説明

手芸用工具

【課題】趣向に富んだ手芸品が初心者でも容易に作成できる手芸用工具を提供する。
【解決手段】持ちやすく、かつ回転しやすい径及び長さに形成された筒状の軸胴1aと、軸胴内に挿通された線状材よりなる巻き芯3と、軸胴の一端側に設けられ、かつ巻き芯を軸胴内より繰り出す繰り出し手段4と、軸胴の他端側に着脱自在に連結され、かつ巻き芯の端末側を収容する補助筒2とから構成したもので、長尺なテープ素材を巻き芯に巻き付けることにより、螺旋状に巻き癖が付いた長尺な手芸品が得られるため、趣向に富んだ手芸品や装飾品が初心者でも容易に作成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き芯にテープ状素材を巻き付けて手芸品を作成する際に使用する手芸用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の材料により形成されたテープ状素材を棒状物に巻き付けて花等の手芸品を作成する手芸は、クイリングと呼ばれて近年多くの人が趣味として楽しんでおり、初心者でも簡単に花等の手芸品が作成できるように、クイリングに使用する手芸用工具も提案されている(例えば特許文献1)。
前記特許文献1に記載の手芸用工具は、細長い円柱状の本体部の一端に、先端部に帯状紙を挟むための割り溝が形成された棒状の巻き付け体が突設された構成で、円筒状もしくは円盤状の補助具を巻き付け体に取り付け、この補助具をガイドにして巻き付け体に帯状紙を巻き付けることにより、渦状に巻き癖の付いた手芸品を作成するようにしたもので、手芸用工具の先端を指先で持って固定した状態で本体部を回転させることができるので、安定した巻き付け作業を行うことができる上、補助具を使用することにより、特に初心者でも巻き付けている帯状紙を平坦な状態に保持することができるので、使い勝手がよい等の効果がある。
【特許文献1】特開2004−131280(特許第3673801)号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし前記特許文献1に記載の手芸用工具では、次のような問題がある。
クイリングにより作成する手芸品には花や葉等、様々な種類があり、これら手芸品をいくつか組み合わせて花束等を作成したり、種々の装飾品を作成することが一般に行われている。
また花束や装飾品を作成するためには、予めテープ素材の色や幅等を変えて、色や大きさの異なる手芸品を作成し、これらを組み合わせることにより、より見栄えや装飾効果の高い作品なるように工夫している。
このため手芸用工具を使用して、よりバラエティに富んだ手芸品が作成できれば、さらに見栄えや装飾効果の高い手芸品を製作することができる。
【0004】
しかし前記特許文献1に記載の手芸用工具では、テープ状素材を巻き付ける巻き付け体の長さが予め決まっているため、例えば蔓のような長尺な螺旋状の手芸品を作成することができない。
このため見栄えや装飾効果の高い作品を製作しようとした場合、使用できる手芸品の種類に制限を受ける等の問題がある。
本発明はかかる問題を改善するためになされたもので、趣向に富んだ手芸品が初心者でも容易に作成できる手芸用工具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の手芸用工具は、巻き芯にテープ状素材を巻き付けて手芸品を作成する際に使用する手芸用工具であって、持ちやすく、かつ回転しやすい径及び長さに形成された筒状の軸胴と、軸胴内に挿通された線状材よりなる巻き芯と、軸胴の一端側に設けられ、かつ巻き芯を軸胴内より繰り出す繰り出し手段と、軸胴の他端側に着脱自在に連結され、かつ巻き芯の端末側を収容する補助筒とから構成したものである。
【0006】
前記構成により、長尺なテープ素材を巻き芯に巻き付けることにより、螺旋状に巻き癖が付いた長尺な手芸品が容易に得られるため、クイリングにより作成した花等に蔓を追加したり、花の周りを螺旋状の手芸品により囲んで装飾効果を高めることにより、見栄えのよい手芸品や装飾効果の高い装飾品が初心者でも容易に製作できると共に、長尺の手芸品を製作するため長さの長い巻き芯を使用しても、巻き芯の端末は補助筒内に収容されていて、軸胴を回転した際巻き芯の端末が連れ回りすることがないため、手芸が安全に行える。
また紙テープの長手方向と直交する方向に一側縁側から多数のスリットを形成したテープ素材を巻き芯に巻き付けることにより、リボン状の手芸品や樹木等の手芸品が容易に得られるなど、従来の手芸用工具では作成が困難な趣向に富んだ装飾効果の高い手芸品が何等熟練を必要とせずに短時間で容易に製作することできる。
【0007】
本発明の手芸用工具は、繰り出し手段を、補助筒に対し軸胴を前後にストロークすることにより巻き芯の把持及び解放を繰り返しながら、巻き芯を軸胴内より繰り出すチャックと、チャックが後退する際巻き芯が戻るのを阻止する戻り防止部材とから形成したものである。
【0008】
前記構成により、片手で軸胴をストロークさせながら、もう一方手で巻き芯にテープ素材を巻き付ける作業が行えるため、長尺な手芸品でも短時間で作成することができると共に、軸胴を回転して巻き芯にテープ素材を順次巻き付けていく際、チャックにより巻き芯が把持されていて軸胴と巻き芯が一体に回転するため、テープ素材を巻き芯に巻き付ける作業が安定した状態で行える。
【0009】
本発明の手芸用工具は、長さが異なる巻き芯及び補助筒を複数種類予め用意し、かつ作成する手芸品の長さの応じて巻き芯及び補助筒を選択的に工具本体に装着できるようにしたものである。
【0010】
前記構成により、長さの短い手芸品から長さの長い手芸品まで対応することができるため、汎用性が高い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の手芸用工具によれば、螺旋状に巻き癖が付いた長尺な手芸品が容易に得られるため、クイリングにより作成した花等に蔓を追加したり、花の周りを螺旋状の手芸品により囲んで装飾効果を高めることにより、見栄えのよい手芸品や装飾品が初心者でも容易に製作できると共に、長尺の手芸品を製作するため長さの長い巻き芯を使用しても、巻き芯の端末は補助筒内に収容されていて、軸胴を回転した際巻き芯の端末が連れ回りすることがないため、手芸が安全に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳述する。
図1は手芸用工具の側面図、図2は手芸用工具の一部を破断した拡大側面図、図3ないし図10は手芸用工具の作用説明図である。
図1及び図2に示す手芸用工具は、工具本体1と、工具本体1に連結して使用する補助筒2及び長尺な巻き芯3とからなる。
工具本体1は、手で持って回転しやすい外径及び長さの円筒体からなる軸胴1aを有していて、この軸胴1aの一端側に繰り出し手段4が設けられ、他端側に補助筒2が着脱自在に連結できるようになっている。
繰り出し手段4は、図2に示すように軸胴1aの一端に突設された小径部1bの外周に大径部側が螺着されたテーパ状の先端部材4aを有しており、先端部材4aの先端側には、巻き芯3の外径より僅かに大径な内径を有するガイド管4bと、ガイド管4bの後方に戻り防止部材4hが設けられていて、ガイド管4b及び戻り防止部材4h内に挿通された巻き芯3をチャック4cが繰り出すようになっている。
【0013】
チャック4cは、小径部1bの先端部に固着されたスリーブ4d内より前方へ出没自在な把持部4eと、把持部4eの後方へ突設された弾性杆4fとからなる。
把持部4eは、先端側が大径となるテーパ状に形成されていて、円周方向に複数分割されており、スリーブ4d内より押し出されると、弾性杆4fの弾性により拡開して、巻き芯3を解放するようになっており、弾性杆4fの後端部は押圧杆4gの一端に連結されている。
押圧杆4gは、巻き芯3が挿通可能な細管より形成されていて、軸胴1aの中心部に摺動自在に支承されており、コイルばねよりなる付勢手段5により軸胴1aの他端側方向へ付勢されている。
押圧杆4gの他端側は軸胴1aの他端部に達していて、軸胴1aの他端部内に摺動自在に設けられたノック部材5の大径側端面に当接されている。
【0014】
ノック部材5は、大経部5aと小径部5bより形成されていて、中心部に巻き芯3が通過する通孔5cが穿設されており、小径部5bの外周に連結部材2aを介して補助筒2の一端側が着脱自在に嵌合されている。
補助筒2は、軸胴1aとほぼ同じ外径の金属管、例えばアルミニウム管やステンレス管により形成されていて、使用する巻き芯3の長さと同じか、これより短く形成されている。
補助筒2の一端側に設けられた連結部材2aは、内径が補助筒2の内径と同じに形成されていて、一端側を補助筒2の一端側内面に形成された嵌合部2bに圧入した際、連結部材2aの内周面と補助筒2の内周面との間に段差が生じないようになっている。
【0015】
また連結部材2aの他端側は、内径がノック部材5の小径部5bの外径より僅かに大きく形成されていて、小径部5b外周面に着脱自在に嵌合できるようになっていると共に、補助筒2の一端側外周面と軸胴1aの両端側外周面には、軸胴1a及び補助筒2を指で回転しやすくするために、ゴム等の弾性体よりなる筒状の滑り止め部材6が嵌着されている。
一方巻き芯3はステンレス等の弾性を有する線条材により形成されており、外径は例えば0.9mm程度となっている。
また作成する手芸品8の長さに応じて長さが異なる巻き芯3が予め複数種類用意されており、補助筒2も巻き芯3の長さに応じて長さの異なるものが予め複数種類用意されている。
【0016】
次に前記構成された手芸用工具を使用して手芸品8を作成する際の作用を図3ないし図10を参照して説明する。
図4は例えば幅が2mm程度のテープ素材10を示すもので、予め任意な色に着色された例えば紙素材からなり、例えば図5に示すような螺旋状の手芸品8を作成する際に使用する。
手芸品8を作成するに当っては、作成したい手芸品8の長さに応じて巻き芯3及び補助筒2を選択し、巻き芯3の一端側を軸胴1aの中心部に、そして他端側を補助筒2内に挿通した状態で、軸胴1aの他端側に補助筒2を図1及び図2に示すように連結する。
次に図3に示すように右手の親指と人差し指で軸胴1aの他端部を把持し、残りの指と手の平で補助筒2の一端側を把持した状態で、親指と人差し指により軸胴1aを前後へストロークさせると、軸胴1a内の押圧杆4gが進退動して、チャック4cをスリーブ4d内より出没させる。
【0017】
すなわち付勢手段5によりスリーブ4d内に退入されていたチャック4cの把持部4eが、押圧杆4gに押されてスリーブ4d内より前方へ押し出されると、いままでチャック4cが把持していた巻き芯3も把持部4eとともに前方へ押し出されるため、巻き芯3の先端が先端部材4aの先端より例えば2mm程度突出されると共に、巻き芯3の押し出し後把持部4eが巻き芯4eを解放する。
次に付勢手段5により押圧杆4gが後退されると、スリーブ4d内より押し出されて、巻き芯3を解放した状態の把持部4eもスリーブ4d内に退入されるが、このとき先端部材4a内に設けられた戻り防止部材4hが巻き芯3の戻りを阻止するため、繰り出された巻き芯3は後退することがない。
【0018】
軸胴1aの前後ストロークを2〜3回繰り返して、先端部材4aの先端より突出された巻き芯3の長さが指で摘める程度になったら、軸胴1aを補助筒2側へストロークさせてチャック4cの把持部4eが巻き芯3を解放した状態で、左手の指で巻き芯3の先端を摘んで巻き芯3を所望長さだけ引き出すが、巻き芯3を出し過ぎて作業がしにくい場合は、巻き芯3を軸胴1a内に押し戻して、作業しやすい長さに設定する。
そしてこの状態でテープ素材10の一端を巻き芯3に巻き付けた状態で、親指と人差し指で図3に示すように軸胴1aを回転し、巻き芯3にテープ素材10を順次巻き付けていくが、このときチャック4cにより巻き芯3が把持されていて軸胴1aと巻き芯3が一体に回転するため、テープ素材10を巻き芯3に巻き付ける際巻き芯3が空転することがなく、これによって巻き付け作業が安定した状態で行える。
【0019】
先端部材4aから突出した巻き芯3全体にテープ素材10を巻き付けたら、再び軸胴1aを前後にストロークさせて、巻き芯3を繰り出し、以下同様の操作を繰り返して、テープ素材10全体を巻き芯3に巻き付ける。
テープ素材10全体の巻き付けが完了したら、テープ素材10より巻き芯3を抜き出すことにより、図5に示すように螺旋状に巻き癖が付いた手芸品8が得られるようになる。
また得られた螺旋状の手芸品8は、クイリングにより作成した花等に蔓を追加したり、花の周りを螺旋状の手芸品8により囲んで装飾効果を高めることにより、見栄えのよい手芸品や装飾品が初心者でも容易に製作できるようになる。
【0020】
以上は螺旋状の手芸品8を作成する場合であるが、図6に示すように紙テープ10aの長手方向と直交する方向に一側縁側から多数のスリット10bを形成したテープ素材10を使用して、前記と同様な操作で巻き芯3にテープ素材10を巻き付けることにより、図7に示すようなリボン状の手芸品9も容易に得られる。
また螺旋状の手芸品のみならず、図10に示すような樹木等の手芸品11も容易に作成することができる。
これに使用するテープ素材10は、図8に示すように幅広な紙テープ10cに、両側縁に達しないよう多数のスリット10dを等間隔に形成したもので、このテープ素材10を図8に示す点線10e部分で切断して図9に示すようなテープ素材10を形成する。
そしてこのテープ素材10を幅広部側から前記と同様な操作で巻き芯3に巻き付けたら、幹11aとなる部分が緩まないようテープ素材10の端部を糊付けした後、幹11aを中心に枝11bとなる部分を螺旋状に拡開して樹木を形成したもので、従来の手芸用工具では作成が困難な手芸品11でも容易に製作することができる。
【0021】
以上説明したように本発明の手芸用工具を使用すれば、使用者の創意工夫により様々な形状の手芸品や装飾品が何等熟練を必要とせずに短時間で容易に製作することできる。
また工具本体1の先端より必要な長さの巻き芯3を繰り出して、この巻き芯にテープ素材10を巻き付けるようにしたことから、巻き付け途中で巻き芯3が弾性変形することがなく、これによってテープ素材10の巻き付け作業が正確に行えるため、巻きピッチの揃った見栄えがよく、かつ装飾効果の高い手芸品が初心者であっても容易に作成することができる。
さらに長尺の手芸品を製作するため長さの長い巻き芯3を使用しても、巻き芯3の端末は補助筒2内に収容されていて、軸胴1aを回転した際巻き芯3の端末が連れ回りすることがないため、手芸が安全に行える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態になる手芸用工具の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態になる手芸用工具の一部を破断した拡大側面図である。
【図3】本発明の実施の形態になる手芸用工具を使用して手芸品を作成する際の作用説明図である。
【図4】本発明の実施の形態になる手芸用工具に使用するテープ素材の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態になる手芸用工具により作成された手芸品の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態になる手芸用工具に使用するテープ素材の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態になる手芸用工具により作成された手芸品の一例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態になる手芸用工具に使用するテープ素材の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態になる手芸用工具に使用するテープ素材の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態になる手芸用工具により作成された手芸品の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 工具本体
1a 軸胴
2 補助筒
3 巻き芯
4 繰り出し手段
4a 先端部材
4c チャック
4e 把持部
4h 戻り防止部材
8 手芸品
10 テープ状素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き芯にテープ状素材を巻き付けて手芸品を作成する際に使用する手芸用工具であって、持ちやすく、かつ回転しやすい径及び長さに形成された筒状の軸胴と、前記軸胴内に挿通された線状材よりなる巻き芯と、前記軸胴の一端側に設けられ、かつ前記巻き芯を前記軸胴内より繰り出す繰り出し手段と、前記軸胴の他端側に着脱自在に連結され、かつ前記巻き芯の端末側を収容する補助筒とを具備したことを特徴とする手芸用工具。
【請求項2】
前記繰り出し手段を、前記補助筒に対し前記軸胴を前後にストロークすることにより前記巻き芯の把持及び解放を繰り返しながら、前記巻き芯を前記軸胴内より繰り出すチャックと、前記チャックが後退する際前記巻き芯が戻るのを阻止する戻り防止部材とから形成してなる請求項1に記載の手芸用工具。
【請求項3】
長さが異なる巻き芯及び補助筒を複数種類予め用意し、かつ作成する手芸品の長さの応じて前記巻き芯及び補助筒を選択的に前記工具本体に装着できるようにしてなる請求項1または2に記載の手芸用工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−19283(P2009−19283A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180686(P2007−180686)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(396008613)有限会社ユニオン精機 (5)
【Fターム(参考)】