手動結束工具
【課題】結束バンドのバンド部への工具先端部のセット操作が楽で簡単に行え、数をこなしても疲れ難いように改善された手動結束工具を実現して、提供する。
【解決手段】手動結束工具において、ヘッド部bを貫いて突出しているバンド部aをヘッド部bに対して強制的に引張る引締め機構cと、引締め機構cを手指操作で作動させるための引締め操作部dと、引締め機構cによって引締められたバンド部aを、ヘッド部bから引締め方向下手側に突出する部分におけるヘッドb部付近の箇所において切断させる切断機構eと、切断機構eを手指操作で作動させるための切断操作部fと、を工具本体Ahに有し、引締め機構cに対してバンド部aを位置させる引締め配置操作、及び切断機構eに対してバンド部aを位置させる切断配置操作の双方が、工具本体Ahとバンド部aとのバンド部長手方向に対する横方向への相対移動によって行われるように構成される。
【解決手段】手動結束工具において、ヘッド部bを貫いて突出しているバンド部aをヘッド部bに対して強制的に引張る引締め機構cと、引締め機構cを手指操作で作動させるための引締め操作部dと、引締め機構cによって引締められたバンド部aを、ヘッド部bから引締め方向下手側に突出する部分におけるヘッドb部付近の箇所において切断させる切断機構eと、切断機構eを手指操作で作動させるための切断操作部fと、を工具本体Ahに有し、引締め機構cに対してバンド部aを位置させる引締め配置操作、及び切断機構eに対してバンド部aを位置させる切断配置操作の双方が、工具本体Ahとバンド部aとのバンド部長手方向に対する横方向への相対移動によって行われるように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束バンドの手動結束工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、手動結束工具として、特許文献1において開示されるものがあった。これは、長手方向のやや先端よりの中間部において互いに枢支連結される受けレバーと作用レバーと、受けレバーに枢支されるカットレバーとから成り、結束対象物に巻かれて仮止めされている結束バンドに作用させて、バンドを引締めて良好に結束させるための手動式の工具である。
【0003】
上記の手動結束工具は、作用レバーの先端部に結束バンドのバンド部を係止可能な機構を設け、受けレバーの先端部に結束バンドのヘッド部を受止め可能な構成としてあり、手指による受けレバーと作用レバーとの握り操作により、受けレバー及び作用レバーの先端部どうしが離反移動することを用いてバンド部をヘッド部に対して強制的に引張移動させて引締めることができる。そして、引締めた後には、カットレバーを握り込み操作することにより、その握り込みで突出移動する切断刃でバンド部をヘッド部の根元部分で切断できるようになっている。
【0004】
その場合、予めバンド部をその先端部から、各レバー先端部に形成されているバンド挿入孔に挿入して通す操作が必要であり、その操作が面倒であった。即ち、手動結束工具を用いての結束に際しては、結束対象に仮止めされている結束バンドに対して工具を近付け移動することになるので、金属製で比較的重い工具を動かしてその先端部の小さい孔にバンド部を通す必要があるが、バンド部に比べて遥かに慣性質量の大きい工具を動かして孔に通す操作がやり難く、比較的時間が掛るものとなっていた。そのため、結束作業の数をこなす場合には手首等も疲労し易い傾向にあった。
【0005】
このように、現状の手動結束工具による結束バンドの結束作業は、結束するための工具先端部へのバンドのセット操作が面倒で比較的時間が掛るものであって、結束作業を続けると疲れ易いものであり、改善の余地が残されているものであった。
【特許文献1】EP0836994A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記実情に鑑みて、結束バンドのバンド部への工具先端部のセット操作が楽で簡単に行え、数をこなしても疲れ難いように改善された手動結束工具を実現して、提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、手動結束工具において、ヘッド部bを貫いて突出しているバンド部aを前記ヘッド部bに対して強制的に引張る引締め機構cと、前記引締め機構cを手指操作で作動させるための引締め操作部dと、前記引締め機構cによって引締められた前記バンド部aを、前記ヘッド部bから引締め方向下手側に突出する部分における前記ヘッドb部付近の箇所において切断させる切断機構eと、前記切断機構eを手指操作で作動させるための切断操作部fと、を工具本体Ahに有するとともに、
前記引締め機構cに対して前記バンド部aを位置させる引締め配置操作、及び前記切断機構eに対して前記バンド部aを位置させる切断配置操作の双方が、前記工具本体Ahと前記バンド部aとのバンド部長手方向に対する横方向への相対移動によって行われるように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の手動結束工具において、前記工具本体Ahが、前記バンド部aを保持可能なバンド保持部gを先端部に有する第1レバー1と、前記ヘッド部bの通過は不能で、かつ、前記バンド部aの通過は許容する横向き溝m2を先端部に有する第2レバー2とを、これら各レバー1,2の長手方向の中間部において枢支連結することで構成されており、前記第1レバー1における前記第2レバー2との枢支連結点Pに対する前記保持部gと反対側となる第1基端部1Aと、前記第2レバー2における前記第1レバー1との枢支連結点Pに対する前記横向き溝m2と反対側となる第2基端部2Aとの手指による握り込みによる前記バンド保持部gと前記横向き溝m2との離反移動によって前記引締め機構cが作動する状態に構成されるとともに、
前記第2レバー2に枢支連結される切断レバー3の前記第2レバー側への握り込みによって前記切断機構eが作動する状態に構成され、
前記バンド保持部gは、前記第1レバー1の先端部に前記横向き溝m2と同方向に形成される取入れ溝m1と、前記取入れ溝m1に配置されるバンド部aを押付け可能な係止片4と、前記第1レバー1と前記第2レバー2との手指による握り込みの開始に伴って前記係止片4を押付け移動させる連動機構rとから構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の手動結束工具において、前記切断機構eは、前記第2レバー2の先端部における第1レバー側とは反対側において前記横向き溝m2を横切り移動可能な切断刃33を設け、前記切断レバー3の前記第2レバー側への握り込みによって前記切断刃33が横向き溝m2を横切り移動するように、前記切断刃33と前記切断レバー3とを連動連結することで構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の手動結束工具において、前記切断刃33をこれが前記横向き溝m2を横切り移動する前の退入位置に維持させるべく、前記切断レバー3を前記第2レバー2に対して遠のいた待機位置に復帰付勢する戻しバネ5を設けるとともに、前記戻しバネ5は、前記第1レバー1と前記第2レバー2とをそれらの先端部1B,2Bどうしが当接する閉じ状態に復帰付勢するバネを兼ねる構成とされていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の手動結束工具において、前記係止片4の先端部には、バンド部aに当接する滑止め部4Aが形成されるとともに、基端部には、前記第1レバー1に枢支するための揺動支点p1が形成され、
前記連動機構rは、前記滑止め部4Aが前記取入れ溝m1に突出する方向に前記係止片4を前記揺動支点p1回りに付勢する弾性部材7と、前記第1レバー1と前記第2レバー2との先端部1B,2Bどうしが当接する閉じ状態に復帰するに伴って前記滑止め部4Aが前記取入れ溝m1から離反するように前記第2レバー2が前記係止片4を揺動移動させ、かつ、前記第1レバー1と前記第2レバー2との先端部1B,2Bどうしが閉じ状態から離反移動するに伴って前記第2レバー2の前記係止片4への作用が解除されて前記滑止め部4Aが前記取入れ溝m1に突出するように、前記係止片4を前記第1レバー1に配置することによって構成されており、
前記係止片4が前記取入れ溝m1に突出して前記滑止め部4Aがバンド部aに当接している状態では、前記揺動支点p1が前記滑止め部4Aよりもバンド引締め方向下手側に位置するセルフロック構造となるように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の手動結束工具において、前記引締め機構cによるバンド部aの引締め力を増減調節可能とする引締力調節装置Cが装備されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項2〜5の何れか一項に記載の手動結束工具において、前記引締め機構cによるバンド部aの引締め力を増減調節可能とする引締力調節装置Cが装備されるとともに、前記第2レバー2が、前記横向き溝m2を先端部に有し、かつ、前記枢支連結点Pを基端部に有する先端レバー部2Bと、前記第1レバー側への揺動移動及び復帰移動が自在に前記先端レバー部2Bに枢支連結される手元レバー部2Aとで成る腰折れ可能レバーに構成されており、
前記引締力調節装置Cは、前記先端レバー部2Bと前記手元レバー部2Aとの何れか一方に設けられる凹部12cと、いずれか他方に設けられる凸部34と、前記凹部12cと前記凸部34とが嵌り合った係合状態に押圧付勢する弾性機構hとを備え、前記第1レバー1と前記第2レバー2とを握り込んでの前記引締め機構cの作動によるバンド部aの引締め力が所定値に達すると、前記弾性機構hによる押圧付勢力に抗して前記凹部12cと前記凸部34との係合状態が解除されて前記手元レバー部2Aが前記先端レバー部2Bに対して腰折れ揺動するように、かつ、前記弾性機構hの弾性付勢力を可変調節可能とすることで構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の手動結束工具において、前記手元レバー部2Aが、対向する一対の側壁36,36とそれら側壁どうし36,36を連結する連結壁37とを有して断面がコ字形状となるように屈曲形成された板材から成り、前記弾性機構hが、前記両側壁36,36と前記連結壁37とで囲まれた箇所にてレバー長手方向に沿って配置されるコイルバネ32を有して構成されるとともに、
前記引締力調節装置Cは、前記コイルバネ32の内側に挿通され、かつ、前記手元レバー2Aの手元側端壁23を遊嵌状態で貫通される螺子軸27と、この螺子軸27を前記手元側端壁23に軸方向移動不能で、かつ、回転自在に支持するための係合部材29と、前記コイルバネ32の手元側端壁側において回り止め状態で前記螺子軸27に螺装される駒部材28と、前記螺子軸27の前記手元側端壁23から外部に突出する部分に取付られるツマミ27aとを有しており、前記ツマミ27aの回し操作による前記駒部材28を介しての前記コイルバネ32の圧縮及び伸張により、前記弾性付勢力の可変調節が可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項7又は8に記載の手動結束工具において、前記手元レバー部2Aの前記先端レバー部2Bへの枢支連結点Pと、前記第2レバー2の前記第1レバー1への枢支連結点Pとが互いに同じに構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バンド部の引締めを行うべくバンド部の工具本体への配置操作が、工具本体を横移動させるだけで可能になるから、工具本体の先端部に形成されている挿通孔にバンド部をその先端開放側からバンド部の挿通させるとともにバンド部の長手方向に沿って移動させることとなる従来の工具に比べて、バンド部の引締め配置操作及び切断配置操作、即ちセット操作が簡単で迅速に行うことができる。その結果、結束バンドのバンド部への工具先端部のセット操作が楽で簡単に行え、数をこなしても疲れ難いように改善された手動結束工具を実現して提供することができる。また、ヘッド部とバンド部とが分離されていて、コイル状に巻かれた超長尺状バンド部から適宜の長さに切断して用いる構造の結束バンドには、上記従来の工具は使用不能であったが、横移動させてセット操作できる本発明の手動結束工具では、そのような構造の結束バンドの結束にも可能となる利点もある。
【0017】
請求項2のように、第1レバーと第2レバーとの握り込みによって引締め機構が作動し、第1レバーと切断レバーとの握り込みによって切断機構が作動する構成とすれば、手指による操作が行い易いとともに、工具本体を横移動によるセット操作が、第1及び第2レバーそれぞれの先端部に形成される各溝にバンド部を取入れる簡単な操作で行える便利な手動結束工具が提供できる。
【0018】
請求項3のように、切断レバーの握り込みによって切断刃が横向き溝を横切り移動する構成を採用すれば、構造簡単なものとしながら極力ヘッド部から切残しが突出しない状態で余剰のバンド部を切断させることが可能になる。
【0019】
請求項4のように、切断刃を退入位置に戻す戻しバネが、第1レバーと第2レバーとを閉じ状態に復帰付勢するバネを兼ねる構成とすれば、それぞれに戻しバネを設ける構成に比べてバネ数を削減することができ、コストダウン及び構造のシンプル化が可能となる合理的な手動結束工具とすることができる。
【0020】
請求項5のように、揺動可能に支持される係止片のセルフロック構造によって構成されるバンド保持部により、引締め機構による引張力を用いてバンド部をその引張力に抗して強固に保持できる合理構造が得られるとともに、第1レバーと第2レバーとの握り込み解除に伴って係止片のバンド保持が解除され、第1レバーと第2レバーとの握り込みによってバンド保持が開始されるので、バンド保持のための特別な動作が不要であって、単にレバーの握り込み及び解除操作のみでバンド部の保持及び引締め、並びにバンド部の保持及び切断が行える扱い易く操作し易い手動結束工具が得られている。
【0021】
請求項6のように、引締力の調節が行える引締力調節装置を設ければ、引締力が結束バンド毎にばらつくとか、単一種の結束バンドでも作業者が異なれば引締力に差が出ると行ったことが無く、誰が作業しても複数の結束バンドを均一な引締力でもって結束できる有用な手動結束工具を提供することができる。また、結束対象や結束バンドの種類によって引締力を適宜に調節設定できる便利さもある。
【0022】
請求項7のように、第2レバーを腰折れレバーとして、引締力が設定値に達すると先端レバー部に対して手元レバー部が折れ曲がるようにすれば、引締力が設定値に維持されるとともに、その折れ曲がりによって引締力が設定値に到達したことを作業者に知らしめることができるものとなる。そして、その折れ曲がりのし難さ調節によって設定引締力の調節設定が行えるものとなる。その結果、手指による握り込み操作を行うだけで設定引締力の検知及びその設定値の保持、並びにそのことの作業者への報告が一挙に行えて使い勝手に優れる手動結束工具が提供できている。
【0023】
請求項8の発明は、請求項7の引締力調節装置の具体化であって、コイルバネで凹部と凸部とを押付けあって嵌り合うことによる係合状態が、第1レバーと第2レバーとの握り力が所定以上になると解かれて第2レバーが腰折れする構成であり、コイルバネ、ネジ軸、ツマミ等の構成部材が全て第2レバーに装備されており、収まりが良くコンパクトに引締力調節装置を構成することができる。
【0024】
請求項9のように、第2レバーにおける先端レバー部と手元レバー部との枢支連結点と、第1及び第2レバーの枢支連結点とを同じとして、構成のシンプル化やコストダウンが可能となる合理化構成が促進された好ましい手動結束工具を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明による手動結束工具の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1〜図5は結束工具の全体斜視図や各種部品図、図6は工具の横移動によるバンド部のセット操作を示す作用図、図7〜図13はバンド結束一連の操作工程を順に示す作用図、図14,15は実施例2の手動結束工具によるバンド結束操作を示す作用図である。
【0026】
〔実施例1〕
実施例1による手動結束工具Aは、図1,図7に示すように、バンド保持部gを先端部に有する第1レバー1、及び横向き溝を先端部に有する第2レバー2とを、それらの長手方向におけるやや先端より中間位置において主軸心(枢支連結点の一例)Pで枢支連結して成る工具本体Ahと、第2レバー2に第3軸心p3で枢支連結される切断レバー3と、結束バンドBのバンド部aを引締める引締め機構cと、これを作動させるための引締め操作部dと、バンド部aを切断する切断機構eと、これを作動させるための切断操作部fと、を有して構成されている。
【0027】
ここで、実施例1の手動結束工具Aによる一連の結束操作について簡単に説明すると、まず、手動結束工具Aを横移動させて、結束対象Kに仮止めされている結束バンドBのヘッド部bを貫いて上方に突出しているバンド部aを、相対的に工具先端の取入れ溝m1及び横向き溝m2に取込む(図6参照)。そして、第2レバー2が腰折れ変位するまで、第1レバー1と第2レバー2とのそれぞれの基端部1A,2Aを1回又は複数回握り込み操作し、バンド部aを所定の引締力で引締める(図7〜10参照)。それから、切断レバー3を握り込み操作して切断機構eを作動させ、ヘッド部bの間近でバンドaを切断させる(図11〜13参照)、というものである。
【0028】
実施例1において用いられる結束バンドBは、図6等で示されるように、長尺帯状のバンド部aと、これとは別体のヘッド部bとから成る分離型で公知のものである。ヘッド部bは、一対の挿通孔と、それら各挿通孔においてバンド部aに作用可能な係止爪とを装備して構成されており、いずれの挿通孔も互いに同じ方向(矢印ロ方向)にはバンド部aの通過は許容し、反対方向(矢印ハ方刃)には係止爪に係止されて移動不能となる公知の構造に構成されている。つまり、バンド部aは必要な長さ分だけ取り出して使える経済的なものとなっている。
【0029】
さて、第1レバー1は、図1,図2に示すように、バンド部aを保持可能なバンド保持部gを先端部に有するものであって、断面形状が下向き開放コ字状で板金製の第1レバー部材1aと、その先端部に溶着等で一体化される鋳鉄製の第1先端部材1bとから構成されている。図2(a),(b)に示すように、第1レバー部材1aのやや先端寄りで下方の位置には、主軸心Pを有する頭付きピン状の主軸15を回動自在に挿通する主孔16、及び後述する係止片4を枢支する枢支軸38を挿通する枢支孔39が形成されている。第1レバー1においては、主軸心Pより基端側を第1基端部1A、先端側を第1先端部1Bとそれぞれ呼ぶものとする。
【0030】
第1先端部1Bの内側部分には係止片4が揺動自在に枢支連結されており、第1レバー部材1aの内側部分にはコイルバネ製の戻しバネ5が配備されている。第1レバー部材1aには、その上壁を部分的に切り込んで下方に落とし込むことにより、戻しバネ5を引掛けるためのフック部8が形成されている。第1先端部材1bの先端部には、平面視でL字形状を呈する第1先端部材1bの横向き部6と第1レバー部材1aの先端とにより、上下及び左側が開放された取入れ溝m1が形成されている。この取入れ溝m1は、バンド部aが上下に通される箇所として形成されている。
【0031】
第2レバー2は、図1,図3,図4に示すように、ヘッド部bの通過は不能で、かつ、バンド部aの通過は許容する横向き溝m2を先端部に有するものであって、第1レバー1が枢支される主軸心Pを有する第2先端部(先端レバー部の一例)2Bと、主軸心Pで第2先端部2Bに枢支連結される第2基端部(手元レバー部の一例)2Aと、これら第2先端部2Bと第2基端部2Aとに跨って形成される引締力調節装置Cとから構成されている。つまり、第2レバー2が、横向き溝m2を先端部に有し、かつ、枢支連結点Pを基端部に有する先端レバー部2Bと、第1レバー側への揺動移動及び復帰移動が自在に先端レバー部2Bに枢支連結される手元レバー部2Aとで成る腰折れ可能レバーに構成されているのである。
【0032】
第2先端部2Bは、図3(a),(b),(c)に示すように、板金製の支持金具9と、鋳鉄製の先端金具10とを溶着等で一体化して成るものであり、主軸心Pを持つ主孔11、規制部材(後述)12を取付けるための装着孔13、切断レバー3を枢支するための枢支孔14が形成されるとともに、先端金具10に形成される左向き開放状の横向き溝m2を有して構成されている。支持金具9は上向き開放コ字状に屈曲された部材であり、先端金具10は、補強用の縦リブ部10bが、ベース部10aの右側から先端に亘って立ち上がる状態に形成さされている。横向き溝m2は、右に奥深く切り込まれる状態でベース部10aに形成されている。
【0033】
第2基端部2Aは、図4(a),(b),(c)に示すように、断面が上向き開放コ字状となるように鋼板を屈曲形成して成る板金製の第2レバー部材で構成されている。第2レバー部材2Aは、主軸15が通る主孔17と、円弧状の逃げ切欠き18とが形成される先端幅狭部2bと、枢支孔19、長孔20、長切欠き21、ストッパ部22、及び調節用孔23aが形成される第2レバー部2aとを有して構成されている。この第2基端部2Aと第2先端部2Bとは、主軸15を介して主軸心Pで腰折れ揺動可能に連結されており、その主軸15は第1レバー1と第2レバー2との枢支連結機能も兼ねている。
【0034】
切断レバー3は、図1,図6,図7に示すように、上向き開放コ字状の断面形状を持つ板金材で成り、先端に切断刃33を押すための作用バー3aを有するとともに、頭付きピン状の揺動軸40を介すること第3軸心p3で揺動可能に第2レバー2に枢支されている。揺動軸40は、第2先端部2Bの、より具体的には先端金具10の枢支孔14に挿通されて支持されている。そして、作用バー3aが戻しバネ5で退入位置iに復帰付勢される切断刃33に背面当接していることにより、切断レバー3は、作用バー3aが支持金具9に当接すること定まる待機位置tに復帰付勢されている。
【0035】
バンド保持部gは、第1レバー1の先端部に横向き溝m2と同方向に形成される取入れ溝m1と、取入れ溝m1に配置されるバンド部aを押付け可能な係止片4と、第1レバー1と第2レバー2との手指による握り込みの開始に伴って係止片4を押付け移動させる連動機構rとから構成されている。係止片4の先端部には、バンド部aに当接するギザギザ面状の滑止め部4Aが形成されるとともに、基端部には、第1レバー1に枢支するための揺動支点である第1軸心p1が形成されており、取入れ溝m1の直後における第1レバー部材1aに頭付きピン状の枢支軸38を介して枢支されている。そして、滑止め部4Aが横向き部6に当接する方向(矢印イ方向であり、取入れ溝m1に突出する方向)に巻きバネ7によって揺動付勢されている。
【0036】
連動機構rは、滑止め部4Aが取入れ溝m1に突出する方向に係止片4を第1軸心p1回りに付勢する巻きバネ(弾性部材の一例)7と、第1先端部1Bと第2先端部2Bどうしが当接する閉じ状態に復帰するに伴って滑止め部4Aが取入れ溝m1から離反するように第2レバー2が係止片4を揺動移動させ、かつ、第1先端部1Bと第2先端部2Bどうしが閉じ状態から離反移動するに伴って第2レバー2の係止片4への作用が解除されて滑止め部4Aが取入れ溝m1に突出するように、係止片4を第1レバー1に配置することによって構成されている。そして、係止片4が取入れ溝m1に突出して滑止め部4Aがバンド部aに当接している状態(図8,12等を参照)では、第1軸心p1が滑止め部4Aよりもバンド引締め方向(矢印ニ方向)下手側に位置するセルフロック構造となるように構成されている。
【0037】
引締め機構cは、図1,図7,図8に締示すように、ヘッド部bを貫いて突出しているバンド部aをヘッド部bに対して強制的に引張るものであって、第1レバー1、バンド保持部g、第2レバー2、第2先端部2B、及びバンド保持部g等から構成されている。つまり、取入れ溝m1及び横向き溝m2にバンド部aが取入れられ、かつ、第2先端部2Bの下方にヘッド部bが位置する状態で、第1基端部1Aと第2基端部2Aとを握り込み操作する(図7参照)。すると、第1端部1Bと第2先端部2Bとが互いに離れる方向に主軸心P回りに揺動移動、即ち離反移動することによって、ヘッド部bからバンド部aを引き抜く方向(矢印ニ方向)に強制的に引張移動させ、結束対象Kに巻かれているバンド部aを引締めるのである(図8参照)。この場合、第1先端部1Bと第2先端部2Bとを離反移動させるために握り込まれる第1基端部1Aと第2基端部2Aとで引締め操作部dが構成されている。
【0038】
切断機構eは、図1,図7〜図9に示すように、第2レバー2の先端部における第1レバー側とは反対側において横向き溝m2を横切り移動可能な切断刃33を設け、切断レバー3の第2レバー側への握り込みによって切断刃33が横向き溝m2を横切り移動するように、切断刃33と切断レバー3とを連動連結することで構成されている。具体的には、先端に刃33aを有する横臥刃部33Aと、受面33bと基端フック33cとを有する縦壁部33Bとから成る切断刃33と、受面33bを前方に移動可能な作用バー3aを有する切断レバー3と、フック33cに前端部が引掛けられる戻しバネ5とを有して切断機構eが構成されている。横臥刃部33Aは、その下方に位置する止め部材35と先端金具10との間に、先端金具10の下面に沿って前後スライド移動自在に装備されている。止め部材35は、その後端部が支持金具9の前端部に係合されており、側方から1本の止めビス42によって先端金具10に装着されている。
【0039】
切断刃33は、その基端フック33cに作用する戻しバネ5によって、自由状態では、図7や図11に示すように、刃33aは横向き溝m2の手前に位置して受面33bが作用バー3aに当接する退入位置(刃待機位置)iに戻り付勢されており、切断レバー3は、作用バー3aが支持金具9の前側に当接する待機位置tに復帰付勢されている。尚、作用バー3aが支持金具9を後方(基端側)に押す構造により、切断刃33を退入位置iに復帰付勢する戻しバネ5は、第1レバー1と第2レバー2とをそれらの基端部1A,2Aどうしが互いに離れる方向に復帰付勢させるバネを兼ねる構成となっている。
【0040】
前記待機状態において切断レバー3を第1レバー1と共に握り込むと、作用バー3aが受面33bを押して切断刃33を前進移動させようとするが、巻きバネ7で揺動付勢されている係止片4が第2先端部2bを下方に押している作用により、第2レバーと切断レバー3とは一体となって揺動移動し、それによってバンド部aがバンド保持部cで係止保持される(図12参照)。第2レバー2は開き位置Rから尚も、切断レバー3を握り込むと、切断レバー3は相対的に第2基端部2Aに対しても接近することとなり、作用バー3aが受面33bを押すことで切断刃33が第2レバー2に対して矢印ホ方向にスライド移動し、ヘッド部bぎりぎりの箇所でバンド部aが刃33aによって切断される(図13参照)。この場合、第1レバー1と切断レバー3とで、切断機構eを手指操作で作動させるための切断操作部fが構成されている。
【0041】
引締力調節装置Cは、図1,図5,図7に示すように、引締め機構cによるバンド部aの引締め力を増減調節可能とする装置であり、規制部材12と、作用アーム24と、中間リンク25と、スライド部材26と、調節ネジ軸27と、受板部材(駒部材の一例)28と、係止用ボス(係合部材の一例)29等を有してほぼ第2基端部2Aに収容される状態で構成されている。規制部材12は、装着孔13に通される頭付きピン状の取付軸30を通す装着用孔12aと、主軸15を通す主軸用孔12bと、係合凹入部(凹部の一例)12cと、これに続く逃げ移動面12dとを有するブロック材で形成されており、主軸15と取付軸30とによって第2先端部2Bに対して位置固定状態で連結されるものである。
【0042】
帯状鋼板の折返しで成るスライド部材26が、長孔20を通る頭付きピン状で一対のピン軸31,31を介して第2レバー部2aの内側部分に前後スライド自在に装備され、このスライド部材26の基端側に、調節ネジ軸27のネジ軸部27Aの先端部が相対回動自在に挿入されている。調節ネジ軸27は、第2レバー部2aの手元側端壁23に貫通される調節用孔23aを通して係止用ボス29を相対移動不能に外嵌することにより、左右に回動自在に第2レバー部2aに装備されている。ネジ軸部27Aには、長切欠き21に臨むマーク部28aを有する略四角形状の受板部材28が螺合されるとともに、その受板部材28とスライド部材26との間には、ネジ軸部27Aに嵌装される状態の圧縮コイルバネ(弾性機構hの一例)32が配備されている。
【0043】
作用アーム24は、一対のL字鋼板24a,24aと段付ピン24bとで成り、下端部が頭付きピン状の支軸41を介して第2レバー部2aの枢支孔19に第2軸心p2で揺動可能に枢支されている。作用アーム24は、一対の鋼板で成る中間リンク25を介してスライド部材26の先端部に連結されており、中間リンク25は、段付ピン24bを介して作用アーム24に、かつ、ピン軸31を介してスライド部材26に夫々枢支連結されている。そして、規制部材12の係合凹入部12cに嵌り込み係合可能な円筒状のローラ(凸部の一例)34が、作用アーム24の段付ピン24bに遊外嵌されている。このような構成により、圧縮コイルバネ32がスライド部材26及び中間リンク25を介して作用アーム24を第2軸心p2回りに規制部材12に押圧付勢しており、ローラ34が係合凹入部12cに押圧付勢される状態で係合されるので、それによって第2基端部2Aと第2先端部2Bとが通常は一体化されている。従って、第1基端部1Aと2基端部2Aとを互いに接近するように握り込みめば、第1先端部1Bと第2先端部2Bとは離反移動する。
【0044】
第1先端部1Bと第2先端部2Bとの離反移動によってバンド部aの引締力が設定値に達しても、尚も第2レバー部2aを握り込むと、圧縮コイルバネ32によるローラ34と係合凹入部12cとの係合力に抗してローラ34を逃げ移動面12dに乗り上げ移動させ、主軸心P回りに第2基端部2Aが第2先端部2Bに対して上昇揺動、即ち腰折れ揺動し、引締力がそれ以上大きくならないように機能するのである(図10参照)。そして、その設定引締力はローラ34と係合凹入部12cとの係合力、即ち圧縮コイルバネ32の弾性力に依存されるので、外部露出されているツマミ27aの回動操作により、受板部材28の位置を前方に(主軸心P側に)移動させて圧縮コイルバネ32を圧縮すれば、設定値が高くなって引締力を大きくすることができ、受板部材28の位置を後方に(ツマミ27a側に)移動させて圧縮コイルバネ32を伸張すれば、設定値が低くなって引締力を小さくすることができるのである。
【0045】
図7は、例として、受板部材28が最も摘み27a側に寄って圧縮コイルバネ32が最も伸張して緩い引締力に調節されている状態を示している。このときマーク部28aは、図5(a)に仮想線で示すように、長切欠き21の最基端側に位置している。図5(a)は、受板部材28のマーク部28aが長切欠き21の中央に位置するように摘み27aを回した中間引締力設定状態であり、図5(b)は、マーク部28aが長切欠き21の最先端側に位置するように摘み27aを回した最強引締力設定状態である。
【0046】
次に、実施例1による手動結束工具を用いての一連の結束操作について説明する。まず、図6に示すように、手動結束工具Aを横移動させて、結束対象Kに仮止めされている結束バンドBのバンド部aを取入れ溝m1及び横向き溝m2に取り込み、それから手動結束工具Aを少し下げてヘッド部bに近付けるように移動させ、図7に示す引締め開始状態に移行させる。図7に示す引締め開始状態では、第2先端部2Bの下面にヘッド部bが当接する状態が望ましいが、そうでなくても良い。尚、図7において、実線で示す第2レバー2は、第1レバー1に対する開き位置Rであり、仮想線で示す第2レバー2は、ストッパ部22が第1レバー1に当接した第1レバー1に対する限界の閉じ位置Tをそれぞれ示している。また、図7においてhy,ny,ky,cyは、それぞれ第2レバーを握る手指の人差し指、中指、薬指、小指である。
【0047】
それから、第1レバー1の基端部1Aと第2レバー2の基端部2Aとを手指で握り込み操作し、図8に示すように、第2レバー部2aのストッパ部22が第1レバー1の裏面に当接するまで第1レバー1と第2レバー2とを主軸心P回りに揺動移動させ、第1先端部1Bと第2先端部2Bとを離反移動させ、バンド部aを引張って結束対象kを引締める。このとき、後の切断工程の際に詳しく説明するが、図7に示す引締め開始状態からの若干の握り込み(開き位置R→保持開始位置V:図12参照)によってバンド保持部gが作動し、係止片4が突出移動して滑り止め部4Aと横向き部6との間にバンド部aを挟み込んでのセルフロック作用によって強固に係止保持させルことが可能であり、その後の両先端部1B,2Bの離反移動による引締めを可能とする状態が得られている。
【0048】
さて、図8に示す引締め終了状態では握り込みを解除し、図7に示す引締め開始状態に戻す。そして、再び第1基端部1Aと第2基端部2Aとを握り込み、二回目の引締めを開始する。それから、図9に示すように、二回目もしくは三回目以降の握り込み途中の途中位置Qにて設定引締め力に達すると、図10に示すように、主軸心P回りに第2基端部2Aが第2先端部2Bに対して腰折れ揺動し、第2先端部2Bは動かずに設定引締め力が維持されるとともに、急に握り込みが軽くなったことで作業者は設定引締め力に達したことが分ることとなる。この腰折れ揺動状態では、それ以上握り込み操作を行っても第2先端部2Bは動かず、従って引締め機構cによる引締め作用が不能になる。尚、設定引締め力は、前述した引締力調節装置Cによって予め設定されている。
【0049】
バンド部aの引締めが済むと、今度は図11に示すように、第2レバー2に掛けていた手指hy,ny,ky,cyを切断レバー3に掛け直して第1レバー1とに跨って握る切断開始状態に変更し、引締められた後のバンド部aが再度取入れ溝m1及び横向き溝m2に取り込まれ手いる状態にする。引締め終了に伴って、一旦バンド部aが各溝m1,m2から離れた場合には、再度手動結束工具Aを横移動させてバンド部aを各溝m1,m2に取り込む。図11に示す手動結束工具Aの自由状態では、切断レバー3は第2レバー2に対して開き切った待機位置tにある。
【0050】
切断開始状態から若干、即ち、連れ揺動する第2レバー2が開き位置Rから保持開始位置Vに位置するように、待機位置tにある切断レバー3を作用開始位置vまで握り込むと、図12に示すように、第1先端部1Bと第2先端部2Bとが少し離反して連動機構rが作動して係止片4が取入れ溝m1に突出する方向に揺動移動し、滑止め部4Aがバンド部aに当接したバンド保持状態が齎される。厳密には、滑止め部4Aがバンド部aに当接し、かつ、その状態から第2先端部2Bが相対的に第1先端部1Bから僅かに離反移動してバンド部aを引張り、それによって係止片4が矢印イ方向に揺動しようとしてセルフロック作動が生じ、横向き部6と係止片4とでバンド部aを強固に係止保持することができる。尚、切断レバー3は、第1レバー1に対しては待機位置tから作用開始位置vに揺動移動するが、連れ揺動する第2レバー2には相対的に握り込まれる方向には揺動移動しておらず、切断刃33は依然として退入位置iにある。
【0051】
図12に示す状態からなおも握り込んで、切断レバー3を第2レバー2に対して待機位置tから握込み位置sに上昇揺動移動させると、戻しバネ5の付勢力に抗して作用バー3aが縦壁部33Bを押して第2先端部2Bに対して切断刃33を突出位置qまで突出移動させ、図13に示すように、横向き溝m2の下端位置、即ちヘッド部bの上面すれすれの位置でバンド部aが切断されるのである。このバンド切断工程においては、切断レバー3の握り込みによって第2レバー2が連れ動きしようとして、それによってバンド保持機構gが作動してバンド部aが引張られて緊張されており、スライド移動する刃33aで円滑、良好にバンド部aの切断が行えるものとなっている。切断されて取入れ溝m1及び横向き溝m2に残っているバンド部aは、そのバンド部aと手動結束工具Aとを相対横移動させることにより、容易に各溝m1,mから取り外すことができ、次の結束作業に備えることができる。
【0052】
〔実施例2〕
実施例2による手動結束工具Aは、実施例1の結束工具における引締力調節装置Cが装備されないタイプであり、それ以外は基本的に同じものである。具体的には、第2レバー2が腰折れレバーではなく、単一のレバーとして構成されている。即ち、第1レバー1と、第2レバー2と、切断レバー3と、引締め機構(符記省略)と、引締め操作部dと、切断機構(符記省略)と、切断操作部fと、バンド保持部(符記省略)とを有して構成されている。
【0053】
実施例2の手動結束工具を用いた一連の結束方法を説明すると、まず図14(a)に示すように、バンド部aの開放側をヘッド部bに通してパイプ等の結束対象Kに結束バンドBを仮止め装着する。この場合の結束バンドBは、バンド部aとヘッドbとが一体となった普及型のものである。次に、図14(b)に示すように、手動結束工具Aを横移動(この場合は左移動)させて、ヘッド部bから突出しているバンド部aを取入れ溝m1及び横向き溝m2に取り込む操作を行う。
【0054】
各溝m1,m2にバンド部aを取り込んだら、図15(a)に示すように、第1基端部1Aと第2基端部2Aとを握り込み操作してバンド部aを引張り、結束対象Kに巻回されている部分のバンド部aを引締めていく。そして、一回又は複数回の引締め操作によって適宜に引締められた後に、図15(b)に示すように、第2レバー2に掛けられていた手指を切断レバー3に掛け直してから握り込み操作し、ヘッド部bから突出している余剰バンド部をヘッド部bの直上で切断するのである。この場合の引締め力は、手動結束工具Aを操作する作業者の感覚によって定められるものであり、実施例1の工具のように機械的に一定の値に揃えられるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1による手動結束工具の全体斜視図
【図2】第1レバーを示し、(a)は側面図、(b)は底面図
【図3】第2先端部を示し、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は斜視図
【図4】第2基端部を示し、(a)は側面図、(b)は矢視Z図、(c)は斜視図
【図5】引締力調節装置の構造を示し、(a)は引締力が中間値状態の一部切欠き側面図と部分側面図、(b)は最大引締力状態の一部切欠き側面図と部分側面図
【図6】工具を横移動させてバンド部を工具先端部に取り込む状態を示す斜視図
【図7】バンド部の引締め開始状態を示す作用図
【図8】バンド部を引締める引締め工程を示す作用図
【図9】バンド部の引締め力が設定値に達した状態の一例を示す作用図
【図10】引締力調節装置の作動による第2レバーの腰折れ揺動状態を示す作用図
【図11】バンド部の切断開始状態を示す作用図
【図12】切断レバーの握り込み開始に伴うバンド保持状態を示す作用図
【図13】切断レバーの握り込みによるバンド部の切断工程を示す作用図
【図14】実施例2の手動結束工具を示し、(a)は結束バンドの仮止め工程を示す作用図、(b)はバンド部のセット工程を示す作用図
【図15】図14の工具の作用図を示し、(a)は引締め工程、(b)は切断工程
【符号の説明】
【0056】
1 第1レバー
1A 第1基端部
1B 第1先端部
2 第2レバー
2A 第2基端部、手元レバー部
2B 第2先端部、先端レバー部
3 切断レバー
4 係止片
4A 滑止め部
5 戻しバネ
7 弾性部材
12c 凹部
23 手元側端壁
27 螺子軸
27a ツマミ
28 駒部材
29 係合部材
32 コイルバネ
33 切断刃
34 凸部
36 側壁
37 連結壁
A 手動結束工具
Ah 工具本体
C 引締力調節装置
P 枢支連結点
a バンド部
b ヘッド部
c 引締め機構
d 引締め操作部
e 切断機構
f 切断操作部
g バンド保持部
h 弾性機構
m1 取入れ溝
m2 横向き溝
p1 揺動支点
r 連動機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束バンドの手動結束工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、手動結束工具として、特許文献1において開示されるものがあった。これは、長手方向のやや先端よりの中間部において互いに枢支連結される受けレバーと作用レバーと、受けレバーに枢支されるカットレバーとから成り、結束対象物に巻かれて仮止めされている結束バンドに作用させて、バンドを引締めて良好に結束させるための手動式の工具である。
【0003】
上記の手動結束工具は、作用レバーの先端部に結束バンドのバンド部を係止可能な機構を設け、受けレバーの先端部に結束バンドのヘッド部を受止め可能な構成としてあり、手指による受けレバーと作用レバーとの握り操作により、受けレバー及び作用レバーの先端部どうしが離反移動することを用いてバンド部をヘッド部に対して強制的に引張移動させて引締めることができる。そして、引締めた後には、カットレバーを握り込み操作することにより、その握り込みで突出移動する切断刃でバンド部をヘッド部の根元部分で切断できるようになっている。
【0004】
その場合、予めバンド部をその先端部から、各レバー先端部に形成されているバンド挿入孔に挿入して通す操作が必要であり、その操作が面倒であった。即ち、手動結束工具を用いての結束に際しては、結束対象に仮止めされている結束バンドに対して工具を近付け移動することになるので、金属製で比較的重い工具を動かしてその先端部の小さい孔にバンド部を通す必要があるが、バンド部に比べて遥かに慣性質量の大きい工具を動かして孔に通す操作がやり難く、比較的時間が掛るものとなっていた。そのため、結束作業の数をこなす場合には手首等も疲労し易い傾向にあった。
【0005】
このように、現状の手動結束工具による結束バンドの結束作業は、結束するための工具先端部へのバンドのセット操作が面倒で比較的時間が掛るものであって、結束作業を続けると疲れ易いものであり、改善の余地が残されているものであった。
【特許文献1】EP0836994A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記実情に鑑みて、結束バンドのバンド部への工具先端部のセット操作が楽で簡単に行え、数をこなしても疲れ難いように改善された手動結束工具を実現して、提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、手動結束工具において、ヘッド部bを貫いて突出しているバンド部aを前記ヘッド部bに対して強制的に引張る引締め機構cと、前記引締め機構cを手指操作で作動させるための引締め操作部dと、前記引締め機構cによって引締められた前記バンド部aを、前記ヘッド部bから引締め方向下手側に突出する部分における前記ヘッドb部付近の箇所において切断させる切断機構eと、前記切断機構eを手指操作で作動させるための切断操作部fと、を工具本体Ahに有するとともに、
前記引締め機構cに対して前記バンド部aを位置させる引締め配置操作、及び前記切断機構eに対して前記バンド部aを位置させる切断配置操作の双方が、前記工具本体Ahと前記バンド部aとのバンド部長手方向に対する横方向への相対移動によって行われるように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の手動結束工具において、前記工具本体Ahが、前記バンド部aを保持可能なバンド保持部gを先端部に有する第1レバー1と、前記ヘッド部bの通過は不能で、かつ、前記バンド部aの通過は許容する横向き溝m2を先端部に有する第2レバー2とを、これら各レバー1,2の長手方向の中間部において枢支連結することで構成されており、前記第1レバー1における前記第2レバー2との枢支連結点Pに対する前記保持部gと反対側となる第1基端部1Aと、前記第2レバー2における前記第1レバー1との枢支連結点Pに対する前記横向き溝m2と反対側となる第2基端部2Aとの手指による握り込みによる前記バンド保持部gと前記横向き溝m2との離反移動によって前記引締め機構cが作動する状態に構成されるとともに、
前記第2レバー2に枢支連結される切断レバー3の前記第2レバー側への握り込みによって前記切断機構eが作動する状態に構成され、
前記バンド保持部gは、前記第1レバー1の先端部に前記横向き溝m2と同方向に形成される取入れ溝m1と、前記取入れ溝m1に配置されるバンド部aを押付け可能な係止片4と、前記第1レバー1と前記第2レバー2との手指による握り込みの開始に伴って前記係止片4を押付け移動させる連動機構rとから構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の手動結束工具において、前記切断機構eは、前記第2レバー2の先端部における第1レバー側とは反対側において前記横向き溝m2を横切り移動可能な切断刃33を設け、前記切断レバー3の前記第2レバー側への握り込みによって前記切断刃33が横向き溝m2を横切り移動するように、前記切断刃33と前記切断レバー3とを連動連結することで構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の手動結束工具において、前記切断刃33をこれが前記横向き溝m2を横切り移動する前の退入位置に維持させるべく、前記切断レバー3を前記第2レバー2に対して遠のいた待機位置に復帰付勢する戻しバネ5を設けるとともに、前記戻しバネ5は、前記第1レバー1と前記第2レバー2とをそれらの先端部1B,2Bどうしが当接する閉じ状態に復帰付勢するバネを兼ねる構成とされていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の手動結束工具において、前記係止片4の先端部には、バンド部aに当接する滑止め部4Aが形成されるとともに、基端部には、前記第1レバー1に枢支するための揺動支点p1が形成され、
前記連動機構rは、前記滑止め部4Aが前記取入れ溝m1に突出する方向に前記係止片4を前記揺動支点p1回りに付勢する弾性部材7と、前記第1レバー1と前記第2レバー2との先端部1B,2Bどうしが当接する閉じ状態に復帰するに伴って前記滑止め部4Aが前記取入れ溝m1から離反するように前記第2レバー2が前記係止片4を揺動移動させ、かつ、前記第1レバー1と前記第2レバー2との先端部1B,2Bどうしが閉じ状態から離反移動するに伴って前記第2レバー2の前記係止片4への作用が解除されて前記滑止め部4Aが前記取入れ溝m1に突出するように、前記係止片4を前記第1レバー1に配置することによって構成されており、
前記係止片4が前記取入れ溝m1に突出して前記滑止め部4Aがバンド部aに当接している状態では、前記揺動支点p1が前記滑止め部4Aよりもバンド引締め方向下手側に位置するセルフロック構造となるように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の手動結束工具において、前記引締め機構cによるバンド部aの引締め力を増減調節可能とする引締力調節装置Cが装備されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項2〜5の何れか一項に記載の手動結束工具において、前記引締め機構cによるバンド部aの引締め力を増減調節可能とする引締力調節装置Cが装備されるとともに、前記第2レバー2が、前記横向き溝m2を先端部に有し、かつ、前記枢支連結点Pを基端部に有する先端レバー部2Bと、前記第1レバー側への揺動移動及び復帰移動が自在に前記先端レバー部2Bに枢支連結される手元レバー部2Aとで成る腰折れ可能レバーに構成されており、
前記引締力調節装置Cは、前記先端レバー部2Bと前記手元レバー部2Aとの何れか一方に設けられる凹部12cと、いずれか他方に設けられる凸部34と、前記凹部12cと前記凸部34とが嵌り合った係合状態に押圧付勢する弾性機構hとを備え、前記第1レバー1と前記第2レバー2とを握り込んでの前記引締め機構cの作動によるバンド部aの引締め力が所定値に達すると、前記弾性機構hによる押圧付勢力に抗して前記凹部12cと前記凸部34との係合状態が解除されて前記手元レバー部2Aが前記先端レバー部2Bに対して腰折れ揺動するように、かつ、前記弾性機構hの弾性付勢力を可変調節可能とすることで構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の手動結束工具において、前記手元レバー部2Aが、対向する一対の側壁36,36とそれら側壁どうし36,36を連結する連結壁37とを有して断面がコ字形状となるように屈曲形成された板材から成り、前記弾性機構hが、前記両側壁36,36と前記連結壁37とで囲まれた箇所にてレバー長手方向に沿って配置されるコイルバネ32を有して構成されるとともに、
前記引締力調節装置Cは、前記コイルバネ32の内側に挿通され、かつ、前記手元レバー2Aの手元側端壁23を遊嵌状態で貫通される螺子軸27と、この螺子軸27を前記手元側端壁23に軸方向移動不能で、かつ、回転自在に支持するための係合部材29と、前記コイルバネ32の手元側端壁側において回り止め状態で前記螺子軸27に螺装される駒部材28と、前記螺子軸27の前記手元側端壁23から外部に突出する部分に取付られるツマミ27aとを有しており、前記ツマミ27aの回し操作による前記駒部材28を介しての前記コイルバネ32の圧縮及び伸張により、前記弾性付勢力の可変調節が可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項7又は8に記載の手動結束工具において、前記手元レバー部2Aの前記先端レバー部2Bへの枢支連結点Pと、前記第2レバー2の前記第1レバー1への枢支連結点Pとが互いに同じに構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バンド部の引締めを行うべくバンド部の工具本体への配置操作が、工具本体を横移動させるだけで可能になるから、工具本体の先端部に形成されている挿通孔にバンド部をその先端開放側からバンド部の挿通させるとともにバンド部の長手方向に沿って移動させることとなる従来の工具に比べて、バンド部の引締め配置操作及び切断配置操作、即ちセット操作が簡単で迅速に行うことができる。その結果、結束バンドのバンド部への工具先端部のセット操作が楽で簡単に行え、数をこなしても疲れ難いように改善された手動結束工具を実現して提供することができる。また、ヘッド部とバンド部とが分離されていて、コイル状に巻かれた超長尺状バンド部から適宜の長さに切断して用いる構造の結束バンドには、上記従来の工具は使用不能であったが、横移動させてセット操作できる本発明の手動結束工具では、そのような構造の結束バンドの結束にも可能となる利点もある。
【0017】
請求項2のように、第1レバーと第2レバーとの握り込みによって引締め機構が作動し、第1レバーと切断レバーとの握り込みによって切断機構が作動する構成とすれば、手指による操作が行い易いとともに、工具本体を横移動によるセット操作が、第1及び第2レバーそれぞれの先端部に形成される各溝にバンド部を取入れる簡単な操作で行える便利な手動結束工具が提供できる。
【0018】
請求項3のように、切断レバーの握り込みによって切断刃が横向き溝を横切り移動する構成を採用すれば、構造簡単なものとしながら極力ヘッド部から切残しが突出しない状態で余剰のバンド部を切断させることが可能になる。
【0019】
請求項4のように、切断刃を退入位置に戻す戻しバネが、第1レバーと第2レバーとを閉じ状態に復帰付勢するバネを兼ねる構成とすれば、それぞれに戻しバネを設ける構成に比べてバネ数を削減することができ、コストダウン及び構造のシンプル化が可能となる合理的な手動結束工具とすることができる。
【0020】
請求項5のように、揺動可能に支持される係止片のセルフロック構造によって構成されるバンド保持部により、引締め機構による引張力を用いてバンド部をその引張力に抗して強固に保持できる合理構造が得られるとともに、第1レバーと第2レバーとの握り込み解除に伴って係止片のバンド保持が解除され、第1レバーと第2レバーとの握り込みによってバンド保持が開始されるので、バンド保持のための特別な動作が不要であって、単にレバーの握り込み及び解除操作のみでバンド部の保持及び引締め、並びにバンド部の保持及び切断が行える扱い易く操作し易い手動結束工具が得られている。
【0021】
請求項6のように、引締力の調節が行える引締力調節装置を設ければ、引締力が結束バンド毎にばらつくとか、単一種の結束バンドでも作業者が異なれば引締力に差が出ると行ったことが無く、誰が作業しても複数の結束バンドを均一な引締力でもって結束できる有用な手動結束工具を提供することができる。また、結束対象や結束バンドの種類によって引締力を適宜に調節設定できる便利さもある。
【0022】
請求項7のように、第2レバーを腰折れレバーとして、引締力が設定値に達すると先端レバー部に対して手元レバー部が折れ曲がるようにすれば、引締力が設定値に維持されるとともに、その折れ曲がりによって引締力が設定値に到達したことを作業者に知らしめることができるものとなる。そして、その折れ曲がりのし難さ調節によって設定引締力の調節設定が行えるものとなる。その結果、手指による握り込み操作を行うだけで設定引締力の検知及びその設定値の保持、並びにそのことの作業者への報告が一挙に行えて使い勝手に優れる手動結束工具が提供できている。
【0023】
請求項8の発明は、請求項7の引締力調節装置の具体化であって、コイルバネで凹部と凸部とを押付けあって嵌り合うことによる係合状態が、第1レバーと第2レバーとの握り力が所定以上になると解かれて第2レバーが腰折れする構成であり、コイルバネ、ネジ軸、ツマミ等の構成部材が全て第2レバーに装備されており、収まりが良くコンパクトに引締力調節装置を構成することができる。
【0024】
請求項9のように、第2レバーにおける先端レバー部と手元レバー部との枢支連結点と、第1及び第2レバーの枢支連結点とを同じとして、構成のシンプル化やコストダウンが可能となる合理化構成が促進された好ましい手動結束工具を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明による手動結束工具の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1〜図5は結束工具の全体斜視図や各種部品図、図6は工具の横移動によるバンド部のセット操作を示す作用図、図7〜図13はバンド結束一連の操作工程を順に示す作用図、図14,15は実施例2の手動結束工具によるバンド結束操作を示す作用図である。
【0026】
〔実施例1〕
実施例1による手動結束工具Aは、図1,図7に示すように、バンド保持部gを先端部に有する第1レバー1、及び横向き溝を先端部に有する第2レバー2とを、それらの長手方向におけるやや先端より中間位置において主軸心(枢支連結点の一例)Pで枢支連結して成る工具本体Ahと、第2レバー2に第3軸心p3で枢支連結される切断レバー3と、結束バンドBのバンド部aを引締める引締め機構cと、これを作動させるための引締め操作部dと、バンド部aを切断する切断機構eと、これを作動させるための切断操作部fと、を有して構成されている。
【0027】
ここで、実施例1の手動結束工具Aによる一連の結束操作について簡単に説明すると、まず、手動結束工具Aを横移動させて、結束対象Kに仮止めされている結束バンドBのヘッド部bを貫いて上方に突出しているバンド部aを、相対的に工具先端の取入れ溝m1及び横向き溝m2に取込む(図6参照)。そして、第2レバー2が腰折れ変位するまで、第1レバー1と第2レバー2とのそれぞれの基端部1A,2Aを1回又は複数回握り込み操作し、バンド部aを所定の引締力で引締める(図7〜10参照)。それから、切断レバー3を握り込み操作して切断機構eを作動させ、ヘッド部bの間近でバンドaを切断させる(図11〜13参照)、というものである。
【0028】
実施例1において用いられる結束バンドBは、図6等で示されるように、長尺帯状のバンド部aと、これとは別体のヘッド部bとから成る分離型で公知のものである。ヘッド部bは、一対の挿通孔と、それら各挿通孔においてバンド部aに作用可能な係止爪とを装備して構成されており、いずれの挿通孔も互いに同じ方向(矢印ロ方向)にはバンド部aの通過は許容し、反対方向(矢印ハ方刃)には係止爪に係止されて移動不能となる公知の構造に構成されている。つまり、バンド部aは必要な長さ分だけ取り出して使える経済的なものとなっている。
【0029】
さて、第1レバー1は、図1,図2に示すように、バンド部aを保持可能なバンド保持部gを先端部に有するものであって、断面形状が下向き開放コ字状で板金製の第1レバー部材1aと、その先端部に溶着等で一体化される鋳鉄製の第1先端部材1bとから構成されている。図2(a),(b)に示すように、第1レバー部材1aのやや先端寄りで下方の位置には、主軸心Pを有する頭付きピン状の主軸15を回動自在に挿通する主孔16、及び後述する係止片4を枢支する枢支軸38を挿通する枢支孔39が形成されている。第1レバー1においては、主軸心Pより基端側を第1基端部1A、先端側を第1先端部1Bとそれぞれ呼ぶものとする。
【0030】
第1先端部1Bの内側部分には係止片4が揺動自在に枢支連結されており、第1レバー部材1aの内側部分にはコイルバネ製の戻しバネ5が配備されている。第1レバー部材1aには、その上壁を部分的に切り込んで下方に落とし込むことにより、戻しバネ5を引掛けるためのフック部8が形成されている。第1先端部材1bの先端部には、平面視でL字形状を呈する第1先端部材1bの横向き部6と第1レバー部材1aの先端とにより、上下及び左側が開放された取入れ溝m1が形成されている。この取入れ溝m1は、バンド部aが上下に通される箇所として形成されている。
【0031】
第2レバー2は、図1,図3,図4に示すように、ヘッド部bの通過は不能で、かつ、バンド部aの通過は許容する横向き溝m2を先端部に有するものであって、第1レバー1が枢支される主軸心Pを有する第2先端部(先端レバー部の一例)2Bと、主軸心Pで第2先端部2Bに枢支連結される第2基端部(手元レバー部の一例)2Aと、これら第2先端部2Bと第2基端部2Aとに跨って形成される引締力調節装置Cとから構成されている。つまり、第2レバー2が、横向き溝m2を先端部に有し、かつ、枢支連結点Pを基端部に有する先端レバー部2Bと、第1レバー側への揺動移動及び復帰移動が自在に先端レバー部2Bに枢支連結される手元レバー部2Aとで成る腰折れ可能レバーに構成されているのである。
【0032】
第2先端部2Bは、図3(a),(b),(c)に示すように、板金製の支持金具9と、鋳鉄製の先端金具10とを溶着等で一体化して成るものであり、主軸心Pを持つ主孔11、規制部材(後述)12を取付けるための装着孔13、切断レバー3を枢支するための枢支孔14が形成されるとともに、先端金具10に形成される左向き開放状の横向き溝m2を有して構成されている。支持金具9は上向き開放コ字状に屈曲された部材であり、先端金具10は、補強用の縦リブ部10bが、ベース部10aの右側から先端に亘って立ち上がる状態に形成さされている。横向き溝m2は、右に奥深く切り込まれる状態でベース部10aに形成されている。
【0033】
第2基端部2Aは、図4(a),(b),(c)に示すように、断面が上向き開放コ字状となるように鋼板を屈曲形成して成る板金製の第2レバー部材で構成されている。第2レバー部材2Aは、主軸15が通る主孔17と、円弧状の逃げ切欠き18とが形成される先端幅狭部2bと、枢支孔19、長孔20、長切欠き21、ストッパ部22、及び調節用孔23aが形成される第2レバー部2aとを有して構成されている。この第2基端部2Aと第2先端部2Bとは、主軸15を介して主軸心Pで腰折れ揺動可能に連結されており、その主軸15は第1レバー1と第2レバー2との枢支連結機能も兼ねている。
【0034】
切断レバー3は、図1,図6,図7に示すように、上向き開放コ字状の断面形状を持つ板金材で成り、先端に切断刃33を押すための作用バー3aを有するとともに、頭付きピン状の揺動軸40を介すること第3軸心p3で揺動可能に第2レバー2に枢支されている。揺動軸40は、第2先端部2Bの、より具体的には先端金具10の枢支孔14に挿通されて支持されている。そして、作用バー3aが戻しバネ5で退入位置iに復帰付勢される切断刃33に背面当接していることにより、切断レバー3は、作用バー3aが支持金具9に当接すること定まる待機位置tに復帰付勢されている。
【0035】
バンド保持部gは、第1レバー1の先端部に横向き溝m2と同方向に形成される取入れ溝m1と、取入れ溝m1に配置されるバンド部aを押付け可能な係止片4と、第1レバー1と第2レバー2との手指による握り込みの開始に伴って係止片4を押付け移動させる連動機構rとから構成されている。係止片4の先端部には、バンド部aに当接するギザギザ面状の滑止め部4Aが形成されるとともに、基端部には、第1レバー1に枢支するための揺動支点である第1軸心p1が形成されており、取入れ溝m1の直後における第1レバー部材1aに頭付きピン状の枢支軸38を介して枢支されている。そして、滑止め部4Aが横向き部6に当接する方向(矢印イ方向であり、取入れ溝m1に突出する方向)に巻きバネ7によって揺動付勢されている。
【0036】
連動機構rは、滑止め部4Aが取入れ溝m1に突出する方向に係止片4を第1軸心p1回りに付勢する巻きバネ(弾性部材の一例)7と、第1先端部1Bと第2先端部2Bどうしが当接する閉じ状態に復帰するに伴って滑止め部4Aが取入れ溝m1から離反するように第2レバー2が係止片4を揺動移動させ、かつ、第1先端部1Bと第2先端部2Bどうしが閉じ状態から離反移動するに伴って第2レバー2の係止片4への作用が解除されて滑止め部4Aが取入れ溝m1に突出するように、係止片4を第1レバー1に配置することによって構成されている。そして、係止片4が取入れ溝m1に突出して滑止め部4Aがバンド部aに当接している状態(図8,12等を参照)では、第1軸心p1が滑止め部4Aよりもバンド引締め方向(矢印ニ方向)下手側に位置するセルフロック構造となるように構成されている。
【0037】
引締め機構cは、図1,図7,図8に締示すように、ヘッド部bを貫いて突出しているバンド部aをヘッド部bに対して強制的に引張るものであって、第1レバー1、バンド保持部g、第2レバー2、第2先端部2B、及びバンド保持部g等から構成されている。つまり、取入れ溝m1及び横向き溝m2にバンド部aが取入れられ、かつ、第2先端部2Bの下方にヘッド部bが位置する状態で、第1基端部1Aと第2基端部2Aとを握り込み操作する(図7参照)。すると、第1端部1Bと第2先端部2Bとが互いに離れる方向に主軸心P回りに揺動移動、即ち離反移動することによって、ヘッド部bからバンド部aを引き抜く方向(矢印ニ方向)に強制的に引張移動させ、結束対象Kに巻かれているバンド部aを引締めるのである(図8参照)。この場合、第1先端部1Bと第2先端部2Bとを離反移動させるために握り込まれる第1基端部1Aと第2基端部2Aとで引締め操作部dが構成されている。
【0038】
切断機構eは、図1,図7〜図9に示すように、第2レバー2の先端部における第1レバー側とは反対側において横向き溝m2を横切り移動可能な切断刃33を設け、切断レバー3の第2レバー側への握り込みによって切断刃33が横向き溝m2を横切り移動するように、切断刃33と切断レバー3とを連動連結することで構成されている。具体的には、先端に刃33aを有する横臥刃部33Aと、受面33bと基端フック33cとを有する縦壁部33Bとから成る切断刃33と、受面33bを前方に移動可能な作用バー3aを有する切断レバー3と、フック33cに前端部が引掛けられる戻しバネ5とを有して切断機構eが構成されている。横臥刃部33Aは、その下方に位置する止め部材35と先端金具10との間に、先端金具10の下面に沿って前後スライド移動自在に装備されている。止め部材35は、その後端部が支持金具9の前端部に係合されており、側方から1本の止めビス42によって先端金具10に装着されている。
【0039】
切断刃33は、その基端フック33cに作用する戻しバネ5によって、自由状態では、図7や図11に示すように、刃33aは横向き溝m2の手前に位置して受面33bが作用バー3aに当接する退入位置(刃待機位置)iに戻り付勢されており、切断レバー3は、作用バー3aが支持金具9の前側に当接する待機位置tに復帰付勢されている。尚、作用バー3aが支持金具9を後方(基端側)に押す構造により、切断刃33を退入位置iに復帰付勢する戻しバネ5は、第1レバー1と第2レバー2とをそれらの基端部1A,2Aどうしが互いに離れる方向に復帰付勢させるバネを兼ねる構成となっている。
【0040】
前記待機状態において切断レバー3を第1レバー1と共に握り込むと、作用バー3aが受面33bを押して切断刃33を前進移動させようとするが、巻きバネ7で揺動付勢されている係止片4が第2先端部2bを下方に押している作用により、第2レバーと切断レバー3とは一体となって揺動移動し、それによってバンド部aがバンド保持部cで係止保持される(図12参照)。第2レバー2は開き位置Rから尚も、切断レバー3を握り込むと、切断レバー3は相対的に第2基端部2Aに対しても接近することとなり、作用バー3aが受面33bを押すことで切断刃33が第2レバー2に対して矢印ホ方向にスライド移動し、ヘッド部bぎりぎりの箇所でバンド部aが刃33aによって切断される(図13参照)。この場合、第1レバー1と切断レバー3とで、切断機構eを手指操作で作動させるための切断操作部fが構成されている。
【0041】
引締力調節装置Cは、図1,図5,図7に示すように、引締め機構cによるバンド部aの引締め力を増減調節可能とする装置であり、規制部材12と、作用アーム24と、中間リンク25と、スライド部材26と、調節ネジ軸27と、受板部材(駒部材の一例)28と、係止用ボス(係合部材の一例)29等を有してほぼ第2基端部2Aに収容される状態で構成されている。規制部材12は、装着孔13に通される頭付きピン状の取付軸30を通す装着用孔12aと、主軸15を通す主軸用孔12bと、係合凹入部(凹部の一例)12cと、これに続く逃げ移動面12dとを有するブロック材で形成されており、主軸15と取付軸30とによって第2先端部2Bに対して位置固定状態で連結されるものである。
【0042】
帯状鋼板の折返しで成るスライド部材26が、長孔20を通る頭付きピン状で一対のピン軸31,31を介して第2レバー部2aの内側部分に前後スライド自在に装備され、このスライド部材26の基端側に、調節ネジ軸27のネジ軸部27Aの先端部が相対回動自在に挿入されている。調節ネジ軸27は、第2レバー部2aの手元側端壁23に貫通される調節用孔23aを通して係止用ボス29を相対移動不能に外嵌することにより、左右に回動自在に第2レバー部2aに装備されている。ネジ軸部27Aには、長切欠き21に臨むマーク部28aを有する略四角形状の受板部材28が螺合されるとともに、その受板部材28とスライド部材26との間には、ネジ軸部27Aに嵌装される状態の圧縮コイルバネ(弾性機構hの一例)32が配備されている。
【0043】
作用アーム24は、一対のL字鋼板24a,24aと段付ピン24bとで成り、下端部が頭付きピン状の支軸41を介して第2レバー部2aの枢支孔19に第2軸心p2で揺動可能に枢支されている。作用アーム24は、一対の鋼板で成る中間リンク25を介してスライド部材26の先端部に連結されており、中間リンク25は、段付ピン24bを介して作用アーム24に、かつ、ピン軸31を介してスライド部材26に夫々枢支連結されている。そして、規制部材12の係合凹入部12cに嵌り込み係合可能な円筒状のローラ(凸部の一例)34が、作用アーム24の段付ピン24bに遊外嵌されている。このような構成により、圧縮コイルバネ32がスライド部材26及び中間リンク25を介して作用アーム24を第2軸心p2回りに規制部材12に押圧付勢しており、ローラ34が係合凹入部12cに押圧付勢される状態で係合されるので、それによって第2基端部2Aと第2先端部2Bとが通常は一体化されている。従って、第1基端部1Aと2基端部2Aとを互いに接近するように握り込みめば、第1先端部1Bと第2先端部2Bとは離反移動する。
【0044】
第1先端部1Bと第2先端部2Bとの離反移動によってバンド部aの引締力が設定値に達しても、尚も第2レバー部2aを握り込むと、圧縮コイルバネ32によるローラ34と係合凹入部12cとの係合力に抗してローラ34を逃げ移動面12dに乗り上げ移動させ、主軸心P回りに第2基端部2Aが第2先端部2Bに対して上昇揺動、即ち腰折れ揺動し、引締力がそれ以上大きくならないように機能するのである(図10参照)。そして、その設定引締力はローラ34と係合凹入部12cとの係合力、即ち圧縮コイルバネ32の弾性力に依存されるので、外部露出されているツマミ27aの回動操作により、受板部材28の位置を前方に(主軸心P側に)移動させて圧縮コイルバネ32を圧縮すれば、設定値が高くなって引締力を大きくすることができ、受板部材28の位置を後方に(ツマミ27a側に)移動させて圧縮コイルバネ32を伸張すれば、設定値が低くなって引締力を小さくすることができるのである。
【0045】
図7は、例として、受板部材28が最も摘み27a側に寄って圧縮コイルバネ32が最も伸張して緩い引締力に調節されている状態を示している。このときマーク部28aは、図5(a)に仮想線で示すように、長切欠き21の最基端側に位置している。図5(a)は、受板部材28のマーク部28aが長切欠き21の中央に位置するように摘み27aを回した中間引締力設定状態であり、図5(b)は、マーク部28aが長切欠き21の最先端側に位置するように摘み27aを回した最強引締力設定状態である。
【0046】
次に、実施例1による手動結束工具を用いての一連の結束操作について説明する。まず、図6に示すように、手動結束工具Aを横移動させて、結束対象Kに仮止めされている結束バンドBのバンド部aを取入れ溝m1及び横向き溝m2に取り込み、それから手動結束工具Aを少し下げてヘッド部bに近付けるように移動させ、図7に示す引締め開始状態に移行させる。図7に示す引締め開始状態では、第2先端部2Bの下面にヘッド部bが当接する状態が望ましいが、そうでなくても良い。尚、図7において、実線で示す第2レバー2は、第1レバー1に対する開き位置Rであり、仮想線で示す第2レバー2は、ストッパ部22が第1レバー1に当接した第1レバー1に対する限界の閉じ位置Tをそれぞれ示している。また、図7においてhy,ny,ky,cyは、それぞれ第2レバーを握る手指の人差し指、中指、薬指、小指である。
【0047】
それから、第1レバー1の基端部1Aと第2レバー2の基端部2Aとを手指で握り込み操作し、図8に示すように、第2レバー部2aのストッパ部22が第1レバー1の裏面に当接するまで第1レバー1と第2レバー2とを主軸心P回りに揺動移動させ、第1先端部1Bと第2先端部2Bとを離反移動させ、バンド部aを引張って結束対象kを引締める。このとき、後の切断工程の際に詳しく説明するが、図7に示す引締め開始状態からの若干の握り込み(開き位置R→保持開始位置V:図12参照)によってバンド保持部gが作動し、係止片4が突出移動して滑り止め部4Aと横向き部6との間にバンド部aを挟み込んでのセルフロック作用によって強固に係止保持させルことが可能であり、その後の両先端部1B,2Bの離反移動による引締めを可能とする状態が得られている。
【0048】
さて、図8に示す引締め終了状態では握り込みを解除し、図7に示す引締め開始状態に戻す。そして、再び第1基端部1Aと第2基端部2Aとを握り込み、二回目の引締めを開始する。それから、図9に示すように、二回目もしくは三回目以降の握り込み途中の途中位置Qにて設定引締め力に達すると、図10に示すように、主軸心P回りに第2基端部2Aが第2先端部2Bに対して腰折れ揺動し、第2先端部2Bは動かずに設定引締め力が維持されるとともに、急に握り込みが軽くなったことで作業者は設定引締め力に達したことが分ることとなる。この腰折れ揺動状態では、それ以上握り込み操作を行っても第2先端部2Bは動かず、従って引締め機構cによる引締め作用が不能になる。尚、設定引締め力は、前述した引締力調節装置Cによって予め設定されている。
【0049】
バンド部aの引締めが済むと、今度は図11に示すように、第2レバー2に掛けていた手指hy,ny,ky,cyを切断レバー3に掛け直して第1レバー1とに跨って握る切断開始状態に変更し、引締められた後のバンド部aが再度取入れ溝m1及び横向き溝m2に取り込まれ手いる状態にする。引締め終了に伴って、一旦バンド部aが各溝m1,m2から離れた場合には、再度手動結束工具Aを横移動させてバンド部aを各溝m1,m2に取り込む。図11に示す手動結束工具Aの自由状態では、切断レバー3は第2レバー2に対して開き切った待機位置tにある。
【0050】
切断開始状態から若干、即ち、連れ揺動する第2レバー2が開き位置Rから保持開始位置Vに位置するように、待機位置tにある切断レバー3を作用開始位置vまで握り込むと、図12に示すように、第1先端部1Bと第2先端部2Bとが少し離反して連動機構rが作動して係止片4が取入れ溝m1に突出する方向に揺動移動し、滑止め部4Aがバンド部aに当接したバンド保持状態が齎される。厳密には、滑止め部4Aがバンド部aに当接し、かつ、その状態から第2先端部2Bが相対的に第1先端部1Bから僅かに離反移動してバンド部aを引張り、それによって係止片4が矢印イ方向に揺動しようとしてセルフロック作動が生じ、横向き部6と係止片4とでバンド部aを強固に係止保持することができる。尚、切断レバー3は、第1レバー1に対しては待機位置tから作用開始位置vに揺動移動するが、連れ揺動する第2レバー2には相対的に握り込まれる方向には揺動移動しておらず、切断刃33は依然として退入位置iにある。
【0051】
図12に示す状態からなおも握り込んで、切断レバー3を第2レバー2に対して待機位置tから握込み位置sに上昇揺動移動させると、戻しバネ5の付勢力に抗して作用バー3aが縦壁部33Bを押して第2先端部2Bに対して切断刃33を突出位置qまで突出移動させ、図13に示すように、横向き溝m2の下端位置、即ちヘッド部bの上面すれすれの位置でバンド部aが切断されるのである。このバンド切断工程においては、切断レバー3の握り込みによって第2レバー2が連れ動きしようとして、それによってバンド保持機構gが作動してバンド部aが引張られて緊張されており、スライド移動する刃33aで円滑、良好にバンド部aの切断が行えるものとなっている。切断されて取入れ溝m1及び横向き溝m2に残っているバンド部aは、そのバンド部aと手動結束工具Aとを相対横移動させることにより、容易に各溝m1,mから取り外すことができ、次の結束作業に備えることができる。
【0052】
〔実施例2〕
実施例2による手動結束工具Aは、実施例1の結束工具における引締力調節装置Cが装備されないタイプであり、それ以外は基本的に同じものである。具体的には、第2レバー2が腰折れレバーではなく、単一のレバーとして構成されている。即ち、第1レバー1と、第2レバー2と、切断レバー3と、引締め機構(符記省略)と、引締め操作部dと、切断機構(符記省略)と、切断操作部fと、バンド保持部(符記省略)とを有して構成されている。
【0053】
実施例2の手動結束工具を用いた一連の結束方法を説明すると、まず図14(a)に示すように、バンド部aの開放側をヘッド部bに通してパイプ等の結束対象Kに結束バンドBを仮止め装着する。この場合の結束バンドBは、バンド部aとヘッドbとが一体となった普及型のものである。次に、図14(b)に示すように、手動結束工具Aを横移動(この場合は左移動)させて、ヘッド部bから突出しているバンド部aを取入れ溝m1及び横向き溝m2に取り込む操作を行う。
【0054】
各溝m1,m2にバンド部aを取り込んだら、図15(a)に示すように、第1基端部1Aと第2基端部2Aとを握り込み操作してバンド部aを引張り、結束対象Kに巻回されている部分のバンド部aを引締めていく。そして、一回又は複数回の引締め操作によって適宜に引締められた後に、図15(b)に示すように、第2レバー2に掛けられていた手指を切断レバー3に掛け直してから握り込み操作し、ヘッド部bから突出している余剰バンド部をヘッド部bの直上で切断するのである。この場合の引締め力は、手動結束工具Aを操作する作業者の感覚によって定められるものであり、実施例1の工具のように機械的に一定の値に揃えられるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1による手動結束工具の全体斜視図
【図2】第1レバーを示し、(a)は側面図、(b)は底面図
【図3】第2先端部を示し、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は斜視図
【図4】第2基端部を示し、(a)は側面図、(b)は矢視Z図、(c)は斜視図
【図5】引締力調節装置の構造を示し、(a)は引締力が中間値状態の一部切欠き側面図と部分側面図、(b)は最大引締力状態の一部切欠き側面図と部分側面図
【図6】工具を横移動させてバンド部を工具先端部に取り込む状態を示す斜視図
【図7】バンド部の引締め開始状態を示す作用図
【図8】バンド部を引締める引締め工程を示す作用図
【図9】バンド部の引締め力が設定値に達した状態の一例を示す作用図
【図10】引締力調節装置の作動による第2レバーの腰折れ揺動状態を示す作用図
【図11】バンド部の切断開始状態を示す作用図
【図12】切断レバーの握り込み開始に伴うバンド保持状態を示す作用図
【図13】切断レバーの握り込みによるバンド部の切断工程を示す作用図
【図14】実施例2の手動結束工具を示し、(a)は結束バンドの仮止め工程を示す作用図、(b)はバンド部のセット工程を示す作用図
【図15】図14の工具の作用図を示し、(a)は引締め工程、(b)は切断工程
【符号の説明】
【0056】
1 第1レバー
1A 第1基端部
1B 第1先端部
2 第2レバー
2A 第2基端部、手元レバー部
2B 第2先端部、先端レバー部
3 切断レバー
4 係止片
4A 滑止め部
5 戻しバネ
7 弾性部材
12c 凹部
23 手元側端壁
27 螺子軸
27a ツマミ
28 駒部材
29 係合部材
32 コイルバネ
33 切断刃
34 凸部
36 側壁
37 連結壁
A 手動結束工具
Ah 工具本体
C 引締力調節装置
P 枢支連結点
a バンド部
b ヘッド部
c 引締め機構
d 引締め操作部
e 切断機構
f 切断操作部
g バンド保持部
h 弾性機構
m1 取入れ溝
m2 横向き溝
p1 揺動支点
r 連動機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部を貫いて突出しているバンド部を前記ヘッド部に対して強制的に引張る引締め機構と、前記引締め機構を手指操作で作動させるための引締め操作部と、前記引締め機構によって引締められた前記バンド部を、前記ヘッド部から引締め方向下手側に突出する部分における前記ヘッド部付近の箇所において切断させる切断機構と、前記切断機構を手指操作で作動させるための切断操作部と、を工具本体に有するとともに、
前記引締め機構に対して前記バンド部を位置させる引締め配置操作、及び前記切断機構に対して前記バンド部を位置させる切断配置操作の双方が、前記工具本体と前記バンド部とのバンド部長手方向に対する横方向への相対移動によって行われるように構成されている手動結束工具。
【請求項2】
前記工具本体が、前記バンド部を保持可能なバンド保持部を先端部に有する第1レバーと、前記ヘッド部の通過は不能で、かつ、前記バンド部の通過は許容する横向き溝を先端部に有する第2レバーとを、これら各レバーの長手方向の中間部において枢支連結することで構成されており、前記第1レバーにおける前記第2レバーとの枢支連結点に対する前記保持部と反対側となる第1基端部と、前記第2レバーにおける前記第1レバーとの枢支連結点に対する前記横向き溝と反対側となる第2基端部との手指による握り込みによる前記バンド保持部と前記横向き溝との離反移動によって前記引締め機構が作動する状態に構成されるとともに、
前記第2レバーに枢支連結される切断レバーの前記第2レバー側への握り込みによって前記切断機構が作動する状態に構成され、
前記バンド保持部は、前記第1レバーの先端部に前記横向き溝と同方向に形成される取入れ溝と、前記取入れ溝に配置されるバンド部を押付け可能な係止片と、前記第1レバーと前記第2レバーとの手指による握り込みの開始に伴って前記係止片を押付け移動させる連動機構とから構成されている請求項1に記載の手動結束工具。
【請求項3】
前記切断機構は、前記第2レバーの先端部における第1レバー側とは反対側において前記横向き溝を横切り移動可能な切断刃を設け、前記切断レバーの前記第2レバー側への握り込みによって前記切断刃が横向き溝を横切り移動するように、前記切断刃と前記切断レバーとを連動連結することで構成されている請求項2に記載の手動結束工具。
【請求項4】
前記切断刃をこれが前記横向き溝を横切り移動する前の退入位置に維持させるべく、前記切断レバーを前記第2レバーに対して遠のいた待機位置に復帰付勢する戻しバネを設けるとともに、前記戻しバネは、前記第1レバーと前記第2レバーとをそれらの先端部どうしが当接する閉じ状態に復帰付勢するバネを兼ねる構成とされている請求項3に記載の手動結束工具。
【請求項5】
前記係止片の先端部には、バンド部に当接する滑止め部が形成されるとともに、基端部には、前記第1レバーに枢支するための揺動支点が形成され、
前記連動機構は、前記滑止め部が前記取入れ溝に突出する方向に前記係止片を前記揺動支点回りに付勢する弾性部材と、前記第1レバーと前記第2レバーとの先端部どうしが当接する閉じ状態に復帰するに伴って前記滑止め部が前記取入れ溝から離反するように前記第2レバーが前記係止片を揺動移動させ、かつ、前記第1レバーと前記第2レバーとの先端部どうしが閉じ状態から離反移動するに伴って前記第2レバーの前記係止片への作用が解除されて前記滑止め部が前記取入れ溝に突出するように、前記係止片を前記第1レバーに配置することによって構成されており、
前記係止片が前記取入れ溝に突出して前記滑止め部がバンド部に当接している状態では、前記揺動支点が前記滑止め部よりもバンド引締め方向下手側に位置するセルフロック構造となるように構成されている請求項2〜4の何れか一項に記載の手動結束工具。
【請求項6】
前記引締め機構によるバンド部の引締め力を増減調節可能とする引締力調節装置が装備されている請求項1〜5の何れか一項に記載の手動結束工具。
【請求項7】
前記引締め機構によるバンド部の引締め力を増減調節可能とする引締力調節装置が装備されるとともに、前記第2レバーが、前記横向き溝を先端部に有し、かつ、前記枢支連結点を基端部に有する先端レバー部と、前記第1レバー側への揺動移動及び復帰移動が自在に前記先端レバー部に枢支連結される手元レバー部とで成る腰折れ可能レバーに構成されており、
前記引締力調節装置は、前記先端レバー部と前記手元レバー部との何れか一方に設けられる凹部と、いずれか他方に設けられる凸部と、前記凹部と前記凸部とが嵌り合った係合状態に押圧付勢する弾性機構とを備え、前記第1レバーと前記第2レバーとを握り込んでの前記引締め機構の作動によるバンド部の引締め力が所定値に達すると、前記弾性機構による押圧付勢力に抗して前記凹部と前記凸部との係合状態が解除されて前記手元レバー部が前記先端レバー部に対して腰折れ揺動するように、かつ、前記弾性機構の弾性付勢力を可変調節可能とすることで構成されている請求項2〜5の何れか一項に記載の手動結束工具。
【請求項8】
前記手元レバー部が、対向する一対の側壁とそれら側壁どうしを連結する連結壁とを有して断面がコ字形状となるように屈曲形成された板材から成り、前記弾性機構が、前記両側壁と前記連結壁とで囲まれた箇所にてレバー長手方向に沿って配置されるコイルバネを有して構成されるとともに、
前記引締力調節装置は、前記コイルバネの内側に挿通され、かつ、前記手元レバーの手元側端壁を遊嵌状態で貫通される螺子軸と、この螺子軸を前記手元側端壁に軸方向移動不能で、かつ、回転自在に支持するための係合部材と、前記コイルバネの手元側端壁側において回り止め状態で前記螺子軸に螺装される駒部材と、前記螺子軸の前記手元側端壁から外部に突出する部分に取付られるツマミとを有しており、前記ツマミの回し操作による前記駒部材を介しての前記コイルバネの圧縮及び伸張により、前記弾性付勢力の可変調節が可能に構成されている請求項7に記載の手動結束工具。
【請求項9】
前記手元レバー部の前記先端レバー部への枢支連結点と、前記第2レバーの前記第1レバーへの枢支連結点とが互いに同じに構成されている請求項7又は8に記載の手動結束工具。
【請求項1】
ヘッド部を貫いて突出しているバンド部を前記ヘッド部に対して強制的に引張る引締め機構と、前記引締め機構を手指操作で作動させるための引締め操作部と、前記引締め機構によって引締められた前記バンド部を、前記ヘッド部から引締め方向下手側に突出する部分における前記ヘッド部付近の箇所において切断させる切断機構と、前記切断機構を手指操作で作動させるための切断操作部と、を工具本体に有するとともに、
前記引締め機構に対して前記バンド部を位置させる引締め配置操作、及び前記切断機構に対して前記バンド部を位置させる切断配置操作の双方が、前記工具本体と前記バンド部とのバンド部長手方向に対する横方向への相対移動によって行われるように構成されている手動結束工具。
【請求項2】
前記工具本体が、前記バンド部を保持可能なバンド保持部を先端部に有する第1レバーと、前記ヘッド部の通過は不能で、かつ、前記バンド部の通過は許容する横向き溝を先端部に有する第2レバーとを、これら各レバーの長手方向の中間部において枢支連結することで構成されており、前記第1レバーにおける前記第2レバーとの枢支連結点に対する前記保持部と反対側となる第1基端部と、前記第2レバーにおける前記第1レバーとの枢支連結点に対する前記横向き溝と反対側となる第2基端部との手指による握り込みによる前記バンド保持部と前記横向き溝との離反移動によって前記引締め機構が作動する状態に構成されるとともに、
前記第2レバーに枢支連結される切断レバーの前記第2レバー側への握り込みによって前記切断機構が作動する状態に構成され、
前記バンド保持部は、前記第1レバーの先端部に前記横向き溝と同方向に形成される取入れ溝と、前記取入れ溝に配置されるバンド部を押付け可能な係止片と、前記第1レバーと前記第2レバーとの手指による握り込みの開始に伴って前記係止片を押付け移動させる連動機構とから構成されている請求項1に記載の手動結束工具。
【請求項3】
前記切断機構は、前記第2レバーの先端部における第1レバー側とは反対側において前記横向き溝を横切り移動可能な切断刃を設け、前記切断レバーの前記第2レバー側への握り込みによって前記切断刃が横向き溝を横切り移動するように、前記切断刃と前記切断レバーとを連動連結することで構成されている請求項2に記載の手動結束工具。
【請求項4】
前記切断刃をこれが前記横向き溝を横切り移動する前の退入位置に維持させるべく、前記切断レバーを前記第2レバーに対して遠のいた待機位置に復帰付勢する戻しバネを設けるとともに、前記戻しバネは、前記第1レバーと前記第2レバーとをそれらの先端部どうしが当接する閉じ状態に復帰付勢するバネを兼ねる構成とされている請求項3に記載の手動結束工具。
【請求項5】
前記係止片の先端部には、バンド部に当接する滑止め部が形成されるとともに、基端部には、前記第1レバーに枢支するための揺動支点が形成され、
前記連動機構は、前記滑止め部が前記取入れ溝に突出する方向に前記係止片を前記揺動支点回りに付勢する弾性部材と、前記第1レバーと前記第2レバーとの先端部どうしが当接する閉じ状態に復帰するに伴って前記滑止め部が前記取入れ溝から離反するように前記第2レバーが前記係止片を揺動移動させ、かつ、前記第1レバーと前記第2レバーとの先端部どうしが閉じ状態から離反移動するに伴って前記第2レバーの前記係止片への作用が解除されて前記滑止め部が前記取入れ溝に突出するように、前記係止片を前記第1レバーに配置することによって構成されており、
前記係止片が前記取入れ溝に突出して前記滑止め部がバンド部に当接している状態では、前記揺動支点が前記滑止め部よりもバンド引締め方向下手側に位置するセルフロック構造となるように構成されている請求項2〜4の何れか一項に記載の手動結束工具。
【請求項6】
前記引締め機構によるバンド部の引締め力を増減調節可能とする引締力調節装置が装備されている請求項1〜5の何れか一項に記載の手動結束工具。
【請求項7】
前記引締め機構によるバンド部の引締め力を増減調節可能とする引締力調節装置が装備されるとともに、前記第2レバーが、前記横向き溝を先端部に有し、かつ、前記枢支連結点を基端部に有する先端レバー部と、前記第1レバー側への揺動移動及び復帰移動が自在に前記先端レバー部に枢支連結される手元レバー部とで成る腰折れ可能レバーに構成されており、
前記引締力調節装置は、前記先端レバー部と前記手元レバー部との何れか一方に設けられる凹部と、いずれか他方に設けられる凸部と、前記凹部と前記凸部とが嵌り合った係合状態に押圧付勢する弾性機構とを備え、前記第1レバーと前記第2レバーとを握り込んでの前記引締め機構の作動によるバンド部の引締め力が所定値に達すると、前記弾性機構による押圧付勢力に抗して前記凹部と前記凸部との係合状態が解除されて前記手元レバー部が前記先端レバー部に対して腰折れ揺動するように、かつ、前記弾性機構の弾性付勢力を可変調節可能とすることで構成されている請求項2〜5の何れか一項に記載の手動結束工具。
【請求項8】
前記手元レバー部が、対向する一対の側壁とそれら側壁どうしを連結する連結壁とを有して断面がコ字形状となるように屈曲形成された板材から成り、前記弾性機構が、前記両側壁と前記連結壁とで囲まれた箇所にてレバー長手方向に沿って配置されるコイルバネを有して構成されるとともに、
前記引締力調節装置は、前記コイルバネの内側に挿通され、かつ、前記手元レバーの手元側端壁を遊嵌状態で貫通される螺子軸と、この螺子軸を前記手元側端壁に軸方向移動不能で、かつ、回転自在に支持するための係合部材と、前記コイルバネの手元側端壁側において回り止め状態で前記螺子軸に螺装される駒部材と、前記螺子軸の前記手元側端壁から外部に突出する部分に取付られるツマミとを有しており、前記ツマミの回し操作による前記駒部材を介しての前記コイルバネの圧縮及び伸張により、前記弾性付勢力の可変調節が可能に構成されている請求項7に記載の手動結束工具。
【請求項9】
前記手元レバー部の前記先端レバー部への枢支連結点と、前記第2レバーの前記第1レバーへの枢支連結点とが互いに同じに構成されている請求項7又は8に記載の手動結束工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−262965(P2009−262965A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115386(P2008−115386)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000108524)ヘラマンタイトン株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000108524)ヘラマンタイトン株式会社 (57)
【Fターム(参考)】
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