説明

手書きデータ管理システム及び手書きデータ管理プログラム並びに手書きデータ管理方法

【課題】手書きした文字や図形、絵などを、簡単な構成で適切にグループ化する。
【解決手段】入力装置と手書きデータ管理装置とで構成される手書きデータ管理システムにおいて、入力装置は、自身の状態を検出し、状態情報を前記手書きデータ管理装置に送信する手段を備え、手書きデータ管理装置は、画面上の入力装置の軌跡から基本図形データを抽出する第1手段と、状態情報に基づいて基本図形データの切れ目を判別し、予め記憶したテーブルを参照して、切れ目のレベルを決定する第2手段と、切れ目のレベルに基づいて、複数の基本図形データをグループ化し、当該基本図形データの上位の階層にグループデータとして登録すると共に、切れ目のレベルに基づいて、順次、複数のグループデータを更にグループ化し、当該グループデータの上位の階層に上位のグループデータとして登録する第3手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手書きデータ管理システム及び手書きデータ管理プログラム並びに手書きデータ管理方法に関し、特に、手書きした文字や図形、絵などをグループ化して管理する手書きデータ管理システム及び手書きデータ管理プログラム並びに手書きデータ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペンとタッチパネル画面とを備えたペンタブレットが普及しており、デザインや資料の作成などに利用されている。このペンタブレットでは、タッチパネル画面上でペンを動かすと、ペンの軌跡がタッチパネル画面上に表示され、描画した文字や図形、絵などをデータとして記憶することができ、このデータを再利用することにより、デザインや資料を効率的に作成することができる。
【0003】
ここで、文字や図形、絵などは複数の線の組み合わせで形成されるため、複数の線をグループ化して登録する必要があり、グループ化の手法に関して様々な提案がされている。例えば、下記特許文献1には、手書入力情報を、該手書入力情報に付与される識別情報に基づき、グループ化し1つの表示情報グループとする入力表示装置が開示されている。また、下記特許文献2には、筆跡データを、文字を構成する筆跡データを示す文字グループと、図形を構成する筆跡データを示す図形グループとに分類する分類手段をもつ手書きデータ編集装置が開示されている。
【0004】
また、描画した文字や図形を認識する手法に関しても様々な提案がされている。例えば、下記特許文献3には、筆記者の指の圧力変化を検知する検知手段と、圧力変化を示す出力を得て単位波形を作成するとともに、単位波形の波形特性を分析し、予め学習され記憶された当該筆記者の文字、数字、図形、記号の波形特性と比較照合することにより、筆記者によって記入された文字、数字、図形、記号を認識する解析手段、を備えたペングリップ式入力装置が開示されている。また、下記特許文献4には、手書き文字の文字認識において、ペンがタブレット面を離れている回数と位置ベクトル情報を特徴データとして抽出する認識方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−187218号公報
【特許文献2】特開平9−311855号公報
【特許文献3】特開平6−95800号公報
【特許文献4】特開平4−323789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、手書きした文字や図形、絵などをグループ化するためには、グループ化したいものを選択し、グループ化の設定を手動で行わなければならず、操作が煩雑になるという問題があった。この問題に対して、特許文献1では、時間経過の区切を識別情報とすることが記載されているが、この手法でも時間経過の区切は操作者が行わなければならないため、やはり操作は煩雑になる。
【0007】
また、従来の技術では、文字や図形、絵を操作者の意図に沿って適切にグループ化することができないという問題もあった。この問題に対して、特許文献2では、ストロークの長さと、当該ストロークに外接する矩形の長辺の長さとが、両方とも所定のしきい値より大きいものを図形のストロークとし、それ以外のストロークを文字のストロークと識別することが記載されているが、この手法では、図形を分類してグループ化することはできない。また、特許文献3、4では、予め登録された文字や数字などを認識することは可能であるが、登録されていない図形や絵は認識することはできないため、この技術を利用したとしても、様々な形状の図形や絵を分類してグループ化することはできないし、文字や数字などを認識するためには文字認識エンジンが必要になり、システム構成が複雑になる。
【0008】
また、複数の構成要素からなる図形や絵を作成してグループ化した場合、最終形態の図形や絵は再利用可能であるが、個々の構成要素の図形や絵は再利用することができず、以前に作成した図形や絵を利用して効率的にデザインや資料を作成することができないという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、手書きした文字や図形、絵などを、簡単な構成で適切にグループ化することができる手書きデータ管理システム及び手書きデータ管理プログラム並びに手書きデータ管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、ペン型の入力装置と、前記入力装置により描画される画面を備える手書きデータ管理装置と、で構成される手書きデータ管理システムにおいて、前記入力装置は、当該入力装置の状態を検出し、状態情報を前記手書きデータ管理装置に送信する手段を備え、前記手書きデータ管理装置は、前記画面上の前記入力装置の軌跡から基本図形データを抽出する第1手段と、前記状態情報に基づいて前記基本図形データの切れ目を判別し、予め記憶したテーブルを参照して、前記切れ目のレベルを決定する第2手段と、前記切れ目のレベルに基づいて、複数の前記基本図形データをグループ化し、当該基本図形データの上位の階層にグループデータとして登録すると共に、前記切れ目のレベルに基づいて、順次、複数の前記グループデータを更にグループ化し、当該グループデータの上位の階層に上位のグループデータとして登録する第3手段と、を備えるものである。
【0011】
また、本発明は、ペン型の入力装置により描画される画面を備える装置で動作する手書きデータ管理プログラムであって、前記装置を、前記画面上の前記入力装置の軌跡から基本図形データを抽出する第1手段、前記入力装置から送信される当該入力装置の状態情報に基づいて前記基本図形データの切れ目を判別し、予め記憶したテーブルを参照して、前記切れ目のレベルを決定する第2手段、前記切れ目のレベルに基づいて、複数の前記基本図形データをグループ化し、当該基本図形データの上位の階層にグループデータとして登録すると共に、前記切れ目のレベルに基づいて、順次、複数の前記グループデータを更にグループ化し、当該グループデータの上位の階層に上位のグループデータとして登録する第3手段、として機能させるものである。
【0012】
また、本発明は、ペン型の入力装置と、前記入力装置により描画される画面を備える手書きデータ管理装置と、で構成されるシステムにおける手書きデータ管理方法であって、前記入力装置を用いて前記手書きデータ管理装置の前記画面に描画する第1ステップと、前記入力装置が自身の状態を検出し、状態情報を前記手書きデータ管理装置に送信する第2ステップと、前記手書きデータ管理装置が、前記画面上の前記入力装置の軌跡から基本図形データを抽出すると共に、前記入力装置から受信した前記状態情報に基づいて前記基本図形データの切れ目を判別し、予め記憶したテーブルを参照して、前記切れ目のレベルを決定する第3ステップと、前記手書きデータ管理装置が、前記切れ目のレベルに基づいて、複数の前記基本図形データをグループ化し、当該基本図形データの上位の階層にグループデータとして登録すると共に、前記切れ目のレベルに基づいて、順次、複数の前記グループデータを更にグループ化し、当該グループデータの上位の階層に上位のグループデータとして登録する第4ステップと、を実行するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の手書きデータ管理システム及び手書きデータ管理プログラム並びに手書きデータ管理方法によれば、手書きした文字や図形、絵などを、簡単な構成で適切にグループ化することができる。
【0014】
その理由は、手書きデータ管理装置では、入力装置が離れている時間や入力装置を握る圧力、入力装置の角度などに基づいて描画の切れ目を判別し、その切れ目のレベルに基づいて、自動的に文字や図形、絵などを階層構造でグループ化して登録するからである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る手書きデータ管理システムの構成を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る手書きデータ管理装置の構成を示す制御ブロック図である。
【図3】本発明の一実施例に係る入力手段(ペン)の構成を示す制御ブロック図である。
【図4】階層化されたグループ構造の一例を示す図である。
【図5】グループデータの構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施例に係るグループデータの登録手順を示すフローチャート図である。
【図7】切れ目条件テーブルの一例を示す図である。
【図8】切れ目レベルに基づいてグループ化する手法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
背景技術で示したように、手書きした文字や図形、絵などを利用しながらデザインや資料を作成することが行われているが、従来の手法では、文字や図形、絵などをグループ化するための操作が煩雑であり、操作者の意図に沿って適切にグループ化することができず、個々の構成要素の図形や絵を再利用することができないなどの問題があった。
【0017】
そこで、本発明の一実施の形態では、複雑な操作を行うことなく、文字や図形、絵などを操作者の意図に沿って適切にグループ化できるようにするために、入力装置が離れている時間や入力装置を握る圧力、入力装置の角度などの情報を利用し、これらの情報に基づいて描画の切れ目を判別する。そして、予め登録したテーブルを参照して切れ目のレベルを決定し、この切れ目のレベルに基づいて、自動的に文字や図形、絵などをグループ化する。
【0018】
また、個々の構成要素の図形や絵を再利用できるようにするために、切れ目のレベルに基づいて、線レベルや記号レベル、オブジェクトレベル、グループレベル等の複数のレベルでグループ化し、各レベルのグループデータを階層構造で登録する。
【実施例】
【0019】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係る手書きデータ管理システム及び手書きデータ管理プログラム並びに手書きデータ管理方法について、図1乃至図8を参照して説明する。図1は、本実施例の手書きデータ管理システムの構成を模式的に示す図であり、図2は、手書きデータ管理装置の構成を示す制御ブロック図、図3は、入力装置の構成を示す制御ブロック図である。また、図4は、階層化されたグループ構造の一例を示す図であり、図5は、グループデータの構造を示す図である。また、図6は、グループデータの登録手順を示すフローチャート図であり、図7は、切れ目条件テーブルの一例を示す図、図8は、グループ化の手法を模式的に示す図である。
【0020】
図1に示すように、本実施例の手書きデータ管理システム10は、手書きした文字や図形、絵などのデータ(以下、手書きデータと呼ぶ。)をグループ化して登録する手書きデータ管理装置20と、文字や図形、絵などを書き込むための入力装置30などで構成される。以下、各装置について詳細に説明する。
【0021】
[手書きデータ管理装置]
図2に示すように、手書きデータ管理装置20は、入力装置30による文字や図形、絵などの描画を受け付ける操作部23と、入力された文字や図形、絵などを表示する表示部24と、これらを制御すると共に、手書きデータを管理する制御部とを備える。
【0022】
制御部は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理部21と、RAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部22と、で構成される。また、演算処理部21は、通信制御モジュール21a、入力装置情報処理部21b、切れ目判別部21c、グループデータ管理部21d、座標取得部21e、入力処理部21f、手書き描画部21g、絵データ抽出部21h、絵データ管理部21i、表示処理部21jなどで構成され、これらをハードウェア又はソフトウェアとして実行する。
【0023】
通信制御モジュール21aは、入力装置30と接続するためのインターフェースであり、有線通信や無線通信、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)などを利用して、入力装置30から各種情報を受信する。入力装置情報処理部21bは、通信制御モジュール21aを介して入力装置30から取得した状態情報(後述する入力OFF時間や距離、圧力、角度、撮像画像など)を処理(情報の変化を判断)し、切れ目の判別が必要となったときに上記情報を切れ目判別部21cに送信する。切れ目判別部21cは、予め記憶したテーブル(後述する切れ目条件テーブル)を参照し、入力装置30から取得した情報に基づいて切れ目レベルを判別し、グループデータ管理部21dに送信する。グループデータ管理部21dは、切れ目判別部21cの判別結果に基づいて、絵データ管理部21iから受け取った絵データを順次グループ化し、識別可能にして(例えばIDを付与して)、階層構造のグループデータとして記憶部22に登録する。
【0024】
座標取得部21eは、操作部23からの信号を受信して座標(x、y座標)を取得し、入力処理部21fに送信する。入力処理部21fは、座標取得部21eで取得した座標に対して入力エッジ処理(描画の始点/終点を特定する処理)を行い、手書き描画部21gに送信する。手書き描画部21gは、入力エッジ処理を行った座標に基づいて描画情報を生成し、絵データ抽出部21hに送信すると共に記憶部22(表示フレームバッファ)に記憶する。絵データ抽出部21hは、描画情報に基づいて文字や図形、絵の基本単位となるデータ(絵データと呼ぶ。)を抽出する。絵データ管理部21iは、絵データ抽出部21hで抽出した絵データを識別可能にして(例えばIDを付与して)、記憶部22に登録すると共に、グループデータ管理部21dに送信する。
【0025】
表示処理部21jは、記憶部22(表示フレームバッファ)から描画情報を取り出して表示部24に表示させる。
【0026】
操作部23は、表示部24上に透明電極が格子状に配置された感圧式のタッチパネルなどであり、手指やタッチペン等で押下された力点のXY座標を電圧値で検出し、検出された位置信号を操作信号として演算処理部21(座標取得部21e)に出力する。
【0027】
表示部24は、透明な液体の中で浮動する微粒子を電界によって移動させて表示を行う電子ペーパー(EPD:Electrophoretic Display)や液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(electroluminescence)表示装置等からなり、演算処理部21(表示処理部21j)の指示に従って描画情報を表示する。
【0028】
[入力装置]
図3に示すように、入力装置30は、ペン型の装置であり、ペン先SW33と、距離測定センサ34と、圧力センサ35と、角度センサ36と、CCD(Charge Coupled Devices)カメラ37と、これらを制御する制御部と、人物の顔の特徴情報を登録する人物判断用特徴DB38などを備える。
【0029】
制御部は、CPUなどの演算処理部31と、RAMやHDDなどの記憶部32と、で構成される。また、演算処理部31は、通信制御モジュール31a、SW入力処理部31b、入力OFF時間計測部31c、距離測定処理部31d、圧力検出処理部31e、角度検出処理部31f、人物認識処理部31gなどで構成され、これらをハードウェア又はソフトウェアとして実行する。
【0030】
通信制御モジュール31aは、手書きデータ管理装置20と接続するためのインターフェースであり、有線通信や無線通信、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)などを利用して、下記の各手段で取得した入力装置30の状態情報を手書きデータ管理装置20に送信する。SW入力処理部31bは、ペン先SW33からの信号に基づいて入力装置30が手書きデータ管理装置20に接触したかを判別する。入力OFF時間計測部31cは、SW入力処理部31bの判別結果に基づいて入力装置30が手書きデータ管理装置20に接触していない時間(入力OFF時間と呼ぶ。)を計測する。距離測定処理部31dは、距離測定センサ34からの信号を処理して距離を取得する。圧力検出処理部31eは、圧力センサ35からの信号を処理して圧力(入力装置30の握り圧)を取得する。角度検出処理部31fは、角度センサ36からの信号を処理して角度(入力装置30の傾斜角)を取得する。人物認識処理部31gは、人物判断用特徴DB38に登録されている特徴情報を参照して、CCDカメラ37からの撮像画像を処理して人物を認識する。
【0031】
ペン先SW33は、入力装置30の先端に設けられたスイッチであり、手書きデータ管理装置20に接触した時にON又はOFF信号をSW入力処理部31bに送信する。
【0032】
距離測定センサ34は、例えば、超音波発信器と超音波受信器などで構成され、超音波発信器から発信され、手書きデータ管理装置20で反射された超音波を超音波受信器で受信し、発信と受信の時間差から手書きデータ管理装置20との距離を測定し、距離に応じた信号を距離測定処理部31dに送信する。
【0033】
圧力センサ35は、入力装置30の手で握られる部分に配置された圧電素子などで構成され、入力装置30を握る圧力を検出し、圧力に応じた信号を圧力検出処理部31eに送信する。
【0034】
角度センサ36は、加速度センサとジャイロセンサなどで構成され、水平面に対する入力装置30の傾きを検出し、角度に応じた信号を角度検出処理部31fに送信する。
【0035】
CCDカメラ37は、入力装置30の根元(操作者側端部)に設けられた、各画素が2次元に配列されたCCDデバイスと各画素に蓄積された電荷を順次読み出す信号処理部などで構成され、撮像画像を人物認識処理部31gに送信する。
【0036】
なお、図1乃至図3は、本実施例の手書きデータ管理システム10の一例であり、その構成や制御は適宜変更可能である。例えば、本実施例では、入力装置30にペン先SW33と距離測定センサ34と圧力センサ35と角度センサ36とCCDカメラ37を設けたが、後述する切れ目の判別手法に応じて、いずれかを省略することもできるし、CCDカメラ37を手書きデータ管理装置20側に設けることもできる。
【0037】
次に、上記構成の手書きデータ管理システム10により登録されるデータの構造について説明する。
【0038】
図4は、登録されるデータの階層構造を模式的に示しており、各々、1本の線からなる3つの基本図形のデータ(絵データ)がグループ化され、絵データの上位に記号レベルのグループデータ(グループ1のデータ)が形成される。そして、複数の記号レベルのグループデータ(ここではグループ1及びグループ2のデータ)がグループ化され、記号レベルの上位にオブジェクトレベルのグループデータ(グループ10のデータ)が形成される。同様に、複数のオブジェクトレベルのグループデータ(ここではグループ10及びグループ20のデータ)がグループ化され、オブジェクトレベルの上位に単一グループレベルのグループデータ(グループ100のデータ)が形成される。同様に、複数の単一グループレベルのグループデータ(ここではグループ100及びグループ200のデータ)がグループ化され、単一グループレベルの上位に複合グループレベルのグループデータ(グループ1000のデータ)が形成される。なお、記号レベルやオブジェクトレベル、単一グループレベル、複合グループレベルなどは便宜上の分類であり、その名称や階層構造は適宜変更可能である。
【0039】
図5は、各階層のデータに記憶される情報を示しており、最下位のレベルの絵データには、データを識別するためのIDと、グループデータとして関連付けられているかを示すリンクフラグと、各点の座標データとが記述される。また、絵データよりも上位のレベル(記号レベルやオブジェクトレベル、単一グループレベル、複合グループレベル)のデータには、データを識別するためのIDと、グループデータとして関連付けられているかを示すリンクフラグと、下位のデータを指定するポインタとが記述される。
【0040】
図4及び図5のように階層構造でデータを登録するためには、線などの基本単位のデータ(絵データ)を認識し、その絵データをグループ化する必要があり、更に、グループ化した絵データを上位のレベルにグループ化する必要があるが、絵データの認識やグループ化に際して、その都度、操作者に設定を求めると操作が煩雑になる。そこで、本実施例では、入力装置30にペン先SW33や距離測定センサ34、圧力センサ35、角度センサ36、CCDカメラ37などを設け、これらの検出手段を用いて取得した情報を利用して文字や図形、絵の切れ目を判別し、予め記憶したテーブルを参照して切れ目のレベルを決定する。そして、切れ目のレベルに基づいて絵データをグループ化すると共に、順次、上位のレベルにグループ化する。
【0041】
以下、切れ目レベルに基づいてグループ化する手順について、図6のフローチャート図を参照して説明する。なお、以下の説明において、切れ目の判別条件として「距離×時間」、「圧力」、「角度」のいずれかが予め選択され、その選択結果及び切れ目の判別に利用するテーブルが手書きデータ管理装置20の記憶部22に予め登録されているものとする。
【0042】
ユーザが入力装置30を用いて描画を開始すると、手書きデータ管理装置20は、操作部23からの信号に基づいて入力装置30が接触した座標を取得し、入力エッジ処理を行って描画情報を生成し、その描画情報を表示部24に表示させると共に、絵データ抽出部21hが描画情報から絵データを抽出したら、絵データ管理部21iは、その絵データを識別可能にしてグループデータ管理部21dに送る。
【0043】
一方、入力装置30のペン先SW33や距離測定センサ34、圧力センサ35、角度センサ36、CCDカメラ37の出力信号は入力装置30の制御部で処理され、状態情報として手書きデータ管理装置20に送信される。手書きデータ管理装置20の入力装置情報処理部21bは、受信した状態情報が変化したかを判断し(S101)、状態情報が変化した場合(例えば、入力装置30が手書きデータ管理装置20から離れた場合、入力装置30の握り圧や傾斜角が変化した場合)は受信した状態情報を切れ目判別部21cに送る。なお、入力装置30から送信された状態情報が変化する時は、入力装置30の操作状態が変わった時であるため、絵データがグループデータ管理部21dに送るタイミングと一致する。
【0044】
次に、切れ目判別部21cは、切れ目を判別するための条件として「距離×時間」が選択されているかを判断し(S102)、「距離×時間」が選択されている場合は、例えば、図7(a)に示すようなテーブルを選択する(S103)。
【0045】
切れ目判別条件として「距離×時間」が選択されていない場合は、「圧力」が選択されているかを判断し(S104)、「圧力」が選択されている場合は、例えば、図7(b)に示すようなテーブルを選択する(S105)。
【0046】
切れ目判別条件として「圧力」が選択されていない場合は、「角度」が選択されているかを判断し(S106)、「角度」が選択されている場合は、例えば、図7(c)に示すようなテーブルを選択する(S107)。
【0047】
次に、切れ目判別部21cは、入力装置30から送信された情報と上記ステップで選択されたテーブルとに基づいて、切れ目レベルを決定する(S108)。
【0048】
具体的には、入力装置30から送信された状態情報が入力OFF時間計測部31cで計測した入力OFF時間と距離測定処理部31dで取得した距離とである場合は、入力OFF時間(秒)と距離(cm)とを乗算し、その値が図7(a)のテーブルのどの範囲に属するかに基づいて切れ目レベルを設定する。例えば、入力OFF時間が短く(例えば1秒)かつ入力装置30と手書きデータ管理装置20の距離が近い(例えば1cm)の場合は、絵を描いている状態から一瞬離れた状態であると思われることから切れ目レベルを「1」とする。一方、入力OFF時間が長くかつ距離が遠い場合は、考え込んでいる状態であると思われることから、入力OFF時間と距離とを乗算した値が予め定めた値(例えば60)以上の場合は切れ目レベルを「区切り」とする。
【0049】
また、入力装置30から送信された状態情報が圧力検出処理部31eで処理した圧力である場合は、その値が図7(b)のテーブルのどの範囲に属するかに基づいて切れ目レベルを設定する。例えば、入力装置30の握り圧が描画している時の値(電圧換算で5Vとする。)よりもやや小さい(例えば4.5V)場合は、絵を描いている状態から少し力を緩めた状態であると思われることから、切れ目レベルを「1」とする。一方、圧力が十分に小さい(例えば0V)場合は、入力装置30を握っていない状態であると思われることから、切れ目レベルを「区切り」とする。
【0050】
また、入力装置30から送信された状態情報が角度検出処理部31fで処理した角度である場合は、その値が図7(c)のテーブルのどの範囲に属するかに基づいて切れ目レベルを設定する。例えば、入力装置30の傾斜角が描画している時の傾き(60〜90度とする。)よりもやや小さい(例えば50〜60度)場合は、描画を少し休んでいる状態であると思われることから、切れ目レベルを「1」とする。一方、角度が十分に小さい(例えば0度)場合は、入力装置30を持っていない状態であると思われることから、切れ目レベルを「区切り」とする。
【0051】
なお、図7では、切れ目レベルを6段階に設定したが、段階数は任意であり、段階数を多くすれば、グループデータの階層数を多くすることができる。例えば、切れ目レベルをn段階にすればグループデータを最大でn階層で登録することができる。
【0052】
次に、グループデータ管理部21dは、絵データ管理部21iから送られた絵データ、若しくは、登録したグループデータを参照し、決定した切れ目レベルより1つ下位の切れ目レベルで分類され、かつ、より上位のグループにリンクされていないデータを集めて、1つのグループを作成し、グループデータを更新する(S109)。
【0053】
例えば、図8に示すように、絵レベルとして認識される3つの図形を描画した場合を例にして説明すると、1つ目及び2つ目の図形を描いた後、切れ目レベル「1」を検出した場合は、当該切れ目レベルより1つ下位の切れ目レベルはないため、グループ化は行わない。3つ目の図形を描いた後、切れ目レベル「2」を検出した場合は、切れ目レベルが「2」より1つ下位の切れ目レベル(すなわち切れ目レベル「1」)で分類されている図形があり、その図形はより上位のグループにリンクされていないため、3つの図形を集めて、グループデータ(記号レベルの三角の図形)を作成する。
【0054】
同様に、絵レベルとして認識される4つの図形で四角を描画した場合を例にして説明すると、1つ目〜3つ目の図形を描いた後、切れ目レベル「1」を検出した場合は、当該切れ目レベルより1つ下位の切れ目レベルはないため、グループ化は行わない。4つ目の図形を描いた後、切れ目レベル「2」を検出した場合は、切れ目レベルが「2」より1つ下位の切れ目レベル(すなわち切れ目レベル「1」)で分類されている図形があり、その図形はより上位のグループにリンクされていないため、4つの図形を集めて、グループデータ(記号レベルの四角の図形)を作成する。
【0055】
また、記号レベルとして認識される2つの図形を描画した後、切れ目レベル「3」を検出した場合は、切れ目レベルが「3」より1つ下位の切れ目レベル(すなわち切れ目レベル「2」)で分類されている2つの記号レベルの図形があり、その図形はより上位のグループにリンクされていないため、2つの記号レベルの図形を集めて、グループデータ(オブジェクトレベルの家の図形)を作成する。そして、この処理を同様に繰り返して、順次、単一グループレベルのグループデータ、複合グループレベルのグループデータを作成して、図4に示す階層構造のグループデータを作成する。
【0056】
また、必要に応じて、人物認識処理部31gは、人物判断用特徴DB38を参照し、入力装置30のCCDカメラ37で撮像した画像に基づいて人物を特定し、特定した人物が描画した図形のみをグループ化することもできる。
【0057】
このように、操作者は、予め、切れ目の判別条件として「距離×時間」、「圧力」、「角度」のいずれかを選択しておき、描画の切れ目で「距離×時間」、「圧力」、「角度」を変化させることにより、切れ目のレベルに応じた階層構造で手書きデータを登録することができるため、操作者は、グループ化する図形を選択したり、切れ目を設定する必要がなくなり、利便性を向上させることができる。また、本実施例は、予め記憶した特徴情報を利用して図形を認識する方法ではないため、任意の形状の図形や絵に対してもグループ化を行うことができる。更に、本実施例では、最終形態の手書きデータのみならず、各構成要素の手書きデータを登録するため、各構成要素の手書きデータも再利用することができ、デザインや資料の作成を容易にすることができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、その構成や制御は適宜変更可能である。
【0059】
例えば、上記実施例では、図形や絵を登録する場合について説明したが、文字を登録する場合にも同様に適用することができる。また、上記実施例では、切れ目の判別条件として「距離×時間」、「圧力」、「角度」を例示したが、筆圧や描画速度、描画サイズなどの他の条件を切れ目の判別条件として利用することもできるし、これらを任意に組み合わせて切れ目を判別することもできる。
【0060】
また、上記実施例では、入力装置30から送信される情報に基づいて切れ目レベルを判別したが、手書きデータ管理装置20の表示部24に切れ目レベルの入力スイッチを表示しておき、そのスイッチをタッチする形態に応じて切れ目レベルを設定(例えば、1回タッチしたら切れ目レベル1、2回タッチしたら切れ目レベル2に設定)することも可能であり、このような操作を行う場合でも、従来の手法よりも簡単かつ確実にグループ化を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ペン型の入力装置とタッチパネル画面を有する装置とを備えたシステムに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 手書きデータ管理システム
20 手書きデータ管理装置
21 演算処理部
21a 通信制御モジュール
21b 入力装置情報処理部
21c 切れ目判別部
21d グループデータ管理部
21e 座標取得部
21f 入力処理部
21g 手書き描画部
21h 絵データ抽出部
21i 絵データ管理部
21j 表示処理部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
30 入力装置
31 演算処理部
31a 通信制御モジュール
31b SW入力処理部
31c 入力OFF時間計測部
31d 距離測定処理部
31e 圧力検出処理部
31f 角度検出処理部
31g 人物認識処理部
32 記憶部
33 ペン先SW
34 距離測定センサ
35 圧力センサ
36 角度センサ
37 CCDカメラ
38 人物判定用特徴DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン型の入力装置と、前記入力装置により描画される画面を備える手書きデータ管理装置と、で構成される手書きデータ管理システムにおいて、
前記入力装置は、
当該入力装置の状態を検出し、状態情報を前記手書きデータ管理装置に送信する手段を備え、
前記手書きデータ管理装置は、
前記画面上の前記入力装置の軌跡から基本図形データを抽出する第1手段と、
前記状態情報に基づいて前記基本図形データの切れ目を判別し、予め記憶したテーブルを参照して、前記切れ目のレベルを決定する第2手段と、
前記切れ目のレベルに基づいて、複数の前記基本図形データをグループ化し、当該基本図形データの上位の階層にグループデータとして登録すると共に、前記切れ目のレベルに基づいて、順次、複数の前記グループデータを更にグループ化し、当該グループデータの上位の階層に上位のグループデータとして登録する第3手段と、を備える、ことを特徴とする手書きデータ管理システム。
【請求項2】
前記第3手段では、決定した前記切れ目のレベルより1つ下位の切れ目レベルで分類され、かつ、より上位のグループデータとして登録されていない前記基本図形データ又は前記グループデータをグループ化して登録する、ことを特徴とする請求項1に記載の手書きデータ管理システム。
【請求項3】
前記入力装置は、前記手書きデータ管理装置の前記画面との距離を測定する手段と、前記画面との接触を検出する手段と、を備え、前記状態情報として、前記入力装置と前記手書きデータ管理装置の前記画面との距離、及び、前記入力装置が前記手書きデータ管理装置に接触していない時間を送信し、
前記第2手段では、前記距離と前記時間とを乗算した値に応じて、前記切れ目のレベルを決定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の手書きデータ管理システム。
【請求項4】
前記入力装置は、操作者によって握られる圧力を測定する手段を備え、前記状態情報として、前記入力装置の握り圧を送信し、
前記第2手段では、前記握り圧に応じて、前記切れ目のレベルを決定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の手書きデータ管理システム。
【請求項5】
前記入力装置は、水平面に対する傾きを測定する手段を備え、前記状態情報として、前記入力装置の傾斜角を送信し、
前記第2手段では、前記傾斜角に応じて、前記切れ目のレベルを決定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の手書きデータ管理システム。
【請求項6】
ペン型の入力装置により描画される画面を備える装置で動作する手書きデータ管理プログラムであって、
前記装置を、
前記画面上の前記入力装置の軌跡から基本図形データを抽出する第1手段、
前記入力装置から送信される当該入力装置の状態情報に基づいて前記基本図形データの切れ目を判別し、予め記憶したテーブルを参照して、前記切れ目のレベルを決定する第2手段、
前記切れ目のレベルに基づいて、複数の前記基本図形データをグループ化し、当該基本図形データの上位の階層にグループデータとして登録すると共に、前記切れ目のレベルに基づいて、順次、複数の前記グループデータを更にグループ化し、当該グループデータの上位の階層に上位のグループデータとして登録する第3手段、として機能させる、ことを特徴とする手書きデータ管理プログラム。
【請求項7】
前記第3手段では、決定した前記切れ目のレベルより1つ下位の切れ目レベルで分類され、かつ、より上位のグループデータとして登録されていない前記基本図形データ又は前記グループデータをグループ化して登録する、ことを特徴とする請求項6に記載の手書きデータ管理プログラム。
【請求項8】
前記第2手段は、前記状態情報として、前記入力装置と前記手書きデータ管理装置の前記画面との距離、及び、前記入力装置が前記手書きデータ管理装置に接触していない時間を受信し、前記距離と前記時間とを乗算した値に応じて、前記切れ目のレベルを決定する、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の手書きデータ管理プログラム。
【請求項9】
前記第2手段は、前記状態情報として、前記入力装置の握り圧を受信し、前記握り圧に応じて、前記切れ目のレベルを決定する、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の手書きデータ管理プログラム。
【請求項10】
前記第2手段は、前記状態情報として、前記入力装置の傾斜角を受信し、前記傾斜角に応じて、前記切れ目のレベルを決定する、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の手書きデータ管理プログラム。
【請求項11】
ペン型の入力装置と、前記入力装置により描画される画面を備える手書きデータ管理装置と、で構成されるシステムにおける手書きデータ管理方法であって、
前記入力装置を用いて前記手書きデータ管理装置の前記画面に描画する第1ステップと、
前記入力装置が自身の状態を検出し、状態情報を前記手書きデータ管理装置に送信する第2ステップと、
前記手書きデータ管理装置が、前記画面上の前記入力装置の軌跡から基本図形データを抽出すると共に、前記入力装置から受信した前記状態情報に基づいて前記基本図形データの切れ目を判別し、予め記憶したテーブルを参照して、前記切れ目のレベルを決定する第3ステップと、
前記手書きデータ管理装置が、前記切れ目のレベルに基づいて、複数の前記基本図形データをグループ化し、当該基本図形データの上位の階層にグループデータとして登録すると共に、前記切れ目のレベルに基づいて、順次、複数の前記グループデータを更にグループ化し、当該グループデータの上位の階層に上位のグループデータとして登録する第4ステップと、を実行する、ことを特徴とする手書きデータ管理方法。
【請求項12】
前記第4ステップでは、決定した前記切れ目のレベルより1つ下位の切れ目レベルで分類され、かつ、より上位のグループデータとして登録されていない前記基本図形データ又は前記グループデータをグループ化して登録する、ことを特徴とする請求項11に記載の手書きデータ管理方法。
【請求項13】
前記入力装置は、前記手書きデータ管理装置の前記画面との距離を測定する手段と、前記画面との接触を検出する手段と、を備え、
前記第2ステップでは、前記状態情報として、前記入力装置と前記手書きデータ管理装置の前記画面との距離、及び、前記入力装置が前記手書きデータ管理装置に接触していない時間を送信し、
前記第3ステップでは、前記距離と前記時間とを乗算した値に応じて、前記切れ目のレベルを決定する、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の手書きデータ管理方法。
【請求項14】
前記入力装置は、操作者によって握られる圧力を測定する手段を備え、
前記第2ステップでは、前記状態情報として、前記入力装置の握り圧を送信し、
前記第3ステップでは、前記握り圧に応じて、前記切れ目のレベルを決定する、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の手書きデータ管理方法。
【請求項15】
前記入力装置は、水平面に対する傾きを測定する手段を備え、
前記第2ステップでは、前記状態情報として、前記入力装置の傾斜角を送信し、
前記第3ステップでは、前記傾斜角に応じて、前記切れ目のレベルを決定する、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の手書きデータ管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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