説明

手摺支柱および先行手摺

【課題】先行手摺工法を用いた型枠支保工の組み立て時および解体時に、作業者の安全性を確保しつつ作業効率を向上させることができる手摺支柱およびその手摺支柱を備えた先行手摺を提供する。
【解決手段】連結金具4を有する支柱部材3と前記連結金具に楔2aにより連結される水平材2とからなる型枠支保工に用いられる先行手摺20の手摺支柱21であって、上桟12を取り付けるための上桟ロック金具22と、中桟13を取り付けるための中桟ロック金具23とを有し、手摺支柱21を型枠支保工に設置した際に、上桟ロック金具22が中桟ロック金具23よりも型枠支保工から外側に離れるように上桟ロック金具22と中桟ロック金具23とが水平方向にずれて配置されることを特徴とする手摺支柱21およびその手摺支柱21を備えた先行手摺20。そして手摺支柱21及び上桟と中桟を複数とすることができる.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物等を施工する際に組み立てられる足場兼用型枠支保工の設置作業において用いられる先行手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物等を施工する際には、一般に、鉛直方向に立設された支柱とこの支柱に対して直交する横方向の水平材を組み合わせてなる型枠支保工が地上又は床面から組み立てられ、コンクリート構造物の下面はこの型枠支保工によって支えられた型枠内にコンクリートが打設されることによって形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1は、従来のくさび緊結式型枠支保工の一例を示す正面図であり、図2は、図1の型枠支保工の右側面図である。また、図3は、図2のA−A線断面図である。
【0004】
図1および図2に示すように、このくさび緊結式型枠支保工100(以下、型枠支保工100と略記する。)は、コンクリート構造物(スラブ)101の上部の型枠102の下面を支えるように、地上から数m〜十数mの高さで設置されている。
【0005】
図1〜図3に示すように、型枠支保工100は、所定の間隔で行列状に配置される複数の支柱1と、隣接する支柱1の間を水平方向に連結する複数の水平材2を有する。
【0006】
図1および図2に示すように、各支柱1は、鉛直方向に連結された複数の支柱部材3からなる。各支柱1の下端は、ジャッキベース5によって支持されている。各支柱1の上端には、大引受ジャッキ6が取り付けられ、大引受ジャッキ6上に複数の大引材7が載置されている。また、複数の大引材7に直交するように、複数の大引材7上に複数の根太材8が載置され、複数の根太材8上に型枠102が載置されている。
【0007】
支柱1には、所定の間隔で複数の連結金具4が固定されている。図3に示すように、連結金具4には、4つの連結部4aが十字状に形成されている。図1〜図3に示すように、水平材2は、楔2aによって連結金具4の連結部4aに連結されている。なお、本例では、図1および図2に示すように、各支柱部材3の中央部の連結金具4には水平材2が取り付けられておらず、後述する先行手摺が取り付けられる。なお、各支柱部材3の中央部の連結金具4にも水平材2を取り付けてもよい。
【0008】
図3に示すように、複数の水平材2は、短尺の水平材2および長尺の水平材2を含む。隣接する短尺の水平材2の間には、床付き布枠9が架け渡されている。なお、短尺の水平材2のことを特に「腕木材」と呼ぶことがある。型枠支保工100の組み立て時および解体時には、作業者は、床付き布枠9上で作業を行うことができる。
【0009】
ところで、上記の型枠支保工100には手摺が設けられていないので、型枠支保工100の組み立て時または解体時に作業者が床付き布枠9の上から転落するおそれがある。そこで、このような作業者の転落を防止するために、先行手摺工法が用いられる場合がある。
【0010】
図4〜図8は、先行手摺工法を用いた型枠支保工100の組立手順の一例を示す図である。なお、図4,5,7,8は正面図であり、図6は、図5の右側面図である。
【0011】
図4に示すように、型枠支保工を組み立てる際には、まず、地面上に複数の支柱部材3を立設し、各支柱部材3の上部と下部のそれぞれにおいて、隣接する支柱部材3の間を短尺の水平材2および長尺の水平材2によって連結する。そして、隣接する短尺の水平材2(図3参照)の間に床付き布枠9(図3参照)を架け渡す。これにより、下方から1段目および2段目の足場が形成される。
【0012】
次に、図5および図6に示すように、作業者は、最下段の足場(床付き布枠)上で、支柱部材3に先行手摺10を取り付ける。ここで、先行手摺10は、手摺支柱11、上桟12および中桟13からなる。図6に示すように、手摺支柱11の上端部には、上桟ロック金具14が固定され、その上桟ロック金具14よりも下方に中桟ロック金具15が固定されている。上桟12は、上桟ロック金具14によって手摺支柱11に取り付けられ、中桟13は、中桟ロック金具15によって手摺支柱11に取り付けられている。
【0013】
また、手摺支柱11の略中央部に取付金具16が設けられ、手摺支柱11の下端部に取付金具17が設けられている。本例においては、取付金具16を支柱部材3の上部の連結金具4に連結し、取付金具17を支柱部材3に固定することにより、先行手摺10が支柱部材3に取り付けられている。
【0014】
次に、図7に示すように、作業者は下から2段目の足場(床付き布枠)に登り、既に立設されている1段目の支柱部材3の上端に2段目の支柱部材3を連結させる。そして、1段目の各支柱部材3の上端に2段目の支柱部材3を連結させた後、図8に示すように、2段目の支柱部材3の上部において、隣接する支柱部材3の連結金具4の間を、短尺の水平材2および長尺の水平材2によって連結する。これらの手順を繰り返すことにより、所望の高さの型枠支保工を組み立てることができる。
【0015】
このように、先行手摺工法においては、型枠支保工の高さを高くするために最上段の足場で作業を行う必要がある場合には、作業者は、予め最上段の足場用の先行手摺10を取り付けた上で、その最上段の足場に乗ることになる。この先行手摺10によって、型枠支保工の組み立て作業時に作業者が落下することを防止することができる。
【0016】
なお、先行手摺としては、上記の先行手摺10のように1つの手摺支柱11に対して両側から上桟12および中桟13を取り付けることにより一体的(連続的)に先行手摺を形成するタイプの他に、図9に示す先行手摺10aのように、1スパン毎に形成されるタイプの先行手摺もある。しかしながら、図9に示すように、1スパン毎に形成される先行手摺10aでは、1本の支柱部材3に対して2本の手摺支柱11が必要となり、先行手摺の設置コストが上昇する。したがって、図5に示したタイプの先行手摺10を用いることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003−56176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、労働安全衛生規則では、先行手摺10の上桟12の位置は、床付き布枠9(図3参照)から90cm以上に規定されている。また、一般的な型枠支保工において、支柱部材3の中央部の連結金具4が床付き布枠9(図3参照)から87cmの高さに固定される場合がある。この型枠支保工において、先行手摺10の上桟12を床付き布枠9から90cm(上記規定の下限値)の位置に取り付ける場合、上桟12と支柱部材3の中央部の連結金具4の高さの差は3cmになる。このように、型枠支保工のタイプによっては、先行手摺10の上桟12と支柱部材3の中央部の連結金具4とが近接する場合がある(例えば、図8参照)。ここで、図6に示したように、先行手摺10の手摺支柱11の上端部の上桟ロック金具14は、支柱部材3側に向かってに突出するように設けられているので、支柱部材3を設置または取り外す際に、支柱部材3の中央部の連結金具4が先行手摺10の上桟ロック金具14に接触しないようにする必要がある。このような障害により、型枠支保工の組み立て時および解体時の作業効率が低下する。
【0019】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、先行手摺工法を用いた型枠支保工の組み立て時および解体時に、作業者の安全性を確保しつつ作業効率を向上させることができる手摺支柱およびその手摺支柱を備えた先行手摺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記のような問題点を解決するために、次の(a)〜(c)に示すとおり、検討を重ねた。
【0021】
(a)先行手摺工法を用いたくさび緊結式型枠支保工(以下、型枠支保工と略記する。)の組み立て時および解体時において、作業者の作業効率を向上させるためには、支柱部材を設置または取り外す際に先行手摺の上桟ロック金具が障害にならなければよい。そこで、本発明者らは、支柱部材を設置または取り外す際に上桟ロック金具が障害とならないようにするため、先行手摺の上桟ロック金具を型枠支保工の支柱部材から離間させることを試みた。
【0022】
図10は、先行手摺の上桟ロック金具を型枠支保工の支柱部材から離間させた構成の一例を示す左側面図であり、図11は、図10のB−B線断面図である。なお、説明を簡略化するために、図11には、図10の水平材2および取付金具16は示していない。本例では、上桟ロック金具14の先端部と連結金具4の連結部4aとの間に隙間が形成されるように、先行手摺10が取り付けられている。この場合、支柱部材3の設置時に上桟ロック金具14が障害とならないので、支柱部材3の設置作業の効率が向上する。
【0023】
しかしながら、本例では、上桟ロック金具14を連結金具4から離間させるために先行手摺10自体を型枠支保工から外側に大きく離間させている。そのため、支柱部材3の中心と中桟13(上桟12)との間の間隔Dが大きくなり、例えば、10cm程度になる場合がある。この場合、図12に示すように、床付き布枠9(図3参照)と先行手摺10(特に、中桟13)との間に大きな空間が形成され、作業者がその空間から落下するおそれがある。
【0024】
(b)そこで、本発明者らは、先行手摺10自体を型枠支保工から外側に大きく離間させることなく、上桟ロック金具14を連結金具4から離間させることを試みた。図13は、先行手摺10自体を型枠支保工から外側に大きく離間させることなく、上桟ロック金具14を連結金具4から離間させた構成の一例を示す平面図である。本例では、先行手摺10側に向かって突出している連結部4aの横側に上桟ロック金具14をずらして配置することにより、支柱部材3の設置時に上桟ロック金具14が障害になることを防止しつつ、上桟12(中桟13(図8参照))と支柱部材3と間の間隔Dを小さくしている。
【0025】
しかしながら、本例においても、先行手摺10と支柱部材3(型枠支保工)との間の間隔を十分に小さくすることはできない。すなわち、図13に示すように、上桟12は、円筒部12aおよびその円筒部12aの端部に形成される板状部12b(上桟ロック金具14に固定される部分。)からなるが、円筒部12aが連結部4aに近づきすぎると、円筒部12aが支柱部材3を設置する際の障害となる。そのため、円筒部12aを連結部4aから適度に離間させなければならず、先行手摺10と支柱部材3との間の間隔を十分に小さくすることができない。それにより、床付き布枠9(図3参照)と先行手摺10(特に、中桟13)との間に大きな空間が形成され、作業者がその空間から落下するおそれがある。
【0026】
(c)この問題を解決するために、本発明者らは、先行手摺10自体を型枠支保工から外側に大きく離間させることなく、上桟ロック金具14および上桟12の円筒部12aを連結金具4から離間させることについても試みた。図14は、先行手摺10自体を型枠支保工から外側に大きく離間させることなく、上桟ロック金具14および上桟12の円筒部12aを連結金具4から離間させた構成の一例を示す平面図である。本例では、手摺支柱11に2つの上桟ロック金具14を取り付けている。そして、それら2つの上桟ロック金具14をそれぞれ連結部4aの横側に配置し、各上桟ロック金具14に上桟12をそれぞれ固定している。この場合、円筒部12aを連結部4aから十分に離間させることができるので、先行手摺10と支柱部材3(型枠支保工)との間の間隔を十分に小さくすることができる。しかしながら、本例においては、1つの手摺支柱11に対して2つの上桟ロック金具14を設ける必要があり、先行手摺10のコストが増加するという問題が生じる。
【0027】
上記の検討結果を踏まえて、本発明者らは、次の(d)〜(g)に示す通り、先行手摺および手摺支柱の構成について有用な知見を得た。
【0028】
(d)先行手摺工法を用いた型枠支保工の組み立て時および解体時において、1つの手摺支柱に2つの上桟ロック金具を設けることなく、先行手摺の上桟および上桟ロック金具が作業の障害とならないようにするためには、上桟および上桟ロック金具自体を支柱部材の連結金具から十分に離間させればよい。
【0029】
(e)一方、作業者の安全性を確保するためには、型枠支保工の床付き布枠と中桟との間に大きな空間ができることを防止しなければならない。そのためには、中桟を型枠支保工に近接した位置に配置すればよい。
【0030】
(f)すなわち、コストの増加防止および作業者の安全性を確保しつつ作業効率を向上させるためには、上桟ロック金具を型枠支保工から離間させつつ中桟ロック金具を型枠支保工に近接した位置に設ければよい。そのためには、手摺支柱を型枠支保工に設置した際に、上桟ロック金具が中桟ロック金具よりも型枠支保工から外側に離れるように上桟ロック金具の位置と中桟ロック金具の位置を水平方向にずらしておけばよい。
【0031】
(g)上桟ロック金具と中桟ロック金具とを水平方向にずらすためには、手摺支柱の一部または全部を傾斜させればよい。
【0032】
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであって、その要旨は下記の(1)〜(3)の手摺支柱並びに(4)および(5)の先行手摺にある。以下、総称して、本発明という。
【0033】
(1)連結金具を有する支柱部材とその連結金具に楔により連結される水平材とからなる型枠支保工に用いられる先行手摺の手摺支柱であって、上桟を取り付けるための上桟ロック金具と、中桟を取り付けるための中桟ロック金具とを有し、手摺支柱を型枠支保工に設置した際に、上桟ロック金具が中桟ロック金具よりも型枠支保工から外側に離れるように上桟ロック金具と中桟ロック金具とが水平方向にずれて配置されることを特徴とする手摺支柱。
【0034】
(2)上部側に形成され鉛直方向に対して傾斜する傾斜部と、下部側に形成され鉛直方向に延びる鉛直部とを有することを特徴とする上記(1)に記載の手摺支柱。
【0035】
(3)手摺支柱を傾斜させた状態で型枠支保工の支柱部材に取り付けることができる取付金具を有することを特徴とする上記(1)に記載の手摺支柱。
【0036】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載の手摺支柱を備えてなることを特徴とする先行手摺。
【0037】
(5)連結金具を有する支柱部材とその連結金具に楔により連結される水平材とからなる型枠支保工に用いられる先行手摺であって、複数本の手摺支柱と、それらの手摺支柱を連結する複数本の上桟および中桟とからなり、先行手摺を型枠支保工に設置した際に、上桟が中桟よりも型枠支保工から外側に離れるように上桟と中桟とが水平方向にずれて配置されることを特徴とする先行手摺。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、先行手摺工法を用いた型枠支保工の組み立ておよび解体において、コストの増加防止および作業者の安全性を確保しつつ作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来のくさび緊結式型枠支保工の一例を示す正面図である。
【図2】図1の型枠支保工の右側面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】先行手摺工法を用いた型枠支保工の組立手順の一例を示す図である。
【図5】先行手摺工法を用いた型枠支保工の組立手順の一例を示す図である。
【図6】先行手摺工法を用いた型枠支保工の組立手順の一例を示す図である。
【図7】先行手摺工法を用いた型枠支保工の組立手順の一例を示す図である。
【図8】先行手摺工法を用いた型枠支保工の組立手順の一例を示す図である。
【図9】従来の先行手摺の他の例を示す図である。
【図10】先行手摺の上桟ロック金具を型枠支保工の支柱部材から離間させた構成の一例を示す左側面図である。
【図11】図10のB−B線断面図である。
【図12】図10および図11の先行手摺の問題点を説明するための図である。
【図13】先行手摺自体を型枠支保工から外側に大きく離間させることなく、上桟ロック金具を連結金具から離間させた構成の一例を示す平面図である。
【図14】先行手摺自体を型枠支保工から外側に大きく離間させることなく、上桟ロック金具および上桟の円筒部を連結金具から離間させた構成の一例を示す平面図である。
【図15】本発明に係る先行手摺の使用状態の一例を示す図である。
【図16】図15の先行手摺の手摺支柱を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
【図17】図15のC−C線断面図である。
【図18】取付金具の内部構造を示す断面図である。
【図19】(a)は図17のD−D線断面図であり、(b)は図17のE−E線断面図である。
【図20】本発明に係る先行手摺の設置方法の一例を説明するための図である。
【図21】本発明に係る先行手摺の設置方法の一例を説明するための図である。
【図22】本発明に係る先行手摺の設置方法の一例を説明するための図である。
【図23】本発明に係る手摺支柱の他の例を示す右側面図である。
【図24】本発明に係る手摺支柱のさらに他の例を示す左側面図である。
【図25】本発明に係る手摺支柱のさらに他の例を示す図である。
【図26】本発明に係る先行手摺を短尺の水平材に対して平行に設置した場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態に係る先行手摺について説明する。
【0041】
1.先行手摺の構成
図15は、本発明に係る先行手摺の使用状態の一例を示す図である。なお、図15には、先行手摺20の背面側が示されている。図16は、図15の先行手摺20の手摺支柱を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図である。また、図17は、図15のC−C線断面図である。
【0042】
図15に示すように、本例に係る先行手摺20は、手摺支柱21、上桟12および中桟13からなる。この先行手摺20は、図5〜図8で説明した従来の先行手摺10と同様にくさび緊結式型枠支保工の設置作業において用いられる。図16および図17に示すように、手摺支柱21の上部側は、背面側に向かって傾斜している。以下、手摺支柱21の背面側に傾斜する部分を傾斜部21aとし、それ以外の鉛直方向に延びる部分を鉛直部21bとする。傾斜部21aの鉛直方向に対する傾斜角度は、5度〜15度であることが好ましい。また、上桟ロック金具22の先端と中桟ロック金具23の先端との間の水平方向における間隔D1(図16参照)は、3cm〜10cmであることが好ましい。なお、傾斜部21aと鉛直部21bとの境界が特許請求の範囲の屈曲部に相当する。
【0043】
図16および図17に示すように、鉛直部21bの中桟ロック金具23よりも下方には板状の取付金具24が固定されている。取付金具24の下部には、2つの凹部24aが形成されている。鉛直部21bの下端部には連結板25を介して取付金具26が固定されている。
【0044】
図18は、取付金具26の内部構造を示す断面図である。図18に示すように、取付金具26は、円筒状の本体部26aおよびその本体部26a内に設けられる板バネ26bを有する。取付金具26の側面には、貫通孔が形成されており、その貫通孔内にそれぞれ抜け止めピン26cが水平方向に摺動可能に挿通されている。各抜け止めピン26cの一端は、本体部26aの外側に突出しており、他端は、板バネ26bの側面に固定されている。板バネ26bは、抜け止めピン26cを外側に向かって付勢している。
【0045】
図17に示すように、手摺支柱21は、取付金具24および取付金具26により支柱部材3に取り付けられている。具体的には、支柱部材3の中央部の連結金具4の連結部4aに取付金具26の下端側を挿通し、支柱部材3の上端部の連結金具4の連結部4aに取付金具24を連結させることにより、手摺支柱21を支柱部材3に取り付けている。本例においては、取付金具24に凹部24aが形成されており、凹部24aに連結部4aを嵌合させることができる。この凹部24aがズレ止めの役割を担うので、手摺支柱21を安定して取り付けることが可能となる。また、取付金具26の下端側には抜け止めピン26cが設けられているので、誤った作業により手摺支柱21が連結部4aから引き抜かれることを防止することができる。
【0046】
図19(a)は図17のD−D線断面図であり、図19(b)は図17のE−E線断面図である。図17および図19に示すように、傾斜部21aの上端部に上桟ロック金具22が固定され、鉛直部21bの上端部に中桟ロック金具23が固定されている。図17および図19(a)に示すように、上桟12は、上桟ロック金具22によって手摺支柱21に取り付けられている。また、図17および図19(b)に示すように、中桟13は、中桟ロック金具23によって手摺支柱21に取り付けられている。なお、中桟13も上桟12と同様に、円筒部13aおよび板状部13bからなる。
【0047】
図19(a)に示すように、上桟ロック金具22は、平面視において、先行手摺20側に向かって突出する連結部4aの横側に位置している。また、図19(b)に示すように、中桟ロック金具23は支柱部材3の横側に位置している。なお、支柱部材3の中心と上桟12の円筒部12aとの間の水平方向における間隔D2(図19(a)参照)は、例えば、4cm〜15cmであることが好ましい。また、支柱部材3の中心と中桟13の円筒部13aとの間の水平方向における間隔D3(図19(b)参照)は、例えば、1cm〜5cmであることが好ましい。
【0048】
図20〜図22は、本発明に係る先行手摺の設置方法の一例を説明するための図である。図20に示すように、先行手摺を設置する際には、まず、手摺支柱21を支柱部材3に取り付ける。次に、図21に示すように、上桟12の一端および中桟13の一端をそれぞれ手摺支柱21に取り付ける。その後、さらに別の手摺支柱21を用意し、その手摺支柱21に上桟12の他端および中桟13の他端をそれぞれ取り付けるとともに、その手摺支柱21を他の支柱部材3に取り付ける。これにより、1スパン分(長尺の水平材2の1本分に対応する長さ)の先行手摺20が完成する。この設置手順を繰り返すことにより、複数のスパンにわたって先行手摺20を構成することができる。
【0049】
2.効果
図17に示したように、本発明に係る先行手摺20の手摺支柱21は、鉛直方向に平行に設けられる鉛直部21bと、鉛直方向に対して傾斜する傾斜部21aからなる。そして、鉛直部21bに中桟ロック金具23を固定し、傾斜部21aに上桟ロック金具22を固定することにより、中桟ロック金具23と上桟ロック金具22とを水平方向にずらして配置している。これにより、中桟ロック金具23を支柱部材3に近接する位置に配置しつつ、上桟ロック金具22を連結金具4から十分に離間させることができる。この場合、中桟13と床付き布枠との間に大きな空間が形成されることを防止することができるので、作業者の安全性を十分に確保することができる。また、上桟ロック金具22を連結金具4から十分に離間させることができるので、支柱部材3の設置または取り外し時に上桟ロック金具22が障害とならず、作業効率を向上させることができる。また、手摺支柱21に2つの上桟ロック金具22を設ける必要がないので、コスト増加を防止できる。
【0050】
3.他の例
上記においては、手摺支柱21が傾斜部21aおよび鉛直部21bからなる例について説明したが、手摺支柱21の構成は上記の例に限定されず、中桟ロック金具23を支柱部材3に近接する位置に配置しつつ、上桟ロック金具22を連結金具4から十分に離間させることができる構成であればよい。図23および図24に手摺支柱21の他の例を示す。なお、図23および図24は、手摺支柱21の左側面図である。
【0051】
図23および図24に示す手摺支柱21が図16に示した手摺支柱21と異なるのは以下の点である。すなわち、図23に示す手摺支柱21においては、傾斜部21aの上端にさらに鉛直部21cが設けられ、その鉛直部21cに上桟ロック金具22が固定されている。また、図24に示す手摺支柱21は、鉛直方向に対して傾斜する傾斜部21dからなる。そして、鉛直部21dの上端部に上桟ロック金具22が固定され、上桟ロック金具22よりも下方に中桟ロック金具23が固定されている。また、傾斜部21dの中桟ロック金具23よりも下方に取付金具24が固定され、傾斜部21dの下端に連結板25および取付金具26が固定されている。取付金具24,26は、傾斜部21dを鉛直方向に対して傾斜させた状態で手摺支柱21を支柱部材3に取り付けることができる。これら図23および図24のいずれの手摺支柱21においても、上桟ロック金具22の先端と中桟ロック金具23の先端との間に間隔D1を確保することができるので、中桟ロック金具23を支柱部材3に近接する位置に配置しつつ、上桟ロック金具22を連結金具4から十分に離間させることができる。
【0052】
また、上記においては、円筒状の取付金具26(図16参照)を連結部4a(図16参照)に挿通させることにより鉛直部21b(図16参照)の下端部を支柱部材3(図16参照)に連結する場合について説明したが、他の構成によって鉛直部21bの下端部を支柱部材3に連結してもよい。例えば、図25に示すように、クランプ27によって鉛直部21bの下端部を支柱部材3に連結してもよい。同様に、傾斜部21d(図24参照)の下端部をクランプによって支柱部材3に連結してもよい。
【0053】
また、上記においては、先行手摺20を長尺の水平材2に対して平行に設置する場合について説明したが、先行手摺20を短尺の水平材2に対して平行に設置することもできる。図26は、先行手摺20を短尺の水平材2に対して平行に設置した場合の一例を示す図である。図26に示すように、先行手摺20を短尺の水平材2に対して平行に設置する場合には、例えば、型枠支保工の2スパン分(短尺の2本の水平材2に対応する長さ)に対して1単位の先行手摺20を設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、先行手摺工法を用いた型枠支保工の組み立ておよび解体において、コストの増加防止および作業者の安全性を確保しつつ作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 支柱
2 水平材
2a 楔
3 支柱部材
4 連結金具
4a 連結部
5 ジャッキベース
6 大引受ジャッキ
7 大引材
8 根太材
9 床付き布枠
10 先行手摺
10a 先行手摺
11 手摺支柱
12 上桟
12a 円筒部
12b 板状部
13 中桟
13a 円筒部
13b 板状部
14 上桟ロック金具
15 中桟ロック金具
16 取付金具
17 取付金具
20 先行手摺
21 手摺支柱
21a 傾斜部
21b 鉛直部
21c 鉛直部
21d 傾斜部
22 上桟ロック金具
23 中桟ロック金具
24 取付金具
24a 凹部
25 連結板
26 取付金具
26a 本体部
26b 板バネ
26c 抜け止めピン
27 クランプ
100 型枠支保工
101 コンクリート構造物(スラブ)
102 型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結金具を有する支柱部材と前記連結金具に楔により連結される水平材とからなる型枠支保工に用いられる先行手摺の手摺支柱であって、上桟を取り付けるための上桟ロック金具と、中桟を取り付けるための中桟ロック金具とを有し、手摺支柱を型枠支保工に設置した際に、上桟ロック金具が中桟ロック金具よりも型枠支保工から外側に離れるように上桟ロック金具と中桟ロック金具とが水平方向にずれて配置されることを特徴とする手摺支柱。
【請求項2】
上部側に形成され鉛直方向に対して傾斜する傾斜部と、下部側に形成され鉛直方向に延びる鉛直部とを有することを特徴とする請求項1に記載の手摺支柱。
【請求項3】
手摺支柱を傾斜させた状態で型枠支保工の支柱部材に取り付けることができる取付金具を有することを特徴とする請求項1に記載の手摺支柱。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の手摺支柱を備えてなることを特徴とする先行手摺。
【請求項5】
連結金具を有する支柱部材と前記連結金具に楔により連結される水平材とからなる型枠支保工に用いられる先行手摺であって、複数本の手摺支柱と、それらの手摺支柱を連結する複数本の上桟および中桟とからなり、先行手摺を型枠支保工に設置した際に、上桟が中桟よりも型枠支保工から外側に離れるように上桟と中桟とが水平方向にずれて配置されることを特徴とする先行手摺。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2011−47119(P2011−47119A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194106(P2009−194106)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)