた手乾燥室と、前記手乾燥室内に手を挿入するため前記本体ケーシングの前面に開設された開口部と、前記電動送風機から送給される空気流を前記手乾燥室内に挿入された手に向かって吹き出すために設けられたノズルとを備えた手乾燥装置において、前記手乾燥室内の水滴を前記手乾燥室の底面部周縁の少なくとも一縁部から下方へ排出する排水経路を前記手乾燥室下方の前記本体ケーシングの外表部に設けたことを特徴とする手乾燥装置。
【請求項2】
前記排水経路を前記本体ケーシングの外表部に設けるとともに、前記排水経路を覆う着
脱可能なカバーを設けたことを特徴とする請求項1記載の手乾燥装置。
【請求項3】
前記排水経路は、前記本体ケーシングの外表部に形成された前記手乾燥室の底面部に連
通する排水溝であることを特徴とする請求項1または2記載の手乾燥装置。
【請求項4】
前記手乾燥室の底面部に、該底面部の中央から周縁に向かって下り勾配の傾斜面または
前記底面部周縁の一縁部から他縁部に向かって下り勾配の傾斜面を設けたことを特徴とす
る請求項1〜3のいずれかに記載の手乾燥装置。
【請求項5】
前記排水経路を経由して流下する水滴を排水経路の下端に対応させて回収する水受け部
を前記手乾燥室の下方に配設するとともに、前記排水経路を本体ケーシングの内方に向け
緩かに傾斜するよう入り込ませたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の手乾
燥装置。
【請求項6】
前記手乾燥室の底面部から前記排水経路に連係する部分を、緩かな曲面としたことを特
徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の手乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−26424(P2006−26424A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232498(P2005−232498)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【分割の表示】特願2004−206488(P2004−206488)の分割
【原出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)