説明

手持ち式肺疾患用エーロゾル送出装置用の改良型ノズル

【課題】携帯型肺疾患用エーロゾル送出装置での使用に適した改善されたEHDノズルを提供する。
【解決手段】手持ち式肺疾患用エーロゾル吸入器に特に適した改良型電気流体力学(EHD)ノズル20aは、放電電極26を遮蔽することにより湿潤を低減するかまたはなくすことによって治療液の一定した効率的な分注を高める。形態によっては、湿潤をさらになくすとともに、エーロゾルを環状に囲んだコロナイオン風を提供することによりエーロゾルの中和を高める。各EHDノズルチップ32に一定した圧力低下を有する改良型液体分配を取り入れることにより、水平方向の分注が可能となり、低表面エネルギーの誘電ノズルチップ32を用いることにより、分注間のウィッキングが回避されるとともに分注したときに達成可能な粒径を有利に低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、使用者の肺にエーロゾル化された液体、特に治療特性を有するエーロゾル化された液体を送出する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[背景技術]
局所的におよび全身的に作用する薬剤化合物を送出する吸入療法(inhalation therapy)は、ヘルスケアコミュニティがこのような方法が患者に提供する利点を理解しているため増えつつある。治療薬によっては、エーロゾル化された液体を推進薬なしに送出することが好ましいものもある。かかる液体は、例えば電気流体力学(EHD)装置によりエーロゾル化され得る。EHDエーロゾル送出システムは、吸入療法を変革すると期待されている。これらの新規なシステムは、既存の吸入装置よりも効率的であるとともに再生可能である。EHD装置は、90%以上の優れた効率で、液体推進薬または他の加圧システムの必要なく、均一な大きさの粒子の軟質(等速)飛沫(soft(isokinetic)cloud)を肺に直接送出することができる。エーロゾルは、患者自身の呼吸(呼気)を用いて送出され、それにより、患者は、通常の吸気率(inhalation rates)で薬剤送出を容易に達成することができる。送出機構は、呼吸機能が低下している幼児、若者、高齢者、および患者に用いるのに特に適している。
【0003】
正味電荷(net electric charge)は、帯電した電極(charged elecrode)を流体内に置くことにより流体に与えられる。エーロゾル化すべき液体は、高電界強度の領域を通って流されるようになっている。この流体電荷は、液体がノズルを出る際に、液体の表面張力に対して、表面電荷の反発力が平衡をとるように、液体の表面に留まる傾向にあり、円錐を形成する(例えばM.Cloupeauand B. Prunet-Foch著「Electrohydrodynamic Spraying Functioning Modes: A Critical Review」(J AerosolSci.,Vol.25,No.6 pp. 1021,1025〜1026(1994))に記載されている「テイラー円錐(Taylor Cone)」)。最大電荷密度を有するこの円錐の先端領域では、液体表面に及ぼされる電気的力が、表面張力を超え、細い液体の噴流を発生させる。この噴流は、分解して概ね均一な大きさの小滴になり、小滴は、まとまって使用者により吸入されてエーロゾルを使用者の肺に送出することができる飛沫(cloud)を形成する。
【0004】
一般的に、使用者への送出の前に、調合薬をエーロゾル化してエーロゾル粒子を放出することが知られている。かかる方法の1つは、放電電極により囲まれた単一の噴霧部(ノズルチップ)と、接地されたシールドとを有し、粒子サイズの単分散化されたスペクトルを発生させる電気流体力学装置を用いることである。しかしながら、エーロゾル化された液体をつくり出すこれらの既知の手法には、多くの欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気流体力学的噴霧を用いる一般的に知られている肺疾患用送出装置は、扱いにくく、交流電源または大型の直流電源のいずれかへの接続を必要とする。これらの従来の装置は、予定された治療予約の際に治療薬を投与するといった、総合病院または他の病院での用途に用いるには適しているが、一般的に、臨床環境(clinical setting)外での要求または要望に応じて、使用者が直接使用するのには適していない。従来の装置は、家庭や職場での使用者が日常活動中、旅行中、および、娯楽やレジャー活動中に使用するのには特に適していない。
【0006】
また、電気流体力学的噴霧を用いる既知の肺疾患用送出装置は、使用者が1〜2回息を吸い込む間に、ある所望量の治療液を送出するのに十分な体積流量を欠いている。流量を増加させる試みは、一般的に、装置を手で把持して使用するには不適切なより一層嵩張るものにしてしまう結果となった。これらの送出装置は、また、一般的に、広範囲の導電率(conductivity)を有する液体を噴霧することができない。
【0007】
ジムリッチ・ジュニア(Zimlich,Jr.)他に付与された同一出願人の米国特許第6,397,838号明細書(その全体が参照により本明細書に援用される)は、治療特性を有するエーロゾル化された液体飛沫を使用者の肺に送出する肺疾患用エーロゾル送出装置を開示している。この小型で便利な装置は、使用者が片手で把持することができるような大きさの、使用者の口にエーロゾルを向ける出口開口を内部に有する筐体を備える。エーロゾル化装置(すなわちEHDノズル)は、複数の噴霧部(すなわちチップ端)を備え、これら噴霧部は、そのチップ端のそれぞれの下流の放電電極および基準電極と協働して、少なくとも1つのチップ端からエーロゾル化噴霧を発生させる。この複数の噴霧部は、より大量の服用量を達成することができる。
【0008】
米国特許第6,397,838号明細書は、一般的に知られているエーロゾル送出装置に比して有意な利点を提供しているが、本発明者らは、改良の可能性があるものと見ている。例えば、EHDノズルは、各ノズルチップが一定的に分注するよう、下方を向くようにすべきである。しかしながら、大抵の使用者は、分注装置を用いる際、直立状態であることを好む。したがって、分注されたエーロゾル化された液体は、ベンドを介して出口開口に送られねばならない。エーロゾル化された小滴のモーメントは、出口開口に一部の液体を堆積させ易いため、使用者に送出される有効量が減る。さらに、EHDノズル自体の内部が湿ることにより、性能が劣化するおそれがある。肺疾患用送出装置により分注される液体の総てではないにしてもそのほとんどは、ある程度導電性である。したがって、特に、放電電極と基準電極との間に導電経路が形成される場合、湿潤により、EHDノズル内の所望の電界が消失し易くなる。湿潤は、ノズルを垂直に向けるよう手順どおりに要求することにより、ある程度緩和される。また、ノズルチップと基準電極との間の流体導電経路を大幅に減少させることにより、介在基準電極が電気アークを減少させる。また、電圧生成回路内の電流制限抵抗器(current limiting resistor)は、さらに、アークを抑制する。これらの措置は、有用な手持ち式分注装置を提供するが、ノズルの湿潤をさらになくすとともに分注装置を他の向きで使用することができるようにするよう、さらなる改善が望まれる。
【0009】
また、完全に電気的に中和されたエーロゾル化された液体を作り出すEHDノズルを有することも望まれている。荷電を保持するいくらかの小滴を有することは、装置の湿潤をいっそう大きくするか、または治療効果を制限するおそれがある(例えば、荷電粒子の相互反発により、肺に十分に達しないうちに液体が堆積するおそれがある)。
【0010】
示唆されている1つの手法は、帯電したエーロゾル化された液体小滴と混合する逆に帯電した(逆電荷)コロナイオンを生じさせてから、ノーケス(Noakes)他に付与された米国特許第○○号明細書により教示される吸入装置を出ることである。空気流路がエーロゾル化室に通じており、この空気流路により、エーロゾル化室の両側で、正電荷金属毛管と負電荷放電電極とに分離される。毛管側のテイラー円錐は、放電電極側に引き付けられるエーロゾル化された流体の結合力(ligament)を生成する。放電電極は、エーロゾル化粒子側に向けられた正電荷イオンの対コロナ(countering corona)を生成し、この対コロナは、負電荷粒子と相互作用するとエーロゾル化粒子の負の電荷を中和にし、その後でエーロゾル化室を出る。正電荷イオンによる攻撃からある程度テイラー円錐を保護するために、シールドは、管を空気流路と放電電極とから分離する。シールドは、エーロゾル化粒子を通過させるのには十分に大きいが、正電荷コロナイオンが中を通って管にテイラー円錐の形成を劣化させない程度に十分に小さいオリフィスを有する。
【0011】
しかしながら、エーロゾル化された液体を中和するこのような手法は、いくつかの望ましくない制限を有すると考えられる。例えば、空気流は、エーロゾル化された液体およびイオンの反対方向に横断するため、装置を出る前にエーロゾル化された液体の中和化を妨げ易く、かつ吸入装置の内部を湿潤させ易くする乱流を生じさせる。さらに、中立シールド(neutral shield)は、エーロゾル化粒子により湿潤され易く、エーロゾル化粒子の体積率は、放電イオンの接近に起因して一定していない。そのため、達成される服用量が不定となり得る。
【0012】
従って、携帯型肺疾患用エーロゾル送出装置での使用に適した改善されたEHDノズルの著しい必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[発明の簡略的な概要]
本発明は、放電電極の遮蔽によりノズルの内部の湿潤を低減するかまたはなくすと共に、分注されたエーロゾル化された液体の効果的な中和を達成する改良型電気流体力学(EHD)ノズルを提供することによって、従来技術の上述のまたは他の欠点を克服する。それによって、一定の服用量が患者に迅速に十分に送出される。湿潤に起因する電力消失を回避することにより、EHDノズルを手持ち式肺疾患用エーロゾル吸入器に特に適したものにする。さらに、有利なことに湿潤が低い高服用量が達成されるとともに、治療液分注装置に適した有利な小粒子サイズが生成される。
【0014】
本発明の一態様では、長手方向軸を有する噴霧通路を画成するシールドを有する改良型電気流体力学(EHD)ノズル用の装置および方法が説明される。このシールドは、長手方向軸に下流開口を有する。EHD噴霧ノズルは、噴霧通路内に収容され、下流開口側にテイラー円錐を生成して液体をエーロゾル化するノズルチップを有する。シールドを囲む放電電極は、下流開口にてエーロゾル化された液体を電気的に中和するとともに、エーロゾル化された液体により湿潤される可能性を減らす。EHDノズルおよび方法では、放電電極をシールドすることにより湿潤を低減するかまたはなくすことによって、治療液の一定の効率的な分注を増大させる。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、肺疾患用エーロゾル送出装置は、また、改良型電気流体力学装置を備えることで、改善された性能および携帯型電源の耐用寿命を可能にする、肺疾患用エーロゾル送出装置も提供する。送出装置は、また、エーロゾル化すべき液体を含有し、かつ電気流体力学装置に液体を送出する分注システムと、液体をエーロゾル化するために電気流体力学装置に十分な電圧を供給する電源システムと、分注システムと接続する制御回路とを備える。使用者が片手で筐体を把持することができるような大きさの筐体内に構成部材が収容されている。電気流体力学装置内での湿潤を有利に低減すれば、服用量の増量は、アークおよび電力消失を被ることなく、電圧レベルの対応する要件を有するさらなるノズルチップにより達成可能である。さらに、達成可能な電力効率がより大きくなれば、電源(例えばバッテリ)を交換する必要なく、より長い耐用寿命を達成することができる。
【0016】
1つの特定の例示的な形態では、下流放電電極は、各放電電極の先端部だけを露呈させるよう小さな開口を有するシールドによって概ね遮蔽される。それによって、チップだけが、帯電されたエーロゾル化された液体による引き付けおよび湿潤を被る。シールドの湿潤は、噴霧ノズルから放電電極に導電経路(電圧を低下させて一定の粒子サイズを損なうか、または背後で遮蔽されるとともにシールドから実質的な長さを分離される放電電極の長手方向長さに部分的に起因する電気アークを生成するであろう)を形成するには不十分である。
【0017】
別の特定の例示的な形態では、分離放電電極が、完全に噴霧ノズルから遮蔽され、噴霧ノズルのノズルチップの平面の上流に存在し得る。逆電荷イオン雲は、帯電したエーロゾル化された液体と合流するよう下流に環状に導かれ、使用者へのエーロゾル化された液体の流れを高め、エーロゾル化された液体を中和化する。
【0018】
放電電極を遮蔽することは、装置サイズをより小さくし、製造をより経済的にし、かつ他の利点を与えるさらなる設計上の選択肢を与える。具体的には、高電圧放電電極は、感電の危険を与え、感電の危険を被る場合は、使用者に損傷を与えないように複数の安全なステップを必要とするであろう。2つの誘電壁間に凹状の放電電極がある場合、その放電は、使用者に接触性がなく、そのことは、定期的な点検(regulatory approval)を達成し易くする。例えば、他の場合では、使用者に与えられ得る電流量を制限するのに精巧な電源または回路が必要であり得る。別の例として、エーロゾル化された液体の精巧な導管は、使用者の顔または指から、露呈した放電電極を遠ざけるよう要求され得る。かかる精巧な導管は、装置サイズの増大、および導管の湿潤に起因するエーロゾル化された液体の損失があるため望ましくない。
【0019】
本発明のさらなる他の態様では、有利なEHDノズルの幾つかの実施態様は、誘電材料から成る噴霧ノズルを有する。上流荷電用電極は、分注すべき液体に電荷を与える。噴霧ノズル内に形成される分岐溝路は、周りに配列された複数のノズルチップに対し制御された圧力低下を与える。各ノズルチップに対する制御された圧力低下により、複数のチップによる服用量の生成が増えると共に、各ノズルチップに見られる望ましくない流量変化(得られた粒子サイズに影響を及ぼす)が回避される。
【0020】
本発明のこれらおよび他の目的および利点は、添付図面および記載から明らかとなろう。
【0021】
本明細書に組み込まれているとともに本明細書の一部を成す添付の図面は、本発明の実施形態を示し、上記に挙げた本発明の概論とともに、以下に挙げる実施形態の詳細な説明により、本発明の原理の説明が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一部が分解された手持ち式肺疾患用送出装置内に設置されて示された、本発明による改良型電気流体力学(EHD)ノズルを示す図である。
【図2】図1の送出装置用の非湿潤性下流放電(NDD)ノズル特性を提供する、多チップEHDノズルアセンブリの分解図である。
【図3】一部が切り欠かれ、複数の非湿潤性下流放電電極のうち2つを示す、図1の組み立てられた多チップEHDノズルアセンブリの前部正面図である。
【図4】図1の組み立てられた多チップEHDノズルアセンブリの線4−4に沿った、前から見た、後面図である。
【図5】図1の組み立てられた多チップEHDノズルアセンブリの線5−5に沿った横断面図である。
【図6】図1のEHDノズルアセンブリの流体分配流路および純粋な誘電性の噴霧部を含む噴霧ノズルの分解絵図である。
【図7】図6の噴霧ノズルの線7−7に沿った断面図である。
【図8】図6の噴霧ノズルの線8−8に沿った断面図である。
【図9】図6の噴霧ノズルを前から見た図である。
【図10】純粋に誘電材料から形成される単一の電気流体力学(EHD)噴霧ノズルの概略図である。
【図11】図1に示す送出装置用の多チップEHDノズルアセンブリの代替形態の分解絵図である。
【図12】図11の多チップEHDノズルアセンブリの部分分解図である。
【図13】図11のEHDノズルアセンブリの前部の4分の3の断面図である。
【図14】図11のEHDノズルアセンブリの後部の4分の3の断面図である。
【図15】図11のEHDノズルアセンブリの中心線に沿った立面断面図である。
【図16】図1に示した送出装置の分離下流放電(DDS)電極を用いる多チップEHDノズルアセンブリのさらなる代替的な形態の主要な構成部材を示す分解図である。
【図17】図16に示すDDS多チップEHDノズルアセンブリを逆から分解して示した図である。
【図18】図16に示すDDS多チップEHDノズルアセンブリの長手方向断面図である。
【図19】図16に示すDDS多チップEHDノズルアセンブリの立面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[発明の詳細な説明]
手持ち式肺疾患用送出装置(例えば吸入器)の利便性および有効性は、改良型電気流体力学(EHD)ノズルにより向上される。特に、EHDノズルに対する改良には、EHDノズルが下方に向けられることを必要とするのではなく、EHDノズルが様々な角度へ向けられた時にノズルチップへ流体が均等に分配されることが含まれる。この改良には、電圧、したがって粒径を損なうおそれがあるか、または放電電極と基準電極との間にアークを引き起こすおそれがある、EHDノズルにおける湿潤を低減するかまたはなくす複数の新規発明も含まれる。
【0024】
電気流体力学的噴霧によりエーロゾル化し易い液体は、一般的に、特定の電気的特性および物理的特性によって特徴付けられる。本発明の範囲を限定することなく、以下の電気的特性および物理的特性を有する液体は、数秒以内に、臨床的に適切な服用量の吸入可能な粒子を生成する装置および方法による最適な性能を可能にする。液体の表面張力は、通常、約15〜50ダイン/cm、好ましくは約20〜35ダイン/cm、より好ましくは約23〜33ダイン/cmの範囲にある。液体抵抗は通常、約200オーム−メートルよりも大きく、好ましくは約250オーム−メートルよりも大きく、より好ましくは約400オーム−メートルよりも大きい(例えば1,200オーム−メートル)。比誘電率(relative electrical permittivity)は、通常、約65未満、好ましくは約45未満である。液体粘度は、通常、約100センチポアズ未満、好ましくは約50センチポアズ未満(例えば1センチポアズ)である。特徴の上記組合わせは、最適な性能を可能にするが、本発明の装置および方法を用いて、1つまたは複数の特性がこれらの典型的な値から外れても、液体を効果的に噴霧することができる。例えば、特定のノズル構成により、抵抗のより低い(導電性がより高い)液体の効果的な噴霧が可能になり得る。
【0025】
エタノール基は、表面張力が低く非導電性であるので、エタノールに溶解した治療薬は、一般的に、電気流体力学的噴霧の優れた候補である。エタノールは、抗菌剤でもあり、調合剤内および筐体表面上での細菌成長を低減させる。治療薬用の他の液体および溶媒も、本発明の装置および方法を用いて送出され得る。液体は、薬剤、もしくは相溶性の溶媒に入れた薬剤の溶液または微細懸濁液を含み得る。
【0026】
上述したように、電気流体力学装置は、液体が高電界強度の領域の上に流れるようにすることによって液体をエーロゾル化し、それにより、液体に正味電荷を与える。本発明では、高電界強度の領域は、通常、噴霧ノズル内の負電荷電極により提供される。負電荷は、液体がノズルを出る際に、液体の表面張力に対して表面電荷の反発力が平衡をとるように、液体表面上に留まる傾向にあり、テイラー円錐を形成する。液体の表面に及ぼされる電気的力は、円錐の先端で表面張力を超え、細い液体の噴流を生成する。この噴流は、分解して概ね均一な大きさの小滴になり、これがまとまって飛沫を形成する。
【0027】
当該装置は、呼吸可能な大きさのエーロゾル化された粒子を生成する。小滴は、肺の深部に投薬するために、好ましくは約6ミクロン以下、より好ましくは約1〜5ミクロンの範囲の直径を有する。多くの調合物が肺の深部への付着を意図しているため、粒子の少なくとも約80%が、治療薬の肺の深部への効果的な投与のために、約5ミクロン以下の直径を有することが好ましい。エーロゾル化された小滴は、ほぼ同じ大きさであり、装置を出る際には、速度はゼロに近い。
【0028】
送出すべき量の範囲は、特定の調合剤に応じて決まる。肺疾患治療薬の通常の服用量は、0.1〜100μLの範囲にある。理想的には、服用量は、1回の吸気の間に患者に送出されるべきであるが、特定の条件下では、2回以上の呼気の間での送出も許容可能であり得る。これを達成するためには、当該装置は、一般的に、約1.5〜2.0秒で約0.1〜50μL、特に約10〜50μLの液体をエーロゾル化することが可能でなければならない。送出効率もまた、肺疾患用送出装置の主要な考慮事項であるため、装置自体の表面での液体の堆積を最小限にすべきである。最適には、エーロゾル化された量の70%以上が使用者に利用可能であるべきである。
【0029】
図を参照すると、幾つかの図面中、同様の符号は同様の構成部材を表しており、図1は、使用者が片手で把持することができるような大きさの筐体12を備える肺疾患用送出装置10を示す。筐体12は、分注されたエーロゾル化された液体を使用者の口に向ける出口開口14を有する。シリコン面シールド(図示せず)は、肺疾患用送出装置10から使用者が再呼吸のために吸入するための出口開口14に取り付けられるが、用途によっては、マウスピースが用いられる場合があることを理解されたい。筐体12は、分注システム18に電力を供給する携帯型電源16、分注システム18から液体を受け取ると共にそこからエーロゾル化された液体を出口開口14に供給する本発明のEHDノズルアセンブリ20、および上記構成部材を作動させる制御回路22を収納している。
【0030】
分注システム18は、完全な状態の治療液を収容すると共に維持する収容容器24内に、エーロゾル化すべき液体の供給物を保持する。収容容器24は、単一の服用量ユニットに収納された薬剤用のホルダ、それぞれが単一服用量の薬剤を保持する複数の密封室、またはエーロゾル化すべき大量供給の薬剤を収納する小型容器(vial)の形態をとってもよい。タンパク質系治療薬等、空気中での安定性に欠ける液体を除いて、経済的理由から、大量投薬が一般的に好ましい。収容容器24は、溶液および微細懸濁液の両方を含む治療液と物理的かつ化学的に適合性があることが好ましい。収容容器24は、収容容器24内に収容された液体の純度を保存するために、抗菌特性を与えるように処理され得る。
【0031】
NDD EHDノズル
図2〜図5は、肺疾患用送出装置10の一定の性能を向上させる非湿潤性下流放電(non-wettable downstream discharge)(NDD)電極構成を提供することが有利である、図1のEHDノズルアセンブリ20の特定の形態を示す。特に、誘電体放電シュラウド30により噴霧ノズル28から実質的に遮蔽される複数の細長い放電電極26を有することで、噴霧ノズル28のノズルチップ32と細長い放電電極26との間の経路の湿潤を軽減するかまたは完全に回避する、NDD EHDノズルアセンブリ20aが示される。それにより、ノズルチップ32でのアークおよび電界強度の変化による性能の劣化は、軽減されるかまたは総て回避される。
【0032】
図2を特に参照すると、開口した円筒状外郭すなわちカバー34は、誘電体放電シュラウド30および細長い放電電極26を有する放電アセンブリ36を収容する。カバー34の後部開口38は、誘電体放電シュラウド30の後部環状フランジ40を摺動的に嵌め入れられる。カバー34の縮径前部開口42は、誘電体放電シュラウド30の前方に向いたスカラップ形状リング44と係合する。図5を特に参照すると、放電電極室46は、誘電体放電シュラウド30とカバー34との間に形成され、それにより、各細長い放電電極26の、噴霧通路50に露呈される各放電電極先端部48以外、細長い放電電極26を遮蔽する。噴霧通路50は、前方に向いたスカラップ形状リング44および縮径前部開口42により形成される各放電電極開口52により、誘電体放電シュラウド30の内部に長手方向に画成される。各細長い放電電極26は、NDD EHDノズルアセンブリ20aの長手方向中心線54と長手方向に整列する後方部を始端として、斜め内側に傾斜した部分64に移行して放電電極先端部48で終端している。
【0033】
湿潤を低減することのほかに、十分に小さい大きさの放電電極開口52により、使用者との接触の可能性が減り、それにより、感電の危険が減ることを理解されたい。従って、NDD EHDノズルアセンブリ20aは、有利には、使用者の口に密接して用いることができる。さらに、広範の電源および電力貯蔵装置をNDD EHDノズルアセンブリ20aと共に用いることができる。
【0034】
噴霧ノズル28は、長手方向に整列すると共にそれぞれ誘電体放電シュラウド30の内部に接触するように、それぞれが半径方向に離隔した複数の位置決め板56により、噴霧通路50内の長手方向中心線54を中心としている。
【0035】
図4および図5に示すように、ノズルチップ32(すなわち噴霧部)は、細長い放電電極26に関して電圧差ΔVを与えられる。例示的な一形態では、対称的な電源を用いて、ノズルチップ32にて−5kVおよび細長い放電電極26にて+5kVを与えるようにする。しかしながら、極性が反対であるかまたは大きさが異なる電圧差を用いることができることは、本開示の利点を有する当業者には理解されるであろう。例えば、ノズルチップ32は、接地電位にあってもよく、放電電極は+10kVにあってもよく、そのため、ノズルチップ32が露出していても使用者に感電の危険を与えない。ノズルチップ32は、結果として生じる電界(1つまたは複数のノズルチップ32におけるテイラー円錐にエーロゾル噴流を噴射させる要因となる)の影響下、EHD噴霧を生成する。
【0036】
噴霧通路50は、図4および図5においてそれぞれ後方および前方から見て示すように、NDD EHDノズルアセンブリ20a内を通っており、矢印58に示すように、使用者がNDD EHDノズルアセンブリ20aから吸気し、または逆方向に呼気することができるようにする。エーロゾル化された液体を生成するノズルチップ32による吸入の際、噴霧通路50を通ると共に噴霧ノズル28の周りに流れる空気流により、誘電体放電シュラウド30の前方内表面の湿潤は、最小限に抑えられ易くなる。特に、噴霧通路50内のくびれ60は、空気流を内側に偏向して、ノズルチップ32から排出される帯電小滴の相互反発を克服する。
【0037】
さらなる空気流路が、前部付近のカバー34の外側の周りに半径方向に離間した複数の通気孔62により提供される。図5に示すように、吸入の際の通気流が矢印63で示され、これにより、空気が通気孔62から入り、細長い放電電極26の内側斜めに湾曲した前部分64の周りを通過して、放電電極開口52を通って噴霧通路50の吸気の空気流58に流れ込む。放電電極先端部48付近を通過する空気は、エーロゾル化された液体とは逆の電荷にイオン化され、エーロゾル化された液体の前に提供されることで、電気的引力により縮径前部開口42からのエーロゾル化された液体の流れがさらに高められる。収束もまた、一般的に好ましく、患者の肺に十分に達するようにするために、エーロゾル化された液体を電気的に中和する。通気孔62の自己吸入機構(self-aspirating feature)は、イオン風の生成を可能にすることにより細長い放電電極26の性能を高める。
【0038】
湿潤を低減させるように空気流を向けることのほかに、誘電電極シュラウド30は、有利には、帯電したエーロゾル化された液体の小滴から蓄積された電荷がさらなる小滴の付着をはね付け易くするように、誘電材料から形成される。さらに、図5に最もよく見られるように、湿潤は、位置決め板56にわたってノズルチップ32との間の十分な経路に沿って、かつ、誘電体放電シュラウド30の内側に沿っては生じ難いと考えられる。従って、湿潤による、放電電極開口52に渡っての放電電極先端部48へのアークの可能性が低くなる。このような湿潤路の全長は、従来のEHDノズルにおけるよりも湿潤する可能性が低い。さらに、用いる電圧と治療液の伝導率とに関して放電電極開口52を適正にサイジングすることにより、アークの可能性は、さらに減り得る。
【0039】
湿潤に対する抵抗が増大する場合、より単純な制御部を用いることができ、その結果、単位コストが減り、ユニットの信頼性が増す。例えば、多くの場合、吸入センサを用いて、呼気の際に分注が防止されるように、息の吸い込みを検知する。これらの一般的に既知の装置では、呼気の際の分注は、EHDノズルの内部に、ある量の治療液を堆積させる傾向がある。しかしながら、このような単純化された制御部の利点を用いて、本発明のNDD EHDノズルアセンブリ20aを、患者が装置により吸気および呼気を行い得る再呼吸作業等、新たな方法で用いることができる。患者は、吸入の際、ボタンまたは他の制御部を押下することにより分注を開始するように指示されるが、呼気の際の不注意による作動により、作業が損なわれることはない。しかしながら、用途によっては、吸入センサが用いられる場合があることが理解されよう。
【0040】
噴霧ノズル内の流体分配通路
図6〜図9は、上述のEHDノズル20内での使用のための例示的な成形噴霧ノズル28をより詳細に示す。図6〜図8を特に参照すると、噴霧ノズル28は、有利には、鉛直下向き以外の向きでのNDD EHDノズルアセンブリ20aの効率的かつ効果的な使用を可能にする流体分配通路66を有するものとして示されている。
【0041】
図6〜図9を参照すると、噴霧ノズル28は、図9に最もよく示されているように、面板68の円周に均等に位置付けられている誘電ノズルチップ70を形成する、テイラー円錐を有する面板68を備える。面板68の後側面72には、面板68の中心から誘電ノズルチップ70のそれぞれに対する各貫通孔76まで延びる一連の溝路74がある。バッキング板78は、面板68に取り付けられる後方に張り出したカラー80内に密閉的に嵌まり(例えば圧入、接着、溶着等)、それにより、噴霧ノズル28の組み立てが完了する。スプルー状溝路74は、誘電ノズルチップ70のそれぞれに対し外側に向かって後側面72の中心から拡がり分岐している。動作の際、面板68の中心から放射状に拡がった4つの主要なスプルー82は、主要な供給源(図示せず)からの流体を受け取り、分岐スプルー84に流体を分配することで、誘電ノズルチップ70のそれぞれに対し流体を供給する。特に、溝路74の分岐パターンの手法により、圧力低下および流体流量の流体力学的影響が、様々な向きであっても供給される誘導ノズルチップ70すべてに対し同様であるように、面板68の中心から各誘電ノズルチップ70にかけて流路を形成する。従って、各誘電ノズルチップ70は理論上、同様の流量および圧力で流体を受け取り、それにより、匹敵する粒径および体積率でエーロゾル小滴を分注するものとする。
【0042】
幾つかの用途では、溝路74は、一般的に既知の分注装置に用いられるよりも大きいが一定の圧力低下を生じ得るため、誘電ノズルチップ70に液体を分配するように分注するのに要する増大したポンプ圧力が必要となることを理解されたい。圧力低下の増大は、有利には、誘電ノズルチップ70間の相対的な高さおよび分注の量の差および粒径の不揃いを著しくしない高流体粘度を維持すると考えられる。
【0043】
上述した噴霧ノズル28は、噴霧ノズル28の中心線に対し対称に位置付けされるスプルー状溝路74を示すが、必ずしも対称でなくともよい任意の適したパターンでスプルー状溝路74を配置することは本発明の教示内にある。例えば、誘電ノズルチップ70から不均一な流体流量が望まれるのであれば、溝路74は、スプルーが必ずしも対称でないが、等しい長さ、および/または等しい溝路直径を有する任意の数のパターンをとることができる。さらに、所望の圧力低下の選択が、各溝路74の分岐を少なくし、かつ曲がりを少なくすることにより達成され得る。例えば、いかなる曲がりも有さず、分岐が全て中央液体通路にて行われる放射状スポーク構成を用いることができる。
【0044】
溝路74の円形および半径方向に対称的な構成から逸脱することは、ノズルチップ70が非円形構成に配置される場合に特に適し得る。例えば、楕円または矩形の面板であれば、ポケットに容易に保持される、より薄型の装置を有利に達成することができる。従って、ノズルチップの配置は、かかる面板の周縁に沿って行われ得る。あるいは、ノズルチップの列は、面板の幅に沿って、おそらくは、米国国旗(星条旗)の星と同様に互い違いのパターンで配置されることで、ノズルチップ付近からの反発が考慮され、所望の噴霧パターンが達成され得る。これらの非円形状に配置されたノズルチップに対する流体路は、各ノズルチップが他のノズルチップとほぼ等量の流量を受け取るように、半径方向に対称的なパターンとは異なっていることが有利である。
【0045】
純粋な誘電性の噴霧部
分注された液体が噴霧ノズル28に入る前に注入された電荷を保持する誘電材料から純粋に形成された噴霧ノズル28の代替的または付加的な特徴が、図9に示される。純粋な誘電噴霧ノズル28は、誘電ノズルチップ70での液体のウィッキングの傾向が低い。電界がオフであるときでも発生し得るウィッキング損失は、有利には、NDD EHDノズルアセンブリ20aの持続操作と使用者への予定服用量の治療液の送出とのどちらも可能にするように制御される。制御されなければ、ウィッキングにより、誘電ノズルチップ70が浸漬しかねず、また、噴霧活動が中断することになりかねない。ウィッキング損失は、液体調合物の低表面張力(約15ダイン/cmもの低さ)に起因するものと考えられる。ウィッキングを制御するために、誘電ノズルチップ70の外径または関係する外表面を、低表面エネルギー材料から形成してもよく、それにより、疎水性コーティングを加えるための第2の製造作業の必要性がなくなる。
【0046】
図10は、純粋な誘電管88、チップ90、および高電圧金属(high voltage metallic)流体供給アセンブリ92を備える単一のEHDノズルアセンブリ86を概略的に示す。誘電管88およびチップ90は、ポリカーボネート、アセタル(Acetal)、テフロン(登録商標)(Teflon)等のような純粋な誘電性の非導電材料が挙げられるが、これらに限定されない。高電圧流体供給アセンブリ92は、適した金属放電管94を含み、この金属放電管を通って、適したポンプ96(「P」)により供給される導電液体が、高電圧供給アセンブリ92から誘電管88へ流れ、誘電管88を通ってチップ90から出る。チップ90は、テイラー円錐形成に適した任意の出口構成を含み得る。導電液体が高電圧供給アセンブリ92を通過する際、この流体は、直流電源98により負に帯電している供給アセンブリ92によって負に帯電する。
【0047】
図10に示す実験試験装置では、誘電管88の長さ「D1」および正電荷接地面100からの高さ「D2」の物理的寸法はそれぞれ、25センチメートルおよび22センチメートルであり、金属放電管94は12ゲージステンレス鋼であった。負電荷流体出口チップ90にて、テイラー円錐102が形成され、チップ90の出口端に取り付けられ、それにより、霧状の負電荷液体粒子104がつくり出される。負電荷液体粒子104は、単分散化された電気噴霧106を形成し、正電荷接地面100に引き付けられて当たる。初期の実験試験により、単分散化された電気噴霧液体粒子104は、一秒あたり0.5マイクロリットルの流体流量で1.56ミクロンもの小ささの平均粒径(体積で)を有した。流体流量が一秒あたり2.0マイクロリットルに増大すると、平均粒径は3.6ミクロンに増大した。
【0048】
全体が金属のステンレス鋼ボールチップ(図示せず)を用いた、図10に示すのと同様の装置を用いての別の実験試験が、図10に示すのと同様の接地面関係で、1秒あたり0.25マイクロリットルの流体流量での作動で行われ、誘電チップを用いて得られるよりも著しく大きい、5.59ミクロンの平均粒径(体積で)を有する単分散化された電気噴霧が提供された。従って、ステンレス鋼の表面エネルギーが高くなるほど粒径が大きくなった。
【0049】
負電荷接地面100に当たる正に帯電した液体が同様の成果を達成するであろうことが理解される。また、上述の試験装置では、導電流体を負に荷電して誘電管88に導入するのに、荷電放電管94を用いたが、誘電管88に入り込むおよび/または誘電管88を通過する際に流体を荷電する他の代替的な方法も用いられ得ることも理解される。例えば、電極を誘電管88内のその長さに沿った任意の場所に配置することもでき、それによって、通過流体と接触する電極が流体出口チップ90よりも先に流体を荷電する。さらに、誘電管88自体は、誘電材料の利点を提供するのに純粋な誘電チップ90自体に依存して液体を荷電する金属構造で代替されることができる。別の例として、ノズルチップが接地電位にあり、テイラー円錐が、荷電放電電極により形成される電界または荷電放電電極により形成されるイオン雲により形成されている。
【0050】
純粋な誘電噴霧ノズル28は、有利には、電気噴霧に効果的であると共に、ウイッキングを低減し、経済的に作製され得る。しかしながら、いくつかの用途では、成形噴霧ノズルを純粋な誘電材料から経済的に作製することが望ましいが、導電または半導電ノズルチップは、遷移作用を低減することが望まれ、それにより、安定した状態体積率および粒径が達せられる。例えば、炭素、または金属(例えば銀、金)等の他の導電粒子が、成形前に、誘電材料に装填され得るか、または成形後に噴霧ノズルの外表面に施される。あるいは、銀または金等の薄層の金属も、真空スパッタリングプロセスまたは同様のプロセス等により噴霧ノズルに蒸着され得る。
【0051】
図9に戻ると、34個の誘電ノズルチップ70を有して示された噴霧ノズル28が、各チップに形成されたテイラー円錐を損なうことなく、一秒あたり5〜16マイクロリットルの範囲の流量で噴霧ノズル28の長手方向軸に対し水平位置で現場試験されている。霧化粒径は、約1.4〜1.5ミクロンであった。試験ノズルアセンブリの物理的寸法は、直径(D)=0.55インチ、チップサークルの直径(d)=0.049インチ、チップOD=0.020インチ、チップID=0.0043インチ、および供給管(58)の長さ=0.875インチであった。
【0052】
スナップ嵌めNDD EHDノズル
図11〜図15は、単純化放電電極およびスナップ嵌めアセンブリを備える製造性特徴を有することが有利であるNDD EHDノズルアセンブリ108の別の形態を示す。図11に示すように、スナップ嵌めNDD EHDノズルアセンブリ108は、一体形の誘電性円筒ベース構造110、噴霧ノズル112、一体形の円筒多電極放電バンド114、および一体形の誘電性円筒カバー116を備える。上記要素の総ては、同軸として長手方向中心線Aを中心として示されている。
【0053】
一体形の誘電性円筒ベース構造110は、使用者による吸気の際に中に空気流を通させる複数の孔120を有する円形後壁118を備える。円筒カラー122の周を囲む複数の開端U字形開口124を有する円筒カラー122は、円形後壁118から軸方向に前方に延びている。U字形開口部124は、開端として示されているが、端が閉じられていてもよく、また、U字形以外の形状であってもよい。
【0054】
図14および図15に最もよく示すように、噴霧ノズル112から後方に閉端管126を通って延びる流体供給管128により噴霧ノズル112が取り付けられている閉端管126が、円筒ベース構造110と一体形になっており、円形後壁118内を延びている。
【0055】
図14に示すように、円形後壁118の開スロット132内に収容され折り曲げられた複数の一体形金属タング130を有するステンレス鋼放電バンド114は、円筒カラー122に取り付けられると共にこの円筒カラー122の周りを囲んでおり、それによって、ベース構造110に多電極放電バンド114を固定する。多電極放電バンド114は、また、図11に最もよく示すように、円筒ベースストラップ134から前方に軸方向に延びた複数の電極136を有する円筒ベースストラップ134を備える。電極136には、長手方向軸側に傾斜して曲がると共に円筒カラー122の開口124内の中心に置かれる鋭端138が設けられる。多電極放電バンド114が正に荷電される場合、正イオンの電界が、各電極136から噴霧ノズル112の下流の長手方向軸側に向けられ、それにより、流れを肺疾患用送出装置10から出るように向けることで、質量移動が増大する。
【0056】
保護カバー116は、図12に見られるように、ベース構造110の開口スロット146内に嵌まる3つ以上のタブ144により、部品のサブアセンブリを囲むとともにベース構造110に取り付けられる半径方向内縁142を有する円筒シェル140を備える。カバー116、円筒カラー122、および半径方向内縁142は協働して細長い環状放電電極室148を形成し、この電極室は、複数の外周開口124を有し、図15に最もよく示されるようにこの開口内には各電極136の鋭端が中心に置かれている。
【0057】
分離(dissociated)放電シュラウド(DDS)タービンEHSノズル
図16〜図19は、分離上流放電電極150を有する別の代替的なEHDノズルアセンブリ20bを示す。放電電極バンドは、分離放電シュラウド152の上流にあると共にこのシュラウド152により遮蔽されるため、噴霧ノズル154からの湿潤から保護される。さらに、噴霧ノズル154からのエーロゾル化された液体のイオンとは逆電荷のコロナイオンが、エーロゾル化された液体の周りで前方に環状に分注され、エーロゾル化された液体を中和するのに有利な空気流パターンを生成するが、DDS EHDノズルアセンブリ20bの内側を湿潤させることがない。
【0058】
鋭端の分離上流放電電極150は、比較的高い正電荷で維持されることにより、分離上流放電電極150が正電荷イオン雲156を形成するように電気的に分解する。標準の温度および圧力では、空気は30,000V/cmの電界強度を受ける場合にイオン化することが一般的に分かっている。正電荷イオン雲156は、分離上流放電電極150と反発し、またその共通の電荷により互いに反発し合い、それにより、誘電導管すなわち経路158を介して、コロナ風、または正電荷イオン雲156を形成する。
【0059】
環状経路158の出口端160は、包囲された空気流路164の出口ポート162(噴霧ノズル154を収容する)と合わさって、吸入装置の出口166(図16〜図19には図示せず)を形成する。負に帯電されたエーロゾル化された液体粒子のエーロゾル168は、包囲された空気流路164において上述したように噴霧ノズル154から噴霧される。正電荷イオンコロナ156は、この出口166において相互作用することによりエーロゾル168を中和する。
【0060】
分離上流放電電極150は、噴霧ノズル154から電気的に分離し、したがって、そのEHD動作を損なわない。代わりに、噴霧ノズル154の各EHDノズルチップ170と正電荷イオン雲156の強い関係(すなわち電気的引力)。EHD噴霧を補助することのほかに、正電荷イオン雲156は、負電荷粒子が各EHDノズルチップ170に形成され、互いに分かれ始めた後、エーロゾル168の動きおよび方向に影響を与える。経路158に対する位置および移動方向により、エーロゾル168の負電荷粒子が、包囲された空気流路164の出口ポート162の方に向けられ、交差流ではなく軸方向流で吸入装置の出口166の方に流れることで、湿潤が低減される。
【0061】
図示の実施形態では、DDS EHDノズルアセンブリ20bは、さらに、ベースプレート174内に位置している段付きベース取り付けシリンダ172を備える。ベースプレート174は、一体形の周縁176を有し、図19に最もよく示すように、一体形の周縁176により、段付きベース取り付けシリンダ172内に位置付けられる。図19に最もよく示すように、位置決めフランジ180および中心管182と一体形成される放電電極支持シリンダ178は、段付きベース取り付けシリンダ172内に配置される。図18および図19に示すように、中心管182は、段付きベース取り付けシリンダ172のベースプレート174および後壁184を延び、それにより、段付きベース取り付けシリンダ172内に対称的に放電電極支持シリンダ178を安定させる。図19に見られるように、ベースプレート174の一体形の周縁176は、ベースプレート174および位置決めフランジ180との間の軸方向スペーサとして作用する。ベースプレート174および位置決めフランジ180は、それぞれ、複数の孔186および188を備える。孔186および188は、吸入装置の使用者による吸入の際に、環状経路158および包囲された空気流路164の双方の後部に軸方向の空気流を可能にする。DDS EHDノズルアセンブリ20bに空気を導入させるのに適した通気開口190が、取り付けシリンダ45の後部に設けられる。
【0062】
分離上流放電電極150の外周電極バンド194が嵌まる拡径領域192は、位置決めフランジ180に並置されていると共に放電電極支持シリンダ178の周りを囲んでいる。カスプ状の複数の鋭端放電電極スパイク196が、外周電極バンド194から軸方向前方に突出している。図18および図19に示すように、放電電極スパイク196は、拡径領域192の領域から軸方向前方に延びることで、放電電極支持シリンダ178の上から支持される。外周電極バンド194は、図19に示すようにスロット付き開口200内に延びると共に位置決めフランジ180の後側に被さるように90度曲げられた3つ以上のタング198により、位置決めフランジに180に固定され、それにより、外周電極バンド194が位置決めフランジ180に固定される。
【0063】
図示のステンレス鋼バンドは、複数の放電電極の経済的な作製および組み立てに役立つ。示すように、複数の放電電極は、間に間隔をなす放電バンドからほぼ矩形のカットアウトで規則的に離間した点となっている。放電バンドは、放電電極の他の形状および間隔を有する幾つかの用途に用いられ得ることを理解すべきである。例えば、鋸歯状パターンまたはスカラップ形状パターンを用いて、所望の放電電界を達成することができる。さらに、ノズルチップおよび放電バンドが円形状に配置されない用途では、形状寸法の変化(例えば、各放電電極から最も近いノズルチップまでの距離の変化)に対応するよう、放電電極の間隔を変えることが望ましい場合がある。
【0064】
放電電極室148により包囲された空気流路164の円形断面は、例示的であることを理解されたい。本発明の態様は、楕円または四角形等、円形以外の断面形状により実現されてもよい。さらに、エーロゾル化された液体をイオン雲が環状に囲むのではなく、イオン雲を生成するリング状の噴霧部が、中心路の周りに環状に向けられてもよい。さらに、エーロゾル化された液体およびイオン雲の並置経路を、一方が他方を完全に囲むことなく設けてもよい。
【0065】
手持ち式EHD吸入器の動作
使用時に、肺疾患用送出装置10は、任意の好都合な向きで使用者により保持されて、出口開口が使用者の口に向けられるようになっている。使用者は、制御回路22を作動させることで、貯蔵された液体をEHDノズルアセンブリ20の噴霧ノズル28に向けるように分注システム18を作動させる。噴霧ノズルの溝路74は、有利には、円周に配置されたノズルチップ32に一定の流体圧力低下を与えることで、噴霧ノズル28に鉛直以外の角度で一貫して動作させる。噴霧ノズル28は、携帯型電源16により電荷を与えられる。この電荷は、ノズルチップ32にて送り出され得る。あるいは、チップ90が、液体上流に分与される電荷によるウィッキングを減らす低表面エネルギーを有する誘電材料から形成され得る。エーロゾル化された液体は、噴霧通路50の下流開口に向けられる。放電電極先端部48または逆電荷イオン雲が、エーロゾル化された液体を中和するために下流開口の周りに環状に提供される。細長い放電電極26のほとんどまたは総ては、誘電体放電シールド30により噴霧通路50から遮蔽され、これにより、細長い放電電極26と噴霧ノズル28との間に長い経路が与えられるため、エーロゾル化された液体により湿潤される可能性が低くなる。
【0066】
上記により、改良型EHDノズルは、湿潤が低くかつ粒径が小さい(1.0〜5ミクロン)、高服用量率(マイクロリットル/分)を達成するが、これらの特性は互いに排他的である傾向がある。さらに、これらの属性は、便宜上、小型の手持ち式の装置に組み入れられる。
【0067】
本発明を複数の実施形態の説明により示し、例示的な実施形態をかなり詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲をかかる細部に制限またはいずれにしても限定することを本出願人は意図しない。さらなる利点および改変は、当業者には容易に明らかであろう。例えば、EHDノズルアセンブリ20、20a、20bは携帯型装置に特に有用であるが、本発明の態様は固定ユニットに適用可能であることが理解されるであろう。さらに、治療液の分注が示されているが、広範の液体および混合物を、本発明の態様に従って電気流体力学的に噴霧することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸を有する噴霧通路を画成し、該長手方向軸に下流開口を有すると共に上流開口を有するシールドと、
前記噴霧通路内に収容されると共に、液体通路、および前記下流開口側にテイラー円錐を生成して前記液体通路から受け取った液体をエーロゾル化するように構成されるノズルチップを有する、噴霧ノズルと、
前記シールドを囲むと共に、前記下流開口にて前記エーロゾル化された液体を電気的に中和するように構成される複数の放電電極と、を備える電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項2】
前記噴霧ノズルは、
前記噴霧通路の前記下流開口側に向いた前面と、
該前面の周りに円周方向に配置される複数のノズルチップと、
前記前面と連通する液体供給通路と、
該液体供給通路および各ノズルチップ間を連通する複数の溝路であって、前記噴霧ノズルの、前記長手方向軸の向きの重力作用を緩和するように選択された圧力低下を提供するように構成される複数の溝路と、を備える請求項1に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項3】
前記複数の溝路は、スプルー状対称分岐を含み、
該溝路は、それぞれ、同等の圧力低下を達成するように等しい断面積、長さ、および曲がり数を有する請求項2に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項4】
前記複数の放電電極は、それぞれ、長手方向長さを有し、前記シールドに上流部分で結合され、前記長手方向長さの下流部分に沿って、前記エーロゾル化された液体から前記シールドにより分離される請求項1に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項5】
前記複数の放電電極は、前記シールドの円周方向に取り付けられるバンドに取り付けられる請求項4に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項6】
前記複数の放電電極は、それぞれ、前記長手方向長さの上流端に電極先端部を有し、
該電極先端部は、それぞれ、前記下流開口に近接した前記噴霧通路に位置する請求項4に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項7】
さらに、前記複数の放電電極を収容する放電電極室を形成するように前記シールドを環状に包囲するカバーを備える請求項1に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項8】
前記放電電極室は、前記噴霧通路の前記下流開口を囲む環状開口を有し、
該環状開口の長手方向上流の前記複数の放電電極は、前記エーロゾル化された液体を中和するイオン雲を生成するように構成される請求項7に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項9】
前記複数の放電電極は、前記シールドの円周方向に取り付けられるバンドに取り付けられる請求項8に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項10】
前記シールドおよびカバーは、スナップ嵌めアセンブリ手段を有する請求項7に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項11】
前記噴霧ノズルの前記ノズルチップは、ウィッキングを低減する低表面エネルギー誘電材料から形成され、
前記噴霧通路の前記液体通路は、電気流体力学的噴霧に十分な電荷を前記液体に与えるように前記ノズルチップの上流に荷電用電極を有する請求項1に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項12】
前記噴霧ノズルの前記ノズルチップは、前記噴霧通路に対し横断方向の平面を画成し、
前記複数の放電電極は、前記平面の上流に位置する請求項1に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項13】
長手方向軸を有する噴霧通路の周りの複数の放電電極を長手方向に遮蔽する段階と、
前記噴霧通路の前記長手方向軸に沿って下流に向けたエーロゾルとしての液体を電気流体力学的に噴霧する段階と、
前記噴霧通路の下流開口に近接した前記エーロゾルを中和する段階と、を含む方法。
【請求項14】
前記複数の放電電極を長手方向に遮蔽する段階は、
前記放電電極それぞれの分離した下流チップを前記噴霧通路の前記下流開口に露呈させる段階と、
前記放電電極それぞれの実質的な部分が前記エーロゾルから遮蔽されるように、前記放電電極それぞれの上流部分を前記噴霧通路の外側に結合する段階と、を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記エーロゾルとは逆の電荷のイオン雲を生成するように複数の放電電極を荷電する段階と、
前記イオン雲を前記噴霧通路の前記下流開口へ長手方向に且つ環状に下流に向ける段階と、を含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記液体を電気流体力学的に噴霧する段階は、
一定の圧力低下を有する複数の溝路に渡って、円周方向に離間した複数の位置に前記液体を分配する段階と、
各ノズルチップにより前記円周方向に離間した位置それぞれにて受け取った前記液体を電気流体力学的に噴霧する段階と、を含む請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記液体を電気流体力学的に噴霧する段階は、
前記液体を帯電させる段階と、
前記保持された電荷の影響下、テイラー円錐を形成するよう、前記帯電液体を誘電性電気流体力学ノズルチップに分配する段階と、を含む請求項13に記載の方法。
【請求項18】
肺疾患用エーロゾル送出装置であって、
長手方向軸を有する噴霧通路を画成し、該長手方向軸に下流開口を有すると共に上流開口を有するシールド、
前記噴霧通路内に収容されると共に、液体通路、および前記下流開口側にテイラー円錐を生成して前記液体通路から受け取った治療液をエーロゾル化するように構成されるノズルチップを有する、噴霧ノズル、および
前記シールドを囲むと共に、前記下流開口にて前記エーロゾル化した治療液を電気的に中和するように構成される複数の放電電極、を備える電気流体力学装置と、
エーロゾル化すべき前記治療液を収容すると共に、前記電気流体力学装置に前記治療液を送出する分注システムと、
前記治療液をエーロゾル化するのに十分な電圧を前記電気流体力学装置に供給する電源システムと、
前記分注システム、前記電気流体力学装置、および前記電源システムと接続する制御回路と、
使用者の片手で保持することができるような大きさの筐体であって、前記エーロゾル化した治療液を使用者の口に向ける出口開口を有すると共に、内部に、前記電気流体力学装置、前記分注システム、前記電源システム、および前記制御回路を備える、筐体と、を備える肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項19】
前記噴霧ノズルは、
前記噴霧通路の前記下流開口側に向いた前面と、
該前面の周りに円周方向に配置される複数のノズルチップと、
前記前面と連通する液体供給通路と、
該液体供給通路および各ノズルチップ間を連通する複数の溝路であって、前記噴霧ノズルの、前記長手方向軸の向きの重力作用を緩和するように選択された圧力低下を提供するように構成される複数の溝路と、を備える請求項18に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項20】
前記複数の溝路は、スプルー状対称分岐を含み、
該溝路は、それぞれ、同等の圧力低下を達成するのに等しい断面積、長さ、および曲がり数を有する請求項19に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項21】
前記複数の放電電極は、それぞれ、長手方向長さを有し、前記シールドに上流部分で結合され、前記長手方向長さの下流部分に沿って、前記エーロゾル化された液体から前記シールドにより分離される請求項18に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項22】
前記複数の放電電極は、前記シールドの円周方向に取り付けられるバンドに取り付けられる請求項21に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項23】
前記複数の放電電極は、それぞれ、前記長手方向長さの上流端に電極先端部を有し、
該電極先端部は、それぞれ、前記下流開口に近接した前記噴霧通路に位置する請求項21に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項24】
さらに、前記複数の放電電極を収容する放電電極室を形成するように前記シールドを環状に包囲するカバーを備える請求項18に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項25】
前記放電電極室は、前記噴霧通路の前記下流開口を囲む環状開口を有し、
該環状開口の長手方向上流の前記複数の放電電極は、前記エーロゾル化された液体を中和するイオン雲を生成するように構成される請求項24に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項26】
前記複数の放電電極は、前記シールドの円周方向に取り付けられるバンドに取り付けられる請求項25に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項27】
前記複数の放電電極は、前記シールドの円周方向に取り付けられる前記バンドから形成される請求項26に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項28】
前記シールドおよびカバーは、スナップ嵌めアセンブリ手段を有する請求項24に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項29】
前記噴霧ノズルの前記ノズルチップは、誘電材料から形成され、
前記噴霧通路の前記液体通路は、電気流体力学的噴霧に十分な電荷を前記液体に与えるように前記ノズルチップの上流に荷電用電極を有する請求項18に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項30】
前記噴霧ノズルの前記ノズルチップは、ウィッキングを低減する低表面エネルギー誘電材料から形成される請求項29に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項31】
前記噴霧ノズルの前記ノズルチップの前記誘電材料は、定常状態の分注の時間を短縮するよう導電材料を含む請求項29に記載の肺疾患用エーロゾル送出装置。
【請求項32】
電気流体力学的噴霧用の噴霧ノズルであって、
液体を受け入れるように構成された液体通路と、
前記液体を帯電させるように前記液体通路と接触する荷電用電極と、
誘電材料から形成され、前記液体通路と連通すると共に離間している複数のノズルチップであって、帯電された液体が提供されたときに各チップにテイラー円錐を生成するように配置されるノズルチップを有する前面と、を備える電気流体力学的噴霧用の噴霧ノズル。
【請求項33】
前記前面は、円形であり、
前記複数のノズルチップは、円周方向に配置される請求項32に記載の電気流体力学的噴霧用の噴霧ノズル。
【請求項34】
さらに、前記液体通路および各ノズルチップ間を連通する複数の溝路であって、各ノズルチップに一定の流量を提供するような大きさの複数の溝路を備える請求項32に記載の電気流体力学的噴霧用の噴霧ノズル。
【請求項35】
電気流体力学的噴霧用の装置であって、
長手方向軸を有する噴霧通路を画成し、該長手方向軸に下流開口を有すると共に上流開口を有するシールドと、
前記噴霧通路内に収容されると共に、液体通路、および前記下流開口側にテイラー円錐を生成して前記液体通路から受け取った液体をエーロゾル化するように構成されるノズルチップを有する、噴霧ノズルと、
前記シールドを囲むと共に、前記下流開口にて前記エーロゾル化された液体を電気的に中和するように構成される複数の放電電極と、
前記シールド内に形成される複数の窓であって、該窓は、それぞれ、前記噴霧通路の前記下流開口に各放電電極の先端部を露呈させる、複数の窓と、を備える電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項36】
さらに、前記放電電極および前記シールドを包囲するカバーであって、前記複数の放電電極を自己吸入する通気孔を有するカバーをさらに備える請求項35に記載の電気流体力学的噴霧用の装置。
【請求項37】
カバー内に配置され、放電電極キャビティおよび噴霧通路を長手方向に分離するシールドと、
前記噴霧通路内に収容されると共に、液体通路、および下流開口側にテイラー円錐を生成して前記液体通路から受け取った液体をエーロゾル化するように構成されるノズルチップを有する、噴霧ノズルと、
前記噴霧ノズルの前記ノズルチップが成す平面の上流の前記放電電極キャビティ内に収容された放電電極であって、前記下流開口にて前記エーロゾル化された液体を電気的に中和するようイオン雲を生成するように構成される放電電極と、を備える電気流体力学的噴霧用の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−147801(P2011−147801A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−61244(P2011−61244)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【分割の表示】特願2006−508899(P2006−508899)の分割
【原出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(500415173)バテル・メモリアル・インスティテュート (9)
【氏名又は名称原語表記】BATTELLE MEMORIAL INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】505 King Avenue, Columbus, OH 43201−2693, U.S.A.