説明

手作業道具

【課題】先端具の交換や、その先端具の先端側を把持して操作する必要をなくして、また、その先端具を固定するために重量が大きく増加してしまうことを回避して、スコップやシャベルとして切り換えて利用することのできる使い勝手のよい手作業道具を提供すること。
【解決手段】土砂などを掬う4角形の板状部材の掬い部21の上辺24側に形成されている扇形の袋形状部26下部の回動軸31に、手で把持する棒状部材の把持部11の握り部12の一端側を回動自在に軸支させる手作業道具10であって、袋形状部の扇形端辺26a側に形成する係合穴27に、把持部の握り部側に埋没可能に設けた突起17を突出させて係合させることにより、掬い部の底辺22またはこの底辺と側辺23との間の挟角の角部25の一方を最下に位置させるように回動させて固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手作業道具に関し、詳しくは、作業内容に応じて機能を切り換えることのできるものに関する。
【背景技術】
【0002】
固まっている地面を崩して掬って穴を掘ったり、地中の笹の根などを切断する必要がある作業対象の場合には、先端が剣先形に形成されているスコップ(手作業道具)を選択して作業する一方、盛られている土砂を掬うなど柔らかい作業対象の場合には、スコップよりも掬い量が大きくなるように先端が平形に形成されているシャベル(手作業道具)を選択して作業するのが一般的である。
【0003】
ここで、手作業道具では、その形状に応じて呼称を使い分ける場合があるが、本明細書では、上述のように、その先端側の形状に応じてスコップとシャベルの呼称を使い分けて説明する。
【0004】
このような手作業道具では、使い勝手を良くするために各種の工夫がなされており、例えば、把持部に対するスコップの掬い部の最適な角度(姿勢)が作業の種別に応じて異なることから、その掬い部の角度を調整できるようにしたものがある(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
手作業道具としては、手作業を行う際に適した道具はその先端側の形状がそれぞれ異なることから、その作業に適した先端具に交換可能にしたものがある(例えば、特許文献3、4)。
【0006】
その手作業道具のうちのスコップとシャベルでは、掬い部の先端の形状が剣先形か平形かの違いであることから、その形状の双方を備えることにより両者の機能をそれぞれ利用して作業できるようにしたものがある(例えば、特許文献5)。
【0007】
そして、特許文献1、2に記載の手作業道具では、把持部に対する掬い部の姿勢を調整できるだけであることから、スコップとシャベルなどの2種類の機能を備えることができず、いずれにしても、作業現場が山中である場合でも、2種の手作業道具を抱えていかなければならず、過大な負担になっている。
【0008】
特許文献3、4に記載の手作業道具では、スコップとシャベルなどのように異なる機能の先端具に交換可能にするにしても、その先端具を持っていかなければならず、また、作業毎に切換作業をしなければ利用することができず、その作業が煩雑なため、結果的には利用しなくなってしまう。
【0009】
これらに対して、特許文献5に記載の手作業道具では、スコップとシャベルの特徴である形状を掬い部の一部にそれぞれ備えさせることから、形式的には、双方の機能を利用することが可能になっているようには見える。しかるに、この手作業道具では、単にスコップの剣先形の片側の斜辺を直線(平形)にしているだけであることから、平形を作業対象に圧接させて大きな力を加えることはできず、また、大量の作業対象を掬うこともできず、実用的ではない。
【0010】
その一方で(このことから)、把持部の先端側に180度回転可能に掬い部を連結するとともに、その掬い部の先端側にすることのできる形状を剣先形と平形に形成して、180度回転させたときに、その把持部側に位置する剣先形または平形に固定金具を圧接させてストッパにより位置決め固定するように工夫した手作業道具が提案されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−20673号公報
【特許文献2】特開2004−108021号公報
【特許文献3】特開2002−233201号公報
【特許文献4】実開平5−39202号公報
【特許文献5】実用新案登録第3122618号公報
【特許文献6】特開2005−248676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、この特許文献6に記載の手作業道具にあっては、把持部の先端側の掬い部(先端具)を交換することなく、その掬い部を回転させるだけでスコップやシャベルとして利用することができるが、その掬い部を選択固定する際には、その土砂などにより汚れている掬い部を掴んで回転させた後に固定金具やストッパを操作しなければならず、手が汚れてしまうとともに、各種機能部材を付属させなければならず、重量が重くなって取り扱い難くなってしまう。
【0013】
そこで、本発明は、先端具の交換や、その先端具の先端側を把持して操作する必要をなくして、また、その先端具を固定するために重量が大きく増加してしまうことを回避して、スコップやシャベルとして切り換えて利用することのできる使い勝手のよい手作業道具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する手作業道具の発明は、作業対象を掬うことができるように形成されている板状部材の掬い部と、手で把持することができるように形成されている棒状部材の把持部と、が連設されている手作業道具であって、前記掬い部と前記把持部は、前記把持部の一端側に前記掬い部を回動自在に支持する回動機構を介して連設されているとともに、当該回動を制限して相対位置を固定するストッパ機構を備えており、前記掬い部は、少なくとも、挟角で回動角部を形成する二辺の回動辺部を有するとともに、前記回動機構は、立てた姿勢にしたときに、少なくとも、前記回動辺部の一方または前記回動角部が前記把持部の延長方向で最も離隔する最下位置になる角度の範囲での回動を許容する構造に形成される一方、前記ストッパ機構は、前記回動辺部の一方または前記回動角部が前記最下位置に位置する際に前記把持部と前記掬い部の相対的な回動面に対する直交方向の突起部材が受け形状に係合して係止する構造に形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明では、把持部の一端側の掬い部(板状部材)が立てた姿勢で回動辺部の一方または回動角部を最下位置にする範囲で、すなわち、掬い部を延長する平面(回動面)内で必要最低限の角度だけ回動させるだけで回動辺部または回動角部を先端側に切り換えて位置させることができるとともに、その回動位置では、その回動面に対して突出する突起部材が受け形状に係合するだけで位置決め固定することができる。したがって、回動辺部または回動角部を先端にするように、汚れていない上部を掴んで少量回動させるだけで切り換えることができ、その切換位置に突起部材と受け部材の軽量なストッパ機構で固定することができる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、板状部材の掬い部の汚れていない上部を掴んで少量回動させるだけで回動辺部または回動角部を先端側に位置させて簡易なストッパ機構の突起部材を受け形状に係合させるだけで、回動角部を先端に切り換えたときにはスコップとして、回動辺部を先端に切り換えたときにはシャベルとして利用することができる。したがって、先端具を交換することなく、また、その先端具の汚れている先端側を把持することなく、その先端側を所望の形状に容易に切り換えて軽量のストッパ機構で固定することができ、スコップやシャベルとして容易に利用することのできる軽量で使い勝手のよい手作業道具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る手作業道具の第1実施形態の全体構成を示す図であり、(a)はその立面図、(b)はその側面図である。
【図2】その使用時の図1とは異なる立面図である。
【図3】その第2実施形態の全体構成を示す側面図である。
【図4】その第3実施形態の全体構成を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態としては、上記の課題解決手段のように、作業対象を掬うことができるように形成されている板状部材の掬い部と、手で把持することができるように形成されている棒状部材の把持部と、が連設されている手作業道具であって、前記掬い部と前記把持部は、前記把持部の一端側に前記掬い部を回動自在に支持する回動機構を介して連設されているとともに、当該回動を制限して相対位置を固定するストッパ機構を備えており、前記掬い部は、少なくとも、挟角で回動角部を形成する二辺の回動辺部を有するとともに、前記回動機構は、立てた姿勢にしたときに、少なくとも、前記回動辺部の一方または前記回動角部が前記把持部の延長方向で最も離隔する最下位置になる角度の範囲での回動を許容する構造に形成される一方、前記ストッパ機構は、前記回動辺部の一方または前記回動角部が前記最下位置に位置する際に前記把持部と前記掬い部の相対的な回動面に対する直交方向の突起部材が受け形状に係合して係止する構造に形成されていることを基本構成とするのに加えて、次の構成を備えてもよい。
【0019】
第1の形態としては、前記掬い部は、立てた姿勢の際に、前記最下位置の底辺となる前記回動辺部の両端側に前記回動角部と共に、該回動角部から上方に向かって両側辺となる前記回動辺部を有する形状に形成されることにより、前記回動角部の一方または双方を前記最下位置に回動させて位置させる形状に形成されていてもよい。
【0020】
この形態では、最下位置に回動辺部を位置させたときにその両側側辺にも回動辺部が位置するコ字形状に形成されて、その最下側回動辺部と側辺側回動辺部との間の挟角により最下位置に回動させてる回動角部が形成される。
【0021】
第2の形態としては、前記回動機構は、前記回動辺部の一方が前記最下位置まで回動した後にそれ以上回動するのを制限するとともに、反対に、前記回動角部が前記最下位置まで回動した後にそれ以上回動するのを制限する構造に形成されていてもよい。
【0022】
この形態では、ストッパ機能が回動辺部の一方または回動角部を最下位置に固定する際に、掬い部の自由な回動を手で制限して固定するのではなく、回動機構の回動可能な範囲で掬い部の回動を制限することができ、その制限位置でストッパ機構が逆方向に戻ってしまわないように掬い部を固定する。したがって、回動機構による回動限界位置まで掬い部を回動させた状態でストッパ機構により固定することができ、容易に掬い部の回動辺部の一方または回動角部を最下位置に固定する操作を完了することができる。
【0023】
第3の形態としては、前記掬い部は、前記回動角部に連続する少なくとも一辺の前記回動辺部を、鋸歯形状または波形状に形成されていてもよい。
【0024】
この形態では、回動角部を最下位置に回動させたときに、鋸歯形状または波形状の回動変部が隣接する位置で傾斜する姿勢になっている。したがって、笹の根などがある地面を作業対象として掘削する作業時には、斜めの回動辺部の鋸歯形状または波形状によりその笹の根などを容易に切断することができる。
【0025】
第4の形態としては、前記把持部は、長尺に形成されて、足を掛けて力を付与する足掛け部が前記掬い部の近傍に設けられていてもよい。
【0026】
この形態では、掬い部を地面などの作業対象内に差し込む際に、足掛け部に足を掛けて力を加えることができる。したがって、手の力では困難な作業を繰り返して行うことができ、作業負担を軽減することができる。
【0027】
第5の形態としては、板状部材の前記掬い部に棒状部材の前記把持部を回動軸により回動自在に連設する構造として、前記回動軸を中心にして回動する前記把持部の端部を収容する空間を前記掬い部の延長面内に形成して、その空間端部に前記回動軸を配設してもよく、また、前記掬い部の背面側で前記把持部を回動自在に軸支するように前記回動軸を配設してもよい。
【0028】
この形態では、掬い部に形成する回動空間内に回動軸を配設する場合には、掬い部の延長面と一致する方向に把持部を連設することができ、把持部に加える力を無駄なく掬い部に伝えて地面などの作業対象内に差し込むことができる。一方、掬い部の背面側に回動軸を配設する場合には、簡易な構造で掬い部に把持部を回動自在に連設することができ、より安価に作製することができる。
【0029】
第6の形態としては、前記回動辺部の幅方向の中心線と、前記回動角部を最下位置に位置させたときの鉛直線と、が交差する位置に前記回動軸を配設して前記掬い部に前記把持部を回動自在に連設してもよい。
【0030】
この形態では、掬い部の中心に回動軸を配設することにより常に把持部の両側で対称となるようにしてもよく、また、対称でない場合でも、把持部に加える力を直下の最下位置に位置する回動角部に加えることができ、効率よく掘削作業などをすることができる。
【0031】
第7の形態としては、把持部を手で握ったときに、その手に隣接する位置に掬い部が位置する程度の大きさに構成してもよい。
【0032】
この形態では、掬い部側に足を掛けて作業する大きさに限らず、手元近くで作業する手作業道具でも上述の作用効果を得ることができ、利便性よく、手元作業をすることができる。
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1および図2は本発明に係る手作業道具の第1実施形態を示す図である。
【0034】
図1において、手作業道具10は、手で把持する棒状部材の把持部11の一端側に、土砂などの作業対象を掬う板状部材の掬い部21が連設されており、この掬い部21は、把持部11の一端側の回動軸31により平面方向を回動面としつつ回動自在に軸支(連結)されている。この手作業道具10は、把持部11を把持して、例えば、固まっている地面を崩した後に掬って穴を掘削したり、地中の笹の根などを切断する際に利用する、先端が剣先形のスコップの形状になるように掬い部21を相対回動させて、あるいは、盛られている柔らかい状態の土砂を掬う際に利用する、先端が平形のシャベルの形状に掬い部21を相対回動させて使用することができるようになっている。
【0035】
把持部11は、掬い部21が一端側に連結されて中間部分を一方の手で握るようにして把持する棒状部分の握り部12と、この握り部12の他端側で枠形状に形成されて延在方向と直交する部分を他方の手で掴むようにして把持する掴み部13と、を備えており、作業者が握り部12と掴み部13をそれぞれ把持して土砂を掘削し掬い部21で掬うようにして、穴などを掘る作業を効率よく行い得るようになっている。
【0036】
掬い部21は、図1に示す回動状態で立てた姿勢のときに、最下の位置になる底辺(回動辺部)22と、底辺22の両側で上方に向かう側辺(回動辺部)23と、最上の位置になる上辺24と、を備える概略4角形(コ字形状)に形成されており、側辺23間の幅方向の中心線Cと、図2に示す回動状態で立てた姿勢のときに、底辺22と側辺23との挟角により形成されて最下位置になる角部(回動角部)25からの鉛直線Vと、が交差する4角形の中心から上辺24側にずれた位置に、把持部11(握り部12)の一端側と連結する回動軸31が配設されている。
【0037】
これにより、手作業道具10は、把持部11の延在方向に一致する位置に、掬い部21の底辺22または角部25を位置させてその把持部11から作業時に加えられる力を無駄なく伝えることができ、その掬い部21の作用点となる底辺22または角部25が把持部11の延在方向からずれて道具全体が回転しようとしてしまうことを回避しつつ作業することができる。
【0038】
この掬い部21は、底辺22と上辺24の間の回動軸31の近傍が谷折線21aに形成されているとともに、その谷折線21aに連続して両側辺23に近接する沿う方向に谷折線21bが形成されており、全体として凹形状に形成されることにより単なる平板形状よりも大量の土砂を掬うことができるように形成されている。
【0039】
また、掬い部21は、回動軸31に回動自在に軸支されて相対回動する把持部11の握り部12の一端側を収容する袋形状部26が上辺24側に開口するように形成されており、その袋形状部26は、回動軸31を中心にして一方の側辺23側に広がる扇形に形成されている。すなわち、掬い部21は、回動軸31を袋形状部26の底側に配設されて、その袋形状部26の扇形端辺26aが回動軸31で回動自在に一端側を軸支されている把持部11(握り部12)が扇形以上に相対回動してしまうことを制限するようになっている。
【0040】
さらに、掬い部21は、把持部11の握り部12の回動を制限する袋形状部26の扇形端辺26aの双方の両面(平面方向回動面)側に係合穴(受け形状)27が開口しており、その把持部11の握り部12には、その係合穴27に対して直交する方向に突出して係合する突起(突起部材)14が埋没可能に設けられている。
【0041】
これにより、手作業道具10は、図1に示す連結状態になるように、掬い部21の汚れの少ない上辺24側を掴んで袋形状部26の中心線Cに一致する扇形端辺26aまで把持部11の握り部12を相対回動させて衝止される状態にすることにより、係合穴27に突起14を突出係合させて逆方向に相対回動してしまうことを制限することができ、先端が平形のシャベルの形態にして柔らかい状態の土砂を掬うなどの作業を効果的に行うことができる。
【0042】
また、この手作業道具10は、図2に示す連結状態になるように、掬い部21の汚れの少ない上辺24側を掴んで袋形状部26の中心線Cから離隔する扇形端辺26aまで把持部11の握り部12を相対回動させて衝止される状態にすることにより、係合穴27に突起14を突出係合させて逆方向に相対回動してしまうことを制限することができ、先端が剣先形のスコップの形態にして固まっている地面を崩した後に掬って穴を掘削するなどの作業を効果的に行うことができる。
【0043】
すなわち、掬い部21の袋形状部26は、回動軸31と共に、把持部11の握り部12の一端側に掬い部21自体を回動自在に連結支持する回動機構を構成するとともに、その把持部11の握り部12の相対回動を制限して相対的な位置を固定するストッパ機構をも構成している。なお、掬い部21の袋形状部26内で把持部11の握り部12を相対回動させる際には、係合穴27内に埋没するように突起14を押さえて回動させればよく、その袋形状部26の扇形端辺26aまで相対回動させたときには突起14が係合穴27内に突出して係合固定する状態になる。
【0044】
また、掬い部21は、底辺22が緩やかな凹形状に湾曲しているとともに、波形状(鋸歯形状でもよい)に形成されており、図2に示すように、先端が剣先形のスコップの形態にしたときには、その底辺22の波形状を傾斜させている状態にして使用することができるようになっている。
【0045】
これにより、手作業道具10は、作業対象の地中に笹の根などがある場合には、その底辺22の波形状を圧接させつつ上下に摺動させることにより、波形状のないスコップのように力任せに圧接させて切断する作業よりも容易に切断することができ、作業負担を軽減することができる。
【0046】
また、把持部11は、握り部12の掬い部21(袋形状部26)近傍に上辺24と平行に足掛け棒15が固設されており、図2に示すように、先端が剣先形のスコップの形態にしたときに、握り部12側が傾斜する上辺24や側辺23である場合でも、その足掛け棒15に足を掛けて下方に力を加えることができ、硬い地面に突き刺す掬い部21の角部25や、地中の笹の根などに圧接させる波形状の底辺22に手よりも大きな力を追加して作業負担を軽減することができる。
【0047】
このように本実施形態においては、掬い部21の汚れていない上辺24側を掴んで袋形状部26内で把持部11の掴み部12を相対回動させて突起14を係合穴27に係合係止させるだけで、底辺22または角部25を先端側に位置させてスコップまたはシャベルとして利用することができる。したがって、掬い部21を交換することなく、また、汚れている先端側を把持して操作することなく、掬い部21を所望の形状になるように容易に回動させて簡易で軽量のストッパ機構で固定することのできる軽量で使い勝手のよい手作業道具10を実現することができる。
【0048】
次に、図3は本発明に係る手作業道具の第2実施形態を示す図である。なお、本実施形態は、上述実施形態と略同様に構成されているので、同様の構成には同一の符号を付して特徴部分を説明する(以下で説明する他の実施形態においても同様)。
【0049】
図3において、手作業道具10は、上述実施形態では掬い部21に袋形状部26を形成して回動軸31で把持部11の握り部12の一端側を回動自在に軸支させて連結支持するとともに、係合穴27に突起14を突出係合させているのに代えて、掬い部21を単なる平板形状のままその背面側に把持部11の握り部12を位置させて回動軸31で軸支させており、その把持部11と掬い部21の相対的な回動は、同様な位置に配設されている係合穴27に突起14を突出係合させて制限固定するようになっている。
【0050】
これにより、この手作業道具10でも、図1に示すように、先端が平形のシャベルの形態にして柔らかい状態の土砂を掬うなどの作業を効果的に行うことができるとともに、図2に示すように、先端が剣先形のスコップの形態にして固まっている地面を崩した後に掬って穴を掘削するなどの作業を効果的に行うことができる。
【0051】
このように本実施形態においては、上述実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、袋形状部26を形成することのない、より簡易な構造にして、さらに安価かつ軽量な手作業道具10を実現することができる。
【0052】
次に、図4は本発明に係る手作業道具の第3実施形態を示す図である。
図4において、手作業道具10は、上述実施形態では掬い部21の袋形状部26を一方の側辺23側に広がる扇形に形成して底辺22の一端側のみを角部25として使用する構造にしているが、これに加えて、その袋形状部26を双方の側辺23側に広がる扇形に形成するとともに、その他方側に広げた袋形状部26の扇形端辺26a側にも係合穴27を形成して把持部11の握り部12の突起14が突出係合することができるようになっており、この掬い部21では、上述実施形態では底辺22のみを波形状に形成しているが、これに加えて、双方の側辺23側も波形状に形成している。
【0053】
これにより、手作業道具10では、図4に示すように、先端が平形のシャベルの形態にして柔らかい状態の土砂を掬うなどの作業を効果的に行うことができるのに加えて、その掬い部21を正逆方向に回動させて底辺22の両側を角部25として利用することができ、先端が剣先形のスコップの形態にして固まっている地面を崩した後に掬って穴を掘削するなどの作業を効果的に行うことができるとともに、その両側の角部25に連続する側辺23の波形状を利用して地中の笹の根などを作業負担少なく切断することもできる。
【0054】
また、この掬い部21では、回動軸31から底辺22または上辺24と側辺23との挟角(角部25)に向かう放射方向に谷折線21cを形成して全体として凹形状に形成することにより単なる平板形状よりも大量の土砂を掬うことができるように形成されている。
【0055】
このように本実施形態においては、上述実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、掬い部21を正逆方向に回動させて利用することができ、仮に、角部25が損傷したり、底辺22の波形状が磨り減った場合にも、他の角部25や側辺23などの健全な箇所を利用して作業することができる。
【0056】
ここで、上述の実施形態の他の態様としては、図示することは省略するが、上述実施形態では、把持部11と掬い部21の相対的な回動は、掬い部21側の係合穴27に把持部11側の突起14を突出係合させて制限するようにしているが、これに限るものではなく、例えば、突起14に代えて、把持部11側にも貫通穴を開口させて掬い部21の係合穴27と共にネジ止めするようにしても良いことは言うまでもない。
【0057】
また、上述の実施形態のように把持部11を両手で支持して使用するサイズばかりではなく、掬い部21を小型に形成するとともに、その掬い部21に隣接する位置のみを手で把持する程度の大きさの把持部を備える小型の手作業道具にしてもよいことはいうまでもなく、この場合には、手元近くで作業する手作業道具でも上述の作用効果を得ることができ、利便性よく、手元作業をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
10……手作業道具 11……把持部 14……突起 15……足掛け棒 21……掬い部 22……底辺 23……側辺 25……角部 26……袋形状部 26a……扇形端辺 27……係合穴 31……回動軸 C……中心線 V……鉛直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象を掬うことができるように形成されている板状部材の掬い部と、手で把持することができるように形成されている棒状部材の把持部と、が連設されている手作業道具であって、
前記掬い部と前記把持部は、前記把持部の一端側に前記掬い部を回動自在に支持する回動機構を介して連設されているとともに、当該回動を制限して相対位置を固定するストッパ機構を備えており、
前記掬い部は、少なくとも、挟角で回動角部を形成する二辺の回動辺部を有するとともに、
前記回動機構は、立てた姿勢にしたときに、少なくとも、前記回動辺部の一方または前記回動角部が前記把持部の延長方向で最も離隔する最下位置になる角度の範囲での回動を許容する構造に形成される一方、
前記ストッパ機構は、前記回動辺部の一方または前記回動角部が前記最下位置に位置する際に前記把持部と前記掬い部の相対的な回動面に対する直交方向の突起部材が受け形状に係合して係止する構造に形成されていることを特徴とする手作業道具。
【請求項2】
前記掬い部は、立てた姿勢の際に、前記最下位置の底辺となる前記回動辺部の両端側に前記回動角部と共に、該回動角部から上方に向かって両側辺となる前記回動辺部を有する形状に形成されることにより、前記回動角部の一方または双方を前記最下位置に回動させて位置させる形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の手作業道具。
【請求項3】
前記回動機構は、前記回動辺部の一方が前記最下位置まで回動した後にそれ以上回動するのを制限するとともに、反対に、前記回動角部が前記最下位置まで回動した後にそれ以上回動するのを制限する構造に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の手作業道具。
【請求項4】
前記掬い部は、前記回動角部に連続する少なくとも一辺の前記回動辺部を、鋸歯形状または波形状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の手作業道具。
【請求項5】
前記把持部は、長尺に形成されて、足を掛けて力を付与する足掛け部が前記掬い部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の手作業道具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−26227(P2012−26227A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168396(P2010−168396)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)