説明

手指関節のリハビリ用具

【課題】 神経障害や脳梗塞などで手指の運動能力を欠損した患者の拇指関節のリハビリ用具を提供することを目的とする。
【解決手段】 掌と手首の背面または内面または両面に配された柔軟性を有する袋と、前記袋を内包するカバーの一先端部近傍に設けられた手指を貫挿させる第一の係止部と、前記袋の前記第一の係止部と同一面に設けられた手首の近傍に設けられた第二の係止部とにより構成されたリハビリ機器において、前記袋内に気体もしくは流体を注入することにより、手指の第一、第二関節の可動方向に掌が開方向または閉方向に可動するとともに、前記手指が手指の第一、第二関節の可動方向と直行する相互に離間する方向に可動させる機構を有することを特徴とする手指関節のリハビリ用具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動的に開閉屈伸運動を行う手指関節のリハビリ用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来手指、手首、肘などの関節の開閉屈伸を目的としたトレーニングに用いる方法としては、空気袋を使用したものや空気アクチュエーターを使用したものが知られている。(特許文献1)(特許文献2)
【先行技術文献】
【0003】
このように、本発明に関連する公知技術文献として、下記特許文献1、特許文献2がある。
【特許文献1】特公平10−33604号公報
【特許文献2】特開2006−294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では使用者の掌を載置する空気袋に固定された手袋に対して使用者の手指を挿入して使用する形態であり、掌の屈曲方向への可動は可能であるが、リハビリとして必要な各指の開き方向に関しての機能は有しない物である。
【0005】
特許文献2の方法では気圧の変化に応じて生ずる屈曲方向は単一方向のみ物で、掌の屈曲方向と同時に手指が相互に離間する方向の動きを作り出すことは出来ない物である。
以上の現状に鑑み、本発明は気体または流体を注入する袋を用いた機器で特別な機構を用いることなく、掌の開閉方向の動作と、5指が相互に離間する動きの双方を同時に作り出すことにより可能な訓練を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、掌と手首の背面または内面または両面に配された柔軟性を有する袋と、前記袋を内包するカバーの一先端部近傍に設けられた手指を貫挿させる第一の係止部と、前記袋の前記第一の係止部と同一面に設けられた手首の近傍に設けられた第二の係止部とにより構成されたリハビリ機器において、前記袋内に気体もしくは流体を注入することにより、手指の第一、第二関節の可動方向に掌が開方向または閉方向に可動するとともに、前記手指が手指の第一、第二関節の可動方向と直行する相互に離間する方向に可動させる機構を有することを特徴とする手指関節のリハビリ用具である。
【0007】
請求項2に係る発明は、手指と対向するカバーの部分が掌の幅方向に伸縮する材料よりなることを特徴とした請求項1に記載の手指関節のリハビリ用具である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の作用効果が得られる。
使用者はリハビリを必要とする手指を含む手部全体に対して本用具を装着することが可能である。
【0009】
カバーに内包された柔軟性を有する袋に対して気体または流体を注入することにより、袋は所定の形状に伸直する方向に膨張することになる。
【0010】
袋の膨張にともない、カバーも膨張してカバーに固定している使用者の手指の関節を開く方向に付勢することとなる。
【0011】
袋の膨張は、厚み方向ではカバーにより一定厚に規制されて設定した厚み以上にはならないが、掌の幅方向のへの膨張は事由であるため手指の対向する部位は手指をさらに開く方向に膨張することになる。
【0012】
所定の圧力まで気体または流体を注入した後、気体または流体を排出すると、使用者の関節の拘縮力が働き手指関節は元の状態に戻る。
【0013】
上述の気体または流体の注入・排出を交互に行うことにより使用者の手指の関節に対して掌の開き方向と、手指の開く方向との動作を付与することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 中間位拘縮者の手部の斜視図である。
【図2】 本実施に係る一実施例を示す斜視図である。
【図3】 本実施例に使用された袋の斜視図である。
【図4】 本実施例に使用された第二の状態の袋の斜視図である。
【図5】 本実施例のリハビリ用具を使用者が装着した状態の斜視図である。
【図6】 本実施例の図5の状態に気体を注入した第一の状態を示す斜視図である。
【図7】 本実施例の図6の状態にさらに気体を注入した第二の状態を示す斜視図である。
【図8】 本実施例の他の袋の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0015】
本手指関節のリハビリ用具は、気体または流体により膨張・収縮する袋を用い、神経障害や脳梗塞などで手指の自動的な運動能力を欠損した患者の拘縮時の運動リハビリ機器を提供することを目的とする。以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は手指関節の拘縮を起こし、初期的なリハビリ運動を行い中間位まで掌を開くことができるような使用者の手部の斜視図である。
このままの状態で放置すると、この状態で手指関節は固定化してしまうため、日常的な掌の開閉の運動をする必要がある。
【0017】
図2は本案の実施例の斜視図である。リハビリ用具(1)は内部に気密性を有する図3に示す袋(25)を内包し、周囲を縁(3)で縫製したカバー(2)と、カバー(2)の一端に使用者の手指を挿入係止する挿入部(4)、(5)、(6)、(7)と、中心部近傍に掌を固定する第一の固定部材(8)と、他端に手首を固定する第二の固定部材(13)とを具備している。
【0018】
第一の固定部材(8)および第二の固定部材(13)はカバー(2)に対して、手部の装着方向とは略直行するように縫部(12)、(17)で固定されている。
【0019】
ふたつの固定部材(8)、(13)には、各々図中下面にマジックテープのフック(9)、(14)とループ(10)、(13)があり、掌および手首をカバー(2)に固定するように返し金具(11)、(16)で挿入反転させた時に対向する位置に設けられている。
【0020】
カバー(2)の両面は手指の挿入部(4)、(5)、(6)、(7)と第一の固定部材(8)の中間位置の接合部(18)で材料が異なっており、手の甲部と対向する(20)部は非伸縮性の弾性材料よりなり、指部と対向する(19)は厚み方向および手指の長手方向に対しては非伸縮性で、挿入部(4)、(5)、(6)、(7)の方向に対しては伸縮性を有する材料からなっている。
【0021】
図3はカバー(2)に内包されている袋(25)の斜視図で、気体を注入・排出する空気管(図示せず)を有している。
【0022】
袋(25)は上面(30)及び下面(31)は全周囲(28)を溶着で気密性を保つように袋体を為している。
【0023】
また、上面(30)および下面(31)の掌の対向部(32)は非伸縮性の弾性部材よりなり、手指の対向部(33)は掌の幅方向に伸縮する部材からなり接合部(29)で接合されている。
【0024】
また袋(25)は厚み方向の規制部材(図示せず)により対向部(32)および(33)を内部を(26)、(27)、(28)の位置で溶着されて厚みが一定以上には厚くならないように規制されている。
【0025】
上述の構成で、袋(25)は気体を注入されることにより長手方向と、規制部材(図示せず)により規制された厚みまで膨張する第一の状態になる。
【0026】
さらに気体を注入して袋(25)の気圧を増加させると、長手方向および厚み方向への膨張は規制されているために、接合部(29)を境にして、手指の対向部が指先にゆくほど掌が広がる方向に膨張する図4に示す第二の状態になる。
【0027】
図5は図3の袋(25)を内包した手指関節のリハビリ用具(1)を図1に示すような手指関節の中間位での拘縮が起こっている使用者に対して装着した状態を示している。
【0028】
固定部材(8)、(13)は各々、掌、手首に巻き付けるようにして、フック(9)、(14)とループ(10)、(13)とを噛合させてしっかりと固定されている。
【0029】
この状態で、カバー(2)に内包されている袋(25)に気体を注入すると、手指関節のリハビリ用具(1)は手指の関節を伸ばす方向に伸直して、湾曲した使用者の手指関節を伸ばす図6の状態になる。
【0030】
更に気体を注入して袋(25)内の圧力を増すと、図4に示す状態となり、袋(25)はカバー(2)の部位(20)では厚みも幅も長さも規制され膨張ができなく、部位(19)部のみが掌の幅方向に膨張することになる。
【0031】
カバー(2)は接合部(18)では伸びることができないために、袋(25)は袋先端へ行くほど膨張率は増え、図7のように先端に行くほど略扇状に開き、拇指以外の4本の指を相互に開くように、手指間に空間(21)、(22)、(23)を作る事になる。
【0032】
図8は図3とは異なった形の袋(35)の例で、手指に対抗するように切り込み(36)、(37)、(38)が設けられ、各々示指、中指、薬指、小指の各々対向する位置に袋(42)、(43)、(44)、(45)を延伸して、袋(42)と(43)とをブリッジする第一のブリッジ(39)、袋(43)と袋(44)をブリッジする第二のブリッジ(40)、袋(44)と袋(45)をブリッジする第三のブリッジ(41)を有し、全体でとしてひとつの袋体を形成している。
【0033】
上面(46)および下面(47)およびブリッジ(39)、(40)、(41)は非伸縮性の弾性材よりなる。
【0034】
袋(35)に気体を注入すると、袋(35)は所定の形状まで膨張するとともに、ブリッジ(39)、(40)、(41)にも気体が注入され、袋(42)、843)、(44)、(45)を相互に離間することになる。
【0035】
上述の構成であれば図8の構成でも図6に示す構成と同様の機能を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 手指関節リハビリ用具
2 カバー
4、5、6、7 挿入部
8 第一の固定部材
9 第二の固定部材
18 接合部
21、22、23 空間
29 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掌と手首の背面または内面または両面に配された柔軟性を有する袋と、前記袋を内包するカバーの一先端部近傍に設けられた手指を貫挿させる第一の係止部と、前記袋の前記第一の係止部と同一面に設けられた手首の近傍に設けられた第二の係止部とにより構成されたリハビリ機器において、前記袋内に気体もしくは流体を注入することにより、手指の第一、第二関節の可動方向に掌が開方向または閉方向に可動するとともに、前記手指が手指の第一、第二関節の可動方向と直行する相互に離間する方向に可動させる機構を有することを特徴とする手指関節のリハビリ用具。
【請求項2】
手指と対向するカバーの部分が掌の幅方向に伸縮する材料よりなることを特徴とした請求項1に記載の手指関節のリハビリ用具

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−284451(P2010−284451A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154307(P2009−154307)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(507398349)株式会社リアルデザイン (7)