説明

手動チェーンブロック

【課題】ロードシーブの軸受によらず、減速機構部の減速ギヤの位置をより中心寄りに配置可能として、小型化と共に強度自体も問題ない、手動チェーンブロックを提供する。
【解決手段】第1、第2主フレーム11a、11bにロードシーブ12を軸部12a、12bを介して軸受13a、13bにより回動自在に支承する。
第1主フレーム11aのロードシーブ12における軸部12aを支持する軸受13a周囲には、前記第1主フレーム11aに付設するように、スラスト方向に絞り加工部31と、第1減速ギヤ16bの軸部16brの軸受孔33を形成した補助プレート30を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動チェーンブロックに関するもので、減速機構部の配置構造を再検討して装置全体を一層小型、軽量化でき、しかも強度的にも十分な手動チェーンブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、荷揚げ作業に用いられる、手動チェーンブロックがある。この手動チェーンブロックは、実質的には、チェーンブロック本体と、チェーンブロック本体を懸架する上フックと、チェーンブロック本体のロードシーブに掛けられたロードチェーンと、ロードチェーンの下端に結合した下フックと、ロードシーブに隣接して配設され、ハンドホイールに掛けられたハンドチェーンとで構成されている。なお、ハンドチェーンとしては、例えば無端チェーン、無端ベルト、無端ロープが挙げられ、作業者の操作力をハンドホイールに伝達する機能を有する。また、ハンドホイールも同様に、ハンドホイールに掛けまわされた無端チェーン、無端ベルト、無端ロープと係合し、作業者の操作力を回転力に変換するものである。
【0003】
以上のような手動式チェーンブロックとして、例えば、特許文献1に開示される構造のものがある(図6参照)。
かかる手動チェーンブロック1では、所定間隔をおいて相対向する1対のフレーム2a、2bを有し、これらフレーム2a、2b間にロードシーブ3の基部軸4を、軸受4Bを介して回動自在に支持させ、基部軸4の中心孔4aに駆動軸5を、回動可能に支持させると共に、この駆動軸5とロードシーブ3との間には、減速歯車機構6を介装させて、駆動軸5の回転動力をロードシーブ3に減速して伝達し、ロードチェーンの巻き上げ下げを行う構成としている。
【0004】
上述の減速歯車機構6では、駆動軸5の軸端に設けたピニオンギヤ6aと、このピニオンギヤ6aに噛合う、2つの第1の減速ギヤ6b、6bと、これら第1減速ギヤ6b、6bのギヤ軸6c、6cに設けた第2の減速ギヤ6d、6dと、これら第2減速ギヤ6dと噛合うロードギヤ6eとからなる。この場合、フレーム2aには、ロードシーブ3の基部軸4を支持する軸受4Bの位置より、径方向外側の位置に、第1減速ギヤ6b、6bのギヤ軸6c、6cを支持するための軸受6fが設けられている。
なお、駆動軸5のピニオンギヤ6aと反対側の軸端側には、ねじ部7が形成され、ねじ部7にハンドホイール8を有するメカニカルブレーキ9が螺合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−195193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、以上の手動式チェーンブロック1では、第1減速ギヤ6b、6bとピニオンギヤ6aおよび第2減速ギヤ6d、6dとロードギヤ6eとの軸間距離が大きく、各歯車が大径となる。また、ロードシーブ3の基部軸4を支える軸受4Bの存在、さらには第1減速ギヤ6b、6bにおけるギヤ軸6c、6cを支持する軸受6fの存在により、各減速ギヤの軸を中心寄りに配置することができず、手動チェーンブロック1を小型化する障害となっていた。
本発明は、以上のような課題を改善するために提案されたものであって、ロードシーブの軸受の外形に影響されることなく、減速機構部を構成する減速ギヤの位置を内側に配置することができ、装置全体の小型化と共に、装置自体の強度自体をも損なうことのない、手動チェーンブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明では、手動チェーンブロックであって、手動による操作力を受けて回動する駆動軸と、前記駆動軸に同軸的に装着して前記駆動軸と共にフレームに軸受を介して支承されると共に、前記駆動軸に減速ギヤ機構を介して動力的に連結された、ロードチェーンが掛け渡されるロードシーブと、を具備し、前記減速ギヤ機構は、前記駆動軸に設けたピニオンギヤと、このピニオンギヤと噛合する減速ギヤと、前記ロードシーブと連動し、前記減速ギヤに噛合するロードギヤとを有するものにおいて、前記フレーム側面で前記軸受周囲に、この軸受のスラスト方向に段付加工され、且つ、前記減速ギヤの軸受けとしての軸受孔が形成された補助プレートを付設したことを特徴とする。
【0008】
これにより、これまでのような減速ギヤの軸受けを省略することができ、従って、フレームにロードシーブを支承する軸受に妨げられることなく、この軸受が大径の転がり軸受であっても、減速ギヤの軸をより中心側に寄せることができ、ギヤ機構回りの占有スペースをより省スペース化することが可能となる。しかも、減速ギヤに働く力およびロードシーブを支承する軸受に働くスラスト力を前記段付塑性加工部で受けることができる。
【0009】
請求項2記載の発明では、前記補助プレートは、絞り加工によって前記フレームの補助プレート付設面から所定距離、離隔するように形成した絞り加工部と、前記絞り加工部中心に中心孔を形成し、前記中心孔に近接して前記フレームの補助プレート付設面に向けて突出するように形成されている前記減速ギヤの軸受けとしての軸受孔と、を有することを特徴とする。
【0010】
これにより、減速ギヤの軸部をフレームの補助プレート付設面に向けて突出するように形成された軸受孔で支承するので、補助プレートを薄肉の鋼板とすることができる。
【0011】
請求項3記載の発明では、前記減速ギヤ機構の減速ギヤの軸部を軸承する軸受孔を、バーリング加工によって前記フレーム側に向けて前記軸受孔を構成する筒部が突出するように一体的に形成したことを特徴とする。
【0012】
これにより、フレームに補助プレートを付設した際に軸受孔を構成する筒部が、フレームの補助プレート付設面に当接することで、軸受孔に働く減速ギヤからのスラスト力をフレームに伝達し支持することができるので、補助プレートの薄肉化が図れる。
【0013】
請求項4記載の発明では、前記中心孔で前記補助プレートをフレームに位置決めし、且つ、前記絞り加工部の外縁部外側近傍に、リベットにより固着するための固着孔を形成した、ことを特徴とする。
【0014】
これにより、補助プレートを位置ずれすることなく、容易に組み付け作業を行うことができる。
【0015】
さらに、請求項5記載の発明では、前記補助プレートの軸受孔の前記中心孔寄りの筒部を、前記軸受側面に接するように位置させた、ことを特徴とする。
【0016】
これにより、一層、減速ギヤの軸を極力中心寄りに配置することができるばかりでなく、ロードシーブにおける軸受に対するスラスト方向の力は、補助プレートの軸受孔の中央寄りの筒部で受けるのでロードシーブを軸支する軸受けにスラスト止め輪を必要としない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、段付塑性加工し、且つ通常の軸受けに置き換わる軸受孔を加工した補助プレートによって、減速機構部を構成するギヤ軸の通常の軸受を省略することで、ロードシーブの軸受の存在にかかわらず、極力、減速機構部を構成するギヤ軸を中心寄りに寄せることができ、より小型化に寄与することができる。しかも、段付塑性加工部が、スラスト方向の力を受けることができ、補助プレート及びフレームの薄肉化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る手動チェーンブロックの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す手動チェーンブロックの、A−A線に沿う、横断面図である。
【図3】図1に示す手動チェーンブロックの、B方向から見た、側面図である。
【図4a】図1に示す、手動チェーンブロックの第1主フレームと、第1主フレームに付設した補助プレートの組み付け位置関係を示した、平面図である。
【図4b】図4aに示す、第1主フレームと保持プレートとの、C−C線に沿う、切断矢視図である。
【図5】本発明に係る手動チェーンブロックの第2実施形態を示す、縦断面図である。
【図6】従来の手動式チェーンブロックの一例を示す、縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる手動チェーンブロックについての種々の実施形態を挙げ、添付図面を参照しながら説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1、図2に第1実施形態にかかる手動式チェーンブロック10を示す。
この手動式チェーンブロック10は、所定間隔をおいて対向配置した第1、第2主フレーム11a、11b間に、軸部12a、12bを介して軸受(ボールベアリング)13a、13bにより回転自在に支承されたロードシーブ12を設けている。
また手動式チェーンブロック10は、ロードシーブ12における軸部12a、12bに設けた、中心軸を貫く貫通孔12cには、ニードルベアリング14a、14bを介して回動可能に支持させた駆動軸15を設けている。
そして、この駆動軸15とロードシーブ12との間には、減速歯車機構16を介装させて、駆動軸15の回転動力をロードシーブ12に減速して伝達する構成である。
なお、第1、第2主フレーム11a、11bは、3本のスタッドボルト17を用いて、減速歯車機構16を収容するギヤカバーGc、後述するメカニカルブレーキ19、ハンドホイール20を収容するホイールカバーHcと共に連結保持され、さらに上フック18が第1、第2主フレーム11a、11bの上部に固着された軸(図示省略)で、枢軸固定されている。
【0021】
前記駆動軸15において、第1主フレーム11aから図中、左方へロードシーブ12における軸部12aから突出する左端側には、前記減速歯車機構16が配設され、第2主フレーム11bから右方へロードシーブ12における軸部12bから突出する部位には、軸端に向けて、リードの比較的大きなねじ(多条ねじ)が刻設され、ハンドホイール20を有するメカニカルブレーキ19が螺入される。
【0022】
メカニカルブレーキ19は、従動部材19aと、従動部材19aのボス部外周部に介装された、一対のブレーキ部材19b、19bと、これらブレーキ部材19b、19b間にブッシュ19cを介して介装された爪車19dと、第2主フレーム11bに取着された捻りばね19eにより付勢され、爪車19dと噛合し、爪車19dを巻下げ方向への回転を不能とする爪部材19fと、外周にハンドホイール20を一体的に有する駆動部材19gとを備えている。
【0023】
ハンドホイール20には、作業者の操作力をハンドホイール20に伝達する無端のハンドチェーン(図示省略)が巻きかけられる。ハンドホイール20がハンドチェーンにより正回転されることで、駆動部材19gは駆動軸15の多条ねじ上を移動し、前記メカニカルブレーキ19のブレーキ部材19bに圧接されてハンドホイール20と駆動軸15とを動力的に結合させ、ハンドホイール20の巻上げ回転力を駆動軸15に伝達させるようにしたり、ハンドホイール20が逆回転されることで、駆動部材19gがブレーキ部材19bと爪車19dを圧接するのを解放し、ブレーキ作用が解除されて駆動軸15が巻下げ方向に回転するようにしている。
【0024】
次に、前記駆動軸15の左端側に配設される減速歯車機構16について説明する。
減速歯車機構16は、前記駆動軸15に設けたピニオンギヤ16aと、このピニオンギヤ16aと噛合する第1の減速ギヤ16bとを有する。
ピニオンギヤ16aは、駆動軸15の軸端にギヤ加工された小歯車である。なお、駆動軸15には、軸端のピニオンギヤ16aに隣接して、軸径に比較して大径の鍔部15aが形成され、ロードシーブ12における軸部12aから突出する部位との間にワッシャWを介在せしめ、スラスト方向の軸止めとしている。
【0025】
また、前記第1減速ギヤ16bは、前記ピニオンギヤ16aを中心として水平方向に対向させてそれぞれ前記ピニオンギヤ16aに、所定の第1段の減速比で噛合うように、一対配設している。この場合、一対の第1減速ギヤ16b、16bは、ギヤカバーGcの駆動軸15の軸端に対向する端面と、第1主フレーム11aに付設した補助プレートとを軸受としている(後述)。
【0026】
また減速歯車機構16は、前記一対の第1減速ギヤ16bの軸部に設けられた第2の減速ギヤ16c、16cと、これら第2減速ギヤ16cと、所定の第2段の減速比で噛合うロードギヤ16dとを有している(図2参照)。
【0027】
前記ロードギヤ16dは、ロードシーブ12における軸部12aの外周面に嵌入され、スプライン結合状態で保持される。このとき、ロードギヤ16dは、左端側の中央部に凹部16eを有し、鍔部15aを凹部16eに埋没させ、鍔部15aと面一となるように保持される。また、ロードギヤ16dの凹部16eと反対側の中央部は、軸受13aに向かって膨出し、ロードギヤの外径より小径のボス部16fを有し、このボス部16fを後述する補助プレート30の中心孔32に挿入配置し、ボス部16fの端面を軸部12aの段部でロードギヤ16dは位置決めされている。
【0028】
そして、第1主フレーム11aのロードシーブ12における軸部12aを支持する軸受13a周囲には、前記第1主フレーム11aの側面に付設するように、スラスト方向に段付塑性加工を施した補助プレート30を配置している。
かかる補助プレート30は、中央部位を例えば絞り加工によって第1主フレーム11aの端面から所定距離、離隔するように絞り加工部31を形成し、次いで絞り加工部31中心に、軸受13aを軸受13aの外周側が接した状態で嵌入可能な中心孔32が穿設される。
【0029】
なお、ロードシーブ12を軸部12a、12bを介して回転自在に支承する軸受13a、13bは、第1、第2主フレーム11a、11bの相対する内側において、フランジ状に突出するロードシーブ12と当接しており、このために前記軸受13a、13bには、ロードシーブ12から受けるスラスト方向の力に対して、軸受13a、13bを保持する止め輪13rを有している。
【0030】
ここで、前記第1主フレーム11aに付設した補助プレート30について以下、詳細に説明する(図4a、図4b参照)。
補助プレート30は、中心に設けた中心孔32が、第1主フレーム11aに設けられた嵌挿孔11ah、すなわちロードシーブ12における軸部12aを軸受13aを介して挿通するための嵌挿孔11ahと、同心的に一致するように、中心孔32と嵌挿孔11ahと嵌合する軸状の位置決め用治具を用いて位置決めしながら、補助プレート30を第1主フレーム11aにリベットRにより固着するようにしている。
従って、位置決め用治具に中心孔32と嵌挿孔11ahにそれぞれ嵌合する軸径部を有していれば、中心孔32は嵌挿孔11ahと一致させる必要はないが、図1、図2のように一致させれば、位置決めが容易となるとともに、軸受13aの外周を嵌挿孔11ahと中心孔32で間隔を明けて幅広く支持できるので、軸受13aを強固に支持することができる。
【0031】
すなわち補助プレート30は、前述しているように、素材である鋼板の中央部位を、例えば絞り加工によって第1主フレーム11aの端面から所定距離、離隔する、角部を丸めた略平面ひし形の底部を有する絞り加工部31を形成した後、絞り加工部31の中心に中心孔32を穿設すると共に、中心孔32を挟んで両側に例えばバーリング加工によって、前記第1減速ギヤ16bの軸部16brの軸受孔33を中心孔32の中心から等距離の位置で絞り加工部31の底部ひし形の長い対角線状に形成し、さらに、絞り加工部31の外縁部近傍に、補助プレート30を第1主フレーム11aにリベットRにより固着するための固着孔を2箇所以上形成している。
かかる補助プレート30を第1主フレーム11aに中心孔32と嵌挿孔11ahを用いて中心位置を位置決めし、固着孔34の近傍に中心孔32の円周方向の位置決めをする第1主フレーム11aの位置決め孔(図示せず)と嵌合するエンボス(ハーフパンチ:図示せず)を形成して位置決めし、リベットRにより固着される。補助プレート30の軸受孔33は、軸受孔33の筒部33aが、第1主フレーム11aに密接した状態で保持されるようにすることが好ましい。
以上のような補助プレート30は、第1主フレーム11aに固着する前に所定の熱処理(焼入れなど)を施している。また補助プレート30は第1主フレーム11aに固着されることで、軸受であると同時に第1主フレーム11aのスラスト方向の変形を絞り加工部31によって防止する強度部材となっている。
【0032】
また、前記第1減速ギヤ16bの左端側の軸端は、ギヤカバーGcの駆動軸15の軸端に対向する部位をバーリング加工により形成された軸受孔35によって支承され、軸受孔35の外側には、カバー端板Ctが付設され、ギヤカバーGcの内側空間に所定のグリスが充填され、各ギヤおよび軸受部の潤滑性を確保している。
【0033】
第1実施形態にかかる手動式チェーンブロック10は、以上の通り、構成されるものであり、次にこの手動式チェーンブロック10の動作、作用について、以下、説明する。
ハンドホイール20をハンドチェーン(図示省略)を操作して正回転させると、ハンドホイール20の駆動部材19gは、駆動軸15の多条ねじ上を移動してメカニカルブレーキ19のブレーキ部材19bに当接してブレーキ部材19b等を締め付け、従動部材19aと駆動軸15とを動力的に結合して、ハンドホイール20の回転力を駆動軸15に伝達することができる。
一方、ハンドホイール20を上述の回転方向とは逆に回転させると、ハンドホイール20の駆動部材19gは、駆動軸15の多条ねじ上を移動してメカニカルブレーキ19のブレーキ部材19bから離れるため、メカニカルブレーキ19のブレーキ作用が解除され、駆動軸15はハンドホイール20と共に巻下げ方向に回転可能な状態となり、ロードシーブ12に掛けまわされたロードチェーンが巻き下がり、荷物を吊る下フック(図示省略)を荷物のある箇所まで下げることができる。
そして、荷物に下フックを掛け、前記ハンドホイール20を正回転させて、ハンドホイール20の駆動部材19gは、駆動軸15の多条ねじ上を移動してメカニカルブレーキ19のブレーキ部材19bに当接してブレーキ部材19b等を締め付け、従動部材19aと駆動軸15とを動力的に結合して、ハンドホイール20の回転力が駆動軸15に伝達し、減速歯車機構16を介して、所定の減速比でロードシーブ12を回転させ、ロードチェーンで荷の巻上げを行うことができる。
【0034】
ところで、前記ハンドホイール20の回転力が駆動軸15に伝達されると、前記回転力は、駆動軸15の軸端のピニオンギヤ16aから、ピニオンギヤ16aを中心として水平方向に対向させて噛み合わせた一対の第1減速ギヤ16bに、所定の第1段の減速比で伝達される。
一対の第1減速ギヤ16bは、左端側の軸端が、ギヤカバーGcに形成された軸受孔35を、軸部16brの右端側が、補助プレート30に形成された中心孔32近傍の軸受孔33を軸受として、回転することができる。
【0035】
次いで、かかる第1段の減速比で伝達された回転力は、前記一対の第1減速ギヤ16bの軸部に一体成形された第2減速ギヤ16cからロードギヤ16dに、所定の第2段の減速比で回転力が伝達され、ロードギヤ16dとスプライン結合状態にあるロードシーブ12に伝達される。これにより、前記ロードギヤ16dとロードシーブ12とは、一体となって回転する。
【0036】
減速ギヤ16cがロードシーブ12と共に回転するときに生ずる減速ギヤ16cのスラスト方向およびラジアル方向の力は、減速ギヤ16cのギヤ形成部の側方面が、軸受13a周囲に付設した補助プレート30の絞り加工部31に接するように対向させたことで、前記補助プレート30の絞り加工部31で、受けることになる。
さらに、補助プレート30の絞り加工部31は、第1主フレーム11aの端面から所定距離、離隔するように形成され、しかも、所定の熱処理を施しており、補助プレート30の軸受孔33の筒部33aが、第1主フレーム11aに密接した状態で保持させることで、減速ギヤ16cのスラスト力は筒部33aを介して第1主フレーム11aで押圧力に耐え得ることができ、補助プレート30を薄肉化できる。
【0037】
以上のように、上述の手動式チェーンブロック10では、減速歯車機構16において、スペース的に問題となる第1減速ギヤ16bを一対配置する際、通常の軸受に置き換えて、ギヤカバーGcや補助プレートを加工した軸受孔35、33を軸受として構成することができる。
すなわち、補助プレート30の軸受孔33は、中心孔32に近接して、ロードシーブ12における軸部12aを支持する軸受13aに隣接して設けることができるので、減速ギヤの軸を極力中心寄りに配置することができ、手動チェーンブロック10の小型化に寄与することができる。
また、補助プレート30は、絞り加工部31の中心孔32を挟んで形成した軸受孔33が、筒部33aを介して第1主フレーム11aに密接した状態で保持され、且つ、第1主フレーム11aと補助プレート30との複合構造となって、ロードシーブ12および減速ギヤにかかる力を分散して保持するので、第1主フレーム11aおよび補助プレート30の薄肉化を図ることができる。
【0038】
(第2実施形態)
図5に、第2実施形態にかかる手動式チェーンブロック40を示す。本実施形態は、前述の第1実施形態にかかる手動式チェーンブロック10と基本的には同様な構成であり、実質的に同構成の要素には、同符号を付して説明を省略する。
この場合の手動式チェーンブロック40では、一層、減速ギヤの軸を極力中心寄りに配置することができるようにするために、あるいは、大径の軸受(ボールベアリング)13aを使用することができるようにするために、補助プレート30を、ロードシーブ12における軸部12aを支持する軸受13aの外周周囲に位置させるのではなく、ロードギヤ4の歯部形成部と軸受13a間に、すなわち、ロードシーブ12における軸部12a寄りに延在させている。
【0039】
なお、上記手動式チェーンブロック40においても、減速歯車機構16における第1減速ギヤ16bは、左端側の軸端はギヤカバーGcに形成された軸受孔35と、軸部16brの右端側は、補助プレート30の軸受孔33によって軸受けとして回動可能に支持する構成である。
この場合、補助プレート30の軸受孔33は、第1主フレーム11aにおける軸受13aに径方向に近接し、軸受孔33の中央寄りの筒部33aは、軸受13a側面に接するように位置させている。
このような配置構成により、ロードシーブ12における軸部12aを支持する軸受13aに対するスラスト方向の力は、前記補助プレート30の軸受孔33の中央寄りの筒部33aで受けることができるようになっている。
なお、軸受13aの外径が筒部33a配置部位よりも小径の場合には、軸受13aの側面に筒部33aではなく、中心孔32の内周周囲の絞り加工部31の底部円環部31aが接するようにしてもよい。
【0040】
以上のような手動式チェーンブロック50によれば、一層、減速ギヤの軸を極力中心寄りに配置することができるばかりでなく、ロードシーブ12における軸部12aを支持する軸受13aに対するスラスト方向の力は、前記補助プレート30の軸受孔33の中央寄りの筒部33aまたは中心孔32の内周周囲の円環部31aで受け止めることができる。
また、ロードシーブ12からの軸受13aに対するスラスト方向の力は、前記補助プレート30のロードギヤ4の歯部形成部と軸受13a間に延在する部位で受けることができるので、これまでのように軸受13aに設けられた、ロードシーブ12から受けるスラスト方向の力を支持する止め輪13rは不要となる。
【符号の説明】
【0041】
10 手動チェーンブロック
11a 第1主フレーム
11ah 嵌挿孔
11b 第2主フレーム
12 ロードシーブ
12a、12b 軸部
12c 貫通孔
13a、13b 軸受
13r 止め輪
14a、14b ニードルベアリング
15 駆動軸
15a 鍔部
16 減速歯車機構
16a ピニオンギヤ
16b 第1減速ギヤ
16br 軸部
16c 第2減速ギヤ
16d ロードギヤ
16f ボス部
17 スタッドボルト
18 上フック
19 メカニカルブレーキ
19a 従動部材
19b ブレーキ部材
19c ブッシュ
19d 爪車
19e 捻りばね
19f 爪部材
20 ハンドホイール
30 補助プレート
31 絞り加工部
31a 底部円環部
32 中心孔
33 軸受孔
33a 筒部
34 固着孔
35 軸受孔
40 手動式チェーンブロック
Gc ギヤカバー
Hc ホイールカバー
W ワッシャ
R リベット
Ct カバー端板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動チェーンブロックであって、
手動による操作力を受けて回動する駆動軸と、
前記駆動軸に同軸的に装着して前記駆動軸と共にフレームに軸受を介して支承されると共に、前記駆動軸に減速ギヤ機構を介して動力的に連結された、ロードチェーンが掛け渡されるロードシーブと、を具備し、
前記減速ギヤ機構は、前記駆動軸に設けたピニオンギヤと、このピニオンギヤと噛合する減速ギヤと、前記ロードシーブと連動し、前記減速ギヤに噛合するロードギヤとを有するものにおいて、
前記フレーム側面で前記軸受周囲に、この軸受のスラスト方向に段付加工され、且つ、前記減速ギヤの軸受けとしての軸受孔が形成された補助プレートを付設したことを特徴とする手動チェーンブロック。
【請求項2】
前記補助プレートは、絞り加工によって前記フレームの補助プレート付設面から所定距離、離隔するように形成した絞り加工部と、
前記絞り加工部中心に中心孔を形成し、
前記中心孔に近接して前記フレームの補助プレート付設面に向けて突出するように形成されている前記減速ギヤの軸受けとしての軸受孔と、を有することを特徴とする請求項1に記載の手動チェーンブロック。
【請求項3】
前記減速ギヤ機構の減速ギヤの軸部を軸承する軸受孔を、バーリング加工によって前記フレーム側に向けて前記軸受孔を構成する筒部が突出するように一体的に形成したことを特徴とする請求項2に記載の手動チェーンブロック。
【請求項4】
前記中心孔で前記補助プレートをフレームに位置決めし、且つ、前記絞り加工部の外縁部外側近傍に、リベットにより固着するための固着孔を形成した、ことを特徴とする請求項3に記載の手動チェーンブロック。
【請求項5】
前記補助プレートの軸受孔の前記中心孔寄りの筒部を、前記軸受側面に接するように位置させた、ことを特徴とする請求項3に記載の手動式チェーンブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−201637(P2011−201637A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69912(P2010−69912)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)